説明

有機EL表示装置

【課題】色毎の有機EL素子に電力を供給する電源バスラインの電流量に応じて、その線幅を決定し額縁寸法を小さくする。
【解決手段】表示領域21には、マトリクス状に配置された赤色画素22、緑色画素23、青色画素24と、これら各画素に接続された電源線32,33,34とを配置し、額縁領域72には、これら電源線に電力を供給する電源バスライン42,43,44を配置する。
電流量の多い赤色用の電源バスライン42を表示領域21に近い側に配置し、電流量の少ない緑色用の電源バスライン43を外側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素として有機EL素子を用いた有機EL表示装置に関し、特に、有機EL素子を発光させるための電力を供給する電源配線を改善したものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は電流駆動であるため、パネル表示領域の外側に太い電源配線を配置し電源電圧降下を抑制して、パネル表示領域において、表示面内での輝度分布の不均一を解消する必要がある。そのため、いわゆる額縁寸法が大きくなり、パネル外形の縮小の妨げとなっている。
【0003】
狭額縁化を図るために、下記特許文献1には、各色(R、G、B)の有機EL素子の各々に電力を供給する電源配線、例えば、最も外側に位置するBの有機EL素子用の電源配線を、第1層の導電膜と第2層の導電膜とにより構成することにより、電源配線の線幅を狭くした有機EL表示装置が記載されている。
【特許文献1】特開2004−62160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、額縁寸法を小さくするために、線幅の狭い2つの導電膜を積層して、電圧降下を抑制しているが、色毎の有機EL素子の発光効率に応じた色毎の電源配線の線幅について考慮されていない。
【0005】
そこで、本発明は、色毎の有機EL素子に電力を供給する電源配線の電流量に応じて、その線幅を決定し額縁寸法を小さくした有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の有機EL素子を色毎に接続する電源線と、この電源線に接続される電源配線(以下「電源バスライン」という。)とからなり、電流量が多い電源バスラインは、電源線による電圧降下の影響を少なくするために、表示領域に近い側に配置することを特徴とする。
【0007】
また、電流量が多い電源バスラインの幅を広くすることを特徴とする。さらに、電流量が少ない電源バスラインは、電流量が多い電源バスラインの外側に配置され、電源バスラインの下層に形成された高抵抗材料の接続線を介して、電源線とコンタクトホールで接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によると、電圧降下による輝度面内分布の不均一が発生しない範囲で、色毎の電源バスラインの幅を最適化するので、表示品位を維持したまま額縁寸法を縮小した有機EL表示装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明に係る有機EL表示装置の概観図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は断面図である。図1において、表示基板(表示パネル)11には画素部12が形成され、画素部12は、表示基板11とそれに対向する封止基板13とシール材14とで封止される。封止された空間には、画素部12における有機EL素子が湿気で劣化するのを防止するために、乾燥材15が封入されている。また、表示基板11には、有機EL素子を駆動するための信号と電源部からの電力を供給するためのFPC16が設けられている。
【0011】
図2は、図1に示す有機EL表示装置の駆動回路図である。図1において、フルカラー表示を行うため、表示領域21には、赤色を発光する有機EL素子からなる赤色画素22と、緑色を発光する有機EL素子からなる緑色画素23と、青色を発光する有機EL素子からなる青色画素24が、マトリクス状に配置されている。
【0012】
なお、本実施例において、カラー画素としては、赤緑青の3色を用いて説明するが、他に水色オレンジ色の2色、赤緑青白の4色を用いてもよく、カラー画素の色数を限定するものではない。
【0013】
複数の赤色画素22は電源線32に接続され、電源線32は電源バスライン42に接続され、電源バスライン42は赤発光用電源部52に接続されている。このようにして、赤発光用電源部52から供給される電力で赤色画素22は発光する。
【0014】
同様に、複数の緑色画素23は電源線33に接続され、電源線33は電源バスライン43に接続され、電源バスライン43は赤発光用電源部53に接続されている。このようにして、赤発光用電源部53から供給される電力で緑色画素23は発光する。
【0015】
同様に、複数の青色画素24は電源線34に接続され、電源線34は電源バスライン44に接続され、電源バスライン44は赤発光用電源部54に接続されている。このようにして、赤発光用電源部54から供給される電力で緑色画素24は発光する。
【0016】
マトリクス状に配置された複数のカラー画素22,23,24は、データ線25と走査線26に接続され、走査信号駆動回路27で選択された走査線26の走査信号と、データ信号駆動回路28に接続されているデータ線25からのデータ信号とで駆動される。
【0017】
表示制御部29は、外部からの信号を受け取り、走査信号駆動回路27とデータ信号駆動回路28に、走査信号とデータ信号を供給する。また、独立したカラー発光用電源部52,53,54を制御する。
【0018】
図3は、図2に示す有機EL素子からなる画素の詳細図であって、図2に示す符号と同じ符号は同じものを示す。図3において、表示領域21には複数の画素領域60が形成され、この画素領域60にカラー画素としての有機EL素子61が設けられている。また、画素領域60には、走査信号駆動回路27で選択され、データ信号駆動回路28からのデータ信号を取り入れるスイッチングTFT62と、データ信号を記憶する容量63と、データ信号に応じて有機EL素子61を駆動するドライバTFT64が設けられている。
【0019】
有機EL素子61の陽極側は、ドライバTFT64に接続され、陰極側は、基準電位を保つ陰極電流線65に接続されている。
【0020】
図4は、図2,3に示す電源バスラインの配置図であって、図2,3に示す符号と同じ符号は同じものを示す。図4において、表示パネル11の領域を、表示領域21とその周りにある周辺領域71とに分け、周辺領域71の上下の領域を額縁領域72とする。
【0021】
有機EL素子は電流駆動であるため、額縁領域72の何れかに一方に、比較的太い電源バスライン42,43,44を配置して電圧降下による表示パネル11の横方向の輝度面内分布の不均一を抑制している。本実施例では、表示パネル11の上下の額縁領域72に電源バスライン42,43,44を配置して表示パネル11の縦方向の輝度面内分布の不均一も抑制している。
【0022】
このように、電源バスライン42,43,44を太くすると、額縁領域72を広くしなければならず、いわゆる額縁寸法が大きくなり、これがパネルの小形化を阻害している。なお、電源バスラインを細くすると電圧降下が大きくなり,電源から遠くなるに従って輝度が低くなり、図4に示すように、表示パネル11の横方向と縦方向で輝度面内分布の不均一が発生する。したがって、輝度面内分布の不均一さが視認できない程度に、電源バスラインの幅を設計することが重要である。
【0023】
図5は、図4に示すAの部分の拡大図である。従来構造では3本の電源バスラインの幅が全て同じであるが、本実施例では、それぞれの電源バスラインの幅を変えている。流れる電流量が多いバスラインは太く、電流量が少ないバスラインは細くしてあるが、どちらにしても輝度面内分布が発生しないぎりぎりまで線幅を細くしている。
【0024】
図5において、電源バスライン42,43,44の幅は、画素22,23,24の発光色とは無関係に、流れる電流量で変える。例えば、赤色表示を行っている赤色画素21の電流効率は3cd/A、表示パネルの全面を赤色(階調最大)で表示したときの輝度が約50cd/m2という設定であるが、これらの値は電源バスラインの幅とは直接関係ない。表示パネルの全面を赤色表示したときに流れる電流量、すなわち、電源バスライン42,43,44を介して電源線32,33,34に流れる最大電流量が、電源バスラインの幅を決める要因となる。
【0025】
本実施例では、下記表1に示すように、一例として対角63mmの有機EL表示装置を用いているが、この時の最大電流量は、赤色31.5mA、緑色12.5mA、青色16.0mAであった。この表示装置で全面単色表示を行うと、電源バスラインの幅が狭い時には、パネル横方向に不均一な輝度面内分布が発生し、電源バスラインの幅を太くしていくと輝度面内分布の不均一が視認できなくなってくる。輝度面内分布の不均一が視認できない配線幅は、赤色が1.2mm以上、緑色が0.5mm以上、青色が0.6mm以上であったため、電源バスラインの幅をそれぞれ1.2mm、0.5mm、0.6mmに設定した。
【表1】

【実施例2】
【0026】
図6は、電源バスラインと電源線との接続部の断面図であって、同図(a)(b)(c)は、図5に示すA,B,Cの部分の断面図である。図6において、各電源線32,33,34は、Al(シート抵抗0.1Ω/□)で作製しているが、配線交差部の接続線83,84は、スイッチングTFTのゲート線材料であるMoW(シート抵抗1Ω/□)を使用している。
【0027】
MoWからなる接続線83,84は、絶縁層81に形成したコンタクトホール82を介して、Alからなる電源バスライン43,44と同じくAlからなる電源線33,34とを電気的に接続している。この場合,MoWの抵抗≫Alの抵抗であるため、電流量の多い電源バスラインに接続線を使用すると電圧降下が大きくなる。また、使用する場合でも接続線の長さは短くしたい。したがって、電流量の多い太い電源バスラインは内側に,電流量の少ない細い電源配線は外側に配置する。
【0028】
本実施例では、電流量の多い赤色用の電源バスライン42は表示領域に近い側に配置し、電流量の少ない緑色用の電源バスライン43を外側に配置することで、電圧降下の影響を少なくしている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る有機EL表示装置の概観図。
【図2】図1に示す有機EL表示装置の駆動回路図。
【図3】図2に示す有機EL素子からなる画素の詳細図。
【図4】図2,3に示す電源バスラインの配置図。
【図5】図4に示すAの部分の拡大図。
【図6】電源バスラインと電源線との接続部の断面図。
【符号の説明】
【0030】
11…表示基板(表示パネル)、12…画素部、13…封止基板、14…シール材、15…乾燥材、16…FPC、21…表示領域、22…赤色画素、23…緑色画素、24…青色画素、25…データ線、26…走査線、27…走査信号駆動回路、28…データ信号駆動回路、29…表示制御部、32,33,34…電源線、42,43,44…電源バスライン、52…赤発光用電源部、53…緑発光用電源部、54…青発光用電源部、60…画素領域、61…有機EL素子、62…スイッチングTFT、63…容量、64…ドライバTFT、65…陰極電流線、71…周辺領域、72…額縁領域、81…絶縁層、82…コンタクトホール、83,84…接続線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を備えた表示領域と該表示領域の周りにある周辺領域とを備え、前記周辺領域から画素領域に向かって延び、同色に発光する画素に電力を供給する電源線と、同色に発光する画素に電力を供給する電源線同士を周辺領域で接続し、外部端子まで引き回す複数の電源バスラインとを有する有機EL表示装置であって、
前記電源バスラインは、第1の色に発光する画素に電力を供給する第1電源線同士を接続する第1電源バスラインと、第2の色に発光する画素に電力を供給する第2電源線同士を接続する第2電源バスラインとを備え、
前記第1電源バスラインに流れる最大電流量が、第2電源バスラインよりも多い場合に、第1電源バスラインは、第2電源バスラインよりも表示領域に近い側に配置されることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第1電源バスラインと前記電源線とは、同じ層に形成され接続されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第2電源バスラインと前記電源線とは、下層に形成された接続線を介して、コンタクトホールで接続されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1電源バスラインの幅は、第2電源バスラインの幅よりも広いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−220598(P2007−220598A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42310(P2006−42310)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】