説明

有機EL照明装置

【課題】照度の補正機能を有する有機EL照明装置を簡易な構成で提供する。
【解決手段】透明基板11と、前記透明基板11上に形成された透明電極12と、前記透明電極12上に形成された有機発光層13と、前記有機発光層13上に形成された金属電極14と、から成る有機ELパネル1を備える有機EL照明装置であって、
前記有機発光層13が、前記有機EL照明装置の主発光領域として形成される照明領域131と、前記照明領域131と第1の絶縁層134を介して形成される基準領域132と、前記照明領域131及び前記基準領域132と第2の絶縁層135を介して形成される受光領域133と、を有し、
前記照明領域131及び前記基準領域132を駆動するとともに前記受光領域133に流れる電流を検出する有機発光層駆動手段2を備えることを特徴とする有機EL照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL照明装置に関する。より詳細には、本発明は、照度補正機能を有する有機EL照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、透明基板、透明電極、有機発光層及び背面電極が順次積層された有機ELパネルの発光面を除く部分が導電性の筐体で覆われ、且つ、透明電極と背面電極とが駆動電源に接続されるとともに透明電極が接地されることで、筐体輻射ノイズを低減する有機EL照明装置を開示する。有機EL照明装置は、有機ELパネルの経年劣化に伴い照度が低下するため、照度の補正機能を備えることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227523号公報
【特許文献2】特開2008−185671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2は、対向基板、透明電極、有機発光層、背面電極及び支持基板が積層された有機ELパネルにおいて、対向基板又は背面電極内に受光素子を形成するとともに、有機発光層内に温度検出部を形成し、これらの検出出力に基づき照度補正を行う有機EL表示装置を開示する。
【0005】
しかし、特許文献2の方法は、有機ELパネル内に受光素子及び温度検出部を作り込むため有機ELパネルが複雑化する。さらに、照度補正のためにデューティ制御を行う制御部にメモリや温度検出部が必要であり、有機EL照明装置の構成を更に複雑化し、高コスト化を招来する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、照度の補正機能を有する有機EL照明装置を簡易な構成で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る有機EL照明装置は、透明基板11と、前記透明基板11上に形成された透明電極12と、前記透明電極12上に形成された有機発光層13と、前記有機発光層13上に形成された金属電極14と、から成る有機ELパネル1を備える有機EL照明装置であって、
前記有機発光層13が、前記有機EL照明装置の主発光領域として形成される照明領域131と、前記照明領域131と第1の絶縁層134を介して形成される基準領域132と、前記照明領域131及び前記基準領域132と第2の絶縁層135を介して形成される受光領域133と、を有し、
前記照明領域131及び前記基準領域132を駆動するとともに前記受光領域133に流れる電流を検出する有機発光層駆動手段2を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る有機EL照明装置によれば、照度の補正機能を有する有機EL照明装置を簡易な構成で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る有機EL照明装置の断面構成(a)及び平面構造(b)を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例2に係る有機EL照明装置の断面構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例2の変形例に係る有機EL照明装置の断面構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の有機EL照明装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る有機EL照明装置の断面構成(a)及び平面構造(b)を示す概略図である。
本実施例に係る有機EL照明装置100は、透明基板11と、透明電極(陽極)12と、有機発光層13と、金属電極(陰極)14と、から成る有機ELパネル1を有し、さらに、有機発光層13の内部に形成される照明領域131、基準領域132及び受光領域133と、第1及び第2の絶縁層134、135と、有機発光層駆動手段2と、を備える。
【0012】
透明基板11は、例えばガラス板のように透光性及び電気的絶縁性を有する支持板から構成される。透明電極12は、透明基板11における有機EL照明装置100の発光面(図1における上面)と反対側に配置され、ITO(酸化インジウムスズ)又はZnO(酸化亜鉛)のように透光性及び導電性を有する金属膜から構成され、有機ELパネル1の陽極(アノード電極)として機能する。有機発光層13は、透明電極12上に形成され、蛍光材料又はりん光材料等の低分子材料、或いは高分子材料から構成される。また、有機発光層13は、透明電極12に近い方から順に電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層が積層された構造を有するが、説明の簡略化のため、これらの図示を省略する。金属電極14は、有機発光層13(正孔注入層)上に形成され、Ag(銀)又はAl(アルミニウム)のように反射性及び導電性を有する金属膜から構成され、有機ELパネル1の陰極(カソード電極)として機能する。また、金属電極14は、照明領域131に隣接する第1の金属電極141と、基準領域132に隣接する第2の金属電極142と、受光領域133に隣接する第3の金属電極143と、から構成される。第1乃至第3の金属電極141、142、143は、互いに独立して配置される。
【0013】
照明領域131、基準領域132及び受光領域133は、有機発光層13の内部に設けられた領域であり、第1及び第2の絶縁層134、135を介して配置される。照明領域131は、有機発光層13内において基準領域132及び受光領域133よりも広い面積を有し、有機EL照明装置100の主発光領域として機能する。基準領域132は、照明領域131よりも狭い領域であり、照明領域131から独立して発光を行う。受光領域133は、透明基板11及び透明電極12の内部で反射した照明領域131及び基準領域132の発光光を受光し、それらの発光強度に応じて電流を生じる機能を有する。そのため、受光領域133は、第1及び第2の絶縁層134、135を介して照明領域131及び基準領域132に隣接して配置される。第1の絶縁層134は、フォトレジスト(感光材料)又はポリイミド等の電気的絶縁性を有する材料から構成され、基準領域132を照明領域131及び受光領域133から独立させる素子分離領域として配置される。第2の絶縁層135は、第1の絶縁層134と同様の材料から構成され、受光領域133を照明領域131及び基準領域132から独立させる素子分離領域として配置される。
【0014】
有機発光層駆動手段2は、照明領域131の発光を制御する照明領域駆動手段21と、基準領域132の発光を制御する基準領域駆動手段22と、受光領域133に流れる電流を検出する電流検出手段23と、から構成される。
【0015】
照明領域駆動手段21は、PWM制御されるスイッチング素子を有する周知のチョッパ回路から構成され、直流電源電圧を変換して所望の定電流を出力する第1の電力変換部を備える。照明領域駆動手段21は、第1の電力変換部による定電流を透明電極12と第1の金属電極141とを介して照明領域131に供給する。
【0016】
基準領域駆動手段22は、PWM制御されるスイッチング素子を有する周知のチョッパ回路から構成され、直流電源電圧を変換して定電流を出力する第2の電力変換部を備える。基準領域駆動手段22は、第2の電力変換部による定電流を透明電極12と第2の金属電極142とを介して基準領域132に供給する。
【0017】
電流検出手段23は、受光領域133に流れる電流を検出し検出信号を出力する電流検出部と、検出信号に基づき照明領域131の照度を判定し判定信号を出力する照度判定部と、を備える。電流検出手段23の電流検出部は、透明電極12と第3の金属電極143とを介して受光領域133に接続される。照度判定部は、電流検出部と照明領域駆動手段21とに接続され、照明領域駆動手段21に判定信号を出力する。
【0018】
照明領域駆動手段21は、有機EL照明装置100が点灯するべき期間、照明領域131に所望の定電流を供給し、照明領域131を所望の明るさで発光させる。この定電流は、有機発光層13の経年劣化を補償するために補正された電流である。このとき、照明領域131の発光光に基づき、受光領域133から電流検出手段23の電流検出部に電流が流れる。電流検出手段23の電流検出部は、照明領域131から供給される電流に基づき、照度判定部に第1の検出信号を出力する。また、基準領域駆動手段22は、有機EL照明装置100が点灯するべき期間において、周期的に基準領域132を発光させるための基準電流を供給する。基準電流は、有機発光層13の経年劣化を考慮せず、基準領域132を所望の明るさで発光させるために定められた電流である。このとき、基準領域132の発光光に基づき、受光領域133から電流検出手段23の電流検出部に電流が流れる。電流検出手段23の電流検出部は、受光領域133から供給される電流に基づき、照度判定部に第2の検出信号を出力する。電流検出手段23の照度判定部は、第1の電気信号と第2の電気信号とを比較し、有機発光層13の経年劣化に基づく照度変化を検出し、判定信号を照明領域駆動手段21に出力する。照明領域駆動手段21は、判定信号に基づき、照明領域131に供給する定電流のレベルを制御する。例えば、照明領域131の照度低下を検出した場合、定電流のレベルを上げるか、又は照明領域駆動手段21の動作を停止させる。
【0019】
本実施例に係る有機EL照明装置によれば、有機発光層13内部に照明領域131と基準領域132と受光領域133とが形成されるので、外付けの複雑な照度検出装置が不要となる。さらに、照明領域131と基準領域132とが単一の有機発光層13内に形成されるので、周囲温度等の使用環境が変化した場合でも照度変化を正確に検出するための温度検出部及び温度補正機能が不要となる。また、照明領域131と基準領域132との間の特性バラツキが小さいため、照度変化を正確に検出することができる。
【実施例2】
【0020】
図2及び3は、本発明の実施例2に係る有機EL照明装置の断面構成を示す概略図である。
本実施例に係る有機EL照明装置200は、有機ELパネル1と、有機発光層駆動手段2(図示しない)と、反射領域3とを備える。
【0021】
反射領域3は、透明基板11における有機EL照明装置200の発光面(図2における上面)側であって、照明領域131と受光領域133との間及び基準領域132と受光領域133との間に形成される。反射領域3は、透明基板11の表面にめっき処理を施して形成される。
【0022】
また、図3に示すように有機EL照明装置200は、これを保持する筐体4を備え、筐体4の一部に反射領域3を設けても良い。筐体4は、縁金と言い換えても良く、有機ELパネル1を保持、保護及び固定するための部材であり、金属又は樹脂で形成される。反射領域3は、筐体4における透明基板11と対向する表面にめっき処理を施して形成される。
【0023】
本実施例に係る有機EL照明装置によれば、実施例1に係る有機EL照明装置と同様の効果が得られる。さらに、照明領域131及び基準領域132の発光光が反射領域3を介して受光領域133に入射されるため、照度変化をより正確に検出することができる。
【0024】
以上、本発明の実施例の一例について説明したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、基準領域132及び受光領域133は、平面的に見て有機発光層13の中央付近に形成しても良い。また、照明領域駆動手段21は、電流検出手段23の検出信号に基づき定電流のレベルを制御しても良い。また、反射領域3は、透明基板11の表面又は筐体4の表面に鏡面加工又は凹凸加工を施して形成しても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 有機ELパネル
2 有機発光層駆動手段
3 反射領域
4 筐体
11 透明基板
12 透明電極
13 有機発光層
14 金属電極
131 照明領域
132 基準領域
133 受光領域
134 第1の絶縁層
135 第2の絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に形成された透明電極と、前記透明電極上に形成された有機発光層と、前記有機発光層上に形成された金属電極と、から成る有機ELパネルを備える有機EL照明装置であって、
前記有機発光層が、前記有機EL照明装置の主発光領域として形成される照明領域と、前記照明領域と第1の絶縁層を介して形成される基準領域と、前記照明領域及び前記基準領域と第2の絶縁層を介して形成される受光領域と、を有し、
前記照明領域及び前記基準領域を駆動するとともに前記受光領域に流れる電流を検出する有機発光層駆動手段を備えることを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項2】
前記有機発光層駆動手段は、前記受光領域に流れる電流に基づき前記照明領域の照度を補正することを特徴とする請求項1に記載の有機EL照明装置。
【請求項3】
平面的に見て、前記照明領域と前記受光領域との間、及び前記基準領域と前記受光領域との間に反射領域を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL照明装置。
【請求項4】
前記反射領域は、前記透明基板上に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の有機EL照明装置。
【請求項5】
前記反射領域は、前記有機ELパネルを覆う筐体に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機EL照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−243894(P2011−243894A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116973(P2010−116973)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】