説明

有機EL素子の製造方法、有機EL素子およびインク組成物

【課題】有機薄膜EL素子の簡便かつ容易な製造方法を提供すること。
【解決手段】正孔注入層(120)と発光層(106、107)を、陽極(101)および陰極(113)で狭持した構造の有機EL素子の製造方法であって、基板上の所定の領域に有機化合物からなる正孔注入材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布し正孔注入層(120)を形成する工程と、有機化合物からなる発光材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布し発光層(106、107)を形成する工程とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】ディスプレイ、表示光源などに用いられる電気的発光素子である有機EL素子の製造方法、有機EL素子、その正孔注入層や発光層の形成に用いられるインク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年液晶ディスプレイに替わる自発発光型ディスプレイとして発光層に有機物を用いた発光素子の開発が加速している。有機EL(エレクトロルミネセンス)素子における有機物からなる発光層の形成プロセスとして、Appl.Phys.Lett.51(12)、21 September 1987の913ページに示されているように低分子材料を蒸着法で成膜する方法と、 Appl.Phys.Lett.71(1)、7 July 1997の34ページから示されているように高分子材料を塗布する方法が主に開発されている。
【0003】カラー化の手段としては低分子系材料を用いる場合、所定パターンのマスク越しに異なる発光色の発光材料を所望の画素対応部分に蒸着し形成する方法が行われている。一方、高分子系材料を用いる場合、微細かつ容易にパターニングができることからインクジェット法を用いたカラー化が注目されている。インクジェット法による有機EL素子の作製については、例えば、特開平7−235378、特開平10−12377、特開平10−153987、特開平11−40358、特開平11−54270に開示されている。
【0004】さらに有機EL素子では、発光効率、耐久性を向上させるために、正孔注入層または正孔輸送層を陽極と発光層の間に形成することが提示されている(Appl.Phys.Lett.51、21 September 1987の913ページ)。従来、バッファ層や正孔注入層としては導電性高分子、例えばポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体(Nature,357,477、1992)を用い、スピンコート等の塗布法により膜を形成する。低分子系材料の正孔注入層または正孔輸送層として、フェニルアミン誘導体を蒸着で形成して用いることが多かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】有機EL素子において、正孔注入層及び発光層の積層構造を形成する際に、正孔注入層及び発光層を構成する有機薄膜を材料を無駄にせず、簡便にかつ微細にパターニングして成膜する手段が要求されている。
【0006】インクジェット方式は大変有効である。しかし、インクジェット法による安定な吐出性を満たし、かつ材料の特性を損なわずに機能膜として成膜できるインク組成物の調製は大変難しい課題である。有機EL素子の製造において、インク組成物については特開平11−40358、特開平11−54270に記載されている。これら刊行物では吐出性の点からDMF(ジメチルホルムアミド)や湿潤剤としてグリセリンやジエチレングリコール等の高沸点溶媒を使用した組成物が記載されている。DMFは熱、酸、アルカリに対する安定性に問題があり、グリセリンやジエチレングリコールといった高級アルコールは緑色発光材料としてポリパラフェニレンビニレン(PPV)を用いる場合、PPV前駆体と共役化の過程で反応し特性を阻害してしまう問題がある。また、特にグリセリンは除去するのが困難である。
【0007】また、パターニングの分解能を上げるため、ノズル径を小さくし、より小さなインクジェット液滴を形成しようとすると、液滴が小さくなればなるほどインクは乾きやすくなるといった問題も生じている。
【0008】さらに、インクジェット法のみならず塗布法で有機層を積層する場合、組成物の溶媒が下地層の有機膜を溶解する、いわゆる相溶性が問題となる。具体的には正孔注入層(または正孔輸送層)の上に発光層を形成する場合である。
【0009】そこで本発明の課題とするところは、簡便、短時間、低コストで特性の優れた有機積層膜からなる有機EL素子を製造する方法ならびにそれを可能にするインク組成物を提供するところにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、下記(1)〜(5)の有機EL素子の製造方法が提供される。
【0011】(1)正孔注入層と発光層を、陽極および陰極で狭持した構造の有機EL素子の製造方法であって、基板上の所定の領域に有機化合物からなる正孔注入材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布し正孔注入層を形成する工程と、有機化合物からなる発光材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布し発光層を形成する工程とを具備することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0012】当該方法は有機化合物からなる正孔注入層及び発光層の両方をインクジェット方式で形成したものである、かかる方法により、簡便な方法で全ての有機層を形成することができ、またいずれの層も高い性能とすることができる。
【0013】尚、本発明において、正孔注入層とは、陽極側から発光層に有効に正孔を注入させ得る層であり、正孔輸送機能をも有する。また、正孔注入層と共に、正孔輸送機能を有する正孔輸送層を別層で設けてもよい。
【0014】(2)有機EL素子が基板上に複数の画素を有する素子であり、基板上に該画素毎を隔てる隔壁を設け、該隔壁間の領域に前記正孔注入層及び前記発光層を形成することを特徴とする(1)の有機EL素子の製造方法。
【0015】当該(2)の方法により、異なる発光層が混合することなく、多色で且つ高精細の有機EL素子を容易に得ることができる。
【0016】(3)有機EL素子が基板上に複数の画素を有する素子であり、基板上に該画素毎を隔てる隔壁を設け、酸素ガスプラズマとフロロカーボンガスプラズマの連続処理工程を経て、前記正孔注入層と前記発光層を形成することを特徴とする(1)の有機EL素子の製造方法。
【0017】当該(3)の方法により、基板上に液滴の濡れ性の違いを付与することができ、インクジェット液滴の微細パターニングが可能となる。
【0018】(4)前記有機化合物からなる正孔注入材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布した後、該インク組成物の溶媒を除去して、正孔注入層を得ること、及び前記有機化合物からなる発光材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布した後、該インク組成物の溶媒を除去し、発光層を得ることを特徴とする(1)の有機EL素子の製造方法。
【0019】当該(4)の方法により所望の特性の正孔注入層及び発光層としての有機固体薄膜を形成することができる。
【0020】(5)前記有機化合物からなる正孔注入材料を含むインク組成物をインクジェット法により塗布した後、さらに熱処理により該インク組成物の材料を硬化あるいは共役化させて正孔注入層を得ること、及び前記有機化合物からなる発光材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布した後、さらに熱処理により該インク組成物の材料を硬化あるいは共役化させて発光層を得ることを特徴とする(1)の有機EL素子の製造方法。
【0021】当該(5)の方法により、優れた機能を有する正孔注入層および発光層を形成できる。
【0022】また、本発明によれば、下記(6)乃至(15)のインク組成物が提供される。(6)有機EL素子の製造においてインクジェット法により塗布される正孔注入材料又は発光材料を含むインク組成物であって、粘度が1〜20mPa・s、表面張力が20〜70mN/m 、インクジェットヘッドのノズル面を構成する材料に対する接触角が30〜170°であることを特徴とするインク組成物。
【0023】当該(6)のインク組成物によれば、特にインクジェット法により塗布する場合に、ノズル孔の目詰まり、インク液滴の飛行曲がりを押さえるとともに吐出を円滑にし、吐出量および吐出タイミングの制御が可能となり、インクジェット方式による安定な吐出が可能となる。
【0024】(7)固型分濃度が0.01〜10.0wt%であことを特徴とする(6)のインク組成物。
【0025】当該(7)のインク組成物によれば、インクジェット法により塗布する場合に、吐出性を損なうことなく所望の膜厚を得ることが可能となる。
【0026】(8)蒸気圧が0.001〜50mmHg(室温)の少なくとも一種の溶媒を含むことを特徴とする(6)又は(7)のインク組成物。
【0027】当該(8)のインク組成物によれば、インクジェットにより塗布する際に、インクの乾きを抑えることができ、ノズル孔での目詰まりをなくすことができる。
(9)前記インク組成物の溶媒が非プロトン性環状極性溶媒であることを特徴と(8)のいずれかのインク組成物。
【0028】当該(9)のインク組成物は、正孔注入材料あるいは発光材料の特性を損ねることなく、安定に分散または溶解し、インクジェット法により塗布する際に安定な吐出が可能となる。
【0029】(10)グリコールエーテル系酢酸を含むことを特徴とする(6)乃至(9)のいずれかのインク組成物。
【0030】当該(10)のインク組成物によれば、インクの乾きを抑えることができるだけでなく、成膜性を向上することができる。
【0031】(11)低級アルコールを20wt%以下含むことを特徴とする(6)乃至(10)のいずれかのインク組成物。
【0032】当該(11)のインク組成物によれば、特にインクジェット法により塗布する際に、インクの吐出性を損ねることなく表面張力および粘度を所望の値に調整することが可能となる。
【0033】(12)前記インク組成物が正孔注入材料を含むものであり、該正孔注入材料としてポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルフォン酸の混合物を含むことを特徴とする(6)のインク組成物。
【0034】当該(12)のインク組成物によれば、特にインクジェット法により塗布する際に、吐出性、成膜性ともに優れ、有機EL素子において高性能の正孔注入層を得ることが可能となる。
【0035】(13)更に熱硬化剤としてシランカップリング剤を含有することを特徴とする(12)のインク組成物。
【0036】当該(13)のインク組成物を用いれば、特にインクジェット法により塗布することで、有機EL素子において発光層との相溶を起こさない正孔注入層を形成することができる。
【0037】(14)前記インク組成物が発光材料を含むものであり、該発光材料として、ポリ(パラフェニレンビニレン)およびその誘導体の前駆体を含むことを特徴とする(6)のインク組成物。
【0038】当該(14)のインク組成物によれば、特にインクジェット法に塗布する際の吐出性、成膜性が優れ、有機EL素子において発光特性の優れた緑色または赤色発光層用インク組成物とすることができる。
【0039】(15)前記発光材料として低分子色素をドープしたものを使用することを特徴とする(14)のインク組成物。
【0040】当該(15)のインク組成物によれば、特にインクジェット法に塗布する際の吐出性、成膜性および発光特性の優れた緑色または赤色発光層用インク組成物とすることができる。
【0041】上記(6)乃至(15)のインク組成物は、夫々、(1)乃至(5)の有機EL素子の製造方法における正孔注入層や発光層の形成工程において好適に用いることができる。
【0042】また、本発明によれば、上記方法により得られた、高性能の有機EL素子が提供される。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0044】本発明のインクジェット方式による有機EL素子の製造方法とは、素子を形成する有機物からなる正孔注入材料、ならびに有機物からなる発光材料を溶媒に溶解または分散させたインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出させて例えば透明電極が形成され画素を構成する基板上に塗布し、正孔注入層ならびに発光層を形成する方法である。かかるインクジェット方式によれば、微細なパターニングを簡便にかつ短時間で行うことができ、多色化が可能である。また、必要な場所に必要量の材料を塗布すればいいので大面積の基板になっても材料を無駄にすることは無い。
【0045】本発明の有機EL素子に製造方法において使用されるインクジェット用ヘッドの構造を図1および図2に示す。当該インクジェット用ヘッド10は、例えばステンレス製のノズルプレート11と振動板13とを備え、両者は仕切部材(リザーバープレート)15を介して接合されている。ノズルプレート11と振動板13との間には、仕切部材15によって複数のインク室19と液溜り21とが形成されている。インク室19および液溜り21の内部は本発明のインク組成物で満たされており、インク室19と液溜り21とは供給口23を介して連通している。さらに、ノズルプレート11には、インク室19からインク組成物をジェト状に噴射するためのノズル孔25が設けられている。一方、インクジェット用ヘッド10には、液溜り21にインク組成物を供給するためのインク導入孔27が形成されている。また、振動板13のインク室19に対向する面と反対側の面上には、前記空間19の位置に対応させて圧電素子29が接合されている。
【0046】この圧電素子29は一対の電極31の間に位置し、通電すると圧電素子29が外側に突出するように撓曲する。これによってインク室19の容積が増大する。したがって、インク室19内に増大した容積分に相当するインク組成物が液溜り21から供給口23を介して流入する。次に、圧電素子29への通電を解除すると、該圧電素子29と振動板13はともに元の形状に戻る。これにより空間19も元の容積に戻るためインク室19内部のインク組成物の圧力が上昇し、ノズル孔25から基板に向けてインク組成物が噴出する。
【0047】なお、ノズル孔25の周辺部には、インク組成物の飛行曲がり・孔詰まりを防止するために撥インク層26が設けられている。すなわち、ノズル孔25の周辺部は、図2に示すように例えばNi−テトラフルオロエチレン共析メッキ層からなる撥インク層26が設けられている。
【0048】本発明の有機EL素子の製造方法において、前記インクジェット用ヘッドから吐出させて用いる正孔注入材料、あるいは発光材料を含むインク組成物は以下のような特性を有するものである。
【0049】インク組成物の粘度は好ましくは1〜20mPa・sであって、特に好ましくは2〜8mPa・sである。インク組成物の粘度が1mPa・s未満である場合、吐出量の制御が困難になるばかりでなく、固型分濃度が過少となり十分な膜を形成できないことがある。20mPa・sを超える場合、ノズル孔からインク組成物を円滑に吐出させることができない恐れがあり、ノズル孔を大きくする等の装置の仕様を変更する必要が生じることがある。更に粘度が大きい場合、インク組成物中の固型分が析出し易く、ノズル孔の目詰まり頻度が高くなる。
【0050】また、インク組成物の表面張力は好ましくは20〜70mN/mであって、特に好ましくは25〜45mN/mである。この範囲の表面張力にすることにより、インク吐出の際の飛行曲がりを抑えることができる。表面張力が20mN/m未満であると、インク組成物のノズル面上での濡れ性が増大するため、インク組成物を吐出する際、インク組成物がノズル孔の周囲に非対称に付着することがある。この場合、ノズル孔に付着した組成物と吐出しようとする付着物との相互間に引力が働くため、インク組成物は不均一な力により吐出されることになり目標位置に到達できない所謂飛行曲がりが生じ、もちろんその頻度も高くなる。また、70mN/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないためインク組成物の吐出量、吐出タイミングの制御が困難になる。
【0051】インクジェット用ヘッドに設けられたインク組成物を吐出するノズル面を構成する材料に対する接触角は好ましくは30°〜170°であり、特に好ましくは35°〜65°である。インク組成物がこの範囲の接触角を持つことによって、インク組成物の飛行曲がりを制御することができ、精密なパターンニングが可能となる。この接触角が30°未満である場合、インク組成物のノズル面を構成する材料に対する濡れ性が増大するため、表面張力の場合と同様、飛行曲がりが生じる。また。170°を超えると、インク組成物とノズル孔の相互作用が極小となり、ノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないためインク組成物の吐出量、吐出タイミングの制御が困難になる。
【0052】ここで飛行曲がりとは、インク組成物を前記ノズルから吐出させたとき、ドットの着弾した位置が、目標位置に対して50μm以上のずれを生じることをいう。主にノズル孔の濡れ性が不均一である場合やインク組成物の固型成分の付着による目詰まり等によって発生する。
【0053】インク組成物の固型分濃度は、組成物全体に対して0.01〜10.0wt%が好ましく、0.1〜5.0wt%が更に好ましい。固型分濃度が低すぎると必要な膜厚を得るために吐出回数が多くなってしまい量産効率が悪くなってしまう。また高すぎても粘度が高くなってしまい吐出性に影響を与える。
【0054】上記固型分は室温での蒸気圧が0.005〜50mmHgの少なくとも一つ以上の溶媒に溶解または分散していることが望ましい。渇きにくい溶媒を用いることによりインク組成物がノズル孔で乾燥し、増粘、凝集、固型分の付着が起こることを防ぐことができる。しかし、蒸気圧が0.005mmHgを下回るような溶媒は、成膜過程で溶媒の除去が困難であるため適さない。
【0055】このような溶媒としては、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)およびその誘導体などの非プロトン性環状極性溶媒、またはカルビトールアセテート(CA)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのグリコールエーテル系酢酸が挙げられる。CA,BCA等の溶媒は成膜性をあげる点でも有効である。
【0056】一方、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、プロピルアルコール等の低級アルコールは表面張力、粘度の調製に有効であるが、揮発性が高いため、20wt%以下であることが望ましい。
【0057】尚、上述の特性は、有機EL素子において正孔輸送層を形成する場合の同層を構成する正孔輸送材料の特性としても好適である。
【0058】以下、本発明を実施例に沿って更に詳細に説明する。
【0059】(実施例1)実施例1は有機EL素子の製造においてインクジェット法により塗布する正孔注入層形成用インク組成物に関する。
【0060】本発明では、正孔注入材料として、ポリチオフェン誘導体であるPEDT(ポリエチレンジオキシチオフェン)
【0061】
【化1】


【0062】とPSS(ポリスチレンスルフォン酸)
【0063】
【化2】


【0064】の混合物を用いた。これらはバイトロンPとしてバイエル社から購入することができる。正孔注入材料(又は正孔輸送層の材料となる正孔輸送材料)としては、ポリアニリン、ポルフィリン化合物、ピリジン誘導体などが挙げられるが、熱的に耐久性のある高分子で、水などの極性溶媒に分散できるバイトロンPがインクジェット方式には適している。バイトロンPを用いて表1に示すインク組成物を調製した。
【0065】
【表1】


【0066】発光層との相溶を防ぐため、加熱処理により架橋するシランカップリング剤としてγ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを用い、導電性高分子と同重量添加した。最終的なインク組成物の固型分濃度は0.16wt%であった。
【0067】表2に上記組成物の粘度、表面張力、インクジェット用ヘッドのインク吐出ノズル面を構成する材料に対する接触角、吐出性、パターニング性および成膜性を評価した結果を示す。インク組成物の物理的性質および吐出特性については以下の方法で評価した。
【0068】粘度:E型粘度計により20℃における値を測定した。
【0069】表面張力:プレート法により同じく20℃における値を測定した。
【0070】接触角:インクジェット用ヘッドのインク吐出ノズル面を構成する材料( Ni−テトラフルオロエチレン共析メッキ撥水層)上での静的接触角として測定した。
【0071】吐出特性:インクジェットプリンター用ヘッド(エプソン社製MJ−930C)を用いた。飛行曲がりはヘッドと基板の距離を0.6mmにした時の基板上でのインク液滴の着弾ばらつきを測定した。ノズル孔の目詰まり頻度として、インク組成物を連続吐出(周波数7200Hz)し、析出したインク組成物の固型分等によりノズル孔が目詰まりし、吐出不能になった状態に至るまでに要する時間を測定した。
【0072】パターニング性、成膜性:図3(a)及び(b)に示したテストセルに吐出し、室温、真空中で溶媒を除去した後、大気中200℃、10分熱処理して形成された膜の膜質(凝集、平坦性等)を顕微鏡で観察した。テストセルはITO基板41上に形成した2μm厚ポリイミド40を30μm径で開口した画素(40μmピッチ)を有するものである。吐出前に、酸素ガスプラズマとフロロカーボンガスプラズマの連続処理を行い、ポリイミド表面は撥水化、ITO表面は親水化したものを用いた。尚、前記プラズマ処理は真空中、大気中のいずれの雰囲気であってもよい。そして、インクジェット装置42のインクジェットヘッド43からインク組成物44を開口部に吐出し膜を得て評価した。結果を下記表2に示す。
【0073】
【表2】


【0074】表2に示すように、吐出性、パターニング性、成膜性とも十分、実用レベルに達するものであった。尚、表1の組成中例えば、メタノール(MeOH)、イソプロピルアルコール(IPA)の添加量が20%を超える組成物を調製して上記同様に成膜し、評価したところ、または、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン(DMI)を添加せず水で置き換えた組成物を調製して上記同様に成膜して評価したところ、上記物理的な値を満たしても、インク組成物の渇きにより吐出中、目詰まりを起こしてしまった。
【0075】(実施例2)実施例2は発光層用インク組成物に関する。
【0076】本発明では、緑色発光材料としてポリ(パラフェニレンビニレン)(PPV)を用いた。
【0077】発光層を形成し得る有機化合物としては、PPVの他に、PTV(ポリ(2、5−チエニレンビニレン))等のポリアルキルチオフェン、PFV(ポリ(2、5−フリレンビニレン))、ポリパラフェニレン、ポリアルキルフルオレン等のポリアリレンビニレン、ピラゾリンダイマー、キノリジンカルボン酸、ベンゾピリリウムパークロレート、ベンゾピラノキノリジン、フェナントロリンユウロピウム錯体等が挙げられ、これらを1種または2種以上混合して用いることができる。 これらのなかでも高分子有機化合物からなるものが好ましい。高分子有機化合物は成膜性に優れ、発光層の耐久性は極めて良好である。高分子系材料は分子設計上幅広い自由度を持ち、EL発光素子の合理的設計が可能である。また、可視領域の禁止帯幅と比較的高い導電性を有しており、なかでも共役系高分子はこのような傾向が顕著である。発光層材料としては、共役系高分子そのもの、あるいは加熱等により共役化(成膜)する共役系高分子の前駆体が用いられる。これらのなかでもPPVまたはその誘導体が特に好ましい。 PPV誘導体の前駆体として、MO−PPV(ポリ(2、5−ジメトキシ−1、4−フェニレンビニレン))前駆体、CN−PPV(ポリ(2、5−ビスヘキシルオキシ−1、4−フェニレン−(1−シアノビニレン)))前駆体等が挙げられる。PPVまたはその誘導体の共役化(成膜)前の前駆体は、水あるいは極性溶媒に可溶であり、インクジェット方式によるパターン形成に適している。さらに、PPVまたはその誘導体は強い蛍光を持ち、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非局在化している導電性高分子でもあるためPPVの薄膜は正孔注入輸送層としても機能し、高性能の有機EL素子を得ることができる。
【0078】
【化3】


【0079】ポリ(パラフェニレンビニレン)前駆体(水/MeOH=5/95混合溶液)を用いて表3に示すインク組成物を調製した。固型分濃度は0.3wt%であった。
【0080】
【表3】


【0081】表4に上記組成物の粘度、表面張力、インクジェット用ヘッドのインク吐出ノズル面を構成する材料に対する接触角、吐出性、パターニング性および成膜性を評価した結果を示す。インク組成物の物理的性質および吐出特性については実施例1と同様の方法で評価した。成膜性は吐出後、室温、真空中で溶媒を除去し、窒素雰囲気中、150℃、4時間処理したもので評価した。
【0082】
【表4】


【0083】表4に示すように、吐出性、パターニング性、成膜性とも十分、実用レベルに達するものであった。これに対し、例えば、 DMIをジメチルホルムアミド(DMF)で置き換えたあるいは、ブチルカルビトールアセテート(BCA)をグリセリンで置き換えたインク組成物を調製し上記同様の成膜及び評価を行ったところ、吐出性に問題はなかったが、発光効率が低く、発光色も短波長側にシフトしたものであった。固型分濃度を0.3wt%より濃くしたい場合は、前駆体溶液を20wt%以上添加するとMeOH含有量が増え、インクが渇きやすくなり、飛行曲がりや目詰まりを生じるため、前駆体溶液を溜去して濃縮したものを用いた。
【0084】(実施例3)実施例3は発光層用インク組成物に関する。
【0085】本実施例では、実施例2で用いたPPV前駆体インク組成物に赤色発光材料として低分子蛍光色素であるローダミン101を添加したものを用いた。
【0086】低分子系の蛍光色素をドープする方法は、発光層の発光特性を変化させることができ、例えば、発光効率の向上、または発光波長をかえる手段として大変有効である。蛍光色素のドープにより色純度の高い赤色、緑色発光を得ることができる。
【0087】赤色発光層に用いられる蛍光色素としては、レーザー色素のDCMあるいはローダミンまたはローダミン誘導体、ペリレン等を用いることができる。これらの蛍光色素は、低分子であるため溶媒に可溶であり、PPV等と相溶性がよく、均一で安定した発光層の形成が容易である。ローダミン誘導体蛍光色素としては、例えばローダミンB,ローダミンBベース、ローダミン6G,ローダミン101過塩素酸塩等が挙げられこれらを2種以上混合したものであってもよい。
【0088】また、緑色発光層に用いられる蛍光色素としては、キナクリドン、ルブレン、DCJTおよびそれらの誘導体が挙げられる。これらの蛍光色素は、上記赤色蛍光色素と同様、低分子であるため溶媒に可溶であり、またPPV等と相溶性がよく発光層の形成が容易である。
【0089】本実施例では、下記表5に示す赤色発光層用インク組成物を調製した。
【0090】
【表5】


【0091】表6に上記組成物の粘度、表面張力、インクジェット用ヘッドのインク吐出ノズル面を構成する材料に対する接触角、吐出性、パターニング性および成膜性を評価した結果を示す。インク組成物の物理的性質および吐出特性、成膜性については実施例2と同様の方法で評価した。
【0092】
【表6】


【0093】表6に示すように、吐出性、パターニング性、成膜性とも十分、実用レベルに達するものであった。ローダミン101のドープ量はPPV前駆体に対し1.5wt%添加した場合、もっとも効率よく、赤色発光を示した。
【0094】(実施例4)実施例4はインクジェット方式による有機EL素子の製造方法に関する。図4は3色のフルカラー有機EL素子の製造工程を示したものである。
【0095】透明基板104は、支持体であると同時に光を取り出す面として機能する。従って、透明基板104は、光の透過特性や熱的安定性を考慮して選択される。透明基板材料としては、例えばガラス基板、透明プラスチック等が挙げられるが、耐熱性に優れることからガラス基板が好ましい。
【0096】まず、透明基板104上に、画素電極101、102、103を形成した。形成方法としては、例えばフォトリソグラフィー、真空蒸着、スパッタリング法、パイロゾル法等が挙げられるが、フォトリソグラフィーによることが好ましい。画素電極としては透明画素電極が好ましく、透明画素電極を構成する材料としては、酸化スズ膜、ITO膜、酸化インジウムと酸化亜鉛との複合酸化物膜等が挙げられる。
【0097】次に隔壁(バンク)105を感光性ポリイミドで形成し、上記の各透明画素電極間を埋めた。これによりコントラストの向上、発光材料の混色の防止、画素と画素との間からの光洩れ等を防止することができる。
【0098】隔壁105を構成する材料としては、EL材料の溶媒に対し耐久性を有するものえあれば特に限定されないが、フロロカーボンガスプラズマ処理によりテフロン化できることから、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、感光性ポリイミド等お有機材料が好ましい。液状ガラス等の無機材料を下層にした積層隔壁であってもよい。また、隔壁105は上記材料にカーボンブラック等を混入してブラックレジストとしてもよい。この隔壁105の形成方法としては、例えばフォトリソグラフィー等が挙げられる。
【0099】正孔注入層(更に正孔輸送層)用インク組成物を塗布する直前に、上記基板の酸素ガスとフロロカーボンガスプラズマの連続プラズマ処理を行った。これによりポリイミド表面は撥水化、ITO表面は親水化され、インクジェット液滴を微細にパターニングするための基板側の濡れ性の制御ができる。プラズマを発生する装置としては、真空中でプラズマを発生する装置でも、大気中でプラズマを発生する装置でも同様に用いることができる。
【0100】次に、実施例1で挙げた正孔注入層用インク組成物をインクジェットプリント装置109のヘッド110(エプソン社製MJ−930C)から吐出し、各画素電極101、102、103上にパターニング塗布を行った。塗布後、真空中(1torr)、室温、20分という条件で溶媒を除去し、その後、大気中、200℃(ホットプレート上)、10分の熱処理により、実施例2、3で挙げた発光層用インク組成物と相溶しない正孔注入層120を形成した。膜厚は40nmであった。本実施例では各画素とも共通の正孔注入層を形成したが、場合によっては各発光層毎で発光層に適した正孔注入材料(または正孔輸送材料)を用いて形成しても良い。
【0101】さらに実施例3で挙げた赤色発光層用インク組成物、ならびに実施例2で挙げた緑色発光層用インク組成物をインクジェット方式により正孔注入層120上を介して画素電極101ならびに102上にパターニン状に塗布した。塗布後、真空中(1torr)、室温、20分という条件で溶媒を除去し、続けて窒素雰囲気中、150℃、4時間の熱処理により共役化させ赤色発光層106、緑色発光層107を形成した。膜厚は50nmであった。熱処理により共役した発光層は溶媒に不溶である。
【0102】かかるインクジェット方式によれば、微細なパターニングを簡便にかつ短時間で行うことができる。また、インク組成物の固型分濃度および吐出量を変えることにより膜厚を変えることが可能である。
【0103】また、発光層を形成する前に正孔注入層120に酸素ガスとフロロカーボンガスプラズマの連続プラズマ処理を行ってもよい。これにより正孔注入または正孔輸送層120上にフッ素化物層が形成され、イオン化ポテンシャルが高くなることにより正孔注入効率が増し、発光効率の高い有機EL素子を提供できる。
【0104】次いで、青色発光層108を赤色発光層106、緑色発光層107および正孔注入層120上を介して画素電極103上に形成した。これにより、赤、緑、青の3原色を形成するのみならず、赤色発光層および106緑色発光層107と隔壁105との段差を埋めて平坦化することができる。これにより、上下電極間のショートを確実に防ぐことができる。青色発光層の膜厚を調整することで、青色発光層は赤色発光層および緑色発光層との積層構造において、電子注入輸送層として作用し、青色には発光しない。
【0105】かかる青色発光層108の形成方法としては特に限定されず、湿式法として一般的なスピンコート法またはインクジェット法でも成膜可能である。本実施例では、ポリジオクチルフルオレンのキシレン溶液をスピンコートして、膜厚45nmの青色発光層108を形成した。
【0106】青色発光層としては他にポリフルオレン誘導体であるポリジヘキシルフルオレンや、その他の重合基との共重合体が挙げられ、青色蛍光色素や電子注入輸送能をもつ有機化合物を添加してもよい。
【0107】電子注入輸送層を形成し得る有機化合物としては、PBD,OXD−8等のオキサジアゾール誘導体、DSA、アルミキノール錯体、Bebq、トリアゾール誘導体、アゾメチン錯体、ポルフィン錯体等が挙げられる。
【0108】本実施例のように、有機発光層のうち2色をインクジェット方式により形成し、他の一色を従来の塗布方法で形成することにより、インクジェット方式にあまり適さない発光材料であっても、インクジェット方式に用いられる他の有機発光材料と組み合わせることによりフルカラー有機EL素子を形成することができるため、素子設計の自由度が増す。インクジェット方式以外の従来の塗布方法としては、印刷法、転写法、ディッピング法、スピンコート法、キャスト法、キャピラリー法、ロールコート法、バーコート法等が挙げられる。
【0109】最後に、陰極(対向電極)113を形成した。陰極113としては金属薄膜電極が好ましく、陰極を構成する金属としては、例えばMg、Ag、Al、Li等が挙げられる。また、これらの他に仕事関数の小さい材料を用いることができ、例えばアルカリ金属や、Ca等のアルカリ土類金属およびこれらを含む合金を用いることができる。また金属のフッ素化物も適応できる。このような陰極113は蒸着法およびスパッタ法等により形成することができる。本実施例では、Caを真空加熱蒸着法で100nm、さらにAlをスパッタ法で1200nm積層して陰極とした。
【0110】さらに陰極113の上に保護膜を形成してもよい。保護膜を形成することにより、陰極113および各発光層106、107、108の劣化、損傷および剥離等を防止しすることができた。
【0111】このような保護膜の構成材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、液状ガラス等が挙げられる。また、保護膜の形成方法としては、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法、キャピラリー法等が挙げられる。
【0112】本実施例で得られた有機EL素子では、各色の画素とも5V以下の低電圧でも100cd/m以上の輝度が得られた。また、インクジェット方式により形成した赤色画素、緑色画素においては、発光効率がそれぞれ0.15lm/W、0.25lm/Wであり、発光寿命(一定電流を印加し、連続発光させた場合、初期輝度に対し50%低下するまでの時間)も2000時間以上であった。
【0113】上記同様の材料を用い、スピンコートで正孔注入層および発光層を同じ積層構造で形成した赤色発光素子、緑色発光素子のものと同程度であった。このように、インクジェット方式においても優れた特性を示し、スピンコート品に劣らない素子を形成することができた。
【0114】
【発明の効果】以上本発明によれば、正孔注入層及び発光層の両方をインクジェット法で形成し、低コストで簡易迅速に有機EL素子を得ることができる。また、吐出性、パターニング性および成膜性に優れた正孔注入用インク組成物および発光材層用インク組成物を提供することができた。また、該インク組成物を用い、インクジェット方式により正孔注入または正孔輸送層および発光層を簡便かつ容易にパターン形成でき、積層構造からなる特性の優れた高精細フルカラー有機EL素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機薄膜EL素子の製造に用いられるインクジェット用プリンターヘッドの構造の一例を示す平面斜視図である。
【図2】本発明の有機薄膜EL素子の製造に用いられるインクジェット用プリンターヘッドのノズル部分の構造の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例において、インク組成物のパターニング性、成膜性評価に用いるテストセルを示す図である。
【図4】本発明の有機EL素子の製造方法の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 インクジェット用ヘッド
11 ノズルプレート
13 振動板
15 仕切部材
19 インク室
21 液溜り
23 供給口
25 ノズル孔
26 撥インク層
27 インク導入孔
29 圧電素子
31 電極
33 ノズル面
40 ポリイミド隔壁
41 ITO
42 インクジェットプリント装置
43 インクジェットヘッド
44 インク組成物
101 画素電極(赤)
102 画素電極(緑)
103 画素電極(青)
104 透明基板
105 隔壁
106 発光層(赤)
107 発光層(緑)
108 発光層(青)
109 インクジェットプリント装置
110 インクジェトヘッド
113 陰極
120 正孔注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 正孔注入層と発光層を、陽極および陰極で狭持した構造の有機EL素子の製造方法であって、基板上の所定の領域に有機化合物からなる正孔注入材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布し正孔注入層を形成する工程と、有機化合物からなる発光材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布し発光層を形成する工程とを具備することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項2】 前記有機EL素子が基板上に複数の画素を有する素子であり、基板上に該画素毎を隔てる隔壁を設け、該隔壁間の領域に前記正孔注入層及び前記発光層を形成することを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項3】 前記有機EL素子が基板上に複数の画素を有する素子であり、基板上に該画素毎を隔てる隔壁を設け、酸素ガスプラズマとフロロカーボンガスプラズマの連続処理工程を経て、前記正孔注入層と、前記発光層を形成することを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項4】 前記有機化合物からなる正孔注入材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布した後、該インク組成物の溶媒を除去して、正孔注入層を得ること、及び前記有機化合物からなる発光材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布した後、該インク組成物の溶媒を除去し、発光層を得ることを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項5】 前記有機化合物からなる正孔注入材料を含むインク組成物をインクジェット法により塗布した後、さらに熱処理により該インク組成物の材料を硬化あるいは共役化させて正孔注入層を得ること、及び前記有機化合物からなる発光材料を含むインク組成物をインクジェット方式により塗布した後、さらに熱処理により該インク組成物の材料を硬化あるいは共役化させて発光層を得ることを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項6】 前記正孔注入材料又は前記発光材料を含むインク組成物の粘度が1〜20mPa・s、表面張力が20〜70mN/m 、インクジェットヘッドのノズル面を構成する材料に対する接触角が30〜170°であることを特徴とする請求項1乃至5記載のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項7】 前記インク組成物の固型分濃度が0.01〜10.0wt%であることを特徴とする請求項6記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項8】 前記インク組成物の蒸気圧が0.001〜50mmHg(室温)の少なくとも一種の溶媒を含むことを特徴とする請求項6又は7記載の有機EL素子。
【請求項9】 前記インク組成物の溶媒が非プロトン性環状極性溶媒であることを特徴とする請求項8記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項10】 前記インク組成物がグリコールエーテル系酢酸を含むことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項11】 前記インク組成物が低級アルコールを20wt%以下含むことを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項12】 前記インク組成物が正孔注入材料を含むものであり、該正孔注入材料としてポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルフォン酸の混合物を含むことを特徴とする請求項6記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項13】 更に熱硬化剤としてシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項12記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項14】 前記インク組成物が発光材料を含むものであり、該発光材料として、ポリ(パラフェニレンビニレン)およびその誘導体の前駆体を含むことを特徴とする請求項6記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項15】 前記発光材料として低分子色素をドープしたものを使用することを特徴とする請求項14記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項16】 請求項1乃至15のいずれかに記載の方法により製造される有機EL素子。
【請求項17】 有機EL素子の製造においてインクジェット法により塗布される、正孔注入材料又は発光材料を含むインク組成物であって、粘度が1〜20mPa・s、表面張力が20〜70mN/m 、インクジェットヘッドのノズル面を構成する材料に対する接触角が30〜170°であることを特徴とするインク組成物。
【請求項18】 固型分濃度が0.01〜10.0wt%であことを特徴とする請求項17記載のインク組成物。
【請求項19】 蒸気圧が0.001〜50mmHg(室温)の少なくとも一種の溶媒を含むことを特徴とする請求項17又は18記載のインク組成物。
【請求項20】 前記インク組成物の溶媒が非プロトン性環状極性溶媒であることを特徴と請求項19記載のインク組成物。
【請求項21】 前記グリコールエーテル系酢酸を含むことを特徴とする請求項17乃至20のいずれかにインク組成物。
【請求項22】 低級アルコールを20wt%以下含むことを特徴とする請求項17乃至21記載のインク組成物。
【請求項23】 前記インク組成物が正孔注入材料を含むものであり、該正孔注入材料としてポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルフォン酸の混合物を含むことを特徴とする請求項17記載のインク組成物。
【請求項24】 更に熱硬化剤としてシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項17記載のインク組成物。
【請求項25】 前記インク組成物が発光材料を含むものであり、該発光材料として、ポリ(パラフェニレンビニレン)およびその誘導体の前駆体を含むことを特徴とする請求項17記載のインク組成物。
【請求項26】 前記発光材料として低分子色素をドープしたものを使用することを特徴とする請求項25記載のインク組成物。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−323276(P2000−323276A)
【公開日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−134320
【出願日】平成11年5月14日(1999.5.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】