有機EL素子及びその製造方法
基板10と、基板10の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層12及び第2の電極層18と、これらの電極層間に配置された発光層20と、を備える有機EL素子において、第1の電極層12及び第2の電極層18の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、発光層20中に、電子注入電極層側に偏倚して、発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部16が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(電界発光:Electro Luminescence)素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コダック社による低分子化合物を用いた真空蒸着法により有機層を形成した積層型有機EL素子の発表以来、有機ELディスプレイの開発が盛んに行われ現在実用化されつつある。その一方で、熱安定性に優れる、有機層に発光性の高分子化合物を用いた有機EL素子の開発が盛んに行われている。有機層に高分子化合物を用いた場合、熱安定性に優れる他、有機層が主として塗布溶液を用いた塗布法により形成されることから、製造プロセスの簡略化が可能となる利点もある。更に、真空蒸着法を用いて形成された有機層は、その層の一部が形成されず、欠陥が生じる場合も多いのに対し、塗布法により形成された有機層は欠陥が極めて生じ難く、信頼性が高いという利点もある。
【0003】
しかしながら、高分子化合物を用いた有機EL素子を積層型にする場合、有機層を形成する際に用いる塗布溶液中の溶媒として、他の層の高分子化合物の特性にあまり影響を与えない溶媒を選定する必要がある。このような溶媒の選定は非常に困難であるため、高分子化合物を用いた有機EL素子としては、ホール注入層になりうる水分散系材料のPEDOT/PSSを除いては、主として有機層が単層構造であるものが採用されてきた。
【0004】
有機層が単層構造である有機EL素子は、その単一の有機層が、キャリア輸送、キャリア再結合及び発光のいずれの機能をも発揮する必要がある。しかしながら、従来の高分子化合物を用いた有機EL素子は、キャリアバランスのずれ等に起因して、そのような機能の全てを有効に発揮できず、発光効率、耐熱性、寿命等の素子特性の点で必ずしも十分とはいえないものであった。したがって、優れた素子特性を有する高分子化合物を用いた有機EL素子が、製造工程の信頼性(歩留まり)及び製造コスト等の観点から依然として要求されている。
【0005】
このような要求に応えるべく、有機層に高分子化合物を用いた積層型有機EL素子がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、アルコール溶解性バッファーポリマーと電子輸送材料を混合した溶液を塗布して電子輸送層を発光層上に形成した有機EL素子が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、陰極に用いる金属の付着性を改善させ均一発光を可能とし、電子と正孔の再結合性を高めることを目的として、発光層と陰極との間に、エネルギーギャップが4.0eV以上の絶縁性の金属酸化物を挿入してなる有機EL素子が提案されている。
【特許文献1】特開2000−150165号公報
【特許文献2】特許2793383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが上記特許文献1に記載された高分子化合物を用いた有機EL素子について詳細に検討したところ、このような有機EL素子であっても、十分に高い発光効率及び寿命を得ることのできないことが見出された。すなわち、上記特許文献1に記載の有機EL素子を発光させるためには、駆動電圧を高めに設定する必要があり、しかも、その輝度が半減するまでの寿命(以下、「輝度半減寿命」という。)は十分とはいえないものであった。これは、電子輸送層に含有されるバッファーポリマー(例えばポリビニルピロリドン等)におけるキャリア移動度が低いために、発光層への電子注入が妨げられているためであると考えられる。
【0008】
つまり、ホール数に対し、注入された電子が少なくなると、発光層において再結合できない過剰のホールが存在することになる。この過剰のホールは発光層において電子と再結合しないため、有機EL素子の発光に寄与することはないものと考えられる。
【0009】
また、特許文献2記載の構成にしたがって、発光層と陰極との間に金属絶縁物を挿入した場合であっても、発光効率及び寿命が十分とは言えず、ダークスポットの発生が見られる場合があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、十分に高い発光効率及び寿命を達成できる有機EL素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の(1)〜(5)の有機EL素子を提供する。
【0012】
(1)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第1の有機EL素子」という。)。
【0013】
(2)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層と前記電子注入電極層との間に、以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第2の有機EL素子」という。)。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【0014】
(3)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層と前記電子注入電極層との間に、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第3の有機EL素子」という。)。
【0015】
(4)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層と前記電子注入電極層との間に、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層からなる有機薄膜層が形成され、
前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第4の有機EL素子」という。)。
【0016】
(5)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層と前記電子注入電極層との間に、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成され、前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第5の有機EL素子」という。)。
【0017】
第1、第4及び第5の有機EL素子は、有機化合物を含む発光層中に当該有機化合物とは異なる高分子化合物を含有する改質部が存在する。また、この高分子化合物は発光層全体に混在しておらず、発光層中の電子注入電極層側に偏って存在している。
【0018】
第2及び第4の有機EL素子は、発光層と電子注入電極層との間に有機高分子化合物からなる有機層を備えており、その有機高分子化合物は上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物であり、有機層は有機薄膜層となっている。
【0019】
第3及び第5の有機EL素子は、発光層と電子注入電極層との間に有機高分子化合物からなる有機層を備えており、その有機高分子化合物はエネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物であり、有機層は有機薄膜層となっている。なお、本発明において、有機薄膜層の「薄膜」とは、膜厚が発光層より小さく、典型的には20nm未満(更には10nm未満)であることを意味する。
【0020】
第1〜第5の有機EL素子は、上述した改質部及び/又は有機薄膜層を備えていることを主要因として、十分に高い発光効率を発揮し、寿命も長くなる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。
【0021】
すなわち、従来の有機EL素子は、キャリア(ホール又は電子)移動度が、電子を主として移動させる層(電子注入層、電子輸送層及び発光層等)とホールを主として移動させる層(ホール注入層、ホール輸送層及び発光層等)との間で、比較的大きく異なっていたため、発光層においてホールと電子との再結合数が減少していた。発光層においてホールと電子との再結合が発生しない場合は、有機EL素子は発光しないので、発光効率が低下することになる。
【0022】
発光効率が低下すると、発光させるための駆動電圧を高める必要があり、また再結合に関与しないキャリアが多く抜けることにより、有機EL素子の有機層に大きな負荷を与えるため、有機層を構成する物質が化学変化を起こして、非発光物質になったり、更にキャリアバランスが崩れて低発光効率になることもある。これにより有機EL素子の輝度が徐々に低下していき、輝度半減寿命が短くなると考えられる。
【0023】
一方、第1〜第5の有機EL素子は、改質部及び/又は有機薄膜層付近にエネルギー障壁が生じ、これらの領域がホールに対するブロッキング層として機能するため、ホールが発光層から電子注入電極層方向に移動することを十分に抑制できるものと考えられる。したがって、その発光層にホールが十分蓄積することになり、ホールの蓄積により、その周辺部の電子注入障壁(電子を発光層に注入するのに必要なエネルギー障壁)を有効に下げるものと考えられる。以上のことから、電子とホールとの注入バランスを取ることが可能となり、発光層におけるホールと電子との再結合の確率が上昇し、十分に高い発光効率及び寿命を有する有機EL素子を得ることができると考えられる。また、発光層と金属である電子注入電極層(陰極)とが直接接することを防ぐことができることから、エネルギー移動による励起状態の失活を防ぐことが可能となる。
【0024】
第1、第4及び第5の有機EL素子においては、発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物として、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物が採用できる。また、蛍光量子収率が1%以下の有機高分子化合物が採用できる。
【0025】
第1、第4及び第5の有機EL素子においてはまた、発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物として、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物が採用できる。
【0026】
第2〜第5の有機EL素子においては、有機薄膜層の膜厚は、0.05nm〜10nmであることが好ましく、0.1nm〜4nmであることが好ましい。なお、第1、第4及び第5の有機EL素子における改質部の膜厚は、改質部を構成する有機高分子化合物の膜平均分布量が10wt%以上である部分の厚さとして定義でき、その厚さは、0.01〜20nmが好ましく、0.01〜10nmがより好ましく、0.01〜5nmが更に好ましい。したがって、第4及び第5の有機EL素子において、有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は、0.06〜30nmが好ましく、0.1〜5nmがより好ましい。
【0027】
有機薄膜層又は改質部の厚さが上記範囲内であると、有機EL素子の発光効率を効果的に向上させることができ、十分に高い寿命を付与できる。なお、有機薄膜層又は改質部の膜厚が上記下限未満であると、発光効率及び寿命の改善効果が小さくなり、上記上限を超えると、電子の通過が困難となり駆動電圧の上昇が生じたり発光が不十分になるおそれがある。
【0028】
発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物、及びエネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物のうち少なくとも1つは、極性有機高分子化合物であることが好ましい。通常、高分子発光層は極性材料ではないことが多く極薄膜である無機化合物等からなる電子注入材料を均一に付着させることが難しいが、改質部又は有機薄膜層が極性を有する高分子からなる場合は、付着性が改善され均一な状態となり、高い発光効率及び寿命を発揮しやすくなる。
【0029】
このような極性有機高分子化合物としては、下記(a)〜(c)の有機高分子化合物の1又は2以上(但し、(a)〜(c)の有機高分子化合物は置換基を有していてもよい)からなるものが挙げられる。
(a)ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン及びN−ビニルピロリドンからなる群より選ばれる化合物の重合体又は共重合体
(b)アルキル基の炭素数が2〜4であるオキシアルキレン重合体又は共重合体
(c)ポリオキサゾリン又はポリビニルブチラール
【0030】
また、その好適例として、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)及びポリビニルブチラールからなる群より選ばれる1又は2以上の有機高分子化合物が挙げられる。
【0031】
なお、発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物、及びエネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物のうち少なくとも1つは、数平均分子量が50,000以上であると特に好ましい。
【0032】
発光層を構成する有機化合物としては、発光性高分子化合物を用いることが好ましい。ここで、「発光性高分子化合物」とは、ホールと電子との再結合により励起された際に発光(蛍光、リン光)可能な高分子化合物のことをいい、ホスト材料としての発光性高分子化合物に発光性のドーパント材料を混合したものも含まれる概念である。
【0033】
改質部は、発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液の塗布により形成されたものであることが好ましい。このように、有機EL素子の発光層の改質方法として塗布法を採用することにより、改質部は濃度勾配を有すると考えられる。すなわち、改質部の電子注入電極層側は塗布された上記有機高分子化合物の濃度が高くなっており、改質部のホール注入電極層側に向かうにつれて、徐々に発光層を構成する有機化合物の濃度が高くなっていると考えられる。このような濃度勾配を有することにより、改質部は、ある程度大きな膜厚範囲を有し、段階的なブロッキング層として効果的にホールを蓄積することができるので、発光層におけるホールと電子との再結合に有効に寄与することができるものと推定される。
【0034】
なお、有機薄膜層についても、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液、又は、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液、の塗布により形成されたものであることが好ましい。
【0035】
発光層が発光性高分子化合物を含む場合、その表面は、ある程度の凹凸形状を有している。したがって、このような凹凸状の表面に上記の溶液を塗布することにより、比較的容易に上述したような濃度勾配を形成することができ、有効に発光層におけるホールと電子との再結合に寄与することができると考えられる。また、上層塗布に対する物理的強度も高くなる。また、改質部において、発光性高分子化合物と塗布された有機高分子化合物とが十分に接着するので、有機EL素子の製造工程又は使用時において、改質部が破壊され難くなる。
【0036】
塗布を良好にするために、上記の場合に用いる溶媒は極性溶媒を含有するとよく、極性溶媒としては、水酸基を有する総炭素数1〜10の鎖状化合物、炭素数2〜6のジアルキルアミド基を有する総炭素数2〜8の鎖状化合物、総炭素数2〜10の鎖状エステル及び総炭素数2〜9の鎖状カーボネートからなる群より選ばれる1又は2以上の極性溶媒が好適である。
【0037】
電子注入電極層からの電子注入を容易にするために、電子注入電極層のホール注入電極層側に、電子注入電極層に隣接して、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含有する化合物からなる電子注入層を備えるようにすることが可能である。なお、電子注入層と、改質部及び/又は有機薄膜層と、の合計膜厚は、0.5nm〜25nmが好適である。
【0038】
電子注入層として金属あるいは合金あるいは混合物を積層する場合、酸化劣化や解離したイオンの陽極までの拡散等によって、素子劣化がおこりやすいが、改質部や有機薄膜層があることにより、このような金属あるいは金属化合物を安定に保持することができるため安定な素子駆動を得ることができる。
【0039】
上述した本発明の有機EL素子は、以下の(a)〜(c)の製造方法により好適に製造することが可能である。
【0040】
(a)基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、前記発光層の電子注入電極層側に、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する溶液を塗布することにより、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記有機高分子化合物を含有する改質部を前記発光層に形成させる有機EL素子の製造方法。
【0041】
(b)基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、前記発光層と電子注入電極層との間の層として、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層を形成させる有機EL素子の製造方法。
【0042】
(c)基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、前記発光層と電子注入電極層との間の層として、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層を形成させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0043】
(a)〜(c)の製造方法において、電子注入電極層のホール注入電極層側に隣接する層として、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含有する化合物からなる電子注入層を形成させることが好ましい。なお、(a)及び(b)の製造方法、又は(a)及び(c)の製造方法を組み合わせてもよい。
【0044】
本発明の有機EL素子は、以下の構成からなる態様も含まれる。すなわち、基板と、前記基板の一側に形成された第1の電極層と、前記第1の電極層上に形成された少なくとも一つの有機層と、前記有機層のうち前記基板から最も遠い位置に配置された有機層上に形成された第2の電極層と、を備え、前記第1の電極層及び前記第2の電極層のいずれか一方がホール注入電極層であり、他方が電子注入電極層であり、前記有機層のうち少なくとも一つが、前記電子注入電極層側の表面付近に、非発光性高分子化合物を含有する改質部を有する発光層であることを特徴とする有機EL素子である。
【0045】
ここで、発光層の「表面付近」とは、発光層の表面から、大きくとも該発光層の厚さ方向中心部までの間の体積領域をいう。また、「非発光性」とは、蛍光量子収率が1%以下であることをいう。更に、「非発光性高分子化合物を含有する改質部」とは、発光層の厚さ方向において、該改質部以外の部分の発光層を構成する材料と、非発光性高分子化合物とが混在する層部分をいい、非発光性高分子化合物が存在しない層部分は該当しない。
【0046】
上記改質部についての理解を容易にするために、図16に高分子発光材料を発光層20の発光材料に用いた場合の、発光層20の表面付近の断面模式図を示す。この図16においては、符号16で示される部分が改質部であり、厚さ方向のいずれの位置においても非発光性高分子化合物の粒子22が存在している。一方、改質部以外の部分は符号14で示されており、厚さ方向のいずれの位置においても非発光性高分子化合物の粒子22が存在していない。
【0047】
なお上記態様において、発光層の改質部が、非発光性高分子化合物を含有する溶液の塗布により形成されていることが好ましく、非発光性高分子化合物が、5.0×10−9〜1.0×10−6g/cm2の厚みを有することが好ましく、2.5×10−8〜5.0×10−7g/cm2であるとより好ましい。ここで、非発光性高分子化合物等の「厚み」とは、発光層の表面付近に存在する該非発光性高分子化合物等の質量を、その発光層の該非発光性高分子化合物が存在する面の外形面積(表面の凹凸を排除した面積)で除した値である。上記態様ではまた、発光層が発光性高分子化合物を含有することが好ましく、上記溶液が極性溶媒を含有するとよい。
【0048】
上記態様の有機EL素子の製造方法としては、基板を準備する工程と、前記基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、前記第1の電極層上に少なくとも一つの有機層を形成する工程と、前記有機層のうち発光層を形成した後、前記発光層上に他の層を形成する前に、前記発光層の表面に非発光性高分子化合物を含有する溶液を塗布する工程と、前記有機層のうち前記基板から最も遠い位置に配置された有機層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の有機EL素子は、特に製造工程の信頼性が高く、しかも製造コストを低減することができる発光性高分子化合物を発光層の構成材料として用いた場合であっても、十分に高い発光効率及び寿命を達成できる。また、本発明の有機EL素子の製造方法は、上述したような有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図2】第1実施形態に係る有機EL素子の第1変形態様の模式断面図である。
【図3】第1実施形態に係る有機EL素子の第2変形態様の模式断面図である。
【図4】第2実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図5】第3実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図6】第4実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図7】第5実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図8】第6実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図9】第7実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図10】第8実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図11】第9実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図12】第10実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図13】第11実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図14】有機薄膜層が式(1)及び式(2)を満たす場合の発光層と有機薄膜層のエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。
【図15】第11実施形態に係る有機EL素子の素子構造及びエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。
【図16】発光層20の表面付近を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…基板、12…第1の電極、14…非改質発光層、16…改質部、18…第2の電極、20…発光層、22…電子注入層、24…ホール注入層、30…有機薄膜層。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の好適な実施形態について、必要に応じて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第1の有機EL素子に対応するものである。図1に示す第1実施形態に係る有機EL素子は、基板10と、基板10の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層12及び第2の電極層18と、これらの電極層間に配置された発光層20と、を備えるものであって、第1の電極層12がホール注入電極層、第2の電極層18が電子注入電極層であり、発光層20中に、電子注入電極層側(すなわち第2の電極層18側)に偏倚して、発光層(改質部以外の発光層であり、以下「非改質発光層14」という。)を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部16が形成されている。第1実施形態に係る有機EL素子では、改質部16と非改質発光層14との界面は基板10とほぼ平行な平面である。
【0054】
図2は、第1実施形態に係る有機EL素子の第1変形態様の模式断面図であり、改質部16と非改質発光層14との界面が基板10と平行な平面になっておらず、界面が凹凸面を形成している。この変形態様においては、改質部16と非改質発光層14との明瞭な界面が存在する。
【0055】
図3は、第1実施形態に係る有機EL素子の第2変形態様の模式断面図であり、改質部16と非改質発光層14との界面が基板10と平行な平面になっておらず、界面が凹凸面を形成しており、改質部16と非改質発光層14との界面は明瞭でなく、改質部16の成分と非改質発光層14の成分とが任意の割合で混在した領域が存在する。
【0056】
図4は、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第1の有機EL素子に対応するものである。図4に示す第2実施形態に係る有機EL素子は、改質層16と第2の電極層18との間に電子注入層22を備える他は第1実施形態と同様の構成を有している。なお、図示はしていないが、第2実施形態に係る有機EL素子についても、第1実施形態における第1及び第2変形態様と同様に改質部16と非改質発光層14と界面が構成されている態様が可能である。
【0057】
図5は、本発明の第3実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第1の有機EL素子に対応するものである。図5に示す第3実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と非改質発光層14との間にホール注入層24を備える他は第1実施形態と同様の構成を有している。なお、図示はしていないが、第3実施形態に係る有機EL素子についても、第1実施形態における第1及び第2変形態様と同様に改質部16と非改質発光層14と界面が構成されている態様が可能である。
【0058】
図6は、本発明の第4実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第1の有機EL素子に対応するものである。図6に示す第4実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と非改質発光層14との間にホール注入層24を備える他は第2実施形態と同様の構成を有している。なお、図示はしていないが、第4実施形態に係る有機EL素子についても、第1実施形態における第1及び第2変形態様と同様に改質部16と非改質発光層14と界面が構成されている態様が可能である。
【0059】
図7は、本発明の第5実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第2の有機EL素子に対応するものである。図7に示す第5実施形態に係る有機EL素子は、基板10と、基板10の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層12及び第2の電極層18と、これらの電極層間に配置された発光層20と、を備えるものであって、第1の電極層12がホール注入電極層、第2の電極層18が電子注入電極層であり、発光層20と第2の電極層18との間に、上記式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層30が形成されている。
【0060】
図8は、本発明の第6実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第2の有機EL素子に対応するものである。図8に示す第6実施形態に係る有機EL素子は、有機薄膜層30と第2の電極層18との間に電子注入層22を備える他は第5実施形態と同様の構成を有している。
【0061】
図9は、本発明の第7実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第2の有機EL素子に対応するものである。図9に示す第7実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と発光層20との間にホール注入層24を備える他は第5実施形態と同様の構成を有している。
【0062】
図10は、本発明の第8実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第2の有機EL素子に対応するものである。図10に示す第8実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と発光層20との間にホール注入層24を備える他は第6実施形態と同様の構成を有している。
【0063】
なお、第5、6、7及び8実施形態に係る有機EL素子における有機薄膜層30を、上記式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物から、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物に変更することで、第5、6、7及び8実施形態に対応した上記第3の有機EL素子が得られる。
【0064】
図11は、本発明の第9実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第4の有機EL素子に対応するものである。図11に示す第9実施形態に係る有機EL素子は、基板10と、基板10の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層12及び第2の電極層18と、これらの電極層間に配置された発光層20と、を備えるものであって、第1の電極層12がホール注入電極層、第2の電極層18が電子注入電極層であり、発光層20と第2の電極層18との間に、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層30が形成され、発光層20中に、電子注入電極層側(すなわち第2の電極層18側)に偏倚して、発光層(非改質発光層14)を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部16が形成されている。
【0065】
図12は、本発明の第10実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第4の有機EL素子に対応するものである。図12に示す第10実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と発光層20との間にホール注入層24を備える他は第9実施形態と同様の構成を有している。
【0066】
図13は、本発明の第11実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第4の有機EL素子に対応するものである。図13に示す第11実施形態に係る有機EL素子は、有機薄膜層30と第2の電極層発光層18との間に電子注入層22を備える他は第10実施形態と同様の構成を有している。
【0067】
なお、第9、10及び11実施形態に係る有機EL素子における有機薄膜層30を、上記式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物から、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物に変更することで、第9、10及び11実施形態に対応した上記第5の有機EL素子が得られる。
【0068】
図1〜13におけるXは改質部16の厚さ(膜厚)、Yは有機薄膜層30の膜厚である。なお、上述したように、改質部16の膜厚は、改質部16を構成する有機高分子化合物の膜平均分布量が10wt%以上である部分の厚さとして定義される。また、改質部16は、非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物100%で形成されていてもよく、この有機高分子化合物と非改質発光層14を構成する有機化合物とが混在したものであってもよい。改質部16は第2の電極層18から第1の電極層12に向けて、上記高分子化合物の濃度が徐々に減じていく傾斜構造を有していることが好ましい。
【0069】
第2及び第4の有機EL素子は、式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層を備えているが、図14は、有機薄膜層がこれらの式を満たすときの発光層と有機薄膜層のエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。図14に示されるように、発光層の電子親和力の絶対値(|EALL|)の方が有機薄膜層の電子親和力の絶対値(|EAOTL|)よりも大きく、|EALL|−|EAOTL|の値は0.3eV以上である。また、有機薄膜層のイオン化ポテンシャルの絶対値(|IPOTL|)の方が発光層のイオン化ポテンシャルの絶対値(|IPLL|)よりも大きく、|IPOTL|−|IPLL|の値は0.3eV以上である。本発明において、|EALL|−|EAOTL|の値は0.4eV以上が好ましく、0.5eV以上がより好ましい。また、|IPOTL|−|IPLL|の値は0.4eV以上が好ましく、0.5eV以上がより好ましい。
【0070】
図15は、第11実施形態に係る有機EL素子の素子構造及びエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。図15に示すように、改質部及び/又は有機薄膜層付近にエネルギー障壁が生じ、これらの領域がホールに対するブロッキング層として機能すると考えられる。したがって、ホールが発光層から電子注入電極層方向に移動することを十分に抑制でき、その発光層にホールが十分蓄積することになる。このようにホールが蓄積すると、その周辺部の電子注入障壁(電子を発光層に注入するのに必要なエネルギー障壁)を有効に下げる。したがって、電子とホールとの注入バランスを取ることが可能となり、発光層におけるホールと電子との再結合の確率が上昇して、図15に示すような有機EL素子は十分に高い発光効率を示すと考えられる。また、有機薄膜層及び/又は改質部を極性有機高分子化合物とすることができるため、同様に極性を持つ金属化合物からなる電子注入層との密着性が良好となり、長寿命を発揮するようになると考えられる。また、発光層と金属である電子注入電極層(陰極)とが直接接することを防ぐことができることから、エネルギー移動による励起状態の失活を防ぐことも可能となる。
【0071】
このように、本発明の有機EL素子は、改質部16及び/又は有機薄膜層30が形成されていることを主要因として、発光性高分子化合物を発光層の構成材料として用いた場合であっても、十分に高い発光効率及び長寿命を発揮する。また、発光層と陰極の間にエネルギーギャップ4.0eVの無機酸化物を使用したときに問題となるダークスポットの発生や発光層との剥離のしやすさに由来した短寿命が十分なレベルまで抑制される。
【0072】
(基板)
基板10としては、非晶質基板(例えばガラス、石英等)、結晶基板(例えば、Si、GaAs、ZnSe、ZnS、GaP、InP等)が挙げられ、またこれらの結晶基板に結晶質、非晶質あるいは金属のバッファ層を形成した基板も用いることができる。また金属基板としては、Mo、Al、Pt、Ir、Au、Pd等を用いることができる。更には、樹脂フィルム基板(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)も用いることができる。
【0073】
基板10が光取り出し側となる場合、ガラスや石英等の透明基板を用いることが好ましく、特に、安価なガラスの透明基板を用いることが好ましい。透明基板には、発色光の調整のために、色フィルター膜や蛍光物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜等を設けてもよい。
【0074】
(ホール注入電極層)
第一の電極層であるホール注入電極(陽極)層12に用いる材料は、発光層へホールを効率よく注入することのできるものが好ましく、仕事関数4.5eV〜5.5eVの物質が好ましい。具体的には、透明導電膜である錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)及び酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主組成としたものが好ましい。
【0075】
これらの酸化物は、その化学量論組成から多少偏倚していてもよい。ITOでのIn2O3に対するSnO2の混合比は、1〜20質量%であると好ましく、5〜12質量%であるとより好ましい。また、IZOでのIn2O3に対するZnOの混合比は、通常、12〜32質量%程度である。ホール注入電極層12は、仕事関数を調整するため、シリカ(SiO2)を含有していてもよい。SiO2の含有量は、ITOに対して0.5〜10モル%程度が好ましい。SiO2を含有することにより、ITOの仕事関数が増大する。
【0076】
光を取り出す側の電極層は、ホール注入電極層に限らない。また、有機EL素子の発光波長領域である400〜700nmにおける透過率、特にRGB各色の波長における透過率は50%以上であると好ましく、80%以上であるとより好ましく、90%以上であると更に好ましい。光透過率が50%未満であると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度を得難くなる傾向にある。
【0077】
ホール注入電極層12の膜厚は、光を取り出す側の電極層とする場合は、上述の光透過率を考慮して決定することが好ましい。例えば酸化物の透明導電膜を用いる場合、膜厚は、50〜500nmであると好ましく、50〜300nmであるとより好ましい。ホール注入電極層12の膜厚が500nmを超えると、光透過率が不十分となると共に、基板10からのホール注入電極層12の剥離が発生しやすい。また、膜厚の減少に伴い光透過性は向上するが、膜厚が50nm未満の場合、発光層20へのホール注入効率が低下すると共に膜の強度が低下する。
【0078】
(電子注入電極層)
第二の電極層である電子注入電極(陰極)層18に用いる材料は、後述する発光層20の改質部16、又は有機薄膜層30の効果により、比較的低い仕事関数を有している必要がないため、特に限定されることはない。したがって、比較的低い仕事関数を有するLi、Na、K若しくはCs等のアルカリ金属、Mg、Ca、Sr若しくはBa等のアルカリ土類金属、LiF若しくはCsI等のアルカリハロゲン化物、Li2O等の酸化物、La、Ce、Sn、Zn若しくはZr等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属と特性が近い金属を用いることができ、更には、比較的高い仕事関数を有するAl,Ag,In,Ti,Cu,Au,Mo,W,Pt,Pd若しくはNi、又は、これらの金属の合金、或いはこれらの金属と他の金属との合金をも用いることが可能である。また、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0079】
これらの中では、発光層20の機能を有効に発揮させるために、LiFを電子注入電極層18に用いると好ましい。従来は、発光層に発光性高分子化合物を用いた有機EL素子は、電子注入電極層にLiFを用いると、十分な発光効率及び寿命を得ることが困難であった。しかしながら、本実施形態の有機EL素子は、発光層20に改質部16を設けることにより、また、有機薄膜層30を設けることにより、電子注入電極層18にLiFを用いても、電子注入障壁を実質的に低減できLiFとの密着性を高めることができることから、優れた発光効率及び寿命を達成することができる。
【0080】
電子注入電極層18の膜厚は、発光層20への電子注入が可能であれば特に制限されないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いる場合は、好ましくは0.1〜100nm、より好ましくは1.0〜50nmである。また、アルカリハロゲン化物もしくはLi2O等の酸化物を用いる場合の膜厚は、発光層20への電子注入能力の点からできるだけ薄い方が好ましく、具体的には、10nm以下であると好ましく、5nm以下であるとより好ましい。
【0081】
(発光層)
発光層20としては、上述したとおり、電子注入電極層側に偏倚して(すなわち、第2の電極層18側の界面付近に)、非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部16を有する態様が可能である。
【0082】
改質部16に含有される高分子化合物は、絶縁性が比較的に高い場合有機EL素子の発光効率がより向上し、しかもより高寿命となることから、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物、又は、エネルギーギャップが3.5eV以上(更には4.0eV以上)の有機高分子化合物であることが好ましい。改質部16に含有される高分子化合物として特に好ましいのは、上記式(1)及び式(2)を満たし、且つエネルギーギャップが3.5eV以上(更には4.0eV以上)である有機高分子化合物である。
【0083】
絶縁性と、発光効率の向上及び高寿命化とが相関する要因は明らかではないが、絶縁性の高い物質を含有する改質部がホールに対するブロッキング層として効果的且つ確実に機能するためと推測される。より詳しく考察すると、ホールが改質部16に蓄積することにより、電子注入電極層からの電子注入障壁を有効に低下させることができると考えられる。この現象並びに上述したホールの蓄積により、発光層において過剰なホールの注入又は過剰な電子の注入がなされることなく、適切なホールと電子のバランスを取ることができるので、発光層におけるホールと電子との再結合確率が上昇し、発光効率も向上し、長寿命化がなされるものと推測される。
【0084】
改質部16に含有される有機高分子化合物としては、極性基をもつ高分子が挙げられ、これら高分子を極性・非極性高分子と共重合したものあるいは末端基等に極性基の置換基をもつ極性・非極性高分子も含まれる。
【0085】
極性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル等の、不飽和アルコールもしくは不飽和エーテルの重合体又は不飽和アルコールと不飽和エーテルとの共重合体;ポリエーテル;セルロース誘導体;アクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体;ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステルやポリフタル酸等のポリアクリルエステル等、アルコール残基中に不飽和結合を持つものの重合体又は共重合体;ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、マレイン酸エステル重合体、フマル酸エステル重合体等の、酸残基中又は酸残基中とアルコール残基中とに不飽和結合を持つものの重合体又は共重合体;アクリルニトリル重合体、メタアクリルニトリル重合体、アクリルニトリルとメタアクリルニトリルとの共重合体、ポリシアン化ビニリデン、マロノニトリル重合体、フマロノニトリル重合体、マロノニトリルとフマロノニトリルとの共重合体;ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等、複素環式化合物の重合体又は共重合体;、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
【0086】
これらの中では、有機EL素子の発光効率及び寿命をより高める観点から、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリプロピレングリコール、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリビニル酢酸、ポリビニルブチラール、置換ポリスチレン、ポリ−N−ビニルピロリドンを用いると好ましい。
【0087】
非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、後述する濃度勾配を適切に形成できることから、2000以上であることが好ましい。Mwが2000未満であると、有機EL素子1の発光効率が低下する傾向にあり、寿命が短くなる傾向にある。これは、膜質が低下し凝集等が起こりやすくなっているため、改質部16がホールに対するブロッキング層として適切に機能しなくなることに起因すると考えられる。
【0088】
発光層20の改質部16は、非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する溶液の塗布により形成されていると好ましい。このようにして改質部16を形成すると、有機EL素子の発光効率及び寿命がより向上する。その要因は詳細には明らかにされていないが、改質部16の濃度勾配によるものと考えられる。すなわち、改質部16の電子注入電極層側は塗布された有機高分子化合物の占める割合(濃度)が高く、非改質発光層14を構成する物質の濃度が低くなっていると考えられる。そして、改質部16のホール注入電極層12側に向かうにつれて、徐々に塗布された有機高分子化合物の濃度が低くなっていき、代わって、非改質発光層14を構成する物質の濃度が高くなっていると考えられる。このような濃度勾配を有することにより、改質部16は、ある程度大きな膜厚範囲を有し、ホールに対する段階的なブロッキング層として効果的に機能することができるので、有効に発光層におけるホールと電子との再結合に寄与すると考えられる。
【0089】
上記溶液に用いられる溶媒(溶剤)としては、上述した有機高分子化合物を溶解可能のものであれば、特に限定されることなく用いることができる。それらのなかで、塗布性及び溶解性等の観点から、該溶媒が極性溶媒であると好ましい。
【0090】
このような極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミドもしくは2−エトキシエタノール等を挙げることができ、2−エトキシエタノールを用いるとより好ましい。
【0091】
改質部の膜厚は、0.01〜20nmが好ましく、0.01〜10nmがより好ましく、0.01〜5nmが更に好ましい。この厚さは、改質部16を形成するときの各種条件を適宜制御することにより調整可能である。例えば、上述した塗布により改質部16を形成する場合、塗布溶液中の有機高分子化合物の濃度、塗布時間又は塗布溶液量等を制御することにより、厚さを調整することができる。このような塗布を行う方法(塗布法)としては、特に制限されないが、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法若しくは印刷法等が適用可能である。
【0092】
非改質発光層14を構成する有機化合物としては、従来の有機EL素子の発光層を構成する材料(発光材料)であれば、特に限定されることなく用いることができる。
【0093】
非改質発光層14に用いられる発光材料としては、例えば、有機金属錯体若しくは蛍光色素等の低分子発光材料(発光性低分子化合物)、又は、π共役系高分子化合物若しくは分子分散型高分子化合物(非共役系高分子化合物中に蛍光色素を分散した構造を有する高分子化合物)等の高分子発光材料(発光性高分子化合物)が挙げられる。あるいは、比較的低い発光性を有する発光材料をホスト材料とし、比較的高い発光性を有する発光材料をドーパント材料(ゲスト材料)として混合して用いる等の、二種以上の発光材料を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
それらのなかで、高分子発光材料(発光性高分子化合物)を発光材料として用いると、上層塗布に対する物理的強度の高さ、非発光性高分子化合物の発光層20に対する密着性が向上し、有機EL素子の発光効率及び寿命の向上も向上する。
【0095】
このような発光性高分子化合物を溶液として塗布すると、その表面には微細な凹凸が生じ表面積が増大する。したがって、非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を、この微細な凹凸表面上に溶液として塗布することで接着面積が増大し、発光性高分子化合物と改質部との接着強度が非常に高くなる。また、改質部を構成する成分が発光性高分子化合物中へ浸透し得るため界面で分子が絡み合い、界面の接着強度が向上するとともに、改質部を構成する成分の濃度勾配も生じる。これらが主要因となって、有機EL素子の発光効率及び寿命が向上すると推定される。
【0096】
更に、発光効率、耐熱性及び寿命をより向上させる観点から、発光性高分子化合物のなかで、分子分散型高分子化合物を発光層20の発光材料として用いるとより好ましく、下記一般式(1)〜(4)で表される構造を有する化合物から誘導されたビニルモノマーを含む重合性モノマーを重合して得られるビニル系高分子化合物、下記一般式(5)〜(10)で表される化合物を含む重合性モノマーを重合して得られるビニル系高分子化合物、及び、下記式(11)〜(13)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子化合物を用いると、キャリア輸送性、耐熱性及び発光効率の安定性が向上するため更に好ましい。
【0097】
また、下記一般式(1)〜(4)で表される構造を有する化合物から誘導されたビニルモノマーが、それぞれ下記一般式(14)〜(16)及び(18)で表される構造を有するビニルモノマーであるとより好ましく、下記一般式(5)、(9)及び(10)で表される化合物が、それぞれ下記一般式(21)、(22)及び(23)で表される化合物であるとより好ましい。
【0098】
更に、一般式(16)で表される構造を有するビニルモノマーが、下記一般式(17)で表される構造を有するビニルモノマーであると更に好ましく、一般式(17)中のX61〜X73のうち少なくとも一つが総炭素数3〜20のアルキル基を有する置換基であると特に好ましい。また、下記一般式(19)で表される構造を有するビニルモノマー、下記一般式(20)で表される構造を有するビニルモノマーも好適に用いられる。
【0099】
更に、一般式(23)で表されるビニルモノマーについては、下記一般式(24)又は(25)で表されるビニルモノマーであるとより好ましい。上述したような好適モノマーを用いることにより、発光効率、耐熱性及び寿命が更に向上する。
【0100】
【化1】
ここで、式(1)中、X1〜X10は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、式(1)のピレン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0101】
【化2】
ここで、式(2)中、X11〜X20は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、式(2)のフェナントレン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0102】
【化3】
ここで、式(3)中、X21〜X24は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ置換基(水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基、ハロゲン原子等)を表し、n1は1〜3の整数を表し、k1及びk4はそれぞれ0〜5の整数を表し、k2及びk3はそれぞれ0〜4の整数を表す。
【0103】
【化4】
ここで、式(4)中、X25〜X29は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。k5〜k9は対応するベンゼン環への置換基の数を表し、k5及びk7は0〜5の整数を表し、k6及びk9は0〜4の整数を表し、k8は0〜2の整数を表す。また、式(4)のジフェニルナフタセン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0104】
【化5】
【0105】
【化6】
ここで、式(5)及び(6)中、L1及びL2はそれぞれ2価の基を表し、X30〜X35は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、a及びbはそれぞれ0又は1を表し、k10、k13、k14及びk15はそれぞれ0〜3の整数を表し、k11は0〜2の整数を表し、k12は0〜4の整数を表す。また、フルオランテン環を構成する炭素原子に結合した置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0106】
【化7】
【0107】
【化8】
ここで、式(7)及び(8)中、L3及びL4はそれぞれ2価の基を示し、X36〜X38は同一であっても異なっていてよく、それぞれ水素原子又は置換基を表し、Y1〜Y4は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ置換基を表し、c及びdはそれぞれ0又は1を表し、p、r及びsはそれぞれ0〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表し、フルオレン環を構成する炭素原子に結合した置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0108】
【化9】
【0109】
【化10】
ここで、式(9)及び(10)中、L5及びL6はそれぞれ2価の基を示し、X39〜X58は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、e及びfはそれぞれ0又は1を表し、X39〜X48のうち一つはL5で表される基又はビニル基が結合する炭素原子であり、それ以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよく、X49〜X58のうち一つはL6で表される基又はビニル基が結合する炭素原子であり、それ以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0110】
【化11】
【0111】
【化12】
【0112】
【化13】
【0113】
【化14】
ここで、式(14)中、L7は、単結合又はアルキレン基もしくはアリーレン基等の2価の基を表し、無置換でも置換基を有していてもよく、X2〜X10は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、式(14)のピレン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0114】
【化15】
ここで、式(15)中、L8は、単結合又はアルキル基もしくはアリール基等の2価の基であって、該2価の基は無置換でも置換基を有していてもよく、X11〜X20は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、式(15)のフェナントレン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0115】
【化16】
ここで、式(16)中、X21〜X23、X59及びX60は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はアミノ基を表す。n1は1〜3の整数を表し、n2は0又は1を表し、k1は0〜5の整数を表し、k2、k3、k16及び17はそれぞれ0〜4の整数を表す。
【0116】
【化17】
ここで、式(17)中、X61〜X73は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。n1は1〜3の整数を表し、n2は0又は1を表す。
【0117】
【化18】
ここで、式(18)中、L9は、単結合、アルキレン基又はアリーレン基を表し、無置換でも置換基を有していてもよく、X25〜X29は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。k5〜k9は対応するベンゼン環への置換基の数を表し、k5、k6及びk9はそれぞれ0〜4の整数を表し、k7は0〜5の整数を表し、k8は0〜2の整数を表す。また、式(18)のジフェニルナフタセン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0118】
【化19】
ここで、式(19)中、L10は、単結合、アルキレン基又はアリーレン基を表し、無置換でも置換基を有していてもよく、X25〜X29及びX74は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。k5〜k9及びk21は対応するベンゼン環への置換基の数を表し、k5及びk7はそれぞれ0〜5の整数を表し、k6、k9及びk21はそれぞれ0〜4の整数を表し、k8は0又は1を表す。また、式(19)のジフェニルナフタセン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0119】
【化20】
ここで、式(20)中、L10は、単結合、アルキレン基又はアリーレン基を表し、無置換でも置換基を有していてもよく、X25〜X27、X29、X74及びX75は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。k5〜k7、k9、k21及びk22は対応するベンゼン環への置換基の数を表し、k5、k7及びk22はそれぞれ0〜5の整数を表し、k6、k9及びk21はそれぞれ0〜4の整数を表す。また、式(20)の、ジフェニルナフタセン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0120】
【化21】
ここで、式(21)中、L1は2価の基を表し、X30〜X32は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、aは0又は1を表し、k10は0〜3の整数を表し、k11は0〜2の整数を表し、k12は0〜4の整数を表す。また、式(21)のフルオランテン環を構成する炭素原子に結合した置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0121】
【化22】
ここで、式(22)中、L5は2価の基を表し、eは0又は1を表す。また、式(22)のフェナントロリン環を構成する炭素原子のうちL5で表される基又はビニル基が結合する原子以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0122】
【化23】
ここで、式(23)中、L6は2価の基を表し、fは0又は1を表す。また、式(23)のフェナントロリン環を構成する炭素原子のうちL6で表される基又はビニル基が結合する原子以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0123】
【化24】
【0124】
【化25】
ここで、式(24)及び(25)中、L6は2価の基を表し、fは0又は1を表し、フェナントロリン環を構成する炭素原子のうちL6で表される基又はビニル基が結合する原子以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0125】
また、π共役系高分子化合物を用いる場合は、下記一般式(26)〜(29)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物のいずれかであると、より好ましい。なお、一般式(29)におけるArは置換又は未置換の2価の芳香族基を表す。
【0126】
【化26】
【0127】
【化27】
【0128】
【化28】
【0129】
【化29】
【0130】
また、それぞれの上記高分子化合物の有するL1〜L10が、置換又は未置換のフェニレン基であって、a〜fが1であると、上述と同様の観点から、特に好ましい。
【0131】
更に、発光層20の発光材料として用いられる上記高分子化合物のうち、2種類以上の高分子化合物が有する繰り返し単位を共重合させた共重合体を該発光材料として用いることもでき、1種類以上の上記高分子化合物が有する繰り返し単位と、ここに例示していない高分子化合物が有する繰り返し単位との共重合体を該発光材料として用いることもできる。
【0132】
発光層20中の発光性高分子化合物としては、非共役系高分子化合物を用いることもできる。このような非共役系高分子化合物としては、下記一般式(30)で表される構造単位を主鎖に有する高分子化合物が挙げられる。
【0133】
【化30】
【0134】
一般式(30)中、L11及びL12は、それぞれ2価の有機基を示し、k10及びm10は0又は1を示し、かつ(k10+m10)は1以上である。L11及びL12で表される2価の有機基としては、上記のポリマーを非共役系のものとする有機基であれば特に限定されない。すなわち、二つの多重結合間に単結合を含まないような2価の有機基(ただし芳香環は含んでもよい。)であればよい。L11及びL12としては、例えば、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のシクロアルキレン基、置換又は未置換のアリーレン基、置換又は未置換の複素環基、オキシ基(酸素原子)、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基、あるいはこれらのうちの1種又は2種以上の基を組み合わせた2価の有機基が挙げられる。
【0135】
また、一般式(30)中、X100はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はアミノ基を示し、a10は0〜8の整数を示す。なお、a10が2〜8の整数である場合、アントリレン基に置換したX100同士は同一でも異なっていてもよい。
【0136】
X100がアルキル基である場合、アルキル基は直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。また、アルキル基は未置換のものが好ましいが、置換基を有していてもよい。アルキル基の炭素数は1〜30が好ましい。好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0137】
X100がアルコキシ基である場合、アルコキシ基を構成するアルキル基は直鎖状又は分岐鎖状であってもよい。また、アルコキシ基は未置換のものが好ましいが、置換基を有していてもよい。アルコキシ基の炭素数は1〜30が好ましい。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0138】
X100がアリール基である場合、アリール基は置換又は未置換のいずれであってもよいが、アリール基の総炭素数は6〜20が好ましい。好ましいアリール基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
【0139】
X100がアリールオキシ基である場合、アリールオキシ基を構成するアリール基は置換又は未置換のいずれであってもよいが、アリールオキシ基の総炭素数は6〜20が好ましい。好ましいアリールオキシ基としては、フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基等が挙げられる。
【0140】
X100が複素環基である場合、複素環基は5員環基又は6員環基であることが好ましい。複素環基は縮合環を有していてもよく、また、置換基を有していてもよい。また、複素環基は芳香族性を有していても芳香族性を有していなくてもよい。好ましい複素環基としては、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、チエニル基、フリル基等が挙げられる。
【0141】
X100がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0142】
X100がアミノ基である場合、アミノ基は置換又は未置換のいずれであってもよく、例えば上述のアルキル基やアリール基を有するものであってもよい。アミノ基の総炭素数は0〜20が好ましい。好ましいアミノ基としては、狭義のアミノ基(−NH2)、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0143】
また、一般式(30)中のn10は1以上の整数を示し、好ましくは、非共役系高分子化合物の重量平均分子量が5000〜1000000の範囲内となるような整数である。
【0144】
非共役系高分子化合物としては、下記一般式(30a)で表される構造単位を有する非共役系高分子化合物が更に好ましい。
【0145】
【化31】
【0146】
一般式(30a)中、L13及びL14はそれぞれ2価の有機基を示す。L13及びL14は、上述のL11及びL12と同様のものを用いることができる。すなわち、例えば、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のシクロアルキレン基、置換又は未置換のアリーレン基、置換又は未置換の複素環基、オキシ基(酸素原子)、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基、あるいはこれらのうちの1種又は2種以上の基を組み合わせた2価の有機基を用いることができる。
【0147】
また、X100、a10及びn10はそれぞれ一般式(30)中のものと同義である。更に、X102としては、一般式(30)におけるX100と同様のものを例示することができる。p10は1以上の整数であり、1であるとより好ましい。b10は0〜4の整数を示すが、b10が2〜4の整数である場合、フェニレン基に置換したX102同士は同一でも異なっていてもよい。
【0148】
Ar’は置換又は未置換の2価の芳香族基を示すが、それらの中でも、置換又は未置換のフェニレン基、ナフチレン基若しくはアントリレン基又はこれらの基の組合せが好ましく、下記一般式(31)、(32)、(33)又は(34)で表される芳香族基であるとより好ましい。
【0149】
【化32】
【0150】
【化33】
【0151】
【化34】
【0152】
【化35】
【0153】
一般式(31)、(32)、(33)、(34)中、X103、X104、X105及びX106はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はアミノ基を示し、具体的には上記一般式(30)におけるX100と同様のものを例示できる。また、c10及びe10はそれぞれ0〜4の整数を示し、d10及びf10はそれぞれ0〜8の整数を示す。c10、e10が2〜4の整数である場合、フェニレン基に置換したX103又はX105はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。d10、f10が2〜8の整数である場合、アントリレン基に置換したX104又はX106はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0154】
非共役系高分子化合物としては、下記一般式(35)、(36a)又は(36b)で表される構造単位を有する非共役系高分子化合物が特に好ましい。
【0155】
【化36】
【0156】
【化37】
【0157】
【化38】
【0158】
一般式(35)、(36a)、(36b)中、L105は炭素原子又はヘテロ原子を介して構成される2価の有機基を示す。L5の具体例としては、例えば、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のシクロアルキレン基、置換又は未置換のアリーレン基、置換又は未置換の複素環基、オキシ基(酸素原子)、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基等が挙げられる。A1及びA2はそれぞれ、2価の炭化水素基を示し、その具体例としては、例えば、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のシクロアルキレン基、置換又は未置換のアリーレン基等が挙げられる。q10及びr10はそれぞれ0又は1を示し、q10が0の場合には、2価の炭化水素基であるA1同士が直接結合した構造となる。
【0159】
また、Ar’、X100、X102、a10、b10、n10及びp10は、それぞれ一般式(2)中のものと同義である。すなわち、Arは置換又は未置換の2価の芳香族基を示し、X100及びX102はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はアミノ基を示し、a10は0〜8の整数を示し、b10は0〜4の整数を示し、n10及びp10は1以上の整数を示す。
【0160】
一般式(3)中の−A1−(L15)q10−A1−としては、例えば下記式(37)〜(41)で表される基が例示される。
【0161】
【化39】
【0162】
【化40】
【0163】
【化41】
【0164】
【化42】
【0165】
【化43】
【0166】
一般式(36a)、(36b)中の−A1−(L15)q10−A1−としては、例えば上記式(40)で表されるエチレン基及び上記式(41)で表されるn−ブチレン基が例示され、A2としては、メチレン基及びエチレン基が例示される。
【0167】
一般式(35)、(36a)及び(36b)で表される非共役系高分子化合物の具体例としては、それぞれ下記式(42)又は(43)、並びに下記式(44)、(45)又は(46)で表される構造単位を有する非共役系高分子化合物が挙げられる。
【0168】
【化44】
【0169】
【化45】
【0170】
【化46】
【0171】
【化47】
【0172】
【化48】
【0173】
なお、上述した低分子発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の有機金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等を用いることができる。具体的には、例えば、特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
【0174】
発光層20には、発光材料の他、必要に応じて、従来知られているホール輸送性材料及び/又は電子輸送性材料等のキャリア輸送材料を含有させてもよい。
【0175】
ホール輸送性材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルペン誘導体若しくはトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができる。
【0176】
電子輸送性材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレン若しくはその誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体等の有機金属錯体等を用いることができる。
【0177】
キャリア輸送材料の使用量は、使用する化合物の種類等により異なるので、十分な成膜性と発光特性を阻害しない範囲で最適な添加量を決めればよい。通常、発光材料に対して1〜40質量%であり、より好ましくは2〜30質量%である。
【0178】
発光層20の膜厚は、特に制限されず、また、形成方法によっても異なるが、発光効率を更に向上させる観点から、20〜150nmであると好ましい。
【0179】
(有機薄膜層)
有機薄膜層は、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物、又は、エネルギーギャップが3.5eV以上(更には4.0eV以上)の有機高分子化合物からなる。有機薄膜層は、上記式(1)及び式(2)を満たし、且つエネルギーギャップが3.5eV以上(更には4.0eV以上)である有機高分子化合物が特に好ましい。有機薄膜層を構成する有機高分子化合物としては、上述した改質部16に用いられるのと同様の化合物を用いることができる。すなわち、極性基をもつ高分子、これら高分子を極性・非極性高分子と共重合したものあるいは末端基等に極性基の置換基をもつ極性・非極性高分子が挙げられる。なお、有機EL素子が有機薄膜層と改質部とを備える場合であって、これらがともにエネルギーギャップ4.0eV以上の有機高分子化合物を含むときは、この有機高分子化合物は有機薄膜層と改質部とにおいて同種でも異種であってもよいが、製造上の容易さから同種であることが好ましい。
【0180】
有機薄膜層に用いられる極性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル等の、不飽和アルコールもしくは不飽和エーテルの重合体又は不飽和アルコールと不飽和エーテルとの共重合体;ポリエーテル;セルロース誘導体;アクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体;ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステルやポリフタル酸等のポリアクリルエステル等、アルコール残基中に不飽和結合を持つものの重合体又は共重合体;ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、マレイン酸エステル重合体、フマル酸エステル重合体等の、酸残基中又は酸残基中とアルコール残基中とに不飽和結合を持つものの重合体又は共重合体;アクリルニトリル重合体、メタアクリルニトリル重合体、アクリルニトリルとメタアクリルニトリルとの共重合体、ポリシアン化ビニリデン、マロノニトリル重合体、フマロノニトリル重合体、マロノニトリルとフマロノニトリルとの共重合体;ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等、複素環式化合物の重合体又は共重合体;、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
【0181】
以上、本発明の有機EL素子の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0182】
本発明の有機EL素子の別の実施形態において、第一の電極層が電子注入電極(陰極)層であって、第二の電極層がホール注入電極層であってもよい。基板上に電子注入電極(陰極)層を配置した場合、電子注入電極層側を光取り出し側とすることができる。この場合には、電子注入電極層が、上述したホール注入電極層を光取り出し側とした場合の光学的条件及び膜厚条件を満たすことが好ましい。
【0183】
また、有機層として発光層を複数積層してもよく、発光層の他にホール注入層、ホール輸送層、及び/又は電子輸送層を積層してもよい。この場合、上述したように、ホール注入層はホール注入電極層の発光層側に隣接して積層され、ホール輸送層は上記ホール注入層と発光層との間に積層され、電子輸送層は電子注入電極層と発光層との間に積層されうる。
【0184】
ホール輸送層に用いられるホール輸送性材料及び電子輸送層に用いられる電子輸送性材料は、例えば、上述したものを挙げることができる。また、ホール注入層に用いられるホール注入材料は、例えばポリチオフェン若しくはポリアニリン等の公知の導電性高分子化合物を挙げることができる。
【0185】
このような塗布法により上述した有機層を形成する場合の膜厚は、有機層1種当たり好ましくは0.5〜1000nm、より好ましくは10〜500nmである。有機層の膜厚を厚く、特に20nm以上とすることにより、リーク電流の発生を防止することができる。
【0186】
また、本発明の有機EL素子の別の実施形態において、発光層の改質部は、上述した有機高分子化合物に代わって又は加えて、BAlq等の有機金属塩を含有するものであってもよい。ここで、有機金属塩とは、有機酸、アルコール、ジアルキルアミドの水素を金属で置換したものをいい、金属と配位子との配位結合が一部存在してもよいが、配位結合が全てであるものは除外される。有機金属塩としては、カルボン酸、フェノール等の有機酸の塩、アルコキシド、ジアルキルアミドの塩等が挙げられる
【0187】
カルボン酸としては、脂肪族であっても芳香族であってもよい。脂肪族カルボン酸としては、総炭素数1〜24のものが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸であっても不飽和脂肪酸カルボン酸であってもよく、カルボキシル基を2個以上有するものであってもよい。また、アリール基等の置換基を有していてもよい。具体的には、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、イソオクチル酸、デカン酸もしくはラウリル酸等の脂肪族カルボン酸、オレイン酸もしくはリシノール酸(リシノレン酸)等の不飽和脂肪族カルボン酸、又は、クエン酸、リンゴ酸もしくはシュウ酸等のジないしトリ等の多価のカルボン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、総炭素数7〜24のものが好ましく、置換基(炭素数1〜8のアルキル基、ヒドロキシ基等)を有していてもよく、具体的には、安息香酸、o−(t−ブチル)安息香酸、m−(t−ブチル)安息香酸、サリチル酸、m−(ヒドロキシ)安息香酸もしくはp−(ヒドロキシ)安息香酸等が挙げられる。
【0188】
フェノールとしては、総炭素数6〜46のものが好ましく、置換基(炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基や、フェニル基等のアリール基等)や縮合環(置換基を有していてもよいベンゼン環等の芳香環等)を有していてもよく、1価のフェノールであっても、二価以上の多価のフェノールであってもよい。具体的には、フェノール、ナフトール、4−フェニルフェノールもしくは2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)等が挙げられる。
【0189】
アルコキシドを形成するアルコールとしては、総炭素数1〜10のものが好ましく、エチルアルコール、n−プロピルアルコールもしくはn−ブチルアルコール等の第一級アルコール、イソプロピルアルコールもしくはs−ブチルアルコール等の第二級アルコール、又はt−ブチルアルコール等の第三級アルコール等が挙げられる。また、二価以上の多価アルコールであってもよく、例えばエチレングリコール等が挙げられる。
【0190】
ジアルキルアミドとしては、更に置換基を有していてもよく、総炭素数は2〜24であることが好ましい。具体的には、ジメチルアミド、ジエチルアミド、N−メチル−N−エチルアミド等が挙げられる。
【0191】
有機金属塩のなかでも、アルコキシド、フェノキシドもしくは酢酸塩等が好ましい。このような塩や錯体は、安定性に優れており、塗布溶媒への溶解性が高い傾向にあるので好ましい。
【0192】
上記有機金属塩及び有機金属錯体化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。これらは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0193】
【化49】
【0194】
【化50】
【0195】
【化51】
【0196】
【化52】
【0197】
ここで、式(C−18)及び(C−22)は、それぞれ重量平均分子量が5000〜500000であると好ましく、20000〜300000であるとより好ましい。
【0198】
更に、素子の有機層や電極の劣化を防ぐために、素子上を封止板等により封止すると好ましい。封止板は、湿気の浸入を防ぐために、接着性樹脂層を用いて、封止板を接着し密封する。封止ガスは、Ar、He若しくはN2等の不活性ガス等であると好ましい。また、この封止ガスの水分含有量は、100質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、特には1質量ppm以下であることが好ましい。この水分含有量に下限値は特にないが、通常0.1質量ppm程度である。
【0199】
次に、本発明の有機EL素子の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。ここでは図1に示したような構成を有する有機EL素子の製造方法について説明する。
【0200】
まず、用意した基板10上に、例えば、ITO等のホール注入電極層12を形成する。その形成方法は、スパッタ法若しくは蒸着法等の従来用いられている方法を採用できる。
【0201】
次に、ホール注入電極層12上に発光層20を形成する。その形成方法としては、発光層が高分子発光材料(発光性高分子化合物)を含有する場合、その発光材料が溶液から形成可能であるものならば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法若しくは印刷法等の塗布法を用いることができる。これらのうち、スピンコート法を用いることが好ましく、ホール注入電極層12の全面に塗布することにより、発光層20を形成する工程が非常に簡易になり、製造装置も簡単で安価なものとすることができる。
【0202】
また、発光層が低分子発光材料である場合、上述した塗布法の他、スパッタ法若しくは蒸着法等を用いてもよいが、改質部16を形成する場合の、有機高分子化合物の密着性及び濃度勾配を考慮すると、発光層の表面に凹凸を形成しやすい塗布法を用いることが好ましい。
【0203】
続いて、発光層20の表面付近に改質部16を形成するために、上述したような有機高分子化合物を含有し、上述したような溶媒、好ましくは極性溶媒を用いて調製した溶液を発光層20の表面に塗布する。塗布法としては、特に制限されないが、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法若しくは印刷法等を用いることができる。
【0204】
また、改質部16が所望の厚みを有するように、溶液中の有機高分子化合物の濃度を調整することが好ましい。この濃度は、0.01〜1.0質量%であると好ましい。この数値範囲は、従来の有機EL素子の高分子化合物を含有する有機層を、塗布法により形成する際に用いる溶液の濃度と比較して、非常に薄い濃度であるが、このような濃度を有する溶液を塗布することにより、適度な濃度勾配を改質部16に付与することができる傾向にある。そして、発光層20上に電子注入電極層18を形成して、有機EL素子が完成する。その形成方法は、蒸着法若しくはスパッタ法等の従来用いられている方法を採用することができる。
【0205】
なお、図7に示す構成を有する有機EL素子は、発光層を形成した後に、この層の上に式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物又はエネルギーギャップが3.5eV以上の有機高分子化合物を含有する溶液を塗布して有機薄膜層30を形成し、次いで電子注入電極18を形成することにより作製できる。図11に示す構成を有する有機EL素子については、上述のように改質部16を形成した後に、この上に式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物又はエネルギーギャップが3.5eV以上の有機高分子化合物を含有する溶液を塗布して有機薄膜層30を形成し、次いで電子注入電極18を形成すればよい。図4〜6、8〜10、12〜13に示す構成を有する有機EL素子は、公知の電子注入層22及び/又はホール注入層24の形成方法を上述した製造方法に適用すれば製造可能である。有機薄膜層30を構成する材料と改質部16を構成する材料が同じ場合は、発光層を形成した後に、この層の上に、発光層を溶解又は膨潤させることのできる溶媒と、式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物又はエネルギーギャップが3.5eV以上の有機高分子化合物と、を含む溶液を塗布することにより、改質部16と有機薄膜層30とを一度に作製することができる。
【0206】
以上、本発明の有機EL素子の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0207】
本発明の有機EL素子の製造方法の別の実施形態において、有機層が複数積層された有機EL素子の製造方法の場合、2つの有機層の間に界面を形成させるには、下層の塗布面から溶媒を除去した後、上層を塗布すればよい。この場合、必要により下層を塗布した後、加熱処理等を行ってもよい。
【0208】
また、2つの有機層の界面を形成させない場合、2つの層の境界がいわゆる傾斜組成となる様に形成することもできる。つまり、少なくとも溶媒への溶解度、溶媒、粘度、比重のいずれかが異なる材料を用いて塗布を行うことにより、2種の有機層を塗り分けたり、界面組成を傾斜状に変化させることができる。また、下層の塗布面から溶媒が完全に除去されないうちに、次の層を塗布することにより界面を形成しないようにすることもできる。この場合、2つの層の界面となる領域において、2つの層の主成分、又はドーパント材料の混合比が、質量比で10000:1〜1:1程度であることが好ましく、1000:1〜10:1程度であることがより好ましい。
【0209】
更に別の実施形態において、改質部が、有機高分子化合物に代わって又は加えて、上述した有機金属塩を含有する有機EL素子の製造方法の場合、発光層上に、塗布法によりこの有機金属塩を塗布することにより改質部を形成することが好ましい。この場合においても、改質部の厚みを所望のものにするために、塗布する有機金属塩の溶液の濃度を適宜調整するとより好ましい。
【実施例】
【0210】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0211】
(実施例1)
まず、ホール注入電極(陽極)層としてシート抵抗15Ω/□のITO膜が形成されている透明ガラス製基板のそのITO膜上に、PEDOT/PSS(Bayer社製、バイトロンP)をスピンコート法により塗布し、40nmの膜厚を有するホール注入層を形成した。次に、下記式(47)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物(分子量20000)95質量%とルブレン5質量%とをトルエンに溶解し、濃度2質量%のトルエン溶液を調製した。そして、このトルエン溶液を上記ホール注入層上にスピンコート法により塗布し、70nmの膜厚を有する発光層を形成した。
【0212】
【化53】
【0213】
次いで、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)を2−エトキシエタノールに0.1質量%溶解させて調製した溶液を、上記発光層上にスピンコート法により塗布し、180℃、N2雰囲気中で1時間乾燥することにより、有機薄膜層及び改質部を形成した。この合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0214】
続いて、改質部を形成した発光層上にLiFを0.2nmの膜厚を有するように蒸着させ、その上にAlを250nmの膜厚を有するように蒸着させて、電子注入電極(陰極)層を形成して、実施例1の有機EL素子を得た。
【0215】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は413cd/m2であり、駆動電圧は4.86Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は500時間であった。
【0216】
(実施例2)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量150000の両末端基に酸クロライドをもつポリスチレンを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0217】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は273cd/m2であり、駆動電圧は5.20Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は300時間であった。
【0218】
(実施例3)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量30000のポリ(2−ビニルピリジン)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0219】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は400cd/m2であり、駆動電圧は5.00Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は80時間であった。
【0220】
(実施例4)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量200000のPMMAを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0221】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は300cd/m2であり、駆動電圧は5.20Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は350時間であった。
【0222】
(実施例5)
実施例1の発光層に代えて、MEH−PPV(分子量100000)を用いてスピンコート法により60nmの膜厚を有する発光層を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例5の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0223】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は600cd/m2であり、駆動電圧は3.50Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は250時間であった。
【0224】
(実施例6)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)を2−エトキシエタノールに0.1質量%溶解させて溶液を調製したことに代えて、分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)50質量%と上記式(C−1)で表されるNa(acac)50質量%との混合物を2−エトキシエタノールに0.2質量%溶解させて溶液を調製したこと、及び、改質部を形成した発光層上にLiFを蒸着させることなく、Alを250nmの膜厚を有するように蒸着させた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0225】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は350cd/m2であり、駆動電圧は5.80Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は550時間であった。
【0226】
(実施例7)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量200000のポリエチレングリコールを0.1質量%メタノールに溶解させて用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0227】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は400cd/m2であり、駆動電圧は5.20Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は450時間であった。
【0228】
(実施例8)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量130000のポリビニルピロリドンを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0229】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は430cd/m2であり、駆動電圧は5.00Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は550時間であった。
【0230】
(実施例9)
LiFを蒸着しないこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。
【0231】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は130cd/m2であり、駆動電圧は6.00Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は150時間であった。
【0232】
(実施例10)
有機薄膜層と改質部を計膜厚で0.2nm形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は150cd/m2であり、駆動電圧は8.5Vであった。輝度半減寿命は300時間であった。
【0233】
なお、実施例1〜10において改質部に隣接して改質成分と同じ成分からなる有機薄膜層が形成されたが、この有機薄膜層の膜厚は2nm未満であった。
【0234】
(参考例1)
有機薄膜層と改質部を合計膜厚で31nm形成した以外は、実施例1と同様にして、参考例1の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は1cd/m2であり、駆動電圧は22Vであった。輝度半減寿命は測定できなかった。
【0235】
(比較例1)
有機薄膜層及び改質部を形成しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は18cd/m2であり、駆動電圧は8.50Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は50時間であった。
【0236】
(比較例2)
比較例1の発光層に代えて、MEH−PPV(分子量100000)を用いてスピンコート法により60nmの膜厚を有する発光層を形成した以外は比較例1と同様にして、比較例2の有機EL素子を得た。
【0237】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は80cd/m2であり、駆動電圧は3.50Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は30時間であった。
【0238】
(比較例3)
比較例1の発光層に代えて、MEH−PPV(分子量100000)とポリスチレン(分子量150000)との混合物(重量混合比50:50)を用いてスピンコート法により60nmの膜厚を有する発光層を形成した以外は比較例1と同様にして、比較例3の有機EL素子を得た。
【0239】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は2cd/m2であり、駆動電圧は10Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は測定できないほど短かった。
【0240】
(比較例4)
有機薄膜層及び改質部を形成せずまたLiFの代わりにBaOを1nm形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は18cd/m2であり、駆動電圧は5.50Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は5時間であった。また、発光面には多量のダークスポットが発生した。なお、BaOの代わりにMgOを用いると同様の結果が得られた。
【0241】
(比較例5)
有機薄膜層及び改質部を形成せずポリパラフェニレンを2nm蒸着で形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は0cd/m2であり、駆動電圧は10Vであった。寿命は測定できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0242】
十分に高い発光効率及び寿命を達成できる有機EL素子及びその製造方法が提供される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(電界発光:Electro Luminescence)素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コダック社による低分子化合物を用いた真空蒸着法により有機層を形成した積層型有機EL素子の発表以来、有機ELディスプレイの開発が盛んに行われ現在実用化されつつある。その一方で、熱安定性に優れる、有機層に発光性の高分子化合物を用いた有機EL素子の開発が盛んに行われている。有機層に高分子化合物を用いた場合、熱安定性に優れる他、有機層が主として塗布溶液を用いた塗布法により形成されることから、製造プロセスの簡略化が可能となる利点もある。更に、真空蒸着法を用いて形成された有機層は、その層の一部が形成されず、欠陥が生じる場合も多いのに対し、塗布法により形成された有機層は欠陥が極めて生じ難く、信頼性が高いという利点もある。
【0003】
しかしながら、高分子化合物を用いた有機EL素子を積層型にする場合、有機層を形成する際に用いる塗布溶液中の溶媒として、他の層の高分子化合物の特性にあまり影響を与えない溶媒を選定する必要がある。このような溶媒の選定は非常に困難であるため、高分子化合物を用いた有機EL素子としては、ホール注入層になりうる水分散系材料のPEDOT/PSSを除いては、主として有機層が単層構造であるものが採用されてきた。
【0004】
有機層が単層構造である有機EL素子は、その単一の有機層が、キャリア輸送、キャリア再結合及び発光のいずれの機能をも発揮する必要がある。しかしながら、従来の高分子化合物を用いた有機EL素子は、キャリアバランスのずれ等に起因して、そのような機能の全てを有効に発揮できず、発光効率、耐熱性、寿命等の素子特性の点で必ずしも十分とはいえないものであった。したがって、優れた素子特性を有する高分子化合物を用いた有機EL素子が、製造工程の信頼性(歩留まり)及び製造コスト等の観点から依然として要求されている。
【0005】
このような要求に応えるべく、有機層に高分子化合物を用いた積層型有機EL素子がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、アルコール溶解性バッファーポリマーと電子輸送材料を混合した溶液を塗布して電子輸送層を発光層上に形成した有機EL素子が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、陰極に用いる金属の付着性を改善させ均一発光を可能とし、電子と正孔の再結合性を高めることを目的として、発光層と陰極との間に、エネルギーギャップが4.0eV以上の絶縁性の金属酸化物を挿入してなる有機EL素子が提案されている。
【特許文献1】特開2000−150165号公報
【特許文献2】特許2793383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが上記特許文献1に記載された高分子化合物を用いた有機EL素子について詳細に検討したところ、このような有機EL素子であっても、十分に高い発光効率及び寿命を得ることのできないことが見出された。すなわち、上記特許文献1に記載の有機EL素子を発光させるためには、駆動電圧を高めに設定する必要があり、しかも、その輝度が半減するまでの寿命(以下、「輝度半減寿命」という。)は十分とはいえないものであった。これは、電子輸送層に含有されるバッファーポリマー(例えばポリビニルピロリドン等)におけるキャリア移動度が低いために、発光層への電子注入が妨げられているためであると考えられる。
【0008】
つまり、ホール数に対し、注入された電子が少なくなると、発光層において再結合できない過剰のホールが存在することになる。この過剰のホールは発光層において電子と再結合しないため、有機EL素子の発光に寄与することはないものと考えられる。
【0009】
また、特許文献2記載の構成にしたがって、発光層と陰極との間に金属絶縁物を挿入した場合であっても、発光効率及び寿命が十分とは言えず、ダークスポットの発生が見られる場合があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、十分に高い発光効率及び寿命を達成できる有機EL素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の(1)〜(5)の有機EL素子を提供する。
【0012】
(1)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第1の有機EL素子」という。)。
【0013】
(2)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層と前記電子注入電極層との間に、以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第2の有機EL素子」という。)。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【0014】
(3)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層と前記電子注入電極層との間に、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第3の有機EL素子」という。)。
【0015】
(4)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層と前記電子注入電極層との間に、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層からなる有機薄膜層が形成され、
前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第4の有機EL素子」という。)。
【0016】
(5)基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、前記発光層と前記電子注入電極層との間に、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成され、前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子(以下、「第5の有機EL素子」という。)。
【0017】
第1、第4及び第5の有機EL素子は、有機化合物を含む発光層中に当該有機化合物とは異なる高分子化合物を含有する改質部が存在する。また、この高分子化合物は発光層全体に混在しておらず、発光層中の電子注入電極層側に偏って存在している。
【0018】
第2及び第4の有機EL素子は、発光層と電子注入電極層との間に有機高分子化合物からなる有機層を備えており、その有機高分子化合物は上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物であり、有機層は有機薄膜層となっている。
【0019】
第3及び第5の有機EL素子は、発光層と電子注入電極層との間に有機高分子化合物からなる有機層を備えており、その有機高分子化合物はエネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物であり、有機層は有機薄膜層となっている。なお、本発明において、有機薄膜層の「薄膜」とは、膜厚が発光層より小さく、典型的には20nm未満(更には10nm未満)であることを意味する。
【0020】
第1〜第5の有機EL素子は、上述した改質部及び/又は有機薄膜層を備えていることを主要因として、十分に高い発光効率を発揮し、寿命も長くなる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。
【0021】
すなわち、従来の有機EL素子は、キャリア(ホール又は電子)移動度が、電子を主として移動させる層(電子注入層、電子輸送層及び発光層等)とホールを主として移動させる層(ホール注入層、ホール輸送層及び発光層等)との間で、比較的大きく異なっていたため、発光層においてホールと電子との再結合数が減少していた。発光層においてホールと電子との再結合が発生しない場合は、有機EL素子は発光しないので、発光効率が低下することになる。
【0022】
発光効率が低下すると、発光させるための駆動電圧を高める必要があり、また再結合に関与しないキャリアが多く抜けることにより、有機EL素子の有機層に大きな負荷を与えるため、有機層を構成する物質が化学変化を起こして、非発光物質になったり、更にキャリアバランスが崩れて低発光効率になることもある。これにより有機EL素子の輝度が徐々に低下していき、輝度半減寿命が短くなると考えられる。
【0023】
一方、第1〜第5の有機EL素子は、改質部及び/又は有機薄膜層付近にエネルギー障壁が生じ、これらの領域がホールに対するブロッキング層として機能するため、ホールが発光層から電子注入電極層方向に移動することを十分に抑制できるものと考えられる。したがって、その発光層にホールが十分蓄積することになり、ホールの蓄積により、その周辺部の電子注入障壁(電子を発光層に注入するのに必要なエネルギー障壁)を有効に下げるものと考えられる。以上のことから、電子とホールとの注入バランスを取ることが可能となり、発光層におけるホールと電子との再結合の確率が上昇し、十分に高い発光効率及び寿命を有する有機EL素子を得ることができると考えられる。また、発光層と金属である電子注入電極層(陰極)とが直接接することを防ぐことができることから、エネルギー移動による励起状態の失活を防ぐことが可能となる。
【0024】
第1、第4及び第5の有機EL素子においては、発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物として、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物が採用できる。また、蛍光量子収率が1%以下の有機高分子化合物が採用できる。
【0025】
第1、第4及び第5の有機EL素子においてはまた、発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物として、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物が採用できる。
【0026】
第2〜第5の有機EL素子においては、有機薄膜層の膜厚は、0.05nm〜10nmであることが好ましく、0.1nm〜4nmであることが好ましい。なお、第1、第4及び第5の有機EL素子における改質部の膜厚は、改質部を構成する有機高分子化合物の膜平均分布量が10wt%以上である部分の厚さとして定義でき、その厚さは、0.01〜20nmが好ましく、0.01〜10nmがより好ましく、0.01〜5nmが更に好ましい。したがって、第4及び第5の有機EL素子において、有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は、0.06〜30nmが好ましく、0.1〜5nmがより好ましい。
【0027】
有機薄膜層又は改質部の厚さが上記範囲内であると、有機EL素子の発光効率を効果的に向上させることができ、十分に高い寿命を付与できる。なお、有機薄膜層又は改質部の膜厚が上記下限未満であると、発光効率及び寿命の改善効果が小さくなり、上記上限を超えると、電子の通過が困難となり駆動電圧の上昇が生じたり発光が不十分になるおそれがある。
【0028】
発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物、及びエネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物のうち少なくとも1つは、極性有機高分子化合物であることが好ましい。通常、高分子発光層は極性材料ではないことが多く極薄膜である無機化合物等からなる電子注入材料を均一に付着させることが難しいが、改質部又は有機薄膜層が極性を有する高分子からなる場合は、付着性が改善され均一な状態となり、高い発光効率及び寿命を発揮しやすくなる。
【0029】
このような極性有機高分子化合物としては、下記(a)〜(c)の有機高分子化合物の1又は2以上(但し、(a)〜(c)の有機高分子化合物は置換基を有していてもよい)からなるものが挙げられる。
(a)ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン及びN−ビニルピロリドンからなる群より選ばれる化合物の重合体又は共重合体
(b)アルキル基の炭素数が2〜4であるオキシアルキレン重合体又は共重合体
(c)ポリオキサゾリン又はポリビニルブチラール
【0030】
また、その好適例として、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)及びポリビニルブチラールからなる群より選ばれる1又は2以上の有機高分子化合物が挙げられる。
【0031】
なお、発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物、及びエネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物のうち少なくとも1つは、数平均分子量が50,000以上であると特に好ましい。
【0032】
発光層を構成する有機化合物としては、発光性高分子化合物を用いることが好ましい。ここで、「発光性高分子化合物」とは、ホールと電子との再結合により励起された際に発光(蛍光、リン光)可能な高分子化合物のことをいい、ホスト材料としての発光性高分子化合物に発光性のドーパント材料を混合したものも含まれる概念である。
【0033】
改質部は、発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液の塗布により形成されたものであることが好ましい。このように、有機EL素子の発光層の改質方法として塗布法を採用することにより、改質部は濃度勾配を有すると考えられる。すなわち、改質部の電子注入電極層側は塗布された上記有機高分子化合物の濃度が高くなっており、改質部のホール注入電極層側に向かうにつれて、徐々に発光層を構成する有機化合物の濃度が高くなっていると考えられる。このような濃度勾配を有することにより、改質部は、ある程度大きな膜厚範囲を有し、段階的なブロッキング層として効果的にホールを蓄積することができるので、発光層におけるホールと電子との再結合に有効に寄与することができるものと推定される。
【0034】
なお、有機薄膜層についても、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液、又は、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液、の塗布により形成されたものであることが好ましい。
【0035】
発光層が発光性高分子化合物を含む場合、その表面は、ある程度の凹凸形状を有している。したがって、このような凹凸状の表面に上記の溶液を塗布することにより、比較的容易に上述したような濃度勾配を形成することができ、有効に発光層におけるホールと電子との再結合に寄与することができると考えられる。また、上層塗布に対する物理的強度も高くなる。また、改質部において、発光性高分子化合物と塗布された有機高分子化合物とが十分に接着するので、有機EL素子の製造工程又は使用時において、改質部が破壊され難くなる。
【0036】
塗布を良好にするために、上記の場合に用いる溶媒は極性溶媒を含有するとよく、極性溶媒としては、水酸基を有する総炭素数1〜10の鎖状化合物、炭素数2〜6のジアルキルアミド基を有する総炭素数2〜8の鎖状化合物、総炭素数2〜10の鎖状エステル及び総炭素数2〜9の鎖状カーボネートからなる群より選ばれる1又は2以上の極性溶媒が好適である。
【0037】
電子注入電極層からの電子注入を容易にするために、電子注入電極層のホール注入電極層側に、電子注入電極層に隣接して、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含有する化合物からなる電子注入層を備えるようにすることが可能である。なお、電子注入層と、改質部及び/又は有機薄膜層と、の合計膜厚は、0.5nm〜25nmが好適である。
【0038】
電子注入層として金属あるいは合金あるいは混合物を積層する場合、酸化劣化や解離したイオンの陽極までの拡散等によって、素子劣化がおこりやすいが、改質部や有機薄膜層があることにより、このような金属あるいは金属化合物を安定に保持することができるため安定な素子駆動を得ることができる。
【0039】
上述した本発明の有機EL素子は、以下の(a)〜(c)の製造方法により好適に製造することが可能である。
【0040】
(a)基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、前記発光層の電子注入電極層側に、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する溶液を塗布することにより、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記有機高分子化合物を含有する改質部を前記発光層に形成させる有機EL素子の製造方法。
【0041】
(b)基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、前記発光層と電子注入電極層との間の層として、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層を形成させる有機EL素子の製造方法。
【0042】
(c)基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、前記発光層と電子注入電極層との間の層として、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層を形成させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0043】
(a)〜(c)の製造方法において、電子注入電極層のホール注入電極層側に隣接する層として、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含有する化合物からなる電子注入層を形成させることが好ましい。なお、(a)及び(b)の製造方法、又は(a)及び(c)の製造方法を組み合わせてもよい。
【0044】
本発明の有機EL素子は、以下の構成からなる態様も含まれる。すなわち、基板と、前記基板の一側に形成された第1の電極層と、前記第1の電極層上に形成された少なくとも一つの有機層と、前記有機層のうち前記基板から最も遠い位置に配置された有機層上に形成された第2の電極層と、を備え、前記第1の電極層及び前記第2の電極層のいずれか一方がホール注入電極層であり、他方が電子注入電極層であり、前記有機層のうち少なくとも一つが、前記電子注入電極層側の表面付近に、非発光性高分子化合物を含有する改質部を有する発光層であることを特徴とする有機EL素子である。
【0045】
ここで、発光層の「表面付近」とは、発光層の表面から、大きくとも該発光層の厚さ方向中心部までの間の体積領域をいう。また、「非発光性」とは、蛍光量子収率が1%以下であることをいう。更に、「非発光性高分子化合物を含有する改質部」とは、発光層の厚さ方向において、該改質部以外の部分の発光層を構成する材料と、非発光性高分子化合物とが混在する層部分をいい、非発光性高分子化合物が存在しない層部分は該当しない。
【0046】
上記改質部についての理解を容易にするために、図16に高分子発光材料を発光層20の発光材料に用いた場合の、発光層20の表面付近の断面模式図を示す。この図16においては、符号16で示される部分が改質部であり、厚さ方向のいずれの位置においても非発光性高分子化合物の粒子22が存在している。一方、改質部以外の部分は符号14で示されており、厚さ方向のいずれの位置においても非発光性高分子化合物の粒子22が存在していない。
【0047】
なお上記態様において、発光層の改質部が、非発光性高分子化合物を含有する溶液の塗布により形成されていることが好ましく、非発光性高分子化合物が、5.0×10−9〜1.0×10−6g/cm2の厚みを有することが好ましく、2.5×10−8〜5.0×10−7g/cm2であるとより好ましい。ここで、非発光性高分子化合物等の「厚み」とは、発光層の表面付近に存在する該非発光性高分子化合物等の質量を、その発光層の該非発光性高分子化合物が存在する面の外形面積(表面の凹凸を排除した面積)で除した値である。上記態様ではまた、発光層が発光性高分子化合物を含有することが好ましく、上記溶液が極性溶媒を含有するとよい。
【0048】
上記態様の有機EL素子の製造方法としては、基板を準備する工程と、前記基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、前記第1の電極層上に少なくとも一つの有機層を形成する工程と、前記有機層のうち発光層を形成した後、前記発光層上に他の層を形成する前に、前記発光層の表面に非発光性高分子化合物を含有する溶液を塗布する工程と、前記有機層のうち前記基板から最も遠い位置に配置された有機層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の有機EL素子は、特に製造工程の信頼性が高く、しかも製造コストを低減することができる発光性高分子化合物を発光層の構成材料として用いた場合であっても、十分に高い発光効率及び寿命を達成できる。また、本発明の有機EL素子の製造方法は、上述したような有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図2】第1実施形態に係る有機EL素子の第1変形態様の模式断面図である。
【図3】第1実施形態に係る有機EL素子の第2変形態様の模式断面図である。
【図4】第2実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図5】第3実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図6】第4実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図7】第5実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図8】第6実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図9】第7実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図10】第8実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図11】第9実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図12】第10実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図13】第11実施形態に係る有機EL素子の模式断面図である。
【図14】有機薄膜層が式(1)及び式(2)を満たす場合の発光層と有機薄膜層のエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。
【図15】第11実施形態に係る有機EL素子の素子構造及びエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。
【図16】発光層20の表面付近を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…基板、12…第1の電極、14…非改質発光層、16…改質部、18…第2の電極、20…発光層、22…電子注入層、24…ホール注入層、30…有機薄膜層。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の好適な実施形態について、必要に応じて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第1の有機EL素子に対応するものである。図1に示す第1実施形態に係る有機EL素子は、基板10と、基板10の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層12及び第2の電極層18と、これらの電極層間に配置された発光層20と、を備えるものであって、第1の電極層12がホール注入電極層、第2の電極層18が電子注入電極層であり、発光層20中に、電子注入電極層側(すなわち第2の電極層18側)に偏倚して、発光層(改質部以外の発光層であり、以下「非改質発光層14」という。)を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部16が形成されている。第1実施形態に係る有機EL素子では、改質部16と非改質発光層14との界面は基板10とほぼ平行な平面である。
【0054】
図2は、第1実施形態に係る有機EL素子の第1変形態様の模式断面図であり、改質部16と非改質発光層14との界面が基板10と平行な平面になっておらず、界面が凹凸面を形成している。この変形態様においては、改質部16と非改質発光層14との明瞭な界面が存在する。
【0055】
図3は、第1実施形態に係る有機EL素子の第2変形態様の模式断面図であり、改質部16と非改質発光層14との界面が基板10と平行な平面になっておらず、界面が凹凸面を形成しており、改質部16と非改質発光層14との界面は明瞭でなく、改質部16の成分と非改質発光層14の成分とが任意の割合で混在した領域が存在する。
【0056】
図4は、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第1の有機EL素子に対応するものである。図4に示す第2実施形態に係る有機EL素子は、改質層16と第2の電極層18との間に電子注入層22を備える他は第1実施形態と同様の構成を有している。なお、図示はしていないが、第2実施形態に係る有機EL素子についても、第1実施形態における第1及び第2変形態様と同様に改質部16と非改質発光層14と界面が構成されている態様が可能である。
【0057】
図5は、本発明の第3実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第1の有機EL素子に対応するものである。図5に示す第3実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と非改質発光層14との間にホール注入層24を備える他は第1実施形態と同様の構成を有している。なお、図示はしていないが、第3実施形態に係る有機EL素子についても、第1実施形態における第1及び第2変形態様と同様に改質部16と非改質発光層14と界面が構成されている態様が可能である。
【0058】
図6は、本発明の第4実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第1の有機EL素子に対応するものである。図6に示す第4実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と非改質発光層14との間にホール注入層24を備える他は第2実施形態と同様の構成を有している。なお、図示はしていないが、第4実施形態に係る有機EL素子についても、第1実施形態における第1及び第2変形態様と同様に改質部16と非改質発光層14と界面が構成されている態様が可能である。
【0059】
図7は、本発明の第5実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第2の有機EL素子に対応するものである。図7に示す第5実施形態に係る有機EL素子は、基板10と、基板10の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層12及び第2の電極層18と、これらの電極層間に配置された発光層20と、を備えるものであって、第1の電極層12がホール注入電極層、第2の電極層18が電子注入電極層であり、発光層20と第2の電極層18との間に、上記式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層30が形成されている。
【0060】
図8は、本発明の第6実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第2の有機EL素子に対応するものである。図8に示す第6実施形態に係る有機EL素子は、有機薄膜層30と第2の電極層18との間に電子注入層22を備える他は第5実施形態と同様の構成を有している。
【0061】
図9は、本発明の第7実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第2の有機EL素子に対応するものである。図9に示す第7実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と発光層20との間にホール注入層24を備える他は第5実施形態と同様の構成を有している。
【0062】
図10は、本発明の第8実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第2の有機EL素子に対応するものである。図10に示す第8実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と発光層20との間にホール注入層24を備える他は第6実施形態と同様の構成を有している。
【0063】
なお、第5、6、7及び8実施形態に係る有機EL素子における有機薄膜層30を、上記式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物から、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物に変更することで、第5、6、7及び8実施形態に対応した上記第3の有機EL素子が得られる。
【0064】
図11は、本発明の第9実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第4の有機EL素子に対応するものである。図11に示す第9実施形態に係る有機EL素子は、基板10と、基板10の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層12及び第2の電極層18と、これらの電極層間に配置された発光層20と、を備えるものであって、第1の電極層12がホール注入電極層、第2の電極層18が電子注入電極層であり、発光層20と第2の電極層18との間に、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層30が形成され、発光層20中に、電子注入電極層側(すなわち第2の電極層18側)に偏倚して、発光層(非改質発光層14)を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部16が形成されている。
【0065】
図12は、本発明の第10実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第4の有機EL素子に対応するものである。図12に示す第10実施形態に係る有機EL素子は、第1の電極層12と発光層20との間にホール注入層24を備える他は第9実施形態と同様の構成を有している。
【0066】
図13は、本発明の第11実施形態に係る有機EL素子の模式断面図であり、上記第4の有機EL素子に対応するものである。図13に示す第11実施形態に係る有機EL素子は、有機薄膜層30と第2の電極層発光層18との間に電子注入層22を備える他は第10実施形態と同様の構成を有している。
【0067】
なお、第9、10及び11実施形態に係る有機EL素子における有機薄膜層30を、上記式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物から、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物に変更することで、第9、10及び11実施形態に対応した上記第5の有機EL素子が得られる。
【0068】
図1〜13におけるXは改質部16の厚さ(膜厚)、Yは有機薄膜層30の膜厚である。なお、上述したように、改質部16の膜厚は、改質部16を構成する有機高分子化合物の膜平均分布量が10wt%以上である部分の厚さとして定義される。また、改質部16は、非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物100%で形成されていてもよく、この有機高分子化合物と非改質発光層14を構成する有機化合物とが混在したものであってもよい。改質部16は第2の電極層18から第1の電極層12に向けて、上記高分子化合物の濃度が徐々に減じていく傾斜構造を有していることが好ましい。
【0069】
第2及び第4の有機EL素子は、式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層を備えているが、図14は、有機薄膜層がこれらの式を満たすときの発光層と有機薄膜層のエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。図14に示されるように、発光層の電子親和力の絶対値(|EALL|)の方が有機薄膜層の電子親和力の絶対値(|EAOTL|)よりも大きく、|EALL|−|EAOTL|の値は0.3eV以上である。また、有機薄膜層のイオン化ポテンシャルの絶対値(|IPOTL|)の方が発光層のイオン化ポテンシャルの絶対値(|IPLL|)よりも大きく、|IPOTL|−|IPLL|の値は0.3eV以上である。本発明において、|EALL|−|EAOTL|の値は0.4eV以上が好ましく、0.5eV以上がより好ましい。また、|IPOTL|−|IPLL|の値は0.4eV以上が好ましく、0.5eV以上がより好ましい。
【0070】
図15は、第11実施形態に係る有機EL素子の素子構造及びエネルギーダイアグラムを模式的に示す図である。図15に示すように、改質部及び/又は有機薄膜層付近にエネルギー障壁が生じ、これらの領域がホールに対するブロッキング層として機能すると考えられる。したがって、ホールが発光層から電子注入電極層方向に移動することを十分に抑制でき、その発光層にホールが十分蓄積することになる。このようにホールが蓄積すると、その周辺部の電子注入障壁(電子を発光層に注入するのに必要なエネルギー障壁)を有効に下げる。したがって、電子とホールとの注入バランスを取ることが可能となり、発光層におけるホールと電子との再結合の確率が上昇して、図15に示すような有機EL素子は十分に高い発光効率を示すと考えられる。また、有機薄膜層及び/又は改質部を極性有機高分子化合物とすることができるため、同様に極性を持つ金属化合物からなる電子注入層との密着性が良好となり、長寿命を発揮するようになると考えられる。また、発光層と金属である電子注入電極層(陰極)とが直接接することを防ぐことができることから、エネルギー移動による励起状態の失活を防ぐことも可能となる。
【0071】
このように、本発明の有機EL素子は、改質部16及び/又は有機薄膜層30が形成されていることを主要因として、発光性高分子化合物を発光層の構成材料として用いた場合であっても、十分に高い発光効率及び長寿命を発揮する。また、発光層と陰極の間にエネルギーギャップ4.0eVの無機酸化物を使用したときに問題となるダークスポットの発生や発光層との剥離のしやすさに由来した短寿命が十分なレベルまで抑制される。
【0072】
(基板)
基板10としては、非晶質基板(例えばガラス、石英等)、結晶基板(例えば、Si、GaAs、ZnSe、ZnS、GaP、InP等)が挙げられ、またこれらの結晶基板に結晶質、非晶質あるいは金属のバッファ層を形成した基板も用いることができる。また金属基板としては、Mo、Al、Pt、Ir、Au、Pd等を用いることができる。更には、樹脂フィルム基板(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)も用いることができる。
【0073】
基板10が光取り出し側となる場合、ガラスや石英等の透明基板を用いることが好ましく、特に、安価なガラスの透明基板を用いることが好ましい。透明基板には、発色光の調整のために、色フィルター膜や蛍光物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜等を設けてもよい。
【0074】
(ホール注入電極層)
第一の電極層であるホール注入電極(陽極)層12に用いる材料は、発光層へホールを効率よく注入することのできるものが好ましく、仕事関数4.5eV〜5.5eVの物質が好ましい。具体的には、透明導電膜である錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)及び酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主組成としたものが好ましい。
【0075】
これらの酸化物は、その化学量論組成から多少偏倚していてもよい。ITOでのIn2O3に対するSnO2の混合比は、1〜20質量%であると好ましく、5〜12質量%であるとより好ましい。また、IZOでのIn2O3に対するZnOの混合比は、通常、12〜32質量%程度である。ホール注入電極層12は、仕事関数を調整するため、シリカ(SiO2)を含有していてもよい。SiO2の含有量は、ITOに対して0.5〜10モル%程度が好ましい。SiO2を含有することにより、ITOの仕事関数が増大する。
【0076】
光を取り出す側の電極層は、ホール注入電極層に限らない。また、有機EL素子の発光波長領域である400〜700nmにおける透過率、特にRGB各色の波長における透過率は50%以上であると好ましく、80%以上であるとより好ましく、90%以上であると更に好ましい。光透過率が50%未満であると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度を得難くなる傾向にある。
【0077】
ホール注入電極層12の膜厚は、光を取り出す側の電極層とする場合は、上述の光透過率を考慮して決定することが好ましい。例えば酸化物の透明導電膜を用いる場合、膜厚は、50〜500nmであると好ましく、50〜300nmであるとより好ましい。ホール注入電極層12の膜厚が500nmを超えると、光透過率が不十分となると共に、基板10からのホール注入電極層12の剥離が発生しやすい。また、膜厚の減少に伴い光透過性は向上するが、膜厚が50nm未満の場合、発光層20へのホール注入効率が低下すると共に膜の強度が低下する。
【0078】
(電子注入電極層)
第二の電極層である電子注入電極(陰極)層18に用いる材料は、後述する発光層20の改質部16、又は有機薄膜層30の効果により、比較的低い仕事関数を有している必要がないため、特に限定されることはない。したがって、比較的低い仕事関数を有するLi、Na、K若しくはCs等のアルカリ金属、Mg、Ca、Sr若しくはBa等のアルカリ土類金属、LiF若しくはCsI等のアルカリハロゲン化物、Li2O等の酸化物、La、Ce、Sn、Zn若しくはZr等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属と特性が近い金属を用いることができ、更には、比較的高い仕事関数を有するAl,Ag,In,Ti,Cu,Au,Mo,W,Pt,Pd若しくはNi、又は、これらの金属の合金、或いはこれらの金属と他の金属との合金をも用いることが可能である。また、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0079】
これらの中では、発光層20の機能を有効に発揮させるために、LiFを電子注入電極層18に用いると好ましい。従来は、発光層に発光性高分子化合物を用いた有機EL素子は、電子注入電極層にLiFを用いると、十分な発光効率及び寿命を得ることが困難であった。しかしながら、本実施形態の有機EL素子は、発光層20に改質部16を設けることにより、また、有機薄膜層30を設けることにより、電子注入電極層18にLiFを用いても、電子注入障壁を実質的に低減できLiFとの密着性を高めることができることから、優れた発光効率及び寿命を達成することができる。
【0080】
電子注入電極層18の膜厚は、発光層20への電子注入が可能であれば特に制限されないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いる場合は、好ましくは0.1〜100nm、より好ましくは1.0〜50nmである。また、アルカリハロゲン化物もしくはLi2O等の酸化物を用いる場合の膜厚は、発光層20への電子注入能力の点からできるだけ薄い方が好ましく、具体的には、10nm以下であると好ましく、5nm以下であるとより好ましい。
【0081】
(発光層)
発光層20としては、上述したとおり、電子注入電極層側に偏倚して(すなわち、第2の電極層18側の界面付近に)、非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部16を有する態様が可能である。
【0082】
改質部16に含有される高分子化合物は、絶縁性が比較的に高い場合有機EL素子の発光効率がより向上し、しかもより高寿命となることから、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物、又は、エネルギーギャップが3.5eV以上(更には4.0eV以上)の有機高分子化合物であることが好ましい。改質部16に含有される高分子化合物として特に好ましいのは、上記式(1)及び式(2)を満たし、且つエネルギーギャップが3.5eV以上(更には4.0eV以上)である有機高分子化合物である。
【0083】
絶縁性と、発光効率の向上及び高寿命化とが相関する要因は明らかではないが、絶縁性の高い物質を含有する改質部がホールに対するブロッキング層として効果的且つ確実に機能するためと推測される。より詳しく考察すると、ホールが改質部16に蓄積することにより、電子注入電極層からの電子注入障壁を有効に低下させることができると考えられる。この現象並びに上述したホールの蓄積により、発光層において過剰なホールの注入又は過剰な電子の注入がなされることなく、適切なホールと電子のバランスを取ることができるので、発光層におけるホールと電子との再結合確率が上昇し、発光効率も向上し、長寿命化がなされるものと推測される。
【0084】
改質部16に含有される有機高分子化合物としては、極性基をもつ高分子が挙げられ、これら高分子を極性・非極性高分子と共重合したものあるいは末端基等に極性基の置換基をもつ極性・非極性高分子も含まれる。
【0085】
極性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル等の、不飽和アルコールもしくは不飽和エーテルの重合体又は不飽和アルコールと不飽和エーテルとの共重合体;ポリエーテル;セルロース誘導体;アクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体;ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステルやポリフタル酸等のポリアクリルエステル等、アルコール残基中に不飽和結合を持つものの重合体又は共重合体;ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、マレイン酸エステル重合体、フマル酸エステル重合体等の、酸残基中又は酸残基中とアルコール残基中とに不飽和結合を持つものの重合体又は共重合体;アクリルニトリル重合体、メタアクリルニトリル重合体、アクリルニトリルとメタアクリルニトリルとの共重合体、ポリシアン化ビニリデン、マロノニトリル重合体、フマロノニトリル重合体、マロノニトリルとフマロノニトリルとの共重合体;ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等、複素環式化合物の重合体又は共重合体;、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
【0086】
これらの中では、有機EL素子の発光効率及び寿命をより高める観点から、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリプロピレングリコール、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリビニル酢酸、ポリビニルブチラール、置換ポリスチレン、ポリ−N−ビニルピロリドンを用いると好ましい。
【0087】
非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、後述する濃度勾配を適切に形成できることから、2000以上であることが好ましい。Mwが2000未満であると、有機EL素子1の発光効率が低下する傾向にあり、寿命が短くなる傾向にある。これは、膜質が低下し凝集等が起こりやすくなっているため、改質部16がホールに対するブロッキング層として適切に機能しなくなることに起因すると考えられる。
【0088】
発光層20の改質部16は、非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する溶液の塗布により形成されていると好ましい。このようにして改質部16を形成すると、有機EL素子の発光効率及び寿命がより向上する。その要因は詳細には明らかにされていないが、改質部16の濃度勾配によるものと考えられる。すなわち、改質部16の電子注入電極層側は塗布された有機高分子化合物の占める割合(濃度)が高く、非改質発光層14を構成する物質の濃度が低くなっていると考えられる。そして、改質部16のホール注入電極層12側に向かうにつれて、徐々に塗布された有機高分子化合物の濃度が低くなっていき、代わって、非改質発光層14を構成する物質の濃度が高くなっていると考えられる。このような濃度勾配を有することにより、改質部16は、ある程度大きな膜厚範囲を有し、ホールに対する段階的なブロッキング層として効果的に機能することができるので、有効に発光層におけるホールと電子との再結合に寄与すると考えられる。
【0089】
上記溶液に用いられる溶媒(溶剤)としては、上述した有機高分子化合物を溶解可能のものであれば、特に限定されることなく用いることができる。それらのなかで、塗布性及び溶解性等の観点から、該溶媒が極性溶媒であると好ましい。
【0090】
このような極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミドもしくは2−エトキシエタノール等を挙げることができ、2−エトキシエタノールを用いるとより好ましい。
【0091】
改質部の膜厚は、0.01〜20nmが好ましく、0.01〜10nmがより好ましく、0.01〜5nmが更に好ましい。この厚さは、改質部16を形成するときの各種条件を適宜制御することにより調整可能である。例えば、上述した塗布により改質部16を形成する場合、塗布溶液中の有機高分子化合物の濃度、塗布時間又は塗布溶液量等を制御することにより、厚さを調整することができる。このような塗布を行う方法(塗布法)としては、特に制限されないが、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法若しくは印刷法等が適用可能である。
【0092】
非改質発光層14を構成する有機化合物としては、従来の有機EL素子の発光層を構成する材料(発光材料)であれば、特に限定されることなく用いることができる。
【0093】
非改質発光層14に用いられる発光材料としては、例えば、有機金属錯体若しくは蛍光色素等の低分子発光材料(発光性低分子化合物)、又は、π共役系高分子化合物若しくは分子分散型高分子化合物(非共役系高分子化合物中に蛍光色素を分散した構造を有する高分子化合物)等の高分子発光材料(発光性高分子化合物)が挙げられる。あるいは、比較的低い発光性を有する発光材料をホスト材料とし、比較的高い発光性を有する発光材料をドーパント材料(ゲスト材料)として混合して用いる等の、二種以上の発光材料を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
それらのなかで、高分子発光材料(発光性高分子化合物)を発光材料として用いると、上層塗布に対する物理的強度の高さ、非発光性高分子化合物の発光層20に対する密着性が向上し、有機EL素子の発光効率及び寿命の向上も向上する。
【0095】
このような発光性高分子化合物を溶液として塗布すると、その表面には微細な凹凸が生じ表面積が増大する。したがって、非改質発光層14を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を、この微細な凹凸表面上に溶液として塗布することで接着面積が増大し、発光性高分子化合物と改質部との接着強度が非常に高くなる。また、改質部を構成する成分が発光性高分子化合物中へ浸透し得るため界面で分子が絡み合い、界面の接着強度が向上するとともに、改質部を構成する成分の濃度勾配も生じる。これらが主要因となって、有機EL素子の発光効率及び寿命が向上すると推定される。
【0096】
更に、発光効率、耐熱性及び寿命をより向上させる観点から、発光性高分子化合物のなかで、分子分散型高分子化合物を発光層20の発光材料として用いるとより好ましく、下記一般式(1)〜(4)で表される構造を有する化合物から誘導されたビニルモノマーを含む重合性モノマーを重合して得られるビニル系高分子化合物、下記一般式(5)〜(10)で表される化合物を含む重合性モノマーを重合して得られるビニル系高分子化合物、及び、下記式(11)〜(13)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子化合物を用いると、キャリア輸送性、耐熱性及び発光効率の安定性が向上するため更に好ましい。
【0097】
また、下記一般式(1)〜(4)で表される構造を有する化合物から誘導されたビニルモノマーが、それぞれ下記一般式(14)〜(16)及び(18)で表される構造を有するビニルモノマーであるとより好ましく、下記一般式(5)、(9)及び(10)で表される化合物が、それぞれ下記一般式(21)、(22)及び(23)で表される化合物であるとより好ましい。
【0098】
更に、一般式(16)で表される構造を有するビニルモノマーが、下記一般式(17)で表される構造を有するビニルモノマーであると更に好ましく、一般式(17)中のX61〜X73のうち少なくとも一つが総炭素数3〜20のアルキル基を有する置換基であると特に好ましい。また、下記一般式(19)で表される構造を有するビニルモノマー、下記一般式(20)で表される構造を有するビニルモノマーも好適に用いられる。
【0099】
更に、一般式(23)で表されるビニルモノマーについては、下記一般式(24)又は(25)で表されるビニルモノマーであるとより好ましい。上述したような好適モノマーを用いることにより、発光効率、耐熱性及び寿命が更に向上する。
【0100】
【化1】
ここで、式(1)中、X1〜X10は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、式(1)のピレン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0101】
【化2】
ここで、式(2)中、X11〜X20は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、式(2)のフェナントレン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0102】
【化3】
ここで、式(3)中、X21〜X24は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ置換基(水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基、ハロゲン原子等)を表し、n1は1〜3の整数を表し、k1及びk4はそれぞれ0〜5の整数を表し、k2及びk3はそれぞれ0〜4の整数を表す。
【0103】
【化4】
ここで、式(4)中、X25〜X29は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。k5〜k9は対応するベンゼン環への置換基の数を表し、k5及びk7は0〜5の整数を表し、k6及びk9は0〜4の整数を表し、k8は0〜2の整数を表す。また、式(4)のジフェニルナフタセン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0104】
【化5】
【0105】
【化6】
ここで、式(5)及び(6)中、L1及びL2はそれぞれ2価の基を表し、X30〜X35は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、a及びbはそれぞれ0又は1を表し、k10、k13、k14及びk15はそれぞれ0〜3の整数を表し、k11は0〜2の整数を表し、k12は0〜4の整数を表す。また、フルオランテン環を構成する炭素原子に結合した置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0106】
【化7】
【0107】
【化8】
ここで、式(7)及び(8)中、L3及びL4はそれぞれ2価の基を示し、X36〜X38は同一であっても異なっていてよく、それぞれ水素原子又は置換基を表し、Y1〜Y4は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ置換基を表し、c及びdはそれぞれ0又は1を表し、p、r及びsはそれぞれ0〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表し、フルオレン環を構成する炭素原子に結合した置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0108】
【化9】
【0109】
【化10】
ここで、式(9)及び(10)中、L5及びL6はそれぞれ2価の基を示し、X39〜X58は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、e及びfはそれぞれ0又は1を表し、X39〜X48のうち一つはL5で表される基又はビニル基が結合する炭素原子であり、それ以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよく、X49〜X58のうち一つはL6で表される基又はビニル基が結合する炭素原子であり、それ以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0110】
【化11】
【0111】
【化12】
【0112】
【化13】
【0113】
【化14】
ここで、式(14)中、L7は、単結合又はアルキレン基もしくはアリーレン基等の2価の基を表し、無置換でも置換基を有していてもよく、X2〜X10は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、式(14)のピレン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0114】
【化15】
ここで、式(15)中、L8は、単結合又はアルキル基もしくはアリール基等の2価の基であって、該2価の基は無置換でも置換基を有していてもよく、X11〜X20は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。また、式(15)のフェナントレン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0115】
【化16】
ここで、式(16)中、X21〜X23、X59及びX60は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はアミノ基を表す。n1は1〜3の整数を表し、n2は0又は1を表し、k1は0〜5の整数を表し、k2、k3、k16及び17はそれぞれ0〜4の整数を表す。
【0116】
【化17】
ここで、式(17)中、X61〜X73は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。n1は1〜3の整数を表し、n2は0又は1を表す。
【0117】
【化18】
ここで、式(18)中、L9は、単結合、アルキレン基又はアリーレン基を表し、無置換でも置換基を有していてもよく、X25〜X29は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。k5〜k9は対応するベンゼン環への置換基の数を表し、k5、k6及びk9はそれぞれ0〜4の整数を表し、k7は0〜5の整数を表し、k8は0〜2の整数を表す。また、式(18)のジフェニルナフタセン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0118】
【化19】
ここで、式(19)中、L10は、単結合、アルキレン基又はアリーレン基を表し、無置換でも置換基を有していてもよく、X25〜X29及びX74は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。k5〜k9及びk21は対応するベンゼン環への置換基の数を表し、k5及びk7はそれぞれ0〜5の整数を表し、k6、k9及びk21はそれぞれ0〜4の整数を表し、k8は0又は1を表す。また、式(19)のジフェニルナフタセン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0119】
【化20】
ここで、式(20)中、L10は、単結合、アルキレン基又はアリーレン基を表し、無置換でも置換基を有していてもよく、X25〜X27、X29、X74及びX75は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。k5〜k7、k9、k21及びk22は対応するベンゼン環への置換基の数を表し、k5、k7及びk22はそれぞれ0〜5の整数を表し、k6、k9及びk21はそれぞれ0〜4の整数を表す。また、式(20)の、ジフェニルナフタセン環を構成する炭素原子に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0120】
【化21】
ここで、式(21)中、L1は2価の基を表し、X30〜X32は同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、aは0又は1を表し、k10は0〜3の整数を表し、k11は0〜2の整数を表し、k12は0〜4の整数を表す。また、式(21)のフルオランテン環を構成する炭素原子に結合した置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0121】
【化22】
ここで、式(22)中、L5は2価の基を表し、eは0又は1を表す。また、式(22)のフェナントロリン環を構成する炭素原子のうちL5で表される基又はビニル基が結合する原子以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0122】
【化23】
ここで、式(23)中、L6は2価の基を表し、fは0又は1を表す。また、式(23)のフェナントロリン環を構成する炭素原子のうちL6で表される基又はビニル基が結合する原子以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0123】
【化24】
【0124】
【化25】
ここで、式(24)及び(25)中、L6は2価の基を表し、fは0又は1を表し、フェナントロリン環を構成する炭素原子のうちL6で表される基又はビニル基が結合する原子以外の炭素原子には置換基が結合していてもよく、該置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
【0125】
また、π共役系高分子化合物を用いる場合は、下記一般式(26)〜(29)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物のいずれかであると、より好ましい。なお、一般式(29)におけるArは置換又は未置換の2価の芳香族基を表す。
【0126】
【化26】
【0127】
【化27】
【0128】
【化28】
【0129】
【化29】
【0130】
また、それぞれの上記高分子化合物の有するL1〜L10が、置換又は未置換のフェニレン基であって、a〜fが1であると、上述と同様の観点から、特に好ましい。
【0131】
更に、発光層20の発光材料として用いられる上記高分子化合物のうち、2種類以上の高分子化合物が有する繰り返し単位を共重合させた共重合体を該発光材料として用いることもでき、1種類以上の上記高分子化合物が有する繰り返し単位と、ここに例示していない高分子化合物が有する繰り返し単位との共重合体を該発光材料として用いることもできる。
【0132】
発光層20中の発光性高分子化合物としては、非共役系高分子化合物を用いることもできる。このような非共役系高分子化合物としては、下記一般式(30)で表される構造単位を主鎖に有する高分子化合物が挙げられる。
【0133】
【化30】
【0134】
一般式(30)中、L11及びL12は、それぞれ2価の有機基を示し、k10及びm10は0又は1を示し、かつ(k10+m10)は1以上である。L11及びL12で表される2価の有機基としては、上記のポリマーを非共役系のものとする有機基であれば特に限定されない。すなわち、二つの多重結合間に単結合を含まないような2価の有機基(ただし芳香環は含んでもよい。)であればよい。L11及びL12としては、例えば、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のシクロアルキレン基、置換又は未置換のアリーレン基、置換又は未置換の複素環基、オキシ基(酸素原子)、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基、あるいはこれらのうちの1種又は2種以上の基を組み合わせた2価の有機基が挙げられる。
【0135】
また、一般式(30)中、X100はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はアミノ基を示し、a10は0〜8の整数を示す。なお、a10が2〜8の整数である場合、アントリレン基に置換したX100同士は同一でも異なっていてもよい。
【0136】
X100がアルキル基である場合、アルキル基は直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。また、アルキル基は未置換のものが好ましいが、置換基を有していてもよい。アルキル基の炭素数は1〜30が好ましい。好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0137】
X100がアルコキシ基である場合、アルコキシ基を構成するアルキル基は直鎖状又は分岐鎖状であってもよい。また、アルコキシ基は未置換のものが好ましいが、置換基を有していてもよい。アルコキシ基の炭素数は1〜30が好ましい。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0138】
X100がアリール基である場合、アリール基は置換又は未置換のいずれであってもよいが、アリール基の総炭素数は6〜20が好ましい。好ましいアリール基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
【0139】
X100がアリールオキシ基である場合、アリールオキシ基を構成するアリール基は置換又は未置換のいずれであってもよいが、アリールオキシ基の総炭素数は6〜20が好ましい。好ましいアリールオキシ基としては、フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基等が挙げられる。
【0140】
X100が複素環基である場合、複素環基は5員環基又は6員環基であることが好ましい。複素環基は縮合環を有していてもよく、また、置換基を有していてもよい。また、複素環基は芳香族性を有していても芳香族性を有していなくてもよい。好ましい複素環基としては、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、チエニル基、フリル基等が挙げられる。
【0141】
X100がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0142】
X100がアミノ基である場合、アミノ基は置換又は未置換のいずれであってもよく、例えば上述のアルキル基やアリール基を有するものであってもよい。アミノ基の総炭素数は0〜20が好ましい。好ましいアミノ基としては、狭義のアミノ基(−NH2)、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0143】
また、一般式(30)中のn10は1以上の整数を示し、好ましくは、非共役系高分子化合物の重量平均分子量が5000〜1000000の範囲内となるような整数である。
【0144】
非共役系高分子化合物としては、下記一般式(30a)で表される構造単位を有する非共役系高分子化合物が更に好ましい。
【0145】
【化31】
【0146】
一般式(30a)中、L13及びL14はそれぞれ2価の有機基を示す。L13及びL14は、上述のL11及びL12と同様のものを用いることができる。すなわち、例えば、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のシクロアルキレン基、置換又は未置換のアリーレン基、置換又は未置換の複素環基、オキシ基(酸素原子)、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基、あるいはこれらのうちの1種又は2種以上の基を組み合わせた2価の有機基を用いることができる。
【0147】
また、X100、a10及びn10はそれぞれ一般式(30)中のものと同義である。更に、X102としては、一般式(30)におけるX100と同様のものを例示することができる。p10は1以上の整数であり、1であるとより好ましい。b10は0〜4の整数を示すが、b10が2〜4の整数である場合、フェニレン基に置換したX102同士は同一でも異なっていてもよい。
【0148】
Ar’は置換又は未置換の2価の芳香族基を示すが、それらの中でも、置換又は未置換のフェニレン基、ナフチレン基若しくはアントリレン基又はこれらの基の組合せが好ましく、下記一般式(31)、(32)、(33)又は(34)で表される芳香族基であるとより好ましい。
【0149】
【化32】
【0150】
【化33】
【0151】
【化34】
【0152】
【化35】
【0153】
一般式(31)、(32)、(33)、(34)中、X103、X104、X105及びX106はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はアミノ基を示し、具体的には上記一般式(30)におけるX100と同様のものを例示できる。また、c10及びe10はそれぞれ0〜4の整数を示し、d10及びf10はそれぞれ0〜8の整数を示す。c10、e10が2〜4の整数である場合、フェニレン基に置換したX103又はX105はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。d10、f10が2〜8の整数である場合、アントリレン基に置換したX104又はX106はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0154】
非共役系高分子化合物としては、下記一般式(35)、(36a)又は(36b)で表される構造単位を有する非共役系高分子化合物が特に好ましい。
【0155】
【化36】
【0156】
【化37】
【0157】
【化38】
【0158】
一般式(35)、(36a)、(36b)中、L105は炭素原子又はヘテロ原子を介して構成される2価の有機基を示す。L5の具体例としては、例えば、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のシクロアルキレン基、置換又は未置換のアリーレン基、置換又は未置換の複素環基、オキシ基(酸素原子)、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基等が挙げられる。A1及びA2はそれぞれ、2価の炭化水素基を示し、その具体例としては、例えば、置換又は未置換のアルキレン基、置換又は未置換のシクロアルキレン基、置換又は未置換のアリーレン基等が挙げられる。q10及びr10はそれぞれ0又は1を示し、q10が0の場合には、2価の炭化水素基であるA1同士が直接結合した構造となる。
【0159】
また、Ar’、X100、X102、a10、b10、n10及びp10は、それぞれ一般式(2)中のものと同義である。すなわち、Arは置換又は未置換の2価の芳香族基を示し、X100及びX102はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はアミノ基を示し、a10は0〜8の整数を示し、b10は0〜4の整数を示し、n10及びp10は1以上の整数を示す。
【0160】
一般式(3)中の−A1−(L15)q10−A1−としては、例えば下記式(37)〜(41)で表される基が例示される。
【0161】
【化39】
【0162】
【化40】
【0163】
【化41】
【0164】
【化42】
【0165】
【化43】
【0166】
一般式(36a)、(36b)中の−A1−(L15)q10−A1−としては、例えば上記式(40)で表されるエチレン基及び上記式(41)で表されるn−ブチレン基が例示され、A2としては、メチレン基及びエチレン基が例示される。
【0167】
一般式(35)、(36a)及び(36b)で表される非共役系高分子化合物の具体例としては、それぞれ下記式(42)又は(43)、並びに下記式(44)、(45)又は(46)で表される構造単位を有する非共役系高分子化合物が挙げられる。
【0168】
【化44】
【0169】
【化45】
【0170】
【化46】
【0171】
【化47】
【0172】
【化48】
【0173】
なお、上述した低分子発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の有機金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等を用いることができる。具体的には、例えば、特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
【0174】
発光層20には、発光材料の他、必要に応じて、従来知られているホール輸送性材料及び/又は電子輸送性材料等のキャリア輸送材料を含有させてもよい。
【0175】
ホール輸送性材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルペン誘導体若しくはトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができる。
【0176】
電子輸送性材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレン若しくはその誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体等の有機金属錯体等を用いることができる。
【0177】
キャリア輸送材料の使用量は、使用する化合物の種類等により異なるので、十分な成膜性と発光特性を阻害しない範囲で最適な添加量を決めればよい。通常、発光材料に対して1〜40質量%であり、より好ましくは2〜30質量%である。
【0178】
発光層20の膜厚は、特に制限されず、また、形成方法によっても異なるが、発光効率を更に向上させる観点から、20〜150nmであると好ましい。
【0179】
(有機薄膜層)
有機薄膜層は、上記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物、又は、エネルギーギャップが3.5eV以上(更には4.0eV以上)の有機高分子化合物からなる。有機薄膜層は、上記式(1)及び式(2)を満たし、且つエネルギーギャップが3.5eV以上(更には4.0eV以上)である有機高分子化合物が特に好ましい。有機薄膜層を構成する有機高分子化合物としては、上述した改質部16に用いられるのと同様の化合物を用いることができる。すなわち、極性基をもつ高分子、これら高分子を極性・非極性高分子と共重合したものあるいは末端基等に極性基の置換基をもつ極性・非極性高分子が挙げられる。なお、有機EL素子が有機薄膜層と改質部とを備える場合であって、これらがともにエネルギーギャップ4.0eV以上の有機高分子化合物を含むときは、この有機高分子化合物は有機薄膜層と改質部とにおいて同種でも異種であってもよいが、製造上の容易さから同種であることが好ましい。
【0180】
有機薄膜層に用いられる極性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル等の、不飽和アルコールもしくは不飽和エーテルの重合体又は不飽和アルコールと不飽和エーテルとの共重合体;ポリエーテル;セルロース誘導体;アクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体;ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステルやポリフタル酸等のポリアクリルエステル等、アルコール残基中に不飽和結合を持つものの重合体又は共重合体;ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、マレイン酸エステル重合体、フマル酸エステル重合体等の、酸残基中又は酸残基中とアルコール残基中とに不飽和結合を持つものの重合体又は共重合体;アクリルニトリル重合体、メタアクリルニトリル重合体、アクリルニトリルとメタアクリルニトリルとの共重合体、ポリシアン化ビニリデン、マロノニトリル重合体、フマロノニトリル重合体、マロノニトリルとフマロノニトリルとの共重合体;ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等、複素環式化合物の重合体又は共重合体;、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
【0181】
以上、本発明の有機EL素子の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0182】
本発明の有機EL素子の別の実施形態において、第一の電極層が電子注入電極(陰極)層であって、第二の電極層がホール注入電極層であってもよい。基板上に電子注入電極(陰極)層を配置した場合、電子注入電極層側を光取り出し側とすることができる。この場合には、電子注入電極層が、上述したホール注入電極層を光取り出し側とした場合の光学的条件及び膜厚条件を満たすことが好ましい。
【0183】
また、有機層として発光層を複数積層してもよく、発光層の他にホール注入層、ホール輸送層、及び/又は電子輸送層を積層してもよい。この場合、上述したように、ホール注入層はホール注入電極層の発光層側に隣接して積層され、ホール輸送層は上記ホール注入層と発光層との間に積層され、電子輸送層は電子注入電極層と発光層との間に積層されうる。
【0184】
ホール輸送層に用いられるホール輸送性材料及び電子輸送層に用いられる電子輸送性材料は、例えば、上述したものを挙げることができる。また、ホール注入層に用いられるホール注入材料は、例えばポリチオフェン若しくはポリアニリン等の公知の導電性高分子化合物を挙げることができる。
【0185】
このような塗布法により上述した有機層を形成する場合の膜厚は、有機層1種当たり好ましくは0.5〜1000nm、より好ましくは10〜500nmである。有機層の膜厚を厚く、特に20nm以上とすることにより、リーク電流の発生を防止することができる。
【0186】
また、本発明の有機EL素子の別の実施形態において、発光層の改質部は、上述した有機高分子化合物に代わって又は加えて、BAlq等の有機金属塩を含有するものであってもよい。ここで、有機金属塩とは、有機酸、アルコール、ジアルキルアミドの水素を金属で置換したものをいい、金属と配位子との配位結合が一部存在してもよいが、配位結合が全てであるものは除外される。有機金属塩としては、カルボン酸、フェノール等の有機酸の塩、アルコキシド、ジアルキルアミドの塩等が挙げられる
【0187】
カルボン酸としては、脂肪族であっても芳香族であってもよい。脂肪族カルボン酸としては、総炭素数1〜24のものが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸であっても不飽和脂肪酸カルボン酸であってもよく、カルボキシル基を2個以上有するものであってもよい。また、アリール基等の置換基を有していてもよい。具体的には、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、イソオクチル酸、デカン酸もしくはラウリル酸等の脂肪族カルボン酸、オレイン酸もしくはリシノール酸(リシノレン酸)等の不飽和脂肪族カルボン酸、又は、クエン酸、リンゴ酸もしくはシュウ酸等のジないしトリ等の多価のカルボン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、総炭素数7〜24のものが好ましく、置換基(炭素数1〜8のアルキル基、ヒドロキシ基等)を有していてもよく、具体的には、安息香酸、o−(t−ブチル)安息香酸、m−(t−ブチル)安息香酸、サリチル酸、m−(ヒドロキシ)安息香酸もしくはp−(ヒドロキシ)安息香酸等が挙げられる。
【0188】
フェノールとしては、総炭素数6〜46のものが好ましく、置換基(炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基や、フェニル基等のアリール基等)や縮合環(置換基を有していてもよいベンゼン環等の芳香環等)を有していてもよく、1価のフェノールであっても、二価以上の多価のフェノールであってもよい。具体的には、フェノール、ナフトール、4−フェニルフェノールもしくは2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)等が挙げられる。
【0189】
アルコキシドを形成するアルコールとしては、総炭素数1〜10のものが好ましく、エチルアルコール、n−プロピルアルコールもしくはn−ブチルアルコール等の第一級アルコール、イソプロピルアルコールもしくはs−ブチルアルコール等の第二級アルコール、又はt−ブチルアルコール等の第三級アルコール等が挙げられる。また、二価以上の多価アルコールであってもよく、例えばエチレングリコール等が挙げられる。
【0190】
ジアルキルアミドとしては、更に置換基を有していてもよく、総炭素数は2〜24であることが好ましい。具体的には、ジメチルアミド、ジエチルアミド、N−メチル−N−エチルアミド等が挙げられる。
【0191】
有機金属塩のなかでも、アルコキシド、フェノキシドもしくは酢酸塩等が好ましい。このような塩や錯体は、安定性に優れており、塗布溶媒への溶解性が高い傾向にあるので好ましい。
【0192】
上記有機金属塩及び有機金属錯体化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。これらは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0193】
【化49】
【0194】
【化50】
【0195】
【化51】
【0196】
【化52】
【0197】
ここで、式(C−18)及び(C−22)は、それぞれ重量平均分子量が5000〜500000であると好ましく、20000〜300000であるとより好ましい。
【0198】
更に、素子の有機層や電極の劣化を防ぐために、素子上を封止板等により封止すると好ましい。封止板は、湿気の浸入を防ぐために、接着性樹脂層を用いて、封止板を接着し密封する。封止ガスは、Ar、He若しくはN2等の不活性ガス等であると好ましい。また、この封止ガスの水分含有量は、100質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、特には1質量ppm以下であることが好ましい。この水分含有量に下限値は特にないが、通常0.1質量ppm程度である。
【0199】
次に、本発明の有機EL素子の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。ここでは図1に示したような構成を有する有機EL素子の製造方法について説明する。
【0200】
まず、用意した基板10上に、例えば、ITO等のホール注入電極層12を形成する。その形成方法は、スパッタ法若しくは蒸着法等の従来用いられている方法を採用できる。
【0201】
次に、ホール注入電極層12上に発光層20を形成する。その形成方法としては、発光層が高分子発光材料(発光性高分子化合物)を含有する場合、その発光材料が溶液から形成可能であるものならば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法若しくは印刷法等の塗布法を用いることができる。これらのうち、スピンコート法を用いることが好ましく、ホール注入電極層12の全面に塗布することにより、発光層20を形成する工程が非常に簡易になり、製造装置も簡単で安価なものとすることができる。
【0202】
また、発光層が低分子発光材料である場合、上述した塗布法の他、スパッタ法若しくは蒸着法等を用いてもよいが、改質部16を形成する場合の、有機高分子化合物の密着性及び濃度勾配を考慮すると、発光層の表面に凹凸を形成しやすい塗布法を用いることが好ましい。
【0203】
続いて、発光層20の表面付近に改質部16を形成するために、上述したような有機高分子化合物を含有し、上述したような溶媒、好ましくは極性溶媒を用いて調製した溶液を発光層20の表面に塗布する。塗布法としては、特に制限されないが、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法若しくは印刷法等を用いることができる。
【0204】
また、改質部16が所望の厚みを有するように、溶液中の有機高分子化合物の濃度を調整することが好ましい。この濃度は、0.01〜1.0質量%であると好ましい。この数値範囲は、従来の有機EL素子の高分子化合物を含有する有機層を、塗布法により形成する際に用いる溶液の濃度と比較して、非常に薄い濃度であるが、このような濃度を有する溶液を塗布することにより、適度な濃度勾配を改質部16に付与することができる傾向にある。そして、発光層20上に電子注入電極層18を形成して、有機EL素子が完成する。その形成方法は、蒸着法若しくはスパッタ法等の従来用いられている方法を採用することができる。
【0205】
なお、図7に示す構成を有する有機EL素子は、発光層を形成した後に、この層の上に式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物又はエネルギーギャップが3.5eV以上の有機高分子化合物を含有する溶液を塗布して有機薄膜層30を形成し、次いで電子注入電極18を形成することにより作製できる。図11に示す構成を有する有機EL素子については、上述のように改質部16を形成した後に、この上に式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物又はエネルギーギャップが3.5eV以上の有機高分子化合物を含有する溶液を塗布して有機薄膜層30を形成し、次いで電子注入電極18を形成すればよい。図4〜6、8〜10、12〜13に示す構成を有する有機EL素子は、公知の電子注入層22及び/又はホール注入層24の形成方法を上述した製造方法に適用すれば製造可能である。有機薄膜層30を構成する材料と改質部16を構成する材料が同じ場合は、発光層を形成した後に、この層の上に、発光層を溶解又は膨潤させることのできる溶媒と、式(1)及び(2)を満たす有機高分子化合物又はエネルギーギャップが3.5eV以上の有機高分子化合物と、を含む溶液を塗布することにより、改質部16と有機薄膜層30とを一度に作製することができる。
【0206】
以上、本発明の有機EL素子の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0207】
本発明の有機EL素子の製造方法の別の実施形態において、有機層が複数積層された有機EL素子の製造方法の場合、2つの有機層の間に界面を形成させるには、下層の塗布面から溶媒を除去した後、上層を塗布すればよい。この場合、必要により下層を塗布した後、加熱処理等を行ってもよい。
【0208】
また、2つの有機層の界面を形成させない場合、2つの層の境界がいわゆる傾斜組成となる様に形成することもできる。つまり、少なくとも溶媒への溶解度、溶媒、粘度、比重のいずれかが異なる材料を用いて塗布を行うことにより、2種の有機層を塗り分けたり、界面組成を傾斜状に変化させることができる。また、下層の塗布面から溶媒が完全に除去されないうちに、次の層を塗布することにより界面を形成しないようにすることもできる。この場合、2つの層の界面となる領域において、2つの層の主成分、又はドーパント材料の混合比が、質量比で10000:1〜1:1程度であることが好ましく、1000:1〜10:1程度であることがより好ましい。
【0209】
更に別の実施形態において、改質部が、有機高分子化合物に代わって又は加えて、上述した有機金属塩を含有する有機EL素子の製造方法の場合、発光層上に、塗布法によりこの有機金属塩を塗布することにより改質部を形成することが好ましい。この場合においても、改質部の厚みを所望のものにするために、塗布する有機金属塩の溶液の濃度を適宜調整するとより好ましい。
【実施例】
【0210】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0211】
(実施例1)
まず、ホール注入電極(陽極)層としてシート抵抗15Ω/□のITO膜が形成されている透明ガラス製基板のそのITO膜上に、PEDOT/PSS(Bayer社製、バイトロンP)をスピンコート法により塗布し、40nmの膜厚を有するホール注入層を形成した。次に、下記式(47)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物(分子量20000)95質量%とルブレン5質量%とをトルエンに溶解し、濃度2質量%のトルエン溶液を調製した。そして、このトルエン溶液を上記ホール注入層上にスピンコート法により塗布し、70nmの膜厚を有する発光層を形成した。
【0212】
【化53】
【0213】
次いで、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)を2−エトキシエタノールに0.1質量%溶解させて調製した溶液を、上記発光層上にスピンコート法により塗布し、180℃、N2雰囲気中で1時間乾燥することにより、有機薄膜層及び改質部を形成した。この合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0214】
続いて、改質部を形成した発光層上にLiFを0.2nmの膜厚を有するように蒸着させ、その上にAlを250nmの膜厚を有するように蒸着させて、電子注入電極(陰極)層を形成して、実施例1の有機EL素子を得た。
【0215】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は413cd/m2であり、駆動電圧は4.86Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は500時間であった。
【0216】
(実施例2)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量150000の両末端基に酸クロライドをもつポリスチレンを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0217】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は273cd/m2であり、駆動電圧は5.20Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は300時間であった。
【0218】
(実施例3)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量30000のポリ(2−ビニルピリジン)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0219】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は400cd/m2であり、駆動電圧は5.00Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は80時間であった。
【0220】
(実施例4)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量200000のPMMAを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0221】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は300cd/m2であり、駆動電圧は5.20Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は350時間であった。
【0222】
(実施例5)
実施例1の発光層に代えて、MEH−PPV(分子量100000)を用いてスピンコート法により60nmの膜厚を有する発光層を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例5の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0223】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は600cd/m2であり、駆動電圧は3.50Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は250時間であった。
【0224】
(実施例6)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)を2−エトキシエタノールに0.1質量%溶解させて溶液を調製したことに代えて、分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)50質量%と上記式(C−1)で表されるNa(acac)50質量%との混合物を2−エトキシエタノールに0.2質量%溶解させて溶液を調製したこと、及び、改質部を形成した発光層上にLiFを蒸着させることなく、Alを250nmの膜厚を有するように蒸着させた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0225】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は350cd/m2であり、駆動電圧は5.80Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は550時間であった。
【0226】
(実施例7)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量200000のポリエチレングリコールを0.1質量%メタノールに溶解させて用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0227】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は400cd/m2であり、駆動電圧は5.20Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は450時間であった。
【0228】
(実施例8)
分子量300000のポリ(2−ビニルピリジン)に代えて、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物である分子量130000のポリビニルピロリドンを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。なお、|EALL|−|EAOTL|は0.3eV以上であり、|IPOTL|−|IPLL|は0.3eV以上であった。
【0229】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は430cd/m2であり、駆動電圧は5.00Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は550時間であった。
【0230】
(実施例9)
LiFを蒸着しないこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の有機EL素子を得た。有機薄膜層と改質部の合計の膜厚は2nmであった。
【0231】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は130cd/m2であり、駆動電圧は6.00Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は150時間であった。
【0232】
(実施例10)
有機薄膜層と改質部を計膜厚で0.2nm形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は150cd/m2であり、駆動電圧は8.5Vであった。輝度半減寿命は300時間であった。
【0233】
なお、実施例1〜10において改質部に隣接して改質成分と同じ成分からなる有機薄膜層が形成されたが、この有機薄膜層の膜厚は2nm未満であった。
【0234】
(参考例1)
有機薄膜層と改質部を合計膜厚で31nm形成した以外は、実施例1と同様にして、参考例1の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は1cd/m2であり、駆動電圧は22Vであった。輝度半減寿命は測定できなかった。
【0235】
(比較例1)
有機薄膜層及び改質部を形成しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は18cd/m2であり、駆動電圧は8.50Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は50時間であった。
【0236】
(比較例2)
比較例1の発光層に代えて、MEH−PPV(分子量100000)を用いてスピンコート法により60nmの膜厚を有する発光層を形成した以外は比較例1と同様にして、比較例2の有機EL素子を得た。
【0237】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は80cd/m2であり、駆動電圧は3.50Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は30時間であった。
【0238】
(比較例3)
比較例1の発光層に代えて、MEH−PPV(分子量100000)とポリスチレン(分子量150000)との混合物(重量混合比50:50)を用いてスピンコート法により60nmの膜厚を有する発光層を形成した以外は比較例1と同様にして、比較例3の有機EL素子を得た。
【0239】
この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は2cd/m2であり、駆動電圧は10Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は測定できないほど短かった。
【0240】
(比較例4)
有機薄膜層及び改質部を形成せずまたLiFの代わりにBaOを1nm形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は18cd/m2であり、駆動電圧は5.50Vであった。また、この電流密度で定電流駆動をさせたところ、輝度半減寿命は5時間であった。また、発光面には多量のダークスポットが発生した。なお、BaOの代わりにMgOを用いると同様の結果が得られた。
【0241】
(比較例5)
有機薄膜層及び改質部を形成せずポリパラフェニレンを2nm蒸着で形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の有機EL素子を得た。この有機EL素子の特性を測定評価したところ、電流密度10mA/cm2における輝度は0cd/m2であり、駆動電圧は10Vであった。寿命は測定できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0242】
十分に高い発光効率及び寿命を達成できる有機EL素子及びその製造方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層と前記電子注入電極層との間に、以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【請求項3】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層と前記電子注入電極層との間に、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項4】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層と前記電子注入電極層との間に、以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層からなる有機薄膜層が形成され、
前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【請求項5】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層と前記電子注入電極層との間に、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成され、
前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項6】
前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物は、
以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物であることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【請求項7】
前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物は、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物であることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項8】
前記有機薄膜層の膜厚は、0.05〜10nmであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項9】
前記有機薄膜層の膜厚は、0.1nm〜4nmであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項10】
前記改質部の膜厚は、0.01nm〜20nmであることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項11】
前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物は、極性有機高分子化合物であることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項12】
前記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物は、極性有機高分子化合物であることを特徴とする請求項2又は4記載の有機EL素子。
【請求項13】
エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物は、極性有機高分子化合物であることを特徴とする請求項3又は5記載の有機EL素子。
【請求項14】
前記極性有機高分子化合物は、下記(a)〜(c)の有機高分子化合物の1又は2以上(但し、(a)〜(c)の有機高分子化合物は置換基を有していてもよい)からなることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の有機EL素子。
(a)ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン及びN−ビニルピロリドンからなる群より選ばれる化合物の重合体又は共重合体
(b)アルキル基の炭素数が2〜4であるオキシアルキレン重合体又は共重合体
(c)ポリオキサゾリン又はポリビニルブチラール
【請求項15】
前記極性有機高分子化合物は、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)及びポリビニルブチラールからなる群より選ばれる1又は2以上の有機高分子化合物であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項16】
前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物の数平均分子量は、50,000以上であることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項17】
前記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物の数平均分子量は、50,000以上であることを特徴とする請求項2又は4記載の有機EL素子。
【請求項18】
前記エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物の数平均分子量は、50,000以上であることを特徴とする請求項3又は5記載の有機EL素子。
【請求項19】
前記発光層を構成する有機化合物は、発光性高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項20】
前記改質部は、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液の塗布により形成されたものであることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項21】
前記有機薄膜層は、前記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液の塗布により形成されたものであることを特徴とする請求項2又は4記載の有機EL素子。
【請求項22】
前記有機薄膜層は、前記エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液の塗布により形成されたものであることを特徴とする請求項3又は5記載の有機EL素子。
【請求項23】
前記溶媒は、極性溶媒を含有することを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項24】
前記極性溶媒は、水酸基を有する総炭素数1〜10の鎖状化合物、炭素数2〜6のジアルキルアミド基を有する総炭素数2〜8の鎖状化合物、総炭素数2〜10の鎖状エステル及び総炭素数2〜9の鎖状カーボネートからなる群より選ばれる1又は2以上の極性溶媒であることを特徴とする請求項23記載の有機EL素子。
【請求項25】
前記電子注入電極層の前記ホール注入電極層側に、前記電子注入電極層に隣接して、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含有する化合物からなる電子注入層を備えることを特徴とする請求項1〜24のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項26】
前記電子注入層と、前記改質部及び/又は前記有機薄膜層と、の合計膜厚は、0.5nm〜25nmであることを特徴とする請求項25記載の有機EL素子。
【請求項27】
基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、
前記発光層の電子注入電極層側に、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する溶液を塗布することにより、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記有機高分子化合物を含有する改質部を前記発光層に形成させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項28】
基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、
前記発光層と電子注入電極層との間の層として、以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層を形成させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【請求項29】
基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、
前記発光層と電子注入電極層との間の層として、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層を形成させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項30】
前記電子注入電極層の前記ホール注入電極層側に隣接する層として、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含有する化合物からなる電子注入層を形成させることを特徴とする請求項27〜29のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項1】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層と前記電子注入電極層との間に、以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【請求項3】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層と前記電子注入電極層との間に、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項4】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層と前記電子注入電極層との間に、以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層からなる有機薄膜層が形成され、
前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【請求項5】
基板と、基板の一側に互いに対向するように配置された第1の電極層及び第2の電極層と、これらの電極層間に配置された発光層と、を備える有機EL素子において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方がホール注入電極層、他方が電子注入電極層であり、
前記発光層と前記電子注入電極層との間に、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層が形成され、
前記発光層中に、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する改質部が形成されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項6】
前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物は、
以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物であることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【請求項7】
前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物は、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物であることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項8】
前記有機薄膜層の膜厚は、0.05〜10nmであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項9】
前記有機薄膜層の膜厚は、0.1nm〜4nmであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項10】
前記改質部の膜厚は、0.01nm〜20nmであることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項11】
前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物は、極性有機高分子化合物であることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項12】
前記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物は、極性有機高分子化合物であることを特徴とする請求項2又は4記載の有機EL素子。
【請求項13】
エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物は、極性有機高分子化合物であることを特徴とする請求項3又は5記載の有機EL素子。
【請求項14】
前記極性有機高分子化合物は、下記(a)〜(c)の有機高分子化合物の1又は2以上(但し、(a)〜(c)の有機高分子化合物は置換基を有していてもよい)からなることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の有機EL素子。
(a)ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン及びN−ビニルピロリドンからなる群より選ばれる化合物の重合体又は共重合体
(b)アルキル基の炭素数が2〜4であるオキシアルキレン重合体又は共重合体
(c)ポリオキサゾリン又はポリビニルブチラール
【請求項15】
前記極性有機高分子化合物は、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)及びポリビニルブチラールからなる群より選ばれる1又は2以上の有機高分子化合物であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項16】
前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物の数平均分子量は、50,000以上であることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項17】
前記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物の数平均分子量は、50,000以上であることを特徴とする請求項2又は4記載の有機EL素子。
【請求項18】
前記エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物の数平均分子量は、50,000以上であることを特徴とする請求項3又は5記載の有機EL素子。
【請求項19】
前記発光層を構成する有機化合物は、発光性高分子化合物であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項20】
前記改質部は、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液の塗布により形成されたものであることを特徴とする請求項1、4又は5記載の有機EL素子。
【請求項21】
前記有機薄膜層は、前記式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液の塗布により形成されたものであることを特徴とする請求項2又は4記載の有機EL素子。
【請求項22】
前記有機薄膜層は、前記エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物と溶媒とを含む溶液の塗布により形成されたものであることを特徴とする請求項3又は5記載の有機EL素子。
【請求項23】
前記溶媒は、極性溶媒を含有することを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項24】
前記極性溶媒は、水酸基を有する総炭素数1〜10の鎖状化合物、炭素数2〜6のジアルキルアミド基を有する総炭素数2〜8の鎖状化合物、総炭素数2〜10の鎖状エステル及び総炭素数2〜9の鎖状カーボネートからなる群より選ばれる1又は2以上の極性溶媒であることを特徴とする請求項23記載の有機EL素子。
【請求項25】
前記電子注入電極層の前記ホール注入電極層側に、前記電子注入電極層に隣接して、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含有する化合物からなる電子注入層を備えることを特徴とする請求項1〜24のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項26】
前記電子注入層と、前記改質部及び/又は前記有機薄膜層と、の合計膜厚は、0.5nm〜25nmであることを特徴とする請求項25記載の有機EL素子。
【請求項27】
基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、
前記発光層の電子注入電極層側に、前記発光層を構成する有機化合物とは異なる有機高分子化合物を含有する溶液を塗布することにより、前記電子注入電極層側に偏倚して、前記有機高分子化合物を含有する改質部を前記発光層に形成させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項28】
基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、
前記発光層と電子注入電極層との間の層として、以下の式(1)及び式(2)を満たす有機高分子化合物からなる有機薄膜層を形成させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
|EALL|−|EAOTL|≧0.3eV (1)
|IPOTL|−|IPLL|≧0.3eV (2)
[式中、EALLは前記発光層の電子親和力、EAOTLは前記有機薄膜層の電子親和力、IPOTLは前記有機薄膜層のイオン化ポテンシャル、IPLLは前記発光層のイオン化ポテンシャル、をそれぞれ示す。]
【請求項29】
基板の一側に第1の電極層を形成する工程と、少なくとも1層が発光層となるように前記第1の電極層上に層形成を行う工程と、該工程で積層された最表面の層上に第2の電極層を形成する工程と、を含む有機EL素子の製造方法において、
前記第1の電極層及び前記第2の電極層の一方をホール注入電極層、他方を電子注入電極層とし、
前記発光層と電子注入電極層との間の層として、エネルギーギャップ3.5eV以上の有機高分子化合物からなる有機薄膜層を形成させることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項30】
前記電子注入電極層の前記ホール注入電極層側に隣接する層として、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属を含有する化合物からなる電子注入層を形成させることを特徴とする請求項27〜29のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【国際公開番号】WO2005/020642
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513315(P2005−513315)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012024
【国際出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/012024
【国際出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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