説明

有機EL装置及びその製造方法

【課題】製造歩留まりの低下を抑制することが可能な有機EL装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁基板101と、絶縁基板101の上方に配置された有機EL素子OLEDと、有機EL素子OLEDを覆う保護膜115と、を有するアレイ基板100と、有機EL素子OLEDと対向する封止基板200と、アレイ基板100と封止基板200との間に配置され、有機EL素子OLEDを囲むとともに少なくとも1つの封止口300Sを有するシール部材300と、シール部材300の内側に保護膜115と封止基板200との間に配置された樹脂層400と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機エレクトロルミネセンス(EL)素子を用いた表示装置が注目されている。この有機EL素子は、自発光性素子であるため、バックライトを必要とせず薄型軽量化が可能である。さらに、有機EL素子は、高速応答、広視野角、低消費電力の特徴を有している。この有機EL素子は、水分や酸素の影響により劣化しやすい薄膜を含んでいる。このため、有機EL素子が大気に曝されないように気密に封止する必要がある。
【0003】
有機EL表示装置の封止方法として、例えば、特許文献1によれば、素子基板の表示領域の周囲を完全に取り囲むようにシール材を形成し、シール材によって取り囲まれた表示領域上に充填材として接着性樹脂を供給し、接着性樹脂を介して素子基板と封止基板とを貼り合わせる技術が開示されている。
【0004】
このような封止方法においては、表示パネルの内部の容積に対して樹脂材料を過不足なく充填することが求められている。特に、充填される樹脂材料の量が表示パネルの内部の容積に対して多い場合、基板を貼り合わせる際の加圧により樹脂材料がシール部材を破壊し外部に漏れ出てしまうことがある。漏れ出した樹脂材料は、シール部材の周囲を汚染してしまうことがある。また、樹脂材料が漏れ出ると、表示パネルの内部の樹脂材料が不足してしまうことがある。これにより、表示パネル内に気泡が発生したり、ギャップムラが発生したりすることがある。したがって、製造歩留まりの低下を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−242313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、製造歩留まりの低下を抑制することが可能な有機EL装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、絶縁基板と、前記絶縁基板の上方に配置された有機EL素子と、前記有機EL素子を覆う保護膜と、を有するアレイ基板と、前記有機EL素子と対向する封止基板と、前記アレイ基板と前記封止基板との間に配置され、前記有機EL素子を囲むとともに少なくとも1つの封止口を有するシール部材と、前記シール部材の内側に、前記保護膜と前記封止基板との間に配置された樹脂層と、を備えたことを特徴とする有機EL装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、第1基板に有機EL素子を形成する工程と、前記有機EL素子の上に保護膜を形成する工程と、前記有機EL素子を囲むとともに少なくとも1つの封止口が形成されるように第1樹脂材料を塗布する工程と、前記第1樹脂材料の内側に前記保護膜の上に第2樹脂材料を充填する工程と、前記第1樹脂材料及び第2前記樹脂材料を介して前記第1基板と第2基板とを貼り合わせる工程と、前記第1樹脂材料及び前記第2樹脂材料を硬化させる工程と、を備えたことを特徴とする有機EL装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造歩留まりの低下を抑制することが可能な有機EL装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施態様における有機EL表示装置の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置の表示パネルのアクティブエリアの構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示した有機EL表示装置の表示パネルの封止口を含むシール部材の一部を概略的に示す平面図である。
【図4】図4は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に示したフローチャートである。
【図5】図5は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を概略的に説明するための図である。
【図6】図6は、他の実施の形態における有機EL表示装置の表示パネルのアクティブエリアの構造を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、有機EL装置の一例として、アクティブマトリクス駆動方式を採用した有機EL表示装置の構成を概略的に示す平面図である。有機EL表示装置は、表示パネル1を備えている。この表示パネル1は、略矩形状のアレイ基板100及び略矩形状の封止基板200を備えている。
【0013】
アレイ基板100は、画像を表示する略矩形状のアクティブエリア102と、このアクティブエリア102の周辺に枠状に形成された周辺エリア104と、を有している。アレイ基板100のアクティブエリア102には、複数の有機EL素子OLEDがマトリクス状に配置されている。アレイ基板100の周辺エリア104には、駆動ICチップやフレキシブル配線基板などが実装される実装部130が配置されている。実装部130は、封止基板200の端面200Aより外側に延在したアレイ基板100の表面側(有機EL素子OLEDなどが配置された側)における延在部100Aの上に配置されている。
【0014】
封止基板200は、アレイ基板100のアクティブエリア102において有機EL素子OLEDと向かい合っている。
【0015】
これらのアレイ基板100と封止基板200とは、シール部材300によって貼り合わされている。シール部材300は、有機EL素子OLEDを囲んでいる。シール部材300は、少なくとも1つの封止口300Sを有している。このシール部材300は、アクティブエリア102を囲むように略枠状に形成され、周辺エリア104に配置されている。封止口300Sは、シール部材300が欠落した部分に相当する。つまり、シール部材300は、一続きの枠状でなく、封止口300Sを確保するように途切れて配置されている。シール部材300は、アレイ基板100の実装部130が配置された辺L1と異なる辺に封止口300Sを有していることが望ましい。図1に示した例では、シール部材300は、アレイ基板100の実装部130が配置された辺L1と向かい合う辺L2に1つの封止口300Sを有している。シール部材300の構造については後に詳述する。
【0016】
図2は、図1に示した有機EL表示装置の有機EL素子OLEDを含む表示パネル1の断面図である。なお、ここに示した有機EL素子OLEDは、封止基板200の側から光を放射するトップエミッションタイプである。
【0017】
アレイ基板100は、ガラスなどの光透過性を有する絶縁基板101、絶縁基板101の上方に形成されたスイッチングトランジスタSW、有機EL素子OLEDなどを有している。絶縁基板101の上には、第1絶縁膜111が配置されている。このような第1絶縁膜111は、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在している。この第1絶縁膜111は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの無機材料によって形成されている。
【0018】
第1絶縁膜111の上には、スイッチングトランジスタSWの半導体層SCが配置されている。この半導体層SCは、例えばポリシリコンによって形成されている。この半導体層SCには、チャネル領域SCCを挟んでソース領域SCS及びドレイン領域SCDが形成されている。
【0019】
半導体層SCは、第2絶縁膜112によって被覆されている。また、第2絶縁膜112は、第1絶縁膜111の上にも配置されている。このような第2絶縁膜112は、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在している。この第2絶縁膜112は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの無機材料によって形成されている。
【0020】
第2絶縁膜112の上には、チャネル領域SCCの直上にスイッチングトランジスタSWのゲート電極Gが配置されている。この例では、スイッチングトランジスタSWは、トップゲート型のpチャネル薄膜トランジスタである。ゲート電極Gは、第3絶縁膜113によって被覆されている。また、第3絶縁膜113は、第2絶縁膜112の上にも配置されている。このような第3絶縁膜113は、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在している。この第3絶縁膜113は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの無機材料によって形成されている。
【0021】
第3絶縁膜113の上には、スイッチングトランジスタSWのソース電極S及びドレイン電極Dが配置されている。ソース電極Sは、半導体層SCのソース領域SCSにコンタクトしている。ドレイン電極Dは、半導体層SCのドレイン領域SCDにコンタクトしている。スイッチングトランジスタSWのゲート電極G、ソース電極S、及び、ドレイン電極Dは、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などの導電材料を用いて形成されている。
【0022】
これらのソース電極S及びドレイン電極Dは、第4絶縁膜114によって被覆されている。また、第4絶縁膜114は、第3絶縁膜113の上にも配置されている。このような第4絶縁膜114は、アクティブエリア102の全体に亘って延在している。この第4絶縁膜114は、例えば、紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などの有機化合物によって形成されている。
【0023】
有機EL素子OLEDを構成する画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に配置されている。画素電極PEは、スイッチングトランジスタSWのドレイン電極Dに接続されている。この画素電極PEは、この例では陽極に相当する。
【0024】
この画素電極PEは、反射電極PER及び透過電極PETが積層された2層構造である。反射電極PERは、第4絶縁膜114の上に配置されている。また、透過電極PETは、反射電極PERの上に積層されている。反射電極PERは、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)などの光反射性を有する導電材料によって形成されている。透過電極PETは、例えば、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)、インジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する導電材料によって形成されている。なお、画素電極PEは、上述した2層構造に限らず、3層以上の積層構造であっても良いし、反射電極PER単層であっても良いし、透過電極PET単層であっても良い。トップエミッションタイプの有機EL素子OLEDの場合には、画素電極PEは、少なくとも反射電極PERを有している。
【0025】
第4絶縁膜114の上には、隔壁PIが配置されている。この隔壁PIは、画素電極PEの周縁に沿って配置されている。また、この隔壁PIは、画素電極PEの一部に重なっている。このような隔壁PIは、例えば、紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などの有機化合物や、シリコン窒化物などの各種無機化合物などの絶縁材料によって形成されている。
【0026】
有機EL素子OLEDを構成する有機層ORGは、画素電極PEの上に配置されている。この有機層ORGは、少なくとも発光層を含み、さらに、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層などを含んでも良い。なお、有機層ORGの材料については、蛍光材料を含んでいても良いし、燐光材料を含んでいても良い。さらに、有機層ORGは、アクティブエリア102の全体に亘って延在していても良い。
【0027】
有機EL素子OLEDを構成する対向電極CEは、有機層ORGの上に配置されている。この対向電極CEは、有機層ORGのみならず隔壁PIも被覆している。この例では、対向電極CEは、陰極に相当する。このような対向電極CEは、アクティブエリア102の全体に亘って延在している。この対向電極CEは、例えば、マグネシウム(Mg)・銀(Ag)などによって形成された半透過層によって構成されている。なお、対向電極CEは、ITOやIZOなどの光透過性を有する導電材料によって形成された透過層を含んでいても良い。
【0028】
対向電極CEの上には、保護膜115が配置されている。このような保護膜115は、アクティブエリア102の全体に亘って延在している。つまり、保護膜115は、有機EL素子OLEDを覆っている。この保護膜115は、光透過性を有し且つ水分が浸透しにくい材料、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物、シリコン酸窒化物などの無機化合物によって形成されている。つまり、この保護膜115は、有機EL素子OLEDへの水分の浸透を防止する水分バリア膜として機能する。この保護膜115は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0029】
なお、上述した第1絶縁膜111、第2絶縁膜112、第3絶縁膜113、第4絶縁膜114、保護膜115などは、アクティブエリア102のみならず、周辺エリア104にも延在していても良いが、図2に示した例では、これらの膜は周辺エリア104に延在しておらず、周辺エリア104では、絶縁基板101が露出している。
【0030】
封止基板200は、ガラスなどの光透過性を有する絶縁基板である。封止基板200は、アレイ基板100のアクティブエリア102の最上面に配置された保護膜115の上方に位置している。
【0031】
シール部材300は、周辺エリア104においてアレイ基板100と封止基板200との間に配置されている。シール部材300の高さ(つまりアレイ基板100に接する面から封止基板200に接する面までの距離)は、略均一である。このようなシール部材300は、例えば、紫外線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂によって形成されている。
【0032】
封止基板200とアレイ基板100の最上面に配置された保護膜115との間には、樹脂層400が配置されている。つまり、樹脂層400は、保護膜115の上に配置され、封止基板200と接している。この樹脂層400は、シール部材300の内側に配置され、シール部材300に接している。つまり、樹脂層400は、アレイ基板100の最上面、封止基板200、及び、シール部材300によって囲まれた空間の略全体にわたって充填されている。このような樹脂層400は、アクティブエリア102の全体に亘って延在しているとともに、周辺エリア104の一部にも延在している。このような樹脂層400は、例えば、光透過性を有する紫外線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂によって形成されている。
【0033】
図3は、図1に示した有機EL表示装置の封止口300Sを含むシール部材300の一部を示す概略平面図である。なお、この図3では、説明に必要なシール部材300及び樹脂層400のみを図示している。
【0034】
シール部材300は、封止口300Sを形成する両端部に相当する第1端部300P1と、第2端部300P2と、を有している。第1端部300P1及び第2端部300P2は、アクティブエリア102とは反対側に屈曲してアレイ基板100の辺L2まで引き出されている。第2端部300P2は、第1端部300P1から離間して配置されている。封止口300Sは、第1端部300P1と第2端部300P2との間に形成される。
【0035】
アレイ基板100の最上面に配置された保護膜115を覆う樹脂層400は、シール部材300の内側のアクティブエリア102及び周辺エリア104のみならず、第1端部300P1と第2端部300P2との間の封止口300Sにも配置されている。
【0036】
なお、上記した表示パネル1において、シール部材300はアレイ基板100の辺L2の略中央に封止口300Sを有しているが、封止口300Sの位置についてはアレイ基板100の辺L2の一端から他端までの間のどこでも良い。
【0037】
また、上記した表示パネル1において、シール部材300が1つの封止口300Sを有しているが、シール部材300は2つ以上の封止口300Sを有していてもよい。さらに、シール部材300は、アレイ基板100の1辺に複数の封止口300Sを有していてもよく、アレイ基板100の複数の辺に封止口300Sを有していてもよい。
【0038】
次に、上記した有機EL表示装置の製造方法の一例について、主要な製造工程を説明する。図4は、有機EL表示装置の製造方法を概略的に示したフローチャートである。図5は、有機EL表示装置の製造工程を説明するための概略斜視図及び断面図である。
【0039】
まず、第1基板100M及び第2基板200Mを用意する。第1基板100Mのアクティブエリア102に、第1絶縁膜111、第2絶縁膜112、第3絶縁膜113、第4絶縁膜114、スイッチングトランジスタSWなどを形成する。
【0040】
次に、第1基板100Mに有機EL素子OLEDを形成する(ST1)。すなわち、第1基板の第4絶縁膜114の上に有機EL素子OLEDを構成する画素電極PEを形成した後に、画素電極PEの上に有機層ORGを形成し、さらに、有機層ORGの上に対向電極CEを形成した。
【0041】
次に、有機EL素子OLEDの上に保護膜115を形成した(ST2)。すなわち、有機EL素子OLEDの対向電極CEの上に保護膜115を形成した。
【0042】
次に、シール部材300を形成するための第1樹脂材料310を少なくとも1つの封止口を形成するように塗布した(ST3)。すなわち、図5(a)に示すように、ディスペンサーにより、第1基板100Mの有機EL素子OLEDが配置されたアクティブエリア102を囲むように周辺エリア104に第1樹脂材料310を塗布した。このとき、1つの封止口300Sが形成されるように第1樹脂材料310を塗布した。なお、ここでは、第1樹脂材料310は、紫外線硬化型樹脂である。
【0043】
次に、保護膜115の上に樹脂層400を形成するための第2樹脂材料410を滴下した(ST4)。すなわち、図5(b)に示すように、第1樹脂材料310の内部のアクティブエリア102及び周辺エリア104に第2樹脂材料410を滴下した。このとき、表示パネル1の容積(第1基板100Mの最上面に配置された保護膜115、第2基板200M及び第1樹脂材料310によって囲まれる空間の容積)と同等以上の量の第2樹脂材料410を滴下した。なお、ここでは、第2樹脂材料410は、紫外線硬化型樹脂である。
【0044】
次に、第1基板100Mと第2基板200Mとを貼り合わせた(ST5)。すなわち、真空中において、図5(c)に示すように、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410を介して第1基板100Mと第2基板200Mとを貼り合わせた。このとき、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410は、封止基板200に接触される。そして、貼り合わせた第1基板100M及び第2基板200Mを加圧し、封止口300Sから実際の容積より多い過剰の第2樹脂材料410を排出する。
【0045】
さらに、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410を硬化させた(ST6)。すなわち、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410に向けて紫外線照射及び加熱することによって硬化させ、シール部材300及び樹脂層400を形成した。
【0046】
その後、貼り合せられた第1基板100M及び第2基板200Mを必要な大きさに切断することによって表示パネル1が得られる。
【0047】
なお、ここでは、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410として紫外線硬化型樹脂を用いた例を説明したが、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410として熱硬化型樹脂を用いてもよい。このとき、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410の硬化工程(ST6)では紫外線を照射する代わりに樹脂材料を所定の時間加熱することによってシール部材300及び樹脂層400が形成させる。
【0048】
なお、ここでは、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410は、ともに紫外線硬化型樹脂あるいはともに熱硬化型樹脂によって形成されているため、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410を同時に硬化することができ、工程数を削減することができる。また、第1樹脂材料310及び第2樹脂材料410は、一方が紫外線硬化型樹脂であって他方が熱硬化型樹脂で形成されてもよい。さらに、第1樹脂材料310を硬化しシール部材300を形成してから、第2樹脂材料410を滴下し、第1樹脂材料310の硬化処理とは別の硬化処理を経て樹脂層400を形成してもよい。
【0049】
本実施の形態において、略枠状のシール部材300が封止口300Sを有しているため、表示パネル1の容積と同等以上の量の第2樹脂材料410をシール部材300で囲まれた内側に滴下し、貼り合わせの際に加圧した際に、実際の表示パネル1の容積より多い量の第2樹脂材料410が封止口300Sから排出される。このため、シール部材300に加わる負荷が低減され、シール部材300の破壊を抑制できる。
【0050】
これにより、第2樹脂材料410が不所望な部分に漏れ出ることが抑制されるため、第2樹脂材料410によるシール部材300の周囲、例えば、実装部130などの汚染が抑制される。また、表示パネル1には、表示パネル1の容積に対して適量な第2樹脂材料410が保持されるため、表示パネル1の内部の樹脂材料が不足することがなく、気泡の発生やギャップムラの発生を抑制することができる。したがって、本実施の形態によれば、製造歩留まりの低下を抑制することができる。
【0051】
また、本実施の形態において、シール部材300は、アレイ基板100の実装部130が配置された辺と異なる辺に封止口300Sを有しているため、封止口300Sから排出される第2樹脂材料410は、実装部130を汚染しない。
【0052】
さらに、表示パネル1に保持される第2樹脂材料410の量が多すぎる場合及び少なすぎる場合に発生する局所的なギャップムラに起因した干渉縞が視認されることがなく、トップエミッションタイプの有機EL素子OLEDを備えた表示パネル1を封止基板200の側から観察した際に、良好な表示品位を得ることができる。
【0053】
次に、他の実施の形態について図6を参照して説明する。この図6に示した表示パネル1は、図1に示した表示パネル1と比較してシール部材300が2つの封止口300Sを有する点で相違している。なお、他の構成については、図1に示した例と同一であるため、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
図6は、有機EL表示装置のシール部材300を含むアレイ基板100の概略平面図である。なお、図6では、説明に必要なシール部材300、樹脂層400及び実装部130のみを図示している。
【0055】
図6に示すように、シール部材300は、アレイ基板100の実装部130が配置された辺L1と異なる辺であり、向かい合う2辺に第1封止口300S1及び第2封止口200S2を有している。シール部材300は、第1封止口300S1を形成する両端部に相当する第1端部300P1と、第2端部300P2と、を有している。第1端部300P1及び第2端部300P2は、アクティブエリア102とは反対側に屈曲してアレイ基板100の実装部130が配置された辺L1と隣接する辺L3まで引き出されている。第2端部300P2は、第1端部300P1から離間して配置されている。第1封止口300S1は、第1端部300P1と第2端部300P2との間に形成される。
【0056】
シール部材300は、第2封止口300S2を形成する両端部に相当する第3端部300P3と、第4端部300P4と、を有している。第3端部300P3及び第4端部300P4は、アクティブエリア102とは反対側に屈曲してアレイ基板100の実装部130が配置された辺L2と隣接する辺L4まで引き出されている。第4端部300P4は、第3端部300P3から離間して配置されている。第2封止口300S2は、第3端部300P3と第4端部300P4との間に形成される。
【0057】
第1封止口300S1は、アクティブエリア102を挟んで第2封止口300S2と対向するように配置されている。
【0058】
アレイ基板100の最上面に配置された保護膜115を覆う樹脂層400は、シール部材300の内側のアクティブエリア102及び周辺エリア104のみならず、第1端部300P1と第2端部300P2との間の第1封止口300S1及び第3端部300P3と第4端部300P4との間の第2封止口300S2にも配置されている。
【0059】
このような図5に示した例においても、図2に示した例と同様の効果が得られる。さらに、図5に示した例においては、第1封止口300S1は、第2封止口300S2と対向しているため、表示パネル1の容積より多い量の第2樹脂材料410が均等に排出され、さらにギャップムラの発生を抑制することができる。
【0060】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0061】
本実施形態は、有機EL装置として、有機EL表示装置について説明したが、有機EL照明や有機ELプリンターヘッドなどにも利用可能である。
【0062】
本実施形態では、有機EL素子OLEDがトップエミッションタイプである場合について説明したが、有機EL素子OLEDがアレイ基板100の絶縁基板101を介して光を放射するボトムエミッションタイプであっても良い。
【符号の説明】
【0063】
101…絶縁基板 OLED…有機EL素子 115…保護膜 100…アレイ基板 200…封止基板 300S…封止口300S 300…シール部材 400…樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の上方に配置された有機EL素子と、前記有機EL素子を覆う保護膜と、を有するアレイ基板と、
前記有機EL素子と対向する封止基板と、
前記アレイ基板と前記封止基板との間に配置され、前記有機EL素子を囲むとともに少なくとも1つの封止口を有するシール部材と、
前記シール部材の内側に、前記保護膜と前記封止基板との間に配置された樹脂層と、
を備えたことを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記アレイ基板は、実装部を有し、
前記封止口は、前記実装部が配置された辺と異なる辺に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記封止口は、前記アレイ基板の向かい合う辺に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
第1基板に有機EL素子を形成する工程と、
前記有機EL素子の上に保護膜を形成する工程と、
前記有機EL素子を囲むとともに少なくとも1つの封止口が形成されるように第1樹脂材料を塗布する工程と、
前記第1樹脂材料の内側に前記保護膜の上に第2樹脂材料を充填する工程と、
前記第1樹脂材料及び第2前記樹脂材料を介して前記第1基板と第2基板とを貼り合わせる工程と、
前記第1樹脂材料及び前記第2樹脂材料を硬化させる工程と、
を備えたことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2樹脂材料は、前記保護膜、前記第2基板及び前記第1樹脂材料によって囲まれた容積と同等以上の量が充填され、
前記封止口から過剰な前記第2樹脂材料を排出させる工程を備えたことを特徴とする請求項4に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1樹脂材料及び前記第2樹脂材料は、紫外線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の有機EL装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−113808(P2011−113808A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269056(P2009−269056)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】