説明

有機EL表示装置、その駆動方法、および電子機器

【課題】所期の発光寿命を確保しながら、低階調領域での色ズレを抑制した有機EL表示装置を提供すること。
【解決手段】表示装置100は、パルス駆動と定電流駆動とを表示の階調に応じて切替える駆動切替部51を備えている。当該部は、所定の階調以下の低階調領域においてはパルス駆動を行い、それよりも高い中高階調領域では定電流駆動を行う。低階調領域ではパルスの振幅が基準電流よりも高く、パルス駆動のデューティ比の逆数と基準電流とを掛け合わせた値よりも大きい駆動電流が有機EL層に供給される。この駆動電流は、複数の発光層間のエネルギーギャップを超えられるため、低階調領域においても所期の白色光を得ることができる。さらに、中高階調領域では、定電流駆動に切替えるため、有機EL層への負荷が軽減されて、発光寿命を確保することができる。従って、低階調領域で所期の発色と、所期の発光寿命とを両立することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置、その駆動方法、および当該表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子の有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた表示装置の構成(製法)として、2つの方式が知られている。一つは、蒸着マスクを用いて赤緑青の各色素子を画素ごとに塗り分けて赤緑青の各色画素を形成した、いわゆる「RGB塗り分け方式」である。もう一つは、蒸着マスクを用いずに、白色素子を全面に形成し、その上に赤緑青の各色カラーフィルターを配置することにより、RGBの各色画素を形成した、「白色発光+カラーフィルター方式」である。
例えば、大型テレビなどの大画面の表示装置を製造する場合には、「白色発光+カラーフィルター方式」の方が適しているといわれている。これは、「RGB塗り分け方式」で大型の表示装置を製造する場合には、蒸着マスクの大型化に伴い、寸法精度の劣化や熱膨張、マスク自重によるたわみなどが生じてしまい、塗り分け精度を確保することが難しいからである。
【0003】
特許文献1には、「白色発光+カラーフィルター方式」を採用した表示装置の一例が開示されている。当該表示装置では、白色光を得るために、各々が異なる色光を発する複数の発光層を積層し、各発光層が放つ色光を合成して略白色光としていた。複数の発光層としては、緑色、青緑、黄橙の色光をそれぞれ発光する3つの発光層を積層形成していた。
また、略白色光を得るための複数の発光層としては、例えば、光の3原色に対応したRGB各色の3つの発光層を積層する構成や、橙(オレンジ)色と、青色との2つの発光層を積層する構成などが知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−315988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数の発光層を含む積層構造とした場合、低階調領域において、所期の発色が得られないという課題があった。これは、低輝度領域では、駆動電流が微小となり、電子と正孔とのキャリアバランスが崩れて、積層構造における特定の発光層が集中的に発光することになるため、合成された色光の色調に偏りが生じるからである。
この課題に対し、発明者らは、創意工夫を重ねた結果、定電流駆動時よりも高い駆動電流をパルス状に供給するパルス駆動によって、電子と正孔のキャリアバランスを取ることが可能となり、低階調領域においても所期の発色が得られることを見出した。
つまり、パルス駆動を採用することにより、低階調領域においても所期の略白色光が得られることを見出した。
【0006】
しかしながら、更なる評価を重ねる中で、このパルス駆動を採用した場合、従来の定電流駆動に比べて、輝度寿命が短くなってしまうという課題も顕在化した。
図18は、駆動方法ごとの輝度寿命を示したグラフであり、縦軸に輝度、横軸に経過時間を取っている。当該図に示すように、定電流駆動の輝度推移を示すグラフ90よりも、パルス駆動の輝度推移を示すグラフ91の方が常に輝度が低くなっており、発光寿命が短いことが解る。なお、パルス駆動の駆動条件は、定電流駆動における輝度と略同等の輝度が得られる高電流を1/100デューティで供給した条件となっている。
つまり、低階調領域で所期の発色を得ることと、所期の発光寿命を確保することとを両立することは困難であるという課題があった。換言すれば、所期の発光寿命を確保しながら、低階調領域での色ズレを抑制することは困難であるという課題があった。
また、色ズレは、表示装置の周囲環境が明るい場合よりも、暗い場合の方が目立ち易いという課題もあった。このため、特に、環境照度が低い場合に、所期の発色が可能な表示装置が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0008】
(適用例)
基板と、それぞれが異なる色光を発する複数の発光層と、赤、緑、青を含む複数色の色フィルターが配置されたカラーフィルターとを少なくとも有し、発光層の各々が放つ複数の色光を合成した略白色光をカラーフィルターを介して出射する有機EL表示装置であって、複数の発光層を含む積層構造に対して、画像信号に規定された表示の階調に応じた基準電流を1フレーム内において連続供給して表示を行う定電流駆動と、基準電流よりも高い電流を1フレーム内における所定の期間に供給して表示を行うパルス駆動と、を切替える駆動切替部を備え、駆動切替部は、階調が所定の階調以下のときにはパルス駆動を行い、階調が所定の階調より高いときには定電流駆動を行うことを特徴とする有機EL表示装置。
【0009】
この有機EL表示装置によれば、定電流駆動とパルス駆動とを表示の階調に応じて切替える駆動切替部を備えている。駆動切替部は、所定の階調以下の低階調領域においてはパルス駆動を行い、それよりも高い中高階調領域では定電流駆動を行う。
特に、低階調領域ではパルス駆動により、基準電流よりも高い電流をパルス状に印加することにより、積層構造における電子と正孔とのキャリアバランスが取れるため、低階調領域においても所期の略白色光を得ることができる。換言すれば、基準電流よりも高い電流をパルス状に印加することにより、積層構造における複数の発光層間のエネルギーギャップを超えられるため、低階調領域においても所期の略白色光を得ることができる。
さらに、所定の階調より高い中高階調領域では、定電流駆動に切替えるため、発光層を含む積層構造への負荷が軽減されて、発光寿命を確保することができる。
よって、低階調領域ではパルス駆動により所期の発色が得られるとともに、中高階調領域では定電流駆動により発光寿命を確保することができる。
従って、低階調領域で所期の発色と、所期の発光寿命とを両立した有機EL表示装置を提供することができる。
換言すれば、所期の発光寿命を確保しながら、低階調領域での色ズレを抑制した有機EL表示装置を提供することができる。
【0010】
また、所定の階調は、画像信号における1画面当りの平均輝度であり、有機EL表示装置の表示面における平均輝度で表した場合、平均輝度が3〜20cd/cm2の範囲内に相当する階調であることが好ましい。
【0011】
基板と、それぞれが異なる色光を発する複数の発光層と、赤、緑、青を含む複数色の色フィルターが配置されたカラーフィルターとを少なくとも有し、発光層の各々が放つ複数の色光を合成した略白色光をカラーフィルターを介して出射する有機EL表示装置であって、複数の発光層を含む積層構造に対して、画像信号に規定された表示の階調に応じた基準電流を1フレーム内において連続供給して表示を行う定電流駆動と、基準電流よりも高い電流を1フレーム内における所定の期間に供給して表示を行うパルス駆動と、を切替える駆動切替部と、有機EL表示装置が配置されている周囲の環境における照度を検出する照度検出部とを備え、駆動切替部は、照度検出部が検出した照度が所定の照度以下のときにはパルス駆動を行い、照度が所定の照度より高いときには定電流駆動を行うことを特徴とする有機EL表示装置。
【0012】
また、所定の照度は、200lux以下の照度であることが好ましい。
また、1フレームにおけるパルス駆動のデューティ比は、1/3〜1/50の範囲内であることが好ましい。
また、パルス駆動における基準電流よりも高い電流は、基準電流と、デューティ比の逆数とを掛け合わせた値よりも大きいことが好ましい。
また、パルス駆動は、1フレームの期間長において、全ての走査線を順次走査する走査駆動を第1サブフィールドと、第2サブフィールドとの2回行うサブフィールド駆動により行われ、第1サブフィールドおよび第2サブフィールドの期間長は、デューティ比に応じて設定されており、第1サブフィールドにおいては、基準電流よりも高い電流を積層構造に供給し、第2サブフィールドにおいては、積層構造に電流を供給しないことが好ましい。
また、積層構造には、赤、緑、青色の各色に対応した発光層が含まれており、基板上に、積層構造と、カラーフィルターとが、この順番に形成されたトップエミッション型の構成を採用していることが好ましい。
【0013】
上記記載の有機EL表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【0014】
基板と、それぞれが異なる色光を発する複数の発光層と、赤、緑、青を含む複数色の色フィルターが配置されたカラーフィルターとを少なくとも有し、発光層の各々が放つ複数の色光を合成した略白色光をカラーフィルターを介して出射する有機EL表示装置の駆動方法であって、画像信号に規定された表示の階調が所定の階調よりも高いときには、階調に応じた基準電流を1フレーム内において連続供給して定電流駆動を行い、階調が所定の階調以下のときには、基準電流よりも高い電流を1フレーム内における所定の期間に供給するパルス駆動を行うことを特徴とする有機EL表示装置の駆動方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る表示装置の一態様を示す斜視図。
【図2】回路ブロック構成図。
【図3】画素回路図。
【図4】図1のi−i断面における側断面図。
【図5】有機EL層の詳細な断面図。
【図6】(a)定電流駆動の電流波形図、(b)パルス駆動の電流波形図。
【図7】垂直走査駆動のタイミングチャート図。
【図8】パルス駆動のタイミングチャート図。
【図9】駆動方法の流れを示したフローチャート図。
【図10】実施形態2に係る表示装置の回路ブロック構成図。
【図11】駆動方法の流れを示したフローチャート図。
【図12】表示装置を搭載した電子機器としての車載メーターを示す平面図。
【図13】変形例1に係る有機EL層の断面図。
【図14】変形例2に係る駆動方法のタイミングチャート図。
【図15】実施例Aの評価結果一覧表。
【図16】実施例Aに係る色度図。
【図17】実施例Bの評価結果一覧表。
【図18】駆動方法ごとの輝度寿命を示したグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0017】
(実施形態1)
「表示装置の概要」
図1は、本実施形態に係る表示装置の一態様を示す斜視図である。
まず、本発明の実施形態1に係る有機EL表示装置としての表示装置100の概要について説明する。
【0018】
表示装置100は、有機EL表示装置であり、表示パネル18、フレキシブル基板20などから構成されている。表示パネル18は、素子基板1と対向基板17との間に、発光層を含む機能層を挟持したトップエミッション型の有機EL表示パネルであり、対向基板17側から表示光を出射する。
表示パネル18は、マトリックス状に配置された複数の画素からなる表示領域Vを備えている。図1の右上に拡大して示すように、表示領域Vには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色画素が周期的に配置されており、各画素が出射する表示光によりフルカラーの画像が表示される。なお、各画素は発光画素であるが、画素と称する。
表示領域Vは、縦長の長方形をなしており、図1を含む各図においては、当該縦方向をY軸方向とし、縦方向よりも短い横方向をX軸方向と定義している。また、表示パネル18の厚さ方向をZ軸方向としている。また、Y軸(+)、(−)方向を上下方向とし、X軸(+)、(−)方向を左右方向としている。
【0019】
詳しくは後述するが、表示装置100は、素子基板1側にRGBの各色光を発する各色発光層を積層し、各色発光層が放つ各色光を合成して略白色光を出射する複数の画素を備えるとともに、対向基板17側に赤緑青の各色カラーフィルターを配置することにより、RGBの各色画素を形成した、「白色発光+カラーフィルター方式」によるトップエミッション型の有機EL表示パネルである。
従来、このような複数の発光層を積層した積層発光層を用いた場合、低階調領域において、所期の発色が得られないという課題があった。また、これを解決するためにパルス駆動を行うと、輝度寿命が短くなってしまうという課題もあり、低階調領域における色ズレと、輝度寿命とを両立することが困難であった。
これに対して、表示装置100によれば、後述するように、パルス駆動と定電流駆動とを表示輝度や、環境照度に応じて切替える構成を備えたこと、または両駆動方法を切替える駆動方法を採用したことにより、所期の発光寿命を確保しながら、低階調領域での色ズレを抑制することを実現している。
【0020】
また、表示パネル18において、素子基板1が対向基板17から張出した張出し領域には、フレキシブル基板20が接続されている。なお、フレキシブル基板とは、例えば、ポリイミドフィルムの基材に鉄箔の配線などが形成された柔軟性を有するフレキシブルプリント回路基板の略称である。また、フレキシブル基板20には、前述の駆動方法を制御する駆動用IC(Integrated Circuit)21が実装され、その端部には、専用のコントローラーや、外部機器(いずれも図示せず)と接続するための複数の端子が形成されている。
表示パネル18は、フレキシブル基板20を介して、外部機器から電力や画像信号を含む制御信号の供給を受けることにより、表示領域Vに画像や文字などを表示する。
【0021】
「表示装置の回路ブロック構成」
図2は、表示装置の回路ブロック構成図である。
続いて、表示装置100の回路ブロック構成について、図2を用いて説明する。
【0022】
表示パネル18を表示駆動するための回路ブロックは、駆動用IC21、および表示パネル18に配置されている。また、駆動用IC21と表示パネル18との間は、前述したように、フレキシブル基板20を介して電気的に接続されている。
駆動用IC21には、制御回路50、駆動切替部51などが形成されている。
制御回路50は、CPU(Central Processing Unit)であり、各部の動作を制御する。また、制御回路50には、フラッシュメモリーなどの不揮発性のメモリーにより構成された記憶回路56が附属している。
記憶回路56には、パルス駆動、および定電流駆動を行うための順序と内容を規定したプログラムを含み、表示装置100の動作を制御するための様々なプログラムおよび付随するデータが記憶されている。当該プログラムには、表示輝度や、環境照度に応じてパルス駆動と定電流駆動とを切替える駆動制御プログラムも含まれている。
また、付随するデータには、パルス駆動と定電流駆動とを切替える際の閾値(境界値)となる所定の階調値、所定の照度や、基準電流値と、パルス駆動におけるデューティ比ごとのパルス電流との相関関係を規定した相関テーブルなどが含まれている。
【0023】
駆動切替部51は、タイミング信号発生回路52、表示データ処理回路53、駆動電流生成回路54、駆動電流出力回路55などから構成されている。
タイミング信号発生回路52は、外部装置(図示省略)から供給される画像信号Videoの垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびドットクロック信号Dclkに同期して表示パネル18を制御するための各種のタイミング信号を生成する。
また、タイミング信号発生回路52には、例えば、水晶振動子を含んだ発振回路からなるクロック発生回路57が付属している。クロック発生回路57は、各部の制御動作の基準となるクロック信号を生成してタイミング信号発生回路52に出力する。
【0024】
表示データ処理回路53は、画像プロセッサーであり、フレームメモリー58が附属している。表示データ処理回路53は、外部装置から供給される画像信号Videoを、制御回路50の制御に従ってフレームメモリー58に記憶した後、表示パネルのアスペクト比や、解像度に合せて階調データを読み出して駆動データ(デジタルデータ)を生成する、いわゆるスケーリング処理などの画像処理を行う。
また、制御回路50は、フレームメモリー58に書き込まれた画像信号Videoの1画面当りの階調データを読み取り(測定し)、所定の階調としての表示の平均階調を演算する。
駆動電流生成回路54は、例えば、カレントミラー回路などの直流電源回路を複数有しており、重み付けの異なる複数の電流を供給可能に形成されている。
駆動電流出力回路55は、D/Aコンバーターを内蔵しており、表示データ処理回路53からのデジタル駆動データで表される階調を、駆動電流生成回路54の複数の電流から選択または組合せて、当該階調に応じたアナログ電流である駆動電流ILに変換して表示パネル18に供給する。
【0025】
表示パネル18の表示領域Vの周縁部(額縁部)には、走査線駆動回路60と、データ線駆動回路61とが形成されている。なお、これらの回路を構成する回路素子は、後述する画素回路と同様に、低温ポリシリコンや、アモルファスシリコンを活性層として基板上に構成されている。
【0026】
「画素回路」
図3は、画素回路の一態様を示す図である。
ここでは、図2および図3を用いて、表示パネル18の画素の画素回路、および複数の画素の走査駆動の概要について説明する。
図1において表示領域Vにマトリックス状に配置された画素の各々には、図3に示すような画素回路が形成されている。
画素回路は、画素を選択するためのスイッチング用のトランジスター(Thin Film Transistor)Tr1と、複数の発光層を含む積層構造からなる有機EL層8に電流を流すための駆動用のトランジスターTr2と、保持容量Cなどから構成されている。
トランジスターTr1のゲート端子には、走査線駆動回路60からの走査線SLが接続されており、ソース端子には、データ線駆動回路61からのデータ線DLが接続されている。
トランジスターTr1のドレイン端子には、トランジスターTr2のゲート端子と、保持容量Cの一端が接続されている。
トランジスターTr2のソース端子と、保持容量Cの他端とは、駆動電流出力回路55からの駆動電流ILの供給ラインに接続されている。そして、トランジスターTr2のドレイン端子は、画素電極6(陽極)に接続されている。
また、画素電極6と、共通電極9との間には、有機EL層8が配置されている。また、共通電極9は、アースライン(陰極)に接続されている。
【0027】
図2の走査線駆動回路60は、シフトレジスターや出力バッファー(いずれも図示せず)を含んで構成され、タイミング信号発生回路52からのタイミング信号に基づき、複数の走査線SLに順次走査信号を供給する。
データ線駆動回路61は、シフトレジスターやラッチ回路(いずれも図示せず)を含んで構成され、タイミング信号発生回路52からのタイミング信号、およびデータ信号に基づき、複数のデータ線DLにデータ信号を供給する。
図3において、走査信号によって選択されたトランジスターTr1はオンし、データ信号がトランジスターTr2に供給される。これにより、トランジスターTr2がオンし、有機EL層8に駆動電流ILが流れて発光する。また、トランジスターTr2がオンするのと並行して、保持容量Cにデータ信号が保持されるため、容量に応じた時間(1フレーム相当の期間長)、発光が維持される。
なお、図3に示した画素回路に限定するものではなく、同様に駆動電流ILによって、有機EL層8を点灯駆動可能な画素回路であれば良い。
【0028】
「表示パネルの詳細な構成」
図4は、図1のi−i断面における側断面図である。
続いて、表示パネル18の詳細な構成について説明する。
表示パネル18は、素子基板1、素子層2、平坦化層4、反射層5、画素電極6、隔壁7、有機EL層8、共通電極9、電極保護層10、緩衝層11、ガスバリア層12、充填剤13、CF層14、対向基板17などから構成されている。また、素子基板1と対向基板17とに挟持された部位のことを機能層16という。換言すれば、素子層2からCF層14までの積層構造を機能層16という。
素子基板1は、無機ガラスから構成されている。本実施形態では、好適例として、無アルカリガラスを用いている。なお、この構成に限定するものではなく、樹脂基板を用いても良い。また、トップエミッション型であるため、光透過性が低い材料を用いても良く、例えば、金属基板を用いる構成であっても良い。
素子層2には、画素ごとに図3で説明した画素回路が形成されている。図4の断面では、トランジスターTr2のみが示されている。なお、画素回路は、好適例として、活性層に低温ポリシリコンを用いているが、アモルファスシリコンを活性層として用いた構成であっても良い。
【0029】
素子層2の上層(Z軸(−)方向)には、例えば、アクリル樹脂などからなる絶縁層である平坦化層4が形成されている。
平坦化層4の上層には、画素ごとに区画されて、反射層5と、画素電極6とがこの順番で積層されている。
反射層5は、例えば、アルミニウムなどからなる反射層であり、有機EL層8から素子基板1側に向かう光を反射して、表示に寄与する光にする。
画素電極6は、ITO(Indium Tin Oxide)や、ZnOなどの透明電極から構成されており、画素ごとに素子層2のトランジスターTr2のドレイン端子と平坦化層4を貫通するコンタクトホールにより接続されている。なお、本実施形態では、好適例として、反射層5と画素電極6との間に、SiO2などの透明な無機材料からなる絶縁層を介在させているが、この構成に限定するものではなく、反射電極として機能する構成であれば良い。例えば、反射層5を省略して、画素電極6のみをアルミニウムなどの反射性の材料によって形成することであっても良い。または、無機絶縁層を介在させることなく、反射層5の上に、画素電極6を直接形成することであっても良い。
【0030】
隔壁7は、光硬化性の黒色樹脂などから構成され、平面的に各画素を格子状に区画している。なお、素子層2におけるトランジスターTr2を含む画素回路は、光による誤動作を防止するために、平面的に隔壁と重なるように配置されている。
有機EL層8は、画素電極6、および隔壁7を覆って一面に形成されている。また、図4では、有機EL層8を単層で示しているが、実際には、RGBの各色発光層を含む積層構造となっており、当該積層構造には、正孔注入層、中間層や、電子注入層なども含まれている。なお、積層構造の詳細については、後述する。
【0031】
共通陰極としての共通電極9は、MgAgなどの金属を、光を透過するようにごく薄く成膜した金属薄膜層であり、全画素に跨る有機EL層8を覆って形成されている。また、当該層を透過して光が出射されることになるため、その厚さは、光透過性を高めるために、例えば、10〜20nmと極めて薄く形成されている。
電極保護層10は、SiO2や、Si34、SiOxNyなどの高密度で、かつ、透明性の高い材質から構成されており、共通電極9を覆って形成することにより、有機EL層8へ水分などが浸入することを防止している。
緩衝層11は、熱硬化性のエポキシ樹脂などの透明な有機緩衝層である。
ガスバリア層12は、電極保護層10と同様な材質で構成されたガスバリア層であり、緩衝層11をさらに覆って形成することにより、有機EL層8を含む内部の積層構造への水分などの浸入を防止している。
充填剤13は、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂などからなる透明な接着層であり、ガスバリア層12とCF層14との間の凹凸面に充填されるとともに、両者を接着する。また、表示パネル18の周縁部から、有機EL層8を含む内部の積層構造への水分などの浸入を防ぐ機能も果たす。
【0032】
対向基板17は、透明な無機ガラスから構成されており、好適例として、無アルカリガラスを用いている。また、対向基板17における有機EL層8側(Z軸(+)側)には、CF層14が形成されている。
CF層14には、赤色カラーフィルター14r、緑色カラーフィルター14g、青色カラーフィルター14bが画素配置と同様に配置されている。詳しくは、各色のカラーフィルターは、それぞれが対応する画素電極6と重なるように配置されており、各カラーフィルター間には、ハッチングで示した遮光部が形成されている。遮光部は、平面的に隔壁7と重なるように格子状に形成されており、光学的には、ブラックマトリックスの機能を果たしている。
そして、対向基板17と素子基板1とは、対向基板17の周縁部に形成されたシール剤15によって接着および封止されている。シール剤15としては、エポキシ系の接着剤や、紫外線硬化樹脂などを用いる。
【0033】
このように構成された各画素からは、カラーフィルターの色調に対応した表示光が出射される。例えば、赤色画素の場合、まず、有機EL層8において、各色発光層が放射するRGBの各色光が合成されて略白色光となって、赤色カラーフィルター14rに入射する。そして、赤色カラーフィルター14rによって赤色光が選択されて、赤色の表示光として対向基板17から出射される。また、緑色、青色の画素においても同様である。
これにより、表示領域Vでは、対向基板17から出射される複数のカラー画素からの表示光によりフルカラーの画像が表示されることになる。
【0034】
「有機EL層(積層構造)の詳細」
図5は、有機EL層の詳細な断面図である。なお、当該断面は、画素電極6上の断面を示している。
有機EL層8は、画素電極6上に、正孔注入層81、正孔輸送層82、赤色発光層83、中間層84、青色発光層85、緑色発光層86、電子輸送層87、電子注入層88が、この順に積層した積層構造となっている。また、電子注入層88上には、共通電極9が形成されている。
正孔注入層81は、好適例として、N,N’−ビス−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−N,N’−ジフェニル−ビフェニル−4−4’−ジアミンを真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ約20nmで形成する。
正孔輸送層82は、好適例として、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ約10nmで形成する。
【0035】
赤色発光層83は、好適例として、赤色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ約10nmで形成する。赤色発光層の構成材料としては、赤色発光材料(ゲスト材料)として、テトラアリールジインデノペリレン誘導体(RD−1)を用い、ホスト材料として、ルブレン誘導体(RB)を用いることが好ましい。また、赤色発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、約2.0wt%とすることが好ましい。
中間層84は、好適例として、真空蒸着法を用いて、平均厚さ約10nmに形成する。中間層の構成材料としては、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)と、アントラセン誘導体とを用い、中間層中の材料の使用割合を、重量比でα−NPD:アントラセン誘導体=1:1とすることが好ましい。
【0036】
青色発光層85は、好適例として、真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ約20nmに形成する。青色発光層の構成材料としては、ジスチリルジアミン系化合物を用い、ホスト材料としてアントラセン誘導体を用いることが好ましい。また、青色発光層中の青色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、約10.0wt%とすることが好ましい。
緑色発光層86は、好適例として、緑色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ約10nmで形成する。緑色発光層の構成材料としては、緑色発光材料(ゲスト材料)としてキナクリドン誘導体を用い、ホスト材料としてホスト材料としてアントラセン誘導体を用いることが好ましい。また、緑色発光層中の緑色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、約10.0wt%とすることが好ましい。
【0037】
電子輸送層87は、好適例として、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ約10nmに形成する。
電子注入層88は、好適例として、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ約1nmに形成する。
なお、上述した好適例の構成(材料、厚さなど)に限定するものではなく、略白色光を合成可能な複数の発光層を含む積層構造を構成することができる材料、および厚さであれば良い。
【0038】
「駆動方法の概要」
図6(a)、(b)は駆動方法の概要を示す波形図であり、(a)は定電流駆動の電流波形を示し、(b)はパルス駆動の電流波形を示している。また、縦軸は駆動電流、横軸は時間を取っている。
ここでは、本実施形態における駆動方法の概要について説明する。
【0039】
表示装置100では、表示の階調が所定の階調以下のときには、図6(b)に示す「パルス駆動」を行い、表示の階調が所定の階調よりも高いときには、図6(a)に示す「定電流駆動」を行う。
ここで、表示の階調とは、画像信号に規定された1画面当りの平均階調を示している。また、所定の階調は、表示パネル18の仕様に応じて定められた閾値であり、低輝度領域における1画面当りの平均階調(輝度)値である。例えば、前述した好適例の有機EL層8を備えた表示パネル18の場合、当該パネルを平均輝度3〜20cd/cm2の範囲内で表示駆動するための階調値となる。換言すれば、表示パネル18を平均輝度3〜20cd/cm2の範囲内における所定の輝度で、表示駆動するための階調データを指している。
【0040】
図6(a)に示す「定電流駆動」は、1フレームの期間中、画像信号に規定された表示の階調に応じた基準電流Ikを継続して供給する駆動方法である。
また、「パルス駆動」は、図6(b)に示すように、1フレームの開始に伴い、基準電流Ikよりも高い駆動電流Ipを所定のデューティ比分パルス状に供給し、残りの期間は、電流を流さない駆動方法である。
ここで、1フレームにおけるパルス駆動のデューティ比は、低輝度領域における発色性と、輝度寿命を確保するために、1/3〜1/50の範囲内であることが好ましく、1/10〜1/50の範囲内であることがより好ましい。また、駆動電流Ipは、基準電流Ikと、デューティ比の逆数とを掛け合わせた値よりも大きいことが好ましい。
なお、上述した平均輝度や、デューティ比などの数値は、発明者等が行った多くの実験結果から得られた実験データを解析および分析し、創意工夫の上、最適な数値を導出したものである。
【0041】
「駆動方法の詳細」
図7は、垂直走査駆動のタイミングチャートである。
まず、「定電流駆動」の詳細について、図2も交えて説明する。
走査線駆動回路60(図2)は、タイミング信号発生回路52から供給される、走査線を順に選択するためのトリガーとなるスタート信号Dy、およびクロック信号Clyに基づき、走査信号G1〜Gmを順に生成して、走査線に順次出力する。なお、スタート信号Dyは、垂直走査の開始タイミングを規定するスタートパルスであり、定電流駆動においては1フレームの期間の最初に1回供給され、1つの走査線は1フレームの期間において1回選択されることになる。
また、フレームとは、画像信号における1枚の画像を表示パネル18に表示させる期間を指し、例えば、垂直同期信号Vsの周波数が60Hzである場合、1フレームの期間長は、約16.7ミリ秒となる。
【0042】
最上段の走査線に供給される走査信号G1は、スタート信号Dyが供給された後、クロック信号Clyが最初に立ち上がってから半周期遅延したタイミングで出力される。そして、走査信号G1に続いて、順次走査信号G2〜Gmが、クロック信号Clyの論理レベルが変化する毎にクロック信号の半周期分の期間において順次Hレベルとなる。
このようにして、スタート信号Dyの供給を契機として全ての走査線が順次選択されて、1垂直走査駆動が行われる。
また、データ線駆動回路61(図2)からは、走査信号G1〜Gmに同期したタイミングで、対応する各データ線にデータ信号が供給され、当該信号レベルが保持されている1フレームの期間に渡って、駆動電流出力回路55から有機EL層8に駆動電流が供給されることになる。
なお、供給される駆動電流は、画素ごとに画像信号の階調に応じた基準電流Ikとなる。例えば、前述した好適例における有機EL層8の積層構造の場合、画像信号の階調データが400cd/m2相当であるときに、基準電流Ikを400mA/cm2とする。
【0043】
図8は、パルス駆動のタイミングチャートである。
続いて、「パルス駆動」の詳細について、図2も交えて説明する。
本実施形態では、好適例として、図8に示すように、1フレームを時間的に2つのサブフィールドに分けて、1フレーム期間内に2回の垂直走査駆動を行うサブフィールド駆動によって、パルス駆動を実現している。
詳しくは、1フレーム内において、スタートパルスを時系列に2回供給して、1つの走査線を1フレームの期間において2回選択する。
走査線駆動回路60(図2)は、タイミングt1のスタート信号Dyaをトリガーとして、タイミングt1からタイミングt2までの間で、走査信号G1〜Gmを順に生成して出力し、走査線を順に選択する(第1フィールド)。
また、データ線駆動回路61(図2)からは、走査信号G1〜Gmに同期したタイミングで、対応する各データ線にデータ信号が供給されて、駆動電流出力回路55から有機EL層8に駆動電流が供給される。
ここで、駆動電流は、画素ごとに画像信号の階調に応じた基準電流Ikよりも高い駆動電流Ipが供給されることになる。詳しくは、駆動電流Ipは、パルス駆動のデューティ比の逆数と、基準電流Ikとを掛け合わせた値よりも大きい電流となる。
例えば、前述した好適例における有機EL層8の積層構造において、基準電流Ikが400mA/cm2であり、デューティ比が1/5であった場合、駆動電流Ipは、400mA/cm2×5=2,000mA/cm2よりも大きい2,400mA/cm2とする。
【0044】
続いて、第1フィールドと同様に、タイミングt2のスタート信号Dybをトリガーとして、タイミングt2からタイミングt3までの間で、走査信号G1〜Gmを順に生成して出力し、走査線を順に選択する(第2フィールド)。なお、タイミングt2は、1フレームの期間長におけるパルス駆動のデューティ比分経過したタイミングとなっている。
例えば、1フレームの期間長が約16.7ミリ秒であり、デューティ比が1/5であった場合、タイミングt2は、タイミングt1から約3.34ミリ秒後に出力される。
また、第2フィールドにおいても、走査信号G1〜Gmに同期したタイミングで、各データ線にデータ信号が供給され、有機EL層8に駆動電流が供給されるが、駆動電流をゼロとしている。換言すれば、第2フィールドにおいては、全画素の有機EL層8に駆動電流を供給せずに、強制的に消灯状態にする。
また、継続する各フレームにおいても、同様に、第1および第2フィールドからなるサブフィールド駆動を行う。
このようにして、図6(b)に示す「パルス駆動」が実現される。
【0045】
「駆動方法の流れ」
図9は、駆動方法の流れを示したフローチャートである。
ここでは、前述した「定電流駆動」と「パルス駆動」との切替えを含む駆動方法の流れについて、図2を交えて説明する。なお、以下のフローは、記憶回路56の駆動制御プログラムに基づいて、制御回路50が駆動切替部51を含む各部を制御することにより実行される。
【0046】
ステップS1では、入力された画像信号の1画面当りの階調データを測定する(読み取る)。詳しくは、フレームメモリー58に書き込まれた画像信号の1画面当りの階調データを測定する。
ステップS2では、測定した階調データから、表示の階調としての表示の平均階調値を演算して導出する。
ステップS3では、導出した平均階調値(表示の階調)が記憶回路56に記憶されている所定の階調値以下であるか判断する。所定の階調値以下であった場合には、ステップS4に進む。所定の階調値より大きい場合には、ステップS5に進む。
ステップS4では、「パルス駆動」を行う。詳しくは、図8で説明したように、駆動切替部51からスタートパルスが時系列に2回供給されて、1つの走査線を1フレームの期間において2回選択するサブフィールド駆動が行われる。
ステップS5では、「定電流駆動」を行う。詳しくは、図7で説明したように、駆動切替部51から1フレームの期間の最初に1回スタートパルスが供給され、1フレームの期間に渡って、一定の駆動電流(基準電流)が供給される。
なお、このフローは、表示パネル18が表示駆動されている間、常時実行されている。換言すれば、記憶回路56の駆動制御プログラムは常駐しており、常時、平均階調値に応じて、「定電流駆動」と「パルス駆動」との切替えを行っている。
【0047】
上述した通り、本実施形態に係る表示装置100、および駆動方法によれば、以下の効果を得ることができる。
表示装置100は、パルス駆動と定電流駆動とを表示の階調に応じて切替える駆動切替部51を備えている。駆動切替部51は、所定の階調以下の低階調領域においてはパルス駆動を行い、それよりも高い中高階調領域では定電流駆動を行う。換言すれば、低階調領域においてはインパルス型の駆動を行い、それよりも高い中高階調領域ではホールド型の駆動を行う。
特に、低階調領域ではパルス駆動により、パルスの振幅が基準電流Ikよりも高く、パルス駆動のデューティ比の逆数と基準電流Ikとを掛け合わせた値よりも大きい駆動電流Ipが有機EL層8に供給される。
この駆動電流Ipは、有機EL層8における複数の発光層間のエネルギーギャップを超えられるため、低階調領域においても所期の略白色光を得ることができる。換言すれば、インパルス型の駆動としたことにより、積層構造における電子と正孔とのキャリアバランスが取れるため、低階調領域においても所期の略白色光を得ることができる。また、人間の目には、網膜の残像(積分)効果によって、画素信号に規定された表示の階調の明るさに感じられる。
よって、低階調領域において略白色光が得られることから、カラーフィルターを介して所期の発色を得ることができる。
【0048】
さらに、所定の階調より大きな中高階調領域では、定電流駆動に切替えるため、有機EL層8への負荷が軽減されて、発光寿命を確保することができる。
従って、低階調領域で所期の発色と、所期の発光寿命とを両立した表示装置100を提供することができる。換言すれば、所期の発光寿命を確保しながら、低階調領域での色ズレを抑制した表示装置100を提供することができる。
【0049】
また、本実施形態の駆動方法によれば、1フレームにおけるパルス駆動のデューティ比を、1/3〜1/50の範囲内か、より好ましくは、1/10〜1/50の範囲内としている。
これにより、後述する実施例(図15,16)からも明らかなように、低輝度領域における発色性と、輝度寿命とをバランス良く確保することができる。
従って、低階調領域で所期の発色と、所期の発光寿命とを両立した表示装置の駆動方法を提供することができる。換言すれば、所期の発光寿命を確保しながら、低階調領域での色ズレを抑制した表示装置の駆動方法を提供することができる。
【0050】
また、表示装置100は、大型化が容易な「白色発光+カラーフィルター方式」、かつ、トップエミッション型の構成を採用している。
よって、画素回路を含む素子層2が形成された素子基板1側から光を取り出すボトムエミッション型よりも、画素開口率を大きくすることができる。
従って、汎用性が高く、明るい表示が得られる表示装置100を提供することができる。
【0051】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係る表示装置の回路ブロック構成図であり、図2に対応している。
以下、本発明の実施形態2に係る表示装置110について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0052】
実施形態2の表示装置110は、表示パネル18が配置されている周囲の環境における照度を検出し、その環境照度が所定の照度以下のときには「パルス駆動」を行い、所定の照度より高いときには「定電流駆動」を行う。
このため、表示装置110は、実施形態1の表示装置の構成に加えて、照度検出部70を備えている。詳しくは、制御回路50に照度検出部70が接続されている。
照度検出部70は、A/Dコンバーターを内蔵した検出回路であり、光センサー71が付属している。光センサー71は、フォトダイオードであり、図示は省略しているが、表示パネル18の表示領域Vの周縁部(額縁部)に外光を検出可能に配置されている。なお、光センサー71は、環境の輝度を検出可能なセンサーであれば良く、例えば、フォトトランジスターや、Cdsセルであっても良い。
照度検出部70は、光センサー71が検出したアナログ検出データを、符号化した輝度データとして制御回路50に送信する。
【0053】
ここで、「パルス駆動」と「定電流駆動」とを切替える閾値となる所定の照度は、好適例として、200lux以下の照度に設定されている。また、より好ましくは、150lux以下に設定する。
これは、周囲環境が明るい場合よりも、暗い場合の方が「色ズレ」現象が目立ち易いため、環境照度が200lux以下の低い場合に「パルス駆動」を行うことにより、色ズレを抑制するためである。
【0054】
「駆動方法の流れ」
図11は、本実施形態に係る駆動方法の流れを示したフローチャートである。
ここでは、環境照度に応じて、「定電流駆動」と「パルス駆動」とを切替える駆動方法の流れについて、図10を交えて説明する。なお、以下のフローは、記憶回路56の駆動制御プログラムに基づいて、制御回路50が駆動切替部51を含む各部を制御することにより実行される。
【0055】
ステップS11では、表示パネル18が配置されている周囲環境の照度を検出する。詳しくは、照度検出部70を用いて、光センサー71の周囲環境の照度を検出する。
ステップS12では、検出した照度が記憶回路56に記憶されている所定の照度値以下であるか判断する。所定の照度値以下であった場合には、ステップS13に進む。所定の照度値より大きい場合には、ステップS14に進む。なお、所定の照度は、150luxとしている。
ステップS13では、「パルス駆動」を行う。詳しくは、図8で説明したように、駆動切替部51からスタートパルスが時系列に2回供給されて、1つの走査線を1フレームの期間において2回選択するサブフィールド駆動が行われる。
ステップS14では、「定電流駆動」を行う。詳しくは、図7で説明したように、駆動切替部51から1フレームの期間の最初に1回スタートパルスが供給され、1フレームの期間に渡って、一定の駆動電流(基準電流)が供給される。
なお、このフローは、表示パネル18が表示駆動されている間、常時実行されている。換言すれば、記憶回路56の駆動制御プログラムは常駐しており、常時、周囲の環境照度に応じて、「定電流駆動」と「パルス駆動」との切替えを行っている。
【0056】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態1における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
表示装置110によれば、照度検出部70および駆動切替部51により、環境照度が所定の照度以下のときには「パルス駆動」を行い、所定の照度より高いときには「定電流駆動」を行う。換言すれば、環境照度が暗い(所定の照度以下の)ときにはインパルス型の駆動を行い、それよりも環境照度が明るいときにはホールド型の駆動を行う。
よって、環境照度が所定の照度以下で「色ズレ」現象が目立ち易い暗い環境下において、「パルス駆動」を行うことにより、色ズレを抑制することができる。換言すれば、暗い環境下においても、略白色光が得られることから、カラーフィルターを介して所期の発色を得ることができる。
【0057】
さらに、所定の照度よりも環境照度が明るいときには、定電流駆動に切替えるため、有機EL層8への負荷が軽減されて、発光寿命を確保することができる。
従って、環境照度が低い場合における所期の発色と、発光寿命とを両立した表示装置110を提供することができる。換言すれば、所期の発光寿命を確保しながら、環境照度が低い場合における色ズレを抑制した表示装置110を提供することができる。
【0058】
(電子機器)
図12は、上記表示装置を搭載した車載メーターを示す平面図である。
上述の実施形態2に係る表示装置110は、例えば、電子機器としての自動車用の車載メーター200に搭載して用いることができる。
車載メーター200は、横に並べた3枚の表示装置110を備えている。詳しくは、左から表示装置211、表示装置212、表示装置213の順番で配置されている。なお、表示装置の外形を点線で示している。
真ん中に位置する表示装置212は、左右の表示装置211,213よりも一回り大きいパネルサイズとなっており、この3枚の表示装置によって、ダッシュボードの開口部215から露出する1つの車載メーターを構成している。換言すれば、底辺を直線でカットした横長で楕円形状の開口部215から露出する1つの車載メーターを表示装置211,212,213の3枚の表示装置を横方向に並べて構成している。
【0059】
左側の表示装置211には、例えば、燃料計、水温計などが表示される。
中央の表示装置212には、例えば、速度計や、方向指示器などが表示される。
右側の表示装置213には、例えば、回転計などが表示される。なお、図12では、アナログ表示をしている状態を示しているが、不図示のスイッチを操作することにより、デジタル表示とすることもできる。また、3枚構成に限定するものではなく、横長(X軸方向)に長い長方形からなる1枚の表示パネルで構成しても良い。
表示装置211,212,213は、共に照度検出部70および駆動切替部51を備えているため、車載メーター200は、所期の発光寿命を確保しながら、環境照度が低い場合における色ズレを抑制することができる。特に、夜間における車中では、メーター以外に光源が存在しない場合が多いため、より「色ズレ」が目立つ傾向であったが、車載メーター200によれば、暗い環境下で、かつ、低輝度領域の表示であっても所期の発色の表示を行うことができる。
従って、環境照度が低い場合における所期の発色と、発光寿命とを両立した車載メーター200を提供することができる。
【0060】
また、車載メーター200と、自動車の電気システムとを連動させても良い。
具体的には、自動車のヘッドライトのオン/オフと、「定電流駆動」/「パルス駆動」とを連動させる。この場合、図10の制御回路50に自動車のヘッドライトの操作スイッチの出力信号を入力し、当該信号がオンのときには「定電流駆動」を行い、当該信号がオフのときには「パルス駆動」を行うように制御する。
通常、自動車のヘッドライトは、周囲が暗い場合や、夜間に点灯されるため、ヘッドライトの操作スイッチの出力信号によっても、照度検出部70の機能と同様な作用を得ることができる。
従って、環境照度が低い場合における所期の発色と、発光寿命とを両立した車載メーター200を提供することができる。
なお、表示装置110の替りに表示装置100を用いても良い。また、これらを組み合わせて用いても良い。この構成であっても、同様な作用効果を得ることができる。
【0061】
また、車載メーター200に限定するものではなく、表示部を備えた電子機器であれば良く、例えば、モニターや、ノート型パソコンに適用しても良い。また、携帯電話や、カーナビゲーションシステム用の表示装置、PDA(Personal Digital Assistants)、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器などの各種電子機器に用いることができる。
これらの電子機器であっても、同様な作用効果を得ることができる。
【0062】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0063】
(変形例1)
図13は、変形例1に係る有機EL層の断面図であり、図5に対応している。
上記各実施形態においては、有機EL層を構成する積層構造は、RGBに対応した3層の発光層を備えるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、略白色光を合成可能な複数の発光層を含む積層構造であれば良い。
例えば、図13に示す、有機EL層98のように2層の発光層を含む積層構造であっても良い。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0064】
有機EL層98は、画素電極6上に、正孔注入層81、正孔輸送層82、オレンジ色発光層91、青色発光層92、電子輸送層87、電子注入層88が、この順に積層した積層構造となっている。また、電子注入層88上には、共通電極9が形成されている。
オレンジ色発光層91は、好適例として、オレンジ色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させて形成する。オレンジ色発光層の構成材料としては、オレンジ色発光材料(ゲスト材料)として、テトラアリールジインデノペリレン誘導体(RD−1)を用い、ホスト材料として、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)を用いることが好ましい。また、BH−140(登録商標)をアシストドーパントすることが好ましい。
青色発光層92は、好適例として、青色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させて形成する。青色発光層の構成材料としては、ゲスト材料としてBD−102(登録商標)を用い、ホスト材料としてEK−109(登録商標)を用いることが好ましい。また、α−NPD(登録商標)をアシストドーパントすることが好ましい。
【0065】
この積層構造であっても、上記各実施形態の構成、および駆動方法を適用することが可能であり、同様な作用効果を得ることができる。
従って、低階調領域で所期の発色と、所期の発光寿命とを両立した表示装置を提供することができる。また、環境照度が低い場合における所期の発色と、発光寿命とを両立した表示装置を提供することができる。
なお、上述した好適例の構成および材料に限定するものではなく、略白色光を合成可能な複数の発光層を含む積層構造を形成することができる構成および材料であれば良い。例えば、各発光層間に中間電荷発生層を挟んで配置した構成、いわゆるタンデム型有機EL層構成であっても良い。
【0066】
(変形例2)
図14は、変形例2に係る駆動方法のタイミングチャートであり、図6(a)および図8に対応している。
上記各実施形態においては、定電流駆動を1フレームにおける1垂直走査駆動によって行うものとして説明したが、この方法に限定するものではなく、サブフィールド駆動によって、定電流駆動を行っても良い。なお、実施形態1と同一の説明については、同一の記号を附し、重複する説明は省略する。
例えば、図14に示すように、1フレームを時間的に2つのサブフィールドに分けて、1フレーム期間内に2回の垂直走査駆動を行うサブフィールド駆動によって、定電流駆動を実現しても良い。
詳しくは、タイミングt1のスタート信号Dyaをトリガーとした第1フィールド、およびタイミングt2のスタート信号Dybをトリガーとした第2フィールドにおいて、共に駆動電流として基準電流Ikを供給する。
【0067】
この駆動方法によっても、1フレームの期間に渡って、基準電流Ikが供給されることになるため、図6(a)の「定電流駆動」を実現することができる。
従って、低階調領域で所期の発色と、所期の発光寿命とを両立した表示装置の駆動方法を提供することができる。さらに、「パルス駆動」に加えて「定電流駆動」も、同一タイミングで制御するサブフィールド駆動によって行うことができるため、駆動制御がシンプルになり、誤動作の発生頻度を抑制することができる。
【0068】
(変形例3)
図4を用いて説明する。
上記各実施形態においては、表示装置の構成をトップエミッション型であるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、ボトムエミッション型の構成であっても良い。
この場合、反射層5を削除し、共通電極9を反射電極とする。また、CF層14を素子基板1のZ軸(+)側に形成する。これにより、素子基板1側から光を取り出すボトムエミッション型の表示装置を構成することができる。
この構成であっても、複数の発光層を含む積層構造を備えた「白色発光+カラーフィルター方式」の表示装置であるため、上記各実施形態の構成、および駆動方法を適用することが可能であり、同様な作用効果を得ることができる。
【実施例】
【0069】
(実施例A)
「実施形態1の積層構造による駆動結果」
図15は、実施形態1の積層構造を備えた表示パネル18を用いて、定電流駆動、および複数のデューティ比によるパルス駆動を複数の階調ごとに行ったときの色度の変化を一覧にした表である。
まず、実験に用いた表示パネル18は、有機EL層8の構成を実施形態1の好適例で説明したRGBの3層の発光層を含む積層構造とした。また、カラーフィルターは形成せずに、対向基板17から有機EL層8が放つ光を直接測定可能な状態の表示パネル(評価用パネル)を用いた。
【0070】
比較例1として、表示の階調に対応した各階調において、評価用パネルを定電流駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で410cd/m2相当の輝度を得るために、基準電流Ikとして、400mA/cm2の駆動電流を供給して直流駆動をしたときの輝度、および色度データを図15の左上に示している。
このときの輝度(階調)は、表示面で415cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.31,0.31)と、所期の白色光が得られていた。
また、同様に、表示パネルの表示面で40cd/m2相当の輝度を得るために、必要な基準電流を供給して直流駆動をしたときの輝度、および色度データが右隣のデータである。このときの輝度は、表示面で38cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.34,0.34)と、略所期の白色光が得られていたが、色度が若干変化していることが解る。
【0071】
同様に、表示パネルの表示面で4cd/m2相当の輝度を得るために、必要な基準電流を供給して直流駆動をしたときの輝度、および色度データが右隣のデータである。このときの輝度は、表示面で3.58cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.42,0.37)と、色度がさらに変化し、赤み掛かってきていることが解る。
同様に、表示パネルの表示面で0.3cd/m2相当の輝度を得るために、必要な基準電流を供給して直流駆動をしたときの輝度、および色度データが右隣のデータである。このときの輝度は、表示面で0.23cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.50,0.41)と、さらに赤み掛かってきていることが解る。
最後に、表示パネルの表示面で0.01cd/m2相当の輝度を得るために、必要な基準電流を供給して直流駆動をしたときの輝度、および色度データが右隣のデータである。このときの輝度は、表示面で0.01cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.53,0.41)であった。
【0072】
図16は、色度図である。
図16において、グラフ95(×の分布)は、上述した比較例1の色度変化を示しており、表示面で38cd/m2以下の低輝度領域になると、有機EL層8の発光色に「色ズレ」が生じて、赤み掛かった色光になることが解る。
【0073】
図15に戻る。
また、図15の右上には、基準電流Ikとして、400mA/cm2の駆動電流を供給して直流駆動をしたときの輝度寿命が示されている。具体的には、輝度寿命を輝度が初期輝度の80%になるまでの時間で示しており、直流駆動では約400時間であった。
【0074】
比較例2として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/2でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で410cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、800mA/cm2の駆動電流を1/2フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを比較例1の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で414cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.31,0.31)と、所期の白色光が得られていた。
以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、比較例1と略同じ変化推移であり、低輝度領域になると、発光色に「色ズレ」が生じて、赤み掛かった色光になることが解る。
また、デューティ比1/2でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約400時間であり、定電流駆動との差は認められなかった。
【0075】
実施例1として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/3でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で410cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、1,600mA/cm2の駆動電流を1/3フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを比較例2の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で417cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.31,0.31)と、所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、各階調における色ズレ度合いは、比較例2よりも小さく、最も低い0.01cd/m2における色度は、(x,y)=(0.37,0.35)であり、略所定の白色光が得られていることが解る。
また、デューティ比1/3でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約400時間であり、定電流駆動との差は認められなかった。
【0076】
実施例2として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/5でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で410cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、2,400mA/cm2の駆動電流を1/5フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを実施例1の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で416cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.31,0.31)と、所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、各階調における色ズレ度合いは、実施例1と同等、または以下であり、特に、最も低い0.01cd/m2における色度は、(x,y)=(0.34,0.33)と、実施例1よりも白色度が高いことが解る。
また、デューティ比1/5でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約395時間であり、定電流駆動との差は殆ど認められなかった。
【0077】
図16に戻る。
図16において、グラフ96(○の分布)は、上述した実施例2の色度変化を示しており、低輝度領域においても、色ズレが抑制されていることが解る。
【0078】
実施例3として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/10でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で410cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、4,400mA/cm2の駆動電流を1/10フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを実施例2の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で418cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.31,0.31)と、所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、各階調における色ズレ度合いは、実施例1と同等、または以下であり、特に、最も低い0.01cd/m2における色度は、(x,y)=(0.32,0.31)と、実施例1、および実施例2よりも白色度が高いことが解る。
また、デューティ比1/10でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約390時間であり、定電流駆動との差は然程認められなかった。
【0079】
実施例4として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/50でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で410cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、20,400mA/cm2の駆動電流を1/50フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを実施例3の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で417cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.31,0.31)と、所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、全ての階調における色度は、(x,y)=(0.31,0.31)で共通であり、色ズレの発生は認められなかった。
また、デューティ比1/50でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約390時間であり、定電流駆動との差は然程認められなかった。
【0080】
比較例3として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/100でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で410cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、40,400mA/cm2の駆動電流を1/100フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを実施例4の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で414cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.31,0.32)と、所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、全ての階調における色度は、略同一であり、色ズレの発生は認められなかった。
しかし、デューティ比1/100でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約220時間であり、定電流駆動の半分程度の寿命となっていることが解る。
【0081】
比較例4として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/500でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で410cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、200,400mA/cm2の駆動電流を1/500フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを最下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で418cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.31,0.32)と、所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、全ての階調における色度は、略同一であり、色ズレの発生は認められなかった。
しかし、デューティ比1/500でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約100時間であり、定電流駆動の1/4程度の寿命となっていることが解る。
【0082】
(実施例B)
「変形例1の積層構造による駆動結果」
図17は、変形例1の積層構造を備えた表示パネル18を用いて、定電流駆動、および複数のデューティ比によるパルス駆動を複数の階調ごとに行ったときの色度の変化を一覧にした表であり、図15に対応している。なお、実施例Aと重複する説明は省略する。
まず、実験に用いた表示パネル18は、有機EL層8の構成を変形例1の好適例で説明したオレンジ色、青色の2層の発光層を含む積層構造とした。また、カラーフィルターは形成せずに、対向基板17から有機EL層8が放つ光を直接測定可能な状態の表示パネル(評価用パネル)を用いた。
【0083】
比較例1として、表示の階調に対応した各階調において、評価用パネルを定電流駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で470cd/m2相当の輝度を得るために、基準電流Ikとして、400mA/cm2の駆動電流を供給して直流駆動をしたときの輝度、および色度データを図17の左上に示している。
このときの輝度(階調)は、表示面で470cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.29,0.32)と、略所期の白色光が得られていた。
また、同様に、表示パネルの表示面で45cd/m2相当の輝度を得るために、必要な基準電流を供給して直流駆動をしたときの輝度、および色度データが右隣のデータである。このときの輝度は、表示面で45cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.36,0.35)と、色度が若干変化していることが解る。
また、以下同様に、表示面で4.2cd/m2、0.3cd/m2、0.01cd/m2相当の輝度となるポイントで色度を測定しているが、低輝度になるほど、色度変化が大きくなり、赤み掛かった色光となることが解る。
また、輝度が初期輝度の80%になるまでの輝度寿命は、定電流駆動の場合、約350時間であった。
【0084】
比較例2として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/2でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で470cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、800mA/cm2の駆動電流を1/2フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを比較例1の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で475cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.29,0.32)と、略所期の白色光が得られていた。
以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、比較例1と略同じ変化推移であり、低輝度領域になると、発光色に「色ズレ」が生じて、赤み掛かった色光になることが解る。
また、デューティ比1/2でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約350時間であり、定電流駆動との差は認められなかった。
【0085】
実施例1として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/3でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で470cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、1,600mA/cm2の駆動電流を1/3フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを比較例2の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で477cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.29,0.33)と、略所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、各階調における色ズレ度合いは、比較例2よりも小さく、最も低い0.01cd/m2における色度は、(x,y)=(0.35,0.36)であり、略所定の白色光が得られていることが解る。
また、デューティ比1/3でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約350時間であり、定電流駆動との差は認められなかった。
【0086】
実施例2として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/5でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で470cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、2,400mA/cm2の駆動電流を1/5フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを実施例1の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で476cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.29,0.33)と、略所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、各階調における色ズレ度合いは、実施例1と同等、または以下であり、特に、最も低い0.01cd/m2における色度は、(x,y)=(0.33,0.33)と、実施例1よりも白色度が高いことが解る。
また、デューティ比1/5でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約350時間であり、定電流駆動との差は認められなかった。
【0087】
実施例3として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/10でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で470cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、4,400mA/cm2の駆動電流を1/10フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを実施例2の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で478cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.29,0.33)と、所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、各階調における色ズレ度合いは、実施例1と同等、または以下であり、特に、最も低い0.01cd/m2における色度は、(x,y)=(0.29,0.33)と、実施例1よりも白色度が高いことが解る。
また、デューティ比1/10でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約340時間であり、定電流駆動との差は殆ど見られなかった。
【0088】
実施例4として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/50でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で470cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、20,400mA/cm2の駆動電流を1/50フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを実施例3の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で476cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.29,0.34)と、略所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、全ての階調における色度は、略同一であり、色ズレの発生は認められなかった。
また、デューティ比1/50でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約340時間であり、定電流駆動との差は殆ど認められなかった。
【0089】
比較例3として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/100でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で470cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、40,400mA/cm2の駆動電流を1/100フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを実施例4の下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で476cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.29,0.34)と、略所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、全ての階調における色度は、略同一であり、色ズレの発生は認められなかった。
しかし、デューティ比1/100でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約180時間であり、定電流駆動の半分程度の寿命となっていることが解る。
【0090】
比較例4として、比較例1と同じ各階調において、評価用パネルをデューティ比1/500でパルス駆動した場合の色度データを測定した。
詳しくは、表示の階調として表示パネルの表示面で470cd/m2相当の輝度を得るために、駆動電流Ipとして、200,400mA/cm2の駆動電流を1/500フレームの期間長供給してパルス駆動をしたときの輝度、および色度データを最下段に示している。このときの輝度(階調)は、表示面で474cd/m2であり、色度は、(x,y)=(0.29,0.34)と、略所期の白色光が得られていた。
また、以下、比較例1と同じ各階調において色度データを測定しているが、全ての階調における色度は、略同一であり、色ズレの発生は認められなかった。
しかし、デューティ比1/500でパルス駆動した場合の輝度寿命は、約80時間であり、定電流駆動の1/4程度の寿命となっていることが解る。
【符号の説明】
【0091】
1…素子基板、6…画素電極、8…積層構造としての有機EL層、9…共通電極、14…カラーフィルターとしてのCF層、17…対向基板、18…表示パネル、20…フレキシブル基板、21…駆動用IC、50…制御回路、51…駆動切替部、70…照度検出部、81…正孔注入層、82…正孔輸送層、83,85,86,91,92…発光層、84…中間層、87…電子輸送層、88…電子注入層、100,110…有機EL表示装置としての表示装置、200…電子機器としての車載メーター、V…表示面としての表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
それぞれが異なる色光を発する複数の発光層と、
赤、緑、青を含む複数色の色フィルターが配置されたカラーフィルターとを少なくとも有し、
前記発光層の各々が放つ複数の色光を合成した略白色光を前記カラーフィルターを介して出射する有機EL表示装置であって、
前記複数の発光層を含む積層構造に対して、画像信号に規定された表示の階調に応じた基準電流を1フレーム内において連続供給して表示を行う定電流駆動と、
前記基準電流よりも高い電流を前記1フレーム内における所定の期間に供給して前記表示を行うパルス駆動と、を切替える駆動切替部を備え、
前記駆動切替部は、前記階調が所定の階調以下のときには前記パルス駆動を行い、前記階調が前記所定の階調より高いときには前記定電流駆動を行うことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記所定の階調は、画像信号における1画面当りの平均輝度であり、
前記有機EL表示装置の表示面における平均輝度で表した場合、前記平均輝度が3〜20cd/cm2の範囲内に相当する階調であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
基板と、
それぞれが異なる色光を発する複数の発光層と、
赤、緑、青を含む複数色の色フィルターが配置されたカラーフィルターとを少なくとも有し、
前記発光層の各々が放つ複数の色光を合成した略白色光を前記カラーフィルターを介して出射する有機EL表示装置であって、
前記複数の発光層を含む積層構造に対して、画像信号に規定された表示の階調に応じた基準電流を1フレーム内において連続供給して表示を行う定電流駆動と、
前記基準電流よりも高い電流を前記1フレーム内における所定の期間に供給して表示を行うパルス駆動と、を切替える駆動切替部と、
前記有機EL表示装置が配置されている周囲の環境における照度を検出する照度検出部とを備え、
前記駆動切替部は、前記照度検出部が検出した前記照度が所定の照度以下のときには前記パルス駆動を行い、前記照度が前記所定の照度より高いときには前記定電流駆動を行うことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
前記所定の照度は、200lux以下の照度であることを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記1フレームにおける前記パルス駆動のデューティ比は、1/3〜1/50の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記パルス駆動における前記基準電流よりも高い電流は、前記基準電流と、前記デューティ比の逆数とを掛け合わせた値よりも大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記パルス駆動は、前記1フレームの期間長において、全ての走査線を順次走査する走査駆動を第1サブフィールドと、第2サブフィールドとの2回行うサブフィールド駆動により行われ、
前記第1サブフィールドおよび第2サブフィールドの期間長は、前記デューティ比に応じて設定されており、
前記第1サブフィールドにおいては、前記基準電流よりも高い電流を前記積層構造に供給し、
前記第2サブフィールドにおいては、前記積層構造に電流を供給しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記積層構造には、赤、緑、青色の各色に対応した前記発光層が含まれており、
前記基板上に、前記積層構造と、前記カラーフィルターとが、この順番に形成されたトップエミッション型の構成を採用していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機EL表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
基板と、
それぞれが異なる色光を発する複数の発光層と、
赤、緑、青を含む複数色の色フィルターが配置されたカラーフィルターとを少なくとも有し、
前記発光層の各々が放つ複数の色光を合成した略白色光を前記カラーフィルターを介して出射する有機EL表示装置の駆動方法であって、
画像信号に規定された表示の階調が所定の階調よりも高いときには、前記階調に応じた基準電流を1フレーム内において連続供給して定電流駆動を行い、
前記階調が所定の階調以下のときには、前記基準電流よりも高い電流を前記1フレーム内における所定の期間に供給するパルス駆動を行うことを特徴とする有機EL表示装置の駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−141412(P2011−141412A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1808(P2010−1808)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】