説明

有機EL装置に用いられる化合物、及びそれを用いた有機EL装置

【課題】有機EL装置に用いられる化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、有機EL装置に用いられる、式(I):


(X1、X2、X3、Y、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7は明細書中の定義と同義である。)
で表される化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子輸送・注入および発光に用いられる層の新規な材料、並びにその材料を用いた有機EL装置に関し、より具体的には、EL装置において高発光効率、長寿命及び低駆動電圧を実現する有機EL(electro luminescent:EL)装置に用いられる材料を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光装置(OLED)の応用を満たすために、新規な有機材料の開発がより重視されるようになってきた。これらの装置は、優れた輝度の発光率を示す高密度画素のディスプレイの製造においてコスト的に有利であり、さらに長寿命、高効率、低駆動電圧及び広色域を有することから、商業的魅力を有する。
【0003】
典型的なOLEDは、陽極と陰極との間に挟まれた少なくとも一つの有機発光層(organic emissive layer)を含む。電流を印加すると、陽極からは正孔が、陰極からは電子が、一つまたは複数の有機層に注入される。注入された正孔と電子は、それぞれ逆の電荷を持つ電極に移動(migrate)する。正孔と電子が同じ分子に局在されると、励起状態の局在化された電子・正孔対を有する励起子(exciton)が形成される。励起子が発光メカニズムによって緩和されると、光が発射される。これらの装置の電荷輸送能と発光効率を向上させるために、発光層近傍に、一つまたは複数の別の層、例えば、電子輸送層及び/または正孔輸送層、あるいは電子ブロック層及び/または正孔ブロック層が結合される。先行技術文献には、ホスト材料に別の材料(ゲスト)がドープされることにより、装置の性能を向上させ、色度を調整することが広く開示されている。本明細書において全文が参考文献とされる米国特許第4769292号公報(特許文献1)、米国特許第5844363号公報(特許文献2)、米国特許第5707745号公報(特許文献3)において、いくつかのOLED材料及び装置の構造が記載されている。
【0004】
多層薄膜構造を有する有機ELディスプレイを製造する理由としては、それらの電極と有機層との間の界面を安定させることが含まれる。また、有機材料において、電子と正孔の移動度(mobility)が明らかに異なっている。従って、適切な正孔輸送層と電子輸送層を使用すれば、正孔と電子を効率よく発光層に輸送することができる。また、発光層において、正孔と電子の密度のバランスを取ることによって、発光効率を増加させることができる。適切に上記有機層を組み合わせることによって、装置の効率と寿命を増加させることができる。しかしながら、実際にディスプレイのすべての応用要求を満たす有機材料を得るのは難しい。
【0005】
トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)は広く用いられる電子輸送材料の一つであるが、これは強い緑色光を発し、この材料を用いた装置はより高い駆動電圧で駆動される。従って、この従来の材料に比べて、すべての実施態様において優れた特性、例えば、高効率、低駆動電圧及び優れた操作安定性を有する電子輸送分子を得ることがキーポイントとなる。
【0006】
文献Chem. Mater. 2004, No.16, p.4556(非特許文献1)に開示されているように、イミダゾリル基、オキサゾリル基及びチアゾリル基を有する有機低分子を電子注入・輸送層の材料として用いることが広く報告されている。
【0007】
米国特許第5645948号公報(特許文献4)と米国特許第5766779号公報(特許文献5)には、代表的な材料である1,3,5−トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)が電子輸送に用いられ、青色光を発することが開示されている。TPBIは、ベンゼンの1、3、5の置換位置に三つのN−フェニルベンゾイミダゾリル基を有し、電子輸送材料と発光材料とを兼ねる。しかし、TPBIは操作安定性が低い。
【0008】
米国特許第6878469号公報(特許文献6)には、2−フェニルベンゾイミダゾリル基がアントラセン骨格のC-2位、C-6位に結合される化合物が開示されている。米国特許公開第20080125593号公報(特許文献7)と韓国特許公開第20100007143号公報(特許文献8)には、低駆動電圧及び高効率を表す、分子骨格におけるイミダゾピリジニル基またはベンゾイミダゾリル基を含む電子輸送材料が開示されている。しかし、これらの材料も操作安定性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4769292号公報
【特許文献2】米国特許第5844363号公報
【特許文献3】米国特許第5707745号公報
【特許文献4】米国特許第5645948号公報
【特許文献5】米国特許第5766779号公報
【特許文献6】米国特許第6878469号公報
【特許文献7】米国特許公開第20080125593号公報
【特許文献8】韓国特許公開第20100007143号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chem. Mater. 2004, No.16, p.4556
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、有機EL装置に用いられる、長寿命、高発光効率及び低駆動電圧などの優れた特性を有する有機材料の実現が依然として求められているのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために行なわれた幅広い研究の結果として、上記課題を解決することのできる、有機EL装置に用いられる特定の構造を有する一般式(I):
【化1】

(その中、X1、X2、X3及びYはそれぞれ独立にN、O、B及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも二つのヘテロ原子で環構造を形成する。X1、X2、X3及びYは、同一又は異なってもよい。
Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基を表す。
Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基、またはC1-16アルキル基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、C6-18アリール基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、置換されていないC6-24縮合多環アリール基を表し、また、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ非局在化環(delocalized ring)の部分を形成してもよい。)
で表される化合物を提供する。
【0013】
また、本発明の別の態様において、上記一般式(I)で表される特定の化合物を製造する工程を提供する。
【0014】
真空堆積法またはスピンコート法(spin coating)によって、本発明の一般式(I)で表される化合物をアモルファス薄膜として作製し、有機EL装置に用いることができる。
【0015】
さらに、本発明の別の態様は、電子輸送層または電子注入層において、単一の材料またはn型ドーパント材料との組み合わせとして上記一般式(I)で表される化合物を用いた有機EL装置に関する。
【0016】
また、本発明の別の態様は、発光層、正孔ブロック層または電子ブロック層において、上記一般式(I)で表される化合物を用いた有機EL装置に関する。
【0017】
また、本発明の別の態様は、発光層において、上記一般式(I)で表される化合物を、蛍光または燐光発光体と組み合わせて用いた有機EL装置に関する。
【0018】
また、本発明の一般式(I)で表される化合物は、蛍光または燐光の有機EL装置の製造に用いられる。
【0019】
また、本発明は、本発明の一般式(I)で表される化合物を上記のいずれか一つの有機層に施用し、より長い寿命、より好ましい熱安定性、より高い発光効率及びより低い駆動電圧を示す、上記一般式(I)で表される化合物を含む有機EL装置を提供する。
【0020】
また、本発明は、本発明の一般式(I)で表される有機化合物を上記のいずれかの有機層に施用することにより、白色光を発する有機EL装置を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のEL装置に用いられる材料を使用した有機EL装置は、低駆動電圧及び適切な長寿命を有するため、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の具体的な実施例の有機発光装置の実例を示す断面図である。
【図2】本発明の別の具体的な実施例の有機発光装置の実例を示す断面図である。
【図3】本発明の別の具体的な実施例の有機発光装置の実例を示す断面図である。
【図4】本発明の化合物No.1-17の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図5】本発明の化合物No.1-26の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図6】本発明の化合物No.1-11の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図7】本発明の化合物No.1-35の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図8】本発明の化合物No.1-21の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図9】本発明の化合物No.1-36の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図10】本発明の化合物No.1-17のUV吸収スペクトルとPLスペクトルを示す図である。
【図11】本発明の化合物No.1-26のUV吸収スペクトルとPLスペクトルを示す図である。
【図12】本発明の化合物No.1-35のUV吸収スペクトルとPLスペクトルを示す図である。
【図13】本発明の有機EL装置の実施例1〜3及び比較例1のELスペクトルを示す図である。
【図14】本発明の有機EL装置の実施例1〜3及び比較例1の発光対時間のグラフを示す図である。
【図15】本発明の有機EL装置の実施例4及び比較例2のELスペクトルを示す図である。
【図16】本発明の有機EL装置の実施例4及び比較例2の発光対時間のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具体的な実施例により、本発明の詳しい内容を説明する。本発明の明細書に含まれる開示内容によって、本技術分野における通常の知識を有する者が本発明の利点や効果を理解することができる。
【0024】
一般式(I)は、本発明において有機EL装置に用いられる化合物を示す。前記一般式(I)で表される好ましい化合物の実例をいくつか表1-1〜1-8に示すが、それらに限定されない。
【0025】
式(I)中、X1、X2、X3及びYはそれぞれ独立にN、O、B及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも二つのヘテロ原子で環構造を形成する。X1、X2、X3及びYは、同一又は異なってもよい。
Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基を表す。
Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基、またはC1-16アルキル基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、C6-18アリール基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、置換されていないC6-24縮合多環アリール基を表し、また、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ非局在化環の一部を形成してもよい。
【0026】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【0027】
一般式(I)で表される例示的な化合物1-1〜1-62は、スキーム図1〜8に示される一連の反応によって製造されるが、それらに限定されない。
【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
【化9】

【0036】
前記一般式(I)で表される化合物の製造に用いられる2−クロロ−4,6−ジアリールトリアジンは、J. Org. Chem, 1969, No.34, p.4125及びChem. Ztg, 1912, No.36, p.738に開示された周知技術によって容易に製造することができる。
【0037】
ハロゲンで置換されたアリールベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール及びそれらに対応するホウ酸またはホウ酸エステルは、ZiyiらがAdvanced Functional material 2008, No.18, p.584及び特許文献であるWO2009126691に開示した合成工程によって製造することができる。
【0038】
上記スキームに示される本発明の一般式(I)で表される化合物の合成に用いられる様々な置換されたカルバゾール、ベンゾカルバゾール及びナフトカルバゾール中間体誘導体は、他の引用文献における周知工程によって製造することができる。
【0039】
本発明の具体的な実施例によって、上記式(I)で表される化合物は有機EL装置における有機層に含まれてもよい。従って、本発明の有機EL装置は、基板上に、互いに重なる陽極と陰極との間に設けられた上記式(I)で表される化合物を有する少なくとも一つの有機層を備える。ここで、前記有機層は、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層または電子注入層または正孔輸送層であってもよい。好ましくは、式(I)で表される化合物を含む有機層は電子輸送・注入層に含まれ、電気的注入ドーパント(electrically injecting dopants)(n/p型)と組み合わせることができる。
【0040】
電子輸送層に使用しようとする導電(n/p型)ドーパントは、有機アルカリ性・アルカリ金属錯体、リチウム及びセシウムから選ばれる少なくとも一つの金属を含むアルカリ性・アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、または、モリブデン及びタングステンの酸化物であることが好ましい。これらの有機金属錯体は上記特許文献において周知されるものであり、その中から他の適切な錯体を選んで本発明に用いることができる。
【0041】
電子輸送・電子注入層において、上記電気的注入ドーパントの含有量は、25wt%〜75wt%の範囲にあることが好ましい。
【0042】
また、いずれかの式(I)で表される化合物は、発光層と電子輸送層との間の層に含まれてもよい。前記発光層には、蛍光及び燐光ドーパント、並びにそれらにそれぞれ対応する蛍光及び燐光ホスト発光体が含まれてもよい。
【0043】
(本発明の好ましい実施例)
次に、図面を参考にして本発明の有機EL装置の構造を説明するが、これに限定されない。
【0044】
図1は、本発明の具体的な実施例の有機発光装置100を示す模式図であり、有機発光装置100は、基板110、陽極120、正孔注入層130、正孔輸送層140、発光層150、電子輸送層160、電子注入層170及び陰極180を含んでもよい。上記の層を順次に堆積して、有機発光装置100を製造することができる。
【0045】
図2は、本発明の具体的な実施例の有機発光装置200を示す模式図であり、有機発光装置200は、基板210、陽極220、正孔注入層230、正孔輸送層240、励起子ブロック層245、発光層250、電子輸送層260、電子注入層270及び陰極280を含んでもよい。
【0046】
図3は、本発明の具体的な実施例の有機発光装置300を示す模式図であり、有機発光装置300は、基板310、陽極320、正孔注入層330、正孔輸送層340、発光層350、励起子ブロック層355、電子輸送層360、電子注入層370及び陰極380を含んでもよい。
【0047】
図1〜3に示される構造を有する有機発光装置は、逆方向に製造することができる。その逆構造において、必要に応じて、一つまたは多数の層を追加または削除してもよい。
【0048】
正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層に用いられる材料は、他の引用文献に開示されたものから選んでもよい。
【0049】
例えば、電子輸送層を形成する電子輸送材料は、発光層を形成する材料と異なり、正孔輸送特性を有し、電子輸送層における正孔移動度を高めて、発光層と電子輸送層との間にあるイオン化ポテンシャル(ionization potential)の差による蓄積作用を防止できる。
【0050】
また、全文が参考文献とされる米国特許第5844363号公報には、可撓性透明基板−陽極の組み合わせが開示されている。全文が参考文献とされる米国特許公開第20030230980号公報には、p-ドープ正孔輸送層の例として、m-MTDATAに50:1のモル比でF4-TCNQがドープされたものが開示されている。全文が参考文献とされる米国特許公開第20030230980号公報には、窒素ドープ電子輸送層の例として、BPhenに1:1のモル比でLiがドープされたものが開示されている。全文が参考文献とされる米国特許第5703436号公報と米国特許第5707745号公報には、透明導電性のスパッタ堆積ITO層に覆われた金属薄層(例えばMg:Ag)を有する化合物陰極を含む陰極の例が開示されている。全文が参考文献とされる米国特許第6097147号公報と米国特許公開第20030230980号公報には、ブロック層の原理と使用が開示されている。全文が参考文献とされる米国特許公開第20040174116号公報には注入層の例が開示されている。全文が参考文献とされる米国特許公開第20040174116号公報には保護層の説明内容が開示されている。
【0051】
詳しく述べられない構造と材料、例えば、全文が参考文献とされる米国特許第5247190号公報に開示された重合性材料からなるOLEDs(PLEDs)を使用してもよい。また、単層の有機層を有するOLEDsを使用してもよい。全文が参考文献とされる米国特許第5707745号公報に開示されるように、OLEDsを積層してもよい。
【0052】
別途詳しく説明しない限り、各実施例における任意の層は、任意の適切な方法で堆積することができる。有機層については、好ましい方法は、例えば、全文が参考文献とされる米国特許第6013982号公報と米国特許第6087196号公報に開示された熱蒸着法(evaporation)、インクジェット法(ink-jet)、全文が参考文献とされる米国特許第6337102号公報に開示された有機気相成長法(OVPD)、及び全文が参考文献とされる米国仮特許出願第10/233,470号公報に開示された有機蒸気ジェットプリンティング(organic vapor jet printing:OVJP)による堆積法を含む。他の適切な堆積法は、スピンコート法及び他の溶液を主とする方法を含む。好ましくは、溶液を主とする方法は、窒素や不活性ガス雰囲気において行う。他の層については、好ましい方法は熱蒸着法を含む。好ましいパターニング方法は、全文が参考文献とされる米国特許第6294398号公報と米国特許第6468819号公報に開示されたフォトマスクを介した冷間圧接による堆積法、及びインクジェット法やOVJDなどの堆積法に関するパターニング方法を含む。当然ながら、他の方法を使用してもよい。堆積に用いられる材料を、特定の堆積法に合うように変性してもよい。
【0053】
本発明の有機EL装置は、単一の装置、構造がアレイに配置された装置、または、陽極と陰極を有してX-Yマトリックスに配置された装置に応用されていてもよい。蛍光または燐光のOLED装置の構造に関しては、n-型ドーパントが組み合わされた電子輸送・注入層として使用した場合、従来の装置に比べて、本発明の有機EL装置は、明らかに改善された寿命安定性を示す。さらに、単色カラー、フルカラーもしくはマルチカラー表示または発光製品に応用された場合、本発明の有機EL装置は、より優れている。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により、さらに詳しく本発明を説明するが、これらの実施例に限定されない。また、それらの実施例が本発明の実質的な内容の範囲を超えない限り、それらの実施例を様々な形に簡略化して実施することができる。
【0055】
9−アセチル−3−ブロモカルバゾール
無水酢酸(3体積部)及び微量の濃硫酸で還流させることにより、20gの3−ブロモカルバゾールをそのアセチル誘導体に変換した。水に沈殿させ、灰白色固体を析出させた後、n−ヘキサンで洗い、真空中で乾燥して、定量的に23gの9−アセチル−3−ブロモカルバゾールを得た。同様の工程により、カルバゾール、ベンゾカルバゾール及びジベンゾカルバゾールのN−アセチル誘導体を製造した。
【0056】
9−ブロモ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール
9−ブロモ−11H−ベンゾ[a]カルバゾールは、J. Med. Chem., 1986, 29(3), p380で提供された製造工程により合成された。
【0057】
12−ブロモ−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾール
10.3gの7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールをジクロロメタン(150mL)に0℃で攪拌溶解した。臭素のジクロロメタン溶液(3.1g、ジクロロメタン溶液)を滴下した。室温で2時間攪拌した後、溶液を200mLの水に注入し、ろ過して、500mLの水で洗った。白色の残渣をエタノールで再結晶し、10.8gの12−ブロモ−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールを無色結晶として生じた。
【0058】
3,6−ジブロモカルバゾール
3,6−ジブロモカルバゾールは、Macromol. Chem. Phys. 1994, 195, p2353で提供された製造工程により合成された。
【0059】
合成例1(化合物1-17の合成)
5.8gの9−アセチル−3−ブロモカルバゾールと14.0gの4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニルホウ酸との混合物を、30mLのトルエンにおいて攪拌した。0.02gのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと6.9gの炭酸カリウムを添加し、さらに10mLのエタノール水溶液を添加して、窒素ガス中で6時間還流させた。水で反応を終了させ、トルエン層を珪藻土(celite)カラムに通過させた。
【0060】
有機層を集めた後、ロータリーエバポレーターで真空にして蒸発させ、8.3gの9−アセチル−3−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾールを白色固体として生じた。
【0061】
そして、前記固体(8.3g)を取り出し、さらに1.0gのKOHのTHF溶液(20mL)、メタノール(10mL)と水(6mL)を用いて還流温度で脱保護した。その後、酢酸エチルを用いて反応混合物を抽出して、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、真空中で乾燥するまで蒸発させた。続いて、トルエン:ヘキサン(1:2)を溶離剤として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、8.0gの3−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾールを生じた。
【0062】
窒素ガス中で、上記得られた3−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(8.0g)を50mLの乾燥N,N'−ジメチルホルムアミドに溶解させた。0.9gの水素化ナトリウムを添加し、室温で1時間攪拌した。その後、乾燥N,N'−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解された2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(6.0g)溶液を反応混合物に添加した。さらに3時間攪拌した。反応混合物を水に注入し、生成物を沈殿させた。そして、得られた固体をメタノールで洗い、真空中で乾燥し、化合物1-17である8.5gの9−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(72%)を得た。
【0063】
化合物1-17は、融点が296℃であり、ガラス転移温度が141℃であることを示した。UV吸収スペクトルとPLスペクトルを図10に示す。
【0064】
1H-NMRを図4に示す。
1H NMR(CDCl3,δ):9.12(dd,2H);8.70(dd,4H);8.20(d,1H);8.05(d,1H);7.95(d,1H);7.79(d,1H);7.72(m,5H);7.70(m,8H);7.54(m,3H);7.42(m,3H);7.39(m,3H);7.37(m,1H)。
【0065】
合成例2(化合物1-26の合成)
上記製造工程に続いて、鈴木カップリング反応(Suzuki coupling)を行って、6.7gの9−ブロモ−11−アセチル−11H−ベンゾ[a]カルバゾールと14.0gの4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニルホウ酸とを30mLのトルエンにおいて攪拌した。0.02gのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと6.9gの炭酸カリウムを添加し、さらに10mLのエタノール水溶液を添加して、窒素ガス中で6時間還流させた。水で反応を終了させ、トルエン層を珪藻土カラムに通過させた。有機層を集めた後、ロータリーエバポレーターで真空にして蒸発させ、9.5gの11−アセチル−3−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−11H−ベンゾカルバゾールを白色固体として生じた。
【0066】
そして、前記固体(9.5g)を取り出し、さらに1.0gのKOHのTHF溶液(20mL)、メタノール(10mL)と水(6mL)を用いて還流温度で脱保護した。その後、酢酸エチルを用いて反応混合物を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、真空中で乾燥するまで蒸発させた。続いて、トルエン:ヘキサン(1:2)を溶離剤として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、9.0gの3−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−11H−ベンゾカルバゾールを生じた。
【0067】
窒素ガス中で、得られた3−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−11H−ベンゾカルバゾール(9.0g)を50mLの乾燥N,N'−ジメチルホルムアミドに溶解させた。1.0gの水素化ナトリウムを添加し、室温で1時間攪拌した。その後、乾燥N,N'−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解された2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(6.0g)溶液を反応混合物に添加した。さらに3時間攪拌した。反応混合物を水に注入し、生成物を沈殿させた。そして、得られた固体をメタノールで洗い、真空中で乾燥し、化合物1-26である11.0gの11−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−2−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−11H−ベンゾ[a]カルバゾール(84%)を得た。
【0068】
化合物1-26は、融点が310℃であることを示した。UV吸収スペクトルとPLスペクトルを図11に示す。
【0069】
1H-NMRを図5に示す。
1H NMR(CDCl3,δ):9.20(s,1H);8.65(dd,4H);8.17(m,2H);8.06(t,2H);7.96(d,2H);7.74(m,5H);7.55(m,10H);7.43(m,4H);7.28(m,2H)。
【0070】
合成例3(化合物1-11の合成)
上記製造工程に続いて、鈴木カップリング反応を行って、3.4gの7−アセチル−12−ブロモ−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールと3.8gの4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニルホウ酸とを30mLのトルエンにおいて攪拌した。0.01gのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと2.7gの炭酸カリウムを添加し、さらに10mLのエタノール水溶液を添加して、窒素ガス中で6時間還流させた。水で反応を終了させ、トルエン層を珪藻土カラムに通過させた。有機層を集めた後、ロータリーエバポレーターで真空にして蒸発させ、4.6gの7−アセチル−12−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールを白色固体として生じた。
【0071】
そして、前記固体(4.6g)を取り出し、さらに0.5gのKOHのTHF溶液(20mL)、メタノール(10mL)と水(6mL)を用いて還流温度で脱保護した。その後、酢酸エチルを用いて反応混合物を抽出して、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、真空中で乾燥するまで蒸発させた。続いて、トルエン:ヘキサン(1:2)を溶離剤として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、4.3gの12−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールを生じた。
【0072】
窒素ガス中で、得られた12−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾール(4.3g)を50mLの乾燥N,N'−ジメチルホルムアミドに溶解させた。0.5gの水素化ナトリウムを添加し、室温で1時間攪拌した。その後、乾燥N,N'−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解された2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(3.0g)溶液を反応混合物に添加した。さらに3時間攪拌した。反応混合物を水に注入し、生成物を沈殿させた。そして、得られた固体をメタノールで洗い、真空中で乾燥し、化合物1-11である5.0gの7−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−12−[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾール(81%)を得た。
【0073】
化合物1-11は、融点が356℃であることを示した。
【0074】
1H-NMRを図6に示す。
1H NMR(CDCl3,δ):9.23(s,1H);9.01(d,2H);8.66(d,2H);8.56(d,4H);8.46(d,2H);8.16(m,4H);8.01(d,2H);7.87(t,3H);7.73(m,3H);7.63(m,5H);7.48(t,2H);7.23(m,2H);7.17(m,2H)。
【0075】
合成例4(化合物1-35の合成)
上記製造工程に続いて、鈴木カップリング反応を行って、7.4gの9−アセチル−3,6−ジブロモカルバゾールと14.0gの4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニルホウ酸とを30mLのトルエンにおいて攪拌した。0.03gのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと7.0gの炭酸カリウムを添加し、さらに10mLのエタノール水溶液を添加して、窒素ガス中で6時間還流させた。水で反応を終了させ、トルエン層を珪藻土カラムに通過させた。有機層を集めた後、ロータリーエバポレーターで真空にして蒸発させ、10.5gの9−アセチル−3,6−ビス[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾールを白色固体として生じた。
【0076】
そして、前記固体(10.5g)を取り出し、さらに2.0gのKOHのTHF溶液(40mL)、メタノール(20mL)と水(12mL)を用いて還流温度で脱保護した。その後、酢酸エチルを用いて反応混合物を抽出して、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、真空中で乾燥するまで蒸発させた。続いて、トルエン:ヘキサン(1:2)を溶離剤として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、9.0gの3,6−ビス[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾールを生じた。
【0077】
窒素ガス中で、得られた3,6−ビス[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(9.0g)を50mLの乾燥N,N'−ジメチルホルムアミドに溶解させた。1.0gの水素化ナトリウムを添加し、室温で1時間攪拌した。その後、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(6.0g)の乾燥N,N'−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液を反応混合物に添加した。さらに3時間攪拌した。反応混合物を水に注入し、生成物を沈殿させた。そして、得られた固体をメタノールで洗い、真空中で乾燥し、化合物1-35である9.8gの9−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3,6−ビス[4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(82%)を得た。
【0078】
化合物1-35は、ガラス転移温度が183℃であることを示した。UV吸収スペクトルとPLスペクトルを図12に示す。
【0079】
1H-NMRを図7に示す。
1H NMR(CDCl3,δ):9.16(d,1H);8.82(d,1H);8.74(s,1H);8.73(d,2H);8.69(d,2H);7.94(d,2H);7.81(d,1H);7.73(d,4H);7.71(d,1H);7.70(m,6H);7.65(m,6H);7.52(d,3H);7.34(m,3H);7.19(m,9H)。
【0080】
合成例5(化合物1-21の合成)
5.8gの9−アセチル−3−ブロモカルバゾールと5.7gの(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニルホウ酸との混合物を、30mLのトルエンにおいて攪拌した。0.03gのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと4.2gの炭酸カリウムを添加し、さらに10mLのエタノール水溶液を添加して、窒素ガス中で6時間還流させた。水で反応を終了させ、トルエン層を珪藻土カラムに通過させた。有機層を集めた後、真空中でロータリーエバポレーターで蒸発させ、6.7gの9−アセチル−3−[(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾールを白色固体として生じた。
【0081】
そして、前記固体(6.7g)を取り出し、さらに1.0gのKOHのTHF溶液(20mL)、メタノール(10mL)と水(6mL)を用いて還流温度で脱保護した。その後、酢酸エチルを用いて反応混合物を抽出して、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、真空中で乾燥するまで蒸発させた。続いて、トルエン:ヘキサン(1:2)を溶離剤として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、6.4gの3−[(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾールを生じた。
【0082】
窒素ガス中で、得られた3−[(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(6.4g)を60mLの乾燥N,N'−ジメチルホルムアミドに溶解させた。0.9gの水素化ナトリウムを添加し、室温で1時間攪拌した。その後、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(5.0g)の乾燥N,N'−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液を反応混合物に添加した。さらに3時間攪拌した。反応混合物を水に注入し、生成物を沈殿させた。そして、得られた固体をメタノールで洗い、真空中で乾燥し、化合物1-21である7.7gの9−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−[(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(75%)を得た。
【0083】
化合物1-21は、ガラス転移温度が193℃であることを示した。
【0084】
1H-NMRを図8に示す。
1HNMR(CDCl3,δ):9.34(m,2H);8.85(m,3H);8.60(s,1H);8.30(m,4H);8.03(m,5H);7.94(d,2H);7.68(m,4H);7.43(m,4H)。
【0085】
合成例6(化合物1-36の合成)
上記製造工程に続いて、鈴木カップリング反応を行って、3.8gの7−アセチル−12−ブロモ−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールと2.7gの(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニルホウ酸とを、30mLのトルエンにおいて攪拌した。0.02gのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと2.1gの炭酸カリウムを添加し、さらに10mLのエタノール水溶液を添加して、窒素ガス中で6時間還流させた。水で反応を終了させ、トルエン層を珪藻土カラムに通過させた。有機層を集めた後、真空中でロータリーエバポレーターで蒸発させ、4.1gの7−アセチル−12−[(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル]−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールを白色固体として生じた。
【0086】
そして、前記固体(4.1g)を取り出し、さらに0.5gのKOHのTHF溶液(20mL)、メタノール(10mL)と水(6mL)を用いて還流温度で脱保護した。その後、酢酸エチルを用いて反応混合物を抽出して、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、真空中で乾燥するまで蒸発させた。続いて、トルエン:ヘキサン(1:2)を溶離剤として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、3.4gの12−[(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル]−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールを生じた。
【0087】
窒素ガス中で、得られた12−[(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル]−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾール(3.4g)を50mLの乾燥N,N'−ジメチルホルムアミドに溶解させた。0.5gの水素化ナトリウムを添加し、室温で1時間攪拌した。その後、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(2.1g)の乾燥N,N'−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液を反応混合物に添加した。さらに3時間攪拌した。反応混合物を水に注入し、生成物を沈殿させた。そして、得られた固体をメタノールで洗い、真空中で乾燥し、化合物1-36である3.9gの7−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−12−[(4−ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル]−7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾール(78%)を得た。
【0088】
化合物1-36は、融点が330℃であることを示した。
【0089】
1H-NMRを図9に示す。
1H NMR(CDCl3,δ):9.21(s,1H);8.99(d,1H);8.78(d,1H);8.66(m,5H);8.52(d,1H);8.08(m,6H);7.64(m,11H);7.39(t,2H)。
【0090】
実施例1(有機EL装置の製造)
使用する前に、基板を蒸着システムに乗せる前に、基板の油汚れを溶剤で除去し、UVオゾン中で洗浄した。続いて、基板を真空蒸着チャンバーに搬送し、すべての他の層を基板の上に堆積させた。10-6Torrに近い真空中において、加熱されたボート(boat)から、堆積法により、下記の順序に従って、図2に示される下記の層を堆積させた。
a)正孔注入層(厚さ30nm、HAT−CN)、
b)正孔輸送層(厚さ110nm、N,N'−ジ−1−ナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジアミノビフェニル(NPB))、
c)発光層(厚さ30nm、3体積%BDがドープされたBHを含む。BH及びBDは台湾のE−RAY光電科技株式会社から得た)、
d)電子輸送層(厚さ15nm、化合物1-17を含み、かつLiqがドープされている)、
e)電子注入層(厚さ1nm、LiF)、及び
f)陰極(厚さ150nm、Alを含む)。
【0091】
装置の構造は、ITO/HAT-CN(30nm)/NPB(110nm)/BH-3%BD(30nm)/化合物1-17(15nm)/LiF(1nm)/Al(150nm)で表されることができる。
【化10】

【0092】
これらの層を堆積させた後、装置を蒸着チャンバーから封止用の乾燥ボックスに搬送し、UV硬化エポキシ樹脂と水分吸収剤を含むガラス蓋とを使用して装置を封止した。この有機EL装置は、3mm2の発射面積を有する。得られた有機EL装置を外部電源に接続し、直流電流を印加し、表2で示される発光特性を測定した。
【0093】
室温中で、固定電流源(KEITHLEY 2400 Source Meter、Keithley Instruments, Inc., Cleveland, Ohio製)及び光度計(PHOTO RESEARCH SpectraScan PR 650、Photo Research, Inc., Chatsworth, Calif.製)を使用し、本発明において作製されたすべての装置のEL特性を評価した。
【0094】
室温及び様々な初期発光率において、発光層の色に従って、固定電流を駆動して装置に通すことにより、装置の操作寿命(または安定度)を測定した。国際照明委員会(Commission Internationale de l'Eclairage:CIE)の色度座標を使用して色を表した。
【0095】
電子輸送層において、それぞれ化合物1-26と化合物1-36を用いて、実施例1の工程により、実施例2と実施例3を製造した。
【0096】
比較例1(有機EL装置の製造)
電子輸送層における化合物1-17の代わりにAlq3を使用する以外は、構造が実施例1と類似の層構造となるように有機燐光EL装置を作製した。装置の構造は、ITO/HAT-CN(30nm)/NPB(110nm)/BH-3%BD(30nm)/Alq3(15nm)/LiF(1nm)/Al(150nm)で表されることができる。
【0097】
上記の実施例で製造された有機EL装置における発光のピーク波長、最大発光効率、駆動電圧及び出力効率、並びに初期発光が2000ニト(nit)である場合の寿命(T90)を表2に示す。これらの有機EL装置におけるELスペクトルと寿命特性の比較を図13、図14に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
実施例4に用いられる有機EL装置を、下記の装置構造に従って、ブロック層(BL)として化合物1-17を使用して作製した。
ITO/HAT-CN(20nm)/NPB(160nm)/3%PRD-PH1+PH2(30nm)/BL(10nm)/50%ET2-50%Liq(30nm)/LiF(1nm)/Al(150nm)
ここで、ET2は電子輸送材料であり、PRDは燐光赤色光ドーパントであり、その構造は下記式で表される。PH1とPH2は主な燐光ホスト材料であり、台湾のE−RAY光電科技株式会社から得た。
【化11】

【0100】
比較例2は上記構造に従って作製されるが、ブロック層を有していない。
【0101】
実施例で製造された有機EL装置における発光のピーク波長、最大発光効率、駆動電圧及び出力効率、並びに初期発光が6000ニトである場合の寿命(T90)を表3に示す。これらの有機EL装置におけるELスペクトルと寿命特性の比較を図15、図16に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
本発明は上記の実施例、方法及び実例に限定されるものではなく、これらの具体的な実施例及び方法は、本発明の範囲と趣旨に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
上記で詳しく説明したように、本発明のEL装置に用いられる材料を使用した有機EL装置は、低駆動電圧及び適切な長寿命を有するため、極めて有用である。
【0105】
従って、本発明の有機EL装置は、フラットパネルディスプレイ、携帯電話のディスプレイ、フラット発光特性を利用した光源、看板(sign board)に応用することができ、高度な技術的価値を有する。
【0106】
以上、本発明を好ましい具体的な実施例によって例示的に説明したが、注意すべきことは、本発明の範囲が、開示された態様に限定されるものではないことである。従って、本発明の特許請求の範囲は、これらの変化及び類似の態様が全て含まれるように、最も幅広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0107】
100、200、300 有機発光装置
110、210、310 基板
120、220、320 陽極
130、230、330 正孔注入層
140、240、340 正孔輸送層
150、250、350 発光層
160、260、360 電子輸送層
170、270、370 電子注入層
180、280、380 陰極
245、355 励起子ブロック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL装置に用いられる、式(I)で表される化合物。
【化1】

(その中、X1、X2、X3及びYはそれぞれ独立にN、O、B及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも二つのヘテロ原子で環構造を形成する。X1、X2、X3及びYは、同一又は異なってもよい。
Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基を表す。
Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基、またはC1-16アルキル基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、C6-18アリール基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、置換されていないC6-24縮合多環アリール基を表し、また、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ非局在化環の一部を形成してもよい。)
【請求項2】
式(I)で表される化合物を含む、有機EL装置に用いられるブロック層。
【化2】

(その中、X1、X2、X3及びYはそれぞれ独立にN、O、B及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも二つのヘテロ原子で環構造を形成する。X1、X2、X3及びYは、同一又は異なってもよい。
Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基を表す。
Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基、またはC1-16アルキル基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、C6-18アリール基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、置換されていないC6-24縮合多環アリール基を表し、また、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ非局在化環の一部を形成してもよい。)
【請求項3】
式(I)で表される化合物と電気的注入ドーパントとを有する電子輸送層を含む有機EL装置。
【化3】

(その中、X1、X2、X3及びYはそれぞれ独立にN、O、B及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも二つのヘテロ原子で環構造を形成する。X1、X2、X3及びYは、同一又は異なってもよい。
Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基を表す。
Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基、またはC1-16アルキル基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、C6-18アリール基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、置換されていないC6-24縮合多環アリール基を表し、また、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ非局在化環の一部を形成してもよい。)
【請求項4】
正孔ブロック層と電子ブロック層とを含む有機EL装置であって、前記正孔ブロック層及び前記電子ブロック層のいずれか一つが式(I)で表される化合物を含む有機EL装置。
【化4】

(その中、X1、X2、X3及びYはそれぞれ独立にN、O、B及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも二つのヘテロ原子で環構造を形成する。X1、X2、X3及びYは、同一又は異なってもよい。
Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基を表す。
Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基、またはC1-16アルキル基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、C6-18アリール基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、置換されていないC6-24縮合多環アリール基を表し、また、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ非局在化環の一部を形成してもよい。)
【請求項5】
基板の上に、正孔注入層を形成する工程、
前記正孔注入層の上に、正孔輸送層を形成する工程、
発光層を形成する工程、及び
前記発光層の上に、電気的注入ドーパントと式(I)で表される化合物とを有する電子輸送層を形成する工程、
を備える有機EL装置の形成方法。
【化5】

(その中、X1、X2、X3及びYはそれぞれ独立にN、O、B及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも二つのヘテロ原子で環構造を形成する。X1、X2、X3及びYは、同一又は異なってもよい。
Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基を表す。
Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ独立に、C1-16アルキル基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、C6-18アリール基で置換されたC6-14芳香族炭化水素基、置換されていないC6-14芳香族炭化水素基、またはN、O及びSからなる群から選ばれるヘテロ原子を含むC3-15複素環芳香族炭化水素基、またはC1-16アルキル基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、C6-18アリール基で置換されたC6-24縮合多環アリール基、置換されていないC6-24縮合多環アリール基を表し、また、Ar5、Ar6及びAr7はそれぞれ非局在化環の一部を形成してもよい。)
【請求項6】
前記電気的注入ドーパントは、Liq、CsF、Cs2CO3、MoO3、W2O3のいずれか一つである、請求項5に記載の有機EL装置の形成方法。
【請求項7】
前記電子輸送層の総重量に対して、前記電気的注入ドーパントは25wt%〜75wt%の範囲を占める、請求項5に記載の有機EL装置の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−46067(P2013−46067A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−180054(P2012−180054)
【出願日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(511105034)▲いく▼▲雷▼光電科技股▲分▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】