説明

有機EL装置

【課題】隔壁の欠損の発生を抑制することが可能な有機EL装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる有機EL装置の一態様は、透明基板101上に形成された複数の陰極配線105と、複数の陰極配線105の間に形成された隔壁109とを有する有機EL装置であって、隔壁109の陰極配線105に対向する2側面のうち、一方の側面と透明基板101表面とのなす角は鋭角であり、他方の側面と透明基板101表面とのなす角は略直角又は鈍角であるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔壁を備える有機EL(Electro Luminescence)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は、液晶表示装置と比較すると視野角が広く、応答速度が速い。また、バックライトが不要であるため、薄型軽量化が可能である。有機EL表示装置は、これらの利点を有しているため、液晶表示装置に代わる次世代の表示装置として期待されている。
【0003】
一般に、有機EL表示装置は、ガラス基板上に設けられた陽極配線と当該陽極配線に対向して設けられた陰極配線との間に、有機発光層を含む有機EL層が挟持されてなる有機EL素子を備えている。典型的な有機EL表示装置において、有機EL層の上に設けられる陰極配線が分離形成されるように、隔壁が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6は、従来の有機EL表示装置10の構成を示す断面図である。基板1上には、ストライプ状に形成された陽極配線2が設けられている。陽極配線2が形成された基板1上には、開口絶縁膜3が形成されている。開口絶縁膜3上には、陽極配線2に対し垂直に隔壁4が形成されている。隔壁4は、基板1から離れるにつれて断面が広がるように逆テーパ状に形成されている。各隔壁4の間において、陽極配線2上に有機EL層5及び陰極配線6が順次積層形成されている。陰極配線6は隔壁4に対して平行に、陽極配線2に対して垂直に設けられている。陽極配線2、有機EL層5及び陰極配線6が積層された箇所が有機EL素子となる。
【特許文献1】特開2003−045669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような有機EL表示装置において、陰極配線6は、基板1上に隔壁4が設けられた状態で蒸着法などによって形成される。陰極配線6は隔壁4によって分離され、上記のように各隔壁4間にパターニングされた陰極配線6が形成される。また、陰極配線材料は、隔壁4上にも形成される。通常、陰極配線6と隔壁4上の陰極配線材料とは、隔壁4によって高低差が生じ互いに分離されて接触しない。
【0006】
しかしながら、隔壁4は陰極配線6を確実に分離形成するために、逆テーパ状に形成されている。このため、隔壁4の基板1に対する設置面積が小さくなり、隔壁4がはがれやすくなるという問題を有していた。隔壁4が部分的にはがれた欠損が生じると、隣接する陰極配線6同士が接触し、正常な表示ができなくなってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、隔壁の欠損を抑制することが可能な有機EL装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様にかかる有機EL装置は、基板上に形成された複数の電極と、前記複数の電極の間に形成された隔壁とを有する有機EL装置であって、前記隔壁の前記電極に対向する2側面のうち、一方の側面と前記基板表面とのなす角は鋭角であり、他方の側面と前記基板表面とのなす角は略直角又は鈍角であるものである。このような構成とすることによって、隔壁の基板に対する設置面積を大きくすることができ、隔壁の欠損の発生を抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様にかかる有機EL装置は、上記の有機EL装置において、隣接する2つの前記隔壁において、互いに対向する2側面のうち、一方の隣接対向側面と前記基板表面とのなす角は鋭角であり、他方の隣接対向側面と前記基板表面とのなす角は略直角又は鈍角であるものである。これにより、隣接する電極をより確実に分離することができる。
【0010】
本発明の第2の態様にかかる有機EL装置は、上記の有機EL装置において、
前記隔壁の一方の側面と前記基板表面とのなす鋭角は、45度以下であるもののである。これによって、隣接する陰極配線をより確実に分離することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、隔壁の欠損の発生を抑制することが可能な有機EL装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態にかかる有機EL装置について、図1及び図2を参照して説明する。ここでは、有機EL装置の一例として有機EL表示装置について説明する。図1は、有機EL表示装置に用いられる有機EL表示パネル100の構成の一例を示す平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。本実施の形態において、注目すべき点は、隔壁109の形状であり、後に詳述する。
【0013】
図1に示すように、有機EL表示パネル100は、透明基板101、陽極配線102、開口絶縁膜103、有機EL層104、陰極配線105、封止基板106、陽極補助配線107、陰極補助配線108、隔壁109、捕水材110、シール材111を有している。なお、図1は、図2における有機EL表示パネル100の封止基板106を貼り合せる前の平面図を示している。なお、図1及び図2において、図の簡略化のため、適宜省略がなされている。
【0014】
陽極配線102は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明性導電材料からなり、透明基板101上に形成されている。図1に示すように、複数の陽極配線102は、一定間隔を隔ててそれぞれ平行にストライプ状に形成されている。また、透明基板101上には、それぞれの陽極配線102に延設された陽極補助配線107が設けられている。また、透明基板101上には、後述するそれぞれの陰極配線105に接続された陰極補助配線108が設けられる。陰極補助配線108は陰極配線105に対応して形成され、陽極配線102に対し垂直方向に形成される。陽極補助配線107、陰極補助配線108などは、接続部の低抵抗化のために金属材料から形成される。
【0015】
陽極配線102、陽極補助配線107、陰極補助配線108が形成された透明基板101上には、開口絶縁膜103が形成される。開口絶縁膜103は、陽極配線102と後述する陰極配線105との絶縁性を確保するために設けられる。開口絶縁膜103は、ポリイミドなどの絶縁材料からなる。図1に示すように、開口絶縁膜103には、陽極配線102と後述する陰極配線105との交差位置、すなわち画素となる位置に対応して開口部112が設けられている。つまり、開口絶縁膜103は、有機EL層104と陽極配線102とが接触する画素を画定する役割を果たしている。
【0016】
また、図2に示すように、開口絶縁膜103上には、隔壁109が形成される。隔壁109は、分離された陰極配線105を形成するため、陰極配線105を蒸着などにより形成する前に所望のパターンに形成される。本実施の形態においては、隔壁109は、陽極配線102が延在する方向に対し垂直に、陰極配線105が延在する方向に対して平行に設けられる。
【0017】
また、隔壁109の外部において、隔壁109の陰極配線105に対向する2側面のうち、一方の側面は透明基板101に対して垂直となっている。すなわち、隔壁109の一方の側面と隔壁109が設けられていない領域の透明基板101表面とのなす角は、略直角(略90度)である。また、隔壁109の外部において、隔壁109の他方の側面と隔壁109が透明基板101表面とのなす角は鋭角である。本実施の形態においては、隔壁109の他方の側面と隔壁109が設けられていない領域の透明基板101表面とのなす角は、50〜70度である。したがって、隔壁109の対向する2側面は平行ではない。本実施の形態においては、隔壁109は、例えば上面の幅が15μm、下面の幅が12.5μm、高さが3μmとすることができる。
【0018】
従来の隔壁は、例えば、上面の幅が15μm、下面の幅が10μm、高さが3μmの逆テーパ状であった。また、従来の隔壁の陰極配線に対向する2側面と透明基板表面とのなす角は等しく、50〜70度であった。
【0019】
本発明によれば、隔壁109が開口絶縁膜103に接する隔壁109の下面の幅を広くすることができる。本実施の形態においては、従来と比較すると、隔壁109の下面の幅を2.5μm広くすることができる。また、隔壁109の上面の幅は、従来と等しいままである。したがって、従来の隔壁の設置領域と等しい領域において、隔壁109が開口絶縁膜103に接する設置面積を大きくすることができる。これにより、隔壁109がはがれるのを抑制することができる。このため、隔壁109のはがれた欠損に起因して発生する、陰極配線105同士の短絡を抑制することができる。
【0020】
また、各隔壁109の断面形状は略等しくなっている。すなわち、隔壁109の透明基板101とのなす角が略直角である側面は、それぞれの隔壁109の同じ側に設けられている。また、透明基板101とのなす角が鋭角である隔壁109の側面は、それぞれの隔壁109の同じ側に設けられている。したがって、実施の形態においては、図2中各隔壁109の左側の側面と透明基板101とのなす角は全て略直角である。また、各隔壁109の右側の側面が、透明基板101とのなす角は全て鋭角である。すなわち、隣接する2つの隔壁109において互いに対向する側面のうち、一方の側面と透明基板101表面とのなす角は鋭角であり、他方の側面と透明基板101表面とのなす角は略直角である。つまり、隣接する2つの隔壁109において互いに対向する側面は平行ではない。
【0021】
なお、透明基板101に対して垂直となっている隔壁109の一方の側面部分においては、隔壁109上の陰極配線材料と陰極配線105とが連続してつながって形成される場合がある。しかし、透明基板101とのなす角が鋭角である隔壁109の他方の側面部分においては、陰極配線105は確実に分離されており、隣接陰極配線105同士は短絡しない。
【0022】
また、透明基板101に対して垂直となっている隔壁109の一方の側面部分において、隔壁109上の陰極配線材料と陰極配線105とが連続してつながって形成されていても、隔壁109上の有機EL層材料及び陰極配線材料は有機EL素子として機能しない。このため、駆動電圧の上昇などの問題は発生しない。
【0023】
有機EL層104は、前述した陽極配線102、開口絶縁膜103、隔壁109の上に、所定の大きさで配置される。有機EL層104は、開口絶縁膜103の開口部112において陽極配線102と陰極配線105とに挟持されている。すなわち、有機EL層104の下面が陽極配線102と接触し、上面が陰極配線105と接触する。有機EL層104としては、図示しない正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層を順次積層した構成を有している。もちろん、これとは異なる層構成を有する場合もある。
【0024】
陰極配線105は、光透過性を有しないアルミニウムなどの導電性金属材料からなる金属電極である。陰極配線105は、有機EL層104上に設けられる。陰極配線105は、隔壁109によって分離されるため、隔壁109の間に配設される。したがって、陰極配線105は陽極配線102が延在する方向に対して垂直に設けられる。陽極配線102と陰極配線105とが交差する位置が画素となる。1つの画素に対応する1つの有機EL素子は、透明基板101上に順次積層された陽極配線102、有機EL層104、陰極配線105を備える。複数の画素から構成される領域が、表示領域113となる。また、隔壁109の上にも陰極配線105の導電性金属材料が配置されている。
【0025】
なお、ここではカラーフィルタの図示をしていないが、フルカラーの表示装置の場合、カラーフィルタを設けてもよい。
【0026】
封止基板106は、パネル中に水分や酸素を遮断する役割を担っている。封止基板106としては、ステンレス、アルミニウム又はその合金などの金属類のほか、ガラス、アクリル系樹脂などの1種類又は、2種類以上からなるものを使用することができる。封止基板106の画素に対向する面状には、捕水材110を配置するための凹部114が形成されている。
【0027】
封止基板106と透明基板101とは、光硬化型のシール材111を介して固着されている。シール材111としては、水分などの透過性の低い紫外線硬化型のエポキシ系シール材などを用いることができる。シール材111は、表示領域113を囲むように形成されている。シール材111は、封止基板106と透明基板101とを固着し、表示領域113を含む空間を封止する。すなわち、有機EL素子は、透明基板101、封止基板106、シール材111とで形成される気密空間に配置される。
【0028】
気密空間内には、画素などへの水分や酸素の影響を抑制し、安定した発光特性を維持するための捕水材110が設けられている。捕水材110は、封止基板106上の、有機EL素子と対向する面に形成された凹部114に設けられている。捕水材110としては、無機系の乾燥剤や、水分と反応性の高い有機金属化合物を膜状にしたもの、フッ素系オイルからなる不活性液体中に固体の吸湿剤を混合したものなどを用いることができる。
【0029】
また、ここでは図示しないが、陽極補助配線107、陰極補助配線108には、それぞれ駆動回路が電気的に接続される。駆動回路が設けられたFPCと陽極補助配線107又は陰極補助配線108とは、ACFを介して接続される。ACFが、各補助配線とFPCとを物理的に固定し、さらに、ACFに含まれる導電粒子により各補助配線とFPCの接続配線を電気的に接続する。このように構成することにより、外部に設けられた駆動回路から陽極補助配線107、陰極補助配線108を介して陽極配線102、陰極配線105にそれぞれ駆動電圧が供給される。
【0030】
ここで、上記の有機EL表示パネルの製造方法について説明する、図3を参照して説明する。図3は、本実施の形態にかかる有機EL表示装置の製造方法を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、陽極配線102を形成する(ステップS11)。具体的には、まず透明基板101上にスパッタ法などを用いてITOを成膜する。そして、感光性樹脂をITO上に塗布し、露光、現像、エッチングをしてパターニングを行う。これにより、透明基板101上に複数の陽極配線102が形成される。
【0031】
次に、陽極補助配線107及び陰極補助配線108を形成する(ステップS12)。具体的には、陽極配線102の上に補助配線材料としてAl又はAl合金などの低抵抗な金属材料を成膜する。また、下地との密着性向上や、腐食防止などの観点からAl膜の下層又は上層にTiNやCrなどのバリア層を形成して、補助配線を多層構造体としてもよい。そして、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程により、補助配線材料をパターニングする。これにより、陽極補助配線107及び陰極補助配線108が形成される。そして、絶縁膜を塗布し露光、現像を行って開口部112を有する開口絶縁膜103を形成する(ステップS13)。
【0032】
次に、隔壁109を形成する(ステップS14)。ここで、隔壁109の製造工程について、図4を参照して詳細に説明する。図4は、隔壁109の製造工程を説明する断面図である。なお、図4においては、前述の工程で透明基板101上に形成した陽極配線102、開口絶縁膜103などの図示を省略している。図4(a)に示すように、スピンコート法などにより、隔壁材料を成膜する。隔壁材料としては、感光性ノボラック樹脂、感光性アクリル樹脂などを用いることができる。その後、隔壁材料を隔壁形成用マスク115を用いて露光する。光照射により硬化した部分が隔壁109となる。そして、透明基板101を水平にした状態で現像液を上方からスプレー塗布し、現像することによりパターニングを行う。これにより、図4(b)に示すように、透明基板101上に矩形状の隔壁109が形成される。この段階では、隔壁109のいずれの側面も、透明基板101面に対して略垂直である。
【0033】
その後、図4(c)に示すように、再度現像液116を塗布した後に、図4(d)に示すように透明基板101を水平方向に対して斜めに傾ける。これにより、上記の工程により形成された矩形状の隔壁109の一方の側面のみに現像液116が接触する。光照射による隔壁109の側面の硬化が不十分であるため、この現像液116に接触している側面が、時間の経過と共に除去される。これにより、図4(e)に示すように、一方の側面と隔壁109が設けられていない領域の透明基板101表面とのなす角が90度であり、他方の側面と隔壁109が設けられていない領域の透明基板101表面とのなす角が50〜70度である隔壁109が形成される。図1に示すように、隔壁109は陽極配線102が延在する方向に対して垂直な方向に延びるよう形成される。
【0034】
このような隔壁109を設けることにより、後述する陰極配線105の形成時に陰極配線105同士を空間的に分離することができる。また、従来の逆テーパ状の隔壁と比較すると、画素サイズ及び画素ピッチを変えないままで、設置面積を大きくすることができる。この隔壁109の側面が透明基板101となす角は、現像時間を調整することによって調整することができる。
【0035】
なお、後述するステップS15の前に、開口部により露出するITOの表面改質を行うために、酸素プラズマ又は紫外線を照射する工程を加えてもよい。
【0036】
次に、図3に示すように、上述した有機EL層104を形成する各層を順次積層する(ステップS15)。具体的には、有機EL層104をマスク蒸着する。これにより、有機EL層104が開口絶縁膜103の開口部112において、陽極配線102と接する。また、図2に示すように、この有機EL層104は隔壁109の上にも形成される。なお、有機EL層104は上記の方法以外の方法で形成することも可能である。
【0037】
その後、有機EL層104上の略全面に陰極配線105を形成する(ステップS16)。具体的には、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理的気相成長法(PVD)によりAlなどの導電性金属材料を成膜する。このとき、隔壁109が陰極配線105を分離することにより、隔壁109間にストライプ状にパターニングされた陰極配線105が形成される。また、陰極配線105は陰極補助配線108に接続される。図2に示すように、導電性金属材料は隔壁109の上にも蒸着される。なお、有機EL層104に対するダメージを低減するため、蒸着によって陰極配線105を形成することが好ましい。以上の工程により、陽極配線102と陰極配線105との間に挟持された有機EL層104を備える有機EL素子が形成される。
【0038】
次に、有機EL素子を封止するための封止基板106を製造する工程について説明する。まず、封止基板106上に捕水材を収容するための凹部114を形成する(ステップS17)。凹部114は、図1に示すように透明基板101上に設けられた有機EL素子と対向する位置に設ける。凹部114は、例えば、エッチングやサンドブラストにより形成する。
【0039】
そして、封止基板106の凹部114が設けられている面側に、図2に示すようにシール材111を塗布する(ステップ18)。シール材111は、凹部114を囲むように塗布する。すなわち、シール材111は、凹部114の外側の凸部に設けられる。シール材111は陽極補助配線107及び陰極補助配線108を横切るように形成する。また、陽極補助配線107及び陰極補助配線108の端部がシール材111の外側に配置されるようにシール材111を形成する。後述する実装工程で、各配線のシール材111の外側まで延設された部分に、外部の駆動回路が接続される。そして、ペースト状の捕水材110を塗布ノズルによって塗布する(ステップS19)。以上の工程により、封止基板106を製造することができる。
【0040】
その後、透明基板101と封止基板106とを貼り合わせる(ステップ20)。透明基板101と封止基板106とを位置合わせした後に、両基板を加圧し、シール材111にUV光を照射する。これにより、シール材111が硬化して、透明基板101と封止基板106とを接着することができる。そして、2枚の基板とシール材により形成された封止空間内に乾燥窒素ガスと微量の酸素ガスを封入する。これにより、有機EL表示パネル100が形成される。
【0041】
また、ステップS20の貼り合わせ工程を真空中で行なうようにしてもよい。これにより、有機EL素子を大気に曝すことなく封止することができる。よって、有機EL素子の水分などによる劣化を防ぐことができる。具体的には、捕水材110が設けられた透明基板101を大気に曝すことなく、貼り合わせ用の真空チャンバーに搬送する。また、封止基板106も、貼り合わせ用の真空チャンバーに搬送して貼り合わせを行なう。これにより、有機EL層104の形成工程から貼り合わせ工程の間の全期間を、透明基板101が真空中で処理される。よって、水分などによる劣化を防ぐことができる。
【0042】
次に、有機EL表示パネル100にエージング処理を行う(ステップ21)。その後、実装工程(ステップS22)において、駆動回路などの周辺回路を各有機EL表示パネルに実装して有機EL表示装置を得ることができる。
【0043】
なお、隔壁109の断面形状としては、これに限定されない。例えば、隔壁109は、図5に示すような断面形状としてもよい。図5に示すように、陰極配線105に対向する隔壁109の一方の側面と隔壁109が設けられていない領域の透明基板101表面とのなす角を鈍角とする。また、陰極配線105に対向する隔壁109の他方の側面と隔壁109が設けられていない領域の透明基板101表面とのなす角を鋭角とする。すなわち、隔壁109の断面形状は、略平行四辺形である。
【0044】
また、この場合においても、各隔壁109の断面形状は略等しくなっている。すなわち、透明基板101とのなす角が鈍角である隔壁109の側面、また、透明基板101とのなす角が鋭角である側面は、それぞれの隔壁109の同じ側に設けられている。すなわち、図5中各隔壁109の左側の側面と透明基板101とのなす角は全て鈍角である。また、図5中各隔壁109の右側の側面が、透明基板101とのなす角は全て鋭角である。つまり、隣接する隔壁109の対向する2側面は、略平行となる。
【0045】
また、隔壁109の一方の側面と透明基板101表面とのなす角を鈍角とし、隔壁109の他方の側面と透明基板101表面とのなす角を鋭角とし、そして、この2側面が交わるようにすることも可能である。すなわち、隔壁109の断面形状は、三角形である。
【0046】
隔壁109を上記のような形状とした場合も、従来の隔壁の設置領域と等しい領域において、隔壁109が開口絶縁膜103に接する設置面積を大きくすることができ、隔壁109のはがれた欠損に起因して発生する、陰極配線105同士の短絡を抑制することができる。
【0047】
また、実施の形態において説明した隔壁109の一方の側面と透明基板101表面とのなす鋭角は、45度以下とすることが好ましい。例えば、陰極配線105に対向する隔壁109の一方の側面と隔壁109が設けられていない領域の透明基板101表面とのなす角は、略直角(略90度)であり、また、他方の側面と隔壁109が設けられていない領域の透明基板101表面とのなす角を45度とすることができる。この場合、具体的には、隔壁109は、例えば上面の幅が15μm、下面の幅が12μm、高さが3μmとすることができる。このように、隔壁109の一方の側面と透明基板101表面とのなす鋭角を45度以下とすることによって、陰極配線105をさらに確実に分離形成することができる。また、この場合も、従来の隔壁の設置領域と等しい領域において、隔壁109が開口絶縁膜103に接する設置面積を従来よりも大きくすることができる。
【0048】
さらに、この場合には、陰極配線105をより確実に分離形成することができるため、陰極配線105の材料を蒸着する際に、透明基板101と蒸着源との間の距離を短くすることができる。これにより、効率よく陰極配線105を形成することができる。また、透明基板101と蒸着源との距離を短くすることができるため、蒸着装置を小型化できる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、有機EL装置の一例として有機EL表示装置について説明したが、これに限定されず、照明装置としても利用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施の形態にかかる有機EL表示装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】実施の形態にかかる有機EL表示装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】実施の形態にかかる有機EL表示装置の隔壁の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】実施の形態2にかかる有機EL表示装置の構成を示す断面図である。
【図6】従来の有機EL表示装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
100 有機EL表示パネル
101 透明基板
102 陽極配線
103 開口絶縁膜
104 有機EL層
105 陰極配線
106 封止基板
107 陽極補助配線
108 陰極補助配線
109 隔壁
110 捕水材
111 シール材
112 開口部
113 表示領域
114 凹部
115 隔壁形成用マスク
116 現像液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された複数の電極と、
前記複数の電極の間に形成された隔壁とを有する有機EL装置であって、
前記隔壁の前記電極に対向する2側面のうち、一方の側面と前記基板表面とのなす角は鋭角であり、他方の側面と前記基板表面とのなす角は略直角又は鈍角である有機EL装置。
【請求項2】
隣接する2つの前記隔壁において、互いに対向する2側面のうち、一方の隣接対向側面と前記基板表面とのなす角は鋭角であり、他方の隣接対向側面と前記基板表面とのなす角は略直角又は鈍角である請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記隔壁の一方の側面と前記基板表面とのなす鋭角は、45度以下である請求項1又は2に記載の有機EL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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