説明

有毒金属または半金属を使用することなく電気めっき法により黄色金合金析出物を得る方法

本発明は、1ミクロンから800ミクロンの厚さを有し銅を含む金合金の形態の電解析出物に関する。本発明によれば、析出物は、第3の主化合物としてインジウムを含む。
本発明は、電気メッキ法の分野に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚い金合金層の形態の電解析出物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾メッキの分野において、黄色で9カラット以上のファインネスを有し、10ミクロンの厚さまでの延性を有し、高レベルの耐変色性を有する金電解析出物を生成するための方法が知られている。これらの析出物は、金および銅に加えて0.1g/lから3g/lのカドミウムを含有するアルカリ性電気浴中での電気分解により得られる。しかしながら、これらの既知の方法により得られる析出物は、1%から10%のカドミウムレベルを有する。カドミウムは、厚い層、すなわち1ミクロンから800ミクロンの層の析出を促進し、合金中に含有される銅の量を低減することにより黄色合金をもたらすが、カドミウムは極めて有毒であり、いくつかの国では禁止されている。
【0003】
その他の既知の黄色析出物は、金および銀を含む合金である。
【0004】
銅および亜鉛を含有しカドミウムを含有しない18カラットの金合金もまた知られている。しかしながら、これらの析出物はピンク色すぎる(ファインネスが銅分に富みすぎている)。最後に、これらの析出物は腐食に対する耐性が低く、これはそれらが早く変色することを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、黄色く、また主成分として亜鉛もカドミウムも有さない厚い金合金層を析出させるための方法を提案することにより、上述の欠点のすべてまたは一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、その厚さが1ミクロンから800ミクロンの間に含まれ銅を含む金合金の形態の電解析出物において、第3の主成分としてインジウムを含むことを特徴とする電解析出物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のその他の有利な特徴によれば、
− 析出物は、有毒金属または半金属を実質的に含まず;
− 析出物は、(ISO規格8654に従う)1Nおよび3Nの領域内に含まれる色を含み;
− 析出物は、光沢を有し、腐食に対する高い耐性を有する。
【0008】
また、本発明は、シアン化金アルカリ(aurocyanide alkaline)の形態の金金属、有機金属成分、湿潤剤、錯化剤、および遊離シアン化物を含む浴中に浸漬された電極上への金合金の電気的析出(galvanoplasty deposition)のための方法において、合金金属が、シアン化銅IIの形態の銅およびカリウム、ならびに、光沢のある鏡状の黄色タイプの金合金を析出させるためのアミノカルボン酸またはアミノホスホン酸錯体形態のインジウムであることを特徴とする方法に関する。
【0009】
本発明のその他の有利な特徴によれば、
− 浴は、1g.l-1から10g.l-1、好ましくは5g.l-1のアルカリシアン化金(alkaline aurocyanide)の形態の金金属を含み;
− 浴は、30g.l-1から80g.l-1、好ましくは50g.l-1のアルカリ性シアン化銅IIを含み;
− 浴は、10mg.l-1から5g.l-1、好ましくは1g.l-1の錯体形態のインジウム金属を含み;
− 浴は、15g.l-1から35g.l-1の遊離シアン化物を含み;
湿潤剤は、0.05ml.l-1から10ml.l-1、好ましくは3ml.l-1の濃度を含み;
− 湿潤剤は、ポリオキシアルコイレニック(polyoxyalcoylenic) 、リン酸エーテル、ラウリルサルフェート、ジメチルドデシルアミン−N−オキシド、ジメチル−ドデシルアンモニウムプロパンスルホネートのタイプ、または、アルカリ性シアン化物媒体中で湿潤可能なその他の任意のタイプの中から選択され;
− アミノカルボン酸錯化剤は、0.1g.l-1から20g.l-1の濃度を含み;
− 浴は、0.001ml.l-1から5ml.l-1の濃度でアミンを含み;
− 浴は、0.1mg.l-1から20mg mg.l-1の濃度で脱分極剤を含み;
− 浴は、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、および/またはホスホン酸塩のタイプの導電性塩を含み;
− 浴の温度は、50℃から80℃に維持され;
− 浴のpHは、8から12に維持され;
− 方法は、0.2A.dm-2から1.5A.dm-2の電流密度で行われる。
【0010】
最適な析出物品質を得るために、電気分解の後、好ましくは少なくとも摂氏450度で少なくとも30分間の熱処理が行われる。
【0011】
浴はまた、光沢剤を含有してもよい。光沢剤は、好ましくは、ブチンジオール誘導体、ピリジノ−プロパンスルホネートもしくはこの2つの混合物、スズ塩、硫酸化ヒマシ油、メチルイミダゾール、ジチオカルボン酸、例えばチオ尿素、チオバルビツール酸、イミダゾリジンチオンまたはチオリンゴ酸である。
【0012】
例示的析出では、有毒金属または半金属を含まない、特にカドミウムを含まない、2Nの黄色、200ミクロンの厚さ、卓越した輝き、ならびに高い耐摩耗性および耐変色性を有する金合金がある。
【0013】
この析出物は、以下のタイプの電解浴中での電気分解により得られる。
【0014】
<<実施例1>>
− Au:3g.l-1
− Cu:45g.l-1
− In:0.1g.l-1
− KCN:22g.l-1
− pH:10.5
− 温度:65℃
− 電流密度:0.5A.dm-2
− 湿潤剤:0.05ml.l-1 NN−ジメチルドデシルNオキシド
− イミノ二酢酸:20g.l-1
− エチレンジアミン:0.5ml.l-1
− セレノシアン酸カリウム(Potassium selenocyalate):1mg.l-1
【0015】
<<実施例2>>
− Au:6g.l-1
− Cu:60g.l-1
− In:2g.l-1
− KCN:30g.l-1
− NTA:4g.l-1
− Ag:10mg.l-1
− ジエチレントリアミン:0.2ml.l-1
− ガリウム、セレンまたはテルル:5mg.l-1
− 次亜リン酸ナトリウム:0.1g.l-1
− チオリンゴ酸:50mg.l-1
− 電流密度:0.5A.dm-2
− 温度:70℃
− pH:10.5
− 湿潤剤:2ml.l-1 リン酸エーテル
【0016】
これらの実施例において、電解浴は、断熱性を有するポリプロピレンまたはPVC浴ホルダ内に設置する。浴は、石英、PTFE、磁器または安定化ステンレススチールのサーモプランジャを使用して加熱する。適正なカソード撹拌および電解質フローが維持されなければならない。アノードは、白金メッキチタン、ステンレススチール、ルテニウム、イリジウムまたはこれらの合金で作製される。
【0017】
そのような条件下で、62mg.A.min-1のカソード効率を得ることができ、実施例1では3分で1μmの析出速度、実施例2では30分で10μmの光沢のある析出物が得られる。
【0018】
当然ながら、本発明は、例示された実施例に制限されず、当業者には明らかな様々な変形および変更を行うことができる。具体的には、浴は、無視できる量のAg、Cd、Zr、Se、Te、Sb、Sn、Ga、As、Sr、Be、Biの金属を含有し得る。
【0019】
さらに、湿潤剤は、アルカリ性シアン化物媒体中で湿潤可能な任意のタイプのものであり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリシアン化金の形態の金金属、有機金属成分、湿潤剤、錯化剤、および遊離シアン化物を含む浴中に浸漬された電極上への金合金の電気的析出のための方法において、合金金属が、シアン化銅IIの形態の銅およびカリウム、ならびに、光沢のある反射性の黄色タイプの金合金を電極上に析出させるための錯体インジウムであることを特徴とする方法。
【請求項2】
錯体インジウムが、アミノカルボン酸またはアミノホスホン酸タイプであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
浴が、1g.l-1から10g.l-1のアルカリシアン化金の形態の金金属を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
浴が、30g.l-1から80g.l-1のアルカリシアン化物の形態の銅II金属を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
浴が、10mg.l-1から5g.l-1の錯体インジウム金属を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
浴が、15g.l-1から35g.l-1の遊離シアン化物を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
湿潤剤が、0.05ml.l-1から10ml.l-1の濃度を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
湿潤剤が、ポリオキシアルコイレニック(polyoxyalcoylenic)、リン酸エーテル、ラウリルサルフェート、ジメチルドデシルアミンNオキシド、ジメチルドデシルアンモニウムプロパンスルホネートのタイプの中から選択されることを特徴とする、請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
浴が、0.01ml.l-1から5ml.l-1のアミン濃度を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
浴が、0.01mg.l-1から20mg.l-1のアミン濃度を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
浴が、0.1mg.l-1から20mg.l-1の脱分極濃度を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
浴が、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、および/またはホスホン酸塩のタイプの導電性塩を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
浴の温度が、50℃から80℃に維持されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
浴のpHが、8から12に維持されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
0.2A.dm-2から1.5A.dm-2の電流密度で行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法による、1ミクロンから800ミクロンの間に含まれる厚さを有し銅を含む金合金の形態の電解析出物において、1Nから3Nの領域に含まれる光沢のある色を得るために、第3の主化合物としてインジウムを含むことを特徴とする、電解析出物。

【公表番号】特表2010−539335(P2010−539335A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525308(P2010−525308)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062042
【国際公開番号】WO2009/037180
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510078001)
【出願人】(506425538)ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド (46)
【Fターム(参考)】