説明

有機EL装置

【課題】自発光素子のディマー機能を発揮させると共に、自発光素子を駆動制御するための駆動回路は安定した駆動動作がなされるように構成すること。
【解決手段】外光の照度に応じて起電力を出力する光電素子E1〜E4と、少なくとも1つの自発光素子が配置された自発光表示パネル1と、前記自発光表示パネルを駆動制御するための駆動回路2a,3aとが備えられる。
前記駆動回路2a,3aには、前記光電素子E1〜E4からの出力電圧値を制限する電圧安定化回路4を介して駆動電源として供給されると共に、前記自発光素子には前記電圧安定化回路4を介さずに前記光電素子E1〜E4より、自発光素子への駆動電源として供給されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリーを備えることが不可能かもしくは困難な機器、例えば薄型の携帯型機器などに好適に搭載し得る有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における電子回路部品の高密度集積化および高密度な実装技術の進展に伴い、多種多様な携帯型機器が提供されており、これらの携帯型機器においては、情報表示を行うための表示装置が不可欠なものとなっている。
【0003】
一方、前記したような表示装置を備えた携帯型機器においては、さらなる多機能化また軽量かつ薄型化が求められており、究極においては比較的容積および重量が嵩むバッテリーに着目され、これを使用しない携帯型機器の提案もなされつつある。そこで、軽量かつ薄型化が可能ないわゆる太陽電池セルを前記した表示装置を備えた携帯型機器の駆動電源として利用することが考えられる。
【0004】
太陽電池セルを利用して表示パネルを駆動させる点については、従来より小型電卓などにも応用されており、例えば次に示す特許文献1などに開示されている。
【0005】
特許文献1に開示の電卓によると、太陽電池セルの出力電圧が基準値よりも低下した場合において、演算回路に対する電源電圧の供給を停止させることが開示されており、これにより誤った計算結果が表示されるのを防止するようにしている。
【0006】
また、太陽電池セルを利用して表示パネルを駆動させる他のものとして、特許文献2および3に開示のものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平2−28153号公報
【特許文献2】実開平1−68958号公報
【特許文献3】特公平7−99453号公報
【0008】
前記した特許文献2および3に開示された構成によると、太陽電池セルとは別に二次電池も搭載し、太陽電池セルにより生成されたエネルギーを二次電池に蓄え、この二次電池の電源電圧を駆動電源として利用することが開示されている。要するに二次電池を利用することで、太陽電池セル特有の外光量に応じた電圧変動の影響を防止しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記したように特許文献1〜3に開示された機器は、いずれも太陽電池セル特有の外光量に応じた電圧変動の影響を防止しようとすることに観点が置かれ、このために太陽電池セルの出力電圧の検出手段や、二次電池を併用するなどの対策を施している。
【0010】
この発明は、太陽電池セルを利用して表示パネルを発光駆動させるに際して、外光に応じた太陽電池セルの電圧変動作用を積極的に利用して、自発光表示パネルのディマー機能を発揮させると共に、前記自発光表示パネルを駆動制御するための駆動回路は安定した駆動動作がなされるように構成した有機EL装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる有機EL装置は、請求項1に記載のとおり、外光の照度に応じて起電力を出力する光電素子と、少なくとも1つの自発光素子が配置され、前記自発光素子を駆動制御するための駆動回路とが備えられた有機EL装置であって、前記駆動回路には、前記光電素子から前記駆動回路への出力電圧の供給を停止する制御を行う電圧安定化回路を介して前記光電素子からの出力電圧が駆動電源として供給されると共に、前記自発光素子には前記電圧安定化回路を介さずに前記光電素子からの出力電圧が自発光素子への駆動電源として供給されるように構成されている点に特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明にかかる有機EL装置の第1の実施の形態を示した回路構成図である。
【図2】同じく第2の実施の形態を示した回路構成図である。
【図3】同じく第3の実施の形態を示した回路構成図である。
【図4】同じく第4の実施の形態を示した回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明にかかる有機EL装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1はその第1の実施の形態を示したものであり、これは発光装置として発光表示パネル1を用い、この発光表示パネル(以下、単に表示パネルとも言う。)に搭載された自発光素子として有機EL素子を用いたパッシブマトリクス型表示パネルを構成している。
【0014】
この表示パネル1には、縦方向に配列された複数のデータ線(以下、陽極線ともいう。)m1〜m3と、横方向に配列された複数の走査線(以下、陰極線ともいう。)n1〜n4との各交点位置においてダイオードのマークで示した有機EL素子がデータ線と走査線との間に接続されている。これにより画素を構成する前記有機EL素子がマトリクス状に配置されている。
【0015】
なお、図1においては、有機EL素子による画素は、紙面の都合により縦横方向に4行3列分を示しているが、これは表示パネル1の全面にわたって多数の素子が縦横方向にマトリクス状に配設される。
【0016】
符号2は前記表示パネル1の陽極線m1〜m3に選択的に駆動電流を流すデータドライバを示しており、一部図示を省略しているが、前記各陽極線には、これに対して択一的にEL素子の点灯駆動電位もしくは非点灯電位(例えばグランド電位)を供給する一対のスイッチンク素子TS1,TS2がそれぞれ接続されている。
【0017】
またデータドライバ2には、画像データに基づいて前記陽極線に対応した各スイッチング素子TS1,TS2をオンオフ制御するシフトレジスタ等からなる論理回路を含む符号2aで示す駆動回路Aが搭載されている。
【0018】
符号3は前記表示パネル1の陰極線n1〜n4を選択的に走査する走査ドライバを示しており、一部図示を省略しているが、前記各陰極線には、これに対して走査電位(例えばグランド電位)もしくは逆バイアス電位を与える一対のスイッチング素子TS3,TS4がそれぞれ接続されている。
【0019】
また走査ドライバ3には、画像データの走査同期信号に基づいて前記陰極線に対応した各スイッチンク素子TS3,TS4をオンオフ制御するシフトレジスタ等からなる論理回路を含む符号3aで示す駆動回路Bが搭載されている。
【0020】
一方、符号E1〜E4は、前記したデータドライバ2および走査ドライバ3を介して表示パネル1に対して駆動電力を供給する光電素子であり、これは太陽電池セルによる直列接続体により構成されている。
【0021】
図1に示す実施の形態においては、E1〜E4として示す太陽電池セルの直列接続体による直流出力が、出力電圧値を制限する電圧安定化回路4に供給されるように構成されている。そして、電圧安定化回路4を経た出力は、データドライバ2および走査ドライバ3における前記した論理回路をそれぞれに含む駆動回路AおよびBに対して、駆動電源として供給されるように構成されている。
【0022】
なお、前記した論理回路をそれぞれに含む駆動回路AおよびBは、例えば3.3V系の電圧仕様になされており、前記電圧安定化回路4は、太陽電池セルE1〜E4により生成される直流出力を、前記3.3V前後の安定化した電圧値に変換して駆動回路AおよびBに供給するように作用する。
【0023】
前記した構成によると、太陽電池セルE1〜E4による出力が外光により変動しても、前記した電圧安定化回路4による出力電圧の制御作用により、データドライバ2および走査ドライバ3における駆動回路AおよびBは、安定した動作が保証されることになる。
【0024】
なお、前記太陽電池セルE1〜E4による出力電圧が低下して、前記電圧安定化回路4の出力電圧の安定した制御がなされないような場合(電圧安定化回路4の出力電圧が前記論理回路が動作不能に陥るような電圧値まで低下するような場合)においては、電圧安定化回路4からの出力が停止(遮断)されるように構成されていることが望ましい。
【0025】
一方、図1に示す実施の形態においては、前記太陽電池セルE1〜E4による出力は前記した電圧安定化回路4を介さずに、有機EL素子の駆動電源として利用されるように構成されている。すなわち、前記太陽電池セルによる出力は、データドライバ2における前記スイッチング素子TS1,TS2のいずれかと、陽極線を介して走査状態の有機EL素子に供給されるようになされる。
【0026】
また前記太陽電池セルによる出力は、走査ドライバ3における前記スイッチング素子TS3,TS4のいずれかと、走査選択されていない陰極線を介して有機EL素子に対して逆バイアス電圧として供給される。これによりパッシブマトリクス型表示パネルにおいて発生するクロストーク発光を防止するようになされる。
【0027】
前記した自発光素子としての有機EL素子は周知のとおり、アノード電圧に応じて発光輝度が変化する特性を有する。したがって太陽電池セルによる出力を駆動電源として利用した前記した構成によると、太陽電池セルが受ける外光の大小に応じて有機EL素子の発光輝度も同様に変化することになる。すなわち、外光に応じて表示パネル1の全体輝度が変化するディマー制御がなされることになる。
【0028】
したがって、外光に応じて表示パネル1はディマー制御がなされるので、その視認性を向上させることができる。また表示パネル1を駆動するデータドライバ2および走査ドライバ3は、前記した電圧安定化回路4による出力電圧値が、所定値内に制御される範囲においては、安定した動作が保証されることになる。
【0029】
図2はこの発明にかかる有機EL装置の第2の実施の形態を示したものであり、この図2においてはすでに説明した図1に示す各部に相当する部分を同一符号で示している。したがって、その詳細な説明は省略する。
【0030】
この実施の形態においては、前記した光電素子としての太陽電池セルE1〜E4の出力は、符号5で示す昇圧回路(DC−DCコンバータ)を介して、表示パネル1に配置された有機EL素子への駆動電源として供給されるように構成されている。
【0031】
なお、この実施の形態においては、前記昇圧回路5としては例えばチャージポンプを好適に利用することができるが、適用される機器に応じてコイルを用いた電磁変換手段による昇圧回路を利用することもできる。
【0032】
この第2の実施の形態によると、太陽電池セルE1〜E4による起電力が不十分な状態においても、表示パネル1を発光駆動させることができる。そして、昇圧回路5として前記したチャージポンプ等を用いることにより、外光に応じて表示パネル1はディマー制御がなされるので、その視認性を向上させることができるなど、図1に示した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
図3はこの発明にかかる有機EL装置の第3の実施の形態を示したものであり、この図3においてもすでに説明した図1に示す各部に相当する部分を同一符号で示している。したがって、その詳細な説明は省略する。
【0034】
この実施の形態においては、光電素子としての直列接続体からなる太陽電池セルE1〜E4のうちの一部、すなわちE1〜E3で示す太陽電池セルの出力を、前記した電圧安定化回路4に供給し、この電圧安定化回路4より符号2aおよび3aで示す駆動回路AおよびBに対して駆動電源として供給するように構成されている。
【0035】
そして、表示パネル1における自発光素子としての有機EL素子にはE1〜E4の直列接続体からなる太陽電池セルの出力が、駆動電源として供給されるように構成されている。
【0036】
前記した構成によると、比較的低電圧により駆動される論理回路を含む駆動回路AおよびBに定格電圧を与えるに際し、電圧安定化回路4における電圧のドロップ分を少なくさせることができるので、太陽電池セルからの電力の利用効率を上げることができる。そして、図3に示す実施の形態においても図1に示した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
次に図4は、この発明にかかる有機EL装置の第4の実施の形態を示したものであり、この図4に示す例は有機EL素子を自発光素子として用いたアクティブマトリクス型表示パネル1を構成している。なお、この図4においてもすでに説明した図1に示す各部に相当する部分を同一符号で示している。したがって、その詳細な説明は適宜省略する。
【0038】
なお、図4における表示パネル1には、1つの画素を構成する最も基本的な画素回路を示している。そして、紙面の都合により前記画素回路は3行2列分を示しているが、これは表示パネル1の全面にわたって多数の画素回路が縦横方向にマトリクス状に配設されている。
【0039】
図4において、一つの画素回路に符号を付けたとおり、各画素回路はデータ書き込みトランジスタT1、駆動トランジスタT2、電荷保持用キャパシタCs、有機EL素子ELより構成されている。そして、データ書き込みトランジスタT1のソースにはデータドライバ2より映像信号に対応したデータ信号が供給されるように構成され、またデータ書き込みトランジスタT1のゲートには、走査ドライバ3より書き込みパルスが供給されるように構成されている。
【0040】
前記データ書き込みトランジスタT1のドレインは、前記駆動トランジスタT2のゲートに接続されると共に、電荷保持用キャパシタCsの一方の端子に接続されている。そして、前記駆動トランジスタT2のソースは、前記キャパシタCsの他方の端子に接続されると共に、太陽電池セルE1〜E4の出力が駆動電源として供給されるように構成されている。
【0041】
また前記駆動トランジスタT2のドレインは、自発光素子としての有機EL素子ELのアノード端子に接続され、この有機EL素子ELのカソード端子は、表示パネル1の基準電位点(グランド)に接続されている。
【0042】
一方、図4に示す実施の形態においては、E1〜E4として示す光電素子としての太陽電池セルによる直流出力が、出力電圧値を制限する電圧安定化回路(レギュレータ)4を介して、データドライバ2および走査ドライバ3に駆動電源として供給されるように構成されている。
【0043】
前記した構成により、太陽電池セルE1〜E4による出力が外光により変動しても、前記した電圧安定化回路4により電圧が所定値内に制御される範囲においては、データドライバ2および走査ドライバ3は、安定した動作が保証されることになる。
【0044】
そして、表示パネル1における発光対象となる画素回路には、太陽電池セルE1〜E4による直流出力が供給される。この場合、各画素回路は前記したとおり駆動用トランジスタT2と有機EL素子ELとの直列回路を構成しているので、太陽電池セルが受ける外光の大小に応じて画素回路を構成する有機EL素子の発光輝度も同様に変化することになる。すなわち、外光に応じて表示パネル1の全体輝度が変化するディマー制御がなされることになる。
【0045】
したがって、図4に示したアクティブマトリクス型表示パネルによる有機EL装置においても、図1〜図3に示したパッシブマトリクス型表示パネルを用いた例と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
なお、アクティブマトリクス型表示パネルによる有機EL装置においては、図4に例示するにとどまるが、このアクティブマトリクス型表示パネルを用い、図2または図3に示すような実施の形態も採用できることは勿論のことである。
【0047】
以上、説明した有機EL装置によると、表示パネルとして薄膜層を積層してなる例えば有機EL素子を採用するなどし、これに駆動電力を供給する光電素子として前記した太陽電池セルを組み合わせることで、駆動電力源を備えた軽量かつ薄型の有機EL装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 自発光表示パネル(発光装置)
2 データドライバ
2a 駆動回路A
3 走査ドライバ
3a 駆動回路B
4 電圧安定化回路
5 昇圧回路
E1〜E4 光電素子(太陽電池セル)
m1〜m3 データ線(陽極線)
n1〜n4 走査線(陰極線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外光の照度に応じて起電力を出力する光電素子と、少なくとも1つの自発光素子が配置され、前記自発光素子を駆動制御するための駆動回路とが備えられた有機EL装置であって、
前記駆動回路には、前記光電素子から前記駆動回路への出力電圧の供給を停止する制御を行う電圧安定化回路を介して前記光電素子からの出力電圧が駆動電源として供給されると共に、前記自発光素子には前記電圧安定化回路を介さずに前記光電素子からの出力電圧が自発光素子への駆動電源として供給されるように構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記電圧安定化回路は、前記光電素子からの出力電圧値が所定の電圧値以下になった場合に、前記光電素子から前記駆動回路への前記出力電圧の供給を停止するように制御を行うことを特徴とする請求項1に記載された有機EL装置。
【請求項3】
前記有機EL装置は、互いに交差する複数の陽極線及び複数の陰極線の各交点に自発光素子を備えるパッシブマトリクス型有機EL装置であり、前記光電素子の出力は、自発光素子への駆動電源として、前記パッシブマトリクス有機EL装置における前記陽極線に選択的に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された有機EL装置。
【請求項4】
前記光電素子の出力は、逆バイアス電源として、スイッチング素子と、走査選択されていない前記陰極線を介して前記パッシブマトリクス型有機EL装置における前記陰極線に選択的に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載された有機EL装置。
【請求項5】
前記有機EL装置は、互いに交差する複数のデータ線及び複数の走査線の各交点に、自発光素子と能動素子を含む画素を備えたアクティブマトリクス型有機EL装置であり、前記光電素子の出力は、自発光素子への駆動電源として画素を構成する自発光素子と前記能動素子との直列回路に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された有機EL装置。
【請求項6】
前記自発光素子は外光の照度に応じた輝度で発光されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載された有機EL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147029(P2012−147029A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105860(P2012−105860)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2010−505145(P2010−505145)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】