説明

有機EL素子

【課題】高信頼性の高輝度発光素子を実現する。
【解決手段】本発明の化合物は、融点やガラス転移温度が高く、その蒸着等により成膜される薄膜は、透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、平滑で良好な膜質を示す。従って、バインダー樹脂を用いることなく、それ自体で薄膜化することができる。本発明の有機EL素子は、上記化合物を有機化合物層、特に好ましくは正孔注入輸送層に用いるため、ムラのない均一な面発光が可能であり、高輝度が長時間に渡って安定して得られ、耐久性・信頼性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラアリールジアミン誘導体である有機EL素子用化合物を含有する層を有する有機EL(電界発光)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を照射することによって導電性や電荷生成等を生じる、すなわち光・電子機能を有する低分子量有機化合物は、それ自体では薄膜形成能をもたない場合が多く、薄膜を形成するためには、バインダー樹脂に分散させて、従って希釈した状態で、基板上に塗布し薄膜化することが必要であった。また、真空蒸着等の方法によりそれ自体で薄膜形成能を有する場合でも、薄膜安定性が不十分で、相転移などの物理的変化を起こしやすかった。
【0003】
一方、特定のテトラアリールジアミン系化合物については、電子写真感光体の感光層を形成する材料として特許文献1に開示されているが、有機EL素子用化合物としての用途は何ら示唆されていない。
【0004】
また一方、有機EL素子は、蛍光性有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。
【0005】
この有機EL素子の特徴は、10V 以下の低電圧で100〜100000cd/m 程度の高輝度の面発光が可能であり、また蛍光性物質の種類を選択することにより青色から赤色までの発光が可能なことである。
【0006】
しかしながら、有機EL素子の問題点は、発光寿命が短く、耐久性、信頼性が低いことであり、この原因としては、
【0007】
(1) 有機化合物の物理的な変化(結晶粒界の出現や成長などは界面の不均一化を引き起こし、素子の電荷注入能の劣化、短絡、絶縁破壊の原因となる。特に分子量500以下の低分子化合物を用いると、結晶粒界の出現や成長が起こり、膜性が著しく低下する。また、ITO等の界面が荒れていても、顕著な結晶粒界の出現や成長が起こり、発光効率の低下や電流のリークを起こし、発光しなくなる。また、部分的非発光部位であるダークスポットの原因にもなる。)
【0008】
(2) 陰極の酸化・剥離(電子の注入を容易にするために陰極には、仕事関数の小さな金属としてMg、Li、Na、Alなどを用いているが、これらの金属は大気中の水分や酸素と反応したり、有機層との剥離が起こり、電荷注入ができなくなる。特にスピンコートなどのウェット方法で成膜した場合、成膜時の残留溶媒や分解物が電極の酸化反応を促進するため、電極の剥離が起こり、ダークスポットが発生しやすい。)
【0009】
(3) 発光効率が低く、発熱量が多いこと(有機化合物中に電流を流すので、高い電界強度下に有機化合物を置かねばならず、発熱からは逃れられない。その熱のため、有機化合物の溶融、結晶化、熱分解などにより素子の劣化や破壊が起こる。)
【0010】
(4) 有機化合物層の光化学的変化・電気化学的変化などが挙げられる。
【0011】
これらの課題を解決する手段として、正孔(ホール)注入輸送帯が正孔注入性ポルフィリン化合物と正孔輸送性芳香族三級アミンから構成された有機EL素子が、特許文献2(対応米国特許第4720432号明細書)に開示されている。具体的には、特許文献2の実施例1、10および11において、インジウム・錫酸化物被覆ガラスの透明アノード、正孔注入用銅フタロシアニン(PC−10)(35nm、あるいは37.5nm)、ホール輸送用1,1’−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(ATA−1)(35nm、あるいは37.5nm)、発光用および電子注入輸送用アルミニウムトリスオキシン(CO−1)(60nm)、およびMg−Agカソード(200nm)で形成された有機EL素子が開示されている。そしてこの素子を一定電流密度で500時間駆動させた場合、5mA/cmでは、初期出力が0.08mW/cmから0.05mW/cm(低下率37.5%)に、また20mA/cmでは、0.45mW/cmから0.066mW/cm(低下率86.7%)に、また40mA/cmでは、1.15mW/cmから<0.1mW/cm(低下率>91.3%)に低下している。さらに他の正孔輸送性芳香族三級アミンとして実施例12および13で、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル(ATA−7)、およびN,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル(ATA−8)(37.5nm)が開示されているが、前者は同電流密度に対する初期出力が小さく、また出力低下も62.5%あり、後者は60%低下している。
【0012】
さらに、トリアリールアミン(ATA−1)とテトラアリールアミン(ATA−7)の組み合わせが実施例14および15に開示されているが、これも同電流密度に対する初期出力が小さく、出力低下も大きい。これらの結果からわかるように、発光素子の寿命としてはまだまだ実用レベルには達しておらず、特に実用レベルに対応する高出力(高輝度)発光を得ようとして高電流密度で駆動した場合、初期動作付近での出力低下は急激である。
【0013】
この急激な出力低下を改良する目的で、特許文献3、あるいは特許文献4に、特に選択された正孔輸送性芳香族三級アミンが開示されている。具体的には、少なくとも2つの第三アミン成分を含み、かつ第三アミンの窒素原子に結合した芳香族成分が少なくとも2つの縮合芳香族環を含む化合物である。しかし、これらの特定の正孔輸送性芳香族三級アミンを用いても、長時間に渡って安定した発光を得ることは非常に難しく、実用レベルの発光素子の寿命としてはまだまだ不十分である。
【0014】
これは、上記明細書、あるいは上記公報に具体的に開示されている正孔輸送性芳香族三級アミンが、その熱特性が低いために、素子のジュール熱に起因する発熱により、アモルファス状態における薄膜安定性が不十分になり、それを有機EL素子に用いた場合には、発光効率が低く、また発光寿命が短く、耐久性や信頼性が低下すると考えられる。
【0015】
また透明電極は、表面抵抗の小さいこと(10〜30Ω/□)以下が必要であるためITOガラスなどが用いられている。しかし走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)の観察によると、スパッタ成膜基板で20nm、EB蒸着基板で40nm程度の凹凸があり、さらにITOパターニング時のダメージによる表面荒れがあり、有機薄膜の結晶化が促進されやすい環境にある。
【0016】
このことを改善するため、ITO表面に金属含有フタロシアニンや無金属フタロシアニンを設けたり(上記米国特許第4720432号明細書、あるいは上記特許文献2)、ポリアリレンビニレンをスピンコートするなどの方策が採られてきた。しかし、金属含有フタロシアニンや無金属フタロシアニンは微結晶であり必ずしも効果が現れず、ポリアリレンビニレンはコンバージョン時の酸でITOがダメージを受けたり、残留溶媒などにより電極の酸化が促進したり、スピンコートで成膜した不均一な膜であるため、素子の信頼性が向上はしなかった。
【0017】
一方、最近、素子性能の向上を目的として、機能の異なる化合物を2種以上混合した混合層を設けたEL素子が種々提案されている。例えば、特許文献5には、輝度および耐久性の向上を目的として、正孔輸送能および発光機能を有する有機化合物と電子輸送能を有する有機化合物との積層構造の薄膜あるいは混合体薄膜を発光層に用いる旨が、また特許文献6には、正孔輸送機能を有する有機化合物と電子輸送能を有する蛍光有機化合物との混合体薄膜を発光層に用いる旨が提案されている。さらに、特許文献7には、発光効率・発光輝度の向上を目的として、電荷注入層と発光層との間に電荷注入材料と有機蛍光体とを混合した混合層を設ける旨が提案されている。また、特許文献8には、発光層への正孔(ホール)および電子の注入を容易にすることを目的として、正孔輸送層および/または電子輸送層と有機発光層との間に、対面する両層の構成材料を含む混合層を設けることが提案されている。さらに、特許文献9には、複数の有機化合物層を構成する場合、異なる機能を有する化合物を共存させた層、例えば正孔輸送性発光材料を含む層と正孔輸送性発光材料と電子輸送性材料とが共存する層等を設け、発光輝度を高くし、種々の発光色相を呈することを可能にするとともに耐久性を向上させることが提案されている。また、特許文献10には、発光層と電荷注入層の間に発光物質と電荷注入物質からなる混合層を形成し、駆動電圧を低下させる旨が提案されている。さらに、特許文献11には、発光層を正孔伝導性の有機化合物と希土類金属の有機錯体が混合された薄膜よりなるものとし、発光スペクトル幅が狭く単色性に優れ、しかも変換効率の良化を図ることが提案されている。また、特許文献12および特許文献13には、有機発光体薄膜層の成分が有機電荷材料と有機発光材料の混合物からなる薄膜層を設け、濃度消光を防止して発光材料の選択幅を広げ、高輝度なフルカラー素子とする旨が提案されている。また、特許文献14には、層間に各層を形成する各々の成分で濃度勾配を設けた傾斜構造層を形成し、駆動電圧の低下と耐久性の向上を図ることが提案されている。
【0018】
さらに、有機化合物層にルブレンを用いたものが提案されている。ルブレンを有機化合物層にドープしたものとしては、有機化合物層としてヒドラジン誘導体の混合膜からなる正孔輸送層とトリス(8−キノリノラト)アルミニウムの発光層とを有する有機EL素子において、正孔輸送層にルブレンをドープしたもの、あるいは正孔輸送層の有機界面側半分と発光層全体にルブレンをドープしたものが提案されている。そして、正孔輸送層にドープしたものでは、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムとルブレンの両方から発光が起こることが、また正孔輸送層の半分と発光層にドープしたものでは、発光効率が向上すること、さらには保存時におけるダークスポットの増加を抑制できることが報告されている(非特許文献1,非特許文献2)。また、トリフェニルジアミン誘導体(TPD)の正孔輸送層にルブレンをドープしたものが提案されており、輝度半減期が向上することが報告されている(非特許文献3)。
【0019】
また、特許文献15には、p型の無機半導体薄膜層とルブレンを主体とする層からなる有機化合物薄膜層を設けたものが提案されており、十分な発光輝度と発光輝度の安定性が得られることが記載されている。
【0020】
しかし、これらのいずれのEL素子においても、発光寿命の向上という点で満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平2−277071号公報
【特許文献2】特開昭63−295695号公報
【特許文献3】米国特許第5061569号明細書
【特許文献4】特開平5−234681号公報
【特許文献5】特開平2−250292号公報
【特許文献6】特開平2−291696号公報
【特許文献7】特開平3−114197号公報
【特許文献8】特開平3−190088号公報
【特許文献9】特開平4−334894号公報
【特許文献10】特開平5−182762号公報
【特許文献11】特開平3−289090号公報
【特許文献12】特開平4−178487号公報
【特許文献13】特開平5−78655公報
【特許文献14】特開平4−357694号公報
【特許文献15】特開平2−207488号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】金井、矢島、佐藤、第39回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、28p−Q−8(1992)
【非特許文献2】佐藤、金井、有機エレクトロニクス材料研究会(JOEM)ワークショップ92予稿集、31(1992)
【非特許文献3】藤井、佐野、藤田、浜田、柴田、第54回応用物理学学術講演会講演予稿集、29p−ZC−7(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、高い融点やガラス転移温度を有して熱特性に優れ、アモルファス状態における薄膜安定性が長期間に渡って十分に得られ、従って、バインダー樹脂を用いることなく、それ自体で薄膜化することができ、物理的変化や光化学的変化・電気化学的変化の少ない光・電子機能を有する特定のテトラアリールジアミン誘導体である有機EL素子用化合物を提供し、この有機EL素子用化合物を用いることにより、発光寿命が長く、耐久性・信頼性の高い高輝度な有機EL素子を実現することである。特に、素子の駆動時の電圧上昇や電流のリーク、部分的な非発光部の出現・成長、さらには初期の輝度低下を抑えた高信頼性の高輝度発光素子を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このような目的は、下記(1)〜(40)の本発明により達成される。
(1)下記化1で表されるテトラアリールジアミン誘導体である有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上を含有する層を少なくとも1層有する有機EL素子。
【0025】
【化1】

【0026】
[化1において、R 、R 、R およびR は、それぞれアリール基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、R
、R 、R およびR のうちの少なくとも1個はアリール基である。r1、r2、r3およびr4は、それぞれ0または1〜5の整数であり、r1、r2、r3およびr4の和は1以上の整数であり、少なくとも1個のアリール基がR
〜R として存在する。R およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(2)前記R 〜R のうちの2〜4個がアリール基であり、これらのアリール基のうちの少なくとも2個がNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合している上記(1)の有機EL素子。
(3)前記R 〜R のうちの少なくとも1個のアリール基がフェニル基である上記(2)の有機EL素子。
(4)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化2で表される上記(1)〜(3)のいずれかの有機EL素子。
【0027】
【化2】

【0028】
[化2において、A 、A 、A およびA は、それぞれNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するフェニル基であり、これらは同一でも異なるものであってもよい。R
、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10はそれぞれ0または1〜4の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(5)前記R 〜R のうちの少なくとも1個のアリール基がナフチル基、アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基またはコロネニル基である上記(2)の有機EL素子。
(6)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化3で表される上記(1)、(2)または(5)の有機EL素子。
【0029】
【化3】

【0030】
[化3において、ArはNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表す。Z 、Z およびZ
は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。ただし、Z
、Z およびZ のうちの少なくとも1個はNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表すが、Ar、Z
、Z およびZ が同時にNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するフェニル基となることはない。s1、s2およびs3は、それぞれ0または1〜5の整数であり、s1、s2およびs3の和は1以上の整数である。R
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。r0は、それぞれ0または1〜4の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(7)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化4で表される上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子。
【0031】
【化4】

【0032】
[化4において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(8)前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である上記(7)の有機EL素子。
(9)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化5で表される上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子。
【0033】
【化5】

【0034】
[化5において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(10)前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である上記(9)の有機EL素子。
(11)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化6で表される上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子。
【0035】
【化6】

【0036】
[化6において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(12)前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である請求項11の有機EL素子。
(13)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化7で表される上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子。
【0037】
【化7】

【0038】
[化7において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(14)前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である上記(13)の有機EL素子。
(15)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化8で表される上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子。
【0039】
【化8】

【0040】
[化8において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(16)前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である上記(15)の有機EL素子。
(17)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化9で表される上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子。
【0041】
【化9】

【0042】
[化9において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(18)前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である上記(17)の有機EL素子。
(19)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化10で表される上記(1)、(2)、(5)または(6)の有機EL素子。
【0043】
【化10】

【0044】
[化10において、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15およびR16は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15およびr16は、それぞれ0または1〜4の整数である。R17およびR18は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r17およびr18は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(20)前記r5、r6、r15、r16、r17およびr18が、それぞれ0である上記(19)の有機EL素子。
(21)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化11で表される上記(1)、(2)、(5)または(6)の有機EL素子。
【0045】
【化11】

【0046】
[化11において、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15およびR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15およびr20は、それぞれ0または1〜4の整数である。R18およびR19は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r18およびr19は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(22)前記r5、r6、r15、r18、r19およびr20が、それぞれ0である上記(21)の有機EL素子。
(23)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化12で表される上記(1)、(2)、(5)または(6)の有機EL素子。
【0047】
【化12】

【0048】
[化12において、Ar 、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15、R16およびR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15、r16およびr20は、それぞれ0または1〜4の整数である。R18は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。r18は、0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(24)前記r5、r6、r15、r16、r18およびr20が、それぞれ0である上記(23)の有機EL素子。
(25)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化13で表される上記(1)、(2)、(5)または(6)の有機EL素子。
【0049】
【化13】

【0050】
[化13において、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15およびR16は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15およびr16は、それぞれ0または1〜4の整数である。R17およびR18は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r17およびr18は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(26)前記r5、r6、r15、r16、r17およびr18が、それぞれ0である上記(25)の有機EL素子。
(27)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化14で表される上記(1)、(2)、(5)または(6)の有機EL素子。
【0051】
【化14】

【0052】
[化14において、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15およびR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15およびr20は、それぞれ0または1〜4の整数である。R18およびR19は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r18およびr19は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(28)前記r5、r6、r15、r18、r19およびr20が、それぞれ0である上記(27)の有機EL素子。
(29)前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化15で表される上記(1)、(2)、(5)または(6)の有機EL素子。
【0053】
【化15】

【0054】
[化15において、Ar 、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15、R16およびR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15、r16およびr20は、それぞれ0または1〜4の整数である。R18は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。r18は、0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
(30)前記r5、r6、r15、r16、r18およびr20が、それぞれ0である上記(29)の有機EL素子。
(31)前記有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上と電子注入輸送機能を有する化合物の少なくとも1種以上の混合物とを含有する層を少なくとも1層有する上記(1)〜(30)のいずれかの有機EL素子。
(32)前記電子輸送機能を有する化合物が、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムである上記(31)の有機EL素子。
(33)前記混合物を含有する層が発光層である上記(31)または(32)の有機EL素子。
(34)前記有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上を含有する層の少なくとも1層に蛍光性物質をドープする上記(1)〜(33)のいずれかの有機EL素子。
(35)前記蛍光性物質がルブレンである上記(34)の有機EL素子。
(36)前記有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上を含有する層が正孔注入輸送層であり、この正孔注入輸送層と発光層とを有する上記(1)〜(35)のいずれかの有機EL素子。
(37)前記正孔注入輸送層が組成の異なる2層以上で構成される上記(36)の有機EL素子。
(38)前記正孔注入輸送層の少なくとも1層がポリチオフェンを含有する上記(37)の有機EL素子。
(39)電子注入輸送層を有する上記(36)〜(38)のいずれかの有機EL素子。
(40)前記有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上を含有する層が正孔注入輸送機能を有する層であり、この層に接して発光機能を有する層または電子注入輸送機能を有する層が設けられており、前記正孔注入輸送機能を有する層と前記発光機能を有する層または電子注入輸送機能を有する層とのイオン化ポテンシャルIpの差が0.25eV以上である上記(1)〜(30)、(34)または(35)の有機EL素子。
【0055】
本発明の有機EL素子用化合物である化1で表されるテトラアリールジアミン誘導体は、融点やガラス転移温度が高く、その蒸着等により成膜される薄膜は、透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、長期間に渡って平滑で良好な膜質を示す。
【0056】
従ってバインダー樹脂を用いることなく、それ自体で薄膜化することができる。
【0057】
この効果は、以下のことに起因していると考えられる。
【0058】
(1) 分子量を増して高融点にしたこと。
(2) 立体障害のあるフェニル基のようなバルキーな置換基を導入して分子間の重なりを最適化していること。
(3) 分子の取り得るコンフォーメーション数が多く、分子の再配列が妨げられていること。
【0059】
また、分子中にN−フェニル基等の正孔注入輸送単位を多く含み、R 〜Rにフェニル基を導入してビフェニル基にすることでπ共役系が広がり、キャリア移動に有利になり、正孔注入輸送能にも非常に優れる。
【0060】
従って、本発明の有機EL素子は、化1で表されるテトラアリールジアミン誘導体を有機EL素子用化合物として有機化合物層に、特に好ましくは、正孔注入輸送層に用いるため、ムラのない均一な面発光が可能であり、高輝度が長時間に渡って安定して得られる。波長によっても異なるが100〜100000cd/m
程度、あるいはそれ以上の高輝度が安定して得られる。なお、本発明の有機EL素子の発光極大波長は、350〜700nm程度である。
【0061】
また、耐熱性・耐久性が高く、素子電流密度が1A/cm 程度以上でも安定した駆動が可能である。
【0062】
さらには、本発明の有機EL素子用化合物を有機化合物層に用いることによりエネルギーレベルが最適になり、界面においてキャリアが効果的にブロッキングされるため、安定したキャリアの再結合および発光が起こる。特に本発明の有機EL素子用化合物を正孔注入輸送層に用いることにより、この正孔注入輸送層と接する発光機能を有する層(発光層が電子注入輸送層を兼ねる発光・電子注入輸送層を含む。)、あるいは正孔注入輸送層が発光層を兼ねる正孔注入輸送機能を有する層であるときにこの層と接する電子注入輸送層とのイオン化ポテンシャルIpの差が最適化されて、界面におけるキャリアブロッキング効果が高まり、極性的に劣勢あるいは不安定なキャリアの注入はより起こりにくくなるので、各層の有機化合物がダメージを受けにくくなり、キャリア再結合領域や発光領域で、キャリアや励起子の失活ポイントを生じにくくなる。その結果、安定した発光が得られ、寿命が大幅に向上する。
【0063】
また、本発明の有機EL素子用化合物と電子注入輸送機能を有する化合物とを混合した有機化合物層を特に発光層として設けることにより、混合層にはキャリアのホッピング伝導パスができることになるので、混合層に注入された各キャリアは極性的により優勢な物質中を移動する。すなわち正孔は正孔注入輸送性物質中を、また電子は電子注入輸送性物質中を移動することになり、逆の極性のキャリア注入は起こりにくくなるため有機化合物がダメージを受けにくくなり、EL素子の寿命が大幅に向上する。
【0064】
また、本発明の有機EL素子用化合物を含有する有機化合物層に蛍光性物質をドープする構成では、本発明の有機EL素子用化合物を正孔注入輸送層に用いることにより、この正孔注入輸送層と接する発光機能を有する層(発光層が電子注入輸送層を兼ねる発光・電子注入輸送層を含む。)あるいは正孔注入輸送層が発光層を兼ねる正孔注入輸送機能を有する層であるときにこの層と接する電子注入輸送層とのイオン化ポテンシャルIpの差が最適化されて、界面におけるキャリアブロッキング効果が高まり、極性的に劣勢あるいは不安定なキャリアの注入は起こりにくくなるので、各層の有機化合物がダメージを受けにくくなり、キャリア再結合領域や発光領域で、キャリアや励起子の失活ポイントを生じにくくなる。また、特に蛍光性物質としてルブレンをドープする場合、ルブレンはバイボーラーな輸送性を有しており、ルブレンでもキャリア再結合が起こるので、その分さらに有機化合物が受けるダメージは少なくなる。また、さらにルブレンがキャリア再結合領域近傍に存在するため、励起子からルブレンへのエネルギー移動が起こり、非放射的失活が少なくなり、その結果、安定した発光が得られ、寿命が大幅に向上する。
【発明の効果】
【0065】
本発明の化合物は、融点やガラス転移温度が高く、その蒸着等により成膜される薄膜は、透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、平滑で良好な膜質を示す。従ってバインダー樹脂を用いることなく、それ自体で薄膜化することができる。
【0066】
また本発明の有機EL素子は、上記化合物を含む有機EL素子用化合物を有機化合物層、特に好ましくは正孔注入輸送層に用いるため、ムラのない均一な面発光が可能であり、高輝度が長時間に渡って安定して得られ、耐久性・信頼性に優れる。
【0067】
特に、正孔注入輸送層を2層として、1層に本発明の化合物を用い、他の1層にポリチオフェンを用いた本発明の有機EL素子では、駆動電圧やその上昇を低く抑えることができ、長時間に渡ってダークスポットの発生がなく、かつ安定した発光を保つことができる。
【0068】
さらには、本発明の有機EL素子はIpの差が最適化された素子構造を取っているため、初期の輝度低下が抑制され、発光寿命が延びる。
【0069】
また、ルブレンをドープしたものでは初期の輝度が高くなるとともに発光寿命が延びる。
【0070】
さらに、本発明の化合物と電子注入輸送機能を有する化合物との混合層を発光層としたものでも発光寿命が延びる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の有機EL素子の構成例を示す側面図である。
【図2】低エネルギー電子分光装置の構成を示すブロック図である。
【図3】励起エネルギーと電子イールドとの関係を示すグラフである。
【図4】実施例1の本発明の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図5】実施例1の本発明の化合物のNMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例2の本発明の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図7】実施例2の本発明の化合物のNMRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例3の本発明の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図9】実施例3の本発明の化合物のNMRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例4の本発明の化合物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図11】実施例4の本発明の化合物のNMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0073】
本発明の有機EL素子用化合物(「本発明の化合物」ともいう。)は、化1で表されるテトラアリールジアミン誘導体(「化1の化合物」ともいう。)である。
【0074】
化1について説明すると、化1において、R 〜R は、それぞれアリール基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、R
〜R のうちの少なくとも1個はアリール基である。r1〜r4は、それぞれ0または1〜5の整数であり、r1〜r4は同時に0になることはない。従って、r1+r2+r3+r4は1以上の整数であり、少なくとも1つのアリール基が存在する条件を満たす数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。
【0075】
〜R で表されるアリール基としては、単環もしくは多環のものであってよく、縮合環や環集合も含まれる。総炭素数は6〜20のものが好ましく、置換基を有していてもよい。この場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0076】
〜R で表されるアリール基の具体例としては、フェニル基、(o−,m−,p−)トリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニリル基、フェニルアントリル基、トリルアントリル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましく、アリール基、特にフェニル基の結合位置は3位(Nの結合位置に対してメタ位)または4位(Nの結合位置に対してパラ位)であることが好ましい。
【0077】
〜R で表されるアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、置換基を有していてもよい。この場合の置換基としてはアリール基と同様のものが挙げられる。
【0078】
〜R で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。
【0079】
〜R で表されるアルコキシ基としては、アルキル部分の炭素数1〜6のものが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基はさらに置換されていてもよい。
【0080】
〜R で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−(t−ブチル)フェノキシ基等が挙げられる。
【0081】
〜R で表されるアミノ基としては、無置換でも置換基を有するものであってもよいが、置換基を有するものが好ましく、具体的にはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N−フェニル−N−ナフチルアミノ基、N−フェニル−N−ビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−アントリルアミノ基、N−フェニル−N−ピレニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジアントリルアミノ基、ジピレニルアミノ基等が挙げられる。
【0082】
〜R で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0083】
〜R のうちの少なくとも1個はアリール基であるが、特にR 〜R
として1分子中にアリール基が2〜4個存在することが好ましく、r1〜r4のなかの2〜4個が1以上の整数であることが好ましい。特に、アリール基は分子中に総計で2〜4個存在し、より好ましくはr1〜r4のなかの2〜4個が1であり、さらにはr1〜r4が1であり、含まれるR
〜R のすべてがアリール基であることが好ましい。すなわち、分子中のR 〜R が置換していてもよい4個のベンゼン環には総計で2〜4個のアリール基が存在し、2〜4個のアリール基の結合するベンゼン環は4個のベンゼン環のなかで同一でも異なるものであってもよいが、特に2〜4個のアリール基がそれぞれ異なるベンゼン環に結合することが好ましい。そして、さらに少なくとも2個がNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合していることがより好ましい。また、この際アリール基としては少なくとも1個がフェニル基であることが好ましく、すなわちアリール基とベンゼン環が一緒になってN原子に対し4−または3−ビフェニリル基を形成することが好ましい。特に2〜4個が4−または3−ビフェニリル基であることが好ましい。4−または3−ビフェニリル基は一方のみでも両者が混在していてもよい。また、フェニル基以外のアリール基としては、特に(1−,2−)ナフチル基、(1−,2−,9−)アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基などが好ましく、フェニル基以外のアリール基も特にNの結合位置に対しパラ位またはメタ位に結合することが好ましい。これらのアリール基もフェニル基と混在していてもよい。
【0084】
化1において、R 、R で表されるアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子としてはR
〜R のところで挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0085】
r5、r6は、ともに0であることが好ましく、2つのアリールアミノ基を連結するビフェニレン基は無置換のものが好ましい。
【0086】
なお、r1〜r4が2以上の整数のとき、各R 〜R 同士は各々同一でも異なるものであってもよい。また、r5、r6が2以上の整数のとき、R
同士、R 同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0087】
化1の化合物のなかでも、化2または化3で表される化合物が好ましい。まず化2について説明すると、化2において、A 〜A
は、それぞれNの結合位置に対してパラ位(4位)またはメタ位(3位)に結合するフェニル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらのフェニル基はさらに置換基を有していてもよく、この場合の置換基としてはR
〜R で表されるアリール基のところで挙げた置換基と同様のものを挙げることができる。R〜R10はそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化1のR
〜R のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0088】
r7〜r10はそれぞれ0または1〜4の整数であり、r7〜r10は0であることが好ましい。
【0089】
また、化2において、R 、R 、r5およびr6は化1のものと同義であり、r5=r6=0であることが好ましい。
【0090】
なお、化2において、r7〜r10が各々2以上の整数であるとき、各R〜R10同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0091】
次に、化3について説明すると、化3において、ArはNの結合位置のパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表す。アリール基としては、化1のR
〜R で表されるアリール基のところで例示したものと同様のものを挙げることができ、特にフェニル基が好ましい。この場合、アリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としてはR
〜R のところで例示したものを挙げることができる。置換基としてはアミノ基が好ましい。ただし、アミノ基は、場合によっては環化して複素環基となっていてもよい。具体的にはR
〜R で表されるアミノ基のなかから選択することができる。Z 、Z およびZは、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化1のR
〜R のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。ただし、Z 、Z およびZ
のうちの少なくとも1個はNの結合位置のパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表すが、Ar、Z 〜Z のすべてが同時にNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するフェニル基となることはなく、4個のベンゼン環の2〜3個がパラ位またはメタ位にそれぞれ1個のアリール基を有することが好ましい。従って、Z
〜Z のうちの1個または2個がこのようなアリール基であることが好ましい。アリール基としては、(1−,2−)ナフチル基、(1−,2−,9−)アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基等も好ましいが、フェニル基が最も好ましい。
【0092】
また、Z 〜Z で表される上記アリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはR
〜R のところで例示したものを挙げることができる。特に、置換基としてはアミノ基が好ましい。具体的には、R 〜R
で表されるアミノ基から選択することができる。s1〜s3は、それぞれ0または1〜5の整数であるが、これらは同時に0になることはなく、その和は1以上の整数である。s1〜s3は、それぞれ0または1であることが好ましく、さらにはs1〜s3の1個または2個が1であり、残りが0であるような組合せが好ましく、この場合s1〜s3が1であるときに含まれるZ
〜Z は、Nの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するアリール基、特にフェニル基であることが好ましい。
【0093】
なお、化3において、s1〜s3が2以上の整数のとき、各Z 〜Z 同士は各々同一でも異なるものであってもよい。また、化3のR
およびr0は化2のR およびr7と各々同義であり、化3のR 、R 、r5およびr6は化2のものと各々同義であり、好ましいものも同様である。
【0094】
化2の化合物のなかでも、化4〜化9で表される化合物が好ましい。化4〜化9の各々において、R11〜R14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としてはR
〜R のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0095】
r11〜r14はそれぞれ0または1〜5の整数であり、r11〜r14は、化4〜化9のいずれにおいても0であることが好ましい。
【0096】
なお、r11〜r14が各々2以上の整数であるとき、各R11〜R14同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0097】
化4〜化9の各々において、R 〜R10およびr5〜r10は、それぞれ化2のものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0098】
一方、化3の化合物のなかでも化10〜化15で表される化合物が好ましい。化10〜化15の各々に示されるAr 〜Ar
はそれぞれアリール基を表し、化10のAr とAr 、化11のAr とAr
、化12のAr とArとAr 、化13のAr とAr
、化14のAr とAr 、化15のArとAr とAr
とは、それぞれ同一でも異なるものであってもよい。アリール基の具体例としては化1のR 〜R のところのものと同様のものを挙げることができ、フェニル基が特に好ましい。
【0099】
化10〜化15のR15、化10、化12、化13、化15のR16、化11、化12、化14、化15のR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、化10、化13のR15とR16、化11、化14のR15とR20、化12、化15のR15とR16とR20とはそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化1のR
〜R のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0100】
化10〜化15のr15、化10、化12、化13、化15のr16、化11、化12、化14、化15のr20は、0または1〜4の整数であるが、r15、r16、r20は0であることが好ましい。
【0101】
化10、化13のR17、化10〜化15のR18、化11、化14のR19は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、化10、化13のR17とR18、化11、化14のR18とR19とはそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化1のR
〜R のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0102】
化10、化13のr17、化10〜化15のr18、化11、化14のr19は、0または1〜5の整数であるが、r17、r18、r19は0であることが好ましい。
【0103】
なお、化10〜化15において、r15、r16、r20が2以上の整数であるとき、R15同士、R16同士、R20同士は各々同一でも異なるものであってもよく、r17、r18、r19が2以上の整数であるとき、R17同士、R18同士、R19同士は各々同一でも異なるものであってもよい。
【0104】
化10〜化15の各々において、R 、R 、r5およびr6は化1のものと同義であり、r5=r6=0であることが好ましい。
【0105】
以下に、化1の化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、化16、化22、化27、化32、化38、化43、化49、化55、化63、化69、化75、化80は一般式であり、化17〜21、化23〜26、化28〜31、化33〜37、化39〜42、化44〜48、化50〜54、化56〜62、化64〜68、化70〜74、化76〜79、化81〜85にR
等の組合せで具体例を示している。この表示において、Ar 〜Ar を除いて、すべてHのときはHで示しており、置換基が存在するときは置換基のみを示すものとし、他のものはHであることを意味している。
【0106】
【化16】

【0107】
【化17】

【0108】
【化18】

【0109】
【化19】

【0110】
【化20】

【0111】
【化21】

【0112】
【化22】

【0113】
【化23】

【0114】
【化24】

【0115】
【化25】

【0116】
【化26】

【0117】
【化27】

【0118】
【化28】

【0119】
【化29】

【0120】
【化30】

【0121】
【化31】

【0122】
【化32】

【0123】
【化33】

【0124】
【化34】

【0125】
【化35】

【0126】
【化36】

【0127】
【化37】

【0128】
【化38】

【0129】
【化39】

【0130】
【化40】

【0131】
【化41】

【0132】
【化42】

【0133】
【化43】

【0134】
【化44】

【0135】
【化45】

【0136】
【化46】

【0137】
【化47】

【0138】
【化48】

【0139】
【化49】

【0140】
【化50】

【0141】
【化51】

【0142】
【化52】

【0143】
【化53】

【0144】
【化54】

【0145】
【化55】

【0146】
【化56】

【0147】
【化57】

【0148】
【化58】

【0149】
【化59】

【0150】
【化60】

【0151】
【化61】

【0152】
【化62】

【0153】
【化63】

【0154】
【化64】

【0155】
【化65】

【0156】
【化66】

【0157】
【化67】

【0158】
【化68】

【0159】
【化69】

【0160】
【化70】

【0161】
【化71】

【0162】
【化72】

【0163】
【化73】

【0164】
【化74】

【0165】
【化75】

【0166】
【化76】

【0167】
【化77】

【0168】
【化78】

【0169】
【化79】

【0170】
【化80】

【0171】
【化81】

【0172】
【化82】

【0173】
【化83】

【0174】
【化84】

【0175】
【化85】

【0176】
【化86】

【0177】
【化87】

【0178】
本発明の化合物は、Jean Piccard, Herr. Chim. Acta., 7, 789(1924) 、JeanPiccard, J. Am.
Chem. Soc., 48, 2878(1926) 等に記載の方法に従って、あるいは準じて合成することができる。具体的には、目的とする化合物に応じ、ジ(ビフェニル)アミン化合物とジヨードビフェニル化合物、あるいはN,N’−ジフェニルベンジン化合物とヨードビフェニル化合物、などの組合せで、銅の存在下で加熱すること(ウルマン反応)によって得られる。
【0179】
本発明の化合物は、質量分析、赤外吸収スペクトル(IR)、 1H核磁気共鳴スペクトル(NMR)等によって同定することができる。
【0180】
これらの本発明の化合物は、640〜2000程度の分子量をもち、190〜300℃の高融点を有し、80〜200℃の高ガラス転移温度を示し、通常の真空蒸着等により透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、平滑で良好な膜として得られ、しかもそれが長期間に渡って維持される。なお、本発明の化合物のなかには融点を示さず、高温においてもアモルファス状態を呈するものもある。従ってバインダー樹脂を用いることなく、それ自体で薄膜化することができる。
【0181】
本発明の化合物は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0182】
本発明の有機EL素子は、少なくとも1層の有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が本発明の有機EL素子用化合物を含有する。本発明の有機EL素子の構成例を図1に示す。同図に示される有機EL素子1は、基板2上に、陽極3、正孔注入輸送層4、発光層5、電子注入輸送層6、陰極7を順次有する。
【0183】
発光層は、正孔(ホール)および電子の注入機能、それらの輸送機能、正孔と電子の再結合により励起子を生成させる機能を有する。発光層には比較的電子的にニュートラルな化合物を用いることが好ましい。正孔注入輸送層は、陽極からの正孔の注入を容易にする機能、正孔を輸送する機能および電子を妨げる機能を有し、電子注入輸送層は、陰極からの電子の注入を容易にする機能、電子を輸送する機能および正孔を妨げる機能を有するものであり、これらの層は、発光層へ注入される正孔や電子を増大・閉じ込めさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。正孔注入輸送層および電子注入輸送層は、発光層に用いる化合物の正孔注入、正孔輸送、電子注入、電子輸送の各機能の高さを考慮し、必要に応じて設けられる。例えば、発光層に用いる化合物の正孔注入輸送機能または電子注入輸送機能が高い場合には、正孔注入輸送層または電子注入輸送層を設けずに、発光層が正孔注入輸送層または電子注入輸送層を兼ねる構成とすることができる。また、場合によっては正孔注入輸送層および電子注入輸送層のいずれも設けなくてよい。また、正孔注入輸送層および電子注入輸送層は、それぞれにおいて、注入機能を持つ層と輸送機能を持つ層とに別個に設けてもよい。
【0184】
発光層の厚さ、正孔注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法によっても異なるが、通常、5〜1000nm程度、特に10〜200nmとすることが好ましい。
【0185】
正孔注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすればよい。電子もしくは正孔の、各々の注入層と輸送層を分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は20nm以上とするのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さの上限は、通常、注入層で100nm程度、輸送層で1000nm程度である。このような膜厚については注入輸送層を2層設けるときも同じである。
【0186】
また、組み合わせる発光層や電子注入輸送層や正孔注入輸送層のキャリア移動度やキャリア密度(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を考慮しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合領域・発光領域を自由に設計することが可能であり、発光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能にできる。
【0187】
本発明の化合物は、発光層、正孔注入輸送層のいずれにも適用可能であるが、正孔注入輸送性が良好であるので、正孔注入輸送層に用いることが好ましい。
【0188】
本発明の化合物を正孔注入輸送層に用いる場合について説明する。正孔注入輸送層は、本発明の化合物を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコーティングして形成すればよい。特に蒸着を行えば良好なアモルファス膜が得られる。
【0189】
また、通常の有機EL素子に用いられている各種有機化合物、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報等に記載されている各種有機化合物を正孔注入輸送層に併用することができる。例えば、本発明の化合物以外の他の芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等を本発明の化合物と積層したり、混合したりしてもよい。
【0190】
正孔注入輸送層を正孔注入層と正孔輸送層とに分けて設層する場合は、正孔注入輸送層用の化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いることができる。このとき、陽極(ITO等)側からイオン化ポテンシャルの小さい化合物の層の順に積層することが好ましい。また陽極表面には薄膜性の良好な化合物を用いることが好ましい。このような積層順については、正孔注入輸送層を2層以上設けるときも同様である。このような積層順とすることによって、駆動電圧が低下し、電流リークの発生やダークスポットの発生・成長を防ぐことができる。また、素子化する場合、蒸着を用いているので1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピンホールフリーとすることができるため、正孔注入層にイオン化ポテンシャルが小さく、可視部に吸収をもつような化合物を用いても、発光色の色調変化や再吸収による効率の低下を防ぐことができる。
【0191】
本発明の化合物を主成分とする正孔注入輸送層に併用する有機化合物としては、ポリチオフェンが好ましく、薄膜性の良好な正孔注入層もしくは第一正孔注入輸送層としてポリチオフェンを陽極上に蒸着した後に、本発明の化合物を正孔輸送層もしくは第二正孔注入輸送層として積層することはイオン化ポテンシャルの点からさらに好ましい。
【0192】
本発明に用いることが好ましいポリチオフェンとしては、化88で示される構造単位を有する重合体(以下、「重合体A」ともいう。)、化88で示される構造単位と化89で示される構造単位とを有する共重合体(以下、「共重合体B」ともいう。)および化90で示される重合体(以下、「重合体C」)から選択されるものが挙げられる。
【0193】
【化88】

【0194】
【化89】

【0195】
【化90】

【0196】
まず、重合体Aについて説明する。重合体Aは化88の構造単位を有し、例えば化91で示されるものである。
【0197】
【化91】

【0198】
化88、化91について記すと、R31およびR32はそれぞれ水素原子、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0199】
31およびR32で表される芳香族炭化水素基としては、無置換であっても置換基を有するものであってよく、炭素数6〜15のものが好ましい。置換基を有するときの置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0200】
R31およびR32で表される脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基等が挙げられ、これらのものは無置換でも、置換基を有するものであってもよい。なかでも、炭素数1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基などが挙げられる。
【0201】
31、R32としては、水素原子、芳香族炭化水素基が好ましく、特には水素原子が好ましい。
【0202】
層中における重合体Aの平均重合度(化91のm)は4〜100、好ましくは5〜40、さらに好ましくは5〜20である。この場合、化88で示される繰り返し単位が全く同一の重合体(ホモポリマー)であっても、化88においてR31とR32の組合せが異なる構造単位から構成される共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれであってもよい。
【0203】
また、層中における重合体Aの重量平均分子量は300〜10000程度である。
【0204】
重合体Aの末端基(化91のX およびX )は、水素原子、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子である。この末端基は、一般に、重合体Aの合成の際の出発原料に依存して導入される。さらには重合反応の最終段階で他の置換基を導入することもできる。
【0205】
なお、重合体Aは化88の構造単位のみで構成されることが好ましいが、10モル%以下であれば他のモノマー成分を含有していてもよい。
【0206】
重合体Aの具体例を化92に示す。化92には化88ないし化91のR31、R32の組合せで示している。
【0207】
【化92】

【0208】
次に、共重合体Bについて説明する。共重合体Bは化88の構造単位と化89の構造単位とを有し、例えば化93で示されるものである。
【0209】
【化93】

【0210】
化88については重合体Aのものと同様である。従って、化93中のR31、R32は化88のものと同様である。
【0211】
また化89について記すと、R33およびR34は、それぞれ水素原子、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0212】
33、R34で表される芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基の具体例は、化88のR31、R32のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。また、R33、R34の好ましいものもR31、R32と同様である。さらに、R33とR34とは互いに結合して環を形成し、チオフェン環に縮合してもよい。この場合の縮合環としては、ベンゼン環等が挙げられる。このR33、R34については、化93においても同様である。
【0213】
層中における共重合体Bの平均重合度(化93におけるv+w)は、重合体Aと同様に、4〜100、好ましくは5〜40、さらに好ましくは5〜20である。また、化88の構造単位と化89の構造単位との比率は、化88の構造単位/化89の構造単位が、モル比で10/1〜1/10程度である。
【0214】
層中における共重合体Bの重量平均分子量は300〜10000程度である。
【0215】
また、共重合体Bの末端基(化93におけるX およびX )は重合体Aと同様のものであり、一般に、共重合体Bの合成の際の出発原料ないしその比率に依存する。
【0216】
なお、共重合体Bは、重合体Aと同様に、化88の構造単位と化89の構造単位とで構成されることが好ましいが、10モル%以下であれば他のモノマー成分を含有していてもよい。また、共重合体Bは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれであってもよく、化93の構造式はこのような構造を包含するものである。さらに、化88、化89の構造単位同士は、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0217】
共重合体Bの具体例を化94に示す。化94には化88のR31、R32の組合せ、化89のR33、R34の組合せ、すなわち化93のR31、R32、R33、R34の組合せで示している。
【0218】
【化94】

【0219】
さらに、化90の重合体Cについて説明する。化90について記すと、R33およびR34は化89のものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0220】
およびX は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、重合体A、共重合体Bの末端基と同様に、水素原子または塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子である。X
およびX は重合体Cの合成の際の出発原料に依存する。
【0221】
nは平均重合度を表し、層中では重合体A、共重合体Bと同様に4〜100、好ましくは5〜40、さらに好ましくは5〜20である。この場合、R33とR34の組合せが同一の重合体(ホモポリマー)であっても、R33とR34の組合せが異なる共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれであってもよい。
【0222】
また、層中における重合体Cの重量平均分子量は300〜10000程度である。
【0223】
なお、重合体Cは化90に示すような構造であることが好ましいが、重合体A、共重合体Bと同様に、10モル%以下であれば他のモノマー成分を含有していてもよい。
【0224】
重合体Cの具体例を化95、化96に示す。化95は化90と同じであり、化96には化95のR33、R34の組合せで示している。
【0225】
【化95】

【0226】
【化96】

【0227】
本発明では、ポリチオフェンとして、上記重合体のうち重合体Cを用いることが特に好ましい。
【0228】
ポリチオフェンは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0229】
本発明に用いるポリチオフェンの融点は300℃以上、または融点を持たないものであり、真空蒸着によりアモルファス状態あるいは微結晶状態の良質な膜が得られる。
【0230】
上記のように、本発明の化合物を正孔注入輸送層に用いる場合、発光層中には発光機能を有する化合物である蛍光性物質が含まれる。この蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−264692号公報に開示されているような化合物、例えばキナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択される少なくとも1種が挙げられる。その他トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の金属錯体色素、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体等が挙げられる。これらの有機蛍光体を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形成する。
【0231】
電子注入輸送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。電子注入輸送層は発光層を兼ねたものであってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を使用することも好ましい。電子注入輸送層の形成も正孔注入輸送層や発光層と同様に蒸着等によればよい。
【0232】
電子注入輸送層を電子注入層と電子輸送層とに分けて設層する場合は、電子注入輸送層用の化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いることができる。このとき、陰極側から電子親和力の値の大きい化合物の層の順に積層することが好ましい。このような積層順については電子注入輸送層を2層以上設けるときも同様である。
【0233】
また、有機化合物層には、一重項酸素クエンチャーが含有されていてもよい。
【0234】
このようなクエンチャーとしては、ルブレンやニッケル錯体、ジフェニルイソベンゾフラン、三級アミン等が挙げられる。中でもルブレンは特に好ましい。このようなクエンチャーの含有量は、本発明の化合物と併用する場合、本発明の化合物の10モル%以下とすることが好ましい。
【0235】
本発明では、ルブレンを有機化合物層にドープすることが好ましい。
【0236】
ドープは有機化合物層全域に行ってよく、好ましくは、正孔注入輸送層全域とするのがよい。特にキャリア再結合領域、発光領域およびその近傍、例えば正孔注入輸送層の有機化合物層との接触界面にルブレンが存在することが好ましいと考えられるので必ずしも正孔注入輸送層全域とする必要はなく、正孔注入輸送層の、これに接する発光層(電子注入輸送層を兼ねる場合も含む。)、もしくは電子注入輸送層(正孔注入輸送層が発光層を兼ねる場合)側の半分の領域としてもよいが、通常は正孔注入輸送層全域とする。また、場合によっては、正孔注入輸送層全域または正孔注入輸送層の、これに接する発光層もしくは電子注入輸送層側の半分の領域と、発光層もしくは電子注入輸送層の正孔注入輸送層側半分の領域とすることもできる。特に、正孔注入輸送層において、本発明の化合物とルブレンとの併用は好ましい。
【0237】
ルブレンのドーピング濃度は、ルブレンが濃度消光を起こすことから高濃度の使用は好ましくなく、ドープ層全体に対し0.1〜50wt% とすることが好ましく、さらには0.1〜30wt%
、特には0.1〜20wt% とすることが好ましい。
【0238】
本発明では、ルブレンのほか、他の蛍光性物質をドープしてもよい。
【0239】
また、本発明では、本発明の化合物を含有する層と他の機能を有する化合物を含有する層との間に両方の化合物の混合物を含有する混合層を特に発光層として設けることが好ましい。さらには、発光強度を高めるために、その混合層に発光機能を有する化合物(蛍光性物質)をドープしてもよい。
【0240】
特に、本発明の化合物が正孔注入輸送機能を有する化合物であることから、電子注入輸送機能を有する化合物(発光機能を併せもつ化合物も含む。)との混合物を含有する層を発光層として設けることが好ましい。この混合に供する電子注入輸送機能を有する化合物は、前記の電子注入輸送用の化合物の中から選択して用いることができる。具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を用いることが好ましい。
【0241】
さらに、混合層において、正孔および電子注入輸送機能を有する化合物は各々1種のみを用いても2種以上併用してもよく、正孔注入輸送機能を有する化合物としては、本発明の化合物の他に前記の正孔注入輸送用の化合物から選択して用いることができる。
【0242】
なかでも、特に、ポリチオフェンを用いた正孔注入輸送層上に本発明の化合物を用いた正孔注入輸送層を積層し、この正孔注入輸送層と電子注入輸送層との間に両者の混合層を発光層として介在させることが好ましい。
【0243】
この場合の混合比は、キャリア移動度によるが、本発明の化合物が混合層全体に対し30〜70wt% 、さらには40〜60wt% 、特には50wt% 程度(従って、通常本発明の化合物/電子注入輸送機能を有する化合物の重量比が、30/70〜70/30、さらには40/60〜60/40、特には50/50程度)となるようにすることが好ましい。
【0244】
また、混合層の厚さは、分子層一層に相当する厚みから、有機化合物層の膜厚未満とすることが好ましく、具体的には1〜85nmとすることが好ましく、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好ましい。
【0245】
また、混合層の形成方法としては、異なる蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもできる。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ましいが、場合によっては、化合物が島状に存在するものであってもよい。
【0246】
なお、混合層は、発光層以外の有機化合物層にも用いることができる。ただし、素子中に存在する有機化合物層の一部とすることが好ましく、有機化合物層をすべて混合層とすると高輝度な均一発光が得られにくくなることもある。
【0247】
本発明の化合物は好ましくは正孔注入輸送層に用いられるが、この正孔注入輸送層に接して設けられる発光層(電子注入輸送層を兼ねる場合も含む。)とのイオン化ポテンシャルIpの差が0.25eV以上であることが好ましく、特に0.25〜0.40eVであることが好ましい。
【0248】
上記のイオン化ポテンシャルIpの差は、本発明の化合物を含む層が正孔注入輸送機能を有する層であって、かつ発光層としても機能する層であるとき、この層に接する層は電子注入輸送層であるので、この層との差とする。
【0249】
なお、本発明の化合物のイオン化ポテンシャルIpの絶対値は5.0〜5.4eV程度である。
【0250】
上記のイオン化ポテンシャルIpは、白橋、磯部、宇田、電子材料、123(1985)の記載に従う低エネルギー電子分光装置「Model AC−1」(理研計器製)を用い、10〜200nm厚の単層の蒸着膜をITO透明電極を有する基板やスライドガラスなどの上に成膜したサンプルを使用して測定した値である。
【0251】
上記の低エネルギー電子分光装置は、図2に示す構成のものである。
【0252】
図2に示すように、分光装置10は、紫外線ランプ11、モノクロメータ12、検出器13、低エネルギー電子計数装置14、制御装置15、演算表示装置16およびX−Yステージ17により構成され、X−Yステージ上にサンプルSを載置して測定を行うものである。
【0253】
紫外線ランプ11には重水素ランプを用い、このランプから出た光をモノクロメータ12により200〜360nmの任意の波長に分光し、サンプルS表面に照射する。200〜360nmの光は、E=hν=h(c/λ)(E:エネルギー,h:プランク定数,ν:振動数,λ:波長)の式を用いてエネルギーに換算すると、各々6.2〜3.4eVとなる。この光を励起エネルギーの低い方から高い方に向かってスイープしていくと、あるエネルギーで光電効果による電子放出が始まる。このエネルギーが一般に光電的仕事関数といわれる値である。このようにして放出された光電子を検出器13および低エネルギー電子計数装置14を用いて計数し、バッグランド補正やデッドタイム中の数え落としの補正などの演算をした後、図3に示すような励起エネルギー・放出電子量特性(基本特性)を演算表示装置16のディスプレイ上に表示する。
【0254】
基本特性に示すように、この光電子放出率(Count Per Second : CPS)と励起エネルギー(eV)の関係は、縦軸を光電子放出率のn乗(CPS)n
とし、横軸を励起エネルギーとすると、直線関係で表すことができる。ここで、nの値は通常1/2を採用している。
【0255】
なお制御装置15は、モノクロメータ12の波長駆動、X−Yステージ17によるサンプル位置の制御および低エネルギー電子係数装置14の計数制御を行っている。
【0256】
従って、本発明では、図3から得られる光電的仕事関数をイオン化ポテンシャルIpとする。
【0257】
なお、本発明の化合物を含む層に、さらに他の化合物が含有されているときであって、本発明の化合物を主成分(通常50wt% 以上の含有量)とするときは、本発明の化合物の単層膜から得られたイオン化ポテンシャルIpの値をこの層のイオン化ポテンシャルIpとみなすものとする。また、本発明の化合物を含む層と比較される層に2種以上の化合物が含有されるときも、主成分(通常50wt%以上の含有量)となる化合物の単層膜から得られたイオン化ポテンシャルIpの値をこの層のイオン化ポテンシャルIpとみなすものとする。
【0258】
イオン化ポテンシャルIpの絶対値は、本発明の化合物の単層膜の方が、比較対照される化合物の単層膜より小さいものとなる。
【0259】
なお、混合層を介在させた構成では、このようなイオン化ポテンシャルの概念は適用しないものとする。
【0260】
陰極には、仕事関数の小さい材料、例えば、Li、Na、Mg、Al、Ag、Inあるいはこれらの1種以上を含む合金を用いることが好ましい。また、陰極は結晶粒が細かいことが好ましく、特に、アモルファス状態であることが好ましい。陰極の厚さは10〜1000nm程度とすることが好ましい。
【0261】
有機EL素子を面発光させるためには、少なくとも一方の電極が透明ないし半透明である必要があり、上記したように陰極の材料には制限があるので、好ましくは発光光の透過率が80%以上となるように陽極の材料および厚さを決定することが好ましい。具体的には、例えば、ITO、SnO
、Ni、Au、Pt、Pd、ドーパントをドープしたポリピロールなどを陽極に用いることが好ましい。また、陽極の厚さは10〜500nm程度とすることが好ましい。また、素子の信頼性を向上させるために駆動電圧が低いことが必要であるが、好ましいものとして10〜30Ω/□のITOが挙げられる。
【0262】
基板材料に特に制限はないが、図示例では基板側から発光光を取り出すため、ガラスや樹脂等の透明ないし半透明材料を用いる。また、基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色をコントロールしてもよい。
【0263】
なお、基板に不透明な材料を用いる場合には、図1に示される積層順序を逆にしてもよい。
【0264】
次に、本発明の有機EL素子の製造方法を説明する。
【0265】
陰極および陽極は、蒸着法やスパッタ法等の気相成長法により形成することが好ましい。
【0266】
正孔注入輸送層、発光層および電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm
以下(通常、下限値は0.001μm 程度である。)の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく低下する。
【0267】
真空蒸着の条件は特に限定されないが、10−3Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.1〜1nm/sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くすることができる。
【0268】
これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着することが好ましいが、予め混合してから蒸着してもよい。またこの他、溶液塗布法(スピンコート、ディップ、キャスト等)ラングミュア・ブロジェット(LB)法などを用いることもできる。溶液塗布法では、ポリマー等のマトリクス物質中に本発明の化合物を分散させる構成としてもよい。
【0269】
本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパルス駆動することもできる。印加電圧は、通常、2〜20V 程度とされる。
【0270】
なお、本発明の化合物は、ドナー性を有する有機半導体材料として有機EL素子以外の光電変換素子、例えば、光電池や光センサへの応用が可能である。さらには、アモルファス状態と結晶間の転移を利用したサーモクロミック材料としても有用である。
【実施例】
【0271】
以下、本発明の具体的実施例を比較例とともに示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0272】
<実施例1>
N,N,N’,N’−テトラ(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No. I−1)の合成
2000mlの常圧水添装置にm−ニトロビフェニル250g の(1.26mol)、5%Pd−C12.5g 、エタノール1250mlを仕込み、室温にて理論量の水素ガスを吸収させた。濾過して触媒を除去し、濾液を溶媒留去して、212g
のm−アミノビフェニルを得た(収率99.9%)。さらに、m−ニトロビフェニルを254g (1.28mol )とした以外は同スケールにてもう1バッチ反応させて、215g
のm−アミノビフェニルを得た(収率99.7%)。
【0273】
10000mlの反応容器に、濃塩酸775ml、水775ml、氷775g を仕込み、m−アミノビフェニル125g (0.740mol )を加えて懸濁させた。これに0℃以下で亜硝酸ナトリウム56.3g
(0.816mol )の750ml水溶液を30分間滴下し、その後50分間同温にて攪拌した。得られたジアゾニウム塩水溶液に、0℃以下でヨウ化カリウム185g (1.12mol
)の1250ml水溶液を1時間滴下した。滴下後1時間同温で攪拌し、室温に戻して2時間攪拌した。
【0274】
反応溶液を酢酸エチル抽出し、有機層を水洗、乾燥(硫酸マグネシウム)、溶媒留去し、粗結晶を得た。同スケールにてさらに1バッチ反応させ、得られた粗結晶を合わせてn−ヘキサンにてシリカゲルカラム精製し、297g
のm−ヨードビフェニルを得た(2バッチ合わせての収率71.7%)。
【0275】
2000mlの反応容器にm−アミノビフェニル140g (0.828mol )、m−ヨードビフェニル232g (0.829mol )、炭酸カリウム63.1g (0.457mol
)、銅粉13.9g 、ニトロベンゼン800mlを仕込み、Ar気流下で32時間加熱還流させた。反応終了後、濾過して不溶物を除き、濾液を溶媒留去した。得られた残渣をn−ヘキサン/トルエン=4/1にてシリカゲルカラム精製し、44.5g
のジ(3−ビフェニル)アミン(高純度品)を得た(収率16.7%)。
【0276】
500mlの反応容器にジ(3−ビフェニル)アミン44.5g (0.139mol )、4,4’−ジヨードビフェニル27.6g (0.0680mol )、炭酸カリウム34.3g
(0.249mol )、銅粉2.3g 、ニトロベンゼン180mlを仕込み、Ar気流下で24時間加熱還流させた。反応終了後、濾過して不溶物を除き、濾液を溶媒留去した。得られた残渣をn−ヘキサン/トルエン=3/1にてシリカゲルカラム精製し、30g
の一次精製N,N,N’,N’−テトラ(3−ビフェニリル)ベンジジンを得た(収率55.7%)。これをトルエンにて再結晶精製し、純度99.58%品6.0g と純度99.23%品5.0g
を得た(収率20.4%)。さらに、昇華精製を行い、純度99.99%品8.0gを得た。
【0277】
質量分析:m/e 792(M+ )
赤外吸収スペクトル(IR):図4
NMRスペクトル:図5
示差走査熱量測定(DSC):融点 207.4℃,
ガラス転移温度 95.8℃
【0278】
<実施例2>
N,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No. II−1)の合成
4−アミノビフェニル72.5g の(0.429mol )、4−ヨードビフェニル120g (0.429mol )、炭酸カリウム32.6g (0.236mol )、銅6.8g
(0.107mol )、ニトロベンゼン430mlを仕込み、210℃で一晩反応させた。反応後放冷し、減圧濾過にて銅塩類を除き、クロロホルムで洗浄後、濾液の溶媒を減圧留去した。残渣にメタノールを500ml加え冷却し、析出結晶を濾取した。得られた結晶49g
をジメチルホルムアミド(DMF)250mlに加熱溶解し、水冷すると副生成物のトリビフェニルアミンが析出してくるため、濾取して除き、濾液を水1000mlに投入して析出した結晶を濾取、水洗、メタノール洗浄した。
【0279】
得られた水分を含んだ結晶35g をトルエン750mlで再結晶して、黄緑色リン片状晶のジ(4−ビフェニル)アミンを得た。母液は濃縮して二次晶を採取した。収量は19g
であった(収率13.8%)。
【0280】
ジ(4−ビフェニル)アミン15g (0.0467mol )、4,4’−ジヨードビフェニル9.5g (0.0234mol )、炭酸カリウム9.7g (0.0702mol
)、銅0.74g (0.0117mol )、ニトロベンゼン76mlを仕込み、220℃で2昼夜反応させた。反応後DMFを750ml加え、熱時濾過して銅塩類を除き、濾液を冷却し、析出結晶を濾取した。得られた水を含んだ結晶25g
を100倍量のトルエンで3回再結晶を繰り返して、目的物である淡黄色晶のN,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニリル)ベンジジンを得た(収量9g 、収率48.6%)。さらに、昇華精製を行い、純度99.99%品を得た。
【0281】
質量分析:m/e 792(M+ )
赤外吸収スペクトル(IR):図6
NMRスペクトル:図7
示差走査熱量測定(DSC):融点 267.7℃,
ガラス転移温度 131.8℃
【0282】
<実施例3>
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No. VII −1)の合成
10000mlの反応容器に、濃塩酸155ml、水155g 、氷155g を仕込み、m−アミノビフェニル25g (0.148mol )を加えて懸濁させた。これに0℃以下で亜硝酸ナトリウム11.3g
(0.164mol )の150ml水溶液を30分間滴下し、その後50分間同温にて攪拌した。得られたジアゾニウム塩水溶液に、0℃以下でヨウ化カリウム37g (0.223mol
)の250ml水溶液を1時間滴下した。滴下後1時間同温で攪拌し、室温に戻して2時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチル抽出し、有機層を水洗、乾燥(硫酸マグネシウム)、溶媒留去し、粗結晶を得た。
【0283】
これをn−ヘキサンにてシリカゲルカラム精製し、28g のm−ヨードビフェニルを得た。
【0284】
300mlの反応容器にN,N’−ジフェニルベンジジン10g (0.0298mol )、m−ヨードビフェニル25g (0.0893mol )、炭酸カリウム12.3g
(0.0891mol )、銅粉2.6g 、ニトロベンゼン150mlを仕込み、Ar気流下で24時間加熱還流させた。反応終了後、濾過して不溶物を除き、濾液を溶媒留去した。得られた残渣をn−ヘキサン/酢酸エチル=5/1にてシリカゲルカラム精製し、15g
の一次精製N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−ビフェニリル)ベンジジンを得た(収率78.8%)。これをトルエンにて再結晶精製し、10.6g の純度99.9%品を得た(収率55.6%)。さらに昇華精製を行い、純度99.99%品を得た。
【0285】
質量分析:m/e 640(M+ )
赤外吸収スペクトル(IR):図8
NMRスペクトル:図9
示差走査熱量測定(DSC):融点 189.8℃,
ガラス転移温度 83.6℃
【0286】
<実施例4>
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[−4’−(N−フェニル−N−3−メチルフェニルアミノ)ビフェニル−4−イル]ベンジジン(化合物No. X−10)の合成
500mlの反応容器にN,N’−ジフェニルベンジジン33.6g (0.10mol )、m−ヨードトルエン25.0g (0.11mol )、炭酸カリウム27.6g
(0.2mol )、銅粉2.6g 、ニトロベンゼン200mlを仕込み、Ar気流下で24時間加熱還流させた。反応終了後、濾過して不溶物を除き、濾液を溶媒留去した。得られた残渣をn−ヘキサン/トルエン=1/2にてシリカゲルカラム精製を2回行い、28.10g
のN,N’−ジフェニル−N[−4−(N−フェニル−N−3−メチルフェニルアミノ)ビフェニル−4−イル]ベンジジンを得た(収率42%)。
【0287】
500mlの反応容器に4,4’−ジヨードビフェニル8.1g (0.02mol)、N,N’−ジフェニル−N[−4−(N−フェニル−N−3−メチルフェニルアミノ)ビフェニル−4−イル]ベンジジン28.1g(0.02mol
)、炭酸カリウム11.04g (0.08mol )、銅粉1.0g 、ニトロベンゼン100mlを仕込み、Ar気流下で24時間加熱還流させた。反応終了後、濾過して不溶物を除き、濾液を溶媒留去した。得られた残渣をn−ヘキサン/トルエン=2/1にてシリカゲルカラム精製を2回行い、11.62g
の高純度のN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[−4’−(N−フェニル−N−3−メチルフェニルアミノ)ビフェニル−4−イル]ベンジジンを得た(収率58%)。これをヘキサンとトルエンとの混合溶媒にて再結晶精製し、7.3gの純度99.9%の淡黄色の透明のアモルファス状態の固体を得た。
【0288】
質量分析:m/e 1002(M+ )
赤外吸収スペクトル(IR):図10
NMRスペクトル:図11
示差走査熱量測定(DSC):融点は観測されなかった(初期の状態からアモルファス であった)。
ガラス転移温度 132℃
【0289】
<実施例5>
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[−4’−(N,N−ジ−3−ビフェニリルアミノ)ビフェニル−4−イル]ベンジジン(化合物No. X−3)の合成
300mlの反応容器にジ(3−ビフェニリル)アミン16.1g (0.050mol )、4,4’−ジヨードビフェニル20.3g (0.050mol )、炭酸カリウム13.8g
(0.10mol )、銅粉1.0g 、ニトロベンゼン100mlを仕込み、Ar気流下で24時間加熱還流させた。反応終了後、濾過して不溶物を除き、濾液を溶媒留去した。得られた残渣をn−ヘキサン/トルエン=5/1にてシリカゲルカラム精製し、12.0gの4’−[N,N’−ジ(3−ビフェニリルアミノ)]−4−ヨード−1,1’−ビフェニルを得た(収率40%)。
【0290】
300mlの反応容器に4’−[N,N’−ジ(3−ビフェニリル)アミノ]−4−ヨード−1,1’−ビフェニル12.0g (0.020mol )、N,N’−ジフェニルベンジジン3.03g(0.009mol
)、炭酸カリウム5.52g(0.04mol )、銅粉0.5g 、ニトロベンゼン100mlを仕込み、Ar気流下で24時間加熱還流させた。反応終了後、濾過して不溶物を除き、濾液を溶媒留去した。得られた残渣をトルエン/n−ヘキサン=2/1にてシリカゲルカラム精製を2回行い、6.90g
のN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[−4’−(N,N−ジ−3−ビフェニリルアミノ)ビフェニル−4−イル]ベンジジンを得た(収率60%)。これをトルエンにて再結晶精製し、5.2gの純度99.9%の淡黄色の透明のアモルファス状態の固体を得た。この化合物についても、実施例4と同様に、質量分析、IR、NMRによって同定した。
【0291】
なお、化16〜化87に示される他の化合物も上記の方法に準じて合成し、質量分析、IR、NMRによって同定した。
【0292】
<実施例6>
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮沸エタノール中から引き上げて乾燥してUV/O
洗浄した後、蒸着装置の基板ホルダーに固定して、1×10−4Pa以下まで減圧した。
【0293】
次いで、実施例1の化合物を蒸着速度0.2nm/secで55nmの厚さに蒸着し、透明なアモルファス状態の薄膜を得た。これを大気中より過酷な条件である30℃−100%RHおよび60℃−90%RHの恒温槽に10カ月間以上放置しても結晶化は起こらず、安定なアモルファス状態を維持しており、高い薄膜形成能および放置安定性を示した。また、同様にして作製した膜について、低エネルギー電子分光装置AC−1(理研計器製)でイオン化ポテンシャルIpを測定したところ、5.35eVであった。
【0294】
<実施例7>
実施例2および実施例3の化合物についても、実施例6と同様に実験したところ実施例6と同様、10カ月間以上放置しても結晶化は起こらなかった。また蒸着膜のIpは、それぞれ5.36eVおよび5.38eVであった。
【0295】
<実施例8>
実施例4および実施例5の化合物について実施例6と同様に実験したところ実施例6と同様、10カ月間以上放置しても結晶化は起こらなかった。また蒸着膜のIpは、それぞれ5.32eVおよび5.28eVであった。
【0296】
<比較例1>
実施例1の化合物の代わりに、化合物(1)N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(融点:171.2℃、ガラス転移温度:61.3℃)、あるいは、化合物(2)1,1’−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(融点:187.8℃、ガラス転移温度:79.9℃)を用いた以外は、実施例6と同様な方法にて薄膜を作製し、30℃−100%RHの恒温槽に放置した。実施例6〜8よりも、温度的に緩やかな環境条件に放置したにもかかわらず、化合物(1)は3日目に、化合物(2)は30日目には結晶化が始まった。
【0297】
また、実施例6と同様に化合物(1)と化合物(2)についてIpを測定したところ化合物(1)、(2)ともに5.40eVであった。
【0298】
<実施例9>
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮沸エタノール中から引き上げて乾燥してUV/O
洗浄した後、蒸着装置の基板ホルダーに固定して、1×10−4Pa以下まで減圧した。
【0299】
まず、実施例1の化合物を蒸着速度0.2nm/secで75nmの厚さに蒸着し、正孔注入輸送層とした。
【0300】
次いで、減圧状態を保ったまま、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを蒸着速度0.2nm/secで50nmの厚さに蒸着して、電子注入輸送・発光層とした。
【0301】
さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着速度0.2nm/secで200nmの厚さに蒸着して陰極とし、有機EL素子を得た。
【0302】
このEL素子に直流電圧を印加し、乾燥雰囲気下10mA/cmの一定電流密度で連続駆動させた。初期には、6.5V 、400cd/m
の黄緑色(発光極大波長λmax =500nm)の発光が確認された。輝度の半減時間は600時間で、その間の駆動電圧の上昇は4.0V であった、また、発光層としたトリス(8−キノリノラト)アルミニウムの蒸着膜のIpは5.64eVであり、正孔注入輸送層とした実施例1の化合物との差は、0.29eVであった。
【0303】
<実施例10、11>
実施例9において、実施例1の化合物の代わりに実施例2の化合物または実施例3の化合物を用いて同様にEL素子を得、同様に特性を調べた。
【0304】
<比較例2、3>
実施例9において、実施例1の化合物の代わりに比較例1の化合物(1)または(2)を用いて同様にEL素子を得、同様に特性を調べた。
【0305】
実施例9〜11、比較例2〜3について特性をまとめて表1に示す。
【0306】
【表1】

【0307】
<実施例12、13>
実施例9において、実施例1の化合物の代わりに実施例4または実施例5の化合物を用いて同様にEL素子を得、同様に特性を調べたところ、いずれにおいても実施例9と同等以上の良好な結果を示した。なお、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムとのIpの差は、実施例4の化合物で0.32eV、実施例5の化合物で0.36eVであった。
【0308】
<実施例14>
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮沸エタノール中から引き上げて乾燥してUV/O
洗浄した後、蒸着装置の基板ホルダーに固定して、1×10−4Pa以下まで減圧した。
【0309】
まず、ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)を蒸着速度0.1nm/secで20nmの厚さに蒸着し、第一正孔注入輸送層とした。
【0310】
次いで、減圧状態を保ったまま、実施例1の化合物を蒸着速度0.2nm/secで55nmの厚さに蒸着し、第二正孔注入輸送層とした。
【0311】
さらに、減圧状態を保ったまま、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを蒸着速度0.2nm/secで50nmの厚さに蒸着して、電子注入輸送・発光層とした。
【0312】
さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着速度0.2nm/secで200nmの厚さに蒸着して陰極とし、有機EL素子を得た。
【0313】
このEL素子に直流電圧を印加し、乾燥雰囲気下10mA/cmの一定電流密度で連続駆動させた。初期には、6.0V 、350cd/m
の黄緑色(発光極大波長λmax =500nm)の発光が確認された。輝度の半減時間は1600時間で、その間の駆動電圧の上昇は2.3V であった、また、ダークスポットの出現および成長は全くなかった。
【0314】
さらにその後も電流リークは起こらず、安定な発光を示した。
【0315】
これらの結果は、ディスプレイとして応用するための必要条件を十分に満たしているが、寿命試験を加速する意味から、さらに高電流密度(40mA/cm)で連続駆動させた。初期には1400cd/m
の高輝度を示し、その半減時間は400時間で、その間の駆動電圧の上昇は5.0V であった。
【0316】
<実施例15、16>
実施例14において、実施例1の化合物の代わりに、実施例2の化合物または実施例3の化合物を用いて同様にEL素子を得、電流密度10mA/cmの条件で同様に特性を調べた。
【0317】
実施例14〜16について電流密度10mA/cmの条件での特性をまとめて表2に示す。
【0318】
【表2】

【0319】
<実施例17、18>
実施例14において、実施例1の化合物の代わりに、実施例4の化合物または実施例5の化合物を用いて同様にEL素子を得、電流密度10mA/cmの条件で同様に特性を調べたところ、いずれにおいても実施例14と同等以上の良好な結果を示した。
【0320】
<実施例19>
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮沸エタノール中から引き上げて乾燥してUV/O
洗浄した後、蒸着装置の基板ホルダーに固定して、1×10−4Pa以下まで減圧した。
【0321】
まず、実施例1の化合物とルブレンをそれぞれ0.2nm/sec、0.02nm/secの蒸着速度でトータル75nmの厚さに蒸着し、正孔注入輸送層とした。
【0322】
次いで、減圧状態を保ったまま、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを蒸着速度0.2nm/secで50nmの厚さに蒸着して、電子注入輸送・発光層とした。
【0323】
さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着速度0.2nm/secで200nmの厚さに蒸着して陰極とし、有機EL素子を得た。
【0324】
このEL素子に直流電圧を印加し、乾燥雰囲気下10mA/cmの一定電流密度で連続駆動させた。初期には、6.2V 、550cd/m
の黄色(発光極大波長λmax =550nm)の発光が確認された。輝度の半減時間は1500時間で、その間の駆動電圧の上昇は2.8V であった。
【0325】
<実施例20、21>
実施例19において、実施例1の化合物の代わりに、実施例2の化合物または実施例3の化合物を用いて同様にEL素子を得、同様に特性を調べた。
【0326】
実施例19〜21について特性をまとめて表3に示す。
【0327】
【表3】

【0328】
<実施例22、23>
実施例19において、実施例1の化合物の代わりに、実施例4の化合物または実施例5の化合物を用いて同様にEL素子を得、同様に特性を調べたところ、実施例19と同等以上の良好な結果を示した。
【0329】
<実施例24>
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮沸エタノール中から引き上げて乾燥してUV/O
洗浄した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、真空槽を1×10−4Pa以下まで減圧した。
【0330】
まず、ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)を蒸着速度約0.1nm/secで約20nmの厚さに蒸着し、第一正孔注入輸送層とした。
【0331】
次いで真空槽を大気下に戻し、再び真空槽を1×10−4Pa以下まで減圧した後、実施例1の化合物とルブレンをそれぞれ蒸着速度0.1〜0.2nm/sec、0.01〜0.02nm/secでトータル約55nmの厚さに共蒸着し、第二正孔注入輸送層とした。
【0332】
さらに、減圧状態を保ったまま、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを蒸着速度0.1〜0.2nm/secで約50nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送・発光層とした。
【0333】
さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着速度0.2nm/secで約200nmの厚さに蒸着して陰極とし、EL素子を得た。
【0334】
このEL素子に直流電圧を印加し、乾燥雰囲気下10mA/cmの一定電流密度で連続駆動させた。初期には、6.2V 、420cd/m
の黄色(発光極大波長λmax =550nm)の発光が確認された。輝度の半減時間は2000時間で、その間の駆動電圧の上昇は4.9V であった。
【0335】
これらの結果は、ディスプレイとして応用するための必要条件を十分に満たしているが、寿命試験を加速する意味から、さらに高電流密度(40mA/cm)で連続駆動させた。初期には1490cd/m
の高輝度を示し、その半減時間は500時間で、その間の駆動電圧の上昇は3.5V であった。
【0336】
<実施例25>
実施例24において、第二正孔注入輸送層に用いた実施例1の化合物の代わりに実施例4の化合物を用いるほかは同様にしてEL素子を得た。このEL素子について実施例24と同様に特性を調べたところ、実施例24と同等以上の良好な結果を示した。
【0337】
<実施例26>
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、その基板を煮沸エタノール中から引き上げて乾燥し、UV/O
洗浄した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、真空槽を1×10−4Pa以下まで減圧した。
【0338】
まず、実施例1の化合物を蒸着速度0.1〜0.2nm/secで約55nm/secの厚さに蒸着し、正孔注入輸送層とした。
【0339】
さらに、減圧状態を保ったまま、前記正孔注入輸送材料と電子注入輸送材料としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムをほぼ同じ蒸着速度(0.1〜0.2nm/sec)で共蒸着して、混合層を発光層として約40nmの厚さに形成した。
【0340】
さらに、減圧状態を保ったまま、前記電子注入輸送材料を蒸着速度0.1〜0.2nm/secで約30nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0341】
さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着速度0.2nm/secで約200nmの厚さに蒸着して陰極とし、EL素子を得た。
【0342】
このEL素子に直流電圧を印加し、乾燥雰囲気下10mA/cmの一定電流密度で連続駆動させた。初期には、6.7V 、470cd/m
の黄緑色(発光極大波長λmax =500nm)の発光が確認された。輝度の半減時間は2000時間で、その間の駆動電圧の上昇は3.0V であった。
【0343】
<実施例27>
実施例26において、正孔注入輸送層および混合層(発光層)に用いた実施例1の化合物の代わりに実施例4の化合物を用いるほかは同様にしてEL素子を得た。このEL素子について実施例26と同様に特性を調べたところ、実施例26と同等以上の良好な結果を示した。
【0344】
<実施例28>
厚さ200nmのITO透明電極(陽極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮沸エタノール中から引き上げて乾燥してUV/O
洗浄した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、真空槽を1×10−4Pa以下まで減圧した。
【0345】
まず、ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)を蒸着速度約0.1nm/secで20nmの厚さに蒸着し、第一正孔注入輸送層とした。
【0346】
次いで真空槽を大気下に戻し、再び真空槽を1×10−4Pa以下まで減圧した後、実施例1の化合物を蒸着速度0.1〜0.2nm/secで約35nmの厚さに蒸着し、第二正孔注入輸送層とした。
【0347】
さらに、減圧状態を保ったまま、前記第二正孔注入輸送材料と電子注入輸送材料としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムをほぼ同じ蒸着速度(0.1〜0.2nm/sec)で共蒸着して、混合層を発光層として約40nmの厚さに形成した。
【0348】
さらに、減圧状態を保ったまま、前記電子注入輸送材料を蒸着速度0.1〜0.2nm/secで約30nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0349】
さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着速度0.2nm/secで約200nmの厚さに蒸着して陰極とし、EL素子を得た。
【0350】
このEL素子に直流電圧を印加し、乾燥雰囲気下10mA/cmの一定電流密度で連続駆動させた。初期には、6.1V 、350cd/m
の黄緑色(発光極大波長λmax =500nm)の発光が確認された。輝度の半減時間は3000時間で、その間の駆動電圧の上昇は5.0V であった。
【0351】
<実施例29>
実施例28において、混合層の膜厚を10nmとするほかは同様にEL素子を得、同様に特性を評価した。この結果、初期には6.2V 、360cd/m
の黄緑色(発光極大波長λmax =500nm)の発光が確認された。輝度の半減時間は2100時間で、その間の駆動電圧の上昇は3.3V であった。
【0352】
<実施例30>
実施例28において、第二正孔注入輸送層および混合層(発光層)に用いた実施例1の化合物の代わりに実施例4の化合物を用いるほかは同様にしてEL素子を得た。このEL素子について実施例28と同様に特性を調べたところ、実施例28と同等以上の良好な結果を示した。
【0353】
なお、上記実施例9〜30において、上記の本発明の化合物のほか、例示した本発明の化合物の1種以上を同様に用いて同様に種々のEL素子を得、同様に特性を評価したところ、素子の構成に応じ同様の結果を示した。
【符号の説明】
【0354】
1 EL素子
2 基板
3 陽極
4 正孔注入輸送層
5 発光層
6 電子注入輸送層
7 陰極
10 低エネルギー電子分光装置
11 紫外線ランプ
12 モノクロメータ
13 検出器
14 低エネルギー電子計数装置
15 制御装置
16 演算表示装置
17 X−Yステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化1で表されるテトラアリールジアミン誘導体である有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上を含有する層を少なくとも1層有する有機EL素子。
【化1】


[化1において、R 、R 、R およびR は、それぞれアリール基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、R
、R 、R およびR のうちの少なくとも1個はアリール基である。r1、r2、r3およびr4は、それぞれ0または1〜5の整数であり、r1、r2、r3およびr4の和は1以上の整数であり、少なくとも1個のアリール基がR
〜R として存在する。R およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項2】
前記R 〜R のうちの2〜4個がアリール基であり、これらのアリール基のうちの少なくとも2個がNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合している請求項1の有機EL素子。
【請求項3】
前記R 〜R のうちの少なくとも1個のアリール基がフェニル基である請求項2の有機EL素子。
【請求項4】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化2で表される請求項1〜3のいずれかの有機EL素子。
【化2】


[化2において、A 、A 、A およびA は、それぞれNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するフェニル基であり、これらは同一でも異なるものであってもよい。R
、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10はそれぞれ0または1〜4の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項5】
前記R 〜R のうちの少なくとも1個のアリール基がナフチル基、アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基またはコロネニル基である請求項2の有機EL素子。
【請求項6】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化3で表される請求項1、2または5の有機EL素子。
【化3】


[化3において、ArはNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表す。Z 、Z およびZ
は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。ただし、Z
、Z およびZ のうちの少なくとも1個はNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表すが、Ar、Z
、Z およびZ が同時にNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するフェニル基となることはない。s1、s2およびs3は、それぞれ0または1〜5の整数であり、s1、s2およびs3の和は1以上の整数である。R
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。r0は、それぞれ0または1〜4の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項7】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化4で表される請求項1〜4のいずれかの有機EL素子。
【化4】


[化4において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項8】
前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である請求項7の有機EL素子。
【請求項9】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化5で表される請求項1〜4のいずれかの有機EL素子。
【化5】


[化5において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項10】
前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である請求項9の有機EL素子。
【請求項11】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化6で表される請求項1〜4のいずれかの有機EL素子。
【化6】


[化6において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項12】
前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である請求項11の有機EL素子。
【請求項13】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化7で表される請求項1〜4のいずれかの有機EL素子。
【化7】


[化7において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項14】
前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である請求項13の有機EL素子。
【請求項15】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化8で表される請求項1〜4のいずれかの有機EL素子。
【化8】


[化8において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項16】
前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である請求項15の有機EL素子。
【請求項17】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化9で表される請求項1〜4のいずれかの有機EL素子。
【化9】


[化9において、R 、R 、R およびR10は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r7、r8、r9およびr10は、それぞれ0または1〜4の整数である。R11、R12、R13およびR14は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r11、r12、r13およびr14はそれぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項18】
前記r5、r6、r7、r8、r9、r10、r11、r12、r13およびr14がそれぞれ0である請求項17の有機EL素子。
【請求項19】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化10で表される請求項1、2、5または6の有機EL素子。
【化10】


[化10において、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15およびR16は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15およびr16は、それぞれ0または1〜4の整数である。R17およびR18は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r17およびr18は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項20】
前記r5、r6、r15、r16、r17およびr18が、それぞれ0である請求項19の有機EL素子。
【請求項21】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化11で表される請求項1、2、5または6の有機EL素子。
【化11】


[化11において、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15およびR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15およびr20は、それぞれ0または1〜4の整数である。R18およびR19は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r18およびr19は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項22】
前記r5、r6、r15、r18、r19およびr20が、それぞれ0である請求項21の有機EL素子。
【請求項23】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化12で表される請求項1、2、5または6の有機EL素子。
【化12】


[化12において、Ar 、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15、R16およびR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15、r16およびr20は、それぞれ0または1〜4の整数である。R18は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。r18は、0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項24】
前記r5、r6、r15、r16、r18およびr20が、それぞれ0である請求項23の有機EL素子。
【請求項25】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化13で表される請求項1、2、5または6の有機EL素子。
【化13】


[化13において、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15およびR16は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15およびr16は、それぞれ0または1〜4の整数である。R17およびR18は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r17およびr18は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項26】
前記r5、r6、r15、r16、r17およびr18が、それぞれ0である請求項25の有機EL素子。
【請求項27】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化14で表される請求項1、2、5または6の有機EL素子。
【化14】


[化14において、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15およびR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15およびr20は、それぞれ0または1〜4の整数である。R18およびR19は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r18およびr19は、それぞれ0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項28】
前記r5、r6、r15、r18、r19およびr20が、それぞれ0である請求項27の有機EL素子。
【請求項29】
前記テトラアリールジアミン誘導体が下記化15で表される請求項1、2、5または6の有機EL素子。
【化15】


[化15において、Ar 、Ar およびAr は、それぞれアリール基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。R15、R16およびR20は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r15、r16およびr20は、それぞれ0または1〜4の整数である。R18は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。r18は、0または1〜5の整数である。R
およびR は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r5およびr6は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【請求項30】
前記r5、r6、r15、r16、r18およびr20が、それぞれ0である請求項29の有機EL素子。
【請求項31】
前記有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上と電子注入輸送機能を有する化合物の少なくとも1種以上の混合物とを含有する層を少なくとも1層有する請求項1〜30のいずれかの有機EL素子。
【請求項32】
前記電子輸送機能を有する化合物が、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムである請求項31の有機EL素子。
【請求項33】
前記混合物を含有する層が発光層である請求項31または32の有機EL素子。
【請求項34】
前記有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上を含有する層の少なくとも1層に蛍光性物質をドープする請求項1〜33のいずれかの有機EL素子。
【請求項35】
前記蛍光性物質がルブレンである請求項34の有機EL素子。
【請求項36】
前記有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上を含有する層が正孔注入輸送層であり、この正孔注入輸送層と発光層とを有する請求項1〜35のいずれかの有機EL素子。
【請求項37】
前記正孔注入輸送層が組成の異なる2層以上で構成される請求項36の有機EL素子。
【請求項38】
前記正孔注入輸送層の少なくとも1層がポリチオフェンを含有する請求項37の有機EL素子。
【請求項39】
電子注入輸送層を有する請求項36〜38のいずれかの有機EL素子。
【請求項40】
前記有機EL素子用化合物の少なくとも1種以上を含有する層が正孔注入輸送機能を有する層であり、この層に接して発光機能を有する層または電子注入輸送機能を有する層が設けられており、前記正孔注入輸送機能を有する層と前記発光機能を有する層または電子注入輸送機能を有する層とのイオン化ポテンシャルIpの差が0.25eV以上である請求項1〜30、34または35の有機EL素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−135511(P2009−135511A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5246(P2009−5246)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【分割の表示】特願2006−41554(P2006−41554)の分割
【原出願日】平成7年2月8日(1995.2.8)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】