説明

有機EL表示装置およびその駆動方法

【課題】平均発光輝度を維持しつつ、瞬間発光輝度を低減させて有機ELの輝度劣化を低減する。
【解決手段】1フレーム分の画像データに対し、有機ELパネル30において信号線と交わるM本の各走査線のうち、データが同じ走査線の場所を1フレーム毎に判定する手段(130)を有し、この手段にて取得された走査線の場所を出力する画像判定部43と、画像判定部43から入力された走査線の情報に基づき、各走査線を駆動するデューティ数をMからM’に小さくして、走査期間を相対的に引き延ばすと共に、m本の走査線を同時に走査する際に信号線に与える電流信号を電流値を可変させる駆動データ生成部44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機ELパネルで画像表示する表示装置では、画像表示の際、有機ELである発光素子に大きな瞬間発光輝度が必要であるため、発光素子の経年劣化に応じた輝度低下が促進されてしまうという問題点があった。
【0003】
そこで、有機ELパネルにおいて画像表示する際、部分的に高輝度表示を行うことで、瞬間発光輝度を低下させずに画像表示を行う表示装置が特許文献1で提案されている。具体的に、特許文献1では、マトリクス状に配置された複数本数ずつの陽極線および陰極線の各交点に発光素子が形成された有機ELパネルと、ロウドライバを介して走査線(陰極線)を周期的に走査しながら任意の信号線(陽極線)にカラムドライバを介して電流信号を与え、走査線と陰極線との交点位置に形成された発光素子を発光させる制御回路と、を備えて構成される有機EL表示装置が提案されている。
【0004】
このような有機EL表示装置において、制御回路は、走査線の1走査周期において駆動対象の発光素子が存在しない走査線がある場合に、当該発光素子が存在しない走査線についての走査を禁止することにより、1走査周期当たりの走査線数を低減させて駆動対象の発光素子が存在する走査線についての走査期間を相対的に引き延ばす制御を行う。これにより、印加電流を上げることなく、瞬間発光輝度を変化させずに有機ELパネルの部分的な高輝度発光表示を行うようになっている。
【特許文献1】特開2005−156960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように、発光素子である有機ELは発光することにより輝度劣化を生じてしまう。この輝度劣化は、瞬間発光輝度が高いほど大きくなるため、上記従来の技術のように瞬間発光輝度を変化させないとしても、高い瞬間発光輝度が維持されたままである。したがって、従来技術では有機ELの輝度劣化が起こり、輝度寿命も低下してしまう可能性がある。そこで、瞬間発光輝度を下げて画像表示することが考えられるが、瞬間発光輝度の低下に伴って、有機ELパネル全体の輝度(平均発光輝度)が低下してしまい、画像が見にくくなってしまう可能性がある。したがって、単に瞬間発光輝度を下げる制御は好ましくない。
【0006】
なお、有機ELは有機材料でもあるので温度にも弱く、例えば100℃を超える状況では輝度劣化が増大することが知られている。具体的には、パネル温度が100℃を超える場合は使用している有機材料の分子鎖の一部が分子運動をし始めるため、有機薄膜が物理的に変質するためである。さらには輝度寿命だけでなく、局所的に上下間電極が近接し、上下電極間の短絡が発生する場合が生じるので好ましくない。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、平均発光輝度を維持しつつ、瞬間発光輝度を低減させて有機ELの輝度劣化を低減することができる有機EL表示装置およびその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴では、画像の1フレーム分の画像データにおいて、信号線と交わるM本の各走査線のうち、この信号線に電流信号を与えるデータ(状態)が同じ走査線(同じ発光素子を発光させる走査線)がm本存在する場合、各走査線を駆動するデューティ数をMからM’に小さくして、信号線上に発光素子が存在する走査線に対する走査期間を相対的に引き延ばすと共に、信号線に電流信号を与える際、m本(2本以上)の走査線を同時に走査する。
【0009】
このように、信号線上と交わるm本の走査線に応じてデューティ数をMからM’に小さくすることにより、同時に走査するm本の走査線の走査期間を長くする。これにより、M本の全走査線を独立して走査する際の各走査線における瞬間発光輝度(A1)よりも、m本を同時に走査する際の各走査線における瞬間発光輝度(A2)を下げることができる。また、デューティ数をMよりも小さいM’としているので、m本の走査線を同時に走査した際の平均発光輝度(A2/M’)を、M本の全走査線を走査した際の平均発光輝度(A1/M)以上に維持することができる。したがって、平均発光輝度を維持しつつ瞬間発光輝度を低減でき、ひいては発光素子の輝度寿命を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の第2の特徴では、画像の1フレーム分の画像データにおいて、信号線と交わるM本の各走査線のうち、この信号線に電流信号を与えデータ(状態)が同じ走査線がm本存在する場合、各走査線を駆動するデューティ数をMからM’に小さくし、M本の走査線すべてをデューティ数Mで駆動する場合、M本の走査線すべてをデューティ数Mで駆動する際の平均発光輝度A1/Mとm本の走査線を同時に走査したときの平均発光輝度A2/M’とが(A2/M’)≧(A1/M)の関係を満たす電流信号を一信号線に与える。
【0011】
このようにすれば、m本の走査線を同時に走査する場合の平均発光輝度A2/M’を、M本すべての走査線を走査する場合の平均発光輝度A1/M以上とすることができる。また、m本の走査線を同時に走査する場合、A2/M’およびM’<Mの関係から瞬間発光輝度A2の値を小さくすることができ、輝度劣化の防止を図ることができる。したがって、瞬間発光輝度A2を低下させつつ、平均発光輝度を維持でき、ひいては発光素子の輝度寿命を向上させることができる。
【0012】
このような方法では、m本の走査線を同時に走査する際、少なくとも互いに隣り合う2本以上の走査線を同時に走査することができる。
このように、m本の走査線を同時に走査する際、m本すべてを同時に走査するのではなく、m本のうち2本以上の組を設けて2本以上の走査線を同時に走査することもできる。なお、2本以上の各組をそれぞれ同時に走査しても構わない。
【0013】
また、画像データが撮影手段で撮影されたものである場合、M本の走査線すべてを独立して走査し、画像データが撮影手段で撮影されたものでない場合、M本の走査線から同時に走査するm本の走査線の場所を1フレーム毎に判定してm本の走査線を同時に走査する。
【0014】
このように、カメラ等の撮影手段で撮影されたカメラ画像のように解像度を必要とする画像を表示する場合、すべての走査線を走査することにより、画像表示の見栄えを確保できる。また、カメラ画像ではなく警告画像等の表示の場合(表示する画像の解像度を必要としない場合)、すべての走査線を走査する必要はないため、走査する走査線の数を減らし、同時に走査することにより、平均発光輝度を維持しつつ瞬間発光輝度を下げることができる。
【0015】
また、有機ELパネルの温度が100℃を超える場合、有機ELパネルの温度が100℃を超えないように、一信号線に与える電流信号を調整する。
【0016】
このように、有機ELパネルの温度が100℃を超えないようにすることにより、温度に応じて起こる輝度劣化の防止を図ることができる。このような場合、例えば温度検出部(31)にて有機ELパネルの温度に応じた物理量を測定し、温度判定部(45)でその物理量に相当する温度を求め、その温度が100℃を超える場合、駆動データ生成部(44)にて一信号線に与える電流信号を下げる制御を行うようにすれば良い。
【0017】
なお、パネルにおいて発光素子の近くだけでなく、取り出し配線部の温度で判断してもよい。また、駆動回路部、特にドライバICの温度で判断しても良い。このように、ドライバICでパネルの温度を推測できる。有機ELパネルの場合は、表示データにより発熱に分布ができる場合はあり、正確に測れない可能性があるが、ドライバICの場合は、電流が必ずそこをとおり集中しているため、温度検出部を複数用意することも不要である。
【0018】
本発明の第3の特徴では、1フレーム分の画像データにおいて、信号線と交わるM本の各走査線のうち、この信号線に電流信号を与えるデータ(状態)が同じ走査線の場所を1フレーム毎に判定する手段(130)を有し、この手段にて判定された走査線の場所を出力する画像判定部(43)と、画像判定部から入力された走査線に基づき、各走査線を駆動するデューティ数をMからM’に小さくして、信号線上に発光素子が存在する走査線に対する走査期間を相対的に引き延ばすと共に、m本の走査線を同時に走査する際に信号線に電流信号を与える電流値を可変させる駆動データ生成部(44)と、を備える。
【0019】
このような構成により、走査線のすべての数Mをそれよりも小さいM’に減少させることができ、瞬間発光輝度を下げる制御を可能にすることができる。
【0020】
この場合、画像判定部は、画像データが撮影手段で撮影されたものであるか否かを判定する画像判定手段(110)と、画像判定手段によって画像データが撮影手段で撮影されたものでないと判定された場合、M本の走査線から同時に走査する前記m本の走査線を取得する走査線の場所を1フレーム毎に取得する手段(130)と、を有する構成であることが望ましい。
【0021】
また、駆動デューティ生成部は、温度判定部(45)から入力される温度が100℃を超える場合、有機ELパネルの温度が100℃を超えないように一信号線に与える電流信号を調整する。
【0022】
これにより、温度に応じて生じる発光素子の輝度劣化の防止を図ることが出来る。
【0023】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、以下で示される有機EL表示装置は、例えば車両に搭載され、カメラ(本発明の撮影手段に相当)で撮影した映像(すなわち複数の画像)やウォーニング画像等を表示するものとして用いられる。
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置のブロック図である。この図に示されるように、有機EL表示装置S1は、電源回路10と、駆動回路20と、有機ELパネル30と、制御回路40と、を備えて構成されている。
【0027】
電源回路10は、制御回路40および駆動回路20をそれぞれ駆動するための一定電圧を生成するものである。すなわち、電源回路10は、例えば車両に搭載された車両用バッテリから入力した電圧から、駆動回路20や制御回路40で必要となる一定電圧を生成し、駆動回路20および制御回路40にそれぞれ出力する。
【0028】
駆動回路20は、制御回路40(より具体的には後述する駆動データ生成部44)から入力される指令に基づいて有機ELパネル30に画像表示を行うものであり、有機ELパネル30に電流信号を与えるカラムドライバ21および走査線信号を与えるロウドライバ22を備えて構成されている。本実施形態では、駆動回路20は、1フレームを例えば120Hzの周期で駆動表示する。なお、有機ELパネル30に表示させた画像が人の目に点滅して(ちらついて)見えないようにするため、90Hz以上で駆動表示することが望ましい。
【0029】
有機ELパネル30は、画像表示のための画面となるものであり、上記駆動回路20のカラムドライバ21およびロウドライバ22の駆動によって画像表示を行うものである。このような有機ELパネル30には、マトリクス状に配置された複数本数ずつ(例えばM×N本:M、Nは2以上の整数)の陽極線および陰極線の各交点に発光素子が形成されており、陽極線および陰極線の一方(例えば陰極線)が走査線とされ、他方(例えば陽極線)が信号線とされている。
【0030】
上記のような有機ELパネル30の駆動時には、M本の走査線を駆動回路20内のロウドライバ22により周期的に走査しながら、N本の信号線のうち所望の信号線に駆動回路20内のカラムドライバ21から電流信号を与え、それら走査線および信号線の交点位置に形成された発光素子を発光させることにより画像表示を行う。
【0031】
制御回路40は、外部から入力される画像データを処理して上記駆動回路20に出力するものであり、画像データ受信部41と、画像メモリ42と、画像判定部43と、駆動データ生成部44と、を備えて構成されている。
【0032】
画像データ受信部41は、外部装置(例えば画像処理回路、カメラ等)から画像データを入力するものである。この画像データは、有機ELパネル30に対応したM行×N列分のデータであり、本実施形態では2値画像のためのオン/オフ階調のデータである。この画像データ受信部41に入力された画像データは、記憶媒体である画像メモリ42に格納される。
【0033】
画像判定部43は、M行で構成される画像の1フレーム分の画像データにおいて、画像がウォーニング画像等のものであるのかまたはカメラで撮影されたものであるのかを判定する機能や、1フレームを画像表示するに際し、走査線M本のうちどこの走査線を同時に走査するかを判定する機能を有するものである。また、この画像判定部43には、画像データ受信部41に入力された画像データがカメラ画像のものであることを示す外部信号が入力されるようになっており、画像判定部43は、この外部信号の入力に基づいて、画像データがカメラ画像のものであるか否かを判定するようになっている。
【0034】
具体的に、画像判定部43は、画像メモリ42から1フレーム分の画像データを読み出し、外部信号の入力を判定基準として、1フレーム分の画像データがウォーニング画像等の画像であるのか、またはカメラ画像であるのかを判定する。本実施形態では、外部信号として、例えばシフトポジション(R、Dなど)を示す信号、ナイトビューの動作信号、NTSC信号(ビデオ信号)等の信号が画像判定部43に入力されるようになっている。
【0035】
例えば、シフトポジションを示す信号において、ギアがRになっている場合の信号が画像判定部43に入力された場合、有機EL表示装置S1はバックモニタとして機能するため、車両の後方の景色が撮影された画像データが画像データ受信部41に入力されることとなる。したがって、画像判定部43は、Rのシフトポジションを示す信号が入力された場合、画像データがカメラ画像のものであると判定する。また、ナイトビューの動作信号が入力された場合、カメラで車両前方が撮影された画像データが画像データ受信部41に入力されるため、画像判定部43は画像データがカメラ画像のものであると判定する。このように、画像判定部43に外部信号が入力された場合、画像判定部43は画像データ受信部41に入力された画像データはカメラ画像のものであると判定する。
【0036】
また、画像判定部43は、画像データがカメラ画像でない場合(すなわちウォーニング画像等の画像である場合)、M行で構成される1フレーム分の画像データから、一走査線上の発光素子のオン(発光)の信号線の位置が同じ走査線があるか否かを判定し、M本の走査線の中から同時に走査する走査線およびその数M’(<M)を取得する。
【0037】
上記判定によって、カメラ画像を表示させる場合、画像判定部43はカメラ画像の画像データ(走査線の数M)を駆動データ生成部44に出力する。また、ウォーニング画像等の画像を表示させる場合、画像判定部43は、有機ELパネル30のM本の走査線のうち同時に走査する走査線の数mや走査線の位置、対応したウォーニング画像等の画像の画像データを駆動データ生成部44に出力する。
【0038】
駆動データ生成部44は、画像判定部43から入力される走査すべき走査線の数や位置、画像データ(M行×N列分またはm行×N列分、オン/オフ階調)に基づき、駆動回路20を駆動して有機ELパネル30に画像表示させる駆動データ(駆動デューティ比、瞬間発光輝度)を生成するものである。この駆動データ生成部44の作動については、後で詳しく説明する。
【0039】
上記構成を有する制御回路40は、例えばマイクロコンピュータ等で構成される。以上が、本実施形態に係る有機EL表示装置S1の全体構成である。なお、有機ELパネル30、駆動回路20、制御回路40、および電源回路10は例えばモジュール化されている。
【0040】
次に、上記有機EL表示装置S1の作動について、図を参照して説明する。まず、図1に示されるように、有機EL表示装置S1の制御回路40の画像データ受信部41に外部装置から画像データが入力され、この画像データは画像メモリ42に格納される。
【0041】
続いて、画像判定部43にて画像メモリ42に格納された1フレーム分の画像データが読み出される。そして、1フレームを構成するM本の走査線に対し、その数Mを減らして走査することができるか否かが判定される。このことについて、図2を参照して説明する。図2は、制御回路40の画像判定部43において、同時に走査する走査線の数を減らす内容を表すフローチャートである。このフローは、画像判定部43が画像メモリ42に1フレーム分の画像データを読み出した後、スタートする。
【0042】
まず、ステップ110では、画像判定部43に読み出された1フレームの画像データがカメラ画像のものであるか否かが判定される(画像判定手段)。これは、上述のように、外部から外部信号が入力されたか否かによって判定される。そして、画像データがカメラ画像のものである場合、ステップ120に進む。また、画像データがカメラ画像のものでない場合、ステップ130に進む。
【0043】
ステップ120では、上記ステップ110で画像データがカメラ画像であると判定された場合、画像メモリ42から読み出した1フレームの画像データが駆動データ生成部44に出力される。そして、フローチャートは終了する。
【0044】
ステップ130では、ステップ110で画像データがカメラ画像でないと判定された場合、1フレームの画像表示に際し、有機ELパネル30のM本の走査線のうち同時に走査する走査線の場所情報の取得が行われる(走査線判定手段)。
【0045】
具体的には、画像判定部43において、1走査周期分(1フレーム分)の画像データにおけるM本の走査線毎に、走査線上の発光素子のオン(発光)の信号線の位置が同じものがあるかが判定される。すなわち、一信号線と交わるM本の各走査線のうち、この一信号線に電流信号を与えることで発光素子を発光させる走査線があるかが判定される。そして、走査線上の発光素子のオン(発光)の信号線の位置が同じ走査線とその数mのデータが取得される。本ステップにより、M本の走査線で構成される1フレームにおける画像データは、M本よりも少ないM’本で構成されることとなる。
【0046】
このようにして得られた1フレームにおける画像データの走査線数は駆動データ生成部44に出力される。そして、本フローチャートは終了する。
【0047】
次に、駆動データ生成部44では、画像判定部43から入力された画像データや走査線の位置、数に基づいて、駆動回路20を駆動することで有機ELパネル30に画像を表示させるための駆動データが生成される。
【0048】
具体的に、本実施形態では、駆動データとして駆動デューティ比および瞬間発光輝度のデータが生成される。まず、駆動デューティ比を走査すべき走査線の数に応じて決定する。すなわち、カメラ画像を表示する場合では、1フレームのM本の走査線すべてを独立して走査するため、駆動デューティ比は1/Mとなり、1周期における1走査線の駆動時間が1/Mとなる。
【0049】
また、ウォーニング画像等の画像を表示する場合では、上述のように、走査すべき走査線(m本)と走査しない走査線とがあるので、1フレームにおいてM’(<M)本の走査線を走査すれば良い。したがって、駆動デューティ比は1/M’となり、1周期における1走査線の駆動時間が1/M’となる。この駆動時間1/M’は、M本の走査線すべてを走査した場合(1/M)よりも長くなる。このようにして、走査する走査線の数に応じた駆動デューティ比が取得される。
【0050】
そして、1走査線における駆動デューティ比が1/Mの状態(全部の走査線を独立で走査する状態:カメラ画像を表示する駆動方法)での各走査線の瞬間発光輝度をA1とすると共に、m本の走査線を同時に走査させたとき各走査線の瞬間発光輝度をA2(<A1)とする。
【0051】
すなわち、駆動データ生成部44では、上記のようにして画像データの種類(カメラ画像またはウォーニング画像等の画像)に応じてそれぞれ駆動デューティ比が求められる。また、瞬間発光輝度A1、A2は、有機ELを駆動する電流値に比例した物理量であるので、その比例関係から各瞬間発光輝度A1、A2に応じた電流値が求められる。なお、駆動データ生成部44には、瞬間発光輝度と電流値との関係式もしくはデータマップが備えられており、駆動データが取得される際に用いられる。
【0052】
本実施形態では、M本すべての走査線を走査する場合(駆動デューティ比が1/Mの場合)、1走査線の瞬間発光輝度A1は例えば6400cd/mである。したがって、瞬間発光輝度が6400cd/mに応じた電流値が取得される。
【0053】
また、M’本の走査線を走査する場合の一走査線の瞬間発光輝度A2は、平均発光輝度に基づいて、上記瞬間発光輝度A1から次のようにして求められる。平均発光輝度とは、1フレームが表示された際、人が目視する輝度に相当し、駆動デューティ比に瞬間発光輝度を乗じた値に相当する。すなわち、本実施形態では、M本すべての走査線を走査させた場合の平均発光輝度(開口率100%の場合)はA1/Mとなり、M’本の走査線を走査させた場合の平均発光輝度はA2/M’となる。そして、上記M’、Mの関係から、A2/M’≧A1/Mの関係を満たすようにする。
【0054】
例えば、64(=M)本の走査線からなる有機ELパネル30(瞬間発光輝度は6400cd/m=A1)である場合、平均発光輝度は100cd/mとなる。また、画像判定部43によって走査する走査線の数が32(=m)本である場合、M’=M−mとすると上記関係式から、3200cd/m≦A2<6400cd/mとなる。すなわち、m本の走査線を走査する場合の瞬間発光輝度A2は3200cd/m〜6399cd/mであり、その瞬間発光輝度A2に対応した平均発光輝度は100〜199cd/mとなる。
【0055】
つまり、走査する走査線の数がMからmに減少したとしても、M本すべてを独立して走査した場合の平均発光輝度と同じレベルの平均発光輝度を維持することができ、M本すべてを独立して走査したときの一走査線の瞬間発光輝度A1よりも低い瞬間発光輝度A2で発光させることができる。
【0056】
したがって、画像判定部43でウォーニング画像等の画像を表示する判定がなされた場合、駆動データ生成部44では、m本の走査線を同時に走査させたときの1走査線の平均発光輝度が、M本すべてを独立して走査したときの1フレームの平均発光輝度以上となり、かつ、瞬間発光輝度A1よりも低い輝度の瞬間発光輝度A2が取得される。そして、駆動データ生成部44では、このようにして得られた瞬間発光輝度A2に相当する電流信号、すなわち信号線に流すための電流信号が取得される。
【0057】
以上のようにして、駆動データ生成部44でM本またはm本の走査線を走査する場合の駆動デューティ比および瞬間発光輝度に応じた電流信号がそれぞれ駆動データとして取得され、画像データや走査する走査線の位置等のデータと共に出力される。
【0058】
続いて、駆動回路20では、駆動データ生成部44から入力された駆動データ、画像データ等に基づいて、カラムドライバ21から電流信号が出力されると共に、ロウドライバ22から走査信号が出力され、有機ELパネル30が駆動される。これにより、カメラ画像が表示される場合、M本すべての走査線が独立して走査されてカメラ画像が表示される。一方、ウォーニング画像等の画像が表示される場合、M本よりも少ないm本の走査線が同時に走査されてウォーニング画像等の画像が表示される。このようにして、有機ELパネル30にて画像表示がなされる。以上の作動は1フレームごとに繰り返し行われる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、有機ELパネル30が有するM本の走査線群の走査周期において、必要に応じていくつかの走査線m本を同時に駆動させることが特徴となっている。すなわち、走査する走査線の数が、通常時のM本から、駆動対象の発光素子が存在する走査線数M’本まで減少させることで、走査線を駆動するデューティ数をMからM’に小さくする。そして、1走査周期当たりの走査線数を低減させて駆動対象の発光素子が存在する走査線についての走査期間を相対的に引き延ばす制御を行う。
【0060】
このようにして、m本の走査線を走査する場合における平均発光輝度を、M本すべての走査線を走査する場合の平均発光輝度と同等以上にすることにより、M本すべての走査線を走査するときの瞬間発光輝度A1よりも、m本の走査線を走査するときの瞬間発光輝度A2を低下させることができる。したがって、発光素子(有機EL)の輝度劣化を低減することができ、ひいては発光素子の長寿命化を図ることができる。以上のようにして、M本すべての走査線を独立で走査する場合に比べて、有機ELパネル30の見栄えを低下させることなく、有機ELの輝度寿命を向上させることができる。
【0061】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記第1実施形態では、M本すべての走査線をM’本に減少させて同時に走査する実施形態について説明したが、本実施形態では、隣り合う2本の走査線を同時に走査するなど駆動データ生成部44にM本の各走査線に対してあらかじめセットとなる走査線が設定されている。ここで、セットとなる走査線とは、例えば互いに隣り合う走査線同士や、近接する複数本の走査線同士を指す。このような走査線のセットが例えば駆動データ生成部44にあらかじめ設定されている。
【0062】
そして、画像判定部43から入力される走査線のデータに応じて、どの走査線がセットで同時に走査されるかが決められ、その決定に応じて駆動回路20で駆動するためのデータが生成される。
【0063】
以下、有機ELパネル30が256ライン(信号線)×64ライン(走査線)からなり、平均発光輝度が100cd/mの場合の具体例について説明する。画像データがカメラ画像の場合であって、すべての信号線および走査線を独立で駆動し、ウォーニング画像を表示する場合、隣接する2つの走査線を同時に選択しながら駆動する。すなわち、ウォーニング画像では縦2ドットをあたかも1ドットとみなして、256ライン(信号線)×32ライン(走査線)の画像を表示する。そして、すべての信号線および走査線を独立で駆動する場合と2つの走査線を束ねて駆動する場合との発光画素に流す一信号線当たりの電流を同じにしておけば、
・ 駆動デューティ比は、1/64から1/32になる。
・ 瞬間発光輝度A2は、6400cd/mから3200cd/m≦A2<6400cd/mになる
・ 平均発光輝度(開口率100%の場合)は、100cd/mから100cd/m≦(A2/m)<200cd/mになる。
【0064】
このとき、同時に、駆動回路20の定電流設定値を切り替えて3200cd/m≦A2<6400cd/mになるように電流値を下げる。
【0065】
以上のように、ON画素に流す一信号線当たりの電流を同じにしたままで隣接する2つの走査線を同時に走査することで、平均発光輝度を低下させることなく瞬間発光輝度A2を低下させることができ、輝度寿命を向上することができる。
【0066】
以上のように、走査線の数を減らすだけでなく、2本以上の走査線をセットにして同時に走査させるようにすることもできる。このような方法は、解像度を必要としない画像を表示する際に効果的である。なお、2本以上の各組をそれぞれ同時に走査しても構わない。
【0067】
(第3実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。有機EL表示装置S1を構成する有機ELパネル30は、有機材料で構成されているため、熱に弱く劣化しやすい。そこで、本実施形態では、有機ELパネル30の温度を測定して有機材料が急激に劣化しやすくなる温度になった場合、走査線の瞬間発光輝度を最低値に下げることにより、有機材料の温度を下げて輝度劣化を防止することが特徴である。
【0068】
図3は、第3実施形態に係る有機EL表示装置S2のブロック構成図である。この図に示されるように、有機ELパネル30には温度に応じた電圧が生じるサーミスタ31が備えられ、制御回路40には温度判定部45が備えられている。なお、サーミスタ31は、本発明の温度検出部に相当する。
【0069】
この温度判定部45は、サーミスタ31から有機ELパネル30の温度に応じた電圧信号が入力されるようになっており、入力された電圧信号を温度に変換する機能を有している。
【0070】
また、本実施形態では、駆動データ生成部44は、温度判定部45から入力される有機ELパネル30の温度が、−30℃以上100℃以下の範囲内であるか否かを判定する。そして、有機ELパネル30の温度が100℃を超える場合、M本またはm本の走査線において瞬間発光輝度を最低値にする。
【0071】
本実施形態で、有機ELパネル30の温度の上限値を100℃としているのは、この温度を超えると有機ELが急激に劣化する温度だからである。また、下限値を−30℃としているが、実際には−30℃以下でも有機ELは耐えられる。本実施形態では、低温状態で自己発熱することにより、有機ELとしての機能を保証できる温度として下限値を−30℃としている。
【0072】
したがって、本実施形態では、上記第1実施形態のように3200cd/m〜6399cd/mの範囲内で瞬間発光輝度A2を取得する際、温度判定部45から入力される温度が100℃を超える場合では、瞬間発光輝度A2を前記範囲内の最低値である3200cd/mに設定する。
【0073】
これにより、有機ELの発光による温度を低下させ、有機材料の温度を下げることにより、有機ELの輝度劣化の防止を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置のブロック図である。
【図2】画像判定部において、同時に走査する走査線の数を減らす内容を表すフローチャートである。
【図3】第3実施形態に係る有機EL表示装置のブロック構成図である。
【符号の説明】
【0075】
10…電源回路、20…駆動回路、21…カラムドライバ、22…ロウドライバ、30…有機ELパネル、31…サーミスタ、40…制御回路、41…画像データ受信部、42…画像メモリ、43…画像判定部、44…駆動データ生成部、45…温度判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数本数ずつの陽極線および陰極線の各交点に発光素子が形成されており、陽極線および陰極線のうち一方が走査線とされ、他方が信号線とされた有機ELパネル(30)に対し、走査線の数をMとし、信号線の数をNとしたとき、M本の走査線を周期的に走査しながら、N本の信号線のうち所望の信号線に電流信号を与え、それら走査線および信号線の交点位置に形成された発光素子を発光させることにより画像表示を行う有機EL表示装置の駆動方法であって、
画像の1フレーム分の画像データにおいて、信号線と交わるM本の各走査線のうち、この信号線に電流信号を与えるデータが同じ走査線がm本存在する場合、各走査線を駆動するデューティ数をMからM’に小さくして、前記一信号線上に発光素子が存在する走査線に対する走査期間を相対的に引き延ばすと共に、前記一信号線に電流信号を与える際、前記m本の走査線を同時に走査することを特徴とする有機EL表示装置の駆動方法。
【請求項2】
マトリクス状に配置された複数本数ずつの陽極線および陰極線の各交点に発光素子が形成されており、陽極線および陰極線のうち一方が走査線とされ、他方が信号線とされた有機ELパネル(30)に対し、走査線の数をMとし、信号線の数をNとしたとき、M本の走査線を周期的に走査しながら、N本の信号線のうち所望の信号線に電流信号を与え、それら走査線および信号線の交点位置に形成された発光素子を発光させることにより画像表示を行う有機EL表示装置の駆動方法であって、
画像の1フレーム分の画像データにおいて、信号線と交わるM本の各走査線のうち、この一信号線に電流信号を与えるデータが同じ走査線がm本存在する場合、各走査線を駆動するデューティ数をMからM’に小さくし、M本の走査線すべてをデューティ数Mで駆動する場合、M本すべての走査線をそれぞれ独立して走査したときの一走査線における瞬間発光輝度をA1とすると共にM本の走査線すべてをデューティ数Mで駆動する際の平均発光輝度をA1/Mと定義し、m本の走査線を同時に走査したときのデューティ数をM’とし一走査線における瞬間発光輝度をA2とし、平均発光輝度をA2/M’と定義したとき、前記m本の走査線を同時に走査したときの平均発光輝度A2/M’が(A2/M’)≧(A1/M)の関係を満たす電流信号を前記一信号線に与えることを特徴とする有機EL表示装置の駆動方法。
【請求項3】
少なくとも互いに隣り合う2本以上の走査線を同時に走査することを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置の駆動方法。
【請求項4】
マトリクス状に配置された複数本数ずつの陽極線および陰極線の各交点に発光素子が形成されており、陽極線および陰極線のうち一方が走査線とされ、他方が信号線とされた有機ELパネル(30)に対し、走査線の数をMとし、信号線の数をNとしたとき、M本の走査線を周期的に走査しながら、N本の信号線のうち所望の信号線に電流信号を与え、それら走査線および信号線の交点位置に形成された発光素子を発光させることにより画像表示を行う有機EL表示装置であって、
画像の1フレーム分の画像データにおいて、信号線と交わるM本の各走査線のうち、この信号線に電流信号を与えるデータが同じ走査線が同じとなる走査線の場所を1フレーム毎に判定する手段(130)を有し、この手段にて取得された走査線の数をmとして出力する画像判定部(43)と、
前記画像判定部から入力されたm本の走査線に基づき、前記各走査線を駆動するデューティ数をMからM’に小さくして、前記信号線上に発光素子が存在する走査線に対する走査期間を相対的に引き延ばすと共に、前記m本の走査線を同時に走査する際に前記信号線に電流信号を与える電流値を可変させる駆動データ生成部(44)と、を備えることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
前記画像判定部は、前記画像データが撮影手段で撮影されたものであるか否かを判定する画像判定手段(110)と、前記画像判定手段によって前記画像データが撮影手段で撮影されたものでないと判定された場合、前記M本の走査線から同時に走査する前記m本の走査線を取得する走査線取得手段(130)と、を有することを特徴とする請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記有機ELパネルに備えられ、温度に応じたレベルの信号を出力する温度検出部(31)と、
この温度検出手段で検出された信号を温度に変換する温度判定部(45)と、が備えられており、
前記駆動デューティ生成部は、前記温度判定部にて得られた温度が100℃(分子鎖の一部が分子運動をし始める温度)を超える場合、前記有機ELパネルの温度が100℃を超えないように、前記信号線に与える電流信号を調整するようになっていることを特徴とする請求項4または5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記温度検出部が前記有機ELパネルの取り出し電極配線部に接続されたことを特徴とする請求項6記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
電源部を含む駆動回路に温度に応じたレベルの信号を出力する温度検出部(31)と、
この温度検出手段で検出された信号を温度に変換する温度判定部(45)と、が備えられており、前記駆動デューティ生成部は、前記温度判定部にて得られた温度を超える場合、前記一信号線に与える電流信号を調整し判定値以下になるまで電流値を下げることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
前記温度判定部はドライバICに備えたことを特徴する請求項8に記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
前記画像データが、前記撮影手段で撮影されたものであるか否かを判定し、前記画像データが前記撮影手段で撮影されたものである場合、前記M本の走査線すべてを独立して走査し、前記画像データが前記撮影手段で撮影されたものでない場合、前記M本の走査線の中から同時に走査する前記m本の走査線の場所を取得して前記m本の走査線を同時に走査することを特徴とする請求項4ないし9のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項11】
車両の切り替えSWに同期して前記撮影手段を判断することを特徴とする請求項10に記載の有機EL表示装置。
【請求項12】
m本の走査線を同時に走査するのではなく、m本のうち2本以上の組を設け、その組のみで走査することを特徴とする請求項4ないし11のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項13】
1フレーム内に同時に走査する走査線の組が2種類以上あることを特徴とする請求項4ないし12のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項14】
前記データが同じ走査線とは非発光の状態も含むことを特徴とする請求項4ないし13のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項15】
固定画面の場合、画面を切り替えるタイミングの時のみ走査線取得手段(130)を動作させることを特徴とする請求項4ないし14のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項16】
M’=M−mであることを特徴とする請求項4ないし15のいずれか1つに記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−264200(P2007−264200A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87697(P2006−87697)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】