有機EL素子
【課題】 各発光層で発光された3色の光の発光スペクトル分布を考慮して、各発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる有機EL素子を提供する。
【解決手段】 本発明に係る有機EL素子は、赤色、緑色、青色の3色の光をそれぞれ発光する3種類の発光層15a〜15cと、陽極12a〜12cと、陰極18とを少なくとも有しており、3種類の発光層15a〜15cで発光された3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、3色の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されている。
【解決手段】 本発明に係る有機EL素子は、赤色、緑色、青色の3色の光をそれぞれ発光する3種類の発光層15a〜15cと、陽極12a〜12cと、陰極18とを少なくとも有しており、3種類の発光層15a〜15cで発光された3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、3色の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色、緑色、青色の3色の光をそれぞれ発光する3種類の発光層と、陽極と、陰極とを少なくとも有する有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(有機エレクトロルミネセンス)ディスプレイ等を実現するための有機EL素子では、図13又は図14に示す素子構造が用いられている。
【0003】
図13又は図14に示す有機EL素子は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の光を発光するために、3つの発光領域に分割されている(3色発光方式)。
【0004】
なお、図13に示す素子構造の有機EL素子では、各発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光が、基板10側から取り出されるように構成されている。
【0005】
一方、図14に示す素子構造の有機EL素子では、各発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光が、陰極18a〜18c側から取り出されるように構成されている(トップエミッション構造)。
【0006】
一般に、有機EL素子では、発光層15a〜15cで発光された光を外部に取り出す効率を向上させるために、当該発光層15a〜15cで発光された光をそれぞれ取り出す側の構造(取り出し側構造)内で当該光を極力吸収しないような特性を有する材料が用いられている。
【0007】
例えば、図13に示す有機EL素子における赤色(R)の光の取り出し側構造は、正孔輸送層14aと正孔注入層13aと陽極12aと基板10とによって形成されている。
【0008】
図15に、各発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の発光スペクトル分布の一例を示す。図15の例では、青色(B)の光の発光スペクトル分布を実線で示し、緑色(G)の光の発光スペクトル分布を破線で示し、赤色(R)の光の発光スペクトル分布を一点鎖線で示す。
【0009】
かかる有機EL素子では、図15に示すように、青色(B)の光の発光スペクトル分布が、青色領域だけでなく緑色領域まで拡がっており、緑色(G)の光の発光スペクトル分布が、緑色領域だけでなく青色領域及び赤色領域まで拡がっており、赤色(R)の光の発光スペクトル分布が、赤色領域だけでなく緑色領域まで拡がっているので、青色と緑色の混色、及び、緑色と赤色の混色が発生することになる。
【特許文献1】特開平6-092466号公報
【特許文献2】特開平11-329742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の有機EL素子では、上述のように、3色(R、G、B)の光の発光スペクトルの半値幅が広く、各発光スペクトル分布の裾野が他の色の領域に跨っているため、色純度が不十分であるという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、各発光層で発光された3色の光の発光スペクトル分布を考慮して、各発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の特徴は、赤色、緑色、青色の3色の光をそれぞれ発光する3種類の発光層と、陽極と、陰極とを少なくとも有する有機EL素子であって、前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、前記3色の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されていることを要旨とする。
【0013】
かかる発明によれば、発光層で発光された3色の光の発光スペクトル分布を考慮した上で、3色の光の取り出し側構造における光の吸収特性を変化させることによって、各光の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【0014】
本発明の第1の特徴において、前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても1つの構造内に、前記3色の光の波長領域内で光を吸収する特性を有する特性改善膜が設けられていてもよい。
【0015】
かかる発明によれば、各光の発光スペクトル分布を考慮して、3色の光の取り出し側構造内に特性改善膜を設けることによって、各光の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【0016】
本発明の第1の特徴において、前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層の少なくとも1つの材質又は厚さが異なるように構成されていてもよい。
【0017】
かかる発明によれば、各光の発光スペクトル分布を考慮して、3色の光の取り出し側構造に含まれる電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層の少なくとも1つの材質又は厚さを変化させることによって、各光の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、各発光層で発光された3色の光の発光スペクトル分布を考慮して、各発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる有機EL素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子)
図1乃至図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子について説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL素子の断面構造を示す。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る有機EL素子は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の光を発光するために、3つの発光領域に分割されている(3色発光方式)。
【0021】
具体的には、本実施形態に係る有機EL素子における赤色(R)の光の発光領域は、基板10上に、特性改善膜11a、陽極12a、正孔注入層13a、正孔輸送層14a、発光層(R)15a、電子輸送層16a、電子注入層17a、3色(R、G、B)に共通の陰極18を順に積層することによって形成されている。
【0022】
また、本実施形態に係る有機EL素子における緑色(G)の光の発光領域は、基板10上に、特性改善膜11b、陽極12b、正孔注入層13b、正孔輸送層14b、発光層(G)15b、電子輸送層16b、電子注入層17b、3色(R、G、B)に共通の陰極18を順に積層することによって形成されている。
【0023】
さらに、本実施形態に係る有機EL素子における青色(B)の光の構成は、基板10上に、特性改善膜11bc、陽極12c、正孔注入層13c、正孔輸送層14c、発光層(B)15c、電子輸送層16c、電子注入層17c、3色(R、G、B)に共通の陰極18を順に積層することによって形成されている。
【0024】
ここで、かかる有機EL素子は、マスク法等の既知の製造方法を用いて、3色の光の発光領域毎に、各層を塗り分けることによって製造されるものとする。
【0025】
なお、本実施形態に係る有機EL素子では、上述の3種類の発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造のうち、少なくても2つの取り出し側構造の間で、3色(R、G、B)の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されている。
【0026】
例えば、本実施形態では、かかる有機EL素子を実現するために、上述の3つの光の取り出し側構造のうち、少なくても1つの取り出し側構造内に、3色(R、G、B)の光の波長領域(例えば、400nm〜750nmの可視光領域)内で光を吸収する特性を有する特性改善膜11a〜11cが設けられている。
【0027】
ここで、図1に示すように、発光層15aで発光された赤色(R)の光の取り出し側構造は、基板10と、特性改善膜11aと、陽極12aと、正孔注入層13aと、正孔輸送層14aとによって形成されている。
【0028】
また、発光層15bで発光された緑色(G)の光の取り出し側構造は、基板10と、特性改善膜11bと、陽極12bと、正孔注入層13bと、正孔輸送層14bとによって形成されている。
【0029】
また、発光層15cで発光された青色(B)の光の取り出し側構造は、基板10と、特性改善膜11cと、陽極12cと、正孔注入層13cと、正孔輸送層14cとによって形成されている。
【0030】
基板10は、発光層15a〜15cによって発光された光を取り出す側にあるので、例えば、ガラス基板のような光透過性の透明基板等によって構成されている。
【0031】
陽極12a〜12cは、発光層15a〜15cによって発光された光を取り出す側にあるので、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極によって構成されている。
【0032】
正孔注入層13a〜13cは、陽極12a〜12cから正孔輸送層14a〜14cへのキャリアの注入性を向上させるために設けられるものである。例えば、正孔注入層13a〜13cには、イオン化エネルギーが小さいアミン系やフタロシアニン系の材料が用いられる。
【0033】
正孔輸送層14a〜14cは、正孔注入層13a〜13cから発光層15a〜15cへのキャリアの注入性を向上させるために設けられるものであって、発光層15a〜15cへの電子の閉じ込めを可能とするものである。例えば、正孔輸送層14a〜14cには、イオン化エネルギーが小さいアミン系の材料(例えば、ナフテル・フェニル・ベンチジン(NPB))等が用いられる。
【0034】
発光層15a〜15cは、アルミニウム錯体等の発光材料(ホスト材料)に蛍光及びリン光色素(ゲスト材料)をドーピングすることによって形成されるものである。
【0035】
ここで、発光層15aは、陽極12aと陰極18との間に電圧を印加した場合に、図15に一点鎖線で示す発光スペクトル分布を有する赤色(R)の光を発光するように構成されており、発光層15bは、陽極12bと陰極18との間に電圧を印加した場合に、図15に点線で示す発光スペクトル分布を有する緑色(G)の光を発光するように構成されており、発光層15cは、陽極12cと陰極18との間に電圧を印加した場合に、図15に実線で示す発光スペクトル分布を有する青色(B)の光を発光するように構成されている。
【0036】
電子輸送層16a〜16cは、電子注入層17a〜17cから発光層15a〜15cへの電子の注入性を向上させるために設けられるものである。例えば、電子輸送層16a〜16cには、アルミニウム錯体やオキサジアゾール類等が用いられる。
【0037】
電子注入層17a〜17cは、陰極11から電子輸送層16a〜16cへの電子の注入性を向上させるために設けられるものである。例えば、電子注入層17a〜17cには、リチウム等のアルカリ金属やリチウム錯体等の材料が用いられる。
【0038】
陰極18は、発光層15a〜15cに共通の電極として構成されており、例えば、アルミニウム等の金属によって構成されている。
【0039】
特性改善膜11aは、赤色(R)の光の波長領域内で光を吸収する特性を有するものであり、特性改善膜11bは、緑色(G)の光の波長領域内で光を吸収する特性を有するものであり、特性改善膜11cは、青色(B)の光の波長領域内で光を吸収する特性を有するものである。
【0040】
ここで、図2(a)に示す発光スペクトル分布を有する緑色(G)の光は、図2(b)に示す吸光度分布を有する特性改善膜11bを通過すると、565nmのピーク付近の光が十分に吸収されるため、図2(c)の破線に示すような発光スペクトル分布となる。
【0041】
なお、図2(a)に示す発光スペクトル分布を有する緑色(G)の光は、アルミニウム錯体に、キナクリドンをドーピングすることによって形成した発光層15bによって発光されるものとする。
【0042】
また、図3(a)に示す発光スペクトル分布を有する青色(B)の光は、図3(b)に示す吸光度分布を有する特性改善膜11cを通過すると、ピーク付近の光が十分に吸収されるため、図3(c)の一点鎖線に示すような発光スペクトル分布となる。
【0043】
なお、図3(a)に示す発光スペクトル分布を有する青色(B)の光は、DPVBiに、BCzVBiをドーピングすることによって形成した発光層15bによって発光されるものとする。
【0044】
この結果、外部に取り出される青色(B)の光(図2(c)の点線)と緑色(G)の光(図3(c)の点線)の混色が減少することとなる。
【0045】
例えば、特性改善膜11a〜11cは、フタロシアニン類のうち、銅フタロシアニン(CuPc)で形成されており、可視光領域内で、光を吸収する特性(すなわち、所定の吸収係数)を有している。
【0046】
図4に、銅フタロシアニン(CuPc)によって形成されている特性改善膜11a〜11cの吸収係数の各波長に対する分布を示す。図4に示すように、かかる特性改善膜11a〜11cは、600nm〜640nmの波長の光を最も吸収しやすいことが分かる。
【0047】
また、図5に、波長528nmの光と波長565nmの光における、銅フタロシアニン(CuPc)によって形成されている特性改善膜11a〜11cの透過比率「I/I0」と膜厚(CuPc膜厚)「t」との関係を示す。
【0048】
ここで、吸収係数を「α」とし、当該特性改善膜11a〜11cの膜厚を「t」とし、当該特性改善膜11a〜11cへの入射光強度を「I0」とし、当該特性改善膜11a〜11cからの出射光強度を「I」とすると、「I=I0exp(−αt)」の関係が成り立つものとする。
【0049】
図5に示すように、CuPcの膜厚が厚くなればなる程、波長565nmの光に対する吸光度が高まることが分かる。
【0050】
なお、本実施形態に係る有機EL素子は、上述のような5層型構造だけでなく、正孔注入層12a〜12c及び電子注入層17a〜17cを含まない3層型構造や、更に電子輸送層16a〜16cをも含まない2層型構造や、更に正孔輸送層14a〜14cをも含まない単層型構造等にも適用可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る有機EL素子は、基板10と陽極12a〜12cとの間に特性改善膜11a〜11cを設ける構造に限定されることはなく、光の取り出し側構造の任意の位置に特性改善膜11a〜11cを設ける構造を有していてもよい。
【0052】
例えば、図6に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、陽極12a〜12cと正孔注入層13a〜13cとの間に設けられていてもよい。
【0053】
また、図7に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、正孔注入層13a〜13cと正孔輸送層14a〜14cとの間に設けられていてもよい。
【0054】
また、図8に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、正孔輸送層14a〜14cと発光層15a〜15cとの間に設けられていてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態に係る有機EL素子は、トップエミッション構造を有する有機EL素子にも適用可能である。
【0056】
例えば、図9に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、陰極18a〜18cの外側に設けられていてもよい。
【0057】
また、図10に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、陰極18a〜18cと電子注入層17a〜17cとの間に設けられていてもよい。
【0058】
また、図11に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、電子注入層17a〜17cと電子輸送層16a〜16cとの間に設けられていてもよい。
【0059】
また、図12に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、電子輸送層16a〜16cと発光層15a〜15cとの間に設けられていてもよい。
【0060】
本実施形態に係る有機EL素子によれば、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の発光スペクトル分布を考慮した上で、3色(R、G、B)の光の取り出し側構造における光の吸収特性を変化させることによって、3色(R、G、B)の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る有機EL素子によれば、3色(R、G、B)の発光スペクトル分布を考慮して、3色(R、G、B)の光の取り出し側構造内に特性改善膜11a〜11cを設けることによって、3色(R、G、B)の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【0062】
(本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子)
図13及び図14を参照して、本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子について説明する。
【0063】
本実施形態に係る有機EL素子は、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造のうち、少なくても2つの取り出し側構造の間で、3色(R、G、B)の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されている。
【0064】
具体的には、本実施形態に係る有機EL素子は、かかる有機EL素子を実現するために、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造のうち、少なくても2つの取り出し側構造の間で、電子注入層17a〜17c、電子輸送層16a〜16c、正孔輸送層14a〜14c、正孔注入層13a〜13cの少なくとも1つの材質又は厚さが異なるように構成されている。
【0065】
具体的には、本実施形態に係る有機EL素子が、図13に示す素子構造を有する場合、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の発光分布を考慮して、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造に含まれる正孔輸送層14a〜14c、正孔注入層13a〜13cの少なくとも一方の材質又は厚さを変化させる。
【0066】
例えば、正孔輸送層14b又は正孔注入層13bを、図2(b)に示す吸光度分布を有する銅フタロシアニン(CuPc)によって形成してもよいし、正孔輸送層14c又は正孔注入層13cを、図2(c)に示す吸光度分布を有する銅フタロシアニン(CuPc)によって形成してもよい。
【0067】
また、図5に示す関係を考慮して、正孔輸送層14a〜14c又は正孔注入層13a〜13cを形成する銅フタロシアニン(CuPc)の膜厚を変更してもよい。
【0068】
また、本実施形態に係る有機EL素子が、図14に示す素子構造(トップエミッション構造)を有する場合、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の発光分布を考慮して、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造に含まれる電子輸送層16a〜16c、電子注入層17a〜17cの少なくとも一方の材質又は厚さを変化させる。
【0069】
例えば、電子輸送層16b又は電子注入層17bを、図2(b)に示す吸光度分布を有する銅フタロシアニン(CuPc)によって形成してもよいし、電子輸送層16c又は電子注入層17cを、図2(c)に示す吸光度分布を有する銅フタロシアニン(CuPc)によって形成してもよい。
【0070】
また、図5に示す関係を考慮して、電子輸送層16a〜16c又は電子注入層17a〜17cを形成する銅フタロシアニン(CuPc)の膜厚を変更してもよい。
【0071】
本実施形態に係る有機EL素子によれば、3色(R、G、B)の光の発光スペクトル分布を考慮して、3色(R、G、B)の光の取り出し側構造に含まれる電子注入層17a〜17c、電子輸送層16a〜16c、正孔輸送層14a〜14c、正孔注入層13a〜13cの少なくとも1つの材質又は厚さを変化させることによって、各光の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の特性改善膜によって緑色(G)の光の発光スペクトル分布が変化する様子を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の特性改善膜によって青色(B)の光の発光スペクトル分布が変化する様子を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜として用いられる銅フタロシアニンの吸収係数と波長との関係を示す図である。
【図5】異なる波長の光に対する銅フタロシアニン膜の透過比率と銅フタロシアニン膜厚との関係を示す図である。
【図6】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図7】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図8】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図9】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図10】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図11】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図12】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図13】一般的な有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図14】一般的な有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図15】一般的な有機EL素子によって発光された光の発光スペクトル分布を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10…基板
11a、11b、11c…特性改善膜
12、12a、12b、12c…陽極
13a、13b、13c…正孔注入層
14a、14b、14c…正孔輸送層
15a、15b、15c…発光層
16a、16b、16c…電子輸送層
17a、17b、17c…電子注入層
18、18a、18b、18c…陰極
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色、緑色、青色の3色の光をそれぞれ発光する3種類の発光層と、陽極と、陰極とを少なくとも有する有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(有機エレクトロルミネセンス)ディスプレイ等を実現するための有機EL素子では、図13又は図14に示す素子構造が用いられている。
【0003】
図13又は図14に示す有機EL素子は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の光を発光するために、3つの発光領域に分割されている(3色発光方式)。
【0004】
なお、図13に示す素子構造の有機EL素子では、各発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光が、基板10側から取り出されるように構成されている。
【0005】
一方、図14に示す素子構造の有機EL素子では、各発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光が、陰極18a〜18c側から取り出されるように構成されている(トップエミッション構造)。
【0006】
一般に、有機EL素子では、発光層15a〜15cで発光された光を外部に取り出す効率を向上させるために、当該発光層15a〜15cで発光された光をそれぞれ取り出す側の構造(取り出し側構造)内で当該光を極力吸収しないような特性を有する材料が用いられている。
【0007】
例えば、図13に示す有機EL素子における赤色(R)の光の取り出し側構造は、正孔輸送層14aと正孔注入層13aと陽極12aと基板10とによって形成されている。
【0008】
図15に、各発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の発光スペクトル分布の一例を示す。図15の例では、青色(B)の光の発光スペクトル分布を実線で示し、緑色(G)の光の発光スペクトル分布を破線で示し、赤色(R)の光の発光スペクトル分布を一点鎖線で示す。
【0009】
かかる有機EL素子では、図15に示すように、青色(B)の光の発光スペクトル分布が、青色領域だけでなく緑色領域まで拡がっており、緑色(G)の光の発光スペクトル分布が、緑色領域だけでなく青色領域及び赤色領域まで拡がっており、赤色(R)の光の発光スペクトル分布が、赤色領域だけでなく緑色領域まで拡がっているので、青色と緑色の混色、及び、緑色と赤色の混色が発生することになる。
【特許文献1】特開平6-092466号公報
【特許文献2】特開平11-329742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の有機EL素子では、上述のように、3色(R、G、B)の光の発光スペクトルの半値幅が広く、各発光スペクトル分布の裾野が他の色の領域に跨っているため、色純度が不十分であるという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、各発光層で発光された3色の光の発光スペクトル分布を考慮して、各発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の特徴は、赤色、緑色、青色の3色の光をそれぞれ発光する3種類の発光層と、陽極と、陰極とを少なくとも有する有機EL素子であって、前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、前記3色の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されていることを要旨とする。
【0013】
かかる発明によれば、発光層で発光された3色の光の発光スペクトル分布を考慮した上で、3色の光の取り出し側構造における光の吸収特性を変化させることによって、各光の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【0014】
本発明の第1の特徴において、前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても1つの構造内に、前記3色の光の波長領域内で光を吸収する特性を有する特性改善膜が設けられていてもよい。
【0015】
かかる発明によれば、各光の発光スペクトル分布を考慮して、3色の光の取り出し側構造内に特性改善膜を設けることによって、各光の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【0016】
本発明の第1の特徴において、前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層の少なくとも1つの材質又は厚さが異なるように構成されていてもよい。
【0017】
かかる発明によれば、各光の発光スペクトル分布を考慮して、3色の光の取り出し側構造に含まれる電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層の少なくとも1つの材質又は厚さを変化させることによって、各光の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、各発光層で発光された3色の光の発光スペクトル分布を考慮して、各発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる有機EL素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子)
図1乃至図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子について説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL素子の断面構造を示す。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る有機EL素子は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の光を発光するために、3つの発光領域に分割されている(3色発光方式)。
【0021】
具体的には、本実施形態に係る有機EL素子における赤色(R)の光の発光領域は、基板10上に、特性改善膜11a、陽極12a、正孔注入層13a、正孔輸送層14a、発光層(R)15a、電子輸送層16a、電子注入層17a、3色(R、G、B)に共通の陰極18を順に積層することによって形成されている。
【0022】
また、本実施形態に係る有機EL素子における緑色(G)の光の発光領域は、基板10上に、特性改善膜11b、陽極12b、正孔注入層13b、正孔輸送層14b、発光層(G)15b、電子輸送層16b、電子注入層17b、3色(R、G、B)に共通の陰極18を順に積層することによって形成されている。
【0023】
さらに、本実施形態に係る有機EL素子における青色(B)の光の構成は、基板10上に、特性改善膜11bc、陽極12c、正孔注入層13c、正孔輸送層14c、発光層(B)15c、電子輸送層16c、電子注入層17c、3色(R、G、B)に共通の陰極18を順に積層することによって形成されている。
【0024】
ここで、かかる有機EL素子は、マスク法等の既知の製造方法を用いて、3色の光の発光領域毎に、各層を塗り分けることによって製造されるものとする。
【0025】
なお、本実施形態に係る有機EL素子では、上述の3種類の発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造のうち、少なくても2つの取り出し側構造の間で、3色(R、G、B)の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されている。
【0026】
例えば、本実施形態では、かかる有機EL素子を実現するために、上述の3つの光の取り出し側構造のうち、少なくても1つの取り出し側構造内に、3色(R、G、B)の光の波長領域(例えば、400nm〜750nmの可視光領域)内で光を吸収する特性を有する特性改善膜11a〜11cが設けられている。
【0027】
ここで、図1に示すように、発光層15aで発光された赤色(R)の光の取り出し側構造は、基板10と、特性改善膜11aと、陽極12aと、正孔注入層13aと、正孔輸送層14aとによって形成されている。
【0028】
また、発光層15bで発光された緑色(G)の光の取り出し側構造は、基板10と、特性改善膜11bと、陽極12bと、正孔注入層13bと、正孔輸送層14bとによって形成されている。
【0029】
また、発光層15cで発光された青色(B)の光の取り出し側構造は、基板10と、特性改善膜11cと、陽極12cと、正孔注入層13cと、正孔輸送層14cとによって形成されている。
【0030】
基板10は、発光層15a〜15cによって発光された光を取り出す側にあるので、例えば、ガラス基板のような光透過性の透明基板等によって構成されている。
【0031】
陽極12a〜12cは、発光層15a〜15cによって発光された光を取り出す側にあるので、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極によって構成されている。
【0032】
正孔注入層13a〜13cは、陽極12a〜12cから正孔輸送層14a〜14cへのキャリアの注入性を向上させるために設けられるものである。例えば、正孔注入層13a〜13cには、イオン化エネルギーが小さいアミン系やフタロシアニン系の材料が用いられる。
【0033】
正孔輸送層14a〜14cは、正孔注入層13a〜13cから発光層15a〜15cへのキャリアの注入性を向上させるために設けられるものであって、発光層15a〜15cへの電子の閉じ込めを可能とするものである。例えば、正孔輸送層14a〜14cには、イオン化エネルギーが小さいアミン系の材料(例えば、ナフテル・フェニル・ベンチジン(NPB))等が用いられる。
【0034】
発光層15a〜15cは、アルミニウム錯体等の発光材料(ホスト材料)に蛍光及びリン光色素(ゲスト材料)をドーピングすることによって形成されるものである。
【0035】
ここで、発光層15aは、陽極12aと陰極18との間に電圧を印加した場合に、図15に一点鎖線で示す発光スペクトル分布を有する赤色(R)の光を発光するように構成されており、発光層15bは、陽極12bと陰極18との間に電圧を印加した場合に、図15に点線で示す発光スペクトル分布を有する緑色(G)の光を発光するように構成されており、発光層15cは、陽極12cと陰極18との間に電圧を印加した場合に、図15に実線で示す発光スペクトル分布を有する青色(B)の光を発光するように構成されている。
【0036】
電子輸送層16a〜16cは、電子注入層17a〜17cから発光層15a〜15cへの電子の注入性を向上させるために設けられるものである。例えば、電子輸送層16a〜16cには、アルミニウム錯体やオキサジアゾール類等が用いられる。
【0037】
電子注入層17a〜17cは、陰極11から電子輸送層16a〜16cへの電子の注入性を向上させるために設けられるものである。例えば、電子注入層17a〜17cには、リチウム等のアルカリ金属やリチウム錯体等の材料が用いられる。
【0038】
陰極18は、発光層15a〜15cに共通の電極として構成されており、例えば、アルミニウム等の金属によって構成されている。
【0039】
特性改善膜11aは、赤色(R)の光の波長領域内で光を吸収する特性を有するものであり、特性改善膜11bは、緑色(G)の光の波長領域内で光を吸収する特性を有するものであり、特性改善膜11cは、青色(B)の光の波長領域内で光を吸収する特性を有するものである。
【0040】
ここで、図2(a)に示す発光スペクトル分布を有する緑色(G)の光は、図2(b)に示す吸光度分布を有する特性改善膜11bを通過すると、565nmのピーク付近の光が十分に吸収されるため、図2(c)の破線に示すような発光スペクトル分布となる。
【0041】
なお、図2(a)に示す発光スペクトル分布を有する緑色(G)の光は、アルミニウム錯体に、キナクリドンをドーピングすることによって形成した発光層15bによって発光されるものとする。
【0042】
また、図3(a)に示す発光スペクトル分布を有する青色(B)の光は、図3(b)に示す吸光度分布を有する特性改善膜11cを通過すると、ピーク付近の光が十分に吸収されるため、図3(c)の一点鎖線に示すような発光スペクトル分布となる。
【0043】
なお、図3(a)に示す発光スペクトル分布を有する青色(B)の光は、DPVBiに、BCzVBiをドーピングすることによって形成した発光層15bによって発光されるものとする。
【0044】
この結果、外部に取り出される青色(B)の光(図2(c)の点線)と緑色(G)の光(図3(c)の点線)の混色が減少することとなる。
【0045】
例えば、特性改善膜11a〜11cは、フタロシアニン類のうち、銅フタロシアニン(CuPc)で形成されており、可視光領域内で、光を吸収する特性(すなわち、所定の吸収係数)を有している。
【0046】
図4に、銅フタロシアニン(CuPc)によって形成されている特性改善膜11a〜11cの吸収係数の各波長に対する分布を示す。図4に示すように、かかる特性改善膜11a〜11cは、600nm〜640nmの波長の光を最も吸収しやすいことが分かる。
【0047】
また、図5に、波長528nmの光と波長565nmの光における、銅フタロシアニン(CuPc)によって形成されている特性改善膜11a〜11cの透過比率「I/I0」と膜厚(CuPc膜厚)「t」との関係を示す。
【0048】
ここで、吸収係数を「α」とし、当該特性改善膜11a〜11cの膜厚を「t」とし、当該特性改善膜11a〜11cへの入射光強度を「I0」とし、当該特性改善膜11a〜11cからの出射光強度を「I」とすると、「I=I0exp(−αt)」の関係が成り立つものとする。
【0049】
図5に示すように、CuPcの膜厚が厚くなればなる程、波長565nmの光に対する吸光度が高まることが分かる。
【0050】
なお、本実施形態に係る有機EL素子は、上述のような5層型構造だけでなく、正孔注入層12a〜12c及び電子注入層17a〜17cを含まない3層型構造や、更に電子輸送層16a〜16cをも含まない2層型構造や、更に正孔輸送層14a〜14cをも含まない単層型構造等にも適用可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る有機EL素子は、基板10と陽極12a〜12cとの間に特性改善膜11a〜11cを設ける構造に限定されることはなく、光の取り出し側構造の任意の位置に特性改善膜11a〜11cを設ける構造を有していてもよい。
【0052】
例えば、図6に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、陽極12a〜12cと正孔注入層13a〜13cとの間に設けられていてもよい。
【0053】
また、図7に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、正孔注入層13a〜13cと正孔輸送層14a〜14cとの間に設けられていてもよい。
【0054】
また、図8に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、正孔輸送層14a〜14cと発光層15a〜15cとの間に設けられていてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態に係る有機EL素子は、トップエミッション構造を有する有機EL素子にも適用可能である。
【0056】
例えば、図9に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、陰極18a〜18cの外側に設けられていてもよい。
【0057】
また、図10に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、陰極18a〜18cと電子注入層17a〜17cとの間に設けられていてもよい。
【0058】
また、図11に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、電子注入層17a〜17cと電子輸送層16a〜16cとの間に設けられていてもよい。
【0059】
また、図12に示すように、本実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜11a〜11cが、電子輸送層16a〜16cと発光層15a〜15cとの間に設けられていてもよい。
【0060】
本実施形態に係る有機EL素子によれば、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の発光スペクトル分布を考慮した上で、3色(R、G、B)の光の取り出し側構造における光の吸収特性を変化させることによって、3色(R、G、B)の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る有機EL素子によれば、3色(R、G、B)の発光スペクトル分布を考慮して、3色(R、G、B)の光の取り出し側構造内に特性改善膜11a〜11cを設けることによって、3色(R、G、B)の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【0062】
(本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子)
図13及び図14を参照して、本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子について説明する。
【0063】
本実施形態に係る有機EL素子は、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造のうち、少なくても2つの取り出し側構造の間で、3色(R、G、B)の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されている。
【0064】
具体的には、本実施形態に係る有機EL素子は、かかる有機EL素子を実現するために、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造のうち、少なくても2つの取り出し側構造の間で、電子注入層17a〜17c、電子輸送層16a〜16c、正孔輸送層14a〜14c、正孔注入層13a〜13cの少なくとも1つの材質又は厚さが異なるように構成されている。
【0065】
具体的には、本実施形態に係る有機EL素子が、図13に示す素子構造を有する場合、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の発光分布を考慮して、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造に含まれる正孔輸送層14a〜14c、正孔注入層13a〜13cの少なくとも一方の材質又は厚さを変化させる。
【0066】
例えば、正孔輸送層14b又は正孔注入層13bを、図2(b)に示す吸光度分布を有する銅フタロシアニン(CuPc)によって形成してもよいし、正孔輸送層14c又は正孔注入層13cを、図2(c)に示す吸光度分布を有する銅フタロシアニン(CuPc)によって形成してもよい。
【0067】
また、図5に示す関係を考慮して、正孔輸送層14a〜14c又は正孔注入層13a〜13cを形成する銅フタロシアニン(CuPc)の膜厚を変更してもよい。
【0068】
また、本実施形態に係る有機EL素子が、図14に示す素子構造(トップエミッション構造)を有する場合、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の発光分布を考慮して、発光層15a〜15cで発光された3色(R、G、B)の光の取り出し側構造に含まれる電子輸送層16a〜16c、電子注入層17a〜17cの少なくとも一方の材質又は厚さを変化させる。
【0069】
例えば、電子輸送層16b又は電子注入層17bを、図2(b)に示す吸光度分布を有する銅フタロシアニン(CuPc)によって形成してもよいし、電子輸送層16c又は電子注入層17cを、図2(c)に示す吸光度分布を有する銅フタロシアニン(CuPc)によって形成してもよい。
【0070】
また、図5に示す関係を考慮して、電子輸送層16a〜16c又は電子注入層17a〜17cを形成する銅フタロシアニン(CuPc)の膜厚を変更してもよい。
【0071】
本実施形態に係る有機EL素子によれば、3色(R、G、B)の光の発光スペクトル分布を考慮して、3色(R、G、B)の光の取り出し側構造に含まれる電子注入層17a〜17c、電子輸送層16a〜16c、正孔輸送層14a〜14c、正孔注入層13a〜13cの少なくとも1つの材質又は厚さを変化させることによって、各光の発光スペクトルの半値幅及び色純度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の特性改善膜によって緑色(G)の光の発光スペクトル分布が変化する様子を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の特性改善膜によって青色(B)の光の発光スペクトル分布が変化する様子を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子において、特性改善膜として用いられる銅フタロシアニンの吸収係数と波長との関係を示す図である。
【図5】異なる波長の光に対する銅フタロシアニン膜の透過比率と銅フタロシアニン膜厚との関係を示す図である。
【図6】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図7】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図8】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図9】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図10】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図11】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図12】本発明の一変更例に係る有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図13】一般的な有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図14】一般的な有機EL素子の断面構造(トップエミッション構造)を示す図である。
【図15】一般的な有機EL素子によって発光された光の発光スペクトル分布を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10…基板
11a、11b、11c…特性改善膜
12、12a、12b、12c…陽極
13a、13b、13c…正孔注入層
14a、14b、14c…正孔輸送層
15a、15b、15c…発光層
16a、16b、16c…電子輸送層
17a、17b、17c…電子注入層
18、18a、18b、18c…陰極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色、緑色、青色の3色の光をそれぞれ発光する3種類の発光層と、陽極と、陰極とを少なくとも有する有機EL素子であって、
前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、前記3色の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても1つの構造内に、前記3色の光の波長領域内で光を吸収する特性を有する特性改善膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項3】
前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層の少なくとも1つの材質又は厚さが異なるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項1】
赤色、緑色、青色の3色の光をそれぞれ発光する3種類の発光層と、陽極と、陰極とを少なくとも有する有機EL素子であって、
前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、前記3色の光の波長領域内における光の吸収特性が異なるように構成されていることを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても1つの構造内に、前記3色の光の波長領域内で光を吸収する特性を有する特性改善膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項3】
前記3種類の発光層で発光された前記3色の光をそれぞれ取り出す側の構造のうち、少なくても2つの構造の間で、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層の少なくとも1つの材質又は厚さが異なるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−59250(P2007−59250A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244401(P2005−244401)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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