説明

有機EL素子、発光装置及び有機EL素子の製造方法

【課題】様々な形態の三次元発光装置を形成することが可能であり、耐久性が高い有機EL素子及びかかる有機EL素子により形成される発光装置を実現する。
【解決手段】有機EL素子がシート状の発光領域及びシート状の周辺領域を有し、前記発光領域及び前記周辺領域は、前記発光領域の剛性が前記発光領域を囲む周辺領域の剛性よりも高い、という条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子及び有機EL素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELの技術は、照明装置、画像を表示するディスプレイ、光信号を発生する光源等の幅広い利用分野において将来性のある技術として期待され、企業、大学、研究機関等における重要な研究開発テーマになっている。
【0003】
有機EL素子が有する大きな特徴の一つは、面状発光体であることで、そのため、点光源のLEDとは異なり、直視しても眩しいということが少ないため、発光部が視野内に見えても、照らされた物体が見づらいということが少ない。次の特徴は、変形可能なことである。したがって、フラットパネルディスプレイの他に、有機EL素子を曲げることにより、種々の形状の光源や照明装置が可能になる。このような有機EL素子の特徴的な性能を向上させる技術が次の文献で提案されている。
【0004】
特許文献1〜3:曲げに対する耐久性を向上した有機EL素子が提案されている。
【0005】
特許文献4、5:ディスプレイを複数のセグメントで構成し、各セグメントの間で屈曲させることにより、セグメントが曲げにより劣化することを防止している。セグメントとセグメントとの間は不連続であり、曲げ力を受けたときに、セグメントとセグメントとの間の線上でエッジ状に屈曲する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−311781号公報
【特許文献2】特開2004−281085号公報
【特許文献3】特開2006−244941号公報
【特許文献4】特開平9−311737号公報
【特許文献5】特開2007−511046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
面状の発光領域を有しながら、様々な形状の発光面を形成することを可能にするためには、可撓性であり、且つ、曲げに対する高い耐久性を有する有機EL素子が望まれる。
【0008】
しかしながら、このような有機EL素子は実現されていない。即ち、特許文献1〜3では、曲げに対する耐久性を向上した可撓性の有機EL素子が提案されているが、有機EL発光層を有する発光体自体の曲げに対する耐久性には限界があり、曲げに対する十分な耐久性は得られていない。
【0009】
特許文献4、5では、有機EL素子を有するセグメント間で屈曲させることにより、有機EL素子が曲げに対する耐久性の点で不十分な点を補っている。しかしながら、この場合、セグメントとセグメントとの間で起きる屈曲により、セグメント間の電気接続が劣化するという問題がある。本発明は、有機EL素子の曲げに対する耐久性の問題を解決し、様々な形状の照明装置やディスプレイを実現することを可能にする有機EL素子、及び発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的は下記の発明により達成される。
【0011】
1.有機EL発光層及び電極層を有し、電気エネルギーにより発光するシート状の複数の発光領域及び
該発光領域を囲み、前記発光領域間を連結するシート状の周辺領域を備え、
前記発光領域の剛性が前記周辺領域の剛性よりも高いことを特徴とする有機EL素子。
【0012】
2.前記周辺領域の曲げに対する耐久性が前記発光領域の曲げに対する耐久性よりも高いことを特徴とする前記1に記載の有機EL素子。
【0013】
3.前記周辺領域は前記電極層を有することを特徴とする前記1又は前記2に記載の有機EL素子。
【0014】
4.前記発光領域は、活性放射線により硬化処理された層を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【0015】
5.前記発光領域は、加熱により硬化処理された層を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【0016】
6.前記発光領域は、剛性を増す補強層を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【0017】
7.前記補強層は、ラミネートにより形成されたことを特徴とする前記6に記載の有機EL素子。
【0018】
8.前記補強層は、塗布により形成されたことを特徴とする前記6に記載の有機EL素子。
【0019】
9.前記補強層は光取り出し機能を有することを特徴とする前記6〜8のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【0020】
10.2層の前記電極層を有し、前記周辺領域において、2層の前記電極層は、前記有機EL素子により形成されるシートの厚み方向に互いに重ならないように配置されたことを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【0021】
11.前記1〜10のいずれか1項に記載の有機EL素子及び棒状部材を備え、
前記棒状部材は、電極を有するとともに、前記電極層に前記電極が接続した状態で、前記棒状部材が前記有機EL素子を支持することを特徴とする発光装置。
【0022】
12.固定部材を有し、前記有機EL素子が前記固定部材により、前記棒状部材に固定されたことを特徴とする前記11に記載の発光装置。
【0023】
13.前記有機EL素子は、前記棒状部材を中心として、一方の側に第1の前記発光領域を、他方の側に第2の前記発光領域を有し、第1の前記発光領域と、第2の前記発光領域とは、任意の角度を形成することができることを特徴とする前記11又は前記12に記載の発光装置。
【0024】
14.三次元体の表面が分割された領域を形成する複数の分割領域を備え、該分割領域は前記発光領域及び前記周辺領域を有することを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【0025】
15.前記分割領域間を結合する結合手段を有することを特徴とする前記14に記載の有機EL素子。
【0026】
16.有機EL発光層及び電極層を有し、電気エネルギーにより発光する発光領域及び
該発光領域を囲む周辺領域を備えた有機EL素子並びに、
前記有機EL素子が取り付けられる取り付け部を有する連結手段を備えたことを特徴とする発光装置。
【0027】
17.前記連結手段は、前記取り付け部を有する複数の連結部材及び該連結部材を回転可能に支持する支持軸を有することを特徴とする前記16に記載の発光装置。
【0028】
18.前記連結手段は、前記有機EL素子の端部に対向して配置され、前記有機EL素子で発生した光を取り出す導光部材を有することを特徴とする前記16又は前記17に記載の発光装置。
【0029】
19.有機EL発光層及び電極層を有し、電気エネルギーにより発光するシート状の複数の発光領域及び
該発光領域を囲み、前記発光領域間を連結するシート状の周辺領域を備えた有機EL素子を製造する方法において、
前記発光領域の剛性を前記周辺領域の剛性よりも高くする工程を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明においては、有機EL発光層を有する発光領域を複数有し、該発光領域間に介在する周辺領域が、屈曲部を形成するとともに、曲げに対して前記発光領域よりも高い耐久性を有する。したがって、様々な形状の発光装置の実現が可能となるとともに、曲げに対して高い耐久性を有する有機EL発光素子及び発光装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL素子の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る有機EL素子の層構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る有機EL素子の製造例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る有機EL素子の製造例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る有機EL素子の製造例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る有機EL素子の層構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る有機EL素子の製造例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る有機EL素子の平面図である。
【図9】図8に示される有機EL素子を用いた発光装置の一例を示す図である。
【図10】図8に示される有機EL素子1を用いた発光装置の他の例を示す図である。
【図11】図1に示される基本構成を有する有機EL素子1を用いた発光装置の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る発光装置であるキュービック発光装置の例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る発光装置の例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る発光装置の例を示す図である。
【図15】図14に示される発光装置の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に実施の形態に基づいて本発明を説明するが、本発明は以下に説明する実施の形態に限られない。
〔有機EL素子〕
図1は本発明の実施の形態に係る有機EL素子の平面図であり、有機EL素子1は複数の発光領域100と発光領域100を囲む周辺領域200とを有する。
【0033】
発光領域100は有機EL発光層を有し、電気エネルギーにより発光する。周辺領域200は発光領域100を囲み、複数の発光領域100を機械的及び電気的に連結する。
【0034】
有機EL素子1は面発光体であるが、素子を曲げることにより、種々の三次元形状の発光体が形成される。即ち、有機EL素子1が照明装置として使用されるときは、有機EL素子1に対して曲げ力が作用する。
【0035】
このような有機EL素子1に対して作用する曲げに対して、発光領域100と周辺領域200とが、次の条件aを満たすように、有機EL素子1が形成される。
a.剛性:発光領域100>周辺領域200
即ち、発光領域100が周辺領域200よりも曲がり難い。なお、曲げ剛性力の測定方法としては、特開平11−23437に提案された手法を用いることができる。
【0036】
更に前記発光領域100及び前記周辺領域200は、次の条件を満たすことが好ましい。b.曲げに対する耐久性:発光領域100<周辺領域200
なお、曲げに対する耐久性は、例えばJISK5600−5−1 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)などを用いて測定することが出来る。
【0037】
図1(a)示される有機E素子1の線L−Lの部分に曲げ力が作用した場合の断面図である図1(b)に示されるように、有機EL素子1に対して曲げ力が作用したときに、周辺領域200が大きく曲がり、発光領域100の屈曲度は低い。
【0038】
発光領域100は有機EL発光層を有し、均一光の発光や画像の表示を行うので、発光領域100では微細な傷が生ずることも許されない。したがって、発光領域100の曲げに対する耐久性は大きくない。
【0039】
周辺領域200は可撓性の支持層と電極層等とで構成されており、その機能は発光領域100と発光領域100との間を機械的及び電気的に連結するものである。このため、周辺領域200の傷に対する許容度が大きく、曲げに対する耐久性が高い。例えば、図1(b)のように、大きく屈曲した場合にも、周辺領域200の性能が低下することはない。また、周辺領域200はある程度の面積を有する。したがって、図1(b)に示されるように、周辺領域200はエッジ状に屈曲するのではなく湾曲する。このような湾曲により、屈曲時に起こる劣化の程度は低く、曲げに対する耐久性は更に高いものとなる。
【0040】
曲げに対する耐久性は、シートに対して、その両端部が所定の角度となるように曲げ力を作用させる曲げを繰り返した場合に、シートが所定の性能を発揮することができなくなる曲げの繰り返し回数で表される。
【0041】
発光領域100では、発光むらが生じた段階で発光領域の性能を発揮できないので、その段階における曲げ回数が耐久性となる。
【0042】
周辺領域では、電気接続の不良やシートの切断など、連結部としての機能がなくなった段階における曲げ回数が耐久性となる。
【0043】
図2に示すように、有機EL素子1では、支持層10上に電極層11(陽極)が形成され、電極層11上に有機EL発光層12が形成され、有機EL発光層12上に電極層13(陰極)が形成される。14は表面を形成する保護層である。
【0044】
なお、電極層11と有機EL発光層12との間には、正孔輸送層、正孔阻止層が形成され、有機EL発光層12と電極層13との間には、電子輸送層が形成されるものもある。
【0045】
発光装置としては片面発光タイプ又は両面発光タイプである。
【0046】
片面発光タイプでは、支持層10及び電極層11が透明に形成されるか、又は、電極層13及び保護層14のいずれか一つが不透明に形成される。
【0047】
両面発光タイプでは、支持層10、電極層11、13及び保護層14が透明に形成される。
【0048】
有機EL発光層12は電極層11、13間に電圧が印加され、電流が流れたときに発光する。
【0049】
電極層11、13間に印加される電圧は数V〜十数Vであり、低電圧、低電流、且つ、高電力効率で有機EL発光層12が発光する。
【0050】
なお、印加電圧、電流を変えることにより発光色を変えることができる。
【0051】
周辺領域200には電極層が設けられている部分と電極層がない部分とがある。図2(b)は電極層が設けられている周辺領域200の部分の層構成を示す。図示のように、電極層が設けられている部分は、支持層10、電極層(11又は13)及び保護層14からなる。図2(b)における電極層(11又は13)は、図2(a)における電極層11、13が延長されたものである。電極層がない部分は図2(c)に示されるように、支持層10及び保護層14からなる。なお、周辺領域200には、有機EL発光層があってもよい。周辺領域200に有機EL発光層がある構成であっても、周辺領域200における光は利用されないので、この領域における発光不良は周辺領域200の耐久性を低下させることにはならない。
【0052】
支持層10を形成する材料には、可撓性樹脂フィルムが用いられる。特に、透明樹脂フィルムが用いられ、このような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)或いはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0053】
〔有機EL素子の製造〕
図1に示される有機EL素子1は前記のように次の条件を満たす性質を有する。
a.剛性:発光領域100>周辺領域200
b.曲げに対する耐久性:発光領域100<周辺領域200
前記a、bの条件を満たす有機EL素子は次の方法により製造される。
【0054】
<活性放射線硬化>
図3に示されるように、有機EL素子1の素材を、マスク2を介して紫外線、可視光線等の活性放射線LBで照射することにより、発光領域100の剛性が高められる。
【0055】
有機EL素子1の素材は、図2における保護層14が紫外線硬化樹脂又は光硬化樹脂を塗布することにより形成される。活性放射線LBの照射により、発光領域100の部分の保護層14が硬化し、発光領域100の剛性が高くなる。その結果、有機EL素子1に曲げ力が作用したときに、図1(b)に示されるように、周辺領域200の部分が大きく屈曲する。
【0056】
紫外線硬化を行う場合では、図3に示されるようにマスク2を用いた紫外線照射が行われるが、光硬化を行う場合には、レーザを用いた光照射を行うことが好ましい。
【0057】
即ち、発光領域100のパターン照射する方法として、レーザビームによる走査露光が行われる。
【0058】
<熱硬化>
保護層14を熱硬化性樹脂の塗布により形成し、図4に示されるように、有機EL素子1の素材を、加熱板3を用いて、パターン加熱することにより、曲げに対する剛性を増した発光領域100が形成される。
【0059】
<ラミネート>
図5は、ラミネートにより、発光領域100、周辺領域200に対する前記a.b.の2条件を満たす有機EL素子を作成する例を示す。
【0060】
図2に示される層構造の有機EL素子の素材1aに対して、剛性を増す補強フィルム4が貼着される。図5に示されるラミネートにより作成された有機EL素子1は図6に示される層構造を有する。図6(a)に示されるように、発光領域100は保護層14の上に補強層15を有するが、周辺領域200には補強層15がない。
【0061】
なお、図6(b)に示される例では、周辺領域200には有機EL発光層12がない。しかしながら、周辺領域200には、有機EL発光層があってもよい。周辺領域200に有機EL発光層12がある層構成において、周辺領域200における有機EL発光層が曲げ作用により損傷を受けた場合でも、発光性能が影響を受けることはない。即ち、周辺領域200に有機EL発光層がある層構成でも、周辺領域200の曲げに対する耐久性を低下させることはない。
【0062】
補強フィルム4としては、支持層10を構成することができる材料として挙げた前記の材料を用いることができる。
【0063】
また、補強フィルムにおいて、光取り出しのような光学的な機能を担ってもよい。これにより発光効率をより高めることができる。
【0064】
光取り出し機能は周知のように、フィルム内の光がフィルム表面で全反射するのを防ぐことにより、発光層で発生した光に対するフィルム表面から出射する光の割合を高める機能であり、表面に凹凸を設けるなどの手段がある。
【0065】
<塗布>
図7は、塗布により発光領域100、周辺領域200に対する前記a。bの2条件を満たす有機EL素子1を作成する例を示す。
【0066】
図5において、5はマスク、6は塗布ローラである。マスク5を用いたパターン塗布により、有機EL素材1aに補強層を設けることにより、曲げに対する剛性を増した発光領域100を有する有機EL素子1が作成される。
【0067】
これの塗布においても、光取り出し機能を担っても良い。たとえば、塗布ローラー6に凹凸のパターンを形成することで、塗布された面に凹凸を形成することが可能である。これにより発光効率をより高めることができる。
【0068】
〔曲げに対する耐久性を増した有機EL素子の例〕
図8は前記の条件a、bを満たした有機EL素子の例を示す。
【0069】
発光領域100は図2(a)に示した層構造を有する。
【0070】
周辺領域200は図2(b)及び図2(c)に示した層構造を有する。
【0071】
周辺領域200における電極層11と電極層13とは、有機EL素子1が形成するシートの厚み方向に重ならないように配置される。図8に示されるように、電極層11と電極層13とが前記シートの厚み方向に重ならない配置となっているので、周辺領域200の部分が曲げにより、損傷を受けた場合でも電極層11と電極層13との間に、短絡が生ずることはない。
【0072】
図9は図8に示される有機EL素子を用いた発光装置の一例を示す。
【0073】
図9(a)は有機EL素子1の表面、即ち、発光面側を、図9(b)は有機EL素子1の裏面側を、図9(c)は有機EL素子を周辺領域200において、約90°曲げて形成した発光装置110の裏面側をそれぞれ示す。
【0074】
周辺領域200には、電極層11、13が露出して形成される。有機EL素子1を支持する絶縁体の棒状部材7には、良導体により構成された電極7a及び7bが互いに絶縁されて形成されている。
【0075】
有機EL素子1を棒状部材7に約90°の角度で巻くことにより、電極層11が電極7aに、電極層13が電極7bにそれぞれ接続され、直角に交叉する発光面を有する発光装置110が形成される。
【0076】
図9に示される発光装置110を2個組み合わせることにより、四角柱状の発光装置を形成することができる。
【0077】
なお、図9では、片面発光タイプの有機EL素子が示されており、発光領域の表面、即ち発光面側が斜線で示され、発光領域の裏面は、白地で示されている。図示のように電極層11、13は周辺領域200の裏面側に露出しており、露出部分が電極7a、7bに接触して電力を取り出す回路が形成される。図9(c)に示される発光装置110では、図示しないが、約270°開いた有機EL素子1の外側面が発光面となる。
【0078】
図10は図8に示される有機EL素子1を用いた発光装置の他の例を示す。
【0079】
有機EL素子1は周辺領域200において、棒状部材7に固定される。即ち、図10(a)に示すように、断面が半円弧状の固定部材8により、有機EL素子1は、棒状部材7と固定部材8とにより挟持されて棒状部材7に固定される。固定部材8は有機EL素子1を棒状部材7に固定するとともに、電極層11、133を確実に棒状部材7の電極7a、7bに接続させることが出来るため、繰り返しの曲げに対しても確実に電力を伝達できる。図10(b)は発光装置を110を組み立てる前の状態を示す斜視図である。図示のように、有機EL素子1の電極層11、13が電極7a、7bにそれぞれ接触するように、有機EL素子1と棒状部材7とが接合される。そして、図7(b)の下方から固定部材8を結合することにより、図7(a)の発光装置110が形成される。図10の例では、斜線で示す発光面の側に、電極層11、13が露出して形成され、これら電極が棒状部材7の電極7a、7bにそれぞれ接続される。
【0080】
例えば、図10(c)に示されるように、棒状部材7を中心として、有機EL素子1を曲げることにより、第1の発光領域100−1と第2の発光領域100−2とが任意の角度に開いた発光装置110が形成される。
【0081】
図9、10で示したように棒状の部材を置くことで、有機ELに曲げばかりでなく、よじる(ねじる)方向での力が加わったときにも、発光部の形状を保ち、安定した発光が得られ、なおかつ屈曲面の耐久性も維持することができる。さらに電極を設けることで、耐久性を下げることなく電力のロスを防ぐことができる。
【0082】
図9,10に示す発光装置110の棒状部材7として、電極7a、7bの延長部を棒状部材7の長手方向に貫通させたものとすることも可能である。この構成では、棒状部材7の端部から電力を供給することが可能となる。これにより、発光装置110の補強機能と給電機能とを棒状部材7に持たせることが可能となり、部品点数を減らすことが可能となる。また、有機EL素子の交換や位置の変更、向きの変更が容易にできるようになる。
【0083】
さらに、電極層11、13の位置や大きさを標準化することが望ましい。この標準化により有機EL素子などの部品の交換が自由に行えるようになる。
【0084】
図11は、図1に示される基本構成を有する有機EL素子1を用いた発光装置の一例を示す。
【0085】
図11の有機EL素子1は、半球の表面を4分割した4個の分割領域300とこれら分割領域300を連結し、外部電源と接続する接続部400とで構成される。
【0086】
分割領域300は図示のように、それぞれ複数の発光領域100とこれら発光領域100を囲む周辺領域200を有する。分割領域300は更に、結合手段を有する。該結合手段は、複数の連結突起301及び孔302からなる。また、接続部400は、電極401、402、連結突起403、孔404及び駆動回路405を有する。
【0087】
電極401、402は非発光部に幅広に設定できるため、各発光部に安定して電力を供給することが出来る。連結突起403は、電源線のみならず、発光の制御のための信号線を含むことができる。また、有機EL素子を支持する部材としての機能を含むことができる。また、電源の電圧や電流などの仕様が異なる有機EL素子が今後販売されることが予想できるが、この連結突起の形状を電源の仕様に応じて異ならせることによって、間違った電源を供給して有機EL素子が点灯しない、あるいは破壊されるなどのトラブルを防ぐことが望ましい。駆動回路405は、供給電源を、発光に適する電圧または電流に変換する機能、過電流が流れたときにシャットダウンする機能、また、制御信号により、発光部の輝度や色を制御する機能、図示しない照度センサの信号を電源供給元に送信する機能などを兼ね備えていることが望ましい。また、有機ELの温度センサを持ち、その温度を発光の制御の参考に用いることが出来ることが望ましい。
【0088】
さらに、複数の有機ELを個別に制御することが出来るよう、固有のIDを持ち、それを送信できることが望ましい。前記IDは、たとえばIPv6のアドレスを出荷時に付与するなどの方法で設定することが出来る。
【0089】
以上のような機能を駆動回路405に持たせることにより、安全に、エネルギーの無駄なく、必要な場所に必要な明るさだけを供給することが可能となり、省エネルギーとなる。
【0090】
接続部400を円形に屈曲させ、連結突起403を孔404に挿入する。また、分割領域の連結突起301を対応する孔302に挿入する。このような組み立てにより、図11(b)に示される半球状の発光装置110が作成される。
【0091】
図11(a)から図11(b)に示す形状にするために、有機EL素子1を屈曲させる工程において、発光領域100及び周辺領域200がともに屈曲するが、周辺領域200がより大きく屈曲するので、発光領域100が屈曲により損傷を受けることはない。
【0092】
連結突起403は接続部400の他側を連結するとともに、発光装置110を外部電源に接続する端子を有する。また、これを2つ組み合わせて、全球型の照明を作ることも出来る。このように、従来は半球状または全球状の樹脂またはガラスの成形品の内部に白熱電球を配置するなどでしか実現できなかった、半球状または全球状の照明装置を、極めて軽量な面発光部材を用いて形成できるため、耐久性、剛性の高い支持部材を用いる必要がなくなり、装置の設置が容易となり、しかも省エネルギーの照明が得られる。
【0093】
図12はキュービック発光装置及びこれを形成する有機EL素子の例を示す。
【0094】
キュービックを形成する6個の面が発光領域100により形成される。図12(a)に示されるように、6個の発光領域100は周辺領域200により連結され、各面を構成する周辺領域200には結合手段としての連結突起301及び孔302が設けられている。
【0095】
連結突起301と対応する孔302とを連結することにより、図12(b)に示されるキュービック発光装置110が形成される。
【0096】
キュービック発光装置110は図示のように、支持部材9により壁等に据え付けられる。
【0097】
従来のアンビエント照明は、天井の高い位置に高出力の光源を配置し、わざわざ遠いところから机などを照らしていたために、無駄に使われていた光束が多かった。また従来光源が割れたりやけどすることがあり、ガラスや金属で構成されていたため、重かった。しかし、以上に示したように、四角柱状、半球状、全球状、およびキュービック型の発光装置は主に樹脂で構成され、安全で軽量のため、人のすぐ近くに配置できる。しかも、面状発光体であることで、点光源のLEDとは異なり、直視しても眩しいということが少ないため、発光部が視野内に見えても、照らされた物体が見づらいということが少ない。そのため、机のすぐ上に配置することで、光を有効に利用出来るため省エネとなる。もちろん、以上に示す立体形状に限られるものではなく、発光面の形状を適宜組み合わせて設計することにより、様々な立体物の形状を得ることができる。
【0098】
図13は、前記の条件b.曲げに対する耐久性:発光領域100<周辺領域200、を満たした発光装置の例を示す。
【0099】
図13の有機EL素子1は、図1に示された発光領域100及び周辺領域200に加えて、連結手段500を有する。
【0100】
連結手段500は、有機EL素子1を受け入れる取り付け部としての2個の差し込み孔501を有する。差し込み孔501に有機EL素子1を差し込むことにより、直角に交叉する発光面を有する発光装置110が形成される。連結手段500は外部電源を接続する端子502を有する。
【0101】
図13の例では、連結手段500が剛体からなっている。したがって、連結手段500は曲げに対して、極めて高い耐久性を有する。
【0102】
図14は、前記の条件bを蝶番機構により満たした発光装置110の例を示す。
【0103】
図14では、周辺領域を形成する連結手段500が、支持軸505に回転自在に取り付けられた2個の連結部材503により形成される。
【0104】
2個の連結部材503が挟む角度は任意であり、任意の角度で交叉する発光面を有する発光装置110が形成される。
【0105】
各連結部材503には、導光部材504が設けられており、導光部材504は透明樹脂で構成され。
【0106】
発光領域100で発生した光は、発光領域100の有機EL素子1の板面である発光面から放射されるが、図15に示される有機EL素子1の端面1bからも放射される。
【0107】
有機EL素子1は前記に説明したように樹脂かなる支持層10を有する。有機EL発光層12で発生した光は、有機EL素子1の発光面からのみでなく、有機EL素子1の端面1bからも放射される。しかも、支持層10の屈折率が空気よりも高く、光が表面で全反射するために、有機EL素子1の端面から放射される光の強度は、光取り出しの機能を発光面に付加してもなお、発光領域100の発光面からの光よりも高い。
【0108】
図15に示されるように、有機EL素子1の端部1bに導光部材504を対向して配置することにより、高い強度の光を有機EL素子1から取り出すことが可能となり、有機EL素子1の出力を高い効率で利用することが可能となる。
【0109】
以上説明したように、本発明により耐久性が向上した様々な立体形状を持つ発光装置を簡便に実現することが可能となる。本発明に係る発光装置は、従来の発光装置の置き換えにとどまらず、発光効率が高く、細かな制御が行えるため、安全で軽量であり、面状発光体のため、直視しても眩しいと言うことがない。したがって、人の身近に設置しても安全であり、かつまた、発光体の交換や位置、向きの変更等も安全にできる。これにより、光が有効に利用されるようになる。これらの利点は、従来のアンビエント照明では達成できなかったような発光装置の省エネルギー化や用途拡大を可能にするものである。
【符号の説明】
【0110】
1 有機EL素子
10 支持層
11、13 電極層
12 有機EL発光層
14 保護層
15 補強層
100 発光領域
110 発光装置
200 周辺領域
300 分割領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL発光層及び電極層を有し、電気エネルギーにより発光するシート状の複数の発光領域及び
該発光領域を囲み、前記発光領域間を連結するシート状の周辺領域を備え、
前記発光領域の剛性が前記周辺領域の剛性よりも高いことを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
前記周辺領域の曲げに対する耐久性が前記発光領域の曲げに対する耐久性よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項3】
前記周辺領域は前記電極層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記発光領域は、活性放射線により硬化処理された層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記発光領域は、加熱により硬化処理された層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記発光領域は、剛性を増す補強層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【請求項7】
前記補強層は、ラミネートにより形成されたことを特徴とする請求項6に記載の有機EL素子。
【請求項8】
前記補強層は、塗布により形成されたことを特徴とする請求項6に記載の有機EL素子。
【請求項9】
前記補強層は光取り出し機能を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【請求項10】
2層の前記電極層を有し、前記周辺領域において、2層の前記電極層は、前記有機EL素子により形成されるシートの厚み方向に互いに重ならないように配置されたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機EL素子及び棒状部材を備え、
前記棒状部材は、電極を有するとともに、前記電極層に前記電極が接続した状態で、前記棒状部材が前記有機EL素子を支持することを特徴とする発光装置。
【請求項12】
固定部材を有し、前記有機EL素子が前記固定部材により、前記棒状部材に固定されたことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記有機EL素子は、前記棒状部材を中心として、一方の側に第1の前記発光領域を、他方の側に第2の前記発光領域を有し、第1の前記発光領域と、第2の前記発光領域とは、任意の角度を形成することができることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
三次元体の表面が分割された領域を形成する複数の分割領域を備え、該分割領域は前記発光領域及び前記周辺領域を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機EL素子。
【請求項15】
前記分割領域間を結合する結合手段を有することを特徴とする請求項14に記載の有機EL素子。
【請求項16】
有機EL発光層及び電極層を有し、電気エネルギーにより発光する発光領域及び
該発光領域を囲む周辺領域を備えた有機EL素子並びに、
前記有機EL素子が取り付けられる取り付け部を有する連結手段を備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項17】
前記連結手段は、前記取り付け部を有する複数の連結部材及び該連結部材を回転可能に支持する支持軸を有することを特徴とする請求項16に記載の発光装置。
【請求項18】
前記連結手段は、前記有機EL素子の端部に対向して配置され、前記有機EL素子で発生した光を取り出す導光部材を有することを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の発光装置。
【請求項19】
有機EL発光層及び電極層を有し、電気エネルギーにより発光するシート状の複数の発光領域及び
該発光領域を囲み、前記発光領域間を連結するシート状の周辺領域を備えた有機EL素子を製造する方法において、
前記発光領域の剛性を前記周辺領域の剛性よりも高くする工程を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−225983(P2010−225983A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73513(P2009−73513)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】