説明

有機EL表示装置および有機EL表示装置の製造方法

【課題】絶縁層に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる有機EL表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る有機EL表示装置は、陽極配線2と交差して、陰極配線用の導電線50b〜50dに接続された接続線4b〜4dと、上記導電線50bおよび接続線4c〜4dの間に形成され、上記導電線50bと接続線4bを接続するためのコンタクトホール32を有する絶縁層3と、絶縁層3および上記導電線50bの間に形成された絶縁保護層7d、7eとを備え、絶縁保護層7d、7eは、少なくとも、陰極配線用の導電線50bと、当該陰極配線用の導電線50bに接続された接続線4b以外の接続線4c、4dとが重なり合う領域S1、S2に、陰極配線用の導電線50b当該絶縁保護層7d、7eの形成領域とこれ以外の領域で分離されるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)表示装置および有機EL表示装置の製造方法に関し、例えば、基板上に設けられた複数の陽極配線と複数の陰極配線の各交差部で有機化合物層を挟持し、引き回し線などを用いて、複数の陽極配線および陰極配線が基板の一辺側に引き回された有機EL表示装置および有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FPD(Flat Panel Display)として有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置は自発光表示素子であり、液晶表示装置と比較して視野角が広く、バックライトが不要なため薄型化が可能である。また、応答速度も速く、有機化合物が有する発光特性の多様性から、次世代の表示装置として期待されている。
【0003】
有機EL表示装置は、画素となる有機EL素子が基板上に複数配置されて構成される。例えば、パッシブ型の有機EL表示装置は、基板上にストライプ状に配列された陽極配線と、この陽極配線上に積層され、開口部を有する絶縁層と、この絶縁層上に積層された有機化合物層と、この有機化合物層上に積層して、絶縁層の開口部の位置で陽極配線に交差するようにストライプ状に配列された陰極配線を備えた構造となっている。絶縁層の開口部内、すなわち陽極配線および陰極配線の交差部に、発光素子としての画素が形成されている。有機EL表示装置は、このような画素がマトリックス状に配列されることにより構成されている。
【0004】
また、陽極と陰極の間に電圧を印加すると、陽極からは正孔が、陰極からは電子が、それぞれ有機化合物層に注入されて、有機発光層で再結合し、その際に生じるエネルギーにより有機発光層に含まれる有機発光性化合物の分子が励起され、励起子が生成される。このようにして生成された励起子が基底状態に失活する過程で発光現象が生じる。
【0005】
近年、有機EL表示装置の小型化、軽量化の要求に伴って、有機EL素子基板の外形寸法や表示領域以外の寸法を最小限に抑えるため、陽極配線及び陰極配線が引き回し線などを用いて、有機EL素子基板の一辺に引き回された有機EL表示装置が知られている。
図7は、従来の有機EL表示装置100Aの構成を示す図であって、電極が形成される側から基板を観察した状況を示す模式図である。なお、図7では封止基板10および捕水剤11を省略している。A〜Dは基板1の各頂点を示している。図8は、図7のW−W切断線における断面図である。
【0006】
図7に示されるように、複数の陽極配線2と陰極配線5Aa〜5Adが互いに直交するように基板1上に形成されている。複数の陽極配線2が基板1の辺BC側に引き出されている。また、各陰極配線5Aa〜5Adの端部には接続線4a〜4dが接続されており、これら複数の接続線4a〜4dは複数の陽極配線2と同じように、基板1の辺BC側に引き出されている。図8に示されるように、各接続線4a〜4dは、絶縁層3のコンタクトホール32内の接続部9で、各陰極配線5Aa〜5Adに電気的に接続されている。
【0007】
図7に示されるように、陰極配線5Aa〜5Adを蒸着する際に隣り合う陰極配線が分離されるように、隣り合う陰極配線の間に隔壁6が設けられている。絶縁層3の開口部31は、陽極配線2と陰極配線5Aa〜5Adの交差部に形成されている。図8に示されるように、この交差部では、有機化合物層8が陽極配線2および陰極配線5Aa〜5Adの間で挟持されている。図8に示されるように、基板1には封止基板10がシール材12により貼り合わされている。封止基板10の凹部10aには、保水剤11が塗布されている。
【0008】
ここで、蒸着により陰極配線5Aa〜5Adを基板1上に形成する際に、蒸着用マスクの配置ずれなどが原因で、コンタクトホール32内に陰極配線5Aa〜5Adの金属材料が蒸着されず、陰極配線5Aa〜5Adと接続線4a〜4dがコンタクトホール32内で接続されない場合がある。このため、基板1上のコンタクトホール32の周囲領域にも、陰極配線5Aa〜5Adの金属材料を蒸着するのが一般的である。また、有機EL表示装置100Aの小型化に伴って、各接続線4a〜4dは表示領域Vの外周縁側に配置されている。この結果、図7および図8に示されるように、陰極配線5Aa〜5Adと接続線4a〜4dがコンタクトホール32内の接続部9以外の領域で重なり合う傾向がある。
【0009】
特許文献1では、基板上に設けられた複数の陽極配線(アノード電極)と複数の陰極配線(カソード電極)の各交差部で有機化合物層(有機発光層)を挟持し、引き回し線(第1及び第2ライン)などを用いて、複数の陽極配線および陰極配線が基板の一辺側に引き回された有機EL表示装置の技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−004942号公報(特に、段落0004〜0007、図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7および図8に示される従来の有機EL表示装置100Aを製造する過程において、基板1上に絶縁材料からなる絶縁層3を形成した後に、フォトマスクを使用して、当該絶縁層を露光するなどのフォトリソグラフィー法により、絶縁層に開口部31およびコンタクトホール32を形成する。
【0011】
しかしながら、フォトマスクにゴミなどが付着していた場合、フォトマスクに付着していたゴミなどが絶縁層上に付いてしまう。そして、この状態で絶縁層を露光することによって、絶縁層3内にピンホールが形成されてしまう場合があった。図7および図8に示されるように、特に、陰極配線5Abと当該陰極配線5Abに接続されている接続線4b以外の接続線4c、4dが重なり合う領域R1およびR2内に、ピンホールP1、P2が形成されてしまうと、陰極配線5Aa〜5Adの金属材料が絶縁層3上に蒸着されることで、陰極配線5Abと、当該陰極配線5Abに接続されている接続線4b以外の接続線4c、4dとの間で導通してしまい、リークによる接続不良が生じる場合があった。なお、絶縁層3内に形成されるピンホールP1、P2は、基板1に対して略鉛直に形成される。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、絶縁層に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる有機EL表示装置および有機EL表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る有機EL表示装置は、矩形板状に形成された基板と、基板上に基板の一辺に対して略垂直に形成された複数の第1の導電線と、基板上に複数の第1の導電線と交差するように形成された複数の第2の導電線と、複数の第2の導電線にそれぞれ接続され、基板の一辺側に引き出された複数の接続線と、第1および第2の導電線の間であって、第1および第2の導電線の交差部に形成された有機化合物層と、複数の第2の導電線および複数の接続線の間に形成され、複数の第2の導電線と複数の接続線をそれぞれ接続するための開口孔を有する絶縁層と、絶縁層および第2の導電線の間に形成された絶縁保護層とを備え、絶縁保護層は、少なくとも、第2の導電線と、当該第2の導電線に接続された接続線以外の接続線とが重なり合う領域に、第2の導電線が当該絶縁保護層の形成領域とこれ以外の領域で分離されるように形成されていることを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、絶縁層に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる。
【0014】
ここで、絶縁保護層は、第2の導電線の延在方向に沿って切断したときの切断面の形状が、基板から離れるにつれて広がるように形成されていることが、好ましい。
このことにより、第2の導電線を、絶縁保護層の形成領域とこれ以外の領域で、確実に分離できる。
【0015】
また、複数の第2の導電線のうち、隣り合う第2の導電線の間に、隣り合う第2の導電線が分離されるように形成された隔壁を備え、絶縁保護層と隔壁は同一材料により形成されている。これにより、簡単に、絶縁層に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる。また、絶縁保護層は表示領域の外側に形成されている。
【0016】
本発明に係る有機EL表示装置の製造方法は、矩形板状の基板上に基板の一辺に対して略垂直に複数の第1の導電線を形成するステップと、複数の第1の導電線と交差するように、複数の第2の導電線を基板上に形成するステップと、上記複数の第2の導電線にそれぞれ接続され、上記基板の上記一辺側に引き出された複数の接続線を形成するステップと、第1および第2の導電線の間であって、第1および第2の導電線の交差部に有機化合物層を形成するステップと、複数の第2の導電線および複数の接続線の間に、複数の第2の導電線と複数の接続線をそれぞれ接続するための開口孔を有する絶縁層を形成するステップと、絶縁層および第2の導電線の間に絶縁保護層を形成するステップとを含み、絶縁保護層を形成するステップでは、少なくとも、第2の導電線と、当該第2の導電線に接続された接続線以外の接続線とが重なり合う領域に、第2の導電線が当該絶縁保護層の形成領域とこれ以外の領域で分離されるように、絶縁保護層を形成することを特徴とする。
このような製造方法を採用することにより、絶縁層に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる。
【0017】
ここで、絶縁保護層を形成するステップでは、第2の導電線の延在方向に沿って切断したときの切断面の形状が、基板から離れるにつれて広がるように、絶縁保護層を形成するのが、好ましい。このようにすることにより、第2の導電線を、絶縁保護層の形成領域とこれ以外の領域で、確実に分離できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、絶縁層に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置について、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を示す図であって、電極が形成される側から基板を観察した状況を示す模式図である。なお、図1では封止基板および捕水剤を省略している。図2は図1のX−X切断線における断面図である。図3は図1のY−Y切断線における断面図である。
【0020】
図1、図2および図3に示されるように、有機EL表示装置100は、基板1上に、第1の導電線としての陽極配線2、絶縁層3、接続線4a〜4d、第2の導電線としての陰極配線用の導電線50a〜50d、各陰極配線用の導電線50a〜50dを構成する陰極配線51と陰極配線の残余の導電線52、隔壁6、絶縁保護層7a〜7f、有機化合物層8等が形成されて構成されている。
【0021】
図1、図2および図3に示されるように、基板1は矩形板状に形成されている。基板1には例えば透明なガラス基板が用いられる。ここで、図1に示されるように、便宜上、基板1の各頂点をA〜Dとする。複数の陽極配線2が、基板1の辺BCに対して略垂直なストライプ状に基板1の表面に接して形成されている。図1に示されるように、複数の陽極配線2は基板1の辺BC側に引き出されている。各陽極配線2の材料には、例えばITO(Indium Tin Oxide)が用いられる。
【0022】
図1および図3に示されるように、複数の接続線4a〜4dが基板1の表面に接して形成されている。複数の接続線4a〜4dは、複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dの複数の陰極配線51にそれぞれ接続され、基板1の辺BC側に引き出されている。接続線4a〜4dは、陰極配線51の本数に対応して形成されている。図3に示されるように、複数の接続線4a〜4dは、複数の陰極配線51のそれぞれに、絶縁層3に設けた開口孔としてのコンタクトホール32を介して接続されている。図3に示されるように、コンタクトホール32は、複数の陰極配線51と複数の接続線4a〜4dをそれぞれ接続するために、絶縁層3内に形成されている。接続線4a〜4dの材料には、例えばITO(Indium Tin Oxide)が用いられる。
【0023】
図1、図2および図3に示されるように、陽極配線2および接続線4が形成された基板1上に積層して、開口部31およびコンタクトホール32を有する絶縁層3が形成されている。図2および図3に示されるように、この絶縁層3は、複数の陽極配線2および複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dの間に形成されている。開口部31は、陽極配線2と陰極配線51との交差部に設けられている。図1に示されるように、コンタクトホール32は、隣り合う隔壁6の間であって、接続線4a〜4dの引き出されている側に形成されている。また、図3に示されるように、各陰極配線51と各接続線4a〜4dは、コンタクトホール32内の接続部9で接続されている。また、表示領域Vは、マトリクス状に配列された複数の開口部31が形成される領域とされている。
【0024】
また、図1および図2に示されるように、隔壁6が基板1の辺BCに対して略平行なストライプ状で絶縁膜3上に形成されている。すなわち、隔壁6は陽極配線2と略直交するように形成されている。隔壁6が有機化合物層8や陰極配線形成用の導電線50a〜50dを分離することにより、隔壁6間に有機化合物層8が形成され、ストライプ状に配設された複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dが形成される。
【0025】
図2に示されるように、隔壁6は逆テーパ形状に形成されている。すなわち、当該隔壁6の延在方向に対して略垂直方向に切断したときの切断面の形状が、基板1から離れるにつれて広がるように形成されている。このように、隔壁6を逆テーパ形状にすることにより、隔壁6の側面および立ち上がり部分が影となり、製造工程において、複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dを空間的に分離することができる。
絶縁保護層7a〜7fについては、後で詳細に説明する。
【0026】
図1、図2および図3に示されるように、有機化合物層8が絶縁層3上に積層して形成されている。図3に示されるように、有機化合物層8は、陽極配線2および陰極配線51の間に形成されている。詳細は図示しないが、有機化合物層8は、例えば、基板1の表面上に、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層および電子注入層が順次積層されて形成される。なお、有機化合物層8はこれとは異なる構成を有する場合もある。また、陽極および陰極の間で挟持される有機化合物層を複数層からなるものとして説明したが、陽極および陰極の間で挟持される有機化合物層を単層で構成してもよい。
【0027】
図1に示されるように、複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dは、複数の隔壁6の間にストライプ状に形成されている。すなわち、各陰極配線形成用の導電線50a〜50dは、陽極配線2に対して略垂直に形成されている。図3に示されるように、複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dは、後述の絶縁保護層7a〜7fにより、当該絶縁保護層7a〜7fの形成領域とこれ以外の領域とで分離され、この結果、複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dが、陰極配線51と、陰極配線の残余の導電線52とに分けられている。
【0028】
図3に示されるように、陰極配線51は、陽極配線2との交差部との間で有機化合物層7を挟持するように、有機化合物層8上に積層して形成される。陰極配線形成用の導電線50a〜50dの材料には、通常はアルミニウムAlまたはアルミニウム合金が用いられており、蒸着法により有機化合物層8上に形成される。陰極配線形成用の導電線50a〜50dを蒸着法により形成する際、隔壁6が陰極配線形成用の導電線50a〜50dを所望のパターンに分離する。なお、AlやAl合金の他に、Li等のアルカリ金属、Ag、Ca、Mg、Y、Inやこれらを含む合金を陰極配線形成用の導電線50a〜50dの材料に用いてもよい。
【0029】
図2および図3に示されるように、基板1の有機化合物層8等が配置された面上には、封止基板10が対向するように配置され、基板1上の有機化合物層8等が外気と遮断されるように封止されている。図2に示されるように、封止基板10の基板1との対向側の中央部には凹部10aが形成されている。この凹部10a内に捕水剤11が塗布されている。
【0030】
また、図2および図3に示されるように、封止基板10と基板1とは、封止基板10の外周に塗布されたシール材12により、貼り合わされる。基板1上の有機化合物層8等は、両基板1、10およびシール材12によって封止されることで、空気中の水分にさらされないように保たれる。また、基板1と封止基板10との間の封止空間には、酸素や窒素等の気体が封入されている。
【0031】
次に、絶縁保護層7a〜7fについて、図に基づいて詳細に説明する。図3に示されるように、絶縁保護層7a〜7fは、絶縁層3および陰極配線形成用の導電線50a〜50dの間に形成されている。また、図3に示されるように、絶縁保護層7b、7cは、陰極配線形成用の導電線50dと、当該陰極配線形成用の導電線50bに接続された接続線4b以外の接続線4c、4dとが重なり合う領域S1、S2に形成されており、陰極配線形成用の導電線50bが絶縁保護層7b、7cの形成領域とこれ例外の領域で分離されるように形成されている。
【0032】
絶縁保護層7a、7d〜7fについても、同様に、陰極配線形成用の導電線50a、50c、50dと、当該陰極配線形成用の導電線50a、50c、50dにそれぞれ接続された接続線4a、4c、4d以外の接続線とが重なり合う領域に形成されており、陰極配線形成用の導電線5が絶縁保護層7a、7d〜7fの形成領域とこれ例外の領域で分離されるように形成されている。
【0033】
このように構成したことにより、絶縁層3にピンホールが形成されても、少なくとも、陰極配線形成用の導電線50a〜50dと、当該陰極配線形成用の導電線50a〜50dにそれぞれ接続された接続線4a〜4d以外の接続線とが重なり合う領域上に、絶縁保護層7a〜7fが形成されているため、陰極配線形成用の導電線50a〜50dと、当該陰極配線形成用の導電線50a〜50dにそれぞれ接続された接続線4a〜4d以外の接続線とが、電気的に接続されるのを低減できる。なお、絶縁層3内に形成されるピンホールは、基板1に対して略鉛直に形成されるため、少なくとも、陰極配線形成用の導電線50a〜50dと、当該陰極配線形成用の導電線50a〜50dにそれぞれ接続された接続線4a〜4d以外の接続線とが重なり合う領域上に、絶縁保護層7a〜7fを形成すればよい。
【0034】
また、絶縁保護層7a〜7fを設けることにより、陰極配線形成用の導電線50a〜50dが絶縁保護層7a〜7fの形成領域とこれ以外の領域で分離され、陰極配線形成用の導電線50a〜50dの各々を、陰極配線51と陰極配線以外の残余の導電線52とに分断できる。
このようにして、絶縁層3に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる。
【0035】
ここで、陰極配線形成用の導電線50a〜50dの延在方向に沿って切断したときの切断面の形状が、基板1から離れるにつれて広がるように、絶縁保護層7a〜7fを形成するのが好ましい。例えば、図3に示されるように、陰極配線形成用の導電線50bの延在方向に沿って切断したときの切断面の形状が基板1から離れるにつれて広がるように、絶縁保護層7d、7eを形成する。
このようにすることにより、陰極配線形成用の導電線50a〜50dが、絶縁保護層7a〜7fの形成領域とこれ以外の領域で確実に分離され、陰極配線形成用の導電線50a〜50dの各々を、陰極配線51と陰極配線以外の残余の導電線52とに確実に分断できる。
【0036】
また、絶縁保護層7a〜7fと隔壁6は同一材料により形成されているのが、好ましい。これにより、絶縁保護層7a〜7fと隔壁6を絶縁層3上に簡単に同時に形成することができ、簡単に、絶縁層3に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる。
【0037】
また、図1に示されるように、絶縁保護層7a〜7fは、表示領域Vの外側に配置されている。すなわち、絶縁保護層7a〜7fは、複数の陽極配線2のうち、両端に配置されている陽極配線2よりも外側に設けられている。仮に、絶縁保護層7a〜7fが表示領域Vの内側に配置された場合、表示領域V内で陰極配線形成用の導電線50a〜50dの各々が、陰極配線51と陰極配線以外の残余の導電線52とに分断されてしまう。従って、絶縁保護層7a〜7fを表示領域Vの外側に配置することによって、陰極配線51を表示領域V内で途切れることなく形成することができる。
【0038】
次に、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置を製造する方法について、図に基づいて説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置を製造する手順を示すフロー図である。
図4に示されるように、まず、矩形板状の基板1を準備する(ステップ(STEP:以下、STと称する)401)。基板1には、例えば、ガラスなどの透明基板を用いる。
【0039】
次に、基板1の表面を洗浄した後に、当該基板1上に、陽極配線2および接続線4a〜4dを形成する(ST402)。この際、基板1の辺BCに対して略垂直に配置されるように、陽極配線2を形成する。また、複数の陰極配線51にコンタクトホール32内で接続され、基板1の辺BC側に引き出されるように、複数の接続線4a〜4dを形成する。具体的には、基板1上にITOをスパッタや蒸着により成膜して、成膜されたITO膜に対してエッチィングを施すことによって、陽極配線2および接続線4a〜4dをパターニングする。
【0040】
なお、接続線4a〜4dの材料には、AlやAl合金などの低抵抗金属材料を用いることができる。この場合、例えば、ITO膜をパターニングして陽極配線2を形成した後に、Alなどをスパッタまたは蒸着により成膜する。そして、Al膜をフォトリソグラフィー法などによりパターニングして、接続線4a〜4dを形成する。
【0041】
次に、陽極配線2および接続線4a〜4dが形成された基板1の面上に、開口部31およびコンタクトホール32を有する絶縁層3を形成する(ST403)。この際、複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dと接続線4a〜4dとの間に配置されるように、絶縁層3を形成する。例えば、感光性のポリイミド樹脂の溶液をスピンコーティングにより塗布して、塗布後のポリイミド樹脂膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングして、光反応させて絶縁層3を形成する。このとき、ポリイミド樹脂膜の露光工程で使用する露光マスクの形状は、開口部31およびコンタクトホール32に対応されている。
【0042】
次に、隔壁6および絶縁保護層7a〜7fを形成する(ST404)。具体的には、例えば、基板1上に形成された絶縁層3上に、ノボラック樹脂、アクリル樹脂などの感光性樹脂をスピンコートにより塗布した後、フォトリソグラフィー法により感光性樹脂膜をパターニングして、光反応させて隔壁6および絶縁保護層7a〜7fを形成する。露光マスクの形状を、隔壁6および絶縁保護層7a〜7fの形状に対応させることにより、これらを同時に形成することができる。なお、隔壁6および絶縁保護層7a〜7fを同時形成せずに、フォトリソグラフィー法により感光性樹脂膜を繰り返しパターニングすることによって、隔壁6と絶縁保護層7a〜7fとを別々に形成してもよい。
【0043】
図1に示されるように、複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dが形成される位置の間隙に、複数の陰極配線形成用の導電線50a〜50dと平行になるようにパターニングを行ない、隔壁6を形成する。また、少なくとも、陰極配線形成用の導電線50a〜50dと、当該陰極配線形成用の導電線50a〜50dにそれぞれ接続された接続線4a〜4d以外の接続線とが重なり合う重複領域に配置され、各陰極配線形成用の導電線50a〜50dが絶縁保護層7a〜7fの形成領域とこれ例外の領域で分離されるようにパターニングを行い、絶縁保護層7a〜7fを形成する。
【0044】
なお、ネガ型の感光性樹脂を用いると、露光工程において、隔壁6、隔壁接続部7および隔壁延長部13の下層位置ほど光反応が不十分となり、逆テーパ構造を容易に形成できる。
次に、有機化合物層8を形成する(ST405)。有機化合物の溶液を蒸着する領域に対応した開口を有するマスクを基板1上に配置して、有機化合物の溶液を蒸着法により蒸着する。
【0045】
例えば、正孔輸送層を形成する場合、α−NPD(N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン)を蒸着して正孔輸送層を形成する。さらに、その上層に、発光層のホスト化合物となるAlq(トリス(8−ヒドロキシナト)アルミニウム)と、ゲスト化合物の蛍光性色素となるクマリン6とを同時に蒸着して、有機発光層を形成する。続いて、有機発光層の上層にLiFを蒸着して、電子輸送層を形成する。
【0046】
次に、陰極配線51を形成する(ST406)。陽極配線2に交差して、陰極配線2との間で有機化合物層8が挟持されるように、陰極配線用の導電線50a〜50dを有機化合物層7上に積層して形成する。具体的には、陰極配線形成用の導電線50a〜50dの材料を、マスク蒸着などによって、絶縁層3や有機化合物層8が形成された基板1上に堆積することにより、陰極配線形成用の導電線50a〜50dを形成する。このとき、各陰極配線形成用の導電線50a〜50dがコンタクトホール32内で接続線4a〜4dに接続される。
【0047】
絶縁保護層7a〜7fによって、陰極配線形成用の導電線50a〜50dが絶縁保護層7a〜7fの形成領域とこれ以外の領域で分離され、各陰極配線形成用の導電線50a〜50dを、陰極配線51と陰極配線以外の残余の導電線52とに分断できる。このようにして、複数の陰極配線51が、基板1上に形成される。
【0048】
このように、絶縁保護層7a〜7fを形成することにより、絶縁層3にピンホールが形成されても、陰極配線形成用の導電線50a〜50dと、当該陰極配線形成用の導電線50a〜50dにそれぞれ接続された接続線4a〜4d以外の接続線とが、電気的に接続されるのを低減でき、絶縁層3に形成されたピンホールを原因とするリークによる接続不良の発生を低減できる。
【0049】
次に、基板1に対して、封止基板10を貼り合せる(ST407)。具体的には、封止基板10の内面に形成された凹面10a上に捕水剤11を塗布し、封止基板10と基板1とを位置合せをしながら、紫外線硬化樹脂のシール材12により貼り合わせた後、両基板を加圧し、各シール材に紫外線光を照射する。これにより、基板1と封止基板10とが接着され、陽極配線2、陰極配線5および有機化合物層8などが封止される。そして、有機EL表示装置が完成する。
【0050】
なお、有機EL表示装置100上に、駆動回路などを実装する場合もある。例えば、シール材12の外側まで延設され、陽極配線2や陰極配線51に接続された端子に、制御回路が実装されたTCP(Tape Carrier Package)を異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を介して接続する。
【0051】
次に、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の変形例の構成について、図に基づいて説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の変形例の構成を示す図であって、電極が形成される側から基板を観察した状況を示す模式図である。図6は、図5のU−U切断線における断面図である。
【0052】
ここで、図1および図3に示されるように、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置100では、絶縁保護層7a〜7fは、各接続線4a〜4d上の特定領域にのみ形成されているのに対し、図5および図6に示されるように、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の変形例100aでは、絶縁保護層7A〜7Cは、各接続線4a〜4d上の特定領域にのみならず、各接続線4a〜4dの間にも形成されている点で相違する。すなわち、図5で示される絶縁保護層7Aは、図1で示される絶縁保護層7a〜7cを連結して形成したものであり、図5で示される絶縁保護層7Bは、図1で示される絶縁保護層7d〜7eを連結して形成したものである。このように構成することにより、絶縁保護層の数を少なくすることができ、隔壁および絶縁保護層を形成するためのフォトマスクを簡素化することができ、簡単な工程で、絶縁保護層を形成することができる。
【0053】
以上の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以上の実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、以上の実施の形態の各要素を、本発明の範囲において、容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0054】
また、上記実施態様では、パッシブ型有機EL表示装置として説明したが、アクティブ型有機EL表示装置にも本発明を適用できる。
また、上記実施態様では、有機EL表示装置として説明したが、表示装置以外の有機EL装置にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を示す図であって、電極が形成される側から基板を観察した状況を示す模式図である。
【図2】図1のX−X切断線における断面図である。
【図3】図1のY−Y切断線における断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置を製造する手順を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の変形例の構成を示す図であって、電極が形成される側から基板を観察した状況を示す模式図である。
【図6】図5のU−U切断線における断面図である。
【図7】従来の有機EL表示装置の構成を示す図であって、電極が形成される側から基板を観察した状況を示す模式図である。
【図8】図7のW−W切断線における断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 基板、 2 陽極配線、 3 絶縁層、 31 開口部、
32 開口孔(コンタクトホール)、 4a、4b、4c、4d 接続線、
50a〜50d 陰極配線形成用の導電線、 51 陰極配線、
52 陰極配線の残余の導電線、 6 隔壁、
7a〜7f、7A〜7C 絶縁保護層、 8 有機化合物層、
9 接続部、 10 封止基板、 11 捕水剤、 12 シール材、
100、100a、100A 有機EL素子基板、 V 表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状に形成された基板と、上記基板上に上記基板の一辺に対して略垂直に形成された複数の第1の導電線と、上記基板上に上記複数の第1の導電線と交差するように形成された複数の第2の導電線と、上記複数の第2の導電線にそれぞれ接続され、上記基板の上記一辺側に引き出された複数の接続線と、上記第1および第2の導電線の間であって、上記第1および第2の導電線の交差部に形成された有機化合物層と、上記複数の第2の導電線および上記複数の接続線の間に形成され、上記複数の第2の導電線と上記複数の接続線をそれぞれ接続するための開口孔を有する絶縁層と、上記絶縁層および上記第2の導電線の間に形成された絶縁保護層とを備え、
上記絶縁保護層は、少なくとも、上記第2の導電線と、当該第2の導電線に接続された接続線以外の接続線とが重なり合う領域に、上記第2の導電線が当該絶縁保護層の形成領域とこれ以外の領域で分離されるように形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
上記絶縁保護層は、上記第2の導電線の延在方向に沿って切断したときの切断面の形状が、上記基板から離れるにつれて広がるように形成されている請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
上記複数の第2の導電線のうち、隣り合う第2の導電線の間に、上記隣り合う第2の導電線が分離されるように形成された隔壁を備え、
上記絶縁保護層と上記隔壁は同一材料により形成されている請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
上記絶縁保護層が表示領域の外側に形成されている請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
矩形板状の基板上に上記基板の一辺に対して略垂直に複数の第1の導電線を形成するステップと、
上記複数の第1の導電線と交差するように、複数の第2の導電線を上記基板上に形成するステップと、
上記複数の第2の導電線にそれぞれ接続され、上記基板の上記一辺側に引き回されるように、複数の接続線を上記基板上に形成するステップと、
上記第1および第2の導電線の間であって、上記第1および第2の導電線の交差部に有機化合物層を形成するステップと、
上記複数の第2の導電線および上記複数の接続線の間に、上記複数の第2の導電線と上記複数の接続線をそれぞれ接続するための開口孔を有する絶縁層を形成するステップと、
上記絶縁層および上記第2の導電線の間に絶縁保護層を形成するステップとを含み、
上記絶縁保護層を形成するステップでは、少なくとも、上記第2の導電線と、当該第2の導電線に接続された接続線以外の接続線とが重なり合う領域に、上記第2の導電線が当該絶縁保護層の形成領域とこれ以外の領域で分離されるように、上記絶縁保護層を形成することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項6】
上記絶縁保護層を形成するステップでは、上記第2の導電線の延在方向に沿って切断したときの切断面の形状が、上記基板から離れるにつれて広がるように、上記絶縁保護層を形成する請求項5に記載の有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−225966(P2007−225966A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48015(P2006−48015)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】