説明

有機EL発光素子

【課題】発光層から発せられた光の一部が外部に出射することなく多数回の反射を繰り返して減衰する現象を抑制し、外部量子効率を高めることが可能な有機EL発光素子を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透光性を有する電極とされた陽極2および陰極4と、これら陽極2および陰極4の間に挟まれて形成され、かつ一部分が発光層31として形成されている有機層3と、を備えている、有機EL発光素子A1であって、有機層3のうち、発光層31を除く領域30,32の少なくとも一部分には、エレクトロルミネセンスの性質を有さず、かつ発光層31から発せられる光の励起によって蛍光またはりん光を生じるフォトルミネセンスの発光物質9a,9bがドープされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物のエレクトロルミネセンス(EL)を利用し、画像表示用のディスプレイや面状の光源装置などとして用いられる有機EL発光素子、さらに詳しくは、外部量子効率を高くすることが可能な有機EL発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL発光素子としては、種々のものが提案されているが(たとえば、特許文献1〜3を参照)、それらは基本的には、陽極および陰極の間に、発光層を含む有機層が形成された構成となっている。発光層は、有機蛍光体を含んでおり、この有機蛍光体は、陽極および陰極を利用して与えられる電界により励起されて蛍光を生じる。このような有機EL発光素子は、たとえば透明基板上に、陽極、有機層、および陰極を蒸着などの手法により順次積層させて形成することにより製造される。この製造に際し、たとえば上記陽極および陰極の一方は、上記透明基板上に積層された透明電極とされ、また他方は反射電極とされる。このような構成によれば、有機層の発光層から発せられた光の一部は、そのまま透明電極および透明基板を透過して外部に出射するとともに、他の一部は、反射電極により反射されてから上記透明電極および透明基板を透過して外部に出射することとなる。
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、次に述べるように、外部量子効率の点において改善の余地があった。
【0004】
すなわち、発光層から発せられた光が透明電極や透明基板に到達した場合、その全量がそのまま外部に出射することはなく、一部の光についてはそれら透明電極や透明基板によって反射され、有機層内に戻される。この有機層内に戻された光は、その後反射電極に到達すると、さらに反射されて透明電極や透明基板に向けて進行するが、やはりその光の一部は、それらの部分によって再度反射され、有機層内に戻される。このように、発光層から発せられた光の一部は、透明電極または透明基板と反射電極との間において多数回にわたって反射を繰り返しており、外部に出射することなく減衰している。従来においては、このようにして減衰する光の量が比較的多くなっており、このことに起因して外部量子効率が低いものとなっていた。
【0005】
なお、特許文献3には、白色光を得るための手段として、赤、緑、青のそれぞれに発光する3種類の蛍光色素(EL蛍光色素)を発光層とは別のたとえばホール輸送層にも分散させてもよい旨が示唆されている。ところが、ホール輸送層に分散されたEL蛍光色素から発せられた光は、発光層から発せられた光と同様に、電界励起によって発生した光であり、かつその一部は透明電極または透明基板と反射電極との間において多数回にわたる反射を繰り返しながら減衰していく。したがって、このような構成においても、外部量子効率の向上は期待できない。
【0006】
【特許文献1】特開2005−19338号公報
【特許文献2】特開2003−45676号公報
【特許文献3】特開2002−110358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、発光層から発せられた光の一部が外部に出射することなく多数回の反射を繰り返して減衰する現象を抑制し、外部量子効率を高めることが可能な有機EL発光素子を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供される有機EL発光素子は、少なくとも一方が透光性を有する電極とされた陽極および陰極と、これら陽極および陰極の間に挟まれて形成され、かつ一部分が発光層として形成されている有機層と、を備えている、有機EL発光素子であって、上記有機層のうち、上記発光層を除く領域の少なくとも一部分には、エレクトロルミネセンスの性質を有さず、かつ上記発光層から発せられる光の励起によって蛍光またはりん光を生じるフォトルミネセンスの発光物質がドープされていることを特徴としている。ここで、本発明でいう「発光層」とは、エレクトロルミネセンスの発光を生じる層であり、フォトルミネセンスの発光物質がドープされた領域を含むものではない。また、「エレクトロルミネセンスの性質を有さず」とは、フォトルミネセンスの発光物質が、有機層のうちの発光層を除く領域のドープされた部分においてエレクトロルミネセンスの発光を生じないことを意味している。
【0009】
本発明によれば、有機層の発光層から発せられた光の一部が、たとえば陽極または陰極によって反射されて有機層内に戻されるように進行したとしても、この光がその進行過程においてフォトルミネセンスの発光物質にあたると、この発光物質は上記光により励起されて蛍光またはりん光を生じる。そして、この発光物質から発せられた光が陽極および陰極の少なくとも一方の透光性を有する電極に到達すると、その光の多くは外部に出射することとなる。このように、本発明によれば、発光層から発せられた光がその進行過程においてフォトルミネセンスの発光物質にあたることにより、この発光物質から発せられる光に変換され、外部に出射する機会を生じることとなる。したがって、本発明によれは、発光層から発せられた光が陽極および陰極の間において多数回にわたって反射を繰り返しながら減衰していく光の量を少なくし、従来技術よりも外部量子効率を高くすることが可能となる。その結果、消費エネルギを抑制しつつ、発光輝度を高めることができる。なお、本発明において留意すべき点は、上記フォトルミネセンスの発光物質は、エレクトロルミネセンスの性質を有しておらず、このことにより上記した効果が適切に得られる点にある。本発明とは異なり、仮にフォトルミネセンスの発光物質がエレクトロルミネセンスの性質を併せもっている場合には、電界励起により発光し、発光層から発せられた光の励起によっては発光しないこととなるため、本発明が意図する作用は得られない。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記発光層は、青色光を発するように構成されているとともに、上記PL発光物質としては、上記青色光を受けることによって赤色光を発する第1の物質と、緑色光を発する第2の物質とが用いられている。
【0011】
このような構成によれば、白色光または白色に近い光を得ることが可能となる。発光層としては、青色光を発するための1層を設けるだけでよく、赤色光や緑色光を発生させるための複数の発光層を設ける必要はないため、全体構造の簡素化、ならびに製造コストの低減を図ることもできる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2の物質は、互いに混合された状態とされて、上記有機層に形成されているホール輸送層および電子輸送層の双方または一方にドープされている。
【0013】
このような構成によれば、ホール輸送層および電子輸送層の少なくとも一方が、第1および第2の物質が混合してドープされたフォトルミネセンス発光領域として有効に利用されることとなり、その構成は合理的である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2の物質は、上記有機層に形成されているホール輸送層および電子輸送層に対して個別にドープされている。
【0015】
第1および第2物質の材質如何では、これらを混合させて共蒸着させた場合、たとえばこれらが互いにくっつき合った塊となって、ホール輸送層や電子輸送層の膜質を低下させる場合があり得る。上記構成によれば、第1および第2の物質を個別にドープしているために、そのような不具合を適切に回避することが可能である。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記フォトルミネセンスの発光物質は、上記有機層のうち、上記発光層に隣接する部分を避けるようにドープされている。
【0017】
有機層の発光層は、多くの不純物を含むと劣化し易く、その使用寿命が短くなることが経験的に知られているが、上記構成によれば、発光層に隣接する部分にはフォトルミネセンスの発光物質がドープされていないために、この発光物質が発光層に混入し難くなっている。したがって、フォトルミネセンスの発光物質に起因して発光層が劣化することは、適切に防止される。また、フォトルミネセンスの発光物質については、できる限り発光層から遠い領域で発光させた方が外部量子効率を高めるのに好適となるが、上記構成によれば、そのような効果も得られることとなる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記陽極および陰極の一方は、透明電極とされ、かつ他方は、上記発光層から進行してきた光を上記発光層および上記透明電極に向けて反射する反射電極とされており、上記フォトルミネセンスの発光物質は、上記有機層の発光層を除く領域のうち、上記透明電極寄りの領域に部分的にドープされている。
【0019】
このような構成によれば、フォトルミネセンスの発光物質の発光は、光の出射がなされる透明電極寄りの領域においてなされるために、外部への出射光量を多くし、外部量子効率を高めるのにより好適となる。また、フォトルミネセンスの発光物質が透明電極寄りの領域に部分的にドープされていれば、この発光物質が有機層の発光層に混入することも適切に回避され、発光層の劣化を防止するのにも好適となる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る有機EL発光素子の一例を示している。本実施形態の有機EL発光素子A1は、基板1上に、陽極2、有機層3、および陰極4が順次積層された構成を有している。有機層3は、ホール輸送層30、発光層31、および電子輸送層32が積層された構造を有している。本実施形態においては、基板1が透明基板として構成され、また陽極2は透明電極として構成されており、発光層31から発せられた光は基板1の片面の光出射面10から外部に出射するようになっている。陽極2および陰極4は、蒸着あるいはスパッタリングなどにより形成され、また有機層3の各層は、いずれも蒸着により形成されている。
【0023】
基板1は、たとえば板状のガラス製または樹脂製である。可撓性を有するシートまたはフィルムを基板1として用いることもできる。陽極2は、陰極4とともに発光層31に電場を与えるためのものであり、その材質はホール注入性を良好にすべく仕事関数が大きいものが用いられており、本実施形態では透光性をもつたとえばITOである。陰極4は、電子注入性を良好にすべく仕事関数が小さく、かつ光反射率が高いたとえばアルミニウムなどの金属製であり、発光層31から進行してきた光を透明な陽極2および基板1に向けて反射する。
【0024】
発光層31は、エレクトロルミネセンスの発光色素(以下、「EL発光色素」という)を含む薄膜層であり、この部分に電子およびホールが注入されて再結合されることにより励起子が生成され、この励起子がこの発光層13内を拡散して基底状態に脱励起する際に光が放出される。この発光層31のホスト材料としては、たとえばトリス(8−キノリラト)アルミニウムが用いられており、またゲスト材料としてのEL蛍光色素は、ピーク波長が約470nmの青色光を発するTBA(トリ(ビフェニール−4−イル)アミン)、あるいはTPB(テトラフェニルブタジエン)が用いられている。なお、発光層31は、励起一重項状態に基づく蛍光を生じるものに代えて、励起三重項状態に基づくりん光を生じる構成とすることもできる。この場合の青色光を放出するEL発光色素としては、FIrpicなどのイリジウム錯体を用いることができる。
【0025】
ホール輸送層30は、発光層31に対するホール注入性を向上させるための部分であり、イオン化エネルギがある程度小さく、発光層31へのキャリアの閉じ込めを可能とする部分である。このホール輸送層30の材質は、たとえばNPBに代表されるアミン系材料である。ホール注入性を高めるための手段として、ホール輸送層30と陽極2との間に、アミン系あるいはフタロシアニン系の材料からなるホール注入層(図示略)を設けた構成とすることもできる。
【0026】
このホール輸送層30には、エレクトロルミネセンスの性質を有しない2種類のフォトルミネセンスの発光物質9a,9b(以下、「PL発光物質」という)がドープされている(図面においては、PL発光物質9a,9bを網点模様で模式的に示している)。これらPL発光物質9a,9bは、発光層31から発せられる青色光を受けて励起されることにより蛍光またはりん光を生じ、ピーク波長が約600nmの赤色光、およびピーク波長が約520nmの緑色光を個々に発するものである。たとえば、フローサイトメトリの分野では、種々のPL蛍光色素が用いられており、青色光励起により赤や緑に蛍光する色素が多く存在する。本実施形態のPL発光物質9a,9bとしては、たとえばそのような蛍光色素の中から適当なものを選択して用いることが可能である。ホール輸送層30は、上記したアミン系材料などのホスト材料と2種類のPL発光物質9a,9bとが共蒸着されることにより形成されている。ただし、これらPL発光物質9a,9bは、ホール輸送層30の全体に対して均一な密度にはドープされておらず、発光層31の近傍領域を避けるようにして、陽極2寄りの領域のみにドープされている。なお、2種類のPL発光物質9a,9bについては、後述するように有機層3の互いに分離した領域に対して別々にドープさせた構成とすることもできる。
【0027】
電子輸送層32は、発光層31に対する電子注入性を向上させるための部分であり、その材質はたとえばAlqである。電子注入性を高めるための手段として、電子輸送層32と陰極4との間に、LiFなどのホール注入層(図示略)を設けた構成とすることもできる。この電子輸送層32に対しても、ホール輸送層30と同様に、2種類のPL発光物質9a,9bがドープされている。これらのPL発光物質9a,9bも、発光層31の近傍領域にはドープされておらず、陰極4寄りの領域のみにドープされている。
【0028】
次に、上記した有機EL発光素子A1の作用について説明する。
【0029】
まず、陽極2および陰極4に電圧を印加して有機層3に電界を発生させると、発光層31は、エレクトロルミネセンスにより発光し、青色光を発する。この青色光の一部は、透明な陽極2および基板1に向けてそのまま進行し、あるいは陰極4によって反射されてからそれら陽極2および基板1に向けて進行して基板1の光出射面10から外部に出射する。これに対し、上記青色光の他の一部としては、ホール輸送層30や電子輸送層32にドープされている2種類のPL発光物質9a,9bに当たり、これらを励起させるものもある。とくに、発光層3から発せられた青色光としては、陽極2や基板1の表面に反射されてホール輸送層30内に戻されるものもあるが、このような光もそのような進行過程においてPL発光物質9a,9bに当たる。すると、PL発光物質9a,9bは、上記青色光によって励起され、フォトルミネセンスにより赤色光および緑色光を発する。したがって、光出射面10からは、赤、緑、青の光が出射することとなり、白色光を好適に得ることが可能となる。
【0030】
PL発光物質9a,9bは、電界励起によっては発光しておらず、発光層31から発せられた青色光によって励起されて発光している。したがって、このPL発光物質9a,9bは、電界による励起によって発せられた青色光が有機層3内において多数回にわたって反射を繰り返しながら減衰することを抑制する作用を発揮することとなり、このことにより外部量子効率が高められることとなる。したがって、この有機EL発光素子A1においては、消費エネルギを少なくしつつ、発光輝度を高めることが可能となる。
【0031】
PL発光物質9a,9bは、既述したとおり、発光層31の近傍領域には設けられていない。発光層31の劣化を防止するためには、この発光層31内に多くの不純物が含まれないようにすることが望まれるが、本実施形態によれば、発光層31内にPL発光物質9a,9bが不純物として混入する虞れを無くし、発光層31が劣化することも適切に回避することができる。また、ホール輸送層30にドープされているPL発光物質9a,9bは、光出射面10に近い領域で発光するために、これらPL発光物質9a,9bから発せられた光は、光出射面10から外部に出射し易く、外部量子効率を高めるのにより好ましいものとなる。
【0032】
図2〜図4は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0033】
図2に示す有機EL発光素子A2に構成においては、ホール輸送層30にPL発光物質9aがドープされているとともに、電子輸送層32にはPL発光物質9bがドープされている。PL発光物質9a,9bの種類によっては、これらを共蒸着させた際にこれらが互いにくっつき合った塊となって、ホール輸送層30または電子輸送層32の質を低下させる場合があり得る。これに対し、本実施形態によれば、PL発光物質9a,9bが別々の領域にドープされているために、そのような虞れがない。もちろん、PL発光物質9a,9bは、青色光の励起により赤色光および緑色光をそれぞれ発するために好適に白色光を得ることができる。
【0034】
図3に示す有機EL発光素子A3においては、ホール輸送層30に2種類のPL発光物質9a,9bがドープされているのに対し、電子輸送層32にはPL発光物質9a,9bがドープされていない構成とされている。本実施形態においても、ホール輸送層30および電子輸送層32の双方にPL発光物質9a,9bをドープさせた場合と同様に、青色光の反射の繰り返しによる減衰を抑制し、白色光を得ることが可能である。本実施形態から理解されるように、本発明においては、ホール輸送層30および電子輸送層32の一方のみにPL発光物質9a,9bをドープさせた構成としてもかまわない。ただし、このような場合において、PL発光物質9a,9bの光を外部に効率良く出射させるには、本実施形態のように、光出射面10寄りのホール輸送層30にドープすることが好ましい。また、有機EL発光素子としては、ホール輸送層および電子輸送層のいずれか一方のみを有し、かつ他方を省略した構成とすることも可能であり、この場合にはその一方の層にPL発光物質をドープした構成となる。
【0035】
図4に示す有機EL発光素子A4においては、陽極2が反射電極として構成されているとともに、陰極4が透明電極として構成されている。陽極2は、光の反射率が高く、有機層3への正孔注入効率の高い材料、たとえばモリブデンやクロムとされ、あるいはこれらの金属がITO膜の表面に積層された構成である。陰極4は、たとえば薄膜金属層40にITO膜41が積層された構成を有しており、薄膜金属層40は、その厚みがたとえば50nm以下のアルミニウムであるなど透光性を有している。ITO膜41は、陰極4の厚みを大きくして抵抗値を小さくするためのものである。発光層31から発せられた光は、陰極4を透過して外部に出射するようになっており、陰極4の片面が光出射面である。基板1は、不透明でよい。
【0036】
本実施形態においては、電子輸送層32のうち、陰極4寄りの領域にPL発光物質9a,9bがドープされている。本実施形態においては、先に述べた実施形態とは光の出射方向が相違するものの、やはり発光層31から発せられた青色光がPL発光物質9a,9bを励起して赤色光および緑色光が発せられて白色光が得られる。そして、上記青色光が陰極4と陽極2との間において反射を繰り返して減衰することも適切に抑制される。PL発光物質9a,9bは、陰極4の近傍に設けられているために、PL発光物質9a,9bから発せられた光は、陰極4を介して外部に出射し易くなる効果も得られる。本実施形態および上述の実施形態から理解されるように、本発明においては、発光層31から発せられた光が陽極2と陰極4とのいずれを透過するように構成されている場合にも適用可能である。
【0037】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る有機EL発光素子の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0038】
上述の実施形態においては、白色光を得るように構成しているが、本発明はこれに限定されず、白色光とは異なる色彩の光が得られるように構成してもよい。発光層3の発光色は青色に限らず、またPL発光物質の発光色も赤色や緑色に限定されない。また、発光層は、必ずしも単層である必要もなく、たとえば同一または非同一の色彩の光を発する複数の発光層が設けられた構成とすることもできる。
【0039】
PL発光物質は、2種類に限らず、1種類のみ、あるいは2種類を超える多数種類のものが用いられていてもよい。PL発光物質は、要は、電界励起では発光せず、発光層から発せられる光の励起により発光(蛍光またはりん光)を生じるものであればよく、その具体的な成分なども問わない。PL発光物質は、既述したとおり、発光層の近傍を避けるようにしてドープされることが好ましいものの、やはりこれに限定されず、たとえばホール輸送層や電子輸送層の全域にドープされているなどして、発光層に隣接する部分にもPL発光物質が存在する構成とすることもできる。
【0040】
本発明でいう有機EL発光素子は、単独の素子として構成されているものに限らず、たとえば1つの基板上に複数の有機層がライン状または面状に並んで設けられていることにより、ライン状または面状の光源装置を構成しているもの、あるいは画像表示用のディスプレイなどを構成しているものも含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る有機EL発光素子の一例を示す要部断面図である。
【図2】本発明に係る有機EL発光素子の他の例を示す要部断面図である。
【図3】本発明に係る有機EL発光素子の他の例を示す要部断面図である。
【図4】本発明に係る有機EL発光素子の他の例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0042】
A1〜A4 有機EL発光素子
1 基板
2 陽極
3 有機層
4 陰極
9a,9b PL発光物質(フォトルミネセンスの発光物質)
30 ホール輸送層
31 発光層
32 電子輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透光性を有する電極とされた陽極および陰極と、
これら陽極および陰極の間に挟まれて形成され、かつ一部分が発光層として形成されている有機層と、
を備えている、有機EL発光素子であって、
上記有機層のうち、上記発光層を除く領域の少なくとも一部分には、エレクトロルミネセンスの性質を有さず、かつ上記発光層から発せられる光の励起によって蛍光またはりん光を生じるフォトルミネセンスの発光物質がドープされていることを特徴とする、有機EL発光素子。
【請求項2】
上記発光層は、青色光を発するように構成されており、
上記フォトルミネセンスの発光物質としては、上記青色光を受けることによって赤色光を発する第1の物質と、緑色光を発する第2の物質とが用いられている、請求項1に記載の有機EL発光素子。
【請求項3】
上記第1および第2の物質は、互いに混合された状態とされて、上記有機層に形成されているホール輸送層および電子輸送層の双方または一方にドープされている、請求項2に記載の有機EL発光素子。
【請求項4】
上記第1および第2の物質は、上記有機層に形成されているホール輸送層および電子輸送層に対して個別にドープされている、請求項2に記載の有機EL発光素子。
【請求項5】
上記フォトルミネセンスの発光物質は、上記有機層のうち、上記発光層に隣接する部分を避けるようにドープされている、請求項1ないし4のいずれかに記載の有機EL発光素子。
【請求項6】
上記陽極および陰極の一方は、透明電極とされ、かつ他方は、上記発光層から進行してきた光を上記発光層および上記透明電極に向けて反射する反射電極とされており、
上記フォトルミネセンスの発光物質は、上記有機層の発光層を除く領域のうち、上記透明電極寄りの領域に部分的にドープされている、請求項1ないし5のいずれかに記載の有機EL発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−115884(P2007−115884A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305534(P2005−305534)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】