説明

有機EL装置

【課題】低電圧、長寿命のMPE構造の有機EL装置を提供する。
【解決手段】光透過可能な基板10と、基板10上に配置された光透過可能な陽極層12と、陽極層12上に積層して配置され、陽極層12側から正孔輸送層151〜15n、有機発光層161〜16nおよび電子輸送層181〜18nが順次積層された複数の発光ユニットLE1〜LEnと、発光ユニット間に介在して配置された電荷発生層221〜22n-1と、積層方向の最上部に配設された発光ユニットLEn上に配置された陰極層20とを備え、電荷発生層221〜22n-1に隣接して配置された中間電子輸送層25とを備え、中間電子輸送層25は、Li2Oを含む電子輸送材料を備える有機EL装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置に関し、特に、低電圧、長寿命のMPE構造の有機EL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(EL:Electroluminescence)素子を用いて、FPD(Flat Panel Display)のような表示装置や照明灯のような照明装置などの有機発光装置が実用化に向けて開発が進められている。この有機EL素子では、一対の対向する電極間に有機発光層を含む有機EL層を挟み、その電極間に電圧を印加し、有機EL層に電流を流して発光させる。最近では、高輝度を得るために、複数の有機EL層を電荷発生層を介して積層させる、マルチフォトンエミッション(Multi Photon Emission;MPE)といわれる構造のものが提案されている((例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
有機EL装置を照明に用いる場合、輝度・寿命の向上のためには、MPE構造が適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−045676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のMPE構造を有する有機EL装置においては、電荷発生層に隣接する電子注入層には、アルカリ金属系の材料を単独で成膜し、積層構造を採用していた。LiO2を用いた場合、積層構造では、蒸着材料の凝集に起因する電圧のバラツキが大きい。特に、高電圧になった素子に関しては寿命も短い。
【0006】
本発明の目的は、低電圧、長寿命のMPE構造の有機EL装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、MPE構造を有する有機EL装置であって、電荷発生層と、前記電荷発生層に隣接して配置された中間電子輸送層とを備え、前記中間電子輸送層は、Li2Oを含む電子輸送材料を備える有機EL装置が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、光透過可能な基板と、前記基板上に配置された光透過可能な陽極層と、前記陽極層上に積層して配置され、前記陽極層側から正孔輸送層、有機発光層および電子輸送層が順次積層された複数の発光ユニットと、前記発光ユニット間に介在して配置された電荷発生層と、積層方向の最上部に配設された前記発光ユニット上に配置された陰極層と、前記電荷発生層に隣接して配置された中間電子輸送層とを備え、前記中間電子輸送層は、Li2Oを含む電子輸送材料を備える有機EL装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、光透過可能な基板と、前記基板上に配置された光透過可能な陽極層と、前記陽極層上に積層して配置され、前記陽極層側から第1正孔輸送層、第1有機発光層および第1電子輸送層からなる第1発光ユニットと、前記陽極層側から第2正孔輸送層、第2有機発光層および第2電子輸送層からなる第2発光ユニットと、前記第1発光ユニットと前記第2発光ユニット間に介在して配置された電荷発生層と、積層方向の最上部に配設された前記第2発光ユニット上に配置された陰極層と、前記電荷発生層に隣接して配置された中間電子輸送層とを備え、前記中間電子輸送層は、Li2Oを含む電子輸送材料を備える有機EL装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低電圧、長寿命のMPE構造の有機EL装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機EL装置の模式的断面構造図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る有機EL装置の模式的断面構造図。
【図3】比較例に係る有機EL装置の模式的断面構造図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る有機EL装置と比較例に係る有機EL装置の輝度劣化特性の比較図。
【図5】比較例に係る有機EL装置において、電子輸送層上にLiO2層を積層形成するプロセスを説明する模式図。
【図6】本発明の実施の形態に係る有機EL装置において、電子輸送材料とLiO2の共蒸着プロセスを説明する模式図。
【図7】本発明の実施の形態に係る有機EL装置において、電子輸送層ETLと電荷発生層CGLとの間のエネルギーバンドダイヤグラム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
[第1の実施の形態]
(MPE素子構造)
第1の実施の形態に係る有機EL装置1の模式的断面構造は、図1に示すように、MPE構造を有する有機EL装置1であって、電荷発生層(CGL)22と、CGL22に隣接して配置された中間電子輸送層(ETL:Electron Transfer Layer)25とを備え、中間電子輸送層25は、Li2Oを含む電子輸送材料を備える。
【0015】
第1の実施の形態に係る有機EL装置1は、図1に示すように、光透過可能な基板10と、基板10上に配置された光透過可能な陽極層12と、陽極層12上に積層して配置され、陽極層12側から第1正孔輸送層(HTL:Hole Transfer Layer)151、第1有機発光層(EML:Emission Layer)161および第1電子輸送層(ETL:Electron Transfer Layer)181からなる第1発光ユニットLE1と、陽極層12側から第2正孔輸送層152、第2有機発光層162および第2電子輸送層182からなる第2発光ユニットLE2と、第1発光ユニットLE1と第2発光ユニットLE2間に介在して配置されたCGL22と、積層方向の最上部に配設された第2発光ユニットLE2上に配置された陰極層20と、電荷発生層CGL22に隣接して配置された中間電子輸送層25とを備える。ここで、中間電子輸送層25は、Li2Oを含む電子輸送材料を備える。
【0016】
第1の実施の形態に係る有機EL装置1は、発光ユニットLE1〜LEnを備える場合、図1を拡張して、光透過可能な基板10と、基板10上に配置された光透過可能な陽極層12と、陽極層12上に積層して配置され、陽極層12側から少なくともHTL151〜15、EML161〜16およびETL181〜18が順次積層された複数の発光ユニットLE1〜LEnと、発光ユニットLE1〜LEn間に介在して配置されたCGL221〜22n-1と、積層方向の最上部に配設された発光ユニットLEn上に配置された陰極層20と、CGL221〜22n-1に隣接して配置された中間電子輸送層25とを備える。ここで、中間電子輸送層25は、Li2Oを含む電子輸送材料を備える。
【0017】
また、陽極層12とHTL151間には、正孔注入層14が配置され、陰極層20とETL182間には、電子注入層26が配置されていても良い。
【0018】
また、第1の実施の形態に係る有機EL装置1において、中間電子輸送層25の膜厚は、例えば、0.1〜15nmの範囲である。また、Li2Oの濃度は、5〜50体積%である。
【0019】
また、中間電子輸送層25は、共蒸着によって、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜して形成しても良い。
【0020】
CGL221〜22n-1は、例えば、有機化合物、若しくは単体でアルミニウムよりも低い融点を有する金属からなる無機化合物で形成されている。このCGL221〜22n-1を構成する無機化合物の比抵抗は、例えば、1×102Ω・cm以上、望ましくは、1×105Ω・cm以上である。
【0021】
その無機化合物には、例えば、酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などが含まれる。Alの融点は、約660℃であるが、単体でAlよりも低い融点を有する金属としては、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、亜鉛(Zn)などがある。Ga、In、Sb、Znの融点は、それぞれ約29.8℃、156.4℃、630.7℃、および419.5℃である。
【0022】
あるいはまた、CGL221〜22n-1は、有機化合物で形成されていても良い。このCGL221〜22n-1を構成する有機化合物の比抵抗は、例えば、1×102Ω・cm以上、望ましくは、1×105Ω・cm以上である。
【0023】
第1の実施の形態に係る有機EL装置1は、基板10側から光が発光するように構成されているため、基板10は、光を透過する透明基板が用いられる。基板10の材質としては、例えば、ガラスが挙げられる。厚さは、例えば、約0.1〜1.1mm程度であるのがよい。基板10にポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等の透明な樹脂を用いてフレキシブル性を持たせることも可能である。
【0024】
陽極層12は、光を透過可能であり、厚さが、例えば、約140〜160nm程度のITO(インジウム−スズ酸化物)の透明電極からなる。
【0025】
発光ユニットLE1〜LEnは、基板10側から、HTL151〜15n、EML161〜16nおよびETL181〜18nが順次積層されている。
【0026】
HTL151〜15nは、陽極層12から注入された正孔を効率良くEML161〜16nに輸送するための層であり、例えば、厚さが約60nm程度のNPB(N,N−ジ(ナフタリル)−N,N−ジフェニル−ベンジデン)から形成される。
【0027】
ETL181〜18nは、陰極層20およびCGL221〜22n-1から注入された電子を効率良くEML161〜16nに輸送するための層であり、例えば、厚さが約35nm程度のAlq(アルミニウムキノリノール錯体)から形成される。
【0028】
EML161〜16nは、注入された正孔および電子が再結合して発光するための層であり、例えば、発光種であるクマリン化合物(C545T)が約1%程度ドーピングされ、厚さが約30nm程度のAlqで形成されていても良い。
【0029】
あるいは、EML161〜16nの一部の層は、青色の発光種、例えば、DPVBi(4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−1,1’−ビフェニル)が、例えば、約1%程度ドーピングされた、厚さが、例えば、約30〜50nm程度のAlqで形成されていても良い。
【0030】
あるいは、EML161〜16nの一部の層は、緑色の発光種、例えば、ジメチルキナクリドンが、例えば、約1%程度ドーピングされた、厚さが、例えば、約30〜50nm程度のAlqで形成されていても良い。
【0031】
あるいは、EML161〜16nの一部の層は、赤色の発光種、例えば、ナイルレッドが、例えば、約1%程度ドーピングされた、厚さが、例えば、約30〜50nm程度のAlqで形成されていても良い。
【0032】
なお、発光ユニットLE1〜LEnは、上記、HTL151〜15n、ETL181〜18n以外の層、例えば、正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)などを用いて構成しても良い。
【0033】
陰極層20は、例えば、厚さが約150nm程度で、材質が、例えば、アルミニウムからなる。
【0034】
(動作原理)
第1の実施の形態に係る有機EL装置1の動作は以下の通りである。
【0035】
まず、有機EL素子1の陽極端子・陰極端子(図示省略)を介して、陽極層12及び陰極層20の間に一定の電圧が印加される。これにより、陽極層12又はCGL221〜22n-1からHTL151〜15を介して、青、緑、赤の各色の光を発光するEML161〜16n-1に正孔が注入されるとともに、陰極層20又はCGL221〜22n-1からETL181〜18を介してEML161〜16に電子が注入される。そして、EML161〜16に注入された正孔と電子とが再結合することによって各色の光を発光する。これらの光が重なり、基板10を介して外部に出射されて、白色光が得られる。
【0036】
第1の実施の形態において、発光ユニットLE1〜LEnは、HTL151〜15、単色光を発光するEML161〜16、ETL181〜18を含み、有機発光層EML1はHILを含んでもよい。発光ユニットLE1〜LEnの段数は、複数であれば特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0037】
第1の実施の形態において、発光ユニットLE1〜LEnは、CGL221〜223を介して3層を積層したものとして構成されていてもよい。発光ユニットLE1が青色発光、発光ユニットLE2が緑色発光、発光ユニットLE3が赤色発光するものであっても良い。各発光ユニットLE1〜LEnと発光色の組み合わせはこれに限るものでなく、シアン、マゼンタ、黄の3色など、他の組み合わせを用いてもよい。
【0038】
第1の実施の形態に係る有機EL装置1によれば、共蒸着によって、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜することにより、LiO2自体の凝集を抑え、Li2Oの分散度を高めることができる。
【0039】
第1の実施の形態に係る有機EL装置1によれば、積層構造に比べ、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜することにより、LiO2自体の凝集を抑え、Li2Oの分散度を高めることができる。
【0040】
結果として、第1の実施の形態に係る有機EL装置1においては、反応性が比較的高いLi2Oが、電子輸送材料中に斑なく存在することにより、電荷発生層22において発生した電子を効率良く電子輸送材料へ移動することが可能となり、低電圧化、長寿命化を図ることができる。
【0041】
尚、第1の実施の形態に係る有機EL装置1においては、MPE構造の各ユニットにおける発光色の組み合わせは任意に選択可能である。また、第1の実施の形態に係る有機EL装置1においては、MPE構造の積層数も、2ユニット、3ユニットに限らず、任意に選択可能である。
【0042】
第1の実施の形態に係る有機EL装置1によれば、低電圧、長寿命のMPE構造の有機EL装置を提供することができる。
【0043】
(製造方法)
第1の実施の形態に係る有機EL装置1の製造方法は、光透過可能な基板10上に光透過可能な陽極層12を形成する工程と、陽極層12上に、陽極層12側から少なくともHTL151〜15、EML161〜16およびETL181〜18が順次積層された複数の発光ユニットLE1〜LEnを形成する工程と、発光ユニットLE1〜LEn間に介在してCGL221〜22n-1を形成する工程と、積層方向の最上部の発光ユニットLEn上に陰極層20を形成する工程と、CGL221〜22n-1に隣接して中間電子輸送層25を形成する工程とを有する。ここで、中間電子輸送層25を形成する工程は、共蒸着によって、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜する工程を有する。
【0044】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る有機EL装置1は、図2に示すように、第1有機発光層161は、橙色発光層161Yと水色発光層161Bの積層構造を備え、第2有機発光層162は、橙色発光層162Yと水色発光層162Bの積層構造を備える。
【0045】
第2の実施の形態に係る有機EL装置1は、第1の実施の形態と同様に、CGL22に隣接して配置された中間電子輸送層25を備える。ここで、中間電子輸送層25は、Li2Oを含む電子輸送材料を備える。
【0046】
また、中間電子輸送層25の膜厚は、例えば、0.1〜15nmの範囲である。Li2Oの濃度は、5〜50体積%である。
【0047】
また、中間電子輸送層25は、共蒸着によって、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜して形成しても良い。その他の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、重複説明は省略する。
【0048】
(比較例)
比較例に係る有機EL装置1aは、図3に示すように、ETL181上に配置されたLi2O層28を備える。その他の構成は、図2に示す第2の実施の形態と同様である。
【0049】
比較例に係る有機EL装置1aは、図3に示すように、MPE構造を有する有機EL装置において、CGL22に隣接する電子輸送層181には、LiO2層28からなる積層構造を採用している。LiO2層28を用いた場合、積層構造では、蒸着材料の凝集に起因する電圧のバラツキが大きい。特に、高電圧になった素子に関しては寿命も短い。
【0050】
第2の実施の形態に係る有機EL装置1と比較例に係る有機EL装置1aの輝度劣化特性の比較は、図4に示すように表される。図4から明らかなように、比較例に係る有機EL装置1aは、輝度特性の劣化が早い。
【0051】
比較例に係る有機EL装置1aにおいて、ETL181上にLiO2層28を積層形成するプロセスは、図5に示すように表される。ETL181上にLiO2層28を積層形成するプロセスでは、LiO2の凝集領域Bが発生しやすい。これは、矢印Fで示すように、ETL181上においてLiO2分子同士が吸着し、蒸着工程において蒸着材料の凝集領域Bが発生しやすいためである。初期電圧特性では、第2の実施の形態に係る有機EL装置1では、10mA/cm2で6.92Vであるのに対して、比較例に係る有機EL装置1aにおいては、10mA/cm2で、7.00Vであった。
【0052】
比較例に係る有機EL装置1aは、MPE構造を有する有機EL装置において、CGL22に隣接する電子輸送層181には、LiO2層28からなる積層構造を採用し、蒸着材料の凝集に起因する電圧のバラツキが大きい。特に、高電圧になった素子に関しては寿命も短い。
【0053】
実施の形態に係る有機EL装置1において、電子輸送材料とLiO2の共蒸着プロセスは、模式的に図6に示すように表される。実施の形態に係る有機EL装置1においては、ETL181上に、電子輸送材料ETとLiO2の共蒸着プロセスを実施するため、LiO2分子と電子輸送材料ETとが互いに吸着し、敷き詰められた構造が形成される。LiO2を含む中間電子輸送層(ETL)25は、このように、電子輸送材料ETとLiO2の共蒸着によって、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜することにより、LiO2自体の凝集を抑え、Li2Oの分散度を高めることができる。このため、低電圧、長寿命化を図ることができる。
【0054】
実施の形態に係る有機EL装置1において、電子輸送層ETLと電荷発生層CGLとの間のエネルギーバンドダイヤグラムは、図7に示すように、模式的に表すことができる。
【0055】
ETLとCGLの界面では、ETL中に含まれるLiO2によって、ディープレベル(深い準位)DL1、DL2、…、DLnが形成される。CGL内で発生した電子―正孔対Pの内、電子(−)は、このディープレベルDL1、DL2、…、DLnを介して、CGLからETLへ注入され、正孔(+)はCGLから陰極層20側に注入される。
【0056】
このように、実施の形態に係る有機EL装置によれば、共蒸着によって、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜することにより、LiO2自体の凝集を抑え、Li2Oの分散度を高めると同時に、低電圧化を図ることができる。
【0057】
実施の形態に係る有機EL装置によれば、積層構造に比べ、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜することにより、LiO2自体の凝集を抑え、Li2Oの分散度を高めることができる。
【0058】
結果として、実施の形態に係る有機EL装置においては、反応性が比較的高いLi2Oが、電子輸送材料中に斑なく存在することにより、電荷発生層において発生した電子を効率良く電子輸送材料へ移動することが可能となり、低電圧化、長寿命化を図ることができる。
【0059】
尚、実施の形態に係る有機EL装置においては、MPE構造の各ユニットにおける発光色の組み合わせは任意に選択可能である。また、実施の形態に係る有機EL装置においては、MPE構造の積層数も、2ユニット、3ユニットに限らず、任意に選択可能である。
【0060】
本発明によれば、低電圧、長寿命のMPE構造の有機EL装置を提供することができる。
【0061】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1〜第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0062】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の有機EL装置は、有機発光デバイス、フラットパネルディスプレイ,フレキシブルディスプレイを実現するための有機ELディスプレイなどのフレキシブルエレクトロニクス分野、および透明エレクトロニクス分野、さらに照明機器、有機レーザ、太陽電池、ガスセンサ、味覚センサ,匂いセンサなどのバイオセンサなど幅広い分野において適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…有機EL装置
10…基板
12…陽極層
14…正孔注入層(HIL)
151,152,153,…,15n…正孔輸送層(HTL)
161,162,163,…,16n,161B,161Y,162B,162Y…有機発光層(EML,EMLB,EMLY)
181,182,183,…,18n…電子輸送層(ETL)
20…陰極層
221,222,223,…,22n-1…電荷発生層(CGL)
25…中間電子輸送層(ETL)
26…電子注入層(EIL)
28…Li2O層
LE1,LE2,LE3,…,LEn…発光ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPE構造を有する有機EL装置であって、
電荷発生層と、
前記電荷発生層に隣接して配置された中間電子輸送層と
を備え、前記中間電子輸送層は、Li2Oを含む電子輸送材料を備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
光透過可能な基板と、
前記基板上に配置された光透過可能な陽極層と、
前記陽極層上に積層して配置され、前記陽極層側から正孔輸送層、有機発光層および電子輸送層が順次積層された複数の発光ユニットと、
積層方向の最上部に配設された前記発光ユニット上に配置された陰極層と、
前記発光ユニット間に介在して配置された電荷発生層と、
前記電荷発生層に隣接して配置された中間電子輸送層と
を備え、前記中間電子輸送層は、Li2Oを含む電子輸送材料を備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項3】
光透過可能な基板と、
前記基板上に配置された光透過可能な陽極層と、
前記陽極層上に積層して配置され、前記陽極層側から第1正孔輸送層、第1有機発光層および第1電子輸送層からなる第1発光ユニットと、
前記陽極層側から第2正孔輸送層、第2有機発光層および第2電子輸送層からなる第2発光ユニットと、
前記第1発光ユニットと前記第2発光ユニット間に介在して配置された電荷発生層と、
積層方向の最上部に配設された前記第2発光ユニット上に配置された陰極層と、
前記電荷発生層に隣接して配置された中間電子輸送層と
を備え、前記中間電子輸送層は、Li2Oを含む電子輸送材料を備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項4】
前記中間電子輸送層の膜厚が、0.1〜15nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記Li2Oの濃度は、5〜50体積%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記中間電子輸送層は、共蒸着によって、Li2Oと電子輸送材料を同時に成膜したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記第1および第2有機発光層は、橙色発光層と水色発光層の積層構造を備えることを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−212575(P2012−212575A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78002(P2011−78002)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】