説明

有機EL素子の製造方法及び製造装置

【課題】発光色の変動が抑制された、高品質な有機EL素子を製造し得る有機EL素子の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】電極層の形成された帯状の基材を供給し、該基材の非電極層側を回転駆動するキャンロール表面に当接させて該基材を移動させつつ、前記キャンロールと対向するように配された蒸着源のノズルから気化された有機層形成材料を吐出させて、前記基材の電極層側に有機層を形成する蒸着工程を含む有機EL素子の製造方法であって、前記蒸着源として、前記キャンロール側に突設され、先端部が前記キャンロールの軸方向両端部に当接する突出部材が備えられたものを用い、弾性体を介して前記突出部材が前記キャンロールに当接する方向に前記蒸着源を付勢しつつ、前記蒸着工程を実施することを特徴とする有機EL素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に形成された電極層上に有機層を有し、該有機層から光を放出する有機EL素子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の低消費電力の発光表示装置に用いられる素子として有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子が注目されている。有機EL素子は、基本的には、有機発光材料から成る発光層を含む少なくとも1層の有機層と一対の電極とを有している。かかる有機EL素子は、有機発光材料に由来して多彩な色の発光が得られ、また、自発光素子であるため、テレビジョン(TV)等のディスプレイ用途として注目されている。
【0003】
有機EL素子は、発光層を含む少なくとも1層の有機層が互いに反対電極を有する2つの電極層に挟持されて構成されており(サンドイッチ構造)、各有機層は、それぞれ数nm〜数十nmの有機膜から構成されている。また、電極層で挟まれた有機層は、基材上に支持されるようになっており、基材上に陽極層(電極層)、有機層、陰極層の順に積層されることによって有機EL素子が形成されるようになっている。また、有機EL素子が複数の有機層を有する場合、基材上に陽極層を形成した後、陽極層上に各有機層を順次積層し、積層された有機層上に陰極層を形成することによって、有機EL素子が形成されるようになっている。
【0004】
このような有機EL素子の製造方法において、基材に形成された陽極上に各有機層を成膜(形成)する方法としては、一般的に真空蒸着法や塗布法が知られているが、これらのうち、各有機層を形成するための材料(有機層形成材料)の純度を高めることができ、高寿命が得られ易いことから、真空蒸着法が主として用いられている。
【0005】
上記した真空蒸着法では、蒸着装置の真空チャンバー内において基材と対向する位置に設けられた蒸着源を用いて蒸着を行うことで有機層が形成されるようになっており、各有機層に対応する蒸着源が設けられている。具体的には、蒸着源に配置された加熱部で各有機層形成材料を加熱してこれを気化させ、気化された有機層形成材料(気化材料)を上記蒸着源に設けられたノズルから放射状に吐出して、基材に形成された陽極層上に付着させることにより、該陽極層上に有機層形成材料を蒸着する。
【0006】
かかる真空蒸着法においては、いわゆるバッチプロセスやロールプロセスが採用されている。バッチプロセスとは、陽極層が形成された基材1枚ごとに陽極層上に有機層を蒸着するプロセスである。また、ロールプロセスとは、陽極層が形成されロール状に巻き取られた帯状の基材を連続的に(いわゆるロールトゥロールで)繰り出し、繰り出された基材を回転駆動するキャンロールの表面で支持してその回転と共に移動させつつ、陽極層上に連続的に各有機層を蒸着し、各有機層が蒸着された基材をロール状に巻き取るプロセスである。これらのうち、低コスト化を図る観点から、ロールプロセスを用いて有機EL素子を製造することが望ましい。
【0007】
しかし、このように真空蒸着法においてロールプロセスを採用した場合には、発光色が所望の発光色から変動(バラツキ)してしまい、低品質の有機EL素子が製造される場合がある。
【0008】
特に、真空蒸着法では長寿命化の観点から発光層に取り込まれる水分量を少なくすべく、蒸着源と基材との間の距離を小さくする技術が提案されているが(特許文献1参照)、このような技術では、上記した発光色が所望の発光色から変動した低品質の有機EL素子が、より一層製造され易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−287996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、発光色の変動が抑制された、高品質な有機EL素子を製造し得る有機EL素子の製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討したところ、得られる有機EL素子の発光色の変動は、基材上に成膜(形成)される有機層の厚みの変動に起因して生じ、この厚みの変動は、蒸着時における蒸着源のノズル(より詳細にはノズルの開口縁)と基材表面との距離(蒸着源−基材間距離)の変動によって生じることが判明した。
【0012】
上記した通り、通常、有機EL素子における各有機層の厚みは数nm〜数十nm程度であり、わずかな厚みの変動が発光色に大きな影響を及ぼし得る。また、蒸着源−基材間距離は、キャンロールの偏心、膨張や表面状態等によって、蒸着源に対するキャンロール表面の位置が変動し、蒸着源−基材間距離の変動は数十μm程度にまで及び得る。そして、例えば蒸着源−基材間距離が2mmのとき、当該距離が20μm(1%)変動すると有機層の厚みが2%変動する、というように、蒸着源−基材間距離の変動率に比較して、該変動によって引き起こされる有機層の厚みの変動率の方が遥かに大きくなることが判明した。
【0013】
上記に鑑み、蒸着時において、蒸着源と基材が支持されるキャンロールとの距離を一定に維持することによって、蒸着源−基材間距離を一定に維持し、有機層の厚みの変動を抑制して、発光色の変動が抑制された有機EL素子を製造し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明に係る有機EL素子の製造方法は、
電極層の形成された帯状の基材を供給し、該基材の非電極層側を回転駆動するキャンロール表面に当接させて該基材を移動させつつ、前記キャンロールと対向するように配された蒸着源のノズルから気化された有機層形成材料を吐出させて、前記基材の電極層側に有機層を形成する蒸着工程を含む有機EL素子の製造方法であって、
前記蒸着源として、前記キャンロール側に突設され、先端部が前記キャンロールの軸方向両端部に当接する突出部材が備えられたものを用い、弾性体を介して前記突出部材が前記キャンロールに当接する方向に前記蒸着源を付勢しつつ前記蒸着工程を実施することを特徴とする。
【0015】
これにより、キャンロールの表面位置が変動しても、弾性体の付勢により、蒸着源を、突出部材の先端とキャンロールとが常に当接しているように移動させることができる。従って、蒸着源のノズルとキャンロールの表面との相対的な位置関係が維持されて、蒸着源のノズルとキャンロールの表面との距離を一定に維持しつつ、蒸着源から基材上に有機層を形成することができる。
よって、蒸着源−基材間距離の変動に起因する有機層の厚みの変動を抑制することができ、発光色の変動が抑制された、高品質な有機EL素子を得ることができる。
【0016】
また、本発明は、前記突出部材は、前記キャンロールの表面と当接する周面を有し且つ前記キャンロールの回転に伴って回転するローラ部材が先端に軸支されてなることが好ましい。
【0017】
これにより、突出部材の先端とキャンロールとの間に発生する摩擦力を低減することができるため、摩擦に起因する振動の発生や先端の磨耗の発生等を防止することができる。従って、蒸着源−基材間距離をより一定に維持し易くすることができる。
【0018】
また、本発明は、前記キャンロールの軸方向両端縁は、それぞれ前記軸方向外側に突出する環状突出部として形成されてなり、前記突出部材は、前記環状突出部の内周面と当接する周面を有し且つ前記キャンロールの回転による前記内周面の移動に従って回転するローラ部材が先端部に軸支されてなることが好ましい。
【0019】
これにより、突出部材の先端とキャンロールとの間に発生する摩擦力を低減することができるため、摩擦に起因する振動の発生や先端の磨耗の発生等を防止することができる。従って、蒸着源−基材間距離を一定に維持し易くすることができる。また、キャンロールの表面とローラ部材とが当接しないため、かかる当接によって不意に生じた異物が基材に付着したり、基材が不意に損傷するおそれを回避することができる。
【0020】
また、本発明は、前記ノズルと前記キャンロールの表面との距離が15mm以下であることが好ましい。
【0021】
15mm以下とすることにより、含まれる水分量が少なく長寿命の有機層を形成できるとともに、15mm以下というように有機層の厚みがより変動し易い場合においても、蒸着源のノズルとキャンロールの表面との距離を一定に維持し、これにより、蒸着源−基材間距離を一定に維持しつつ蒸着工程を行うことができるため、より効果的である。
【0022】
また、本発明に係る有機EL素子の製造装置は、
電極層の形成された帯状の基材を供給する基材供給手段と、供給された該基材の非電極層側で当接しつつ該基材の移動に伴って回転駆動するキャンロールと、該キャンロールと対向するように配され、ノズルから気化された有機層形成材料を吐出して、キャンロールに当接した前記基材の前記電極層側に有機層を形成する蒸着源とを備えてなる有機EL素子の製造装置であって、
前記蒸着源は、前記キャンロール方向に突設され、先端部が前記キャンロールの軸方向両端部に当接する突出部材を備え、弾性体によって該突出部材を前記キャンロールに当接するように付勢されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上の通り、本発明によれば、発光色の変動が抑制された、高品質な有機EL素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造装置を模式的に示す概略側面断面図
【図2】蒸着源及びキャンロールの周辺の構成を模式的に示す概略側面図
【図3】図2のAA’断面図
【図4】有機EL素子の層構成を模式的に示す概略側面断面図
【図5】本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の製造装置において蒸着源及びキャンロールの周辺の構成を模式的に示す概略側面図
【図6】図5のBB’断面図
【図7】比較例1における蒸着源及びキャンロールの周辺の構成を模式的に示す概略断面図
【図8】比較例2における蒸着源及びキャンロールの周辺の構成を模式的に示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明に係る有機EL素子の製造方法及び有機EL素子の製造装置について図面を参照しつつ説明する。
【0026】
まず、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の製造装置を模式的に示す概略側面断面図であり、図2は、蒸着源及びキャンロールの周辺の構成を模式的に示す概略側面図であり、図3は、図2のAA’断面図であり、図4は、有機EL素子の層構成を模式的に示す概略側面断面図である。
【0028】
図1に示すように、有機EL素子の製造装置1は、真空チャンバー3を有する蒸着装置であり、真空チャンバー3内には、大まかには、基材供給手段たる基材供給装置5と、キャンロール7と、蒸着源9と、基材回収装置6とが配置されている。真空チャンバー3は、不図示の真空発生装置により、その内部が減圧状態にされ、内部に真空領域を形成することができるようになっている。
【0029】
前記基材供給装置5としては、ロール状に巻き取られた帯状の基材21を繰り出す供給ローラ5が備えられている。前記基材回収装置6としては、繰り出された基材21を巻き取る巻取ローラ6が備えられている。
即ち、供給ローラ5から繰り出した基材21はキャンロール7に供給された後、巻取ローラ6によって巻き取られる、所謂ロールトゥロール方式となっている。
【0030】
キャンロール7は、ステンレスから形成されており、回転駆動するようになっている。かかるキャンロール7は、供給ローラ5から繰り出され(供給され)、巻取ローラ6に巻き取られる基材21が所定の張力で巻き架けられるような位置に配置されており、キャンロール7の周面(表面)で基材21の非電極層側(具体的には、陽極層の設けられた側と反対の側)を支持するようになっている。また、キャンロール7が回転(図1の反時計回りに回転)することにより、巻き掛けられた(支持された)基材21をキャンロール7と共に回転方向に移動させることができるようになっている。
【0031】
かかるキャンロール7は、内部に冷却機構等の温度調整機構を有していることが好ましく、これにより、後述する基材21上での有機層の成膜中において、基材21の温度を安定させることができる。キャンロール7の外径は、例えば、300〜2000mmに設定することができる。
【0032】
そして、キャンロール7が回転すると、その回転に応じて供給ローラ5から基材21が順次繰り出され、繰り出された基材21がキャンロール7の周面に当接して支持されつつその回転方向に移動すると共に、キャンロール7から離れた基材21が巻取ローラ6によって巻き取られるようになっている。
【0033】
基材21の形成材料としては、キャンローラ7に巻き架けられても損傷しないような可撓性を有する材料が用いられ、このような材料として、例えば、金属材料、非金属無機材料や樹脂材料を挙げることができる。
【0034】
上記金属材料としては、例えば、ステンレス、鉄−ニッケル合金等の合金、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、チタン等を挙げることができる。また、上記した鉄−ニッケル合金としては、例えば36アロイや42アロイ等を挙げることができる。これらのうち、ロールプロセスに適用し易いという観点から、上記金属材料は、ステンレス、銅、アルミニウムまたはチタンであることが好ましい。また、かかる金属材料から形成された基材の厚みは、取り扱い性や基材の巻き取り性の観点から、5〜200μmであることが好ましい。
【0035】
上記非金属無機材料としては、例えば、ガラスを挙げることができる。この場合、非金属無機材料から形成された基材として、フレキシブル性を持たせた薄膜ガラスを用いることができる。また、かかる非金属材料から形成された基材の厚みは、十分な機械的強度および適度な可塑性の観点から、5〜500μmであることが好ましい。
【0036】
上記樹脂材料としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂などの合成樹脂を挙げることができ、かかる合成樹脂として、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、かかる樹脂材料から形成された基材として、例えば、上記合成樹脂のフィルムを用いることができる。また、かかる樹脂材料から形成された基材の厚みは、十分な機械的強度および適度な可塑性の観点から、5〜500μmであることが好ましい。
【0037】
基材21として具体的には、スパッタリングによって予め陽極層23(図4参照)を形成したものを用いることができる。
陽極層23を形成するための材料としては、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、インジウム−錫酸化物(ITO)等の各種透明導電材料や、金、銀、白金などの金属や合金材料を用いることができる。
【0038】
蒸着源9は、発光層25aを含む少なくとも1層の有機層(図4参照)における各有機層に対応して設けられている。蒸着源9は、キャンロール7の周面における基材21の支持領域と対向する位置に配置されており、基材21に有機層を形成するための材料(有機層形成材料22)を蒸着させることにより、基材21上に形成された陽極層23上に有機層(図4参照)を順次形成するようになっている。かかる蒸着源9は、加熱等により気化された有機層形成材料22を基材21に向けて吐出可能なノズルを有していれば、その構成は特に限定されるものではない。
【0039】
前記蒸着源9は、有機層形成材料22を収容することができるようになっており、ノズル9aと、加熱部(不図示)とを有している。ノズル9aは、キャンロール7において基材21の支持領域と対向するように配置されている。上記加熱部は、有機層形成材料22を加熱して気化させるようになっており、気化された有機層形成材料22は、ノズル9aから外部に吐出されているようになっている。
【0040】
そして、蒸着源9内で有機層形成材料22が加熱されると、該有機層形成材料22が気化され、気化された有機層形成材料22が、ノズル9aから基材21に向かって吐出されて、基材21上に蒸着されるようになっている。このように気化された有機層形成材料22が基材21に蒸着されることにより、基材21上に形成された陽極層23上に有機層が形成されるようになっている。
【0041】
有機層としては、少なくとも発光層25aを有していれば特に限定されるものではなく、例えば図4(a)に示すように、陽極層23上に発光層25aのみ一層の有機層を形成することもできる。また、必要に応じて、例えば図4(b)に示すように、正孔注入層(有機層)25b、発光層25a及び電子注入層(有機層)25cをこの順に積層して、有機層を3層積層することもできる。その他、必要に応じて、上記図4(b)に示す発光層25aと正孔注入層25bの間に正孔輸送層(有機層)25d(図4(c)参照)を挟むことによって、または、発光層25aと電子注入層25cとの間に電子輸送層(有機層)25e(図4(c)参照)を挟むことによって、有機層を4層積層することもできる。
【0042】
さらに、図4(c)に示すように、正孔注入層25bと発光層25aとの間に正孔輸送層25d、発光層25aと電子注入層25cとの間に電子輸送層25eを挟むことによって、有機層を5層積層することもできる。また、各有機層の厚みは、通常、数nm〜数十nm程度になるように設計されるが、かかる厚みは、有機層形成材料22や、発光特性等に応じて適宜設計されるものであり、特に限定されない。
【0043】
発光層25aを形成するための材料としては、例えば、トリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、イリジウム錯体(Ir(ppy)3)をドープした4,4’−N,N’−ジカルバゾニルビフェニル(CBP)等を用いることができる。
【0044】
正孔注入層25bを形成するための材料としては、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’−ビス[N−4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ]ビフェニル(DNTPD)等を用いることができる。
【0045】
正孔輸送層25dを形成するための材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)等を用いることができる。
【0046】
電子注入層25cを形成するための材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)等を用いることができる。
【0047】
上記電子輸送層25eを形成するための材料としては、例えば、トリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(BAlq)、OXD−7(1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル])ベンゼン等を用いることができる。
【0048】
また、蒸着源9は、上記したような基材21の陽極層23上に形成される有機層の積層構成や積層数量に応じて1つ以上配置されることができる。例えば、図4(b)に示すように有機層を3層積層する場合には、図1に示すように、各有機層に応じて蒸着源9を3つ配置することができる。このように複数の蒸着源9が設けられた場合、キャンロール7の回転方向に対し最も上流側に配置された蒸着源9によって陽極層23上に1層目の有機層が蒸着された後、下流側の蒸着源9によって1層目の有機層上に順次2層目の有機層が蒸着されて、積層されるようになっている。
【0049】
ここで、基材21上に成膜される各有機層の厚みのバラツキ(変動)が大きくなると、有機EL素子の発光色が変化する不具合が発生する。また、各有機層の厚みの変動は、蒸着源9のノズル9a(より詳細にはノズル9aの開口縁)と基材21表面との距離(蒸着源−基材間距離La)が変動することによって生じ、この蒸着源−基材間距離Laは、蒸着源9に対して基材表面の位置(表面位置)が変動し、蒸着源9のノズル9aとキャンロール7表面との距離Lが変動することによって生じる。
【0050】
さらに、上記表面位置の変動は、キャンロール7の組み立て精度や加工精度、キャンロール7の偏心、蒸着中の熱によるキャンロール7を構成する材料の膨張や、キャンロール7表面の凹凸状態等によって生じ、その変動が数十μm程度に達することは十分に考えられる。
【0051】
そして、各有機層の厚みが、通常、数nm〜数十nmであることから、上記表面位置の変動は、各有機層の厚みの変動に大きな影響を及ぼす。例えば蒸着源−基材間距離Laを2mmに設定した場合、その距離が20μm(1%)変動するとき、各有機層の厚みは2%程度変動する、すなわち、上記距離の変動率の2倍程度の変動率で各有機層の厚みが変動し得る。
【0052】
このように、有機層の厚みのわずかな変化が発光色に大きな影響を及ぼし、上記距離Laのわずかな変化が厚みに大きな影響を及ぼす。そこで、基材21の上記表面位置の変動があっても、蒸着源9のノズル9aとキャンロール7表面との距離Lを一定に維持することにより、蒸着源−基材間距離Laを一定に維持し、基材21上の陽極層23に形成される有機層の厚みの変動を抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、図2及び図3に示すように、蒸着源9には、キャンロール7の軸方向(図3の左右方向)両端部に向かって突出する突出部材11が突設されている。また、突出部材11の先端部11aとして、突出部材本体の先端部の軸方向外側には、ローラ部材11aが回転自在に軸支されている。ローラ部材11aの周面は、キャンロール7の表面において基材21の支持領域よりも両外側と当接しており、キャンロール7が回転すると、キャンロール7の表面の移動に従ってローラ部材11aが回転するようになっている。なお、本実施形態では、ローラ部材11aが突出部材11の先端部に相当する。
【0054】
突出部材11は、タングステン、鉄、ニッケル、コバルト及びこれらの合金等から形成されており、蒸着源9での加熱によって真空チャンバー3内の温度が上昇したり、後述する押圧力F1が作用したりしても、これらによっては蒸着源9のノズル9aとキャンロール7の表面との距離が変化しないようになっている。
【0055】
また、蒸着源9と真空チャンバー3の内壁3a(固定用部)との間には、圧縮バネ部材(弾性体)15が配置されており、圧縮バネ部材15の一端が蒸着源9に、他端が真空チャンバー3の内壁に接続されている。すなわち、蒸着源9は、圧縮バネ部材15を介して真空チャンバー3の内壁3aに固定されている。
【0056】
これにより、圧縮バネ部材15によって蒸着源9及び突出部材11がキャンロール7側へと所定の押圧力F1で押圧され、かかる突出部材11に押圧されることによって、ローラ部材11aがキャンロール7表面に押圧力F1で圧接されるようになっている。また、押圧力F1は、ローラ部材11aの周面とキャンロール7の表面とが常に当接していることができる、すなわち、ローラ部材11aの周面とキャンロール7の表面との当接状態が維持されるような力に設定されている。
【0057】
このように、ローラ部材11aの周面が常にキャンロール7と当接していることによって、キャンロール7の上記表面位置が変動しても、蒸着源9のノズル9aとキャンロール7表面との距離Lを一定に維持することができる。これにより、有機層の蒸着時、蒸着源−基材間距離Laを一定に維持することができるため、該蒸着源−基材間距離Laの変動に起因する有機層の厚みの変動を抑制することができる。従って、有機EL素子20の発光色の変動を抑制することができる。
【0058】
また、蒸着源9のノズル9aとキャンロール7の表面との距離Lが小さいほど、かかる距離Lの変動が有機層の厚みの変動に大きな影響を及ぼし易い。かかる観点を考慮すれば、蒸着源9のノズル9aとキャンロール7の表面との距離Lは、15mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。当該距離Lを15mm以下とすることにより、有機層の厚みがより変動し易い場合においても、蒸着源9のノズル9aとキャンロール7の表面との距離Lを一定に維持し、これにより、蒸着源−基材間距離Laを一定に維持しつつ蒸着工程を行うことができるため、より効果的である。
【0059】
上記したように基材21上に形成された陽極層23上に有機層を蒸着した後、有機層の最上面に陰極層27を不図示のスパッタ装置等の真空成膜装置を用いて形成することによって、図4に示すように、基材21上に、陽極層23、有機層及び陰極層27がこの順に積層された有機EL素子20が形成(製造)されるようになっている。陰極層27としては、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ITO、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属を含む合金等を用いることができる。
【0060】
なお、真空チャンバー3内のキャンロール7における基材21の支持領域と対向する位置において、キャンロール7の回転方向に対し有機層を形成するための蒸着源9の上流側に陽極層23を形成するための真空成膜装置、下流側に陰極層27を形成するための真空成膜装置を配置し、キャンロール7に支持されつつ移動する基材21に陽極層23を成膜した後、有機層を蒸着し、さらに陰極層27を成膜することもできる。
【0061】
また、その他、陽極層23及び陰極層27の材料として、蒸着源によって蒸着可能な材料を用いた場合には、真空チャンバー3内に陽極層23及び陰極層27用の蒸着源を配置し、基材21上に、陽極層23、有機層、陰極層27をこの順に連続して蒸着することによって、有機EL素子20を形成することもできる。
【0062】
次に、上記製造装置を用いた第1実施形態に係る有機EL素子の製造方法について説明する。
【0063】
本発明に係る有機EL素子の製造方法は、電極層の形成された帯状の基材を供給し、該基材の非電極層側を回転駆動するキャンロール表面に当接させて該基材を移動させつつ、前記キャンロールと対向するように配された蒸着源のノズルから気化された有機層形成材料を吐出させて、前記基材の電極層側に有機層を形成する蒸着工程を含む有機EL素子の製造方法であって、前記蒸着源として、前記キャンロール側に突設され、先端部が前記キャンロールの軸方向両端部に当接する突出部材が備えられたものを用い、弾性体を介して前記突出部材が前記キャンロールに当接する方向に前記蒸着源を付勢しつつ、前記蒸着工程を実施することを特徴とする。
【0064】
本実施形態に於いては、先ず、減圧雰囲気下、スパッタリング等によって一面側に予め陽極層23が形成され、ロール状に巻き取られた基材21を基材供給装置5から繰り出す。
【0065】
次いで、繰り出された基材21を、陽極層23が形成された側と反対の側をキャンロール7の表面に当接させて移動させつつ、キャンロール7と対向して配置された蒸着源9によって発光層25a(図4参照)を含む有機層形成材料22を気化させ、気化された有機層形成材料22をノズル9aから吐出してキャンロール7に支持された基材21上の陽極層23上に蒸着させる。
【0066】
これらの操作は、蒸着源9からキャンロール7側に突設された突出部材11の先端部11aたるローラ部材11aの周面を、キャンロール7の軸方向両端部に当接させつつ、ローラ部材11aの周面と該両端部との間の当接状態が維持されるように蒸着源9を真空チャンバー3の内壁に圧縮バネ部材15(弾性体)を介して固定して実施する。このとき、圧縮バネ部材15によって蒸着源9及び突出部材11が上記した押圧力F1でキャンロール7側に付勢され、これにより、ローラ部材11aの周面がキャンロール7の周面に圧接されている。
【0067】
次いで、基材21上に有機層を形成した後、有機層が蒸着された基材21を巻取ローラ6によって巻き取る。さらに、巻き取られた基材21上に形成された有機層上に、不図示のスパッタ装置によって陰極層27を形成することにより、基材21に、陽極層23、有機層及び陰極層27がこの順に積層された有機EL素子20を形成することができる。
【0068】
上記した通り、本実施形態に係る製造方法では、陽極層23(電極層)の形成された帯状の基材21を供給し、該基材21の非陽極層23側を回転駆動するキャンロール7表面に当接させて該基材21を移動させつつ、キャンロール7と対向するように配された蒸着源9から有機層形成材料22を気化させて、基材21の陽極層23側に有機層を形成する蒸着工程を含む有機EL素子の製造方法であって、蒸着源9として、キャンロール7側に突設され、先端部11aがキャンロール7の軸方向両端部に当接する突出部材11が備えられたものを用い、圧縮バネ部材15(弾性体)を介して突出部材11がキャンロール7に当接する方向に蒸着源9を付勢しつつ、蒸着工程を実施する。
【0069】
これにより、キャンロール7の表面位置が変動しても、この変動に応じて圧縮バネ部材15が変形し、蒸着源9は、ローラ部材11aの周面とキャンロール7の表面とが常に当接しているように移動することができる。従って、キャンロール7の表面位置の変動に因らず、蒸着源9のノズル9aとキャンロール7の表面との距離Lを一定に維持し、これにより蒸着源−基材間距離Laを一定に維持しつつ、蒸着源9から基材21上に有機層を形成することができる。このように、蒸着源−基材間距離Laの変動に起因する有機層の厚みの変動を抑制することができるため、発光色の変動が抑制された、高品質な有機EL素子を得ることができる。
【0070】
なお、有機層の厚みの変動を減らすほど有機EL素子の発光色の変動を抑制することができ、該厚みの変動を例えば±2%以内とすることによって、上記発光色の変動をより確実に抑制して、より高品質な有機EL素子を製造することができる。
【0071】
また、本実施形態では、突出部材11としては、キャンロール7の表面と当接する周面を有し且つキャンロール7の回転によるキャンロール7の表面の移動に従って回転するローラ部材11aが先端部として軸支されたものを用い、弾性体としては、真空チャンバー3の内壁3aと蒸着源9とに接続され、蒸着源9をキャンロール7側に付勢する圧縮バネ部材15を用いて、蒸着工程を、ローラ部材11aの周面をキャンロール7の表面に圧縮バネ部材15によって押圧しつつ行う。
【0072】
これにより、突出部材11の先端部11aとキャンロール7との間に発生する摩擦力を低減することができるため、摩擦に起因する振動の発生や先端の磨耗の発生等を防止することができる。従って、蒸着源−基材間距離Laを一定に維持し易くすることができる。
【0073】
次に、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明する。
【0074】
図5は、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の製造装置において蒸着源及びローラ部材の周辺の構成を模式的に示す概略側面図であり、図6は、図5のBB’断面図である。図1〜図3と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。また、第1実施形態に係る製造装置と同様の構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0075】
図5及び図6に示すように、本実施形態では、キャンロール7の軸方向(図6の左右方向)両端縁は、周縁に沿ってそれぞれ両外側に環状に突出する環状突出部7aが形成されている。そして、突出部材11は、突出部材本体先端側の軸方向内側に先端部11aとしてローラ部材11aが回転自在に軸支されて、ローラ部材11aの周面が環状突出部7aの内周面と当接しているようになっている。そして、キャンロール7の回転による突出部7aの内周面の移動に従動してローラ部材11aが回転するようになっている。
【0076】
また、蒸着源9は、引っ張りバネ部材(弾性体)17によって真空チャンバー3の内壁3aに固定されている。これにより、蒸着源9及び突出部材11が引っ張り力F2によって真空チャンバー3側に付勢されることにより、ローラ部材11aの周面が環状突出部7aの内周面に圧接されている。引っ張り力F2は、キャンロール7が回転し、この回転に従動してローラ部材11aが回転しているとき、常にローラ部材11aが突出部7aの内周面と当接していることができる、すなわち、ローラ部材11aの周面とキャンロール7の表面との当接状態が維持されるような力に設定されている。
【0077】
このように、ローラ部材11aの周面が常に環状突出部7aの内周面と当接していることによって、キャンロール7の上記表面位置が変動しても、蒸着源9のノズル9aとキャンロール7表面との距離Lを一定に維持することができる。これにより、各有機層の蒸着時、蒸着源−基材間距離Laを一定に維持することができるため、該蒸着源−基材間距離Laの変動に起因する有機層の厚みの変動を抑制することができる。従って、有機EL素子の発光色の変動を抑制することができる。
【0078】
次に、上記製造装置を用いた第2実施形態に係る有機EL素子の製造方法について説明する。また、第1実施形態に係る有機EL素子の製造方法と同様の構成については説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0079】
本実施形態に係る製造方法では、陽極層23(電極層)の形成された帯状の基材21を供給し、該基材21の非陽極層23側を回転駆動するキャンロール7表面に当接させて該基材21を移動させつつ、キャンロール7と対向するように配された蒸着源9から有機層形成材料22を気化させて、基材21の陽極層23側に有機層を形成する蒸着工程を含む有機EL素子の製造方法であって、蒸着源9として、キャンロール7側に突設され、先端部がキャンロール7の軸方向両端部に当接する突出部材11が備えられたものを用い、引っ張りバネ17(弾性体)を介して突出部材11の先端部11aがキャンロール7に当接する方向に蒸着源9を引っ張り(付勢し)つつ、蒸着工程を実施する。
【0080】
具体的には、本実施形態では、キャンロール7の軸方向両端縁は、それぞれ周縁に沿って上記軸方向外側に突出する環状突出部7aとして形成されてなり、突出部材11は、先端部11aとして突出部7aの内周面と当接する周面を有し且つキャンロール7の回転による上記内周面の移動に従って回転するローラ部材11aが設けられてなり、弾性体は、真空チャンバー3の内壁3aと蒸着源9とに接続され、蒸着源9をキャンロール7と反対側に引っ張る引っ張りバネ部材17から形成されており、ローラ部材11aの周面を上記内周面に引っ張りバネ部材17によって押圧しつつ蒸着工程を実施する。
【0081】
これにより、突出部材11の先端部11aとキャンロール7との間に発生する摩擦力を低減することができるため、摩擦に起因する振動の発生や上記先端の磨耗の発生等を防止することができる。従って、蒸着源−基材間距離Laをより一層一定に維持し易くすることができる。また、キャンロール7の表面とローラ部材11aとが当接しないため、かかる当接によって不意に生じた異物が基材21に付着したり、基材21が不意に損傷するおそれを回避することができる。
【0082】
本発明の有機EL素子の製造方法及び製造装置は、上記の通りであるが、本発明は上記各実施形態に限定されず本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
例えば、上記実施形態では、弾性体として圧縮バネ部材15又は引っ張りバネ17を用いたが、キャンロール7が回転する際、これに応じて突出部材11の先端部11aが常にキャンロール7表面に当接していることができるように蒸着源9の配置を移動させることが可能であれば、弾性体は特に限定されるものではない。また、上記各実施形態では、突出部材11の先端部11aとしてローラ部材11aを設けたが、ローラ部材11aの無い突出部材11の先端部11aをキャンロール7表面に直接当接させることもできる。
【0083】
また、上記実施形態では、蒸着源9内で有機層形成材料22を気化させたが、別途の装置で気化された有機層形成材料22を蒸着源9内に導入し、該蒸着源9のノズルから吐出することもできる。
【0084】
また、上記実施形態では、基材供給装置5を真空チャンバー3内に配置したが、基材21をキャンローラ7へと繰り出すことが可能であれば、キャンローラ7への供給方法は特に限定されるものではない。また、上記実施形態では、蒸着工程が終了した基材21を巻き取ったが、かかる基材21を巻き取ることなく、裁断等の工程に供することもできる。
【実施例】
【0085】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
(実施例)
上記した第1実施形態に係る製造装置1において蒸着源9を1つ配置し、発光層25aを形成するための材料としてトリス(8−ハイドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、基材21として全長100mのPETを用い、この基材21上に、予め陽極層23としてIZO層を形成させた。そして、第1実施形態に係る有機EL素子の製造方法により、蒸着源9でAlq3を気化させ、気化されたAlq3を基材21上に形成されたIZO層上に蒸着することによって、発光層25aを連続して成膜(形成)した。
【0087】
形成された発光層25aの厚みについて、ULVAC社製の触針式表面形状測定器Dektakを用いて、基材21の幅方向中央において、長手方向に1mおきに測定し、厚み精度=(厚みの最大値−最小値)/2/(平均厚み)×100(%)によって、長手方向の厚み精度を算出した。その結果、長手方向の厚み精度は、±2%であった。
【0088】
(比較例1)
図7に示すように、蒸着源9を、圧縮バネ部材15の代わりに金属棒19を介して真空チャンバー3の内壁3aに固定し、蒸着源9に突出部材11を設けないこと以外は実施例1と同様にして、PETから成る基材21上に形成されたIZO層上に、Alq3を蒸着して発光層25aを成膜し、長手方向の厚み精度を算出した。その結果、長手方向の厚み精度は、±10%であった。
【0089】
(比較例2)
図8に示すように、蒸着源9を、圧縮バネ部材15の代わりに金属棒19を介して真空チャンバー3の内壁3aに固定すること以外は実施例1と同様にして、PETから成る基材21上にAlq3を蒸着して発光層25aを成膜し、厚み精度を測定した。その結果、長手方向の厚み精度は、±5%であった。
【0090】
上記の結果、本発明に係る有機EL素子の製造方法及び有機EL素子の製造装置により、基材21上の陽極層23上に形成される有機層の厚みの変動を抑制でき、有機EL素子の発光色の変動を抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0091】
1:有機EL素子の製造装置、3:真空チャンバー、3a:内壁、5:基材供給装置(基材供給手段)、7:キャンロール、9:蒸着源、9a:ノズル、11:突出部材、11a:ローラ部材(先端部)、15:圧縮バネ部材(弾性体)、17:引っ張りバネ部材(弾性体)、20:有機EL素子、21:基材、25a:発光層(有機層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層の形成された帯状の基材を供給し、該基材の非電極層側を回転駆動するキャンロール表面に当接させて該基材を移動させつつ、前記キャンロールと対向するように配された蒸着源のノズルから気化された有機層形成材料を吐出させて、前記基材の電極層側に有機層を形成する蒸着工程を含む有機EL素子の製造方法であって、
前記蒸着源として、前記キャンロール側に突設され、先端部が前記キャンロールの軸方向両端部に当接する突出部材が備えられたものを用い、弾性体を介して前記突出部材が前記キャンロールに当接する方向に前記蒸着源を付勢しつつ、前記蒸着工程を実施することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項2】
前記突出部材は、前記キャンロールの表面と当接する周面を有し且つ前記キャンロールの回転に従って回転するローラ部材が先端に軸支されてなる請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項3】
前記キャンロールの軸方向両端縁は、それぞれ前記軸方向外側に突出する環状突出部として形成されてなり、前記突出部材は、前記環状突出部の内周面と当接する周面を有し且つ前記キャンロールの回転による前記内周面の移動に従って回転するローラ部材が先端に軸支されてなる請求項1に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項4】
前記ノズルと前記キャンロールの表面との距離が15mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項5】
電極層の形成された帯状の基材を供給する基材供給手段と、供給された該の非電極層側で当接しつつ該基材の移動に伴って回転駆動するキャンロールと、該キャンロールと対向するように配され、ノズルから気化された有機層形成材料を吐出して、キャンロールに当接した前記基材の前記電極層側に有機層を形成する蒸着源とを備えてなる有機EL素子の製造装置であって、
前記蒸着源は、前記キャンロール方向に突設され、先端部が前記キャンロールの軸方向両端部に当接する突出部材を備え、弾性体によって該突出部材を前記キャンロールに当接するように付勢されてなることを特徴とする有機EL素子の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−142140(P2012−142140A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292956(P2010−292956)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】