説明

有機EL表示装置、LED装置、太陽電池、反射膜

【課題】硫化せず、高反射率を維持できる反射膜と、その反射膜を用いた装置を提供する。
【解決手段】
本発明の有機EL装置2aでは、有機EL膜36aから放出され、本体基板11a側に放出された発光光を反射膜40aで反射して、フロントパネル39aから放出させる。反射膜40aが有する銀薄膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する。添加金属の酸化物が銀薄膜中の銀微小粒子を覆うので、イオウを含むガスが銀と接触せず、硫化が発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な半導体デバイスに使用される配線膜の技術分野に係り、特に、酸化物半導体に接触する電極層の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、有機EL表示装置や薄膜太陽電池が注目されており、有機EL表示装置では、発光光を効率よく活用するために、薄膜太陽電池では太陽光を効率よく活用するために、光反射率が高い反射膜が求められている。
【0003】
有機EL表示装置では、有機薄膜を形成したボトム基板側から光を取り出すボトムエミッション方式と、ボトム基板と対向するトップ基板側から光を取り出すトップエミッション方式が知られており、ボトムエミッション方式では、トップ基板を金属製の蓋とし、高い封止性を得ることができるが、ボトム基板上にはTFTが形成されているため、光の取出効率が低下するという問題がある。
【0004】
他方、トップエミッション方式では、取り出し効率が高く、反射層を配置すると反射光も直光と同じ位置から取り出せるため光強度も大きくなるという利点があり、トップエミッション方式に利点があると言われているが、有機EL表示装置の発光強度を更に高めるために、TFT側に向けて放射された発光光を、反射膜で反射させて外部に取り出すことは不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−43980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高反射率の薄膜を形成できる金属には銀が知られており、銀を用いた反射膜は、可視光領域で98%の反射率が得られている。
しかしながら、銀は硫化ガスとの反応性が高く、反射膜表面に硫化銀の薄膜が形成されると変色し、反射率が低下する。
また、銀の反射膜は半導体層や有機膜などとの密着性が低く、剥離の問題が生じやすい。
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、変色や剥離の無い銀反射膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、発光電流が通電されて発光光を放射する有機EL膜と、前記有機EL膜への通電を制御する半導体素子を有する本体基板と、前記有機EL膜の前記発光光を反射する反射膜とを有する有機EL表示装置であって、前記反射膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と前記添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する銀薄膜を有する有機EL表示装置である。
本発明は有機EL表示装置であって、前記添加金属は、銀と前記添加金属の合計原子数の2.0原子%以下の範囲で含有された有機EL表示装置である。
本発明は有機EL表示装置であって、前記添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素から成る有機EL表示装置である。
本発明は有機EL表示装置であって、前記反射膜は、第一の導電性酸化物薄膜を有し、前記第一の導電性酸化物薄膜は片面が前記本体有機EL膜と密着し、反対側の面が前記銀薄膜と密着された有機EL表示装置である。
本発明は有機EL表示装置であって、前記反射膜は、前記本体基板と前記有機EL膜の間に配置され、前記有機EL膜から前記本体基板側に放射された発光光を、前記有機EL膜に向けて反射させるように配置された有機EL表示装置である。
本発明は有機EL表示装置であって、前記反射膜は、第二の導電性酸化物薄膜を有し、前記第二の導電性酸化物薄膜は片面が前記本体基板と密着し、反対側の面が前記銀薄膜と密着された有機EL表示装置である。
本発明は有機EL表示装置であって、前記半導体素子と前記有機EL膜との間は前記反射膜で電気的に接続され、前記反射膜には、前記発光電流が流される有機EL表示装置である。
本発明は、発光層と、反射膜とを有し、前記発光層が放射した発光光を前記反射膜で反射させ、前記発光層を透過させるLED装置であって、前記反射膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と前記添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する銀薄膜を有するLED装置である。
本発明は、LED装置であって、前記添加金属は、銀と前記添加金属の合計原子数の2.0原子%以下の範囲で含有されたLED装置である。
本発明は、LED装置であって、前記添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素から成るLED装置である。
本発明は、電極層と、入射光で発電する発電層と、前記電極層と前記発電層との間に配置され、前記光電気層を透過した光を前記発電層に反射する反射膜とを有し、前記反射膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と前記添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する銀薄膜を有する太陽電池である。
本発明は、太陽電池であって、前記添加金属は、銀と前記添加金属の合計原子数の2.0原子%以下の範囲で含有された太陽電池である。
本発明は、太陽電池であって、前記添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素から成る太陽電池である。
本発明は、光を反射する反射膜であって、前記反射膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と前記添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する銀薄膜を有する反射膜である。
本発明は、反射膜であって、前記添加金属は、銀と前記添加金属の合計原子数の2.0原子%以下の範囲で含有された反射膜である。
本発明は、反射膜であって、前記添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素から成る反射膜である。
本発明は、反射膜であって、前記反射膜は、前記銀薄膜が、第一の導電性酸化物薄膜と第二の導電性酸化物薄膜の間に接触して挟まれている反射膜である。
【発明の効果】
【0008】
銀薄膜が硫化せず、反射率が低下しない。
また、銀薄膜の膜剥がれが生じないで済む。
また、銀薄膜は電気伝導率が高いので、反射膜の一部を配線として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)〜(d):本発明の有機EL表示装置とその製造工程を説明するための図
【図2】他の有機EL表示装置の例
【図3】本発明のLED装置を説明するための図
【図4】本発明の太陽電池を説明するための図
【図5】本発明の反射膜の構造を説明するための図
【図6】本発明の銀薄膜の反射率と酸素含有率との関係を示すグラフ
【図7】純銀薄膜の反射率と光波長の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(d)と図2には、本発明の例である、第一の有機EL表示装置2aと第二の有機EL表示装置2bがそれぞれ示されている。
第1、第2の有機EL表示装置2a、2bは、本体基板11a、11bを有しており、本体基板11a、11bには、第一、第二の半導体素子20a、20bがそれぞれ複数個形成されている。
【0011】
ここでは、第一、第二の半導体素子20a、20bは、トランジスタであり、各半導体素子20a、20bは、半導体層50a、50bと、ゲート電極31a、31bと、ゲート絶縁膜22a、22bと、ソース電極33a、33bと、ドレイン電極34a、34bとをそれぞれ有している。
【0012】
第一の半導体素子20aはボトムゲート型であり、ゲート電極31aは、バックパネル21a上に配置されている。
第二の半導体素子20bはトップゲート型であり、半導体層50bが、保護膜29bを介してバックパネル21b上に配置され、ゲート電極31bは、半導体層50b上に配置されている。
【0013】
半導体層50a、50bは、ソース領域53a、53bと、ドレイン領域54a、54bとを有しており、ソース領域53a、53bと、ドレイン領域54a、54bとの間には、接続領域55a、55bが配置されている。
ソース電極33a、33bと、ドレイン電極34a、34bとは、ソース領域53a、53bと、ドレイン領域54a、54bにそれぞれ接続されている。
【0014】
ゲート絶縁膜22a、22bは、ソース領域53a、53bの一部上から、接続領域55a、55b上を亘って、ドレイン領域54a、54bの一部上まで、ソース領域53a、53bと、接続領域55a、55bと、ドレイン領域54a、54bとに接触しており、ソース電極33a、33bと、ドレイン電極34a、34bの間に電圧を印加し、ゲート電極31a、31bにゲート電圧を印加すると第一、第二の半導体素子20a、20bが導通し、ソース電極33a、33bと、ドレイン電極34a、34bとの間に電流が流れるようになっている。
【0015】
第一、、第二の半導体素子20a、20b上には、層間絶縁膜24a、24bを介して、平坦化層27a、27bが配置されている。
第1、第2の有機EL表示装置2a、2bは、有機EL膜36a、36bと、反射膜40a、40bを有している。
【0016】
平坦化層27a、27bと層間絶縁膜24a、24bには開口が形成されており、開口底面にはドレイン電極34a、34bの表面が部分的に露出されており、反射膜40a、40bの一部である配線部分41a、41bが、ドレイン電極34a、34bに接触して電気的に接続されている。
【0017】
反射膜40a、40bの他の部分である反射部分42a、42bは、平坦化層27a、27b上に位置しており、反射部分42a、42b上には、有機EL膜36a、36bが配置されている。
反射部分42a、42bは、配線部分41a、41bによって、第一、第二の半導体素子20a、20bに電気的に接続されている。
【0018】
複数個の第一、第二の半導体素子20a、20bには、それぞれ絶縁された反射膜40a、40bが接続されており、導通した第一、第二の半導体素子20a、20bに接続された反射膜40a、40bには電圧が印加される。
各反射膜40a、40b上の有機EL膜36a、36bは、突起37a、37bによって、反射膜40a、40b毎に分離されており、互いに絶縁されている。
【0019】
各有機EL膜36a、36b上には、共通電極35a、35bが配置され、その上には、透明なガラス基板から成るフロントパネル39a、39bが配置されている。
反射膜40a、40bに電圧が印加されると、有機EL膜36a、36bには、反射膜40a、40bと共通電極35a、35bによって、電圧が印加され、電流が流れ、発光する。
【0020】
発光光の一部はフロントパネル39a、39bに向けて放出され、フロントパネル39a、39bを透過して外部に放射される。
発光光の他の一部は、反射膜40a、40bに向けて放出され、反射膜40a、40bに入射する。
【0021】
反射膜40a、40bは、銀薄膜を有している。銀薄膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を0.5原子%(銀の原子数と添加金属の原子数の合計値に対する添加金属の原子数の割合)以上含有し、且つ、酸素を0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有されており、硫化物と反応しにくいようにされている。硫化物との反応が阻止される機構は、銀薄膜を構成する銀の微小粒子の表面が添加金属の酸化物で覆われるからであると考えられる。
【0022】
導電率と反射率とを低下させないために、添加金属は2.0原子%(銀の原子数と添加金属の原子数の合計値に対する添加金属の原子数の割合)以下の範囲で含有させることが望ましい。同じ理由により、酸素は20原子%以下の範囲で含有させることが望ましい。
【0023】
添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W,Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素を用いることができる。
【0024】
反射膜40a、40bは銀薄膜一層で構成してもよいが、この例では、反射膜40a、40bは、図5に示すように、銀薄膜14と、第一の導電性酸化物薄膜13と、第二の導電性酸化物薄膜15を有しており、銀薄膜14は、第一、第二の導電性酸化物薄膜13、15によって挟まれている。
【0025】
第一の導電性酸化物薄膜13は、有機EL膜36a、36bと接触して密着され、第二の導電性酸化物薄膜15は平坦化層27a、27bに接触して密着されている。従って、銀薄膜14は、有機EL膜36a、36bと平坦化層27a、27bには直接接触せず、有機EL膜36a、36bや平坦化層27a、27bから硫化されないようになっている。
また、大気に含まれる硫化物が第一、第二の有機EL表示装置2a、2b内に侵入しても、第一、第二の導電性酸化物薄膜13、15がバリアとなり銀薄膜14表面に到達しないようになっている。
【0026】
反射膜40a、40bは、銀薄膜14で構成される場合と、第一、第二の導電性酸化物薄膜13、15で銀薄膜14を挟んで構成させる場合の他、銀薄膜14と第一、第二の導電性酸化物薄膜13、15のいずれか一方とを有している場合も含まれる。
【0027】
反射膜40a、40bに光が入射する際に、反射膜40a、40bの表面に銀薄膜14が露出しているときは入射した光は銀薄膜14で反射され、フロントパネル39a、39bに向けて進行し、外部に放射される。
【0028】
銀薄膜14上に第一の導電性酸化物薄膜13が配置されている場合は、第一の導電性酸化物薄膜13は透明に形成されており、反射膜40a、40bの表面に入射した光は第一の導電性酸化物薄膜13を透過して銀薄膜14で反射され、再度第一の導電性酸化物薄膜13を透過して、フロントパネル39a、39bに向けて進行し、外部に放射される。
【0029】
銀薄膜14の反射率は、可視光の範囲で95%以上になるように、添加物と酸素の含有率は制御されており、硫化物によって硫化から保護されているから、高反射率が長期間維持される。
なお、図1の符号32aは、配線膜であり、図2の符号26b、27bは酸化膜等の保護膜である。
【0030】
<反射膜の製造工程>
図1(a)の本体基板11aは、反射膜を形成する対象物であり、本体基板11aには、第一の半導体素子20aの上部に配置された平坦化層27aに開口28aが形成され、開口28aの底面には、第一の半導体素子20aの電極が露出されている。ここでは、開口28aの底面には、ドレイン電極34aが露出されている。
【0031】
銀薄膜14と、第一、第二の導電性酸化物薄膜13、15とを有する反射膜40a(図5)の製造工程を説明すると、先ず、スパッタリング方法によって酸化物導電体のターゲット(例えばITOターゲット)をスパッタリングし、平坦化層27aの表面と、開口28の底面と内周側面とに亘って、透明で連続した酸化物導電体の薄膜を形成する。その薄膜は、平坦化層27aと接触しており、図5の第二の導電性酸化物薄膜15である。
【0032】
次いで、添加物が所定範囲で含有された銀ターゲットを、雰囲気中に酸素を供給できるガスとスパッタリングガス(ここではアルゴンガス)を用いてスパッタリングし、第二の導電性酸化物薄膜15の表面に、添加物と酸素とをそれぞれ所定範囲の含有率で含有する銀薄膜14を形成する。
銀薄膜14は、平坦化層27a上と、開口28aの底面及び内周側面に形成された第二の導電性酸化物薄膜15の表面に形成される。
【0033】
次に、酸化物ターゲットをスパッタリングし、透明で連続した酸化物導電体の薄膜を形成する。この酸化物の薄膜は、図5の第一の導電性酸化物薄膜13である。図1(b)の符号40aは、銀薄膜14と、第一、第二の導電性酸化物薄膜13、15とで構成された反射膜に限定されるものでは無く、銀薄膜14単層の場合と、第一、第二の導電性酸化物薄膜13、15のいずれか一方又は両方を有する場合とが含まれる。
【0034】
次に、図1(c)に示すように、反射膜40aをパターニングした後、図1(d)に示すように、突起37aを形成して有機EL膜36aと、共通電極35aを形成し、フロントパネル39aを配置して、第一の有機EL表示装置2aが得られる。
【0035】
<測定結果>
上記構造の反射膜について、銀薄膜の単膜の、銀含有率と波長480nmの反射率Rとの関係を図6に示す。参考として、純銀単膜の、波長と反射率Rの関係を図7に示す。
両方のグラフを比較すると、酸素含有率は、20原子%以下が望ましいことが分かる。
【0036】
次に、純銀のターゲットと、Ti、Zr、Ni、Mg、In、Snのいずれか一種の元素を銀に添加したターゲットを用い、アルゴンガス、又はアルゴンガスに酸素ガスを導入した雰囲気中でスパッタリングし、測定用基板上に銀薄膜を形成してサンプルを作成した。酸素ガスの流量は、形成される銀薄膜が複数の値の酸素濃度になるように設定した。
【0037】
硫化耐性試験として、サンプルを25℃の大気に10日間配置した後、波長480nmの光の反射率を測定した。
また、恒温恒湿試験として、恒温槽中に60℃、湿度90%の雰囲気を形成し、サンプルをその雰囲気中に48時間配置した後、同様に、波長480nmの光の反射率を測定した。
下記表1に測定結果を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
硫化耐性試験と恒温恒湿耐性試験の測定結果は、90%以上の反射率が得られたサンプルを耐性有りと判断し、反射率90%未満のサンプルを耐性無しと判断し、表中に耐性有りを「○」、耐性無しを「×」で記載した。
【0040】
用いたターゲットの銀と添加金属の比率は、形成した銀薄膜中の銀と添加金属の比率と同じなので、銀薄膜中の添加金属の含有率は、銀と添加金属の合計原子数に対する添加金属の割合であり、形成に用いたターゲットの添加金属の含有率と同じ値になる。酸素の含有率は、銀と添加金属と酸素の原子数に対する割合であり、全体の原子に対する割合でもある。以下の添加金属、酸素の含有率も同じである。
【0041】
次に、表1に記載した添加元素を含め、いろいろな元素と酸素を、所望割合で銀薄膜に添加し、上記測定条件と同じ条件で硫化耐性試験と恒温恒湿試験とを行った。
その結果を下記表2〜5に示す。各表間で重複して記載された測定結果もある。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
以上の測定結果により、本発明は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、一種以上の金属を添加金属として、一の銀薄膜に含有させて、銀薄膜を硫化から保護することができる。
【実施例】
【0047】
図3は、本発明のLED装置2cを示している。
このLED装置2cは、透明なLED基板(例えばサファイア基板)61c上に、バッファ層62cと、発光層60cと、透明導電膜66cとが、LED基板61c側からこの順序で形成されており、透明導電膜66cの表面のうち、一部には電極68cが配置され、他の部分には、反射膜40cが配置されている。
【0048】
発光層60cは、バッファ層62c側から、n−GaN層63cと、MQW(多重量子井戸)層64cと、p−GaN層65cとがこの順序で積層されて構成されており、n−GaN層63cの一部は露出されており、その部分には、電極69cが形成されており、電極68c、69c間に電圧を印加して、発光層60cが発光する。ここでは、MQW(多重量子井戸)層64cが発光する。
【0049】
発光光のうち、LED基板61cに向かって放出された発光光は、LED基板61cを透過して放射され、反射膜40cに向かった発光光は、反射膜40cで反射され、LED基板61cに向かって進行し、LED基板61cを透過して外部に放出される。
【0050】
また、図4は、本発明の太陽電池2dを示している。
この太陽電池2dは、透明な太陽電池基板(例えばガラス基板)71dの表面に、透明電極層72dと、発電層70dと、反射膜40dとが、この順序で形成されており、表面に位置する太陽電池基板71dから太陽電池2dの内部に入射した太陽光は、発光層70d内に入射し、光電気変換によって発電される。
【0051】
発光層70dは、透明電極層72d側から、p型層73dと、i型層74dと、n型層75dと、バッファ層76dとがこの順序で形成されて構成されており、発電層70d内に入射した太陽光は、p型層73d乃至n型層75dを透過し、反射膜40dに入射する。
【0052】
入射した太陽光は反射膜40dで反射され、発電層70d内に入射して発電される。
反射膜40dは電極として機能しており、発電によって発生された電圧は透明電極層72dと反射膜40dから外部に取り出される。
【0053】
以上のLED装置2cと太陽電池2dについても、反射膜40c〜40dは、上記トップエミッション型の有機EL表示装置2a、2bで説明した反射膜40a、40bと同じ構造であり、また、添加剤と酸素の含有率も同じ範囲であるので、硫化による反射率の低下が小さい。
【符号の説明】
【0054】
2a、2b……有機EL表示装置
2c……LED装置
2d……太陽電池
13……第一の導電性酸化物薄膜
14……銀薄膜
15……第二の導電性酸化物薄膜
36a、36b、36e……有機EL膜
40a〜40d……反射膜
60c……発光層
70d……発電層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光電流が通電されて発光光を放射する有機EL膜と、
前記有機EL膜への通電を制御する半導体素子を有する本体基板と、
前記有機EL膜の前記発光光を反射する反射膜とを有する有機EL表示装置であって、
前記反射膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と前記添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する銀薄膜を有する有機EL表示装置。
【請求項2】
前記添加金属は、銀と前記添加金属の合計原子数の2.0原子%以下の範囲で含有された請求項1記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素から成る請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記反射膜は、第一の導電性酸化物薄膜を有し、前記第一の導電性酸化物薄膜は片面が前記本体有機EL膜と密着し、反対側の面が前記銀薄膜と密着された請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記反射膜は、前記本体基板と前記有機EL膜の間に配置され、前記有機EL膜から前記本体基板側に放射された発光光を、前記有機EL膜に向けて反射させるように配置された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記反射膜は、第二の導電性酸化物薄膜を有し、前記第二の導電性酸化物薄膜は片面が前記本体基板と密着し、反対側の面が前記銀薄膜と密着された請求項5記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記半導体素子と前記有機EL膜との間は前記反射膜で電気的に接続され、
前記反射膜には、前記発光電流が流される請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
発光層と、
反射膜とを有し、
前記発光層が放射した発光光を前記反射膜で反射させ、前記発光層を透過させるLED装置であって、
前記反射膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と前記添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する銀薄膜を有するLED装置。
【請求項9】
前記添加金属は、銀と前記添加金属の合計原子数の2.0原子%以下の範囲で含有された請求項8記載のLED装置。
【請求項10】
前記添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素から成る請求項8又は請求項9のいずれか1項記載のLED装置。
【請求項11】
電極層と、
入射光で発電する発電層と、
前記電極層と前記発電層との間に配置され、前記光電気層を透過した光を前記発電層に反射する反射膜とを有し、
前記反射膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と前記添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する銀薄膜を有する太陽電池。
【請求項12】
前記添加金属は、銀と前記添加金属の合計原子数の2.0原子%以下の範囲で含有された請求項11記載の太陽電池。
【請求項13】
前記添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素から成る請求項11又は請求項12のいずれか1項記載の太陽電池。
【請求項14】
光を反射する反射膜であって、
前記反射膜は、銀以外の金属で酸化物を形成する添加金属を、銀と前記添加金属の合計原子数に対して0.5原子%以上含有し、酸素を、銀と前記添加金属と酸素の合計原子数に対して0.5原子%以上20原子%以下の範囲で含有する銀薄膜を有する反射膜。
【請求項15】
前記添加金属は、銀と前記添加金属の合計原子数の2.0原子%以下の範囲で含有された請求項14記載の反射膜。
【請求項16】
前記添加金属は、Ca、Mg、Al、Ti、Zr、Ni、V、Nb、Ta、Mo、W,Mn、In、Sn、Zn、La、Ce、Nd、Tb、Dyから成る元素のうち、いずれか一種の元素又は二種以上の元素から成る請求項14又は請求項15のいずれか1項記載の反射膜。
【請求項17】
前記反射膜は、前記銀薄膜が、第一の導電性酸化物薄膜と第二の導電性酸化物薄膜の間に接触して挟まれている請求項14乃至請求項16のいずれか1項記載の反射膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105546(P2013−105546A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246945(P2011−246945)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】