説明

有機EL装置、及びその製造方法、電子機器

【課題】 外光による有機EL材料の励起を抑制し、外光下での使用時にも、コントラストが低下しない有機EL装置、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 基板102上にマトリクス状に配置された各画素電極31〜33と、各画素電極31〜33と対向する対向電極118と、各画素電極31〜33と対向電極118の間に存在する、各画素電極毎に赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層116と、を有する有機EL装置において、有機発光層と表示面との間に、当該型の有機発光層を励起し得る波長の光を吸収する各顔料薄膜71〜73を具備している。それにより、外光による有機EL材料の励起を抑制し、外光下での使用時にも、コントラストの低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、及びその製造方法、並びにその有機EL装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光型の表示装置の一種にエレクトロルミネッセンス(以下ELと称する)を利用したEL装置がある。ELとは、1対の電極間に狭持された物質に電圧を印加して電流を流すと、電子が励起されることによる発光が生じる現象であり、使用される物質により有機ELと無機ELに大別される。近年、表示装置の大画面化と低消費電力化を両立させるべく、互いに異なる赤、緑、青の3原色に対応する有機EL材料を用いるフルカラーの有機EL装置の開発が進められている。
【0003】
有機EL物質を狭持する両電極のうち、背面側の電極、つまり光取り出し方向の反対側の電極にはAl(アルミニウム)やMg(マグネシウム)等、又はそれらの金属を含む合金が用いられることが多い。仕事関数が小さく、形成も容易だからである。しかし、上記材料による背面側の電極は、光取り出し方向から入射した外光を反射して、装置表示面に、ELの発光光によるものとは別個の画像(外部の景色の画像)を形成し、装置のコントラストを低下させ得る可能性がある。
【0004】
そこで、有機EL装置の開発過程においては、外部の光(以下、外光と称する)の影響、すなわちコントラストの低下を抑制する手段についての検討がなされてきた。そして、例えば特許文献1では、装置の光取り出し方向側に円偏光板を配置し、背面側の電極の影響を抑制した有機EL装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−321381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記構成による有機EL装置は、外光で有機EL材料が励起されることによるコントラストの低下は抑制できない。上記円偏光板は背面側の電極で反射された外光が装置表示面に達するのを抑制するものであり、外光が有機EL材料を透過することは防止できないからである。現在実用化されている有機EL材料は、電流だけでなく光の透過によっても励起されて発光を生じるものが多数を占めている。そのため、現用の有機EL装置は、野外等の外光下では、表示面全体が薄く発光し、コントラストの低下を余儀なくされる。
【0007】
よって本発明は、外光による有機EL材料の励起を抑制し、外光下での使用時におけるコントラストの低下が抑制される有機EL装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる有機EL装置は、基板上にマトリクス状に配置された画素電極と、上記画素電極と対向する対向電極と、上記画素電極と上記対向電極の間に存在する、各画素電極毎に赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層と、を有する有機EL装置であって、上記有機発光層の内、少なくとも1つの型の有機発光層と表示面との間に、当該型の有機発光層を励起し得る波長の光を吸収する遮光層を具備することを特徴とする。
【0009】
有機EL装置の発光層に用いられる有機EL材料は、通電により発光するだけでなく、外光(装置外部の光)を吸収(吸光)して発光する性質を有する。そして、上記吸収する外光の波長は、該有機EL材料が発光する光の波長より短い。そのため、適切な色相の透明材料を遮光層として用いれば、有機EL材料の通電による発光を殆ど妨げずに、発光層を励起し得る光を遮断することが可能となる。したがって、かかる構成により、発光層が外光により励起され、意図しない発光が生じることを抑制し、外光下での使用時において、コントラストの低下が抑制された有機EL装置を提供できる。
【0010】
なお、赤、緑、青の各画素の通電により発光が、上記遮光層により妨げられる割合は、3%以内に収めることが好ましい。上記通電による発光が妨げられることによる、輝度の低下は好ましくないからである。しかし、5%以内、あるいは7%以内、さらには10%以上妨げられても実施は可能である。上記意図しない発光を抑制することにより得られる効果が、輝度の低下による損失を上回ることもあり得るし、また上記輝度の低下は、印加電圧の増加等の手段で対処可能でもあるからである。
【0011】
好ましくは、上記遮光層が、上限を440nm乃至570nmの範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断可能であり、上記遮光層が、赤を発光する有機発光層と表示面との間に形成されている。
【0012】
上記の赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層のなかで、外光の影響を最も受けるのは赤の型の有機発光層である。そして、赤の型の発光層に用いられる有機EL材料は、波長が570nmまでの光を吸収し得るが、吸収する比率(吸光度)のピークは、入射する光の波長が440nm以下のところにある。したがって、かかる構成により赤の型の発光層が外光により発光することを効果的に抑制でき、外光下での使用時において、コントラストの低下が抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0013】
好ましくは、上記有機EL装置の、赤を発光する有機発光層と表示面との間に、上限を440nm乃至570nmの範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮光可能な遮光層が形成されており、緑を発光する有機発光層と表示面との間に、上限を440nm乃至500nmの範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断可能な遮光層が形成されている。
【0014】
上記の赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層の内、赤の型に次いで外光の影響を受けるのは、緑の型の有機発光層である。そして、緑の型の発光層に用いられる有機EL材料は、波長が500nmまでの光を吸収し得るが、吸収する比率(吸光度)は、入射する光の波長が440nmを超えると低下し始める。したがって、かかる構成により、(赤だけでなく)緑の型の発光層に対する外光の影響も抑制でき、外光下での使用時において、コントラストの低下がより一層抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0015】
好ましくは、上記遮光層が、上限を440nm乃至500nmの範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断可能であり、上記遮光層が、赤を発光する有機発光層と表示面との間、及び緑を発光する有機発光層と表示面との間に形成されている。
【0016】
上述したように、赤の型の発光層に用いられる有機EL材料は波長が570nmまでの光を吸収し得る。しかし、吸収する比率(吸光度)は、入射する光の波長が440nmを超えると低下し始め、500nmを超えるとかなり小さくなる(図14参照)。また、上述したように、緑の型の発光層が吸収可能な光の波長は500nmまでである。したがって、上記の構成すなわち、遮光層を赤の型と緑の型とで共通のものを用い、該遮光層の遮光可能な波長の範囲の上限値を440nm乃至500nmとすることにより、遮光層の形成に要する工程等を削減でき、コストの増加を抑えつつ、有機EL装置の外光下での使用時において、コントラストの低下が抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0017】
好ましくは、表示面に、上限を380nm乃至440nm未満の範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断するフィルムを具備している。
【0018】
かかる構成により、青の型の発光層に対する外光の影響も抑制でき、外光下での使用時においてコントラストの低下がより一層抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0019】
好ましくは、青を発光する有機発光層と表示面との間に、上限が440nm以下の波長の光を遮断可能な遮光層が形成されている。
【0020】
人の眼は380nm以下の波長の光は感知しない。また、380nmを超えて440nm以下の波長の光も殆ど感知しないため、当該波長の光を遮断しても表示性能(電流による発光)には殆ど影響を及ぼさない。一方、青を発光する有機発光層も(他の型の有機発光層と同じく)外光の影響によりコントラストが低下し得る。したがって、かかる構成により、表示性能を劣化させずに、外光下での使用時において、コントラストの低下がより一層抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0021】
好ましくは、上記遮光層が、上記画素電極を兼ねている。
【0022】
遮光層を、該有機EL装置の他の構成要素と兼用することにより、薄膜形成の工程数を従来の有機EL装置と同程度に抑えられ、コストの上昇を抑えつつ本発明の効果を得ることができる。
【0023】
好ましくは、上記画素電極と上記有機発光層との間に正孔注入層を具備しており、上記遮光層が上記正孔注入層を兼ねている。
【0024】
遮光層を、該有機EL装置の他の構成要素と兼用することにより、薄膜形成の工程数を従来の有機EL装置と同程度に抑えられ、コストの上昇を抑えつつ本発明の効果を得ることができる。
【0025】
好ましくは、上記遮光層が、導電性を有する透明材料に、所定の波長を上限とする光を吸収する性質を有する顔料、又は染料を混入して得られるものである。
【0026】
かかる構成により、有機EL装置を構成する他の要素の特性に与える影響を抑制しつつ、必要とされる特性を有する遮光層により、本発明の効果を得ることができる。
【0027】
好ましくは、上記遮光層が、上記画素電極と上記画素電極を制御するスイッチング素子との間に形成され、さらに、上記画素電極と上記スイッチング素子とが上記遮光層を介さずに導通している。
【0028】
かかる構成により、上記遮光層を、顔料等を含有する樹脂等の絶縁性の材料で形成することが可能となり、製造コストの上昇を抑えつつ本発明の効果を得ることができる。
【0029】
好ましくは、上記有機EL装置は、表示面に円偏光板を有している。
【0030】
顔料は粒子であるので一定範囲の波長の光を吸収するとともに、他の波長の光を乱反射し得る。したがって、本発明の実施により顔料が混入された遮光層が形成された場合においても、上記構成により、上記遮光層で乱反射された外光が表示面から出光し、コントラストが低下するのを抑制できる。
【0031】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる電子機器は上述した有機EL装置を表示装置として備えている。
【0032】
上述の有機EL装置は外光下での使用時におけるコントラストの低下が抑制されているため、かかる構成により、外光下での使用時にも安定した表示性能を発揮する電子機器を提供できる。
【0033】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる有機EL装置の製造方法は、基板上に画素電極を形成する工程と、上記画素電極上に、赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層を形成する工程と、を有する有機EL装置の製造方法であって、上記画素電極のうち、少なくとも1つの型の有機発光層と積層する上記画素電極を、顔料が混入されたITOの溶液をインクジェット法で滴下後、硬化させることにより形成することを特徴としている。
【0034】
インクジェット法を用いると、極めて限定された領域のみに薄膜を形成できる。したがって、かかる製造方法の実施により、各発光の型に対応する電極ごとに異なる顔料を混入させ、各電極毎に異なる波長の光を遮光させることが容易となる。また、任意の発光の型に対応する電極のみ、例えば赤を発光する画素の電極のみに遮光層を形成することも可能となる。そのため、外光下でもコントラストの低下が抑制された安定した表示性能を有する有機EL装置を、より低コストで提供することが可能となる。
【0035】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる有機EL装置の製造方法は、基板上に画素電極を形成する工程と、上記画素電極上に、正孔注入層を形成する工程と、上記正孔注入層上に赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層を形成する工程と、を有する有機EL装置の製造方法であって、上記正孔注入層のうち、少なくとも1つの型の有機発光層と積層する上記正孔注入層を、顔料が混入されており正孔注入材料を溶質とする液材を、インクジェット法で滴下後、硬化させることにより形成することを特徴としている。
【0036】
上記顔料の混入により、正孔注入層に色相を付与し、所定以下の波長の光を吸収する遮光層としての機能を持たせることができる。そして、混入する顔料の選択により、赤、緑、青の3つの型でそれぞれ異なる色相を付与することもでき、また任意の色の型の正孔注入層にのみ色相を付与することもできる。また、有機EL装置の正孔注入層はインクジェット法で形成することは一般的である。したがって、かかる製造方法の実施により、現状の製造設備等を大きく変更せずに任意の画素の正孔注入層に遮光層の機能を付与でき、外光下でもコントラストの低下が抑制された有機EL装置を容易に提供することが可能となる。
【0037】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる有機EL装置の製造方法は、基板上に画素電極を形成する工程と、上記画素電極上に、赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層を形成する工程と、を有する有機EL装置の製造方法であって、上記画素電極のうち、少なくとも1つの型の有機発光層と積層する上記画素電極を、顔料が混入されたITOをターゲットに用いたスパッタ法で形成することを特徴としている。
【0038】
ITO薄膜は顔料を混入させることにより、透明性、及び導電性を失わせずに色相を付与できる。そのため、顔料により着色されたITO薄膜により、遮光層の機能も有する画素電極が形成できる。また、スパッタ法は膜厚均一性の高い薄膜形成が可能である。したがって、かかる製造方法の実施により、画素電極を兼ね、膜厚均一性の向上した遮光層を形成できる。そのため、外光下でもコントラストの低下が抑制され、かつ、遮光層膜厚の不均一による色むら等の発生も抑制された有機EL装置を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係る実施形態について、図を参照して説明する。なお、各図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。また、本発明を説明する際に不要なものについては、記載を省いている。
【0040】
(第1の実施形態)
図13に本発明の第1の実施形態に係る有機EL装置の断面図を示す。赤色光を発光する型の画素(以下、R画素と称する)、緑色光を発光する型の画素(以下、G画素と称する)、及び青色光を発光する型の画素(以下、B画素と称する)、の計3つの型の画素が規則的に配列されている。各画素の発光の強度を、導通する電流量により制御してカラー表示を可能としている。基板102の裏面から光を取り出すボトムエミッションタイプの有機EL装置であり、画素電極は透明材料で、対向電極118は金属薄膜で形成されている。以下、図1〜図13を用いて、本発明の第1の実施形態に係る有機EL装置の製造工程を説明する。
【0041】
まず、図1に示すように透明基板(以下、基板と称する)102上に各着色画素電極21〜23(図8参照)を駆動するスイッチング素子として薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する)104を形成し、その上層に層間絶縁膜としてのシリコン酸化膜106を形成する。ボトムエミッションタイプのため基板は透明性が必要となる。また、画素電極は基板102上にマトリクス状に形成されるので、TFT104もマトリクス状に形成される。
【0042】
次に、図2に示すようにシリコン酸化膜の一部をフォトリソグラフィーで選択的に除去し、TFT104上の所定の位置にコンタクトホール108を形成する。
【0043】
次に、図3に示すように、基板102上の全面にポリイミド膜110を形成し、さらに表面にCF4のプラズマ処理を施す。上記の処理によりポリイミド膜110の表面にフッ素原子が入り込み、ポリイミド膜110の表面が撥液性となる。
【0044】
次に、図4に示すように、ポリイミド膜110の一部をフォトリソグラフィーで選択的に除去し、残された部分で隔壁112を形成する。図4は断面図なので縞状に隔壁112が形成されたように見えるが、実際には格子状に形成されている。そして隔壁112に囲まれた略方形の部分(ポリイミド膜110が選択的に除去された部分)が各型の画素の領域となる。具体的には、RaがR画素領域(赤色光を発光する画素が形成される領域)、GaがG画素領域(緑色光を発光する画素が形成される領域)、BaがB画素領域(青色光を発光する画素が形成される領域)となる。(ここで言う画素領域とは、最終的に画素となる領域のことである。)
上述したように、ポリイミド膜110は表面が撥液性を有しており、一方ポリイミドという材料は特に表面処理をしない場合親液性を示すので、隔壁112は上面が撥液性を有し、側面は親液性を有することとなる。
【0045】
図5〜図7は各画素領域Ra、Ga、Baに、公知技術であるインクジェット法と、同じく公知技術であるゾルゲル法を用いて遮光層を兼ねたITO(酸化インジウム・スズ合金)膜を形成する工程である。ゾルゲル法とは、金属をアルコキシド化して得られたゾルを加水分解・重縮合反応により流動性を失ったゲルとし、このゲルを加熱して酸化物を得る方法である。
【0046】
図5に示すように、R画素領域Raに、顔料の微粒子11が分散されたITOのゾルSrを、インクジェット装置のノズル130から滴下する。ここで顔料の微粒子11には、550nm以下の波長の光を吸収する性質を有するものを用いる。それにより、後述する硬化処理により形成されたITO薄膜は透明性、及び導電性を維持しつつ、550nm以下の波長の光を吸収することにより遮断する性質を付与される。そして、顔料の微粒子11の性質により、形成されるITO薄膜はオレンジがかった黄色の色彩を帯びる。なお、隔壁112の上面は撥液性を有するため、滴下されたゾルSrが隣接する画素領域に流出するのを防止できる。後述するゾルSg、及びゾルSbの滴下時も同様である。
【0047】
次に、図6に示すように、G画素領域Gaに、顔料の微粒子12が分散されたITOのゾルSgを、インクジェット装置のノズル130から滴下する。ここで顔料の微粒子12には、480nm以下の波長の光を吸収する性質を有するものを用いる。それにより、後述する硬化処理により形成されたITO薄膜は透明性、及び導電性を維持しつつ、480nm以下の波長の光を吸収することにより遮断する性質を付与される。そして、顔料の微粒子12の性質により、形成されるITO薄膜は黄色の色彩を帯びる。
【0048】
次に、図7に示すように、B画素領域Baに、顔料の微粒子13が分散されたITOのゾルSbを、インクジェット装置のノズル130から滴下する。ここで顔料の微粒子13には、440nm以下の波長の光を吸収する性質を有するものを用いる。それにより、後述する硬化処理により形成されたITO薄膜は、透明性、及び導電性を維持しつつ、440nm以下の波長の光を吸収することにより遮断する性質を付与される。そして、顔料の微粒子13の性質により、形成されるITO薄膜は黄緑色の色彩を帯びる。
【0049】
次に、図8に示すように、基板102を加熱処理し、図5〜図7に示す各工程により各画素領域Ra、Ga、Baに滴下された、各顔料の微粒子11、12、13が分散されているインジウム・スズのゾル(Sr、Sg、Sb)を硬化させ、着色されたITO膜からなる画素電極(以下、着色画素電極と称する)を形成する。R画素領域Ra上のITO薄膜はR着色画素電極21となり、G画素領域Ga上のITO膜はG着色画素電極22となり、B画素領域Ba上のITO膜はB着色画素電極23となる。上述したように、分散されていた顔料の色により、各着色画素電極21〜23は異なった色を示す。
【0050】
次に、図9に示すように、各着色画素電極21〜23上に、公知技術であるインクジェット法により、正孔注入材料を溶媒に溶解して得られる液材(以下、正孔液材と称する)Cを滴下する。
【0051】
そして、図10に示すように、正孔液材Cの滴下が終了した後、乾燥・硬化工程により溶媒を除去して、各着色画素電極21〜23上に正孔注入層114を形成する。正孔注入層114は有機発光層の発光効率の向上等の目的で形成されるものであり、本実施形態では色の型に関係なく各画素領域Ra、Ga、Baで共通である。
【0052】
次に、図11に示すように、各着色画素電極21〜23上(実際には正孔注入層114上となる)に、公知技術であるインクジェット法により、EL材料を溶媒に溶解して得られる液材(以下、EL液材と称する)Dを滴下する。隔壁112の上面は撥液性を有しているため、EL液材Dが隣接する画素上へ流出することを回避できる点は、上述した液材Cの場合と同様である。
【0053】
ここで、EL液材Dに溶解している溶質(有機EL材料)は、発光の色の型により異なるものが必要となる。R着色画素電極21上に滴下するEL液材Dには、例えばローダミンおよびその誘導体などを有機EL材料として用いる。同様に、G着色画素電極22上に滴下するEL液材Dには、例えばキナクリドンおよびその誘導体などを用い、B着色画素電極23上に滴下するEL液材Dには、例えばジスチリルビフェニルおよびその誘導体などを用いる。
【0054】
そして、EL液材Dの滴下が終了した後、図12に示すように、乾燥・硬化工程により溶媒を除去して、各着色画素電極21〜23の上(正孔注入層114上)に有機発光層116を形成する。上述した材料の違いにより、R着色画素電極21上の有機発光層116は赤色光を、G着色画素電極22上の有機発光層116は緑色光を、B着色画素電極23上の有機発光層116は青色光を、それぞれ発光する。
【0055】
そして、最後に図13に示すように、基板102の上面に、各着色画素電極21〜23と対になる対向電極118と封止層120を形成し、基板102の裏面(画素電極等が形成されていない方の面)に円偏光板122を貼付する。対向電極は全ての画素間で共通電位となるので、各画素間で分離するようなパターニングを必要とせずに、基板102上全面に形成する。また本実施形態はボトムエミッションタイプのため、透明性は必要ではない。対向電極118の材料としては、カルシウム層とアルミニウム層を積層したもの、あるいはマグネシウムと銀の合金などを用い、形成はスパッタ法等で行う。
【0056】
封止層120は対向電極118等を外気に含まれている水分等から保護するためのもので、基板102上全面に樹脂を塗布し、熱あるいは紫外線等で硬化させて形成する。また、円偏光板122は、各着色画素電極21〜23に混入された顔料の微粒子が、外光を乱反射することによる表示面の色調の変化を抑制するためのものである。
【0057】
上述したように、各着色画素電極21〜23を形成するITOには、顔料が混入され着色されている。着色されているということは、一定領域の波長の光を吸収することにより遮光しているということである。
【0058】
有機EL装置に用いられる有機発光材料は、一般に、電流による発光(エレクトロルミネッセンス)だけでなく、光(光の照射)によって発光するフォトルミネッセンスの性質も併せ持つ。具体的には各発光層が発光する光の波長の下限と若干重なる領域以下の波長の光により、電流による発光光の波長とほぼ同じ波長の光を生じる性質を有している。そのため、外光下での使用時には表示面全体がうすく発光し、コントラストが低下するという現象が生じ得る。
【0059】
その対策として、所定の波長以下の光を遮断するフィルムを表示面全体(全面)に貼付するという手法が採られている。人の眼は、波長が380nm以下の光を感知できず、また、380nmを超えて440nm以下の範囲の光は殆ど感知しない。したがって、上限を380nm乃至440nm未満の範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断するフィルムを表示面全体に貼付することにより、各発光層が発光する光に悪影響は与えずに、外光によるコントラストの低下をある程度は抑制できるからである。
【0060】
しかし、上記手法は、R及びGの画素では充分ではなかった。R及びGの画素は440nmを超える波長の光でも励起され得るが、表示面全体にフィルムを貼付する以上、(Bの画素が発光する光に含まれる)440nmを超える光は遮断できないからである。
【0061】
本実施形態は上記課題を解決するためのもので、R、G、Bの各着色画素電極21〜23に顔料を混入し、各型の画素電極に対しそれぞれ異なる上限以下の波長の光を遮断可能な遮光層の機能を付与し、R、G、Bの各発光層が発光する光(以下、発光光と称する)の波長の、下限領域以下の波長の外光を遮断している。それにより外光による、R、G、Bの各発光層の発光を抑制し、強い外光下での使用時においてもコントラストの低下が抑制され、安定した表示性能を発揮する有機EL装置を得ている。
【0062】
以上、本実施形態は、R、G、B各型の画素に、それぞれ最適な色相を有し最適な上限値以下の波長の光を遮断し得る遮光層を形成することにより、各画素の外光下での使用時のコントラストの低下を効果的に抑制し、併せて、上記フィルムの貼付工程を廃することにより、製造コストの低減を果たすものである。
【0063】
なお、各着色画素電極21〜23に混入する、各顔料の微粒子11〜13の量は、外光の影響の排除と電力の効率的利用とのバランスの観点から決定するのが好ましい。具体的には、上記R、G、Bの各発光層の発光光を90%以上透過させつつ、各発光層を励起し得る外光を90%以上遮断できる量が好ましい。発光光を90%程度透過させれば充分な表示性能を確保でき、また外光を90%以上遮断できれば、充分なコントラストが得られるからである。
【0064】
ここで、上述の実施形態では、R着色画素電極21上に形成する遮光層は、550nmを上限値としてそれ以下の波長の光を遮断するとしているが、上限値は550nmに限定されるものではない。図14に、赤の発光光を生じる有機EL材料の、発光光の強度と波長との関係、及び、一定の強度の外光が照射されたときの吸光度(吸収率)と波長との関係を示す。図示するように、外光による発光(フォトルミネッセンス)の波長は最大で570nm近辺まであるため、外光の影響を完全に排除するためには、上限値を570nmとするのが好ましい。
【0065】
しかし一方で、外光の吸収率は外光が460nm以上では低下し始め、480nm以上では傾きが大きくなり、500nm以上ではかなり小さな値となる。また、電流による発光(エレクトロルミネッセンス)の波長の下限は520nm付近である。そして、電流による発光と、外光による発光の曲線との交点の波長は540nm近辺である。したがって、有機EL装置に加えた電力を効率的に利用する観点からは、上限値は520nmが好ましいと言え、電力の効率的利用と外光の影響の排除とのバランスの観点からは、上限値は540nmが好ましいと言える。
【0066】
また、吸収可能な波長の範囲を広げるためには、遮光層に混入する顔料等の濃度や種類を増加させる必要が生じる可能性も考慮すると、外光の影響が急速に低下し始める480nmを上限とするのも好ましく、さらに、外光の影響が低下し始める460nmを上限とするのも好ましい。
【0067】
また同様に、上述の実施形態ではG着色画素電極22上に形成する遮光層は480nmを上限値としてそれ以下の波長の光を遮光するとしているが、上限値は480nmに限定されるものではない。図15に、緑の発光光を生じる有機EL材料の、発光光の強度と波長との関係、及び、一定の強度の外光が照射されたときの吸光度(吸収率)と波長との関係を示す。図示するように、上記フォトルミネッセンスの波長は最大で500nm近辺まであるため、外光の影響を完全に排除するためには、上限値を500nmとするのが好ましい。
【0068】
しかし一方で、外光の吸収率は、外光の波長が440nm以上では低下し始め、450nm以上では傾きが大きくなり、460nm以上では急激に低下する。また、電流による発光(エレクトロルミネッセンス)の波長の下限は460nm付近である。そして、電流による発光と、外光による発光の曲線との交点の波長は480nm近辺である。したがって、有機EL装置に加えた電力を効率的に利用する観点からは、上限値は460nmが好ましいと言え、電力の効率的利用と外光の影響の排除とのバランスの観点からは、上限値は480nmが好ましいと言える。
【0069】
また、吸収可能な波長の範囲を広げるためには、遮光層に混入する顔料等の濃度や種類を増加させる必要が生じる可能性も考慮すると、外光の影響が急速に低下し始める450nmを上限とするのも好ましく、さらに、外光の影響が低下し始める440nmを上限とするのも好ましい。
【0070】
また、上述の実施形態ではB着色画素電極23上に形成する遮光層は440nmを上限値としてそれ以下の波長の光を遮光するとしているが、上限値は380nm乃至440nmの範囲が好ましい。人の眼は380nm未満の光は感知できず、また380nm乃至440nmの範囲の光は僅かではあるが感知できる。
【0071】
したがって、電力の効率的利用のみの観点からは上限値は380nmとすべきであり、また外光の影響の排除のみの観点からは上限値は440nmとすべきであり、さらに、電力の効率的利用と外光の影響の排除とのバランスの観点からは、上限値は上記2つの値の間に設定すべきだからである。
【0072】
(第2の実施形態)
図23に、本発明の第2の実施形態に係る有機EL装置を示す。第1の実施形態と同様にR、G、Bの3つの型の画素が規則的に配置されたボトムエミッションタイプの有機EL装置である。以下、本実施形態の実施手順を、図16〜23を用いて説明する。なお、第1の実施形態にかかる図1〜図13に示された要素と対応する要素には同一の符号を付与している。
【0073】
まず、図16に示すように、スイッチング素子としてTFT104、層間絶縁膜としてのシリコン酸化膜106、及びコンタクトホール108を形成した基板102上の全面にITO薄膜202を公知技術であるスパッタ法で形成する。上記の各要素により、R画素領域Ra、G画素領域Ga、及びB画素領域Baが決定される。
【0074】
次に、図17に示すように、ITO薄膜202をフォトリソグラフィーでパターニングして各画素領域Ra、Ga、Baに、画素電極31〜33を形成する。第1の実施形態とは異なり、この段階ではITO薄膜202に顔料は混入されていない。したがって、各画素電極31〜33は3つとも無色透明で差異はないが、将来的に(図23参照)画素電極上には、第1の実施形態と同じく3つの型の有機発光層を形成するため、それぞれ異なる符号を付与してある。なお各画素電極31〜33は、コンタクトホール108を介してTFT104と導通している。
【0075】
次に、図18に示すように、各画素電極31〜33が形成された基板102上に第2のシリコン酸化膜を形成し、それをフォトリソグラフィーでパターニングして、下部隔壁204を形成する。図18では縞状にパターニングされているようにも見受けられるが、実際には一部が画素電極と重なりつつ、第1の実施形態における隔壁112と同様に、各画素電極31〜33の周囲を囲むように形成されている。
【0076】
次に、図19に示すように、各画素電極31〜33等が形成された基板102上全面にポリイミドの薄膜を形成し、それをフォトリソグラフィーでパターニングして、下部隔壁204と中心線が一致し基板に垂直方向から見た幅が下部隔壁204のそれよりも若干狭い上部隔壁206を形成する。図示するように、下部隔壁204はその上面の一部が上部隔壁206で覆われるが、上面の(断面方向から見た)両端、及び側面は露出している。
【0077】
次に、図20に示すように、上部隔壁206まで形成された基板102全面にCF4プラズマ処理を施す。ポリイミドで形成された上部隔壁206の表面にフッ素原子が入り込み、ポリイミドに含有されている炭素原子と反応し、(表面が)撥液性となる。
【0078】
次に、図21に示すように、上部隔壁206まで形成された基板102全面にO2プラズマ処理を施す。下部隔壁204と各画素電極31〜33の表面から、残渣あるいは異物等が酸化により除去され、(表面が)親液性を有するようになる。
【0079】
次に、第1の実施形態の図5に示す方法で、画素電極31上にインクジェット装置のノズル130から顔料の微粒子11を分散したインジウム・スズのゾルBrを滴下し、画素電極32上にインクジェット装置のノズル130から顔料の微粒子12を分散したインジウム・スズのゾルBgを滴下する。(画素電極33上には滴下しない。)そして、そのゾルを硬化させ、図22に示すように、画素電極31上には、顔料の微粒子11が混入され550nm以下の波長の光を遮断するR着色画素電極41を形成し、画素電極32上には、顔料の微粒子12が混入され480nm以下の波長の光を遮断するG着色画素電極42を形成する。
【0080】
この後は、第1の実施形態の図9〜13と同様に各画素電極31〜33の上に正孔注入層114、有機発光層116を形成し、その上層に(基板全面に)対向電極118、封止層120、を形成し、基板102の裏面(画素電極等が形成されていない方の面)に円偏光板122上を貼付する。各要素の形成方法、材料等も第1の実施形態と同様である。そしてさらに、円偏光板122上に440nm以下の波長の光を遮断可能なUVカットフィルター124を貼付して、図23に示す有機EL装置を得る。
【0081】
本実施形態は、ゾルゲル法で着色されたITO薄膜を形成する点は第1の実施形態と同様であるが、通常の方法で形成されたITO薄膜と併用している点が異なっている。つまり、各画素電極31〜33のITO薄膜を通常の方法で形成し、その上にインクジェット法により着色されたITO薄膜を形成している。本実施形態による利点は、遮光層の機能をもつITO薄膜を、必要なところだけに形成できることである。各画素領域Ra、Ga、Baには、公知の手段によって無色のITO薄膜が形成されているので、その上に遮光層となるITO薄膜を形成しなくても画素としての機能は保持できる。したがって、たとえば、外光による発光層の励起をあまり考慮する必要のないBの画素(画素電極33上)には遮光層を形成せずに、RとGの画素上にのみ遮光層を形成できる。その場合、顔料が2種類で済み、コストの削減が可能となる。また、Rの画素上にのみ遮光層を形成し、より一層コストを削減することもできる。
【0082】
なお、UVカットフィルター124はBの発光層を励起し得る440nm以下の波長の光を遮断するためのもので、画素電極33上に着色されたITOによる遮光層を形成しないことを補填するものである。
【0083】
また、各遮光層が遮断できる波長の上限は、上記の値(Rの画素で550nm、Gの画素で480nm)に限定されるものではない点は第1の実施形態と同様である。また、R着色画素電極41とG着色画素電極42に混入する顔料の微粒子の量は、発光光を90%以上透過させつつ、各発光層を励起し得る外光を90%以上遮断できる量が好ましい点も第1の実施形態と同様である。
【0084】
(第3の実施形態)
図30に本発明の第3の実施形態に係る有機EL装置を示す。第1の実施形態と同様にR、G、Bの3つの型の画素が規則的にされたボトムエミッションタイプの有機EL装置である。遮光層がR画素領域RaとG画素領域Gaに形成されている点は第2の実施形態と同様であるが、R画素領域Raに形成されている遮光層と、G画素領域Gaに形成されている遮光層が同一の色で、遮断できる光の波長の上限が500nmに統一されている点は第2の実施形態と異なっている。以下、本実施形態の実施手順を、図24〜30を用いて説明する。なお、第1の実施形態にかかる図1〜図13、及び第2の実施形態にかかる図16〜図23に示された要素と対応する要素には同一の符号を付している。
【0085】
まず、図24に示すように、第1の実施形態の図1〜図3に示す工程により、基板102上にTFT104、シリコン酸化膜106、及びコンタクトホール108を形成する。第1の実施形態で述べたように、R、G、Bの3つの型の画素が規則的に配置された有機EL装置を形成するので、この段階でR画素領域Ra、G画素領域Ga、B画素領域Baが特定される。
【0086】
次に、図25に示すように、基板102上全面に、着色ITO薄膜302をスパッタ法で形成する。そしてそのスパッタ時に、通常のITOターゲットではなく、ターゲット材料のITOに顔料の微粒子14が混入されているITOターゲット300を用いる。透明かつ有色のITO薄膜を形成するためである。ここで顔料の微粒子14には、500nm以下の波長の光を吸収する性質を有するものを用いる。顔料の微粒子14により、形成されるITO薄膜は黄色の色彩を帯びる。
【0087】
図26に、スパッタ法により、顔料で着色されたITO薄膜を形成する態様を示す。通常のマグネトロンスパッタであり、高真空チャンバー303内に基板102とITOターゲット300が対向して配置されている。ターゲットが配置されている側が陰極306で、図示するように基部に磁石308が配置されている。基板102が配置されている側を陽極304にして直流の高電圧を印加しつつ、高真空チャンバー303内にArガスを導入すると、(Arガスは)プラズマ状態となる。そして、電界により加速されたAr原子が図示するようにITOターゲット300に衝突し、その衝撃により、ITOの粒子が飛び出し基板102上に被着する。その際顔料の微粒子14も同時に飛び出すため基板102の表面には顔料の微粒子14が混入されたITO薄膜が形成される。なお、磁石308はスパッタ効率を上げるためのものである。
【0088】
顔料の微粒子14は、第1の実施形態でG着色画素電極22の形成時に用いた顔料の微粒子12とは異なっている。しかし遮断する光の波長の上限が(500nmと480nmで)あまり差がないため、形成されるITO薄膜は色彩的には略同一で黄色となる。
【0089】
次に、図27に示すように着色ITO薄膜302をフォトリソグラフィーでパターニングして、R画素領域RaにG2着色画素電極51を、G画素領域GaにG2着色画素電極52を形成する。(51と52は、形成材料は同一で、形成される位置が異なる。)この段階では、B画素領域Baには着色ITO薄膜302は残さず、画素電極は形成しない。G2着色画素電極51とG2着色画素電極52は、コンタクトホール108を介してTFT104と導通している。
【0090】
次に、図28に示すように、G2着色画素電極51とG2着色画素電極52が形成された基板上全面に(再度)ITO薄膜202を形成する。このITO薄膜202は通常のもの、つまり顔料が混入されていない無色のものである。
【0091】
次に、図29に示すように、ITO薄膜202をフォトリソグラフィーでパターニングして、R画素領域Ra、G画素領域Ga、及びB画素領域Baに無色のITOによる画素電極31、32、33を形成する。画素電極33は、コンタクトホール108を介してTFT104と導通している。図示するように、R画素領域Ra上では、顔料の微粒子の混入により着色されたG2着色画素電極51と、無色のITOからなる画素電極31とが、略同一の位置、平面形状で重なっている。同様に、G画素領域Ga上では、顔料の微粒子の混入により着色されたG2着色画素電極52と、無色のITOからなる画素電極32とが、略同一の位置、平面形状で重なっている
以下、第1の実施形態、第2の実施形態に示したものと同様の手段、工程により各画素電極31〜33上に、第2の実施形態と同様の工程を経て、下部隔壁204と、その上層の上部隔壁206を形成する。そして、CF4プラズマとO2プラズマを行った後に、上記2層の隔壁で囲まれた窪みに正孔注入層114、有機発光層116を形成し、その上層に(基板全面に)対向電極118、封止層120、を形成する。そして基板102の裏面(画素電極等が形成されていない方の面)に円偏光板122、及び440nm以下の波長の光を遮断可能なUVカットフィルター124を貼付して図30に示す有機EL装置を得る。
【0092】
本実施形態の特徴は、遮光層をスパッタ法で形成していることである。有機EL装置の画素電極は、スパッタ法で得られたITO薄膜をパターニングして形成するのが一般的である。したがって、本実施形態に示すように、顔料の微粒子が混入されたスパッタターゲットを用いることにより、他に工程の変更や設備の増加を伴わずに、画素領域に遮光層を形成できる。また、スパッタ法で形成された薄膜は膜厚均一性が高いので、遮光層形成後の基板102表面の平坦性が向上することも特徴の1つである。
【0093】
なお、本実施形態において、遮光層の遮断できる光の波長の上限値を500nmとしたのは、R画素とG画素とに同一の遮光層を用いるためであり、G画素に適用可能な最大の数値を選択したものである。したがって、上記上限値は双方の画素に適用可能な値であれば選択でき、460nm、あるいは、480nmも好ましい。また、基板102の裏面にUVカットフィルター124を貼付する目的は、第2の実施形態と同様である。
【0094】
なお、G2着色画素電極51と52に混入する顔料の微粒子の量は、発光光を90%以上透過させつつ、発光層を励起し得る外光を90%以上遮断できる量が好ましい点は第1の実施形態と同様である。また、本実施形態に用いる顔料は耐プラズマ性の優れるものを用いる。
【0095】
(第4の実施形態)
図36に本発明の第4の実施形態に係る有機EL装置を示す。第1の実施形態と同様にR、G、Bの3つの型の画素が規則的に形成され、各画素領域Ra、Ga、Baに遮断できる光の波長の上限が異なる遮光層が形成されている。以下、本実施形態の実施手順を、図31〜図36を用いて説明する。なお、第1の実施形態にかかる図1〜図13、第2の実施形態にかかる図16〜図23、及び第3の実施形態にかかる図24〜図30に示された要素と対応する要素には同一の符号を付している。
【0096】
まず、図1、図2に示す工程により、基板102上に、マトリクス状に形成されたTFT104、シリコン酸化膜106、コンタクトホール108を形成する。次に図16、図17に示す工程により、その基板全面にスパッタ法でITO薄膜202を形成する。第2の実施形態と同様ITO薄膜に顔料等は混入されていない。そして、ITO薄膜202をフォトリソグラフィーでパターニングして、各画素領域Ra、Ga、Baに、コンタクトホール108を介してTFT104と導通する画素電極31、32、33を形成する。そしてさらに、図18〜図21に示す工程により、下部隔壁204と、その上層の上部隔壁206を形成後、CF4プラズマとO2プラズマを行い、図31に示す形態となる。各画素領域Ra、Ga、Baには上記2層の隔壁で囲まれ、各画素電極31〜33を底部とする窪みが形成される。ここで、R画素領域Raに形成される正孔注入層をR正孔注入層、G画素領域Gaに形成される正孔注入層をG正孔注入層、B画素領域Baに形成される正孔注入層をB正孔注入層、と称する(図35参照)。
【0097】
次に、図32に示すように、画素電極31上に、正孔注入材料を溶質とし、第1の実施形態でも用いた、顔料の微粒子11を分散した液材Prをインクジェット装置のノズル130から滴下する。
【0098】
次に、図33に示すように、画素電極32上に、正孔注入材料を溶質とし、第1の実施形態でも用いた、顔料の微粒子12を分散した液材Pgをインクジェット装置のノズル130から滴下する。
【0099】
次に、図34に示すように、画素電極33上に、正孔注入材料を溶質とし、第1の実施形態でも用いた、顔料の微粒子13を分散した液材Pbをインクジェット装置のノズル130から滴下する。
【0100】
次に、図35に示すように、基板102全体を加熱して、各画素電極31〜33上の液材Pr、Pg、Pbを乾燥硬化して溶媒を除去し、R、G、Bの各正孔注入層(114r、114g、114b)を形成する。画素電極31上には550nm以下の波長の光を遮断するR正孔注入層114rが、画素電極32上には480nm以下の波長の光を遮断するG正孔注入層114gが、そして画素電極33上には440nm以下の波長の光を遮断するB正孔注入層114bが、それぞれ形成される。
【0101】
そして、最後に図36に示すように、各正孔注入層114r、114g、114b上にそれぞれ赤、緑、青を発光する有機発光層116を形成して、さらに基板全面に対向電極118と封止層120を形成し、表示面に円偏光板122を貼付して、有機EL装置を得る。
【0102】
本実施形態の特徴は、正孔注入層が遮光層を兼ねている点にある。上述したように、有機EL装置に用いられる有機発光材料は、光(の照射)によって発光するフォトルミネッセンスの性質も持つ。具体的には各発光層が発光する光の波長の下限と若干重なる領域以下の波長の光により、電流による発光光の波長とほぼ同じ波長の光を生じる性質を有している。そして、その性質のため、一般的な有機EL装置は外光下での使用時にコントラストが低下する。しかし、本実施形態にかかる有機EL装置の各正孔注入層114r、114g、114bは顔料の微粒子の混入により着色されており、一定領域の波長の光を吸収することにより遮断している。
【0103】
具体的には、顔料の色相の選定により、R正孔注入層114rは550nm以下の波長の光を、G正孔注入層114gは480nm以下の波長の光を、そしてB正孔注入層114bは440nm以下の波長の光を遮断している。これはR、G、Bの各発光層を励起し得る外光をかなりの程度まで遮断していることとなる。すなわち、第1の実施形態と同様に、R、G、B各型の画素に、それぞれ最適な色相を有し最適な上限値以下の波長の光を遮断し得る遮光層を形成することにより、各画素の外光下での使用時のコントラストの低下を効果的に抑制している。
【0104】
そして、有機EL装置、特に高分子型の有機EL装置においては、電極間に狭持される発光層や正孔注入層をインクジェット法で形成することが一般的である。したがって、本実施形態にかかる製造方法の実施により、現状の製造設備等は殆ど変更せずに、正孔注入材料を溶質とする液材に顔料を混入することのみで、外光下でもコントラストの低下が抑制された有機EL装置を提供することが可能となる。
【0105】
なお、R正孔注入層114rが遮断する光の波長の上限値は550nmに限定されるものではなく、570nm、540nm、520nm、480nm、若しくは460nmでも好ましい効果が得られる点も第1の実施形態と同様である。同様に、G正孔注入層114gが遮断する光の波長の上限値は480nmに限定されるものではなく、500nm、460nm、450nm、若しくは440nmでも好ましい効果が得られる点も第1の実施形態と同様である。さらに、B正孔注入層114bが遮断する光の波長の上限値は440nmに限定されるものではなく、380nm乃至440nmの範囲であれば好ましい効果が得られる点も第1の実施形態と同様である。
【0106】
また、各正孔注入層114r、114g、114bに混入する顔料の微粒子の量は、発光光を90%以上透過させつつ、発光層を励起し得る外光を90%以上遮断できる量が好ましい点も、第1の実施形態と同様である。
【0107】
(第5の実施形態)
図40に本発明の第5の実施形態に係る有機EL装置を示す。第1の実施形態と同様にR、G、Bの3つの型の画素が規則的に形成されている、ボトムエミッションタイプの有機EL装置である。各画素領域Ra、Ga、Baに遮断できる光の波長の上限が異なる遮光層が形成されている。以下、本実施形態の実施手順を、図37〜40を用いて説明する。なお、第1の実施形態にかかる図1〜図13、第2の実施形態にかかる図16〜図23、第3の実施形態にかかる図24〜図30、及び第4の実施形態にかかる図31〜図36に示された要素と対応する要素には同一の符号を付している。
【0108】
まず、図37に示すように、第1の実施形態の図1〜図3に示す工程により、基板102上に、マトリクス状に形成されたTFT104、シリコン酸化膜106、コンタクトホール108を形成する。そして、R画素領域Ra、G画素領域Ga、B画素領域Baを決定する。
【0109】
次に、図38に示すように、各画素領域Ra、Ga、Ba内の一部に公知技術である印刷法で顔料の薄膜(以下、顔料薄膜と称する)を形成する。具体的には溶媒に分散した顔料を印刷塗布し、加熱により溶媒を除去する工程を各色別に計3回繰り返し、透光性を有しかつ顔料で着色された薄膜を得る。ここで、R画素領域Raに形成する顔料薄膜をR顔料薄膜71、G画素領域Gaに形成する顔料薄膜をG顔料薄膜72、B画素領域Baに形成する顔料薄膜をB顔料薄膜73とする。
【0110】
各顔料薄膜71〜73の色は、第1の実施形態で形成したITO薄膜と同様に、対応する画素領域の色の型によって異なる。使用する顔料は第1の実施形態で用いた各顔料の微粒子11、12、13と同様なため、顔料薄膜71が550nm以下の波長に光を吸収するオレンジがかった黄色、顔料薄膜72が480nm以下の波長に光を吸収する黄色、顔料薄膜73が440nm以下の波長に光を吸収する黄緑色、となる。
【0111】
次に、各顔料薄膜71〜73が形成された基板102上全面に通常の(無色の)ITO薄膜を形成する。そして、上記ITO薄膜をフォトリソグラフィーでパターニングして図39に示すように、画素電極31、32、33を形成する。各画素電極31〜33はコンタクトホール108を介してTFT104と導通しており、また、各顔料薄膜71〜73を覆うように形成されている。
【0112】
次に、第1、及び第2の実施形態と同様に、各画素領域Ra、Ga、Baの周囲に下部隔壁204、上部隔壁206を形成し、CF4プラズマとO2プラズマを行い、さらに各画素電極31〜33上に正孔注入層114、有機発光層116を形成し、その上層に(基板全面に)対向電極118、封止層120、を形成し、基板102の裏面(画素電極等が形成されていない方の面)に円偏光板122上を貼付して、図40に示す有機EL装置を得る。
【0113】
本実施形態の特徴は、遮光層(各顔料薄膜71〜73)が導電性を必要としていないため、形成材料がITOや正孔注入材料に限定されない点にある。上記遮光層が、各画素電極31〜33とシリコン酸化膜106の間に形成されていながら、各画素電極31〜33は上記遮光層を介さずにTFT104と導通しているからである。したがって、かかる構成により、上記遮光層を印刷法等の公知の技術で形成することが可能となり、現状の製造設備等は殆ど変更せずに、印刷に要する設備・工程の増加のみで、本発明の効果を得ることができる。
【0114】
なお、顔料薄膜71が遮断する光の波長の上限値は550nmに限定されるものではなく、570nm、540nm、520nm、480nm、若しくは460nmでも本発明の効果が得られる点も第1の実施形態と同様である。同様に、顔料薄膜72が遮断する光の波長の上限値は480nmに限定されるものではなく、500nm、460nm、450nm、若しくは440nmでも本発明の効果が得られる点も第1の実施形態と同様である。さらに、顔料薄膜73が遮断する光の波長の上限値は440nmに限定されるものではなく、380nm乃至440nmの範囲であれば本発明の効果が得られる点も第1の実施形態と同様である。
【0115】
また、各顔料薄膜71〜73は、発光光を90%以上透過させつつ、各発光層を励起し得る外光を90%以上遮断できるように形成されることが好ましい点も、第1の実施形態と同様である。
【0116】
(電子機器)
本発明の有機EL装置は、表示部を備えた様々な電子機器に適用される。以下、本発明の有機EL装置を備えた電子機器の適用例について説明する。
【0117】
図41は、本発明の有機EL装置を携帯電話機に適用した例を示す斜視図である。携帯電話機410は、本発明の有機EL装置を小サイズの表示部411として備えており、その他、複数の操作ボタン412、受話口413、及び送話口414を備えて構成されている。
【0118】
なお、上述した例に加えて、他の例として、腕時計、モバイル型コンピュータ、液晶テレビ、ビューファインダ型やモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。本発明の有機EL装置は、こうした電子機器の表示部としても適用できる。
【0119】
(変形例1)
第3の実施形態の変形例として、G2着色画素電極52を形成しない形態が考えられる。つまり顔料が混入されたスパッタで形成される着色されたITO薄膜のパターニング工程でR画素領域Raにのみ着色された画素電極を形成する形態である。これは、遮断できる光の波長の上限を(Rの発光層にとっての)最適な値とできるという効果がある。Gの発光層との共通化を考慮する必要がないからである。
【0120】
(変形例2)
第3の実施形態の変形例として、ITO薄膜202を440nm以下の波長の光を吸収する性質を有する顔料が混入されたITOターゲットを用いるスパッタで形成する形態が考えられる。つまり各画素電極31〜33を、着色されたITO薄膜で形成する形態である。これは、Bの発光層に対応する遮光層が得られるのでUVカットフィルターを形成せずにすみ、工数や部品点数を削減できるという効果がある。また上記変形例1に適用すると、Gの発光層に対応する遮光層も形成できる効果もある。第1の実施形態で述べたように、Gの発光層においては、440nm以下の波長の光を遮断しても、コントラストの向上に効果があるからである。
【0121】
(変形例3)
第3の実施形態において、ITO薄膜202を低酸素雰囲気中でスパッタすることにより形成する形態が考えられる。一般的な3%程度の酸素濃度の雰囲気中で形成されたITO薄膜に対し、1%程度の低酸素濃度の雰囲気中で形成されたITO薄膜は略400nm以下の波長の光の透過率が(それを超える波長の比とくらべ)かなり低下するため、上記の波長の光に対する遮光層の機能も果たす。したがって、UVカットフィルター124を形成する必要がなくなり、工数や部品点数を削減できるという効果が生じる。
【0122】
(変形例4)
第5の実施形態において、IZO(酸化インジウム・鉛合金)で各画素電極31〜33を形成する形態が考えられる。IZOはITOと異なり、成膜から電極形成までの過程で高温の処理を要しないため、遮光層として、染料で着色された樹脂等の耐熱性の低い材質も使用し得るという効果がある。
【0123】
(変形例5)
第5の実施形態において、工程の順序を一部変更して、コンタクトホール108の形成を、シリコン酸化膜106上に各顔料薄膜71〜73を形成した後に行う形態が考えられる。コンタクトホール108の表面、特に底部が印刷等の工程で汚染されないので、コンタクトホール108内の洗浄等の工程を経ずに、直ちにITO薄膜202の形成工程に移行できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図5】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図6】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図7】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図8】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図9】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図10】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図11】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図12】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図13】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図14】赤の発光を生じる有機EL材料の波長と吸収率の関係の一例を示す図。
【図15】緑の発光を生じる有機EL材料の波長と吸収率の関係の一例を示す図。
【図16】第2の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図17】第2の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図18】第2の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図19】第2の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図20】第2の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図21】第2の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図22】第2の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図23】第2の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図24】第3の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図25】第3の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図26】顔料が混入されたITOターゲットを用いたスパッタ装置を説明する図。
【図27】第3の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図28】第3の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図29】第3の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図30】第3の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図31】第4の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図32】第4の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図33】第4の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図34】第4の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図35】第4の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図36】第4の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図37】第5の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図38】第5の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図39】第5の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図40】第5の実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する断面図。
【図41】本発明の有機EL装置を備えた電子機器の一例を示す斜視構成図。
【符号の説明】
【0125】
11…顔料の微粒子、12…顔料の微粒子、13…顔料の微粒子、14…顔料の微粒子、21…R着色画素電極、22…G着色画素電極、23…B着色画素電極、31…R画素電極、32…G画素電極、33…B画素電極、41…R着色画素電極、42…G着色画素電極、51…G2着色画素電極、52…G2着色画素電極、71…R顔料薄膜、72…G顔料薄膜、73…B顔料薄膜、102…透明基板、104…TFT、106…層間絶縁膜としてのシリコン酸化膜、108…コンタクトホ−ル、110…ポリイミド膜、112…隔壁、114…正孔注入層、114r…R正孔注入層、114g…G正孔注入層、114b…B正孔注入層、116…発光層、118…対向電極、120…封止層、122…円偏光板、124…UVカットフィルター、130…インクジェット装置のノズル、202…ITO薄膜、204…下部隔壁、206…上部隔壁、300…ITOターゲット、302…着色ITO薄膜、303…高真空チャンバー、304…陽極、306…陰極、308…磁石、410…携帯電話機、411…表示部、412…操作ボタン、413…受話口、414…送話口、C…正孔液材、D…EL液材、Pr…顔料の微粒子11が分散された正孔注入材料の液材、Pg…顔料の微粒子12が分散された正孔注入材料の液材、Pb…顔料の微粒子13が分散された正孔注入材料の液材、Ra…R画素領域、Ga…G画素領域、Ba…B画素領域、Sr…顔料の微粒子11が分散されたITOのゾル、Sg…顔料の微粒子12が分散されたITOのゾル、Sb…顔料の微粒子13が分散されたITOのゾル。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にマトリクス状に配置された画素電極と、
前記画素電極と対向する対向電極と、
前記画素電極と前記対向電極の間に存在する、各画素電極毎に赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層と、
を有する有機EL装置であって、
前記有機発光層の内、少なくとも1つの型の有機発光層と表示面との間に、当該型の有機発光層を励起し得る波長の光を吸収する遮光層を具備することを特徴とする、有機EL装置。
【請求項2】
前記遮光層が、上限を440nm乃至570nmの範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断可能であり、前記遮光層が、赤を発光する有機発光層と表示面との間に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
赤を発光する有機発光層と表示面との間に、上限を440nm乃至570nmの範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮光可能な遮光層が形成されており、緑を発光する有機発光層と表示面との間に、上限を440nm乃至500nmの範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断可能な遮光層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記遮光層が、上限を440nm乃至500nmの範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断可能であり、前記遮光層が、赤を発光する有機発光層と表示面との間、及び緑を発光する有機発光層と表示面との間に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項5】
表示面に、上限を380nm乃至440nm未満の範囲内とする当該上限以下の波長の光を遮断するフィルムを具備することを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
青を発光する有機発光層と表示面との間に、上限が440nm以下の波長の光を遮断可能な遮光層が形成されていることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記遮光層が、前記画素電極を兼ねていることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記画素電極と前記有機発光層との間に正孔注入層を具備しており、前記遮光層が前記正孔注入層を兼ねていることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項9】
前記遮光層が、導電性を有する透明材料に、所定の波長を上限とする光を吸収する性質を有する顔料、又は染料を混入して得られるものであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項10】
前記遮光層が、前記画素電極と前記画素電極を制御するスイッチング素子との間に形成され、さらに、前記画素電極と前記スイッチング素子とが前記遮光層を介さずに導通していることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項11】
表示面に円偏光板を有することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の有機EL装置を具備した電子機器。
【請求項13】
基板上に画素電極を形成する工程と、
前記画素電極上に、赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層を形成する工程と、
を有する有機EL装置の製造方法であって、
前記画素電極のうち、少なくとも1つの型の有機発光層と積層する前記画素電極を、顔料が混入されたITOの溶液をインクジェット法で滴下後、硬化させることにより形成することを特徴とする、有機EL装置の製造方法。
【請求項14】
基板上に画素電極を形成する工程と、
前記画素電極上に、正孔注入層を形成する工程と、
前記正孔注入層上に赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層を形成する工程と、
を有する有機EL装置の製造方法であって、
前記正孔注入層のうち、少なくとも1つの型の有機発光層と積層する前記正孔注入層を、顔料が混入されており、正孔注入材料を溶質とする液材をインクジェット法で滴下後、硬化させることにより形成することを特徴とする、有機EL装置の製造方法。
【請求項15】
基板上に画素電極を形成する工程と、
前記画素電極上に、赤、緑、青をそれぞれ発光する3つの型の有機発光層を形成する工程と、
を有する有機EL装置の製造方法であって、
前記画素電極のうち、少なくとも1つの型の有機発光層と積層する前記画素電極を、顔料が混入されたITOをターゲットに用いたスパッタ法で形成することを特徴とする、有機EL装置の製造方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2007−4993(P2007−4993A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180205(P2005−180205)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】