説明

有機EL成膜装置とそのメタルマスク冷却機構

【課題】メタルマスクを直接冷却することが可能なメタルマスク冷却機構と、そして、当該機構を備えた有機EL成膜装置を提供する。
【解決手段】真空蒸着チャンバ中で、基板とメタルマスク83とのアライメントを行って蒸着材料を当該基板に蒸着する有機EL成膜装置におけるメタルマスクの冷却機構は、メタルマスクを間に挟み込んで、外形「ロ」の字状に形成され、一方の表面上に前記マスクを取り付ける固定フレーム82の外枠に沿って設けられる、複数の固定板84を備えており、固定板は、各々、熱伝導性に優れた部材により細長い板状に形成されると共に、その内部には冷媒を流すための流体流路を形成すると共に、更に、固定板の各々には、前記固定板の流路に冷媒を供給するための配管と排出するための配管とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイスを製造するために用いられる有機EL成膜装置に関し、特に、かかる有機EL成膜装置におけるメタルマスク冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスを製造する有力な方法としては、真空蒸着法がある。かかる真空蒸着においては、基板とマスクとのアライメントが必要である。ところで、有機ELデバイスに対しても、年々、その処理基板の大型化の波が押し寄せており、例えば、G6世代の基板サイズは1500mm×1800mmになっており、これに伴い、基板サイズの大型化と共に、当然、マスクも大型化し、その寸法は2000mm×2000mm程度にも及ぶ。特に、鋼製のマスクを使用すると有機ELデバイスでは、その重量は300Kgにも達し、従来では、基板及びマスクを水平にして位置合せをしていた。なお、かかる従来技術は、例えば、下記の特許文献1に既に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-302896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有機EL成膜装置においては、メタルマスクを用いて発光材料を基板上に蒸着するが、その際、蒸着時の熱によるメタルマスクの伸びが歩留まりに影響を及ぼす。かかるメタルマスクの伸びは、上述した基板サイズの大型化、高精細化に対しては非常に大きな問題となっている。
【0005】
なお、蒸着中にメタルマスクを冷却するためには、当該マスクは真空環境下にあることから、例えば、マスク自体に冷却液を循環させることが、或いは、冷却部材をマスクに直接に接触することなどが考えられる。しかしながら、当該メタルマスクは、蒸着処理を所定の枚数の基板へ行なう毎に交換する必要がある。そのため、マスク自体に冷却液を循環しようとする場合、真空環境下では、冷却液をマスクに供給する冷却管を、例えば、継ぎ手などにより接続又は分離する作業が必要となる。更には、マスクの搬送時には、当該マスク内に残った冷却液の処理などについても考慮しなければならず、そのため、機構が複雑になってしまうという問題点があった。
【0006】
また、冷却部材をマスクに直接に接触させる場合にも、特に、マスクの交換の際には、当該冷却部材を退避させる必要があり、そのための機構が複雑になってしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、より具体的には、より簡単な構造であり、かつ、メタルマスクを直接冷却することが可能なメタルマスク冷却機構と、そして、当該機構を備えた有機EL成膜装置を提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明によれば、まず、真空蒸着チャンバ中で、基板と金属薄膜からなるメタルマスクとのアライメントを行い、蒸発源内の蒸着材料を当該基板に蒸着する有機EL成膜装置であって、前記メタルマスクを前記基板に対してアライメントを行うためのアラインメント部は、外形「ロ」の字状に形成し、その一方の表面上に前記マスクを取り付ける固定フレームと、そして、前記固定フレームの前記一方の表面の外枠全周に沿って設けられる複数の固定板を備えたものにおいて、前記固定板は、各々、冷却機能を備えている有機EL成膜装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、真空蒸着チャンバ中で、基板とメタルマスクとのアライメントを行って蒸着材料を当該基板に蒸着する有機EL成膜装置におけるメタルマスクのための冷却機構であって、前記メタルマスクを間に挟み込んで、外形「ロ」の字状に形成され、一方の表面上に前記マスクを取り付ける固定フレームの外枠全周に沿って設けられ、複数の固定板を備えたメタルマスク冷却機構において、前記固定板は、各々、熱伝導性に優れた部材により細長い板状に形成されると共に、その内部には冷媒を流すための流路を形成すると共に、更に、前記固定板の各々には、前記固定板の流路に冷媒を供給するための配管と排出するための配管とを設けたメタルマスク冷却機構が提供される。
【0010】
更に、本発明によれば、前記に記載したメタルマスク冷却機構において、前記固定板は細長い板状の外形を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によれば、より簡単な構造であり、かつ、メタルマスクを直接冷却することが可能なメタルマスク冷却機構を、更には、当該冷却機構を備えた有機EL成膜装置を提供することが可能であるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態になる有機EL成膜装置を備えた有機ELデバイス製造装置の内部構成の一例を示す斜視図である。
【図2】上記本発明の有機EL成膜装置を構成するマスク固定機構の構造を示す展開斜視図である。
【図3】上記本発明の有機EL成膜装置を構成するマスク固定機構の詳細構造を示すための一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
まず、有機ELデバイス製造装置は、基板上に単に発光材料層(EL層)を形成して電極で挟むだけではなく、陽極の上に正孔注入層や輸送層を形成し、更には、陰極の上に電子注入層や輸送層などを、様々な材料で薄膜として多層形成したり、基板を洗浄したりするものであり、一般に、大別して、処理対象の基板6を搬入するロードクラスタ、前記基板を処理する複数のクラスタ、各クラスタ間又はクラスタとロードクラスタ、或いは、次工程(封止工程)との間の設置された複数の受渡室などから構成されている。なお、本実施形態では、基板を、その蒸着面を上面にして搬送し、他方、蒸着するときには、当該基板を立てた状態で蒸着する。
【0015】
そして、本発明になる有機EL成膜装置は、上述した有機ELデバイス製造装置において、真空雰囲気中で蒸着して基板上に成膜する真空蒸着チャンバとして機能するものであり、以下、この真空蒸着チャンバについて、搬送チャンバと共に、添付の図1に示す。図において、搬送チャンバ内の搬送ロボット5は、全体を上下に移動可能(図1の矢印59を参照)で、左右に旋回可能なアーム57を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド58を有する。
【0016】
一方、真空蒸着チャンバ1は、大別して、材料を気化させて基板6に蒸着する蒸着部71、76と、メタルマスクの位置合せを行って基板6上の必要な部分に材料を蒸着するアライメント部81と、そして、上記搬送ロボット5との間で基板6の受渡しを行い、当該基板6を蒸着部71、76へ移動させる受渡部91、93からなる。アライメント部81と受渡部91、93は、右側Rラインと左側Lラインの2系統に分けられて設けられる。
【0017】
続いて、図2には、上述したアライメント部81を構成するメタルマスク固定機構の詳細な構造を示す。図にも示すように、アライメント部81は、例えば、金属材料によりその外形を「ロ」の字状に形成された固定フレーム82と、当該固定フレーム82の一方の表面上に配置される金属薄膜から形成されるメタルマスク83と、そして、上記固定フレーム82の全周を取り囲むように、各辺に沿って(即ち、外枠の全体に)、それぞれ、設けられる当該固定フレーム82との間に上記メタルマスク83を挟み込んで固定するための、細長い板状の固定板84とを備えている。なお、この固定板84は、各々、伝熱性に優れた金属である、例えば、アルミニウムや銅等の金属部材により、その内部に流体のための流路85(例えば、貫通穴:図3を参照)を形成したものであり、これにより、以下にも説明するメタルマスクの冷却機能をも発揮するものである。なお、図からも明らかなように、上記固定フレーム82の外形寸法は、メタルマスク83のそれよりも僅かに大きく設定されている。
【0018】
添付の図3には、上記固定フレーム82上にメタルマスク83を配置し、上記固定フレーム82の各辺に沿って、固定板84を押し付けて固定した状態の断面構造を示している。冷却機能をも兼ね備えた上記固定板84は、メタルマスク83を固定フレーム82上に押し付けている際には、当該マスクを固定すると共に効率よく冷却する。そして、例えば、メタルマスクを交換する際には、冷却機能をも兼ね備えた上記固定板84は、当該メタルマスク83から離れる方向に移動して、マスクの固定を解除することとなる。
【0019】
即ち、本発明によれば、上述した固定板84の内部に形成された流体流路85に、配管86を介して、例えば、水等の冷媒(冷却液)Wを流すことによれば(図2の矢印を参照)、蒸着時の熱は、上記メタルマスク83から、当該メタルマスクに押し当てられている固定板84の内部に形成された流路85を流れる冷媒(冷却液)Wに伝達され、もって、装置の外部に排出される。これによれば、メタルマスク83の全周を、直接、効率よく冷却することが可能となる。即ち、簡単な構造により、有機EL成膜装置におけるメタルマスクの効率的な冷却が可能となる。
【符号の説明】
【0020】
1…真空蒸着チャンバ、81…アライメント部、82…固定フレーム、83…メタルマスク、84…固定板、85…流体流路、86…配管、W…冷媒(冷却液)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空蒸着チャンバ中で、基板と金属薄膜からなるメタルマスクとのアライメントを行い、蒸発源内の蒸着材料を当該基板に蒸着する有機EL成膜装置であって、
前記メタルマスクを前記基板に対してアライメントを行うためのアラインメント部は、
外形「ロ」の字状に形成し、その一方の表面上に前記マスクを取り付ける固定フレームと、そして、
前記固定フレームの前記一方の表面の外枠全周に沿って設けられる複数の固定板を備えたものにおいて、
前記固定板は、各々、冷却機能を備えていることを特徴とする有機EL成膜装置。
【請求項2】
真空蒸着チャンバ中で、基板とメタルマスクとのアライメントを行って蒸着材料を当該基板に蒸着する有機EL成膜装置におけるメタルマスクのための冷却機構であって、
外形「ロ」の字状に形成され、一方の表面上に前記マスクを取り付ける固定フレームの外枠全周に沿って設けられる、複数の固定板を備えたメタルマスク冷却機構において、
前記固定板は、各々、熱伝導性に優れた部材により細長い板状に形成されると共に、その内部には冷媒を流すための流路を形成すると共に、更に、
前記固定板の各々には、前記固定板の流路に冷媒を供給するための配管と排出するための配管とを設けたことを特徴とするメタルマスク冷却機構。
【請求項3】
前記請求項2に記載したメタルマスク冷却機構において、前記固定板は細長い板状の外形を有することを特徴とするメタルマスク冷却機構。
【請求項4】
前記請求項3に記載したメタルマスク冷却機構において、前記固定板はメタルマスクを交換する際はメタルマスクから離れる方向に移動することを特徴とするメタルマスク冷却機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95929(P2013−95929A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236855(P2011−236855)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】