説明

有機EL表示パネルおよびその製造方法

【課題】画素間の発光を抑制するとともに、それぞれの画素の劣化を抑制した有機EL表示パネルを提供する。
【解決手段】
薄膜トランジスタ素子を含む駆動部が複数配置されてなるトランジスタアレイ基板1012と、トランジスタアレイ基板上に形成され、複数の駆動部に対応する各領域の一部分にコンタクトホール103aが形成された層間絶縁膜103と、層間絶縁膜上に複数の駆動部に対応して配置され、対応するコンタクトホールを介して駆動部と電気的に接続された複数の画素電極104と、複数の画素電極が配置された領域および配置されていない領域上の全体に亘って形成された有機EL層105と、有機EL層上の全体に亘って形成された共通電極106とを備え、有機EL層における、層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域105aの電気抵抗率が、有機EL層における他の領域105bより高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各画素で共通の有機EL材料を用いる有機EL表示パネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示パネルは、例えば、赤、緑、青の3色の画素を備えており、画素毎に発光輝度を調整することで様々な色を表現している。画素の色分けには、赤、緑、青の各色の有機EL材料を画素毎に使い分けるタイプと、白色の有機EL材料を各画素共通に用い、赤、緑、青のカラーフィルタを画素毎に設けるタイプとがある。ただし、現状では、有機EL材料のみで純粋な赤、緑、青を得るのが困難であるため、前者のタイプであってもカラーフィルタを用いるのが一般的である。両タイプでカラーフィルタを用いる点は共通しているため、有機EL層を形成する際に画素毎に作り分ける必要がない点で、後者のタイプは製造上のメリットがある。特許文献1は、後者のタイプにおいて、さらに簡易な工程で形成可能な単純マトリクス表示タイプの有機EL表示パネルを提案している。
【0003】
図12は、特許文献1に記載の有機EL表示パネル10の構成を模式的に示す部分断面図である。図12に示されるように、有機EL表示パネル10は、基板1と、共通層20と、有機EL層3と、電極層4とを備えている。共通層20は、各画素に対応して形成され且つ金属からなる低抵抗部21と、画素間に対応して形成され且つ金属酸化物からなる高抵抗部22とからなる。各低抵抗部21は画素毎に異なる電圧が印加される画素電極として機能する。共通層20は、基板1上に金属層を形成し、金属層の各画素に対応する部分をマスクした状態で酸化処理を施すことにより形成されている。このように酸化処理だけで画素電極を形成しているので、エッチング処理等の必要がなく、簡易な工程で、共通層20のパターニングが行われる。その結果、有機EL表示パネルを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4584836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、単純マトリクス表示タイプより反応速度やコントラスト等の点で優れるアクティブマトリクス表示タイプの有機EL表示パネルの研究が盛んである。このタイプの有機EL表示パネルでは、基板上に薄膜トランジスタ素子を含む駆動部が複数配置され、当該複数の駆動部を覆うように層間絶縁膜が形成されている。この層間絶縁膜には、複数の駆動部に対応する各領域の一部分にコンタクトホールが形成されている。層間絶縁膜上には、複数の駆動部に対応して、各々の一部が対応するコンタクトホールに入り込むように複数の画素電極が形成され、これにより、複数の画素電極は、対応する駆動部と電気的に接続されている。
【0006】
有機EL層の製造工程の簡略化の観点から、アクティブマトリクス表示タイプの有機EL表示パネルにおいても、有機EL層を一括形成する構成を採用するのが望ましい。
しかしながら、特許文献1に記載の構成をアクティブマトリクス表示タイプの有機EL表示パネルに適用すると、共通層における低抵抗部のそれぞれの一部がコンタクトホールに入り込むように形成されることになる。同様に、有機EL層の一部もコンタクトホールに沿って形成されることになる。そうすると、有機EL層におけるコンタクトホールに相当する領域に、有機EL層における他の平坦な領域に比べて膜厚の薄い部分(以下、「薄膜部分」と記す。)や厚い部分が生じる恐れがある。特に、薄膜部分が存在する場合には、当該薄膜部分に電界が集中し、平坦領域よりも大きな電流が流れることになる。このため、有機EL層に薄膜部分が存在することにより、薄膜部分が存在しない場合と比べて、それぞれの画素の劣化が早く進み、寿命が短くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、画素間の発光を抑制するとともに、それぞれの画素の劣化を抑制した有機EL表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である有機EL表示パネルは、薄膜トランジスタ素子を含む駆動部が複数配置されてなるトランジスタアレイ基板と、前記トランジスタアレイ基板上に形成され、前記複数の駆動部に対応する各領域の一部分にコンタクトホールが形成された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に前記複数の駆動部に対応して配置され、対応するコンタクトホールを介して駆動部と電気的に接続された複数の画素電極と、前記複数の画素電極が配置された領域および前記複数の画素電極が配置されていない領域上の全体に亘って形成された有機EL層と、前記有機EL層上の全体に亘って形成された共通電極と、を備え、前記有機EL層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域(以下、「コンタクトホール対応領域」とも記す。)および隣り合う画素電極の間に対応する領域(以下、「画素間対応領域」とも記す。)の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっていることを特徴とするとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、前記有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっている。
有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれの電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっているため、コンタクトホール対応領域に他の領域と比べて膜厚の薄い部分が存在していたとしても、当該薄膜部分に流れる電流は抑制される。したがって、当該薄膜部分に起因する画素の劣化を抑制することができる。
【0010】
また、有機EL層における画素間対応領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっているため、画素間の発光が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態の有機EL表示パネル100における、画素電極104とコンタクトホール103aの配置関係を模式的に示す図である。
【図2】(a)有機EL表示パネルの構成を模式的に示す部分断面図(図1のA−A’断面)である。(b)TFT層102の一部の構成を模式的に示す部分断面図である。(c)有機EL層105におけるコンタクトホール103aに対応する部分の形状を模式的に示す図である。
【図3】有機EL表示パネル100の構成を模式的に示す部分断面図(図1のB−B’断面)である。
【図4】有機EL表示パネル100の製造工程の一例を示す図である。
【図5】有機EL表示パネル100の製造工程のうち図4に示す工程に後続する部分の一例を示す工程図である。
【図6】有機EL表示パネル100の製造工程のうち図5に示す工程に後続する部分の一例を示す工程図である。
【図7】実験用デバイス300の構成を模式的に示す断面図である。
【図8】(a)光照射前後の電流−電圧特性を示す図である。(b)光照射前後の輝度−電圧特性を示す図である。
【図9】(a)変形例1の有機EL表示パネル100aの構成を模式的に示す部分断面図である。(b)有機EL層1050の発光領域1050bの構成を模式的に示す。(c)有機EL層1050の非発光領域1050aの構成を模式的に示す。
【図10】(a)光照射前後の電流−電圧特性を示す図である。(b)光照射前後の輝度−電圧特性を示す図である。
【図11】変形例3の有機EL表示パネル100bの構成を模式的に示す部分断面図である。
【図12】有機EL表示パネル10の要部を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の態様>
本発明の一態様である有機EL表示パネルは、薄膜トランジスタ素子を含む駆動部が複数配置されてなるトランジスタアレイ基板と、前記トランジスタアレイ基板上に形成され、前記複数の駆動部に対応する各領域の一部分にコンタクトホールが形成された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に前記複数の駆動部に対応して配置され、対応するコンタクトホールを介して駆動部と電気的に接続された複数の画素電極と、前記複数の画素電極が配置された領域および前記複数の画素電極が配置されていない領域上の全体に亘って形成された有機EL層と、前記有機EL層上の全体に亘って形成された共通電極と、を備え、前記有機EL層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっていることを特徴とするとした。
【0013】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルでは、前記有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっている。
有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれの電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっているため、コンタクトホール対応領域に他の領域と比べて膜厚の薄い部分が存在していたとしても、当該薄膜部分に流れる電流は抑制される。したがって、当該薄膜部分に起因する画素の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、有機EL層における画素間対応領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっているため、画素間の発光が抑制される。
ここで、本発明の別の態様として、前記有機EL層は、第1有機発光層と、前記第1有機発光層に対し積層方向に間隔を空けて配された第2有機発光層とを含み、前記有機EL層における前記他の領域には、前記第1有機発光層と前記第2有機発光層との間に少なくとも2層以上の層を含む電荷発生層が介在されており、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域には、前記第1有機発光層と前記第2有機発光層との間に、前記少なくとも2層以上の層のそれぞれに含まれる物質が混合されてなる混合層が介在されているとしてもよい。
【0015】
本態様の有機EL表示パネルにおいて、前記有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域には、前記第1有機発光層と前記第2有機発光層との間に前記混合層が介在されている。この混合層は、電荷発生層を構成する各層に含まれる物質が混合されているため、もはや電荷発生層として機能せず、絶縁層として機能する。したがって、前記有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域に流れる電流量をより一層低下させることができる。
【0016】
ここで、本発明の別の態様として、前記共通電極上における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域に、金属層が形成されているとしてもよい。
その際、本発明の別の態様として、前記金属層の上部表面の可視光に対する反射率は30%以下であるとしてもよい。
【0017】
本態様の有機EL表示パネルでは、前記金属層の上部表面の可視光に対する反射率は30%以下であるため、前記金属層はブラックマトリクスとして機能する。したがって、前記有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域から放出される光を遮断することができる。加えて、前記金属層は、外光を吸収するため、ディスプレイの明所コントラストの改善に寄与できる。
【0018】
また、本発明の別の態様として、前記金属層は、補助電極であり、前記共通電極と電気的に接続されているとしてもよい。
本態様の有機EL表示パネルでは、金属層は、補助電極であり、共通電極と電気的に接続されているため、供給電極に対する電力供給源として機能する。したがって、パネル中央領域での電圧降下の影響を低減することができる。
【0019】
ここで、本発明の別の態様として、前記有機EL層は、白色を発する有機発光層を含むとしてもよい。
ここで、本発明の別の態様として、前記共通電極の上方に、前記画素電極毎にカラーフィルタが形成されているとしてもよい。
ここで、本発明の別の態様として、前記複数の画素電極は、光反射性の材料で形成されており、前記共通電極は、光透過性の材料で形成されているとしてもよい。
【0020】
ここで、本発明の一態様である有機EL表示パネルの製造方法は、基板を準備する準備工程と、前記基板上に、薄膜トランジスタ素子を含む駆動部を複数配置することで、トランジスタアレイ基板を形成するトランジスタアレイ基板形成工程と、前記トランジスタアレイ基板上に、前記複数の駆動部に対応する各領域の一部分にコンタクトホールが形成された層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、前記層間絶縁膜上に、前記複数の駆動部に対応し、かつ、対応するコンタクトホールを介して駆動部と電気的に接続されるよう複数の画素電極を配置する画素電極形成工程と、前記複数の画素電極が配置された領域および前記複数の画素領域が配置されていない領域上の全体に亘って有機EL層を形成する有機EL層形成工程と、前記有機EL層上の全体に亘って共通電極を形成する共通電極形成工程と、を備え、前記有機EL層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっていることを特徴とするとした。
【0021】
ここで、本発明の別の態様として、前記共通電極上に当該共通電極を保護するための中間層を形成する中間層形成工程と、前記中間層上における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域以外の領域に、光バリア層を形成する光バリア層形成工程と、前記光バリア層をレジストとして当該光バリア層の上方から前記有機EL層に向けて所定のレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、を含み、前記有機EL層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域が、前記レーザ光の照射により劣化することで、前記他の領域より電気抵抗率が高くなっているとしてもよい。
【0022】
本態様の有機EL表示パネルの製造方法では、前記有機EL層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域が、前記レーザ光の照射により劣化することで、前記他の領域より電気抵抗率が高くなっている。したがって、有機EL層に薄膜部分が存在することによる各画素の劣化を、簡易な工程で、抑制することができる。
【0023】
ここで、本発明の別の態様として、前記所定のレーザ光は、波長が420nm以下の光であるとしてもよい。
ここで、本発明の別の態様として、前記所定のレーザ光は、UV光を含むとしてもよい。
ここで、本発明の別の態様として、前記光バリア層は、波長が420nm以下の光を吸収し、かつ、前記有機EL層からの光を透過する機能を有するとしてもよい。
【0024】
ここで、本発明の別の態様として、前記光バリア層形成工程と前記レーザ光照射工程の間に、前記光バリア層をレジストとして前記中間層の一部を除去することで、前記共通電極における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域を露出させる除去工程と、前記共通電極における、前記露出された領域上に金属層を形成する金属層形成工程を含むとしてもよい。
【0025】
本態様の有機EL表示パネルの製造方法では、前記光バリア層は、前記中間層の一部を除去する除去工程およびレーザ光照射工程の2回の工程において用いられる。そのため、工程数の増加を抑制することができる。
ここで、本発明の別の態様として、前記金属層の上部表面の可視光に対する反射率は30%以下であるとしてもよい。
【0026】
ここで、本発明の別の態様として、前記金属層は、補助電極であり、前記共通電極と電気的に接続されているとしてもよい。
ここで、本発明の別の態様として、前記有機EL層形成工程では、第1有機発光層、2層以上の多層膜からなる電荷発生層、および第2有機発光層をこの順に積層し、前記レーザ光照射工程の前記レーザ照射により、前記電荷発生層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域の電気抵抗率は、前記電荷発生層の他の領域より高くなるとしてもよい。
【0027】
ここで、本発明の別の態様として、前記複数の画素電極は、光反射性の材料で形成されており、前記共通電極は、光透過性の材料で形成されているとしてもよい。
本態様の有機EL表示パネルの製造方法では、前記共通電極を透過する光と、前記画素電極から反射する光との双方の光により、前記有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域の電気抵抗率を効果的に高くすることができる。
<実施の形態1>
−有機EL表示パネルの概略構成−
本実施の形態の有機EL表示パネルは、アクティブマトリクス表示タイプの有機EL表示パネルである。同パネルでは、基板上にTFT層が形成され、TFT層上に層間絶縁膜が形成されている。TFT層は、薄膜トランジスタ素子を含む駆動部が複数配置されてなる。ここでは、一例として、複数の駆動部のそれぞれは、スイッチングトランジスタと駆動トランジスタを含んで構成されるものとする。層間絶縁膜には、複数の駆動部に対応する各領域の一部分にコンタクトホールが形成されている。層間絶縁膜上には複数の駆動部に対応して複数の画素電極が形成されている。複数の画素電極のそれぞれは、一部が対応するコンタクトホールに入り込むように形成されることで対応する駆動部と電気的に接続されている。さらに、複数の画素電極が配置された領域および当該複数の画素領域が配置されていない領域上の全体に亘って有機EL層が形成され、有機EL層上の全体に亘って共通電極が形成されている。ここで、有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域の電気抵抗率が、当該有機EL層における他の領域より高くなっている。このため、コンタクトホール対応領域に他の領域と比べて膜厚の薄い部分が存在していたとしても、当該薄膜部分に流れる電流は抑制される。したがって、当該薄膜部分に起因する画素の劣化を抑制することができる。また、有機EL層における画素間対応領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっているため、画素間の発光が抑制される。
−有機EL表示パネルの断面図−
図1は、本実施の形態の有機EL表示パネル100における、画素電極104とコンタクトホール103aの配置関係を模式的に示す図である。
【0028】
図2(a)は、有機EL表示パネル100の構成を模式的に示す部分断面図(図1のA−A’断面)である。有機EL表示パネル100は、基板101と、TFT層と、層間絶縁膜103と、複数の画素電極104と、有機EL層105と、共通電極106と、中間層107とを備える。以下、有機EL表示パネル100の構成を詳細に説明する。基板101上にTFT層102が形成されている(以下、基板101上にTFT層102が形成されたものを「トランジスタアレイ基板1012」とも記す。)。TFT層102は、薄膜トランジスタ素子を含む駆動部を複数含んでいる。TFT層102の詳細について図2(b)を用いて説明する。図2(b)は、TFT層102の一部の構成を模式的に示す部分断面図である。まず、基板101上にスイッチングトランジスタのゲート電極201と駆動トランジスタのゲート電極202とが間隔を空けて形成されている。これらゲート電極201、202上に当該ゲート電極201、202を覆うようにゲート絶縁膜203が設けられている。ゲート絶縁膜203上における、ゲート電極201の上方に当たる部分には半導体層206が設けられている。半導体層206の片側にはソースドレイン電極(以下、「SD電極」と記す。)204が、他方にはSD電極205が、それぞれ半導体層206に接した状態で形成されている。ゲート絶縁膜203のうちゲート電極202に相当する領域の一部にコンタクトホールが設けられており、このコンタクトホールにSD電極205の一部が入り込み、ゲート電極202とコンタクトしている。ゲート絶縁膜203上における、ゲート電極202の上方に当たる部分には半導体層209が設けられている。半導体層209の片側にはSD電極207が、他方にはSD電極208が、それぞれ半導体層209に接した状態で形成されている。
【0029】
図2(a)に戻って、TFT層102上には層間絶縁膜103が形成されている。層間絶縁膜103には、SD電極208のそれぞれに対応する領域の一部分にコンタクトホール103aが形成されている。層間絶縁膜103上にコンタクトホール103aのそれぞれに対応して画素電極104が形成されている。画素電極104のそれぞれは、一部が対応するコンタクトホール103aに入り込むことで、対応するSD電極208と電気的に接続されている。複数の画素電極104、および層間絶縁膜103における複数の画素領域104が配置されていない領域上の全体に亘って有機EL層105が形成されている。有機EL層105上の全体に亘って共通電極106が形成され、共通電極106上には中間層107が形成されている。
【0030】
なお、図2(a)では、有機EL層105の上面は平坦に描かれているが、実際にはコンタクトホール103aに沿った凹凸が存在している。有機EL層105におけるコンタクトホール103aに対応する部分の形状に着目すると、図2(c)に示されるように、コンタクトホール103aのエッジ部分に対応する部分の膜厚(以下、「薄膜部分」とも記す。)105cが、平坦な部分105dよりも薄くなっている。
【0031】
一方、有機EL層105には、非発光領域105aが一部に含まれている。この非発光領域105aは、紫外線等の光照射処理がなされることにより、有機EL層105における他の領域よりも電気抵抗率が上昇した領域である。具体的には、層間絶縁膜103のコンタクトホール103aのそれぞれに対応する領域(つまり薄膜部分105cを含む領域)、および隣り合う画素電極104の間に対応する領域が、非発光領域105aになっている。有機EL層105における、非発光領域105a以外の領域は、非発光領域105aにより画素単位に区画され、区画された部分のそれぞれが発光領域105bとして機能する。
【0032】
有機EL層105における非発光領域105aでは、発光領域105bより電気抵抗率が高いため、発光領域105bに比べ、流れる電流量を抑制することができる。つまり、各画素内に薄膜部分105cが存在しているにも関わらず、各薄膜部分105cに流れる電流量を抑制することができる。したがって、各画素における、薄膜部分105cに起因した劣化を抑制することができる。
【0033】
また、有機EL層105における画素間対応領域105aに流れる電流量を抑制することができるので、画素間の発光を抑制することができる。
図3は、有機EL表示パネル100の構成を模式的に示す部分断面図(図1のB−B’断面)である。図3に示されるように、基板101上にTFT層102が形成され、TFT層102上に層間絶縁膜103が形成されている。層間絶縁膜103上に複数の画素電極104が形成され、複数の画素電極104、および層間絶縁膜103における複数の画素領域104が配置されていない領域上の全体に亘って有機EL層105が形成されている。先ほど説明したように、有機EL層105における、隣り合う画素電極104の間に対応する領域が非発光領域105aになっている。これにより、隣接画素の影響をほぼ受けることなく、画素毎に所望の輝度を発光させることができる。有機EL層105上の全体に亘って共通電極106が形成され、共通電極106上には中間層107が形成されている。
【0034】
なお、図2および図3には示されていないが、中間層107上には例えば封止層が形成され、封止層上には画素電極104毎にカラーフィルタが形成されている。
−有機EL表示パネル100における各層の材料−
続いて、有機EL表示パネル100における各層の材料について詳細に説明する。
−基板101−
基板101は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料からなる。また、基板101は、有機樹脂フィルムであってもかまわない。
【0035】
−TFT層102−
TFT層102は、基板101上に、TFT、配線部材、およびTFTを被覆するパッシベーション膜などを形成した構成である。TFTは、チャネル材料にシリコンを用いたものでも、インジウムガリウム亜鉛酸化物などの酸化物半導体を用いたものでも、ペンタセンなどの有機半導体を用いたものでもよい。
【0036】
−層間絶縁膜103−
層間絶縁膜103は、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂等の絶縁材料からなる。
−画素電極104−
画素電極104は、特に限定されるものではないが、光反射性の材料で形成されていることが好ましい。金属、導電性酸化物、および導電性高分子は、好適な材料である。金属の例として、例えばアルミニウム、銀合金、モリブデン、タングステン、チタン、クロム、ニッケル、亜鉛およびその合金が挙げられる。導電性酸化物の例として、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、亜鉛酸化物などが挙げられる。導電性高分子として、ポリアニリン、ポリチオフェンおよびそれらを酸性あるいは塩基性の物質と混合したものが挙げられる。
【0037】
−有機EL層105−
有機EL層105は、少なくとも白色を発する有機発光層を含んで構成される。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、および電子注入層をこの順に積層してなるとしてもよい。有機発光層は、例えば、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリパラフェニレンエチレン、ポリ3−ヘキシルチオフェンやこれらの誘導体などの高分子材料や、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質で形成されることが好ましい。白色発光は、2以上の有機発光層により実現されてもよい。例えば、水色を発する有機発光層とオレンジ色を発する有機発光層とにより白色発光を得ることができる。
【0038】
−共通電極106−
共通電極106は、透明性が高く、かつ、伝導率が高い材料で形成されることが好ましい。例えば、インジウムスズ酸化物や酸化亜鉛などが好適な材料である。また、20nm以下の銀とマグネシウムを積層あるいは混合した電極を用いることもできる。
−中間層107−
中間層107は、共通電極106を保護する保護層として機能する。中間層107の材料には、例えば酸化ケイ素や窒化ケイ素を用いることができる。
−有機EL表示パネル100の製造方法−
続いて、有機EL表示パネル100の製造工程を例示する。図4,5,6は、有機EL表示パネル100の製造工程の一例を示す図である。なお、図4,5,6では、有機EL表示パネル100の一部を抜き出して模式的に示している。
【0039】
まず、図4(a)に示されるように、基板101上にTFT層102を形成する。
次に、TFT層102上に、絶縁材料膜として例えばポジ型のフォトレジスト材料膜をスピンコート法により形成し、プリベークする。フォトレジスト材料膜の膜厚は、例えば2.0μmであり、プリベークの温度は、例えば100℃である。その後、フォトレジスト材料膜上に所定形状の開口部を持つマスクを重ね、マスクの上から感光させる。感光後、余分なフォトレジスト材料膜を現像液で洗い出し、純水で洗浄した後、ポストベークを行う。これにより、図4(b)に示されるように、層間絶縁膜103が完成する。現像液は、例えばTMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)水溶液である。ポストベークの温度は、例えば200℃であり、ベーク期間は例えば3時間である。
【0040】
層間絶縁膜103の形成後、層間絶縁膜103上に画素電極材料層をスパッタ法により形成する。画素電極材料層の膜厚は、例えば200nmである。画素電極材料層上にポジ型レジスト材料層を形成し、プリベークを行う。ポジ型レジスト材料層の膜厚は、例えば1μmであり、プリベークの温度は、例えば100℃である。その後、所定形状の開口部を持つマスクを重ね、マスクの上から感光させ、アルカリ現像液で現像を行う。現像後、エッチング液(例えば燐酸、硝酸、および酢酸の混合液)を用いて画素電極材料層をエッチングする。エッチング後、剥離液を用いて残存しているポジ型レジスト材料層を剥離する。これにより、図4(c)に示されるように、複数の画素電極104が完成する。
【0041】
次に、図4(d)に示されるように、複数の画素電極104、および層間絶縁膜103における複数の画素電極104が配置されていない領域上の全体に亘って、有機EL層105を形成する。
さらに、図5(a)に示されるように、有機EL層105上の全体に亘って共通電極106をスパッタ法により形成した後、図5(b)に示されるように、共通電極106上に中間層107をCVD法により形成する。共通電極106の膜厚は、例えば200nmであり、中間層107の膜厚は、例えば1000nmである。
【0042】
次に、中間層107上に、後述する光照射工程で用いる光(例えば紫外光)を吸収し、かつ可視光領域の透過性に優れる材料からなる光バリア材料層を形成し、例えば80℃でプリベークを行う。光バリア材料層の材料は、光照射工程で用いられる光を50%以上吸収し、かつ、可視光を50%以上透過することが望ましい。これは、光照射工程で用いられる光としては、その主波長が可視光外であることが望ましいことを意味する。例えば、光照射工程で用いられる光が紫外光である場合は、一般に広く用いられている感光性レジスト材料を用いることができる。より詳細には、例えばフェノール系高分子材料やアクリル系高分子材料等である。これらは、紫外線を吸収する性質を持ち、かつ、材料によっては可視光領域の吸収が小さい。光バリア材料層の膜厚は、例えば2.5μmであるとしてもよい。
【0043】
プリベークの後、所定形状の開口部を持つマスクを重ね、マスクの上から感光させ、現像する。現像液は、例えば東京応化製NMD−3である。現像後、水洗いし、例えば80℃で乾燥させる。これにより、図5(c)に示されるように、有機EL層105におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域の上方に、光バリア層108が形成される。
【0044】
次に、図6(a)に示されるように、例えば、UV光として365nmを主波長とする紫外光を合計2J/cm2照射する。そうすると、有機EL層105における、光バリア層108が形成されていない領域に相当する領域(具体的には、コンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域)に紫外光が照射されることになる。これにより、紫外光が照射された領域の電気抵抗率が高くなるため、図6(b)に示されるように、有機EL層105に非発光領域105bを形成することができる。また、共通電極106を透過する光と、画素電極104から反射する光との双方の光により、有機EL層105におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域の電気抵抗率を効果的に高くすることができる。紫外光照射後、光バリア層108を除去してもよい。
【0045】
本実施の形態の有機EL表示パネルの製造方法では、中間層107および光バリア層108を形成した後、光照射工程を行い有機EL層105に非発光領域105aを形成する。ここで、非発光領域105aを形成するために光バリア層108を形成せず、有機EL層105の積層の途中でフォトマスクを用いて選択的に光を照射することも考えられる。ただし、この場合には、フォトマスクが増えて製造コストが高くなる。また、有機EL層105の工程途中で、光照射工程を実施した場合、光により発生した不純物等が有機EL層内に残留してしまい、デバイスの性能を劇的に劣化させる場合もある。そのため、中間層107および光バリア層108を形成した後、光照射工程を行うことは、製造の簡易化と発光部位の性能を劣化させない観点から望ましい。
【0046】
また、有機EL層105における非発光領域105aがバンクの機能を果たすため、別途バンクを設ける必要がない。通常、バンクの形成には、バンク材料層の形成工程、フォトマスクを用いた露光工程、不必要なバンク材料層部分を除去する除去工程、除去工程後のバンク材料層を焼成して焼き固める焼成工程などの複数の工程が必要であり、製造工程の観点から負担が大きい。加えて、バンクの形成にはフォトマスクが必要であるため、コスト面からも負担が大きい。
【0047】
本実施の形態の有機EL表示パネルの製造方法では、バンクを形成する工程が必要ないため、製造工程の簡略化及びコストの低減を図ることができる。
−実験1−
−実験概要−
有機EL層の発光領域と非発光領域での電圧−電流密度特性および電圧−輝度特性を評価するために、実験用デバイスを作製し、紫外光照射前後の電圧−電流密度特性および電圧−輝度特性を測定した。
【0048】
−実験用デバイス−
図7は、実験用デバイス300の構成を模式的に示す断面図である。図7に示されるように、実験用デバイス300として、ガラス基板301上に画素電極302、有機EL層303、および共通電極304を形成した。実験用デバイス300の具体的な作成手順は次の通りである。まず、ガラス基板301として松浪硝子社の無アルカリガラスを用い、このガラス基板301上にスパッタ法により画素電極302の材料からなる電極材料層を形成した。画素電極302の材料として銀、パラジウム、銅の合金を用い、その膜厚を50nmとした。
【0049】
その後、電極材料層上にレジスト材料層をスピンコート法により形成し、レジスト材料層上に所定形状の開口部を持つマスクを重ね、マスクの上から感光させた。その後、余分なレジスト材料をアルカリ現像液で洗い出した後、100℃でポストベークを行った。その後、エッチング液として燐酸、硝酸、および酢酸の混合液を用いて、電極材料層をエッチングした後、残留しているレジスト材料層を剥離液によって剥離した。
【0050】
次に、有機EL層303として、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層をこの順に積層形成した。正孔注入層としてHAT−CNを用い、その膜厚を10nmに、正孔輸送層としてNPDを用い、その膜厚を60nmに、有機発光層としてAlqを用い、その膜厚を50nmに、電子注入層としてバリウム10%ドープしたAlqを用い、その膜厚を20nmとした。
【0051】
次に、有機EL層303上にメタルマスクを介してスパッタ法により共通電極304を形成した。共通電極304としてインジウムスズ酸化物を用い、その膜厚を200nmとした。
その後、実験用デバイス300の上方から、365nmを主波長とする紫外光を合計600mJ/cm2照射した。
【0052】
−実験結果−
図8(a)は、光照射前後の電圧−電流密度特性を示す図である。横軸が電圧(V)を示し、縦軸が電流密度(mA/cm)を示す。図8(b)は、光照射前後の電圧−輝度特性を示す図である。横軸が電圧(V)を示し、縦軸が輝度(cd/m)を示す。また、これらの図において、四角(白抜き)が光照射前を、四角(黒塗り)が光照射後を表している。
【0053】
図8(a)に示されるように、約2.8Vより高い電圧では、光照射後の電流密度が、光照射前の電流密度より低下していることがわかる。言い換えると、光照射後の電気抵抗率が、光照射前よりも高くなっている。また、図8(b)に示されるように、光照射後の輝度が、光照射前の輝度より低下していることがわかる。
この実験結果より、有機EL層に紫外光を照射することにより、光照射前に比べて電気抵抗率を高めることができ、結果として、輝度を低下させることができるといえる。
【0054】
−有機EL層の電気抵抗率低下のメカニズム−
続いて、有機EL層の電気抵抗率低下のメカニズムについて説明する。有機EL層中の分子Mに光(可視光〜紫外光)が当たると、分子Mは電子的励起状態になる。その後、分子Mは励起状態から基底状態に戻るが、その際、もとの中性状態に戻る分子Mが大半である。ただし、励起状態は非常に反応性が高いので、一部に次のような化学反応が生じると考えられる。
1.同じ分子M同士で反応し分子Mとは異なる別の化合物が生成される。
2.分子Mが有機EL層中に存在する不純物と結合する。
3.分子M内のπ電子共役系の開裂が生じる。
【0055】
このように、一部の分子Mは、元の状態に戻らずに違う分子になる。一般的に違う分子になると、もはや元の性能を果たさない。このため、電気抵抗率が高くなる。そうすると、電気抵抗値が上がり、結果として、輝度が低下する。
以上、本発明に係る有機EL表示パネルについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限られないことは勿論である。
<変形例1>
有機EL層の構成を変えた一変形例について説明する。図9(a)は、変形例1の有機EL表示パネル100aの構成を模式的に示す部分断面図である。図9(b)は、有機EL層1050の発光領域1050bの構成を模式的に示す。図9(c)は、有機EL層1050の非発光領域1050aの構成を模式的に示す。
【0056】
有機EL表示パネル100aにおいて、有機EL層1050の構成以外は、図2で示される有機EL表示パネル100と共通している。したがって、有機EL表示パネル100と同様の構成の説明は省略し、以下異なる部分を中心に説明する。
有機EL表示パネル100aの有機EL層1050は、図9(b)、(c)に示されるように、第1有機発光層401と、第1有機発光層401に対し積層方向に間隔を空けて配された第2有機発光層404とを含む。発光領域1050bにおいては、第1有機発光層401と第2有機発光層404との間に電荷発生層4032が介在されている。
【0057】
電荷発生層4032は、電子注入を担う層402および正孔注入を担う層403からなる。
電子注入を担う層の材料としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いることができる。より詳細には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムを用いることができる。また、n−ドーパントと電子輸送性を有する有機半導体の混合物を好適に用いることができる。n−ドーパントとしては、上記のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いることができ、電子輸送性を有する有機半導体としては、Alqのようなアルミニウムキノリン錯体や、BCPのようなフェナントロリン誘導体、シロール誘導体、トリフェニルフォスフィン誘導体などを好適に用いることができる。
【0058】
正孔注入を担う層としては、金属酸化物を用いることができる。より詳細には、例えば、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、インジウムスズ酸化物を用いることができる。また、p−ドーパントと正孔輸送性を有する有機半導体の混合物を好適に用いることができる。p−ドーパントとしては、F4−TCNQ、HAT−CN、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステンなどを用いることができる。p−ドーパントとしては、トリアリールアミン誘導体を用いることができる。
【0059】
一方、非発光領域1050aにおいては、第1有機発光層401と第2有機発光層404との間に、電荷発生層4032ではなく、混合層4023が介在されている。
混合層4023は、電子注入を担う層に含まれる物質と正孔注入を担う層に含まれる物質が混合されてなる。この混合層4023は、光照射工程の光照射により形成される。混合層4023が形成されるメカニズムをより詳細に説明すると、まず、外部からの光による刺激によって得られたエネルギーによって、電子注入を担う層に含まれる物質と正孔注入を担う層に含まれる物質のそれぞれは移動する。物質移動が起こり、電子注入を担う層に含まれる物質と正孔注入を担う層に含まれる物質が混ざり合った場合、電子を奪う性質を持つ物質と電子を与える性質を持つ物質の間で電子のやりとりが発生する。そうすると、もはや電荷発生層としては機能しなくなり、電荷発生能力が低い高電気抵抗率層となる。これにより、光が照射された部分の電気伝導率を大きく低下させることができる。
【0060】
なお、電荷発生層における、電子注入を担う層および正孔注入を担う層は、必ずしも隣接していなくてもよい。これらの間に別の層が介在していても、全体として、電荷発生層としての機能が得られればよい。ただし、これらの間に介在される層の膜厚は、光照射により電荷発生層の各層における物質が混ざり合うのを阻害しない程度の膜厚である必要がある。
【0061】
また、画素電極104と第1有機発光層401との間には、必要に応じて、ホール注入層、ホール輸送層またはホール注入兼輸送層が介挿されていてもよい。共通電極106と第2有機発光層404との間には、必要に応じて、電子注入層、電子輸送層または電子注入兼輸送層が介挿されていてもよい。
−実験2−
−実験概要−
有機EL層の発光領域と非発光領域での電圧−電流密度特性および電圧−輝度特性を評価するために、実験用デバイスを作製し、紫外光照射前後の電圧−電流密度特性および電圧−輝度特性を測定した。
【0062】
−実験用デバイス−
実験用デバイスの構成は、基本的には、図4で示される実験用デバイス300と共通している。ただし、有機EL層の構成が異なる。ここでは、有機EL層として、第一正孔注入層、第一正孔輸送層、第一発光層、電荷発生層のうち電子注入を担う層、電荷発生層のうち正孔注入を担う層、第二正孔輸送層、第二発光層、電子注入層をこの順に積層形成した。第一正孔注入層としてHAT−CNを用い、その膜厚を10nmに、第一正孔輸送層としてNPDを用い、その膜厚を60nmに、第一有機発光層としてAlqを用い、その膜厚を40nmに、電子注入を担う層としてバリウム10%ドープしたAlqを用い、その膜厚を20nmに、正孔注入を担う層としてHAT−CNを用い、その膜厚を20nmに、第二正孔輸送層としてNPDを用い、その膜厚を60nmに、第二発光層としてAlqを用い、その膜厚を60nmに、電子注入層としてバリウム10%ドープしたAlqを用い、その膜厚を20nmとした。
【0063】
その後、実験用デバイスの上方から、365nmを主波長とする紫外光を合計600mJ/cm2照射した。
なお、有機EL層以外の構成は、実験用デバイス300と共通しているため、ここでは説明を省略する。
−実験結果−
図10(a)は、光照射前後の電圧−電流密度特性を示す図である。また、比較のために、図5(a)で示した光照射前後の電流−電圧特性も併せて示す。横軸が電圧(V)を示し、縦軸が電流密度(mA/cm)を示す。図10(b)は、光照射前後の電圧−輝度特性を示す図である。また、比較のために、図5(b)で示した光照射前後の輝度−電圧特性も併せて示す。横軸が電圧(V)を示し、縦軸が輝度(cd/m)を示す。また、これらの図において、四角(白抜き)が実験1デバイスの光照射前を、四角(黒塗り)が実験1デバイスの光照射後を表し、三角(白抜き)が実験2デバイスの光照射前を、三角(黒塗り)が実験2デバイスの光照射後を表している。
【0064】
図10(a)に示されるように、実験2において、約5.0Vより高い電圧では、光照射後の有機EL層の電流密度が、光照射前の有機EL層の電流密度より低下していることがわかる。言い換えると、光照射後の電気抵抗率が、光照射前より高くなっている。また、実験1デバイスと実験2デバイスを比較すると、光照射前後の電流密度の下げ幅は、実験2デバイスの方が大きいことがわかる。つまり、第1有機発光層と第2有機発光層の間に混合層が介在されていることで、より一層電流密度を低下させることができる。
【0065】
一方、電流密度については、光照射前および光照射後の両方において、実験1デバイスが実験2デバイスより高くなっている。
また、図10(b)に示されるように、実験2デバイスの光照射後の有機EL層の輝度が、光照射前の有機EL層の輝度より低下していることがわかる。また、実験1デバイスと実験2デバイスを比較すると、光照射前後の輝度の下げ幅は、実験2デバイスの方が大きいことがわかる。つまり、第1有機発光層と第2有機発光層の間に混合層が介在されていることで、より一層輝度を低下させることができる。
【0066】
一方、輝度については、光照射前および光照射後の両方において、実験1デバイスが実験2デバイスより高くなっている。
これらのことより、実験1デバイスは、発光領域の電気抵抗率という点で実験2デバイスより優れているものの、非発光領域の発光の抑制という点では、実験2デバイスより劣るといえる。
<変形例2>
有機EL表示パネルの製造工程の一部を替えた一変形例について説明する。
【0067】
光バリア層108の形成後、光照射工程を実施したが、光照射工程の前に、光バリア層108をレジストとして、中間層107をリアクティブイオンエッチングしてもよい。その場合、その後の光照射工程においてUV光として365nmを主波長とする紫外光を合計500mJ/cm2照射してもよい。中間層に用いられる窒化ケイ素は、365nmの発光を若干吸収するため、中間層をエッチングすることで、非発光領域の発光をより一層抑制することができる。また、光バリア層108は、中間層107のエッチング工程および光照射工程の2回の工程において用いられる。そのため、工程数の増加を抑制することができる。
【0068】
なお、中間層107をエッチングする場合には、当該中間層107の下層の共通電極106までエッチングされる可能性があるため、共通電極106を予め厚めに形成しておくのが好ましい。例えば、共通電極106の膜厚は、10nm以上であることが好ましい。
また、光バリア層108と共通電極106は、同じ材料で形成されていてもよい。光バリア層108および共通電極106の材料としてインジウムスズ酸化物を用い、光照射工程において赤外レーザを照射する場合には、光バリア層108の膜厚は、共通電極106よりも厚い方が好ましい。こうすることにより、光バリア層108の遮光性を高め、発光領域の劣化を抑制するので、非発光領域の劣化を促進できる。
<変形例3>
補助電極として機能する金属層を備えた一変形例について説明する。図11は、変形例3の有機EL表示パネル100bの構成を模式的に示す部分断面図である。有機EL表示パネル100bにおいて、基板101から共通電極106までの構成は、有機EL表示パネル100と共通しているため、ここでは説明を省略する。
【0069】
図11に示されるように、共通電極106上における、非発光領域105aに対応する領域には、金属層109が形成されている。これにより、共通電極106と金属層109とが電気的に接続されている。金属層109およびカラーフィルタ110を覆うように保護層111が形成されている。
一方、共通電極106上における、発光領域105bに対応する領域には、パターニングされた(すなわち開口部を有する)中間層107aが形成されている。中間層107a上には、光バリア層108が形成されている。光バリア層108上には画素毎に異なる色のカラーフィルタ110が形成されている。
【0070】
金属層109は、例えば、銀、アルミニウム、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、またはそれらを含む合金の何れかから構成される。また、中間層107のエッチング工程から金属材料層を形成する工程まで、中間層107の開口部から水や酸素など、有機EL層を劣化させるガスが進入する恐れがある。したがって、中間層107のエッチングは、真空中においてドライエッチプロセスでエッチングすることが好ましい。さらに好ましいのは、このエッチング工程の後、金属材料層の形成工程まで、真空を保持したまま輸送するか、または窒素中を輸送して、真空中においてスパッタ法や蒸着法により金属材料層を形成することである。このように空気中への開放や、湿式塗布工程を含まないことで、有機EL層の性能の劣化を抑制することができる。
【0071】
また、金属層109の上部表面の可視光に対する反射率は30%以下であるとしてもよい。こうすることにより、金属層109は、ブラックマトリクスとしても機能する。したがって、有機EL層におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域から放出される光を遮断することができる。加えて、金属層109は、外光を吸収するため、ディスプレイの明所コントラストの改善に寄与できる。
【0072】
なお、金属材料層の形成工程以降の工程、具体的には、金属材料層のパターニングのためのフォトレジストの形成、露光、現像、エッチング工程などにおいては、金属材料層のガスバリア性が十分であるので、これらの工程中に有機EL層が劣化することはない。
カラーフィルタ110には、一般的なカラーレジスト材料を用いることができる。
保護層111は、機械的な衝撃から有機EL表示パネルを保護する役割を担う。保護層用111の材料としては、透明で、かつ、ハードコート性に優れていることが必要である。例えば、アクリル系の高分子材料は好適な材料である。
【0073】
この構成によれば、金属層109により共通電極106の電圧降下が抑制されるため、輝度を高めることができる。
−製造方法−
中間層107を形成するまでの工程は、すでに説明した通りである。中間層107を形成した後、中間層107におけるコンタクトホール対応領域のそれぞれおよび画素間対応領域をエッチングする。その後、大気中に開放することなく、スパッタチャンバに基板を搬送し、金属層109を形成する。金属層109として例えばクロムを用いることができ、その膜厚を300nmとしてもよい。この後、金属層109表面の反射率を低減するために、酸素存在化においてプラズマ処理によって表面を酸化してもよい。
【0074】
次に、カラーフィルタ110として、まず、赤色のカラーレジストをスピンコート法にて形成し、例えば80℃にてプリベークする。赤色画素に相当する画素形状に描画されたフォトマスクを用いて露光し現像した後、純水によるリンスを行い、80℃で乾燥することによりパターニングを行う。続いて、緑と青のカラーレジストについても、同様に、緑の画素と青の画素に対応するようにパターニングを行い、カラーフィルタを形成する。
【0075】
最後に、保護層111として、感光性エポキシ樹脂をスリットコートにより形成し、365nmの波長を主成分の紫外光を照射することにより硬化する。
<その他の変形例>
(1)有機EL層として、例えば、第一正孔注入層、第一正孔輸送層、第一発光層、第一電子輸送層、電荷発生層、第二正孔輸送層、第二発光層、第二電子輸送層をこの順に積層してもよい。第一正孔注入層としてHAT−CNを用い、その膜厚を20nmとしてもよい。第一正孔輸送層としてNPDを用い、その膜厚を60nmとしてもよい。第一発光層としてTBP2%をドープしたTBADNを用い、その膜厚を40nmとしてもよい。第一電子輸送層としてAlqを用い、その膜厚を10nmとしてもよい。電荷発生層のうち電子注入を担う層としてバリウム10%をドープしたAlqを用い、その膜厚を30nm、電荷発生層のうち正孔注入を担う層としてHAT−CNを用い、その膜厚を40nmとしてもよい。第二正孔輸送層としてNPDを用い、その膜厚を60nmとしてもよい。第二発光層としてIr(phq)3 10%ドープしたCBPを用い、その膜厚を60nmとしてもよい。第二電子輸送層としてバリウム10%ドープしたAlqを用い、その膜厚を10nmとしてもよい。
(2)中間層107は、共通電極106を保護する保護層として機能するとしたが、この機能に加え、有機EL層105の劣化を防止する機能を有するとしてもよい。
(3)光照射工程で用いられる光として紫外光を例に挙げて説明したが、赤外線や赤外レーザ光などの630nm以上を主波長とする光を用いてもよい。その場合には、光バリア層108の材料として、インジウムスズ酸化物に代表される酸化物導電対やPEDOTに代表される高分子導電材料を用いることが好ましい。その場合、光バリア層の膜厚は、630nm以上を主波長とする光を十分に吸収する厚みであればよく、例えば10ナノメートル〜100マイクロメートルであり、好ましくは、100ナノメートル〜10マイクロメートルである。ここで、630nm以上を主波長とする光を用いた場合における、有機EL層の電気抵抗率低下のメカニズムについて説明する。有機EL層中の分子に光(赤〜赤外光)が当たると、分子は熱励起状態になる。熱励起状態になった分子は、運動エネルギーが上がるので、ある程度膜内で動けるようになる。一般に有機EL層は多層膜なので、分子が移動することにより、積層界面に各層の分子が混合されてなる混合層ができる。混合層は、一般に電気伝導率や移動度を低下させる。そうすると、電気抵抗値が上がり、結果として、輝度が低下する。特に、性質が異なる層(例えば、正孔注入を担う層と電子注入を担う層)が接している場合には、これらの層の分子が混合することでより高抵抗化させることができる。
(4)電荷発生層4032は、2層からなるとしたが、3層以上からなるとしてもよい。
(5)保護層111の替わりに接着層を設け、この接着層を介して対向基板を貼り合わせてもよい。接着層の材料は、例えば感光性エポキシ樹脂であり、ディスペンサにより塗布するとしてもよい。対向基板は、例えば無アルカリガラスであり、その厚みは、0.3mmとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、有機EL表示パネルに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
101 基板
102 TFT層
103 層間絶縁膜
104 画素電極
105 有機EL層
105a 非発光領域
105b 発光領域
106 共通電極
107 中間層
108 光バリア層
109 金属層
110 カラーフィルタ
111 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタ素子を含む駆動部が複数配置されてなるトランジスタアレイ基板と、
前記トランジスタアレイ基板上に形成され、前記複数の駆動部に対応する各領域の一部分にコンタクトホールが形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に前記複数の駆動部に対応して配置され、対応するコンタクトホールを介して駆動部と電気的に接続された複数の画素電極と、
前記複数の画素電極が配置された領域および前記複数の画素電極が配置されていない領域上の全体に亘って形成された有機EL層と、
前記有機EL層上の全体に亘って形成された共通電極と、を備え、
前記有機EL層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっている
ことを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項2】
前記有機EL層は、
第1有機発光層と、前記第1有機発光層に対し積層方向に間隔を空けて配された第2有機発光層とを含み、
前記有機EL層における前記他の領域には、前記第1有機発光層と前記第2有機発光層との間に少なくとも2層以上の層を含む電荷発生層が介在されており、
前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域には、前記第1有機発光層と前記第2有機発光層との間に、前記少なくとも2層以上の層のそれぞれに含まれる物質が混合されてなる混合層が介在されている
請求項1に記載の有機EL表示パネル。
【請求項3】
前記共通電極上における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域に、金属層が形成されている
請求項1または2に記載の有機EL表示パネル。
【請求項4】
前記金属層の上部表面の可視光に対する反射率は30%以下である
請求項3記載の有機EL表示パネル。
【請求項5】
前記金属層は、補助電極であり、
前記共通電極と電気的に接続されている
請求項3または4に記載の有機EL表示パネル。
【請求項6】
前記有機EL層は、白色を発する有機発光層を含む
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項7】
前記共通電極の上方に、前記画素電極毎にカラーフィルタが形成されている、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項8】
前記複数の画素電極は、光反射性の材料で形成されており、
前記共通電極は、光透過性の材料で形成されている
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項9】
基板を準備する準備工程と、
前記基板上に、薄膜トランジスタ素子を含む駆動部を複数配置することで、トランジスタアレイ基板を形成するトランジスタアレイ基板形成工程と、
前記トランジスタアレイ基板上に、前記複数の駆動部に対応する各領域の一部分にコンタクトホールが形成された層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記複数の駆動部に対応し、かつ、対応するコンタクトホールを介して駆動部と電気的に接続されるよう複数の画素電極を配置する画素電極形成工程と、
前記複数の画素電極が配置された領域および前記複数の画素領域が配置されていない領域上の全体に亘って有機EL層を形成する有機EL層形成工程と、
前記有機EL層上の全体に亘って共通電極を形成する共通電極形成工程と、を備え、
前記有機EL層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域の電気抵抗率が、前記有機EL層における他の領域より高くなっている
ことを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記共通電極上に当該共通電極を保護するための中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層上における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域以外の領域に、光バリア層を形成する光バリア層形成工程と、
前記光バリア層をレジストとして当該光バリア層の上方から前記有機EL層に向けて所定のレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、を含み、
前記有機EL層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域が、前記レーザ光の照射により劣化することで、前記他の領域より電気抵抗率が高くなっている
請求項9に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記所定のレーザ光は、波長が420nm以下の光である
請求項9または10記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項12】
前記所定のレーザ光は、UV光を含む
請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項13】
前記光バリア層は、波長が420nm以下の光を吸収し、かつ、前記有機EL層からの光を透過する機能を有する
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項14】
前記光バリア層形成工程と前記レーザ光照射工程の間に、前記光バリア層をレジストとして前記中間層の一部を除去することで、前記共通電極における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域を露出させる除去工程と、
前記共通電極における、前記露出された領域上に金属層を形成する金属層形成工程を含む
請求項10に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項15】
前記金属層の上部表面の可視光に対する反射率は30%以下である
請求項14記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項16】
前記金属層は、補助電極であり、
前記共通電極と電気的に接続されている
請求項14または15に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記有機EL層形成工程では、
第1有機発光層、2層以上の多層膜からなる電荷発生層、および第2有機発光層をこの順に積層し、
前記レーザ光照射工程の前記レーザ照射により、
前記電荷発生層における、前記層間絶縁膜のコンタクトホールのそれぞれに対応する領域および隣り合う画素電極の間に対応する領域の電気抵抗率は、前記電荷発生層の他の領域より高くなる
請求項9から請求項16のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項18】
前記複数の画素電極は、光反射性の材料で形成されており、
前記共通電極は、光透過性の材料で形成されている
請求項10から請求項17のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−26394(P2013−26394A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159054(P2011−159054)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】