説明

有機EL装置及びその製造方法

【課題】 有機EL装置において、より開口率が大きくかつ容易に製造可能とする。
【解決手段】 上記基板20上の上記第1電極23が複数含まれる所定領域全域に形成されるとともに上記補助配線60上の少なくとも一部に開口部110aを有しかつ上記発光機能層を含む有機層110と、上記所定領域全域に形成されるとともに上記補助配線60に上記有機層110の上記開口部110aを介して接続される上記第2電極50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置は、自発光でかつ薄膜形成な発光機能層を有しているため、高いコントラストと広い色再現性を持つ薄型ディスプレイとすることが可能であり、次世代の表示体技術等として非常に注目されている。
このような有機EL装置の中に、スイッチング素子が配置されていない側から発光機能層において生成された光を射出する、いわゆるトップエミッション構造の有機EL装置がある。
このようなトップエミッション構造の有機EL装置は、スイッチング素子や配線等を光が射出される側と反対側に配置することができ、発光エリアを広く形成することができるため、開口率が高い装置となる。
【非特許文献1】高画質・大画面有機ELディスプレイ技術の現状と展望;電子ディスプレイフォーラム2002講演集 p.8−27〜p.8−31
【非特許文献2】Semiconductor FPD World 2001,9月号 p.146〜p.148
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、トップエミッション構造の有機EL装置においては、一般的に、発光機能層を含む有機層を挟む一対の電極のうち共通電極側が、光が射出される側に配置されている。そして、この共通電極が透光性を有する導電材料、例えば、ITO(インジウム−スズ酸化物)やIZO(インジウム−亜鉛酸化物)等によって形成されている。このようなITOやIZOは抵抗が大きいため、広い領域に形成される共通電極がこれらのITOやIZOから形成されている場合には、共通電極が電圧降下を起こす恐れがある。このため、特に大型のトップエミッション構造の有機EL装置では、基板上に、抵抗が小さい補助配線を形成し、この補助配線と共通電極の途中部位とを接続することによって共通電極の電圧降下を防止している。
このような、トップエミッション構造の有機EL装置を製造する場合には、補助配線上に有機層が形成されることによって、補助配線と共通電極との導通が図れなくことを防止するために、有機層をマスク製膜している。
しかしながら、このようなマスク製膜においては、マスクと基板とのアライメント精度を考慮して、補助配線上に有機膜が製膜されないよう、マスクの開口部を狭くする必要がある。このため、有機膜の製膜エリアが小さくなってしまい、トップエミッション構造のメリットが減少してしまう。
また、マスク製膜の場合には、マスクの剛性を確保するために、マスクに多くの開口部や広い開口部を形成することが難しい。このため、例えば、基板の全面領域から単一色を射出する有機EL装置、すなわち基板の全面に形成される発光機能層が同一材料からなる有機EL装置を製造する場合であっても、マスクをずらしながら複数回に分けて発光機能層を形成しており、工程数の増大に繋がっている。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、より開口率が大きくかつ容易に製造可能な有機EL装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の有機EL装置の製造方法は、スイッチング素子によってスイッチングされかつ反射材料によって形成される第1電極と、透光性を有する導電材料によって形成される第2電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に配置される発光機能層とを備える有機EL装置の製造方法であって、上記スイッチング素子及び上記第1電極が形成された基板上の上記第1電極間に上記第2電極と接続される補助配線を形成する補助配線形成工程と、上記基板上の上記第1電極が複数含まれる所定領域全域に上記発光機能層を含む有機層を形成する有機層形成工程と、上記補助配線上の上記有機層の少なくとも一部を除去する除去工程と、上記所定領域全域に上記第2電極を形成する第2電極形成工程とを有することを特徴とする。
【0006】
このような特徴を有する本発明の有機EL装置の製造方法によれば、補助配線形成工程において補助配線が形成された後、有機層形成工程において所定領域の全域に有機層が形成され、除去工程において補助配線上の有機層の少なくとも一部が除去され、その後、第2電極形成工程において所定領域の全域に第2電極が形成されることによって、第2電極と補助配線との導通が図られる。
このように、本発明の有機EL装置の製造方法によれば、有機層が所定領域の全域に形成されるため、マスクを用いて有機層を形成する必要がなくなる。したがって、有機層が形成される領域が、マスク製膜の場合と比較して広くなり、より開口率が大きな有機EL装置となる。
このように、より開口率が大きな有機EL装置は、従来の有機EL装置と比較して少ない電力で従来の有機EL装置と同様の明るさを発揮することができる。また、有機EL装置においては、有機層に供給される電力の大きさに反比例して発光機能層の寿命が変化するため、少ない電力で従来の有機EL装置と同様の明るさを発揮できるということは、すなわち、有機EL装置の長寿命化を図ることができる。
なお、従来の有機EL装置と同様の電力を供給した場合には、従来の有機EL装置と比較してより明るくすることが可能となる。
一方、マスクを用いて有機層を形成する必要がなくなることによって、マスク製の場合に行っていた複数回の有機層の形成工程を行う必要がなくなる。よって、本発明の有機EL装置の製造方法によれば、有機EL装置を製造するための工程数を削減することが可能となり、製造の容易性が向上する。
【0007】
また、本発明の有機EL装置の製造方法において、具体的には、上記除去工程が、上記有機層の少なくとも一部をマスクを介してアッシングすることによって除去する工程であるという構成を採用することができる。
このような構成を採用することによって、補助配線上の有機層の少なくとも一部がマスクを用いたアッシングによって除去される。
なお、上記マスクの開口部幅が、上記補助配線幅より小さいという構成を採用することが好ましく、さらに、上記マスクの開口部幅が、上記マスクと上記基板とのアライメント誤差によって上記補助配線幅を越えない範囲に設定されるという構成を採用することがより好ましい。
マスクの開口部幅が、補助配線幅より小さい場合には、有機層が除去される領域が補助配線上から食み出すことを抑止することができる。
また、マスクの開口部幅が、マスクと基板とのアライメント誤差によって補助配線幅を越えない範囲に設定されている場合には、有機層が除去される領域が補助配線上から食み出すことを防止することができる。
【0008】
また、本発明の有機EL装置の製造方法においては、上記除去工程において、上記基板が載置される載置面あるいは当該載置面と接触する基板面が、光を反射しない面とされているという構成を採用することができる。
このような構成を採用することによって、マスクの開口部が万が一補助配線上から食み出し、アッシングの際に発生する紫外線がマスクの開口部から基板の内部に入射しても、紫外線が載置面あるいは基板面によって反射されないため、裏側から有機層が破壊されることを防止できる。
【0009】
次に、本発明の有機EL装置は、スイッチング素子によってスイッチングされかつ反射材料によって形成される第1電極と、透光性を有する導電材料によって形成される第2電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に配置される発光機能層とを備える有機EL装置であって、上記スイッチング素子及び上記第1電極が形成された基板上の上記第1電極間に形成される補助配線と、上記基板上の上記第1電極が複数含まれる所定領域全域に形成されるとともに上記補助配線上の少なくとも一部に開口部を有しかつ上記発光機能層を含む有機層と、上記所定領域全域に形成されるとともに上記補助配線に上記有機層の上記開口部を介して接続される上記第2電極とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような特徴を有する本発明の有機EL装置によれば、有機層が補助配線を含む基板上の所定領域全域に形成され、この有機層に形成された開口部を介して第2電極と補助配線との導通が図られる。
このように、本発明の有機EL装置は、有機層が所定領域の全域に形成されるため、有機層が形成される領域がマスク製膜によって有機層を形成する場合と比較して広く、より開口率が大きな有機EL装置となっている。したがって、本発明の有機EL装置は、従来の有機EL装置と比較して少ない電力で従来の有機EL装置と同様の明るさを発揮することができる。また、有機EL装置においては、有機層に供給される電力の大きさに反比例して発光機能層の寿命が変化するため、少ない電力で従来の有機EL装置と同様の明るさを発揮できるということは、すなわち、有機EL装置の長寿命化を図ることができる。
なお、従来の有機EL装置と同様の電力を供給した場合には、従来の有機EL装置と比較してより明るくすることが可能となる。
また、有機層が所定領域の全域に形成されるため、マスクを用いて有機層を形成する必要がなくなる。したがって、マスク製膜の場合に行っていた複数回の有機層の形成工程を行う必要がなくなる。よって、有機EL装置を製造するための工程数を削減することが可能となり、製造の容易性が向上する。
【0011】
また、本発明の有機EL装置においては、上記発光機能層から射出された光の色を変化させて射出するカラーフィルタ層を備えるという構成を採用することができる。
このような構成を採用することによって、発光機能層から射出された光を任意の色に変化することができる。例えば、RGB3色のカラーフィルタを有するカラーフィルタ層を備え、発光機能層から射出される光を白色光とすれば、フルカラー表示可能の有機EL装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る有機EL装置及びその製造方法の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
図1は、本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す模式図であり、図1において符号1は有機EL装置である。
この有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称する。)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101…と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102…と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103…とからなる配線構成を有し、走査線101…と信号線102…との各交点付近にサブピクセル領域X1…を形成したものである。なお、本実施形態の有機EL装置1においては、3つのサブピクセル領域X1によって1画素領域が形成されている。
【0014】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0015】
更に、サブピクセル領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(スイッチング素子)112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT(スイッチング素子)123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(第1電極)23と、当該画素電極23と陰極(第2電極)50との間に配置されるとともに発光機能層を含む有機層110(有機膜)と、陰極50に接続される陰極配線60とが設けられている。
【0016】
次に、本実施形態の有機EL装置1の具体的な態様を、図2〜図5を参照して説明する。ここで、図2は有機EL装置1の構成を模式的に示す断面図である。図3は有機EL装置1が備える有機EL基板11を模式的に示す平面図である。図4は、図3の有機EL基板1が備える有機EL基板11の詳細な断面図である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の有機EL装置1は、有機EL基板11と、カラーフィルタ基板12とが積層された構成を有している。そして、本実施形態の有機EL装置1は、有機EL基板11から射出される白色光をカラーフィルタ基板12によって色を変化させて射出することによってフルカラー表示が可能とされたディスプレイとして構成されている。
【0018】
有機EL基板11は、基板本体上に形成された各種配線、TFT、画素電極、各種回路によって、有機層110に含まれる発光機能層を発光させるものである。
図3に示すように、有機EL基板11は、基板本体20(例えば、ガラス基板、シリコン単結晶基板、石英基板等)と、スイッチング用TFT112に接続された画素電極23が基板本体20上にマトリックス状に配置されてなるサブピクセル領域X1(図1参照)と、サブピクセル領域X1の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線103…と、少なくともサブピクセル領域X上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図3中一点鎖線枠内)とを備えて構成されている。
【0019】
なお、本実施形態において画素部3は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0020】
実表示領域4においては、サブピクセル領域X1に対応して設けられた発光領域Hが紙面左右方向に規則的に配置されている。この、発光領域Hの各々は、サブピクセル領域X1のTFT112,123の動作に伴って、白色光を発光する構成となっている。
また、実表示領域4の図3中両側には、走査線駆動回路80、80が配置されている。この走査線駆動回路80、80は、ダミー領域5の下層側に位置して設けられている。
【0021】
また、実表示領域4の図3中上方側には検査回路90が配置されており、この検査回路90はダミー領域5の下層側に配置されて設けられている。この検査回路90は、有機EL基板11の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における有機EL装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0022】
走査線駆動回路80および検査回路90の駆動電圧は、所定の電源部から駆動電圧導通部(不図示)及び駆動電圧導通部(不図示)を介して印加されている。また、これら走査線駆動回路80及び検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、この有機EL基板11の作動制御を司る所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部(不図示)及び駆動電圧導通部(不図示)を介して送信および印加されるようになっている。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0023】
ここで、図4を参照して有機EL基板11の断面構造について説明する。
図4に示すように、有機EL装置11は、基板本体20上に設けられた層間絶縁膜21と、層間絶縁膜21上に設けられた発光機能層を含む有機層110を備えている。なお、有機層110は、スイッチング素子である駆動用TFT123と反対側に配置されている。
基板本体20は、透明性材料或いは非透明性材料からなる基板であり、透明性基板としてはガラス基板や透明性の樹脂基板等を採用することができ、非透明性基板としては金属基板や非透明性の樹脂基板を採用することができる。
【0024】
層間絶縁膜21は、酸化シリコン膜(SiO)であって、基板本体20上に設けられた走査線101…、信号線102…、電源線103…、スイッチング用TFT112、及び駆動用TFT123(以上図1記載)を被覆している。より詳細には、図4には、層間電源線103を被覆する層間絶縁膜21aと、駆動用TFT123を被覆する層間絶縁膜21bと、陰極配線60と画素電極23との絶縁を確保するための層間絶縁膜21cとが示されている。そして、層間絶縁膜21bにはコンタクトホールが形成されており、駆動用TFT123と画素電極23とがコンタクトホールを介して接続されている。
なお、本実施形態においては、層間絶縁膜21として酸化シリコン膜を採用したが、これに限定することなく、窒化シリコン膜(SiN)や酸窒化シリコン膜(SiON)等、採用を採用することができる。
【0025】
画素電極23は、Al等の光反射性金属の単層構造、あるいは光反射性金属と透明導電膜との積層構造のいずれかの構造を採用することができる。なお、本実施形態においては、光反射性金属23aと透明導電膜23bとの積層構造を採用している。この透明導電膜としては、ITO等を用いることができる。
【0026】
陰極配線60は、共通電極である陰極50が電圧降下を防止するための補助配線であり、アルミニウム、Al−Si,Al−Si−Cu等のアルミニウム合金あるいは銅等の低抵抗の金属材料によって形成されている。なお、この陰極配線60は、サブピクセル領域X1間に延在して形成されている。
【0027】
有機膜110は、画素電極23側から正孔注入層、正孔輸送層、発光機能層、電子輸送層が順に積層された構成を有している。
なお、具体的には、正孔注入層の形成材料としては、出光興産製のアミン系有機材料HI−406を用いることができ、正孔注入層の膜厚は本実施形態においては60nmとされている。また、正孔輸送層の形成材料としては、出光興産製のアミン系有機材料HT−320を用いることができ、正孔輸送層の膜厚は本実施形態においては20nmとされている。
また、発光機能層は、本実施形態においては白色光を射出するものであるため、青色発光機能層と黄色発光機能層とが積層されて構成されている。なお、青色発光機能層の膜厚と黄色発光機能層の膜厚とは、発光輝度のバランスを考慮しながら調整される。具体的には、青色発光機能層は、出光興産製のBH−215をホスト材料にして出光興産製のBD−102を4%ドーピングすることによって形成することができ、その膜厚は本実施形態において15nmとされている。一方、黄色発光機能層は、出光興産製のBH−215をホスト材料にして出光興産製のRD−001を1%ドーピングすることによって形成することができ、その膜厚は本実施形態において40nmとされている。
また、電子輸送層の形成材料としては、Alq3を用いることができ、電子輸送層の膜厚は本実施形態において30nmとされている。
【0028】
このように構成された有機層110は、本実施形態の有機EL装置1においては、実表示領域4の全面に形成されており、図5に示すように、陰極配線60上の一部に、陰極配線60が露出されるような開口部110aが複数形成されている。
【0029】
図4に戻り、陰極50は、有機層110と同様に、実表示領域4の全面に形成されており、マグネシウム銀層と透明電極とが積層された構成を有している。なお、マグネシウム銀層は、電子が透明電極から電子輸送層に伝達されやすくするための層であり、発光機能層から射出された光に対して透光性を有する程度の膜厚(本実施形態においては5nm)に形成される。そして、この陰極50は、有機層110に形成された開口部110aを介して陰極配線60に接続されている。
【0030】
封止膜70は、有機EL基板11を封止するための薄膜であり、陰極50上に形成されている。具体的には、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0031】
図1に戻り、カラーフィルタ基板12は、有機EL基板11から射出された白色光をRGBの各色光に変換するものである。具体的には、RGBの各色のカラーフィルタ層が有機EL基板11のサブピクセル領域X1に応じるように、複数配列されており、各1つのRGBが一つのまとまりとなって、表示単位画素が構成されている。そして、図1に示すように、カラーフィルタ基板12は、有機EL基板11に対して封止樹脂13を介して接着され、これによって、有機EL基板11とカラーフィルタ基板12との間の空間が封止されている。
【0032】
このように構成された本実施形態の有機EL装置1においては、画素電極23に電圧が印加されると、有機層110の発光機能層において白色光が射出され、この射出された白色光が陰極50側から有機EL基板11の外部に射出される。そして、上方に配置されたカラーフィルタ層によって色が変化された後、有機EL装置1の外部に射出される。
そして、本実施形態の有機EL装置1は、上述のようにして射出されるRGBの各色光を混色させてフルカラー表示を行うようになっている。
【0033】
このような本実施形態の有機EL装置1によれば、実表示領域4(所定領域)の全域に有機層110が形成され、この有機層110の陰極配線60上に形成された開口部110aを介して陰極50が陰極配線60と接続されている。
したがって、有機層が形成される領域がマスクを用いて有機層を形成する場合と比較して広く、より開口率が大きな有機EL装置となっている。したがって、本実施形態の有機EL装置1は、従来の有機EL装置と比較して少ない電力で従来の有機EL装置と同様の明るさを発揮することができる。また、有機EL装置1においては、有機層110に供給される電力の大きさに反比例して発光機能層の寿命が変化するため、少ない電力で従来の有機EL装置と同様の明るさを発揮できるということは、すなわち、有機EL装置1の長寿命化を図ることができる。
なお、従来の有機EL装置と同様の電力を供給した場合には、従来の有機EL装置と比較してより明るくすることが可能となる。
【0034】
次に、上述のように構成された本実施形態の有機EL装置1の製造方法について説明する。
【0035】
まず、図6に示すように、複数の走査線101、信号線102、電源線103、スイッチング用TFT112、駆動用TFT(スイッチング素子)123、画素電極23が形成された基板本体20を用意する。
続いて、図7に示すように、基板本体20のサブピクセルX1間に陰極配線60を形成する(補助配線形成工程)。具体的には、フォトリソグラフィー技術と、湿式エッチング技術あるいは乾式エッチング技術とを組合わせることによって、基板20上に配置された陰極配線材料をパターニングすることによって、陰極配線60を形成する。なお、陰極配線材料としては、上述のように、アルミニウム、Al−Si,Al−Si−Cu等のアルミニウム合金あるいは銅等の低抵抗の金属材料を用いることができる。
【0036】
次に、図8に示すように、有機膜110を、実表示領域4の全面に形成する(有機層形成工程)。具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、発光機能層、電子輸送層の各材料を順に実表示領域4に蒸着することによって積層することで有機膜110を形成する。
このように、本実施形態の有機EL装置1の製造方法においては、有機膜110を形成する際に、マスクを用いてパターニングする必要がないため、有機EL装置1の製造工程数を削減し、有機EL装置の製造を容易化することができる。
【0037】
続いて、陰極配線60上の有機膜110の一部を除去する(除去工程)。具体的には、図9に示すように、有機膜110に形成する開口部110aに応じた大きさの開口部M1を有するマスクMを基板本体20に重ね合わせて配置する。その後、酸素プラズマによって有機膜110を除去するアッシング処理を行うことによって、図10に示すように、陰極配線60上の有機膜110の一部を除去する。
【0038】
なお、マスクMの開口部幅Dは、陰極配線幅dより小さいことが好ましく、さらには、マスクMと基板本体20とのアライメント誤差が最大である場合にも陰極配線幅dを越えない範囲に設定されることが好ましい。具体的には、陰極配線幅dよりマスクMの開口部幅Dが10〜20μm程度小さいことが好ましい。これによって、有機層110に形成される開口部110aが陰極配線60上から食み出すことを防止することができる。
このように、有機層110に形成される開口部110aが陰極配線60上から食み出すことを防止することによって、アッシング処理の際に発生する紫外線が全て陰極配線60によって反射し、基板本体20の内部に入射することを防止できる。これによって、基板本体20の内部に入射した紫外線によって、有機膜110が基板本体20の内側から傷つけられることを防止することができる。
なお、さらに万全を期すのであれば、除去工程における基板本体20の載置面あるいはこの載置面と接触する基板面に光が反射されない表面処理を行うことによって、万が一紫外線が基板本体20の内部に入射した場合であっても、有機膜110が傷つくことを防止することができる。
【0039】
また、アッシング処理がECRエチャーのおうなプラズマ生成部とエッチング室が独立したものである場合には、マスクMを42アロイ等の強磁性体を用いて形成し、基板本体20の裏面から磁力でマスクMを吸引することによって、マスクMと基板本体20とを密着させても良い。このような場合には、マスクMと基板本体20とが密着されるためマスクMと基板本体20との間にプラズマが回り込むことを防止することができ、均一なアッシング処理を行うことが可能となる。なお、マスクM自体は非磁性体で形成し、マスクMの表面に強磁性体膜を製膜することによっても同様の効果を得ることができる。
一方、プラズマ生成部とエッチング室が独立していない場合には、マスクMをシリコン、ガラスあるいはアルミニウム等の非磁性体を用いて形成することが好ましい。これによって、マスクMがプラズマ分布を阻害することなく均一なアッシング処理を行うことができる。
【0040】
このようにして、有機膜110に開口部110aが形成された後は、図11に示すように、実表示領域4の全域に陰極50を形成する(第2電極形成工程)。具体的には、マグネシウムと銀とを10:1の体積比率で5nm程蒸着製膜した後に、ITOをスパッタによって100nm製膜することによって陰極50が形成される。
そして、陰極50上に封止薄膜70を形成することで、有機EL基板11が完成する。その後、カラーフィルタ基板12と有機EL基板11とを封止樹脂13によって貼りあわせることによって、本実施形態の有機EL装置1が製造される。
【0041】
このような本実施形態の有機EL装置1の製造方法によれば陰極配線60が形成された後、実表示領域4全域に有機膜110が形成され、この有機膜110の陰極配線60上の一部が除去され、その後、実表示領域4全域に陰極50が形成される。このため、マスクを用いて有機膜110を形成する必要がなくなり、有機膜110が形成される領域がマスクを用いる場合と比較して広くなる。したがって、より開口率の大きな有機EL装置を製造することが可能となる。
また、マスクを使わずに有機膜110が形成可能となることによって、マスクを用いた場合と比較して有機EL装置1を製造するための工程数を削減することが可能となり、製造の容易性が向上する。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の有機EL装置及びその製造方法に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態において、有機EL装置1が有機EL基板11とカラーフィルタ基板12とを備える構成として説明した。
しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、カラーフィルタ基板12を備えない、すなわち有機EL基板11が有機EL装置とされているものに適用することも可能である。
このような場合には、白色光のみを射出する有機EL装置を、例えば、照明機器等として用いることができる。なお、射出する光は白色光でなくても良い。
また、複数種類の色光を射出するエリアカラータイプの有機EL装置に本発明を適用することも可能である。
【0044】
また、上記実施形態においては、有機膜110を蒸着することによって形成しているため、実質的には有機膜の形成材料は低分子材料となる。しかしながら、本発明においては、有機膜110を印刷法によって形成することもできるため、このような場合には有機膜の形成材料として高分子材料を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態である有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態である有機EL装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える有機EL基板を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える有機EL基板の詳細な断面図である。
【図5】本発明の一実施形態である有機EL装置が備える有機EL基板の拡大平面図である。
【図6】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法について説明するための説明図である。
【図7】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法について説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法について説明するための説明図である。
【図9】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法について説明するための説明図である。
【図10】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法について説明するための説明図である。
【図11】本発明の一実施形態である有機EL装置の製造方法について説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1……有機EL装置、11……有機EL基板、12……カラーフィルタ基板、20……基板本体、23……画素電極(第1電極)、50……陰極(第2電極)、60……陰極配線(補助配線)、110……有機膜(有機層)、110a……開口部、M……マスク、M1……開口部、d……陰極配線幅、D……開口部幅



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子によってスイッチングされかつ反射材料によって形成される第1電極と、透光性を有する導電材料によって形成される第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される発光機能層とを備える有機EL装置の製造方法であって、
前記スイッチング素子及び前記第1電極が形成された基板上の前記第1電極間に前記第2電極と接続される補助配線を形成する補助配線形成工程と、
前記基板上の前記第1電極が複数含まれる所定領域全域に前記発光機能層を含む有機層を形成する有機層形成工程と、
前記補助配線上の前記有機層の少なくとも一部を除去する除去工程と、
前記所定領域全域に前記第2電極を形成する第2電極形成工程と
を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
前記除去工程は、前記有機層の少なくとも一部をマスクを介してアッシングすることによって除去する工程であることを特徴とする請求項1記しあの有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
前記マスクの開口部幅は、前記補助配線幅より小さいことを特徴とする請求項2記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
前記マスクの開口部幅は、前記マスクと前記基板とのアライメント誤差によって前記補助配線幅を越えない範囲に設定されることを特徴とする請求項3記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
前記除去工程において、前記基板が載置される載置面あるいは当該載置面と接触する基板面が、光を反射しない面とされていることを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
スイッチング素子によってスイッチングされかつ反射材料によって形成される第1電極と、透光性を有する導電材料によって形成される第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される発光機能層とを備える有機EL装置であって、
前記スイッチング素子及び前記第1電極が形成された基板上の前記第1電極間に形成される補助配線と、
前記基板上の前記第1電極が複数含まれる所定領域全域に形成されるとともに前記補助配線上の少なくとも一部に開口部を有しかつ前記発光機能層を含む有機層と、
前記所定領域全域に形成されるとともに前記補助配線に前記有機層の前記開口部を介して接続される前記第2電極と
を備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項7】
前記発光機能層から射出された光の色を変化させて射出するカラーフィルタ層を備えることを特徴とする請求項6記載の有機EL装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−73323(P2007−73323A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258842(P2005−258842)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】