説明

有機EL表示装置

【課題】有機EL層が形成された素子基板を、接着材を介して封止基板によって封止した有機EL表示装置において、接着材がはみ出して端子部を覆い、接続不良を生ずる現象を防止する。
【解決手段】ガラスで形成された素子基板10の表示領域に有機EL素子30が形成され、有機EL素子30を覆って防湿膜17が形成されている。素子基板10の端子部90を除く領域に接着材40を介して封止基板20が接着している。素子基板10と封止基板20を接着する際、接着材40がはみ出して端子部90を覆うことを防止するために、封止基板20に第1の接着材ストッパー50が形成されている。接着材40がさらに第1の接着材ストッパー50をはみ出した場合に備えて、素子基板10には、第1の接着材ストッパー50よりも高さが低い第2の接着材ストッパー60が形成されている。これによって、接着材40がはみ出して、端子部90を覆う現象を防止することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置に係り、素子基板と封止基板の間に樹脂を充填することによって有機EL層への水分の浸入を防止する固体封止の有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置では下部電極と上部電極との間に有機EL層を挟持し、上部電極に一定電圧を印加し、下部電極にデータ信号電圧を印加して有機EL層の発光を制御する。下部電極へのデータ信号電圧の供給は薄膜トランジスタ(TFT)を介して行われる。有機EL層は、発光層の材料によって赤、緑、青の発光を行う。このような有機EL層とTFTを有する画素をマトリクス状に配置し、各画素の発光を制御することによって画像を形成する。
【0003】
有機EL表示装置に使用される有機EL材料は水分が存在すると発光特性が劣化し、長時間動作をさせると、水分によって劣化した場所が発光しなくなる。これは有機EL素子のダークスポットとして現れる。このダークスポットは時間の経過とともに成長する。ダークスポットの発生、あるいは成長を防止するためには、有機EL表示装置内への水分の浸入を防止する必要がある。
【0004】
このために従来は、有機EL層が形成された素子基板を周囲に設置したシールを介して、封止基板によって封止し、外部から有機EL表示装置内への水分の浸入を防止する技術が開発されてきた。封止された内部の空間にはN等の不活性ガスを充填する。一方、有機EL表示装置内に進入した水分を除去するために、有機EL表示装置内に乾燥剤を設置する。これを中空封止型有機EL表示装置という。
【0005】
しかし、中空封止型有機EL表示装置では、乾燥剤を設置するため、額縁幅を広くとる必要がある。また、封止剤によって封止するときの、封止剤から放出されたガスによる有機EL材料の汚染等の問題がある。さらに完成した有機EL表示装置において素子基板あるいは封止基板に外力が加わると素子基板と封止基板が接触することによって有機EL層が破壊されるという問題点を有している。
【0006】
中空封止の問題を対策するものとして、「特許文献1」には、封止基板を使用せずに、有機EL層と上部電極が形成された有機EL表示パネルの上に無機パッシベーション膜、有機平坦化膜、さらに無機パッシベーション膜を形成することによって水分が浸入することを防止する技術が記載されている。以後このような封止構造を固体封止という。
【0007】
「特許文献2」には、素子基板と封止基板の間に接着シートを挟み、外部からの水分の浸入を防ぐ構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−156058号公報
【特許文献2】特開2009−123653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
「特許文献1」の構成は、最外部は防湿膜となっているが、これはSiN膜等の1μm程度の薄膜で形成されているので、外部から機械的な圧力が加わると防湿膜が破壊され、この部分から水分が浸入するという問題がある。また、外力が直接有機EL層に伝わりやすく、有機EL層が簡単に破壊されてしまうという問題がある。
【0010】
「特許文献2」の構成は、接着シートを介してガラスで形成された封止基板によって有機EL層が形成された素子基板を封止するので、外力に対する有機EL層の保護機能は優れている。また、接着シートは、封止基板あるいは素子基板に貼り付けるだけでよいので、気泡に注意すれば、生産効率も確保できる。しかし、接着シートはコストが高く、有機EL表示装置の製造コストを押し上げる。
【0011】
一方、接着材によって封止基板を素子基板に貼り付ける方法は、接着シートを使用する場合に比較して製造コストは抑えることが出来るが、接着材の塗布方法と、接着材の形成範囲とが問題となる。本発明の課題は、接着材を介して、素子基板を封止基板によって封止する構成において、製造コストの大幅な上昇を伴わずに、接着材を所定の範囲に限定することが出来る構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0013】
(1)有機EL層を含む画素がマトリクス状に形成された表示領域と端子部を含む素子基板に、接着材を介して封止基板が前記表示領域を覆って配置された有機EL表示装置であって、前記表示領域よりも外側で、前記封止基板の、前記素子基板の前記端子側の端部に沿って接着材ストッパーが形成され、前記接着材ストッパーよりも内側において、前記接着材が充填されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【0014】
(2)前記接着材ストッパーは前記表示領域よりも外側で、前記封止基板の、前記素子基板の前記端子側と反対側の端部に沿って接着材ストッパーが形成されていることを特徴とする(1)1に記載の有機EL表示装置。
【0015】
(3)前記素子基板には、前記接着材ストッパーの外側において、第2の接着材ストッパーが形成され、前記第2の接着材ストッパーは前記接着材ストッパーよりも高さが低いことを特徴とする(1)または(2)に記載の有機EL表示装置。
【0016】
(4)有機EL層を含む画素がマトリクス状に形成された表示領域と端子部を含む素子基板に、接着材を介して封止基板が前記表示領域を覆って配置された有機EL表示装置であって、前記表示領域を囲んで、前記封止基板の内側において、接着材ストッパーが形成され、前記接着材ストッパーの内側に前記接着材が形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、素子基板と封止基板を接着する接着材がはみ出して素子基板の端子部を覆うことによる端子部の接続不良を防止することが出来る。したがって、機械的な強度が強く、かつ、水分の浸入を効果的に防止することが出来る、封止ガラス基板を用いた固体封止タイプの有機EL表示装置を製造コストの増大を招くことなく実現することが出来る。
【0018】
また、接着材のはみ出しを防止することが出来るので、封止基板の端部から端子部までの距離を小さくすることが出来る。したがって、その分、外形の小さな有機EL表示装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の有機EL表示装置の表示領域の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例による有機EL表示装置の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】マザー基板に実施例1の液晶表示パネルが形成された状態を示す平面図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置の製造プロセスを示すチャートである。
【図6】本発明の第2の実施例による有機EL表示装置の平面図である。
【図7】本発明の第3の実施例による有機EL表示装置の平面図である。
【図8】本発明の第3の実施例による有機EL表示装置の平面図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例によって本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の固体封止における有機EL表示装置の表示領域における断面図である。図1において、赤画素、緑画素、青画素が並んで配置されている。赤画素、緑画素、青画素の組を画素と呼ぶ。また、赤画素、緑画素、青画素をサブ画素と呼ぶこともある。図1の封止基板20の上に記載した白矢印は、赤の光、緑の光、青の光が放射されることを示している。有機EL表示装置では、このような画素がマトリクス状に配置され、表示領域を形成している。
【0022】
有機EL表示装置には、有機EL層15から発光した光を、有機EL層15等が形成されたガラス基板方向に取り出すボトムエミッション型と、有機EL層15等が形成されたガラス基板と逆の方向に取り出すトップエミッション型とがある。トップエミッション型はTFTが形成された領域の上にも発光領域を形成できるという利点がある。図1はトップエミッション型有機EL表示装置である。
【0023】
図1において、ガラスで形成されたTFT基板10の上にTFT回路11が形成されている。TFT回路11は、TFT、走査線、映像信号線、層間絶縁膜等を含む概念であるが、詳細な説明は省略する。図1において、TFT回路11の上に、反射電極12が形成されている。反射電極12は、有機EL層15からの光を上側に反射して光の利用効率を上げるためのものである。反射電極12はAlによって形成されている。
【0024】
図1において、反射電極12の上に下部電極13がITO(Indium Tin Oxide)等によって形成されている。下部電極13はアノードであり、図示しないTFTのソース電極と接続して映像信号が入力される。赤画素、緑画素、青画素との間にはバンク14が形成されている。バンク14は、各画素を区画するとともに、有機EL層15が段切れを生ずることを防止する。
【0025】
バンク14とバンク14の間に有機EL層15が形成されている。有機EL層15は複数の層からなっている。有機EL層が5層の場合、例えば、下部電極であるアノード側からホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等から構成されている。有機EL層の各層は非常に薄く、例えば、5層合わせても200nm程度であるので、外部から機械的な圧力がかかると容易に破壊する。
【0026】
有機EL層15の上には上部電極16がMgAg合金等によって形成されている。上部電極16はカソードとなっている。図1はトップエミッションであるから光を透過させるために、上部電極16は5〜10nm程度と非常に薄く形成される。有機EL層は水分によって特性が劣化する。したがって、水分が有機EL層15に浸入することを阻止するために、上部電極16の上に防湿膜17がSiN等によって形成される。防湿膜17は、CVDあるいはスパッタリングによって形成される。
【0027】
防湿膜17はこの他SiO、SiNxOy等によって形成されることもある。防湿膜17は保護膜なので、1μm程度に厚く形成される。防湿膜は、上記のような無機膜を積層した構成でもよいし、上記のような無機膜によってエポキシのような有機膜を挟んだ構成としてもよい。
【0028】
防湿膜17の上に、素子基板10を封止基板20によって封止するための接着材40が形成される。接着材40は、封止基板20に印刷、あるいは、ディスペンサ等によって形成され、この封止基板20を素子基板10に貼り合わせる。接着材40は熱硬化等して、素子基板10と封止基板0を接着する。図1において、封止基板20側から有機EL層の光が取り出され、画像が認識される。
【0029】
ここで、接着材40は樹脂で形成されるが、硬化する前は流動的であり、接着材40の塗布範囲を規定することが難しいという問題がある。例えば、接着材40を封止基板20に塗布し、封止基板20と素子基板10を接着した際、接着材40が流れ出して、端子を覆うようなことがあると接続不良を生じてしまう。
【0030】
図2および図3に示す本発明は、このような問題を防止するために、封止基板20に接着材40が広がる範囲を規定する接着材ストッパーを形成することである。図2は本発明の第1の実施例における封止構造を示す平面図であり、図3は、図2のA−A断面図である。
【0031】
図2において、封止基板20が素子基板10に図示しない接着材40を介して接着している。接着材40は図3に示すように、素子基板10と封止基板20の間に充填されている。図2に示すように、素子基板10は封止基板20よりも大きく形成され、素子基板10が封止基板20と重なった部分に表示領域100が形成されている。そして、封止基板20の、端子部90側端部と端子部90側とは反対側の端部には接着材ストッパーが形成されている。図3に示すように、素子基板10側にも、高さが低い接着材ストッパーが形成される場合があるので、区別するために、封止基板20に形成される接着材ストッパーを第1接着材ストッパー50と呼び、素子基板10に形成する接着材ストッパーを第2接着材ストッパー60と呼ぶ。
【0032】
図2において、素子基板10に封止基板20が重ねられていない部分には、各画素の回路を駆動するための駆動IC70、表示領域100に形成された走査線、映像信号線と駆動IC70と接続するため、あるいは駆動IC70と端子90を接続するための引出し線80、駆動IC70を外部回路と接続するための端子部90等が形成されている。
【0033】
図2において、素子基板10と封止基板20を接着する接着材40は、硬化前は液体であり、流動性を有している。そして、封止基板20と素子基板10を接着する際、接着材40がはみ出して端子部90を覆う場合がある。端子部90が接着材40に1部でも覆われると、端子部90における接続不良を生ずる。
【0034】
本実施例では、図2に示すように第1接着材ストッパー50を表示領域100の紙面上で上下に配置して、接着材40が接着材ストッパーよりも外側に流動することを防止している。すなわち、図2における表示領域100よりも下側に形成された第1接着材ストッパー50によって、接着材40は端子部90方向に流動することを阻止される。
【0035】
図3は図2のA−A断面図であり、接着材40が第1接着材ストッパー50によって外側への流出が阻止される状態を示している。図3において、素子基板10が接着材40を介して封止基板20によって封止されている。素子基板10も封止基板20もガラスで形成され、厚さはいずれも0.5mmである。接着材40の存在範囲は、第1接着材ストッパー50によって規定されている。第1接着材ストッパー50の高さは8〜10μm、幅は0.1〜0.2mm程度である。なお本断面図では多数個配置される引出し線80は、素子基板10の上部に形成されているとして省略して記載されている。
【0036】
接着材40の厚さは10μm程度であり、第1接着材ストッパー50の高さよりも僅かに厚くなっている。しかし、この程度の差であれば、第1接着材ストッパー50は接着材40に対するストッパーとしての役割を十分に果たすことができる。また、仮に、接着材40が第1接着材ストッパー50からはみ出すことがあっても、後で説明する素子基板10側に形成された第2接着材ストッパー60によって接着材40はそれ以上広がることを阻止される。
【0037】
接着材40は熱硬化性のアクリル樹脂あるいはエポキシ樹脂によって形成される。第1接着材ストッパー50は、例えば、紫外線硬化型のエポキシ樹脂が使用される。第1接着材ストッパー50の材料としては、例えば、長瀬ケムテックス製のT-470/UR7153-SA1あるいは積水化学のフォトレックE−201を使用することが出来る。
【0038】
図3において、表示領域100に対応する部分には、有機EL素子30が形成されている。有機EL素子30は、図1におけるTFT回路から有機EL層の上部電極までを含む概念である。有機EL素子30はSiN等の防湿膜17によって覆われている。防湿膜17は、表示領域100のみでなく、端子部90を除いて素子基板10の全面に形成されている。
【0039】
図3において、有機EL素子30の外側で、かつ、第1接着材ストッパー50の外側に第2接着材ストッパー60が形成されている。第2接着材ストッパー60は、図1におけるバンク14を形成するときに同時に形成される。したがって、第2接着材ストッパー60の高さはバンク14の高さと同じ1μm程度である。第2接着材ストッパー60によって形成される1μm程度の段差が第1接着材ストッパー50からはみ出してきた接着材40に対してストッパーとなる。第1接着材ストッパー50をはみ出してくる接着材40は僅かであるので、1μm程度の段差で十分なストッパー作用を発揮することが出来る。
【0040】
ところで、有機EL表示装置の製造では、生産効率を上げるために、大きなマザー基板200に多数の有機EL表示パネルを形成し、その後、スクライビング等によって各有機EL表示パネルに分離する。図4は、マザー基板200に多数の有機EL表示パネルが形成されている状態を示している。図4に示すように、第1接着材ストッパー50はマザー基板200において、各有機EL表示パネルに同時に形成される。
【0041】
実際は、封止基板20が多数形成されたマザー封止基板に第1接着材ストッパー50を形成し、その後、素子基板10が多数形成されたマザー素子基板と接着する。第1接着材ストッパー50はマザー封止基板に印刷によって形成してもよいし、ディスペンサを用いて形成してもよい。紫外線によって第1接着材ストッパー50を硬化した後、マザー封止基板に接着材40を形成し、マザー素子基板とマザー封止基板を接着してマザー基板200を形成する。熱によって、接着材40を硬化させる。その後、マザー基板200を各有機EL表示パネルに分離する。
【0042】
図5は、有機EL表示パネルが個々に分離される前のマザー基板200の製造プロセスを示す。図5において、左側がマザー素子基板の概略プロセスである。すなわち、マザー素子基板に蒸着によって有機EL層15を形成する。その上に上部電極16及び防湿膜17を形成する。なお、図5では、有機EL素子30製作のための詳細なプロセスは省略して記載している。
【0043】
図5の右側は、マザー封止基板の概略プロセスである。すなわち、マザー封止基板に第1接着材ストッパー50を形成すると同時に、マザー素子基板とマザー封止基板を接着する時の位置あわせのためのアラインメントマークを形成する。第1接着材ストッパー50は印刷で形成してもよいし、ディスペンサで形成してもよい。その後、第1接着材ストッパー50を紫外線によって硬化する。その後、接着材40を第1接着材ストッパー50の間に塗布する。
【0044】
このようにして形成したマザー素子基板とマザー封止基板を、接着材40を介して貼り合わせ、接着材40を熱硬化することによってマザー基板200が形成される。その後、マザー基板200をスクライビング等によって、個々の有機EL表示パネルに分離する。
【0045】
以上のように、本実施例によれば、素子基板10を接着材40を介して封止基板20によって保護する構成において、接着材40がはみ出して端子部90を覆うことが無いので、端子部90の信頼性を劣化させることが無い。したがって、信頼性が高い、かつ、製造歩留まりの高い有機EL表示装置を製造することが出来る。
【実施例2】
【0046】
図6は、本発明の第2の実施例を示す有機EL表示装置の平面図である。図6におけるA−A断面図は図2と同様である。図6において、第1接着材ストッパー50は表示領域100を囲うように形成されている。その他の構成は、実施例1の図1と同様である。第1接着材ストッパー50を図6のように形成することによって、接着材40のはみ出しを図6における上下左右で抑制することが出来る。
【0047】
スクライビングライン上に接着材40が存在すると、スクライビングによる、マザー基板200から個々の有機EL表示パネルへの分離がスムースに出来ない場合がある。本実施例のように、接着材40を上下のみでなく、左右においても、はみ出しを防止することによって、接着材40がスクライビングラインにまで、はみ出すことを防止し、スクライビングにおける不良を防止することが出来る。その他の構成は実施例1で説明したのと同様であるので、説明を省略する。
【実施例3】
【0048】
図7は、本発明の第3の実施例を示す有機EL表示装置の平面図である。図7が実施例1の図1と異なる点は、第1接着材ストッパー50が端子側にのみ形成されている点である。本発明の第1の課題は、素子基板10に接着材40を介して封止基板20を接着する場合に、接着材40がはみ出て端子部90を覆い、端子部90における接続不良が生ずることを防止する点である。この目的からは、端子部90のみに、第2接着材ストッパー60を形成しておけばよい。
【0049】
本実施例の構成によれば、第1接着材ストッパー50を1本形成するだけでよい。したがって、第1接着材ストッパー50の材料を節減することが出来るとともに、ディスペンサによって第1接着材ストッパー50を形成するような場合は、ディスペンサによる塗布作業に時間を短くすることが出来る。
【0050】
図7にように、第1接着材ストッパー50を端子部90側の表示領域100側にのみ形成する場合、接着材40の量が多いと、マザー基板200において、有機EL表示パネルに接着材40がはみ出し、スクライビングがうまくいかなかったり、はみ出しが多い場合は、隣りの端子を覆ったりする場合もありうる。
【0051】
これを避けるために、本実施例の場合では、接着材40の量を若干少なくしておくことも出来る。この状態の有機EL表示パネルの平面図を図8に示す。図8は実質的には図7と同じあるが、図8においては、接着材40が形成されている範囲をハッチングによって示している。図8において、接着材40は、表示領域100を完全に覆っているが、有機EL表示パネルの端子とは反対側の端部には、接着材40は存在していない。接着材40を表示領域100を完全に覆うが、隣りの有機EL表示パネルにまでははみ出さない程度に抑えているからである。
【0052】
図8において、有機EL表示パネルの端子部90と反対側の端部においても、接着材40は表示領域100を完全に覆っているので、視認性に有意差は生じない。また、水分に対する阻止は防湿膜17で行うため、水分に対する阻止機能は確保することができる。
【0053】
以上の実施例では、素子基板10に第2接着材ストッパー60が形成されているとして、説明したが、第2接着材ストッパー60は、かならずしも必須ではなく、有機EL表示パネルの外形と表示領域100の関係から、第2接着材ストッパー60の配置が困難な場合は、省略することも出来る。
【0054】
また、以上の実施例では、第1接着材ストッパー50および接着材40は封止基板20側に形成され、その後、素子基板10と接着するとして説明したが、素子基板10側に第1接着材ストッパー50と接着材40を形成することも可能である。但し、この場合は、第1接着材ストッパー50の材料は熱硬化型のものが望ましい。紫外線によって、有機EL層15が破壊されることを防止するためである。
【符号の説明】
【0055】
10…素子基板、 11…TFT回路、 12…反射電極、 13…下部電極、 14…バンク、 15…有機EL層、 16…上部電極、 17…防湿膜、 20…封止基板、 30…OLED素子、 40…接着材、 50…第1接着材ストッパー、 60…第2接着材ストッパー、 70…駆動IC、 80…引出し線、 90…端子部、 100…表示領域、 200…マザー基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL層を含む画素がマトリクス状に形成された表示領域と端子部を含む素子基板に、接着材を介して封止基板が前記表示領域を覆って配置された有機EL表示装置であって、
前記表示領域よりも外側で、前記封止基板の、前記素子基板の前記端子部側の端部に沿って接着材ストッパーが形成され、前記接着材ストッパーよりも内側において、前記接着材が充填されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記接着材ストッパーは前記表示領域よりも外側で、前記封止基板の、前記素子基板の前記端子部側と反対側の端部に沿って接着材ストッパーが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記素子基板には、前記接着材ストッパーの外側において、第2の接着材ストッパーが形成され、前記第2の接着材ストッパーは前記接着材ストッパーよりも高さが低いことを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
有機EL層を含む画素がマトリクス状に形成された表示領域と端子部を含む素子基板に、接着材を介して封止基板が前記表示領域を覆って配置された有機EL表示装置であって、
前記表示領域を囲んで、前記封止基板の内側において、接着材ストッパーが形成され、前記接着材ストッパーの内側に前記接着材が形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−99313(P2012−99313A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245407(P2010−245407)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】