説明

有機EL素子を用いた照明用パネルおよび照明装置

【課題】短絡故障を迅速に検出するとともに、短絡故障が起きた場合に安全かつ確実に有機EL素子への電力供給を停止することができる有機EL素子を用いた照明用パネルおよび照明装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子を用いた照明用パネル100は、透明基板5上に陽極としてのITO電極1、有機発光層3、陰極としての金属電極2を積層し、ITO電極1および金属電極2へそれぞれ給電するための導体部21aおよび21bを設けてある。また、ITO電極1または金属電極2に接続される抵抗成分であるパターン抵抗4が透明基板5に形成され、さらに、導体部21によりITO電極1へ接続される端子A15、パターン抵抗4を介してITO電極1へ接続される端子B16、および金属電極2へ接続される端子C17が形成される。端子A15、端子B16および端子C17は、照明用パネル100の状態検知用端子となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を用いた照明用パネルおよび照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置において、キャリア注入型の固体発光素子である有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence)素子(以下、有機EL素子)を用いることが提案されている。有機EL素子は、有機薄膜を電極で挟んだ構造をしており、電極から注入されたキャリアが有機薄膜内で再結合し、この再結合のエネルギーによって励起された有機分子が基底状態に戻るときに放出する光を利用するものである。
【0003】
有機薄膜を挟む電極の少なくとも一方には、光を取り出すために透明な材料が用いられる。有機EL素子は薄型かつ軽量の発光素子が構成できるとともに、駆動電圧が数Vから数十V程度の低電圧駆動が可能であり、これまでの主流の照明手段である放電灯に比べると駆動電圧が低いので、点灯装置が安価に構成でき、薄型かつ軽量の照明器具への応用が期待できる。
【0004】
一方、特に実用化の観点から、短絡故障を迅速に検出するとともに、短絡故障が起きた場合に安全かつ確実に有機EL素子への電力供給を停止するために、素子構成に改良を加えた種々の有機EL照明装置が検討されている。
【0005】
例えば、基板上に分離して形成された島状の電極と、その電極に電流を供給する配線との間を、過電流により溶断もしくは破壊され電気的に絶縁化するヒューズ型配線によって接続し、各々の画素を構成する有機EL素子の短絡による発光面全域の非発光を抑制する技術が知られている。これによれば、ヒューズ機能を組み込んだ有機EL素子を用いることにより、短絡した場合に該当箇所のヒューズが切れ、他の残りの素子の発光が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−296154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来例は、電極の一部を細く形成してヒューズ機能をもたせ、短絡時にヒューズが切れるものである。しかしながら、この方法によってヒューズを作ることはむずかしく、製造上のバラツキを押えることが困難である。また、ヒューズが切れるまでに時間がかかるため、短絡故障の状態がしばらく続き、回路にストレスを与えるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、短絡故障を迅速に検出するとともに、短絡故障が起きた場合に安全かつ確実に有機EL素子への電力供給を停止することができる照明用パネルおよび照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の照明用パネルは、有機EL素子を用いた照明用パネルであって、前記有機EL素子に電源を供給するための電源供給端子と、前記有機EL素子の短絡状態を検知するための状態検知用端子とを備える。
【0009】
上記構成によれば、有機EL素子の状態をモニタすることができるため、短絡故障を迅速に検出することができる。
【0010】
また、本発明の照明用パネルは、前記電源供給端子が、前記有機EL素子の陽極および陰極にそれぞれ接続された第1の端子および第2の端子であり、前記状態検知用端子が、前記有機EL素子の両電極のいずれか一方に抵抗成分を介して接続された第3の端子と、前記第3の端子が接続された一方の電極に接続された第1の端子または第2の端子とであり、前記状態検知用端子間の電圧を検出するものである。
【0011】
上記構成によれば、状態検知用端子間の電圧を検出することにより、有機EL素子の状態をモニタすることができるため、短絡故障を迅速に検出することができる。
【0012】
また、本発明の照明用パネルは、前記抵抗成分が、ITO膜によるパターン抵抗であるものである。
【0013】
上記構成によれば、短絡検出機能付きの照明用パネルを容易に製造することができる。
【0014】
また、本発明の照明用パネルは、前記有機EL素子の透明基板上に形成される電極が、ITO膜による透明電極であり、前記パターン抵抗が、前記透明基板上に形成されるものである。
【0015】
上記構成によれば、短絡検出機能付きの照明用パネルを容易に製造することができる。
【0016】
また、本発明の照明用パネルは、前記第1、第2および第3の端子が、前記有機EL素子の透明基板上に形成されるものである。
【0017】
上記構成によれば、有機EL素子の状態をモニタすることができるため、短絡故障を迅速に検出することができる。
【0018】
また、本発明の照明装置は、本発明の照明用パネルと、前記状態検知用端子間の電圧が所定のしきい値を超えた場合に、前記照明用パネルへの電源供給を停止する点灯回路とを備える。
【0019】
上記構成によれば、状態検知用端子間の電圧が所定のしきい値を超えた場合に照明用パネルへの電源供給を停止することにより、有機EL素子の短絡故障が起きた場合、即座に、安全かつ確実に有機EL素子への電力供給を停止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の照明用パネルによれば、有機EL素子の状態をモニタすることができるため、短絡故障を迅速に検出することができる。また、本発明の照明装置によれば、有機EL素子の短絡故障が起きた場合、即座に、安全かつ確実に有機EL素子への電力供給を停止することができるため、装置の発熱および点灯回路へのストレスを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施形態にかかる有機EL素子を用いた照明用パネル100の構成を説明するための図である。本実施形態の照明用パネル100は、透明基板5の表面上に透明導電膜などからなる電極1を陽極として設け、電極1の表面上にホール輸送層12を介して有機発光層3を積層すると共に、さらにこの有機発光層3の上に電子輸送層13を介して電極2を陰極として設けてある。
【0022】
また、電極1または電極2に接続される抵抗成分であるパターン抵抗4が透明基板5上に形成され、電極1へ接続される端子A15、パターン抵抗4を介して電極1へ接続される端子B16、および電極2へ接続される端子C17が透明基板5上に形成される。端子A15、端子B16および端子C17は、照明用パネル100に用いられる有機EL素子の短絡状態を検知するための状態検知用端子となる。
【0023】
照明用パネル100は、上記構成を基本構成として形成することができるものであり、電極1に正電圧を、電極2に負電圧を印加すると、電子輸送層13を介して有機発光層3に注入された電子と、ホール輸送層12を介して有機発光層3に注入されたホールとが、有機発光層3内、又は有機発光層3とホール輸送層12の界面等にて再結合して発光が起こるものである。このように発光した光は、透明導電膜で形成される電極1及び透明ガラスや透明プラスチック板などで形成される透明基板5を通過して外部に取り出される。
【0024】
本実施形態の照明用パネル100を構成する各層の材料には、従来から使用されている公知のものを適宜使用することができる。透明基板5は、光透過性であればよく、無色透明の他に、多少着色されているものであってもよい。特に、380nm〜780nmの波長範囲の光を透過させるものが望ましい。また透明基板5の屈折率は、特に限定されるものではないが1.6以上のものが好ましい、屈折率が1.6以上の透明基板5を用いることによって、透明導電膜の電極1と透明基板5との屈折率段差界面で生じる全反射を抑えることができ、透明導電膜の電極1内で導波して失われる光の率を低減することができるものである。
【0025】
また上記の陽極として形成される電極1は、有機発光層3にホールを注入するための電極であり、この電極(陽極)1としては、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いるのが好ましく、特に仕事関数が4eV以上の電極材料を用いるのが好ましい。このような電極材料としては、具体的には、金などの金属、CuI、酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide:以下「ITO 」)、SnO2、ZnO、IZO(インジウムジンクオキサイド)等の導電性透明材料が挙げられる。
【0026】
また上記の陰極として形成される電極2は、有機発光層3に電子を注入するための電極である。この電極(陰極)2としては、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下の電極材料を用いるのが好ましい。このような電極材料としては、アルカリ金属、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属、希土類等や、これらと他の金属との合金などを用いることができる。
【0027】
また、ホール輸送層12を構成するホール輸送性の材料としては、ホールを輸送する能力を有し、電極(陽極)1からのホール注入効果を有するとともに、有機発光層3や発光性有機化合物に対して優れたホール注入効果を有し、さらに電子のホール輸送層12への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を用いることができる。
【0028】
さらに電子輸送層13を構成する電子輸送性の材料としては、電子を輸送する能力を有し、電極(陰極)2からの電子注入効果を有するとともに、有機発光層3や発光性有機化合物に対して優れた電子注入効果を有し、さらにホールの電子輸送層13への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を用いることができる。
【0029】
そして、電極(陽極)1に正電圧を、電極(陰極)2に負電圧を印加すると、電子輸送層13を介して有機発光層3に注入された電子と、ホール輸送層12を介して有機発光層3に注入されたホールとが、有機発光層3内、又は有機発光層3とホール輸送層12の界面等にて再結合して発光が起こる。このように有機発光層3が発光部となって発光した光は、透明導電膜で形成される電極(陽極)1及び透明基板5を通過して外部に取り出される。
【0030】
このような層構成で形成される照明用パネル100において、発光部の周囲位置に光反射部6が設けられる。光反射部6は、透明基板5の内部で厚み方向に縦に設けてあり、発光部となる有機発光層3の周囲の全長を光反射部6で囲むようにしてある。
【0031】
発光部となる有機発光層3から発光した光を透明基板5から外部に取り出すにあたって、一部の光は透明基板5の表面と空気との界面で全反射し、透明基板5の側面の方向に透明基板5内を導波する。この導波された光は光反射部6で反射され、透明基板5の側面から漏れたり、素子内部で消滅したりすることなく、透明基板5の表面から出射される。これにより、透明基板5の表面からの光の取り出し効率を高めることができる。
【0032】
図2は、本実施形態の有機EL素子を用いた照明用パネル100の平面図を示す。透明基板5上に、陽極としてのITO電極1、有機発光層3(図1参照)、陰極としての金属電極2を積層し、ITO電極1および金属電極2へそれぞれ給電するための導体部21aおよび21bを設けてある。
【0033】
また、ITO電極1または金属電極2に接続される抵抗成分であるパターン抵抗4が透明基板5に形成される。さらに、導体部21aによりITO電極1へ接続される端子A15、パターン抵抗4を介してITO電極1へ接続される端子B16、および導体部21bにより金属電極2へ接続される端子C17が形成される。端子A15、端子B16および端子C17は、照明用パネル100に用いられる有機EL素子の短絡状態を検知するための状態検知用端子となる。
【0034】
図3は、本実施形態の有機EL素子を用いた照明装置300の構成図を示す。図3(a)に示すように、点灯回路200は、照明用パネル100の端子B−端子C間に電圧を供給して照明用パネル100を点灯させるとともに、端子B−端子A間の電位差を検出し、所定のしきい値を超えると即座に電圧供給を停止する。これにより、照明用パネル100が短絡故障したときに点灯回路200へ与えるストレスを低減することができる。
【0035】
図3(b)は、有機EL素子の電気等価回路を示す。有機EL素子は、抵抗成分R22とダイオード23の直列接続で表わすことができる。端子B−端子C間に電圧を印加すると正常時に電流iが流れる。一方、有機EL素子が短絡故障すると電流iは増加し、抵抗成分R22の電圧降下が増大するので、端子B−端子A間の電圧をモニタすることで、短絡故障を検知することが可能である。
【0036】
図4は、一つの透明基板30上に複数の有機EL素子を形成して、各々に抵抗成分を形成した照明用パネル110を示す。有機EL素子の数をn個とすると、金属電極2への端子C27,33,37,43、ITO電極1への端子A25,31,35,41、およびパターン抵抗4への端子B26,32,36,42がそれぞれn個ある。
【0037】
このように、本実施形態の照明用パネル100は、有機EL素子の電極に直列の抵抗成分を作り込んでその両端の電位差を検出するのである。この構成により、抵抗成分の形成が容易であるとともに、有機EL素子の短絡故障を迅速に検出することができる。また、パターン抵抗4は、ITO膜により形成することができ、チップ抵抗を後付けすることも可能である。本実施形態によれば、短絡故障時に抵抗の両端電圧が即座に上昇し、故障を検知できるので、点灯回路200側で即座に電源供給を停止し装置の安全性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、短絡故障を迅速に検出するとともに、短絡故障が起きた場合に安全かつ確実に有機EL素子への電力供給を停止することができる効果を有し、有機EL素子を用いた照明用パネルおよび照明装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態にかかる有機EL素子を用いた照明用パネル100の構成を説明するための図
【図2】本実施形態の有機EL素子を用いた照明用パネル100の平面図
【図3】本実施形態の有機EL素子を用いた照明装置300の構成図
【図4】本実施形態において一つの透明基板30上に複数の有機EL素子を形成して、各々に抵抗成分を形成した照明用パネル110を示す図
【符号の説明】
【0040】
1 電極(陽極)
2 電極(陰極)
3 有機発光層
4 パターン抵抗
5 透明基板
6 光反射部
12 ホール輸送層
13 電子輸送層
15,25,31,35,41 端子A
16,26,32,36,42 端子B
17,27,33,37,43 端子C
21a,21b 導体部
22 抵抗成分
23 ダイオード
100,110 有機EL素子を用いた照明用パネル
200 点灯回路
300 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子を用いた照明用パネルであって、
前記有機EL素子に電源を供給するための電源供給端子と、
前記有機EL素子の短絡状態を検知するための状態検知用端子とを備える照明用パネル。
【請求項2】
請求項1記載の照明用パネルであって、
前記電源供給端子は、
前記有機EL素子の陽極および陰極にそれぞれ接続された第1の端子および第2の端子であり、
前記状態検知用端子は、
前記有機EL素子の両電極のいずれか一方に抵抗成分を介して接続された第3の端子と、前記第3の端子が接続された一方の電極に接続された第1の端子または第2の端子とであり、
前記状態検知用端子間の電圧を検出するものである照明用パネル。
【請求項3】
請求項2記載の照明用パネルであって、
前記抵抗成分は、ITO膜によるパターン抵抗である照明用パネル。
【請求項4】
請求項3記載の照明用パネルであって、
前記有機EL素子の透明基板上に形成される電極は、ITO膜による透明電極であり、
前記パターン抵抗は、前記透明基板上に形成される照明用パネル。
【請求項5】
請求項2記載の照明用パネルであって、
前記第1、第2および第3の端子は、前記有機EL素子の透明基板上に形成される照明用パネル。
【請求項6】
請求項2記載の照明用パネルと、
前記状態検知用端子間の電圧が所定のしきい値を超えた場合に、前記照明用パネルへの電源供給を停止する点灯回路とを備える照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−227094(P2007−227094A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45508(P2006−45508)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】