説明

有機LED素子、有機LED表示装置および有機LED表示装置用基板

【課題】 視野角による色度変化の小さい有機LED素子および有機LED表示装置並びにこの有機LED表示装置に適した有機LED表示装置用基板を提供する。
【解決手段】 有機LED表示装置1は、誘電体膜3が形成された透明基板2の上に、透明電極である陽極4と、有機層5と、陰極6とがこの順に積層された有機LED素子7を有する。誘電体層3の膜厚は0.5μm以上であり、450nm〜650nmの波長域において、有機層5の屈折率n、陽極4の屈折率nおよび誘電体膜3の屈折率nの間に、|n−n|≦0.25および|n−n|≦0.20の関係が成立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機LED(Light−Emitting Diode)素子、有機LED表示装置および有機LED表示装置用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
有機LED素子は、有機EL(Electro Luminescence)素子とも呼ばれ、有機物中に注入された電子と正孔が再結合して生じた励起子によって発光が起こる現象を利用した素子である。
【0003】
近年では、この有機LED素子を用いたディスプレイの開発が盛んに行われている。これは、有機LEDディスプレイが、液晶ディスプレイに比較して、広い視野角、速い応答速度および高いコントラストなどを有することによるものである。
【0004】
一般に、有機LED素子は、透明導電膜と金属電極の間に有機膜が挟持された構造を有し、素子の内部で発光した光は、透明電極を介して素子の外部に取り出される。ここで、発光光は、素子の内部で全方位に等しい強度で放射される。すなわち、素子の前方に放射される光と等しい強度の光が、素子の背面方向にも放射される。したがって、外部に取り出す光の量を高めるには、背面に放射された光を前方に反射させ、効率よくこれを取り出すことが必要となる。
【0005】
しかし、素子の前方に直接向かう光と、反射して前方に戻ってくる光とは、互いに干渉し合う。また、各層を構成する部材の間には屈折率差があるために、界面においても光の反射が起こる。このことを、図39を用いて説明する。
【0006】
図39は、従来の有機LED表示装置の断面模式図である。図に示すように、有機LED表示装置91は、ガラス基板92の上に、陽極であるITO(Indium Tin Oxide)93と、有機膜94と、陰極であるアルミニウム膜95とが、この順に積層された有機LED素子96を有する。ここで、ガラス基板92の屈折率は1.55程度、有機膜94の屈折率は1.8程度、ITO93の屈折率は1.9程度である。
【0007】
また、有機LED表示装置91には、ガラス基板92の上に、有機LED素子96を封止する封止部材97が設けられている。尚、図39において、符号98は、有機LED素子96に駆動電圧を印加する電源である。
【0008】
有機LED素子96に電圧を印加すると、陰極からは電子が、陽極からは正孔がそれぞれキャリアとして注入される。これらのキャリアは有機膜94の内部で再結合し、これにより発生した励起子によって発光が起こる。
【0009】
発光領域から放射された光には、有機LED表示装置91の前方(図の下方向)に向かう光99の他に、一旦背面方向(図の上方向)に向かった後、アルミニウム膜95で反射されてから前方に向かう光100もある。
【0010】
また、ガラス基板92とITO93との界面には、大きな屈折率段差があるために、前方に向かった後に、ガラス基板92で反射されて背面方向に向かい、さらに、アルミニウム膜95で反射されて再び前方に向かう光101もある。
【0011】
同様に、背面方向に向かった後に、アルミニウム膜95、ガラス基板92、アルミニウム膜95の順で反射される光102もある。
【0012】
これらの光(99,100,101,102)は互いに干渉し合うので、色度が視野角に依存して変化してしまうという問題があった。
【0013】
こうした問題に対しては、従来より、有機LED素子を構成する各膜の膜厚について、前方放射光と背面放射光の反射光との位相差が、光学干渉の強め合いの条件を満たすように最適化することが行われている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0014】
例えば、発光領域から陰極反射面までの光学的距離をL、陽極側反射面までの距離をLとすると、波長λの光に対する干渉の強め合いの条件は、
={(2m+1)/4}λ
={(m+1)/2}λ
(但し、m=0,1,・・・)
となる。したがって、光学的干渉の影響を受ける発光スペクトルや、外部量子効率が最適となるLを求め、Lを構成する有機膜(正孔注入層や正孔輸送層)とITOとの膜厚バランスを調整することによって、有機LED素子の外部に取り出される光を大きくすることができる。
【0015】
一方、水や酸素から有機LED素子を保護する保護層と、保護層の上下にある部材との屈折率差に起因して、これらの界面で光が反射して発光量が減少する問題を解決するために、保護層の屈折率を上層から下層に向かって変化させる方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0016】
例えば、屈折率の異なる材料からなる2つの層の界面を光が通過する場合、界面における反射率Rは、各層の屈折率をそれぞれnおよびnとすると、
R=(n−n/(n+n
で表される。したがって、屈折率nとnの差が小さくなるほど、屈折率Rは小さくなるので、界面を透過する光の強度が増加することになる。
【0017】
【非特許文献1】宮口 敏、外6名、“有機ELフルカラーディスプレイの開発”、パイオニア アール・アンド・ディー(PIONER R&D)、第11巻、第1号、p.21−28
【特許文献1】特開2003−133062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、光学干渉の強め合いの条件を満たすように膜厚を最適化する方法では、各膜について屈折率に応じた膜厚の厳密な制御が必要となる。一方、色度の視野角依存性に対する要求は高まる傾向にあり、これを膜厚の最適化のみによって対処するのには限界があった。
【0019】
また、保護層の屈折率を連続的に変化させる方法では、このような保護層を形成するのが容易でないという問題があった。
【0020】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、簡易な方法によって視野角による色度変化の低減が図られた有機LED素子を提供することにある。
【0021】
また、本発明の目的は、視野角による色度変化の小さい有機LED表示装置を提供することにある。
【0022】
さらに、本発明の目的は、視野角による色度変化の小さい有機LED表示装置に適した基板を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願第1の態様は、陽極と陰極によって挟持された有機層を備えた有機LED素子において、陽極および陰極の少なくとも一方が透明電極であり、有機層とは反対側で透明電極に接する誘電体層を有していて、誘電体層の膜厚は0.5μm以上であり、450nm〜650nmの波長域において、有機層の屈折率n、透明電極の屈折率nおよび誘電体膜の屈折率nの間に、少なくとも
|n−n|≦0.25
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを特徴とする有機LED素子に関する。
【0025】
本願第1の態様において、誘電体層の膜厚は、0.5μm以上2.0μm以下とすることができる。特に、誘電体層の膜厚が、1.0μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
【0026】
また、本願第1の態様では、450nm〜650nmの波長域において、有機層の屈折率n、前記透明電極の屈折率nおよび前記誘電体膜の屈折率nの間に、
|n−n|≦0.20
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することがより好ましい。
【0027】
本願第1の態様において、誘電体膜は、ケイ素、酸素、窒素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも2つの元素で構成されるものとすることができる。特に、誘電体膜は、SiO膜、Si膜、AlN膜、SiO膜、AlO膜およびSiAlO膜よりなる群から選ばれるいずれか1の膜であることが好ましい。また、本願第1の態様において、有機層は白色光を発光するものとすることができる。
【0028】
本願第2の態様は、透明基板と、この透明基板の上に設けられた誘電体膜と、この誘電体膜の上に設けられ、透明導電性材料からなる陽極と仕事関数の小さい金属またはこの金属の合金からなる陰極とによって有機層が挟持された有機LED素子と、透明基板の上に設けられて有機LED素子を封止する封止部材とを有し、誘電体層の膜厚が0.5μm以上であり、450nm〜650nmの波長域において、有機層の屈折率n、陽極の屈折率nおよび誘電体膜の屈折率nの間に、
|n−n|≦0.25
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを特徴とする有機LED表示装置に関する。
【0029】
本願第3の態様は、不透明基板と、不透明基板の上に設けられ、陽極と透明導電性材料からなる陰極とによって有機層が挟持された有機LED素子と、陰極の上に設けられた誘電体膜と、不透明基板の上に設けられて、有機LED素子および誘電体膜を封止する透明封止部材とを有し、誘電体層の膜厚が0.5μm以上であり、450nm〜650nmの波長域において、有機層の屈折率n、陰極の屈折率nおよび誘電体膜の屈折率nの間に、少なくとも
|n−n|≦0.25
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを特徴とする有機LED表示装置に関する。
【0030】
本願第2の態様および本願第3の態様において、誘電体層の膜厚は、0.5μm以上2.0μm以下であることが好ましい。特に、誘電体層の膜厚は、1.0μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
【0031】
また、本願第2の態様および本願第3の態様では、450nm〜650nmの波長域において、有機層の屈折率n、透明電極の屈折率nおよび誘電体膜の屈折率nの間に、
|n−n|≦0.20
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することがより好ましい。
【0032】
本願第2の態様および本願第3の態様において、誘電体膜は、ケイ素、酸素、窒素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも2つの元素で構成されるものとすることができる。特に、誘電体膜は、SiO膜、Si膜、AlN膜、SiO膜、AlO膜およびSiAlO膜よりなる群から選ばれるいずれか1の膜であることが好ましい。また、有機層は白色光を発光するものとすることができる。
【0033】
本願第4の態様は、透明基板と、この透明基板の上に設けられた膜厚0.5μm以上の誘電体膜と、この誘電体膜の上に設けられた透明電極膜とを有し、450nm〜650nmの波長域において、誘電体膜の屈折率nと透明電極膜の屈折率nとの間に、
|n−n|≦0.25
の関係が成立することを特徴とする有機LED表示装置用基板に関する。
【0034】
本願第4の態様において、誘電体層の膜厚は、0.5μm以上2.0μm以下であることが好ましい。特に、誘電体層の膜厚は、1.0μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
【0035】
また、本願第4の態様では、450nm〜650nmの波長域において、誘電体膜の屈折率nと透明電極膜の屈折率nとの間に、
|n−n|≦0.20
の関係が成立することがより好ましい。
【0036】
本願第4の態様において、誘電体膜は、ケイ素、酸素、窒素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも2つの元素で構成されるものとすることができる。特に、誘電体膜は、SiO膜、Si膜、AlN膜、SiO膜、AlO膜およびSiAlO膜よりなる群から選ばれるいずれか1の膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本願第1の態様によれば、有機層とは反対側で透明電極に接する誘電体層を設けることによって、視野角による色度変化の小さい有機LED素子を得ることができる。
【0038】
また、本願第2の態様によれば、透明基板と陽極との間に誘電体膜を設けることによって、色度の視野角依存性に優れた有機LED表示装置を得ることができる。
【0039】
また、本願第3の態様によれば、陰極の上に誘電体膜を設けることによって、色度の視野角依存性に優れた有機LED表示装置を得ることができる。
【0040】
さらに、本願第4の態様によれば、基板と透明電極膜との間に誘電体膜を設けることによって、視野角による色度変化の小さい有機LED表示装置に適した基板とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明者は、鋭意研究した結果、陽極と陰極によって挟持された有機層を備えた有機LED素子において、陽極および陰極の少なくとも一方を透明電極とし、有機層とは反対側で透明電極に接する誘電体層を設けることによって、視野角による色度変化を小さくできることを見出した。
【0042】
但し、誘電体層の膜厚は0.5μm以上であり、また、450nm〜650nmの波長域において、有機層の屈折率をn、透明電極の屈折率をn、誘電体膜の屈折率をnとすると、少なくとも
|n−n|≦0.25、および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを要する。
【0043】
例えば、上記の有機LED素子において、陽極が透明電極であって陽極から発光光が取り出される場合には、次の関係が成立することを必要とする。
【0044】
すなわち、誘電体層の膜厚は0.5μm以上であることを要する。また、450nm〜650nmの波長域において、有機層の屈折率n、透明電極(陽極)の屈折率nおよび誘電体膜の屈折率nの間に、
|n−n|≦0.25、および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを要する。
【0045】
また、上記の有機LED素子において、陰極が透明電極であって陰極から発光光が取り出される場合には、少なくとも次の関係が成立することを必要とする。
【0046】
すなわち、誘電体膜の膜厚は0.5μm以上であることを要する。また、450nm〜650nmの波長域において、有機層の屈折率n、透明電極(陰極)の屈折率nおよび誘電体膜の屈折率nの間に、
|n−n|≦0.25、および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを要する。
【0047】
さらに、陽極および陰極が透明電極であって、両極から発光光が取り出される場合には、陽極および陰極のそれぞれについて上記の関係が成立することを要する。
【0048】
また、本発明者は、透明基板と、この透明基板の上に設けられた膜厚0.5μm以上の誘電体膜と、この誘電体膜の上に設けられた透明電極膜とを有し、450nm〜650nmの波長域において、誘電体膜の屈折率nと透明電極膜の屈折率nとの間に、
|n−n|≦0.25
の関係が成立する有機LED表示装置用基板を用いることにより、視野角による色度変化の小さい有機LED表示装置を提供できることを見出した。
【0049】
上記の有機LED表示装置用基板において、透明電極膜の上に形成される有機層や、有機層の上に透明電極膜に対向して設けられる他の電極膜には、有機LED表示装置に適した材料が用いられる。特に、透明電極との屈折率差が0.20未満である有機層が好適である。
【0050】
以下、本発明の有機LED表示素子および有機LED表示装置用基板について、さらに詳細に説明するとともに、本発明の有機LED表示装置についても説明する。尚、本明細書において、「透明」とは可視光に対する透過率が高いことを言い、誘電体膜は透明材料からなる膜であるとする。
【0051】
図1は、本実施の形態における第1の有機LED表示装置の断面模式図である。
【0052】
図1に示すように、有機LED表示装置1は、透明基板2の上に、誘電体膜3を介して、透明電極である陽極4と、有機層5と、陰極6とがこの順に積層された有機LED素子7を有する。また、有機LED素子7は、透明基板2上に設けられた封止部材8によって封止されている。封止部材8は、例えば、接着剤などを介して透明基板2に固定される。尚、図1において、符号9は、有機LED素子7に駆動電圧を印加する電源である。
【0053】
図1で、本発明における有機LED表示装置用基板は、透明基板2と、誘電体膜3と、陽極4とによって構成される。ここで、図1では、透明導電性材料が所定の電極パターン(図示せず)にパターニングされることによって陽極4を形成している。このように、本発明における有機LED表示装置用基板では、透明導電性材料がパターニングされた状態とすることができる。但し、本発明はこれに限られるものではなく、透明導電性材料がパターニングされる前の状態をも含むものとする。
【0054】
有機LED表示装置1では、有機層5で発光した光は、陽極4側から外部に取り出される。したがって、透明基板2には、可視光に対する透過率が高い材料が用いられる。具体的には、アルカリガラス、無アルカリガラスおよび石英ガラスなどの無機ガラスの他に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール並びにポリフッ化ビニリデンおよびポリフッ化ビニルなどのフッ素含有ポリマーなどの透明材料が挙げられる。
【0055】
また、陽極4には、透明であって仕事関数の大きな金属若しくはその合金または他の導電性化合物が用いられる。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnOまたはZnOなどを陽極材料として用いることができる。
【0056】
一方、陰極6には、仕事関数の小さな金属またはその合金が用いられる。具体的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属および周期表第3族の金属などが挙げられる。この内、安価で化学的安定性のよい材料であることから、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)またはこれらの合金などが好ましく用いられる。
【0057】
また、図2は、本実施の形態における第2の有機LED表示装置の断面図である。
【0058】
図2に示すように、有機LED表示装置11は、不透明基板12の上に、陽極13と、有機層14と、電子注入層15と、透明電極である陰極16とがこの順に積層された有機LED素子17を有する。また、陰極16の上には誘電体膜18が形成されている。さらに、有機LED素子17は、不透明基板12上に設けられた透明な封止部材19によって封止されている。封止部材19は、例えば、接着剤などを介して不透明基板12に固定される。尚、図2において、符号20は、有機LED素子17に駆動電圧を印加する電源である。
【0059】
有機LED表示装置11では、有機層14で発光した光は、陰極16側から外部に取り出される。したがって、封止部材19には、アルカリガラス、無アルカリガラスおよび石英ガラスなどの無機ガラスの他に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール並びにポリフッ化ビニリデンおよびポリフッ化ビニルなどのフッ素含有ポリマーなどの透明材料が用いられる。
【0060】
また、陰極16には、ITO、SnOまたはZnOなどの透明電極が用いられる。さらに、電子注入層15としては、例えば、LiFまたはLiOなどを用いることができる。
【0061】
尚、本実施の形態においては、有機層14の上に、次のような透明電極膜を設け、この透明電極膜を陰極として使用することもできる。
【0062】
具体的には、透明電極膜として、仕事関数の小さい金属、その酸化物およびそのハロゲン化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、電子輸送性を有し還元電位が負で前記無機化合物よりも還元電位の低い有機化合物との共蒸着膜からなる第1の透明電極層と、金属酸化物からなる第2の透明電極層との2層膜を用いることができる。
【0063】
上記の無機化合物としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)などのアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)などのアルカリ土類金属、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)などの希土類金属、並びに、これらの金属の酸化物およびハロゲン化物などが挙げられる。
【0064】
また、上記の有機化合物としては、例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体(Alq)、ビス(8−ヒドロキシ)キナルジンアルミニウムフェノキサイド(Alq′OPh)、ビス(8−ヒドロキシ)キナルジンアルミニウム−2,5−ジメチルフェノキサイド(BAlq)、モノ(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)リチウム錯体(Liq)、モノ(8−キノリノラート)ナトリウム錯体(Naq)、モノ(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)リチウム錯体、モノ(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)ナトリウム錯体およびビス(8−キノリノラート)カルシウム錯体(Caq)などのキノリン誘導体の金属錯体、並びに、C60およびC70などのフラーレン構造を有する炭素クラスターまたはその金属錯体などが挙げられる。
【0065】
さらに、第2の透明電極層を構成する金属酸化物としては、例えば、インジウム(In)、アンチモン(Sb)または亜鉛(Zn)の酸化物、ITO、インジウムとアンチモンの酸化物およびインジウムと亜鉛の酸化物などが挙げられる。
【0066】
図2において、陽極13は、図1の有機LED表示装置1と同様のものを用いることができる。但し、陽極材料は、正孔注入能が高い仕事関数の大きな材料であればよく、ITO、SnOおよびZnOなどの透明材料だけでなく、金(Au)などの不透明材料を用いることもできる。尚、図2の例では、陽極13が透明電極である場合を想定している。
【0067】
一方、基板12には、シリコン(Si)などの不透明材料が用いられる。
【0068】
図3は、本実施の形態における第3の有機LED表示装置の断面図である。
【0069】
図3に示すように、有機LED表示装置21は、透明基板22の上に、第1の誘電体膜23を介して、透明電極である陽極24と、有機層25と、電子注入層26と、透明電極である陰極27とがこの順に積層された有機LED素子28を有する。また、陰極27の上には、第2の誘電体膜29が形成されている。さらに、有機LED素子28および第2の誘電体膜29は、透明基板22上に設けられた透明な封止部材30によって封止されている。封止部材30は、例えば、接着剤などを介して透明基板22に固定される。尚、図3で、符号31は、有機LED素子28に駆動電圧を印加する電源である。
【0070】
図3で、本発明における有機LED表示装置用基板は、透明基板22と、第1の誘電体膜23と、陽極24とによって構成される。ここで、図3では、透明導電性材料を所定の電極パターン(図示せず)にパターニングすることによって陽極24を形成している。このように、本発明における有機LED表示装置用基板では、透明導電性材料がパターニングされた状態とすることができる。但し、本発明はこれに限られるものではなく、透明導電性材料がパターニングされる前の状態をも含むものとする。
【0071】
透明基板22および封止部材30は、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラスおよび石英ガラスなどの無機ガラスの他に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール並びにポリフッ化ビニリデンおよびポリフッ化ビニルなどのフッ素含有ポリマーなどの透明材料を用いて形成することができる。
【0072】
陽極24には、透明であって仕事関数の大きな金属若しくはその合金または他の導電性化合物が用いられる。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnOまたはZnOなどを陽極材料として用いることができる。
【0073】
陰極27には、ITO、SnOまたはZnOなどの透明電極が用いられる。また、電子注入層26としては、例えば、LiFまたはLiOなどを用いることができる。
【0074】
尚、図2の有機LED表示装置11と同様に、有機層25の上に、次のような透明電極膜を設け、この透明電極膜を陰極として使用することもできる。
【0075】
透明電極膜としては、仕事関数の小さい金属、その酸化物およびそのハロゲン化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機化合物と、電子輸送性を有し還元電位が負で前記無機化合物よりも還元電位の低い有機化合物との共蒸着膜からなる第1の透明電極層と、金属酸化物からなる第2の透明電極層との2層膜を用いることができる。
【0076】
上述した有機LED素子(1,11,21)は、有機層(5,14,25)が、それぞれ、正孔輸送層、発光層および電子輸送層からなる3層型の素子とすることができる。
【0077】
また、これらの有機LED素子は、発光層が正孔輸送性または電子輸送性を併せ持つ2層型の素子とすることもできる。
【0078】
さらに、陽極からの正孔注入障壁を低くするために、正孔輸送層と陽極の間に、陽極とのイオン化ポテンシャルの差が小さい正孔注入層がさらに1層設けられた構造とすることもできる。
【0079】
正孔輸送層としては、例えば、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[N−フェニル−N−(2−ナフチル)−4’−アミノビフェニル−4−イル]−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPTE)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(HTM2)およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)などが挙げられる。
【0080】
電子輸送層としては、例えば、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)および2−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)などが挙げられる。
【0081】
発光層には、注入された電子と正孔が再結合できる場を提供し、且つ、発光効率の高い材料を用いる。具体的には、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体(Alq)、ビス(8−ヒドロキシ)キナルジンアルミニウムフェノキサイド(Alq′OPh)、ビス(8−ヒドロキシ)キナルジンアルミニウム−2,5−ジメチルフェノキサイド(BAlq)、モノ(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)リチウム錯体(Liq)、モノ(8−キノリノラート)ナトリウム錯体(Naq)、モノ(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)リチウム錯体、モノ(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)ナトリウム錯体およびビス(8−キノリノラート)カルシウム錯体(Caq)などのキノリン誘導体の金属錯体、テトラフェニルブタジエン、フェニルキナクドリン(QD)、アントラセン、ペリレン並びにコロネンなどの蛍光性物質が挙げられる。
【0082】
上記の蛍光性物質は、それ自体で発光が可能なホスト物質と組み合わせて、ドーパントとして使用することが好ましい。これにより、ホスト物質の発光波長特性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可能になるとともに、素子の発光効率および安定性を向上させることが可能となる。
【0083】
ホスト物質としては、キノリノラト錯体が好ましく、特に、8−キノリノールおよびその誘導体を配位子としたアルミニウム錯体が好ましい。
【0084】
以上述べた有機LED表示装置(1,11,21)は、いずれも誘電体膜(3,18,23,29)を有する。すなわち、本実施の形態は、透明電極に接して誘電体膜を設けることを特徴としている。ここで、誘電体膜は、透明であって且つ有機層および透明電極と同程度の屈折率を有するものとする。
【0085】
以下、第1の有機LED表示装置1、第2の有機LED表示装置11および第3の有機LED表示装置21における誘電体膜(3,18,23,29)について、それぞれ具体的に説明する。
【0086】
図1に示す第1の有機LED表示装置1では、陽極24の側から発光光が外部に取り出される。この場合、可視光の内の特に視感度が高い波長域(450nm〜650nm)において、有機層5の屈折率をn、陽極4の屈折率をn、誘電体膜3の屈折率をnとすると、
|n−n|≦0.25 (1)
および
|n−n|≦0.20 (2)
の関係が成立することを要する。
【0087】
特に、上記波長域において、
|n−n|≦0.20、および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することが好ましい。
【0088】
また、図2の有機LED表示装置11では、陰極16の側から発光光が外部に取り出される。この場合、450nm〜650nmの波長域において、有機層14の屈折率をn′、陰極16の屈折率をn′、誘電体膜18の屈折率をn′、陽極13の屈折率をn′とすると、
|n′−n′|≦0.25、
|n′−n′|≦0.20、および
|n′−n′|≦0.20
の関係が成立することを要する。
【0089】
特に、上記波長域において、
|n′−n′|≦0.20、
|n′−n′|≦0.20、および
|n′−n′|≦0.20
の関係が成立することが好ましい。
【0090】
但し、図2の有機LED表示装置11において、陽極13が不透明電極である場合には、450nm〜650nmの波長域において、
|n′−n′|≦0.25、および
|n′−n′|≦0.20
の関係が成立すればよい。
【0091】
特に、陽極13が不透明電極である場合には、上記波長域において、
|n′−n′|≦0.20、および
|n′−n′|≦0.20
の関係が成立することが好ましい。
【0092】
また、図3の有機LED表示装置21では、陽極24および陰極27の両側から発光光が外部に取り出される。この場合、450nm〜650nmの波長域において、有機層25の屈折率をn″、陽極24の屈折率をn″、第1の誘電体膜23の屈折率をn″、陰極27の屈折率をn″、第2の誘電体膜29の屈折率をn″とすると、
|n″−n″|≦0.25、
|n″−n″|≦0.25、
|n′−n′|≦0.20、および
|n′−n′|≦0.20
の関係が成立することを要する。
【0093】
特に、上記波長域において、
|n″−n″|≦0.20、
|n″−n″|≦0.20、
|n″−n″|≦0.20、および
|n″−n″|≦0.20
の関係が成立することが好ましい。
【0094】
尚、本発明における誘電体膜は、膜厚方向に屈折率が連続的に変化するのではなく、膜中で略一様な屈折率を有しているものとする。
【0095】
図6は、図1の構造を有する有機LED表示装置について、450nm〜650nmの波長域での誘電体膜の屈折率に対する色差変化を表したものである。
【0096】
尚、図6の例では、ガラス基板の上に、誘電体膜、ITO、有機層およびアルミニウム膜をこの順に積層した有機LED表示装置について示している。ここで、ITOと有機層との間には、(2)式の関係が成立するものとする。また、有機層は、正孔輸送層と、青色発光層と、黄色発光層と、電子輸送層とからなり、有機層から発光される光は白色光であるとする。一般に、白色光における色度変化が、観察者に最も敏感に認識されるからである。
【0097】
また、図6では、誘電体膜の屈折率をITOの屈折率に対する比で表している。但し、横軸で「なし」とあるのは、誘電体膜がない従来例に対応する。
【0098】
図6から分かるように、ITOと同程度の屈折率を有する誘電体膜をガラス基板とITOとの間に設けることによって、従来より色差を小さくすることができる。
【0099】
一般に、色差(ΔxおよびΔy)が±0.03以上変化すると、観察者に色度変化が視認され易くなる。したがって、図6の例では、ITOの屈折率に対する誘電体膜の屈折率が0.9倍〜1.2倍であることが好ましく、1.0倍〜1.2倍であることがより好ましい。
【0100】
また、図7は、図6と同様の構造を有する有機LED表示装置について、450nm〜650nmの波長域での誘電体膜の膜厚に対する色差変化を表したものである。尚、横軸で「なし」とあるのは、誘電体膜がない従来例に対応する。
【0101】
図7から分かるように、誘電体膜の膜厚が大きいと色差は小さくなる傾向にある。図で、色差(ΔxおよびΔy)が±0.03以下となる範囲を見ると、誘電体膜の膜厚は、0.5μm以上であることが好ましい。一方、誘電体膜の膜厚が大きくなりすぎると、成膜が困難になるなどの問題が発生する。したがって、膜厚は、0.5μm以上で2.0μm以下あることがより好ましい。また、膜厚が1.0μm以上で2.0μm以下であれば、色差を一層小さくすることができるのでさらに好ましい。
【0102】
本発明の誘電体膜としては、ケイ素(Si)、酸素(O)、窒素(N)およびアルミニウム(Al)よりなる群から選ばれる少なくとも2つの元素で構成される無機化合物が好ましく用いられる。特に、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸窒化ケイ素(SiO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlO)またはサイアロン(SiAlO)などが好ましく用いられる。これらの無機化合物では、各成分の比を適宜調整することによって、所望の屈折率の膜とすることが可能である。尚、これらの膜は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはスパッタ法によって成膜することができる。
【0103】
また、誘電体膜は、金属酸化物の微粒子がバインダーに分散された構造を有していてもよい。この場合、金属酸化物の屈折率を適当に選択することによって、所望の屈折率を有する誘電体膜を得ることができる。
【0104】
例えば、金属酸化物として、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)および酸化セリウム(CeO)などが挙げられる。
【0105】
バインダーは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、カルボキシポリカプロラクトンアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリルアミドなどの単官能(メタ)アクリレート並びにペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレートおよびペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレートなどのジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート誘導体およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどのモノマーを重合して形成することができる。
【0106】
また、上記のモノマーの重合体の他に、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂およびポリシロキサン樹脂などを用いてバインダーを形成することもできる。
【0107】
但し、誘電体膜として、有機化合物を用いた場合には、有機膜中に含まれる水分が有機LED素子中に拡散して非発光領域を形成しないようにすることが必要となる。また、有機LED表示装置の製造工程で行われるフォトリソ工程に耐性のあるものを選択することも重要である。
【0108】
次に、誘電体膜を設けた場合の光の干渉について説明する。
【0109】
図1の有機LED素子1に電圧を印加すると、有機層5内の正孔輸送層に陽極4から正孔が注入される。この正孔は、次に発光層に移動する。一方、陰極6からは、有機層5内の電子輸送層に電子が注入される。そして、発光層中に電子が拡散する。その後、発光層内で正孔と電子が再結合すると、放出されたエネルギーによって、発光層内の発光材料や蛍光分子が励起される。そして、励起分子が基底状態に戻る際に放出されるエネルギーが発光という形で現れる。
【0110】
図1で、発光領域から放射された光には、有機LED素子7の前方(図の下方向)に向かう光41の他に、一旦背面方向(図の上方向)に向かった後、陰極6で反射されてから前方に向かう光42もある。
【0111】
本実施の形態においては、誘電体層3、陽極4および有機層5を構成する材料の間に、上記の(1)式および(2)式の関係が成立する。すなわち、これらの間の屈折率差は小さいものとなっている。一方、透明基板2と誘電体膜3との屈折率差はこれらに比較して大きく、界面に大きな屈折率段差を生じる。例えば、無機ガラスの屈折率は1.55程度であり、ポリマーも同程度(例えば、ポリカーボネートの屈折率は1.58)である。このため、陰極6で反射されて前方に向かった光42の一部(図1の光43)は、誘電体膜3と透明基板2との界面で反射される。その後、背面方向に向かい、再び陰極6で反射されて前方に向かう。また、光42の一部(図1の光44)も、誘電体膜3と透明基板2との界面で反射されて背面方向に向かった後に、再び、陰極6で反射されて前方に向かう。
【0112】
干渉によって色度の角度依存性に影響を与える光は、主として、上記の4種類(光41,42,43,44)である。すなわち、これ以上反射する光については、強度が弱くなるので、角度依存性に殆ど影響しなくなると考えてよい。
【0113】
図1の有機LED表示装置1では、透明基板2と陽極4との間に誘電体膜3を設けているので、前方に向かう光の発光位置から反射面までの距離は、図35に示す従来の構成より長くなる。すなわち、光43と光44の光路長が従来より長くなるので、光41,42,43,44の干渉によって得られる変調スペクトルは、従来の変調スペクトルに比較して短周期で振幅の小さいものとなる。
【0114】
一般に、光の強度は、波長λに依存した光の強弱となって観察者に視認される。すなわち、ある波長の光は強く認識されるのに対して、別の波長の光は弱く認識される。例えば、従来の有機LED表示装置において、観察者が基板の法線方向から徐々に角度を大きくしてディスプレイを見ると、550nm〜600nmの波長域における吸収が大きくなる結果、白色光は徐々に黄色味を帯びて見えるようになる。
【0115】
ここで、観察者が実際にディスプレイを見たときの発光スペクトルは、図1における4種の光(41,42,43,44)を重ね合わせた合成波の発光スペクトルに等しいと考えられる。上述したように、本発明によれば、誘電体膜を設けることによって、上記の4種の光の干渉によって得られる変調スペクトルを短周期で振幅の小さいものとすることができる。これにより、視野角に依存して特定波長の光の強度が増減する傾向が低減された発光スペクトルを得ることができるので、視野角に応じて色度が変化するのを抑制することが可能となる。
【0116】
以上のことは、図2の有機LED表示装置11、および、図3の有機LED表示装置21についても同様である。
【0117】
図2の有機LED表示装置11において、発光領域から放射された光には、有機LED素子17の前方(図の上方向)に向かう光51の他に、一旦背面方向(図の下方向)に向かった後、陽極13と不透明基板12の界面で反射されてから前方に向かう光52もある。
【0118】
ところで、誘電体膜18と封止部材19との間は、真空(屈折率1)または不活性ガス雰囲気となっている。したがって、不透明基板12で反射されて前方に向かった光52の一部(図2の光53)は、誘電体膜18の表面で反射される。その後、背面方向に向かい、再び不透明基板12で反射されて前方に向かう。
【0119】
尚、光52の一部(図2の光54)についても、誘電体膜18の表面で反射されて背面方向に向かった後に、不透明基板12で反射されて前方に向かうものがある。しかし、この場合、不透明基板12で2回反射される光54の強度は非常に小さいものとなるので、他の光(51,52,53)に比較すると影響は小さいと考えられる。
【0120】
以上より、干渉によって色度の角度依存性に影響を与える光は、主として、上記の3種類(光51,52,53)である。
【0121】
図2の有機LED表示装置11では、陰極16の上に誘電体膜18を設けているので、前方に向かう光の発光位置から反射面までの距離は、誘電体膜18を設けない場合に比較すると、誘電体膜18の膜厚分だけ長くなる。したがって、光53による干渉は、従来に比べて短周期で振幅の小さいものとなるので、図1の例と同様に、視野角に応じて色度が変化するのを抑制することができる。
【0122】
尚、図2で、陽極13を不透明電極とした場合には、発光領域から出た光は陽極13と有機層14との界面で反射されて前方へ向かう。したがって、この場合には、有機層14の屈折率n′、陰極16の屈折率n′および誘電体膜18の屈折率n′の間に、450nm〜650nmの波長域において、
|n′−n′|≦0.25、および
|n′−n′|≦0.20
の関係が成立すればよい。
【0123】
また、図2の例では、誘電体膜18と封止部材19との間に、視認性向上のための有機膜(例えば、感光性エポキシ樹脂からなる膜など。)が設けられていてもよい。この場合、誘電体膜18と有機膜との間に屈折率段差が生じるので、図4に示すように、光53´,54´は、誘電体膜18と有機膜55との界面で反射する。すなわち、図2と同様の反射となる。
【0124】
また、図3の有機LED表示装置21において、発光領域から放射された光には、有機LED素子21の陽極24側(図の下方向)に向かう光61と、陰極27側(図の上方向)に向かう光62とがある。そして、光61の一部は、透明基板22と第1の誘電体膜23の界面で反射されて陰極27側に向かう(光63)。また、光62の一部は、第2の誘電体膜29の表面で反射されて陽極24側に向かう(光64)。さらに、光63の一部は、第2の誘電体膜29の表面で反射されて陽極24側に向かう(光65)。また、光64の一部は、さらに透明基板22と第1の誘電体膜23の界面で反射されて陰極27側に向かう(光66)。
【0125】
干渉によって色度の角度依存性に影響を与える光は、主として、上記の6種類(光61,62,63,64,65,66)である。
【0126】
図3の有機LED表示装置21では、透明基板22と陽極24との間に第1の誘電体膜23を設けているので、陽極24側に向かう光の発光位置から反射面までの距離は、第1の誘電体膜23を設けない場合に比較すると、第1の誘電体膜23の膜厚分だけ長くなる。また、有機LED表示装置21は、陰極27の上に第2の誘電体膜29を設けているので、陰極27側に向かう光の発光位置から反射面までの距離は、第2の誘電体膜29を設けない場合に比較すると、第2の誘電体膜29の膜厚分だけ長くなる。したがって、光63,64,65,66による干渉は、従来に比べて短周期で振幅の小さいものとなるので、図1の例と同様に、視野角に応じて色度が変化するのを抑制することが可能となる。
【0127】
図3の例では、誘電体膜29と封止部材30との間に、視認性向上のための有機膜(例えば、感光性エポキシ樹脂からなる膜など。)が設けられていてもよい。この場合、誘電体膜29と有機膜との間に屈折率段差が生じるので、図5に示すように、光64´,65´,66´は、誘電体膜29と有機膜67との界面で反射する。すなわち、図3と同様の反射となる。
【0128】
尚、図2および図3において、有機層(14,25)と陰極(16,27)との間に設けられる電子注入層(15,26)の膜厚は数Å程度と極薄い。このため、電子注入層(15,26)が色差に与える影響は殆ど無視できると考えられるので、この層について屈折率を問題とする必要はない。
【0129】
以上述べたように、陽極および陰極の少なくとも一方を透明電極とし、有機層とは反対側でこの透明電極に接する誘電体層を設けることによって、色度の視野角依存性に優れた有機LED表示装置を得ることができる。
【0130】
すなわち、本実施の形態で示したように、所定の屈折率および膜厚を有する誘電体膜を設けることによって、陽極、有機層および陰極などの有機LED素子を構成する各膜の屈折率や膜厚を厳密に制御する必要性をなくすことができる。また、誘電体膜は、膜中で略一様な屈折率を有するものであればよく、膜厚方向に屈折率が連続的に変化するなどの措置を講ずる必要もない。さらに、本実施の形態では、視野角による色度変化を白色光で評価しているので、他の色についても同様の効果が得られることは明白である。したがって、本発明によれば、各色について視野角による色度変化の小さいディスプレイを簡便に提供することが可能となる。
【0131】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。例えば、誘電体膜の表面に凹凸を付すことによって、干渉による色度変化をさらに抑制することができる。
【0132】
以下、本発明の実施例について述べる。
【0133】
実施例
有機LED表示装置の構成を図8のようにした。すなわち、有機LED表示装置71は、ガラス基板72の上に、誘電体膜73、ITO(膜厚150nm)74、有機層75およびアルミニウム膜(膜厚100nm)76がこの順に積層された構造を有している。また、有機層75は、ITO74の側から順に、正孔輸送層(膜厚50nm)77、青色発光層(膜厚30nm)78、黄色発光層(膜厚30nm)79および電子輸送層(膜厚20nm)80からなる。
【0134】
正孔輸送層77としては、出光興産株式会社製のHT320を用いた。また、青色発光層78としては、発光層ホストとしてのBH120(出光興産株式会社製)に、青色ドーパントであるBD02(出光興産株式会社製)をドーピングしたものを用いた。また、黄色発光層79としては、発光層ホストとしてのBH120に、黄色ドーパントであるYD103(出光興産株式会社製)をドーピングしたものを用いた。さらに、電子輸送層80として、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体(Alq)を用いた。
【0135】
図9は、各構成材料の屈折率を比較した図である。尚、屈折率の測定は、分光エリプソメトリー(J.A.Woollam社製 WVASE32)により行った。図から分かるように、450nm〜650nmの波長域において、ITOの屈折率nITOと、正孔輸送層の屈折率nα、青色発光層の屈折率nβ、黄色発光層の屈折率nγおよび電子輸送層の屈折率nδとの間には、式(2)の関係、すなわち、
|nITO−nα|≦0.20
|nITO−nβ|≦0.20
|nITO−nγ|≦0.20
|nITO−nδ|≦0.20
が成立する。
【0136】
図8で、発光位置は、青色および黄色のいずれについても青色発光層78と黄色発光層79の界面であると仮定した。また、誘電体膜73の屈折率をITO74の屈折率と同じであるとした。
【0137】
図10〜図13は、それぞれ誘電体膜の膜厚を0.3μm、0.5μm、1.0μmおよび2.0μmとし、自作のソフトを用いたシミュレーションによって、視野角に対する変調スペクトルの変化を求めた結果を示したものである。尚、視野角は、パネルの法線方向に対して、0度、20度、40度および60度と変化させた。
【0138】
変調スペクトルは、具体的には次のようにして求めた。但し、図8で、アルミニウム膜での反射は2回までとし、3回以上の反射は無視して光81,82,83,84の間の干渉のみを考えた。また、ガラス基板72の裏面での反射は考慮しないこととした。
【0139】
図32は、図8の光81の光路をより具体的に示したものである。但し、有機層75は、正孔輸送層77、青色発光層78、黄色発光層79および電子輸送層80を省略して示している(以下に述べる図33〜図35についても同様。)。図32に示すように、アルミニウム膜76から距離dに発光位置があるとして、光81の発光位置からの出射方向と、有機層75に垂直な方向とがなす角度をθとする。また、光81の有機層75、ITO74、誘電体膜73およびガラス基板72からの出射角を、それぞれθ,θ,θおよびθとする。
【0140】
図33は、図8の光82の光路をより具体的に示したものである。図32と同様に、アルミニウム膜76から距離dに発光位置があるとする。そして、光82の発光位置からの出射方向と、有機層75に垂直な方向とがなす角度をθとする。また、光82のアルミニウム膜76での反射角をθとし、光82の有機層75、ITO74、誘電体膜73およびガラス基板72からの出射角を、それぞれθ,θ,θおよびθとする。
【0141】
図34は、図8の光83の光路をより具体的に示したものである。図32と同様に、アルミニウム膜76から距離dに発光位置があるとする。そして、光83の発光位置からの出射方向と、有機層75に垂直な方向とがなす角度をθとする。また、光82の有機層75、ITO74、誘電体膜73およびガラス基板72からの出射角を、それぞれθ,θ,θおよびθとする。
【0142】
図35は、図8の光84の光路をより具体的に示したものである。図32と同様に、アルミニウム膜76から距離dに発光位置があるとする。そして、光84の発光位置からの出射方向と、有機層75に垂直な方向とがなす角度をθとする。また、光84のアルミニウム膜76での反射角をθとし、光84の有機層75、ITO74、誘電体膜73およびガラス基板72からの出射角を、それぞれθ,θ,θおよびθとする。
【0143】
また、図32〜図35において、有機層75の屈折率をn、膜厚をd、ITO74の屈折率をn、膜厚をd、誘電体膜73の屈折率をn、膜厚をd、ガラス基板72の屈折率をn、厚さをdとする。
【0144】
光81,82では、
sinθ/sinθ=1/n (i=1または3)
の関係が成立する。
【0145】
また、光82,83では、
sinθ=sinθ (i=1または3、j=2または4)より、
θ=πθ
の関係が成立する。
【0146】
さらに、有機層75、ITO74、誘電体膜73およびガラス基板72のそれぞれを通る光についてスネルの法則が成立するので、
sinθ/sinθk+1=nk+1/n
(i=1,2,3または4、k=1,2,3または4)
となる。
【0147】
次に、図8で光81のみが外部に取り出されたと仮定したときのスペクトル(以下、元発光スペクトルと称す。)をI(λ)eiωt(但し、ω=2πc/λ、c:高速)として、4種の光(81,82,83,84)の各位相を考える。
【0148】
光81について、有機層75における光路長をL、ITO74における光路長をL、誘電体膜73における光路長をL、ガラス基板72における光路長をLとすると、これらはそれぞれ次式で表される。
【0149】
=(d)/cosθ
=d/cosθ
=d/cosθ
=d/cosθ
【0150】
したがって、波長λにおける光81の発光スペクトルは、
out(λ,t)=I(λ)exp[i{ωt・2πΣ(L/λ)}]
(k=1,2,3または4、t:時間)
で表される。
【0151】
また、光82について、有機層75における光路長をL、ITO74における光路長をL、誘電体膜73における光路長をL、ガラス基板72における光路長をLとすると、これらはそれぞれ次式で表される。
【0152】
=2d/cos(πθ)+(d)/cosθ
=d/cosθ
=d/cosθ
=d/cosθ
【0153】
したがって、光82の発光スペクトルは、
out(λ,t)=I(λ)exp[i{ωt・2πΣ(L/λ)}]
(k=1,2,3または4、t:時間)
で表される。
【0154】
また、光83について、有機層75における光路長をL、ITO74における光路長をL、誘電体膜73における光路長をL、ガラス基板72における光路長をLとすると、これらはそれぞれ次式で表される。
【0155】
=2d/cos(πθ)+3(d)/cosθ
=3d/cosθ
=3d/cosθ
=3d/cosθ
【0156】
したがって、光83の発光スペクトルは、
out(λ,t)=I(λ)exp[i{ωt・2πΣ(L/λ)}]
(k=1,2,3または4、t:時間)
で表される。
【0157】
さらに、光84について、有機層75における光路長をL、ITO74における光路長をL、誘電体膜73における光路長をL、ガラス基板72における光路長をLとすると、これらはそれぞれ次式で表される。
【0158】
=4d/cos(πθ)+3(d)/cosθ
=3d/cosθ
=3d/cosθ
=3d/cosθ
【0159】
したがって、光84の発光スペクトルは、
out(λ,t)=I(λ)exp[i{ωt・2πΣ(L/λ)}]
(k=1,2,3または4、t:時間)
で表される。
【0160】
以上より、光(81,82,83,84)が干渉して、実際に観測される発光スペクトルは、
total=(λ,t,θ)=ΣIout (k=1,2,3または4)
となる。
【0161】
また、dおよび元発光スペクトルは、4種の光(81,82,83,84)について、上記の角度を変えて発光スペクトルを求めることにより決定される。すなわち、dおよび元発光スペクトルは、何れの角度においても上記の各計算式を満足するものとなる。そして、変調スペクトルは、元発光スペクトルで発光スペクトルを割ることにより得られる。
【0162】
図14〜図17は、誘電体膜の膜厚が0.3μm、0.5μm、1.0μmおよび2.0μmである場合について、視野角に対する発光スペクトルの変化を示したものである。視野角は、図10〜図13と同様に、パネルの法線方向に対して、0度、20度、40度および60度と変化させた。
【0163】
図18〜図21に、図14〜図17の発光スペクトルより得られた色度の視野角依存性を示す。
【0164】
図22〜図26は、誘電体膜の屈折率を変えたときの視野角に対する変調スペクトルの変化を示したものである。視野角は、パネルの法線方向に対して、0度、20度、40度および60度と変化させた。また、誘電体膜の膜厚は1.0μmとし、変調スペクトルは、図10〜図13と同様にして求めた。誘電体膜の屈折率は、それぞれITOの屈折率に対して変えており、図22は、誘電体膜とITOとが同じ屈折率を有する場合に対応する。
【0165】
また、図27〜図31は、誘電体膜の屈折率を変えたときの視野角に対する発光スペクトルの変化を示したものである。視野角は、パネルの法線方向に対して、0度、20度、40度および60度と変化させた。尚、誘電体膜の膜厚は1.0μmとし、発光スペクトルは、図14〜図17と同様にして求めた。また、誘電体膜の屈折率は、それぞれITOの屈折率に対して変えており、図27は、誘電体膜とITOとが同じ屈折率を有する場合に対応する。
【0166】
比較例
図36に、図8で誘電体膜72がない場合の視野角に対する変調スペクトルの変化を示した。視野角は、パネルの法線方向に対して、0度、20度、40度および60度と変化させた。これは、従来の有機LED表示装置における変調スペクトルに対応する。
【0167】
また、図37に、図36と同様の構造について、視野角に対する発光スペクトルの変化を示した。尚、変調スペクトルおよび発光スペクトルは、上記実施例と同様にして求めた。視野角は、パネルの法線方向に対して、0度、20度、40度および60度と変化させており、視野角が大きくなると黄色味が次第に増えて行くことが分かる。
【0168】
さらに、図38に、図37の発光スペクトルから得られた色度の視野角依存性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】実施の形態の第1の有機LED表示装置の断面模式図の一例
【図2】実施の形態の第2の有機LED表示装置の断面模式図の一例
【図3】実施の形態の第3の有機LED表示装置の断面模式図の一例
【図4】実施の形態の第2の有機LED表示装置の断面模式図の他の例
【図5】実施の形態の第3の有機LED表示装置の断面模式図の他の例
【図6】実施の形態の図1の有機LED表示装置について、450nm〜650nmの波長域での誘電体膜の屈折率に対する色差変化を表した図。
【図7】実施の形態の図6の有機LED表示装置について、450nm〜650nmの波長域での誘電体膜の膜厚に対する色差変化を表した図。
【図8】実施例における有機LED表示装置の断面模式図
【図9】実施例の図8の有機LED表示装置について、各構成材料の屈折率を比較した図。
【図10】実施例(電体膜の膜厚が0.3μm)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図11】実施例(電体膜の膜厚が0.5μm)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図12】実施例(電体膜の膜厚が1.0μm)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図13】実施例(電体膜の膜厚が2.0μm)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図14】実施例(誘電体膜の膜厚が0.3μm)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図15】実施例(誘電体膜の膜厚が0.5μm)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図16】実施例(誘電体膜の膜厚が1.0μm)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図17】実施例(誘電体膜の膜厚が2.0μm)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図18】実施例(誘電体膜の膜厚が0.3μm)で色度の視野角依存性を示す図
【図19】実施例(誘電体膜の膜厚が0.5μm)で色度の視野角依存性を示す図
【図20】実施例(誘電体膜の膜厚が1.0μm)で色度の視野角依存性を示す図
【図21】実施例(誘電体膜の膜厚が2.0μm)で色度の視野角依存性を示す図
【図22】実施例(誘電体膜の屈折率がITOと同じ)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図23】実施例(誘電体膜の屈折率がITOの0.8倍)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図24】実施例(誘電体膜の屈折率がITOの0.9倍)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図25】実施例(誘電体膜の屈折率がITOの1.2倍)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図26】実施例(誘電体膜の屈折率がITOの1.3倍)で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図27】実施例(誘電体膜の屈折率がITOと同じ)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図28】実施例(誘電体膜の屈折率がITOの0.8倍)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図29】実施例(誘電体膜の屈折率がITOの0.9倍)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図30】実施例(誘電体膜の屈折率がITOの1.2倍)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図31】実施例(誘電体膜の屈折率がITOの1.3倍)で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図32】実施例で、図8の有機LED表示装置から出射される光の光路を示す図
【図33】実施例で、図8の有機LED表示装置から出射される光の光路を示す図
【図34】実施例で、図8の有機LED表示装置から出射される光の光路を示す図
【図35】実施例で、図8の有機LED表示装置から出射される光の光路を示す図
【図36】比較例で視野角に対する変調スペクトルの変化を示す図
【図37】比較例で視野角に対する発光スペクトルの変化を示す図
【図38】比較例で色度の視野角依存性を示す図
【図39】従来の有機LED表示装置の断面模式図
【符号の説明】
【0170】
1,11,21,71,91 有機LED表示装置
2,22 透明基板
3,18,73 誘電体膜
4,13,24 陽極
5,14,25,75 有機層
6,16,27 陰極
7,17,28 有機LED素子
8,19,30 封止部材
9,20,31 電源
12 不透明基板
15,26 電子注入層
23 第1の誘電体膜
29 第2の誘電体膜
55,67,94 有機膜
72,92 ガラス基板
74,93 ITO
76,95 アルミニウム膜
77 正孔輸送層
78 青色発光層
79 黄色発光層
80 電子輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極によって挟持された有機層を備えた有機LED素子において、
前記陽極および前記陰極の少なくとも一方は透明電極であり、
前記有機層とは反対側で前記透明電極に接する誘電体層を有していて、
前記誘電体層の膜厚は0.5μm以上であり、
450nm〜650nmの波長域において、前記有機層の屈折率n、前記透明電極の屈折率nおよび前記誘電体膜の屈折率nの間に、少なくとも
|n−n|≦0.25
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを特徴とする有機LED素子。
【請求項2】
前記誘電体層の膜厚は、0.5μm〜2.0μmである請求項1に記載の有機LED素子。
【請求項3】
前記誘電体層の膜厚は、1.0μm〜2.0μmである請求項2に記載の有機LED素子。
【請求項4】
450nm〜650nmの波長域において、前記有機層の屈折率n、前記透明電極の屈折率nおよび前記誘電体膜の屈折率nの間に、
|n−n|≦0.20
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立する請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機LED素子。
【請求項5】
前記誘電体膜は、ケイ素、酸素、窒素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも2つの元素で構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機LED素子。
【請求項6】
前記誘電体膜は、SiO膜、Si膜、AlN膜、SiO膜、AlO膜およびSiAlO膜よりなる群から選ばれるいずれか1つの膜である請求項5に記載の有機LED素子。
【請求項7】
前記有機層は白色光を発光する請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機LED素子。
【請求項8】
透明基板と、
前記透明基板の上に設けられた誘電体膜と、
前記誘電体膜の上に設けられ、透明導電性材料からなる陽極と仕事関数の小さい金属または該金属の合金からなる陰極とによって有機層が挟持された有機LED素子と、
前記透明基板の上に設けられて前記有機LED素子を封止する封止部材とを有し、
前記誘電体層の膜厚は0.5μm以上であり、
450nm〜650nmの波長域において、前記有機層の屈折率n、前記陽極の屈折率nおよび前記誘電体膜の屈折率nの間に、
|n−n|≦0.25
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを特徴とする有機LED表示装置。
【請求項9】
不透明基板と、
前記不透明基板の上に設けられ、陽極と透明導電性材料からなる陰極とによって有機層が挟持された有機LED素子と、
前記陰極の上に設けられた誘電体膜と、
前記不透明基板の上に設けられて、前記有機LED素子および前記誘電体膜を封止する透明封止部材とを有し、
前記誘電体層の膜厚は0.5μm以上であり、
450nm〜650nmの波長域において、前記有機層の屈折率n、前記陰極の屈折率nおよび前記誘電体膜の屈折率nの間に、少なくとも
|n−n|≦0.25
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立することを特徴とする有機LED表示装置。
【請求項10】
前記誘電体層の膜厚は、0.5μm〜2.0μmである請求項8または9に記載の有機LED表示装置。
【請求項11】
前記誘電体層の膜厚は、1.0μm〜2.0μmである請求項10に記載の有機LED表示装置。
【請求項12】
450nm〜650nmの波長域において、前記有機層の屈折率n、前記透明電極の屈折率nおよび前記誘電体膜の屈折率nの間に、
|n−n|≦0.20
および
|n−n|≦0.20
の関係が成立する請求項8〜11のいずれか1項に記載の有機LED表示装置。
【請求項13】
前記誘電体膜は、ケイ素、酸素、窒素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも2つの元素で構成される請求項8〜12のいずれか1項に記載の有機LED表示装置。
【請求項14】
前記誘電体膜は、SiO膜、Si膜、AlN膜、SiO膜、AlO膜およびSiAlO膜よりなる群から選ばれるいずれか1つの膜である請求項13に記載の有機LED表示装置。
【請求項15】
前記有機層は白色光を発光する請求項8〜14のいずれか1項に記載の有機LED表示装置。
【請求項16】
透明基板と、
前記透明基板の上に設けられた膜厚0.5μm以上の誘電体膜と、
前記誘電体膜の上に設けられた透明電極膜とを有し、
450nm〜650nmの波長域において、前記誘電体膜の屈折率nと前記透明電極膜の屈折率nとの間に、
|n−n|≦0.25
の関係が成立することを特徴とする有機LED表示装置用基板。
【請求項17】
前記誘電体層の膜厚は、0.5μm〜2.0μmである請求項16に記載の有機LED表示装置用基板。
【請求項18】
前記誘電体層の膜厚は、1.0μm〜2.0μmである請求項17に記載の有機LED表示装置用基板。
【請求項19】
450nm〜650nmの波長域において、前記誘電体膜の屈折率nと前記透明電極膜の屈折率nとの間に、
|n−n|≦0.20
の関係が成立する請求項16〜18のいずれか1項に記載の有機LED表示装置用基板。
【請求項20】
前記誘電体膜は、ケイ素、酸素、窒素およびアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも2つの元素で構成される請求項16〜19のいずれか1項に記載の有機LED素子装置用基板。
【請求項21】
前記誘電体膜は、SiO膜、Si膜、AlN膜、SiO膜、AlO膜およびSiAlO膜よりなる群から選ばれるいずれか1つの膜である請求項20に記載の有機LED表示装置用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2006−338954(P2006−338954A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160246(P2005−160246)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】