説明

有機EL装置及び有機EL装置の製造方法

【課題】簡易な方法で、製造コストを抑え、表示品質の良好な有機EL装置及び有機EL装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板上に、複数の画素に対応して形成された有機機能層を有する有機EL装置であって、複数の画素に対応して形成された複数の第1電極14と、該複数の第1電極14を区画して形成された隔壁17と、少なくとも隔壁17により区画された画素領域3内部及び隔壁17上に形成された有機機能層15と、該有機機能層15上及び隔壁17上に形成された第2電極21と、少なくとも隔壁17上の第2電極21上に形成され、第2電極21と電気的に接続され、導電性材料からなる保護層25と、該保護層25上に形成された補助配線4とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置及び有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バックライト等の光源を必要としない自発光素子を備えた表示装置として、近年、エレクトロルミネッセンス(以下、ELと称す)素子を備えた有機EL装置が注目されている。有機EL装置は、有機EL材料からなる発光層を一対の電極により挟持した発光素子を、基板面内に複数設けた構成を備えたもので、発光層からの光の取り出し方向の違いにより、基板側から光を取り出すボトムエミッション構造と、封止基板やカラーフィルタ基板等の対向基板側から光を取り出すトップエミッション構造とに分類される。
【0003】
トップエミッション構造の有機EL装置においては、一般的に、発光層を挟む一対の電極のうち共通電極は、光が射出される側に配置されている。そして、この共通電極は透光性を有する導電材料、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)膜やIZO(インジウム・亜鉛酸化物)膜等によって形成されている。このようなITO膜やIZO膜は金属膜と比べて抵抗が大きいため、共通電極内において電圧の不均一を招き、表示品質が低下する恐れがある。このため、特に大型のトップエミッション構造の有機EL装置では、基板上に抵抗が小さい補助電極を形成し、この補助電極と共通電極の途中部位とを電気的に接続することによって共通電極の電圧降下を防止したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この特許文献1に記載の有機EL装置の製造方法は、基板全面に絶縁層を形成した後、絶縁層上に第1電極及び補助電極を形成する。そして、この補助電極上に隔壁を形成し、さらに、隔壁に補助電極を露出するコンタクト部を形成した後、隔壁内にR,G,Bに対応する位置に、有機発光材料を吐出する。その後、基板全面に第2電極を成膜する方法である。
【0005】
また、補助配線を有機膜が成膜される前に形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載の有機EL装置の製造方法では、画素間隔壁側の面に、補助陰極としてタンタルをスパッタリング法によって成膜した後、画素間隔壁と同様のパターンとなるように、フォトリソグラフィ工程によりパターニング及びエッチングを行うことによって補助電極を形成している。そして、補助電極を形成した後、蒸着法により、隔壁内にR,G,Bに対応する位置に、有機発光材料を吐出する。
【特許文献1】特開2002−318556号公報
【特許文献2】特開2003−123988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、隔壁により区画された領域をR,G,Bに塗り分ける必要がなく製造が容易であることから、白色の有機層及びカラーフィルタを用いてカラーの有機EL装置を作製する技術が提案されている。すなわち、特許文献1に記載の有機EL装置の製造方法では、白色の有機層(発光層)を全面に蒸着する場合、補助電極が露出しているため、補助電極上に有機層が形成されることになる。したがって、この有機層上に陰極を成膜しても、補助電極と陰極とは導通できないという問題が生じる。
また、特許文献2に記載の有機EL装置の製造方法では、各有機層を形成する際、蒸着法により形成しているため、蒸着位置の精度や、蒸着に用いられるマスクの製作,管理方法によるコストの高騰等の問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、簡易な方法で、製造コストを抑え、表示品質の良好な有機EL装置及び有機EL装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の有機EL装置は、基板上に、複数の画素に対応して形成された有機機能層を有する有機EL装置であって、前記複数の画素に対応して形成された複数の第1電極と、該複数の第1電極を区画して形成された隔壁と、少なくとも前記隔壁により区画された画素領域内部及び前記隔壁上に形成された前記有機機能層と、該有機機能層上及び前記隔壁上に形成された第2電極と、少なくとも前記隔壁上の前記第2電極上に形成されるとともに、前記第2電極と電気的に接続され、導電性材料からなる保護層と、該保護層上に形成された補助配線とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る有機EL装置では、第2電極上が、保護層を介して補助配線と接続されているため、例えば、液滴吐出法により、保護層上に補助配線を形成した際、有機機能層上に対するダメージを保護層により保護することになる。したがって、補助配線を保護層上に形成することにより、保護層を介して第2電極全体の抵抗を下げることができ、表示品質に優れた有機EL装置を提供することが可能となる。
【0010】
また、本発明の有機EL装置は、前記保護層が、前記隔壁上のみに形成されていることが好ましい。
本発明に係る有機EL装置の製造方法では、保護層が、隔壁上のみに形成されているため、保護層の形成を最小限に抑えることができ、コストを低減することが可能となる。
【0011】
また、本発明の有機EL装置は、前記隔壁上に溝部が形成され、前記溝部内に、前記有機機能層,前記第2電極及び前記保護層が順に形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る有機EL装置では、隔壁上に溝部を形成した後、隔壁に区画された領域内部及び隔壁上に有機機能層を形成する。そして、この有機機能層上に第2電極を形成した後、第2電極上に保護層を形成する。その後、溝部内の保護層上に補助配線を形成する。このように、溝部を形成することにより、例えば、液滴吐出法により補助配線を形成する際、補助配線を形成する材料が、隔壁に区画された領域内に流れ落ちるのを防止することができる。
【0013】
また、本発明の有機EL装置は、前記基板上に凹部を有する絶縁膜が形成され、前記絶縁膜の凹部に前記溝部を有する前記隔壁が形成されていることが好ましい。
本発明に係る有機EL装置では、絶縁膜の凹部に、溝部を有する隔壁が形成されているため、例えば、液滴吐出法により補助配線を形成する際、補助配線を形成する材料が、隔壁内に侵入するのを確実に防止することができる。したがって、より表示品質に優れた有機EL装置を得ることが可能となる。
さらに、隔壁の高さを低くすることができるため、隔壁により区画された領域に有機機能層を均一に成膜し易くなる。
【0014】
本発明の有機EL装置の製造方法は、基板上に、複数の画素に対応して形成された有機機能層を有する有機EL装置の製造方法であって、複数の第1電極を形成する工程と、前記複数の第1電極を区画する隔壁を形成する工程と、少なくとも前記隔壁により区画された画素領域内部及び前記隔壁上に前記有機機能層を形成する工程と、前記有機機能層上及び前記隔壁上に第2電極を形成する工程と、少なくとも前記隔壁上の前記第2電極上に、前記第2電極と電気的に接続される導電性材料からなる保護層を形成する工程と、液滴吐出法により、前記保護層上に補助配線を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る有機EL装置の製造方法では、隔壁に区画された領域内部及び隔壁上に有機機能層を形成する。そして、有機機能層上に第2電極を形成した後、第2電極上に保護層を形成する、その後、液滴吐出法により、保護層上に補助配線を形成する。このように、保護層を形成した後、液滴吐出法により、補助配線を形成することで、液滴吐出法による補助配線を形成する材料の有機機能層に対するダメージを保護層が保護することになる。したがって、液滴吐出法を用いることにより、簡易であり、かつ、製造コストを抑えた方法で、第2電極と補助配線とを良好に相互接続することができる。このような補助配線を保護層上に形成することにより、保護層を介して第2電極全体の抵抗を下げることができ、表示品質に優れた有機EL装置を製造することが可能となる。
【0016】
また、有機機能層として白色の発光層を用いることができるので、蒸着法により、隔壁内にR,G,Bに対応する位置に、有機発光材料を吐出する場合に比べ、マスクの位置合わせや、マスクの製作等の必要がないため、コストを低減することも可能である。
【0017】
本発明の有機EL装置の製造方法は、前記保護層を構成する導電性材料が、前記補助配線を液滴吐出法で形成する際に用いる溶媒に対する耐性を有していることが好ましい。
本発明に係る有機EL装置の製造方法では、液滴吐出法により、保護層上に補助配線を形成する際、保護層が、補助配線に用いる溶媒に対する耐性を有しているため、有機機能層に対するダメージを確実に抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
なお、本実施形態は、発光層に白色発光の有機EL材料を用い、対向基板にカラーフィルタ基板を用いることによってフルカラー表示を行うような有機EL装置の製造方法に関するものである。
【0019】
〔有機EL装置の構成〕
最初に、本実施形態によって製造された有機EL装置について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る有機EL表示装置(有機EL装置)1の配線構造を示す図である。
有機EL表示装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型のEL表示装置である。
なお、以下の説明では、有機EL表示装置1を構成する各部位や各層膜を認識可能とするために、各々の縮尺を異ならせている。
【0020】
有機EL表示装置1は、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101と信号線102の各交点付近に画素領域Xが設けられる。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続される。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続される。
【0021】
さらに、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT5と、この駆動用TFT5を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(第1電極;陽極)14と、この画素電極14と共通電極(第2電極;陰極)21との間に挟み込まれた有機EL素子(有機機能層)15とが設けられる。
【0022】
この有機EL表示装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT5のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT5のチャネルを介して、電源線103から画素電極14に電流が流れ、さらに有機機能層15を介して共通電極21に電流が流れる。有機機能層15は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0023】
次に、有機EL表示装置1の具体的な構成について、図2及び図3を参照して説明する。
有機EL表示装置1は、図2に示すように、電気絶縁性を備えた基板2と、スイッチング用TFT(図示せず)に接続された画素電極が基板2上にマトリックス状に配置されてなる画素電極域(図示せず)と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線(図示せず)と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部G(図2中一点鎖線枠内)とを具備して構成されたアクティブマトリクス型のものである。
【0024】
画素部Gは、中央部分の実表示領域L(図2中二点鎖線枠内)と、実表示領域Lの周囲に配置されたダミー領域D(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画される。
実表示領域Lには、それぞれ画素電極を有する表示領域R、G、BがA−B方向およびC−D方向にそれぞれ離間してマトリックス状に配置される。
また、実表示領域Lの図2中両側には、走査線駆動回路80が配置される。これら走査線駆動回路80は、ダミー領域Dの下側に配置されたものである。
【0025】
さらに、実表示領域Lの図2中上側には、検査回路90が配置される。この検査回路90は、EL表示装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されたものである。なお、この検査回路90も、ダミー領域Dの下側に配置されたものである。
【0026】
図3は、本実施形態によって製造された有機EL装置1の構成を示す平面図を示すであり、図4は上記平面図におけるX−X矢視断面図である。
この有機EL表示装置1は、図3に示すように、基板2上には三原色の各色(R、G、B)に対応する長円形状の画素領域3が行列状(X方向及びY方向)に複数配置すると共に、一方向(Y方向)に配列する画素領域3間に、一方向と直交する他方向(X方向)に向かって延在する帯状の補助配線4が複数本配置されている。
【0027】
また、図4に示すように、基板2上には駆動用TFT5が形成されている。この駆動用TFT5は、半導体膜6に形成されたソース領域5a、ドレイン領域5b、及びチャネル領域5cと、半導体膜6の表面に形成されたゲート絶縁膜7を介してチャネル領域5cに対向するゲート電極5dとによって主に構成されている。また、半導体膜6及びゲート絶縁膜7を覆う第1層間絶縁膜8が形成されており、この第1層間絶縁膜8を貫通して半導体膜6に達するコンタクトホール9,10内に、それぞれドレイン電極11、ソース電極12が埋設され、この各電極は上記ドレイン領域5b、ソース領域5aに導電接続されている。
【0028】
上記第1層間絶縁膜8上には第2平坦化絶縁膜13が形成されており、また、この第2平坦化絶縁膜13上には画素電極(第1電極)14が形成されている。画素電極14の一部は、第2平坦化絶縁膜13に貫設されたコンタクトホールに埋設されており、ドレイン電極11と導電接続されている。また、画素電極14の周縁部に一部乗り上げるようにして無機絶縁材料からなる無機隔壁16が形成されている。この無機隔壁16上には、有機材料からなる隔壁17が積層されている。
【0029】
上記有機EL素子(有機機能層)15は、画素電極14、当該画素電極14上に形成された正孔注入/輸送層18、当該正孔注入/輸送層18上に形成された白色の発光層19、当該発光層19上に形成された電子注入/輸送層20及び当該電子注入/輸送層20上に形成された共通電極(第2電極)21によって構成されている。これら正孔注入/輸送層18、発光層19及び電子注入/輸送層20は、有機機能層を構成している。
また、隔壁17内部及び隔壁17上の全面にわたって、正孔注入/輸送層18,発光層19,電子注入/輸送層20及び共通電極21が順に形成されている。
【0030】
さらに、共通電極21上には、全面にわたって保護層25が形成されている。この保護層25は、ITO(インジウム・スズ酸化物)膜である。また、保護層25を構成する導電性材料は、補助配線4を液滴吐出法で形成する際に用いる溶媒に対する耐性を有している。また、隔壁17上の保護層25上には、補助配線4が形成されており、共通電極21は、保護層25を介して補助配線4と導通している。また、補助配線4の材料としては、銀(Ag)を使用している。
【0031】
基板2としては、いわゆるトップエミッション構造の有機EL装置の場合、有機EL素子15が配設された側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。また、画素電極14は、トップエミッション構造の場合には透光性である必要はなく、金属材料等の適宜な導電材料によって形成できる。
【0032】
本実施形態における有機EL素子15は、共通電極21に光透過性を有する材料を用いることにより、発光層19で発光する光を共通電極21側から出射させるトップエミッション構造を採用したものである。このような材料としては、例えば、アルミニウム薄膜、マグネシウム銀の薄膜等を用いる事ができる。また、本実施形態の共通電極21の厚みは、約10nmであり、MgAg(マグネシウム銀)により形成されている。なお、共通電極21は、発光層19より発光した光が透過可能な厚みとなっている。
【0033】
さらに、基板2と対向してカラーフィルタ基板22が設けられている。このカラーフィルタ基板22上には、三原色の各色(R、G、B)に対応するカラーフィルタ23と遮光用のBM(Black Matrix)パターン24が形成されている。また、カラーフィルタ基板22は、基板2側の画素領域3とカラーフィルタ23とが対向するように設けられている。なお、このカラーフィルタ基板22にはガラス等の透明性を有する基板が使用される。
【0034】
〔有機EL装置の製造方法〕
次に、上記有機EL装置1の製造方法について説明する。本実施形態では、ガラス等の基板2上に各種配線や駆動用TFT5等を形成する工程、該駆動用TFT5上に画素電極14を形成する工程、当該画素電極14上に隔壁(無機隔壁16及び隔壁17)を形成する工程、この隔壁上に有機機能層を形成する工程、有機機能層上に共通電極21を形成する工程、当該共通電極21上に補助配線4を形成する工程を実施することにより、有機EL装置1を製造するものである。これら各工程のうち、各種配線や駆動用TFT5等を形成する工程については、周知の工程と同様なので、これ以降の工程について詳しく説明する。
【0035】
(1)画素電極
図5(a)に示すように、基板2上に駆動用TFT5、半導体膜6、ゲート絶縁膜7、第1層間絶縁膜8、ドレイン電極11、ソース電極12及び第2平坦化絶縁膜13が形成されると、蒸着法により第2平坦化絶縁膜13上にインジウム・スズ酸化物(ITO)を全面成膜し、またこの膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより、図5(b)に示すように画素電極14を形成する。なお、本実施形態の有機EL表示装置1は、前述したようにトップエミッションタイプなので、画素電極14は、透明である必要がないので、よって上記インジウム・スズ酸化物に限定されることなく適宜な導電材料によって形成することができる。
【0036】
(2)隔壁形成工程
次に、図5(c)に示すように、第2平坦化絶縁膜13、画素電極14上に第1の隔壁として無機隔壁16を形成し、さらに図5(d)に示すように、第2の隔壁として隔壁17を形成する。無機隔壁16は、例えばCVD法、スパッタ法、蒸着法等によって第2平坦化絶縁膜13、画素電極14上の全面にSiO、TiO、SiN等の無機物膜を形成し、この無機物膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより形成する。この無機隔壁16は、第2平坦化絶縁膜13上、画素電極14の周縁部上のみに設けられ、画素電極14の中央近傍に位置する電極面14aは露出している。
【0037】
次いで、上記無機隔壁16上に隔壁17を形成する。この隔壁17は、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する有機樹脂を材料として用いることができる。隔壁17は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機樹脂を溶媒に溶かしたものを、スピンコート、ディップコート等により塗布して形成する。そして、隔壁17をフォトリソグラフィ法によりパターニングして開口を設ける。この隔壁17の開口部は、図5(d)に示すように、無機隔壁16の開口部よりやや広く形成することが好ましい。
【0038】
このようにして隔壁17が形成されると、続いてプラズマ処理を行う。このプラズマ処理は、画素電極14の電極面14aを活性化するものであり、画素電極14の電極面14aの表面洗浄、更に仕事関数の調整、更には親液化を主な目的として行われる。
【0039】
(3)有機機能層形成工程
次に、図6に示すように、画素電極14、無機隔壁16及び隔壁17の全面に正孔注入/輸送層18を形成し、さらにその上に発光層19を形成し、さらにその上に電子注入/輸送層20を形成することによって有機機能層を形成する。正孔注入/輸送層18、発光層19及び電子注入/輸送層20は、各層に好適な蒸着材料を周知の蒸着法に基づいて蒸着することによって形成される。
【0040】
発光層19の蒸着材料としては、白色の蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の低分子材料を用いることができ、例えばアントラセンやピレン、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、またはこれら低分子材料に、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、DCM、DCJ、ペリノン、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ジアザインダセン誘導体等をドープして用いることができる。また、電子注入/輸送層20の蒸着材料としては、LiF等のアルカリ金属のフッ化物あるいは酸化物、マグネシウムリチウム等の合金等を用いることができる。
【0041】
(4)共通電極形成工程
そして、図6に示すように、電子注入/輸送層20上の全面に、共通電極21を形成する。この共通電極形成工程では、トップエミッション構造を実現するために、マグネシウム銀の薄膜を蒸着法で形成して共通電極21とする。
次に、蒸着法により、共通電極21上にインジウム・スズ酸化物(ITO)を全面に成膜し、保護層25を形成する。
【0042】
(5)補助配線形成工程
次に、図6に示すように、保護層25上に補助配線4を液体プロセスとしての液滴吐出法によって形成する。まず、補助配線4を構成する組成物としての銀材料を含むにより形成された液状組成物Lを吐出ヘッド30のノズルNから吐出させる。このとき、吐出ヘッド30に設けられた、紙面手前及び奥に沿って延設されるガイドレール31に沿って吐出ヘッド30を基板2に対して画素領域3の配列方向に沿って相対移動させながら液状組成物Lを順次吐出する。これにより、保護層25上に液状組成物Lを塗布させる。また、補助配線4の幅は、画素領域3の間隔と略同一である。
【0043】
本実施形態に係る有機EL装置及び有機EL装置の製造方法では、保護層25を形成した後、液滴吐出法により、補助配線4を形成することで、液滴吐出法による補助配線4を形成する銀材料の有機EL素子15に対する衝撃を保護層25が吸収することになる。したがって、液滴吐出法を用いることにより、簡易であり、かつ、製造コストを抑えた方法で、共通電極21と補助配線4とを良好に相互接続することができる。このような補助配線4を保護層25上に形成することにより、保護層25を介して共通電極21全体の抵抗を下げることができ、表示品質に優れた有機EL装置1を製造することが可能となる。
【0044】
また、液滴吐出法により補助配線4を形成することが可能であるので、直接画素を描画できるためマスクを必要とせず、補助配線4を形成することができる。したがって、高精細なディスプレイの製造が可能となる。また、液相プロセスであるため真空を必要としないため、エネルギーコストおよび材料コストの面でも有利となり、特に大面積のパターニングに有効となる。
【0045】
さらに、本実施形態において、隔壁17により区画された領域をR,G,Bに塗り分けることも可能であるが、本実施形態のように、発光層19として白色の蛍光あるいは燐光を発光することが可能な材料を用いることにより、隔壁17により区画された領域をR,G,Bに塗り分ける場合に比べ、マスクの位置合わせや、マスクの製作等の必要がないため、コストを低減することが可能である。
【0046】
また、保護層25を構成する導電性材料が、補助配線4を液滴吐出法で形成する際に用いる溶媒に対する耐性を有しているため、液滴吐出法により、保護層25上に補助配線4を形成する際、有機EL素子15に対するダメージを確実に抑えることが可能となる。
【0047】
次に、本発明に係る第2実施形態について、図7を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、上述した第1実施形態に係る有機EL装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
本実施形態に係る有機EL装置40において、隔壁17を形成する際、隔壁17上に溝部45を形成する点で、第1実施形態と異なる。
【0048】
溝部45の内部には、図7に示すように、隔壁17の内部と同様に、正孔注入/輸送層18,発光層19,電子注入/輸送層20,共通電極21及び保護層25が順に形成されている。そして、溝部45の内部の保護層25上に補助配線41が形成されている。
【0049】
次に、本実施形態の有機EL装置40の製造方法について説明する。
まず、第1実施形態と同様に、画素電極14及び隔壁17を形成した後、隔壁17の上面17aに、フォトリソグラフィ法及びエッチング法によりパターニングして溝部45を設ける。この溝部45の深さLは、隔壁17の深さMに対して、1/3程度である。その後、第1実施形態と同様に、有機EL素子15,共通電極21及び保護層25を形成する。そして、溝部45内部の保護層25上に、補助配線41を形成することにより、図7に示す有機EL装置40が製造される。
【0050】
本実施形態に係る有機EL装置及び有機EL装置の製造方法では、溝部45を形成することにより、液滴吐出法により補助配線41を形成する際、補助配線41を形成する材料が、隔壁17内に流れ落ちるのを防止することができる。
【0051】
次に、本発明に係る第3実施形態について、図8を参照して説明する。
本実施形態に係る有機EL装置50では、基板2上に凹部53aを有する第2平坦化絶縁膜53が形成され、第2平坦化絶縁膜53の凹部53aに溝部51を有する隔壁54が形成されている点において第1実施形態と異なる。すなわち、隔壁54の深さPより、溝部51の深さQの方が深い構成となっている。
【0052】
また、溝部51の形成方法としては、まず、第2平坦化絶縁膜53に、フォトリソグラフィ法によりパターニングして凹部53aを設ける。そして、第2実施形態と同様に、画素電極14及び隔壁54を形成した後、隔壁54の上面54aに、フォトリソグラフィ法によりパターニングして溝部51を形成する。そして、溝部51内部の保護層25上に、補助配線52を形成することにより、図8に示す有機EL装置50が製造される。
【0053】
本実施形態に係る有機EL装置及び有機EL装置の製造方法では、第2平坦化絶縁膜53の凹部53aに、溝部51を有する隔壁54が形成されているため、液滴吐出法により補助配線52を形成する際、補助配線52を形成する材料が、隔壁54内に侵入するのを確実に防止することができる。したがって、より表示品質に優れた有機EL装置50を製造することが可能となる。
さらに、第2実施形態に比べ隔壁の深さMに比べ、本実施形態の隔壁の深さQを低くすることができるため、隔壁54により区画された領域に有機EL素子15を均一に成膜し易くなる。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、補助配線4を形成する材料としては、銀(Ag)に限らず、導電性を有する材料を使用すれば良い。
また、保護層25は、ITO(インジウム・スズ酸化物)膜であるとしたが、透明材料で形成されていれば良いため、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)膜、酸化亜鉛膜等であっても良い。さらに、保護層25は、共通電極21上の全面にわたって形成された構成としたが、保護層25は少なくとも隔壁17上に形成された共通電極21上のみに形成されていれば良い。この構成により、保護層25の形成を最小限に抑えることができ、コストを低減することが可能となる。
また、保護層25を形成することにより、有機EL素子15のダメージを保護することができるため、保護層25を構成する導電性材料が、補助配線4を液滴吐出法で形成する際に用いる溶媒に対する耐性を必ずしも有する必要はない。
また、補助配線4,41,52を形成する方法として、液滴吐出法を用いたが、これに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一実施形態に係る有機EL表示装置の配線構造を示す図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る有機EL表示装置の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置を示す平面図である。
【図4】図3のX−X線矢視における断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る有機EL装置を示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る有機EL装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1,40,50…有機EL表示装置(有機EL装置)、4,41,52…補助配線、14…画素電極(第1電極)、15…有機EL素子(有機機能層)、17…隔壁、21…共通電極(第2電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数の画素に対応して形成された有機機能層を有する有機EL装置であって、
前記複数の画素に対応して形成された複数の第1電極と、
該複数の第1電極を区画して形成された隔壁と、
少なくとも前記隔壁により区画された画素領域内部及び前記隔壁上に形成された前記有機機能層と、
該有機機能層上及び前記隔壁上に形成された第2電極と、
少なくとも前記隔壁上の前記第2電極上に形成されるとともに、前記第2電極と電気的に接続され、導電性材料からなる保護層と、
該保護層上に形成された補助配線とを備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記保護層が、前記隔壁上のみに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記隔壁上に溝部が形成され、
前記溝部内に、前記有機機能層,前記第2電極及び前記保護層が順に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記基板上に凹部を有する絶縁膜が形成され、
前記絶縁膜の凹部に前記溝部を有する前記隔壁が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置。
【請求項5】
基板上に、複数の画素に対応して形成された有機機能層を有する有機EL装置の製造方法であって、
複数の第1電極を形成する工程と、
前記複数の第1電極を区画する隔壁を形成する工程と、
少なくとも前記隔壁により区画された画素領域内部及び前記隔壁上に前記有機機能層を形成する工程と、
前記有機機能層上及び前記隔壁上に第2電極を形成する工程と、
少なくとも前記隔壁上の前記第2電極上に、前記第2電極と電気的に接続される導電性材料からなる保護層を形成する工程と、
液滴吐出法により、前記保護層上に補助配線を形成する工程とを備えることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記保護層を構成する導電性材料が、前記補助配線を液滴吐出法で形成する際に用いる溶媒に対する耐性を有していること特徴とする請求項5に記載の有機EL装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−227129(P2007−227129A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46452(P2006−46452)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】