説明

有用タンパク質およびその製造方法

【課題】産業上、有用である酵素の生産に用いられてきた好アルカリ性バチルス属細菌についてゲノム解析を行い、有用酵素を探索ないしは生産するのに有用なDNAを提供すること。
【解決手段】特定のアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列で表される有用タンパク質、当該有用タンパク質をコードする遺伝子、当該遺伝子を含有する組換えベクターおよび当該組換えベクターを含む形質転換体並びにこの形質転換体を培養し、当該培養物中から有用タンパク質を分離、取得する有用タンパク質の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)由来の産業上有用なタンパク質、それらをコードする遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトをはじめとして多くの生物の設計図であるゲノムの解析が進み、そこから得られる膨大なデータを様々な分野で利用しようという試みが積極的になされてきている。
【0003】
このような状況にあってグラム陽性のバチルス属細菌のゲノムも解読されてきている(非特許文献1−3)。バチルス属細菌は様々な産業上有用なタンパク質を大量に生産する能力を有していることが知られており、古くから産業用酵素の生産に用いられてきた。また、納豆などの発酵食品にも用いられていることからその殆どは安全な菌種であることも広く知られている。さらに胞子形成を行うことから分化の機構を解明する目的で学術的にも有用性の高い菌種である。
【0004】
特に産業用酵素の中でも世界市場の40%程度を占める洗剤用酵素はアルカリ領域で作用することが必須であり、その起源として好アルカリ性バチルス属細菌が用いられることが多い(特許文献1−4、非特許文献4など)。このように有用な好アルカリ性バチルス属細菌には、アルカリ酵素のみならず他の有用酵素を生産している可能性もあり、このような有用酵素をコードする遺伝子を見出せば、産業上有用な新たな酵素を得ることが可能となる。
【0005】
すなわち、産業上、有用である酵素の生産に用いられてきた好アルカリ性バチルス属細菌のゲノム解析、特に洗剤用酵素を産生することが知られているバチルス クラウジイ(Bacillus clausii)に属する微生物は、まさに有用酵素を探索するには最大の資源であるといえる。
【0006】
【特許文献1】特許第1901609号
【特許文献2】特許第2985018号
【特許文献3】特許第2893486号
【特許文献4】特開平10−313859号報
【非特許文献1】クンスト(Kunst)ら、Nature 390, 249-256 (1997)
【非特許文献2】タカミ(Takami)ら、Nucleic Acids Res. 28, 4317-4331 (2000)
【非特許文献3】タカミ(Takami)ら、Nucleic Acids Res. 30,3927-3935 (2002)
【非特許文献4】ホリコシ(Horikoshi)、Microbiol.Mol.Biol.Rev.63,735-750(1999)
【非特許文献5】サイトウ(Saito)ら、 Biochem. Biophys. Acta. 72, 619-629 (1963)
【非特許文献6】エウィング(Ewing)ら、Genome Res. 8, 186-194 (1998)
【非特許文献7】ヤダ(Yada)ら、DNA Res. 3, 335-361 (1996)
【非特許文献8】アルチュール(Altschul)ら、 J. Mol. Biol. 215, 403-410 (1990)
【非特許文献9】リップマン(Lipman)ら、 Science 227, 1435-1441 (1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、産業上、有用である酵素の生産に用いられてきた好アルカリ性バチルス属細菌についてゲノム解析を行い、有用酵素を探索ないしは生産するのに有用なDNAを得ることをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、長年に渡り洗剤用アルカリプロテアーゼの生産に用いてきた好アルカリ性バチルス属細菌である、バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16(FERM BP−3376)株のゲノムを完全に解読することに成功し、更に得られた情報を詳細に検討することによって、当該微生物は、産業上有用なタンパク質をコードする遺伝子を数多く保有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、次の(a)又は(b):
(a)配列番号1から37に示す何れかのアミノ酸配列、
(b)(a)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しく
は付加されたアミノ酸配列
で表される有用タンパク質を提供するものである。
【0010】
また本発明は、次の(c)又は(d):
(c)配列番号38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58
、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、
84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、
106、108または110に示す塩基配列の何れかであるDNA、
(d)(c)の塩基配列からなるDNAとストリンジエントな条件下でハイブリダイズ
し、且つ上記(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA
からなる有用タンパク質をコードする遺伝子を提供するものである。
【0011】
更に本発明は、上記遺伝子を含有する組換えベクターおよび該組換えベクターを有する形質転換体を提供するものである。
【0012】
更にまた、本発明は、上記形質転換体を培養し、当該培養物中から有用タンパク質を分離、取得する有用タンパク質の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有用タンパク質は、産業上有効利用が可能なタンパク質であり、高アルカリ条件下においても作用する酵素も含んでいる。また、本発明の遺伝子を用い、遺伝子操作を行うことにより、この有用タンパク質を大量に調製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のタンパク質(以下、「酵素」ともいう)は、(a)配列番号1から37に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、または(b)(a)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であり、また、本発明の遺伝子は、(c)または(d)で示される当該タンパク質をコードするDNAである。
【0015】
ここで、配列番号1から37示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列とは、配列番号1から37のアミノ酸配列とそれぞれ等価のアミノ酸配列を意味し、1若しくは数個、好ましくは1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、依然として対応する酵素活性を保持する配列をいい、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
【0016】
なお、上記等価のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、自然界から得ることも可能ではあるが、さらに部位特異的突然変異誘発法等の公知の手法を利用して調製することもできる。例えば、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット[Mutan−super Express Km キット(タカラバイオ)]等を用いて変異を導入し、調製することができる。
【0017】
本発明の有用タンパク質は、配列番号1から37に示すアミノ酸配列からなるタンパク質又は当該アミノ酸配列と等価のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、これらを取得するためには、それぞれ配列番号1から37のアミノ酸配列の各々に順に対応し、これらをコードする配列番号38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108または110に示す塩基配列(以下、「番号38以下配列」という)または該塩基配列の1若しくは数個以上の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有する遺伝子又は該塩基配列からなるDNAにストリンジエントな条件下でハイブリダイズするタンパク質をコードするDNAを含有する遺伝子を利用し、タンパク質産生の常法に従えばよい。
【0018】
ここで「ストリンジエントな条件下」とは、例えば「モレキュラー クローニング−ラボラトリー マニュアル 第二版(Molecular cloning -a Laboratory manual 2nd edition)」(Sambrookら、1989)に記載の条件等が挙げられる。例えば、6xSSC(1xSSCの組成:0.15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5Xデンハート及び100μg/mL ニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
【0019】
本発明の配列番号1から37に示すアミノ酸配列を有するタンパク質等を多量に生産するには、前記した番号38以下配列に示す塩基配列を有する遺伝子等を、例えばバチルス属に属する微生物、好ましくはバチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16株(FERM BP−3376)等から、ショットガン法、PCR法を用いクローニングし、適当なベクターと宿主菌を用いて培養、採取すればよい。
【0020】
すなわち、番号38以下配列に示す本発明遺伝子等を、適当な宿主菌体内で目的とする遺伝子を発現するのに適した任意のベクターに組込み、該組換えベクターを用いて宿主菌を形質転換し、得られた形質転換体を培養し、当該菌体内あるいは当該培養液から各タンパク質を採取することにより、配列番号1から37に示すアミノ酸配列等を有する目的タンパク質が大量に生産できる。
【0021】
形質転換された宿主菌の培養は、微生物の資化可能な炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地に当該菌を接種後、常法に従って行えばよい。また、このようにして得られた培養物中からのタンパク質の分離採取および精製は、一般の方法に準じて行うことができる。即ち、目的タンパク質を菌体内に発現している場合には遠心分離または濾過することで菌体を集め、粉砕した後、硫安分画や各種カラムクロマトグラフィーにより目的タンパク質を得ることができる。さらに公知の方法により凍結乾燥、噴霧乾燥、結晶化や造粒化することができる。また、目的タンパク質を菌体外に生産される場合には、遠心分離または濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段により目的酵素を濃縮することができる。このようにして得られた酵素液または乾燥粉末はそのまま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。
【0022】
以下、具体的な本発明の有用タンパク質について、具体的に説明する。
【0023】
本発明の配列番号1にはホルムアルデヒドの生成や二酸化炭素の選択的電解還元によるメタノールの生産に有用なメタノール脱水素酵素(MDH)[EC 1.1.1.244]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるMDHのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans) C−125由来のMDH(SwissProt:Q9KFE7)との相同性が91.1%と最も高く、次いでバチルス ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)由来の1,3ープロパンジオール脱水素酵素(TrEMBL:Q8RKJ4)と64.4%、バチルス メタノリカス(B. methanolicus)由来のMDH(SwissProt:P31005)及びバチルス エスピー(Bacillus sp.)C1由来のMDH(PIR:A42952)と41.2%の相同性を示した。
【0024】
これらの結果は、本発明のMDHが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号1に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、95%以上の相同性を有するMDHを包含するものである。さらに配列番号1に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは98%以上を示すメタノール脱水素酵素であることが望ましい。
【0025】
本発明の配列番号2にはグルタミン酸やアンモニアの定量に有用なNADP依存グルタミン酸脱水素酵素(GLDH)[EC 1.4.1.4]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるGLDHのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のGLDH(SwissProt:Q9KB84)との相同性が85.2%と最も高く、次いでバチルス リケニホルミス(B. licheniformis)由来のGLDH(TrEMBL:O87403)と73.9%、リステリア イノックア(Listeria innocua)由来のGLDH(PIR:AI150)と71.3%の相同性を示した。
【0026】
これらの結果は、本発明のGLDHが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号2に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、90%以上の相同性を有するGLDHを包含するものである。さらに配列番号2に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上を示すNADP依存グルタミン酸脱水素酵素であることが望ましい。
【0027】
本発明の配列番号3には活性酸素除去、白内障、ガンなどあらゆる病気予防、老化防止に有用なMn含有スーパーオキシドディスムターゼ [EC 1.15.1.1]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)のアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans) C−125由来のSOD(SwissProt:Q9KD10)との相同性が85.1%と最も高く、次いでバチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のSOD(PRF:2417344AA)と81.2%、バチルス リケニホルミス(B. licheniformis)由来のSOD(EMBL:AJ002279)と79.7%の相同性を示した。
【0028】
これらの結果は、本発明のMn含有スーパーオキシドディスムターゼが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号3に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、90%以上の相同性を有するSODを包含するものである。さらに配列番号3に示すアミノ酸配列における相同性が、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上を示すMn含有スーパーオキシドディスムターゼであることが望ましい。
【0029】
本発明の配列番号4にはグルタミン酸やアンモニアの定量に有用なNAD依存性グルタミン酸脱水素酵素(GLDH)[EC 1.4.1.2]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるGDHのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans) C−125由来のGLDH(SwissProt:Q9KCE9)との相同性が85.0%と最も高く、次いでバチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のGDH(PIR:G69933)と80.8%、バチルス セレウス(B. cereus)由来のGLDH(EMBL:AE017269)と80.0%の相同性を示した。
【0030】
これらの結果は、本発明のGLDHが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号4に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、90%以上の相同性を有するGLDHを包含するものである。さらに配列番号4に示すアミノ酸配列における相同性が、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上を示すNAD依存性グルタミン酸脱水素酵素であることが望ましい。
【0031】
本発明の配列番号5には生理機能を有するLーアラビノースの効率的な生産に有用なα−L−アラビノフラノシダーゼ(AFase)[EC 3.2.1.55]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるAFaseのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のAFase(SwissProt:Q9KBQ1)との相同性が83.5%と最も高く、次いでサーモバチルス キシラニリティカス(Thermobacillus xylanilyticus)由来のAFase(EMBL:Y16849)と67.3%、バチルス エスピー(Bacillus sp.)D3株由来のAFase(PRF:2519219B)と66.5%の相同性を示した。
【0032】
これらの結果は、本発明のAFaseが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号5に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、85%以上の相同性を有するAFaseを包含するものである。さらに配列番号5に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上を示すα−L−アラビノフラノシダーゼであることが望ましい。
【0033】
本発明の配列番号6にはL−アスパラギン酸の合成に有用なアスパラギン酸アンモニアリーゼ(AAL)[EC 4.3.1.1]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるAALのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のAAL(SwissProt:Q9KCZ3)との相同性が81.2%と最も高く、次いでバチルス アンスラシス(B. anthracis )Ames株由来のAAL(TrEMBL:Q81S71)及びバチルス セレウス(B. cereus)ATCC14579株由来のAAL(TrEMBL:Q81F61)と69.0%の相同性を示した。
【0034】
これらの結果は、本発明のAALが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号6に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、85%以上の相同性を有するAALを包含するものである。さらに配列番号6に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上を示すアスパラギン酸アンモニアリーゼであることが望ましい。
【0035】
本発明の配列番号7にはアレルギー様食中毒の症状をおこすアグマチン除去に有用なアグマチナーゼ(AGase)[EC 3.5.3.11]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるAGaseのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のAGase(SwissProt:Q9K6B9)及びバチルス アンスラシス(B. anthracis) Ames由来のAGase(SwissProt:Q81JT1)との相同性が78.9%と最も高く、次いでバチルス セレウス(B. cereus)ATCC14579株由来のAGase(SwissProt:Q814Q2)と78.5%、バチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のAGase(SwissProt:P70999)と74.4%の相同性を示した。
【0036】
これらの結果は、本発明のAGaseが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号7に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するAGaseを包含するものである。さらに配列番号7に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すアグマチナーゼであることが望ましい。
【0037】
本発明の配列番号8にはアルコールの定量やアルコール化合物の変換に有用なアルコール脱水素酵素(ADH)[EC 1.1.1.1]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるADHのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)DSM2834株由来のALDH(SwissProt:P42327)との相同性が78.4%と最も高く、次いでバチルス ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)NCIMB12403株由来のADH(PIR:S45605)と74.9%、バチルス ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)NCA1503株由来のADH(PIR:A42654)と73.3%の相同性を示した。
【0038】
これらの結果は、本発明のADHが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号8に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するADHを包含するものである。さらに配列番号8に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すADHであることが望ましい。
【0039】
本発明の配列番号9にはATPの合成に有用なピルビン酸キナーゼ(PK)[EC 2.7.1.40]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるPKのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のPK(SwissProt:Q9K844)との相同性が78.3%と最も高く、次いでバチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のPK(PIR:G69685)と72.4%、バチルス リケニホルミス(B. licheniformis)由来のPK(PIR:JC4220)と72.2%の相同性を示した。
【0040】
これらの結果は、本発明のPKが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号9に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するPKを包含するものである。さらに配列番号9に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すピルビン酸キナーゼであることが望ましい。
【0041】
本発明の配列番号10には様々な生理機能を示すキチンオリゴ糖の生成や生物農薬等に有用なキチナーゼ(Chitinase)[EC 3.2.1.14]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるキチナーゼのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のキチナーゼ(SwissProt:Q9KED7)との相同性が78.3%と最も高く、次いでバチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のキチナーゼ(TrEMBL:O85500)と64.6%、バチルス リケニホルミス(B. licheniformis)由来のキチナーゼ(GenBank:AX954773)と63.5%の相同性を示した。
【0042】
これらの結果は、本発明のキチナーゼが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号10に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するキチナーゼを包含するものである。さらに配列番号10に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すキチナーゼであることが望ましい。
【0043】
本発明の配列番号11にはグルコースの生成、配糖体の分解、糖転移反応などに有用なβ−グルコシダーゼ(BGL)[EC 3.2.1.21]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるBGLのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のBGL(SwissProt:Q9KF89)との相同性が77.9%と最も高く、次いでエンテロコッカス フェカリス(Enterococcus faecalis)由来のBGL(TrEMBL:Q839A6)及びリステリア イノックア(Listeria innocua)由来のBGL(PIR:AB1435)と64.3%の相同性を示した。
【0044】
これらの結果は、本発明のBGLが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号11に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するBGLを包含するものである。さらに配列番号11に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すβーグルコシダーゼであることが望ましい。
【0045】
本発明の配列番号12にはアルコールの定量やアルコール化合物の変換に有用なアルコール脱水素酵素(ADH)[EC 1.1.1.1]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるADHのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)由来のADH(SwissProt:P71017)との相同性が76.9%と最も高く、次いでバチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のADH(グリシンーベタインアルデヒド脱水素酵素)(PRF:2220312D)と75.4%、メタノサルシナ マゼイ(Methanosarcina mazei)由来のADH(TrEMBL:Q8PTE6)と38.5%の相同性を示した。
【0046】
これらの結果は、本発明のADHが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号12に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するADHを包含するものである。さらに配列番号12に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すADHであることが望ましい。
【0047】
本発明の配列番号13には多糖、オリゴ糖などからガラクトースの遊離、糖縮合反応、糖転移反応に有用なα−ガラクトシダーゼ(AGAL)[EC 3.2.1.22]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるAGALのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)由来のAGAL(SwissProt:O34654)との相同性が75.5%と最も高く、次いでバチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のAGAL(PIR:D83926)と72.8%、ストレプトマイセス コエリコロー(Streptomyces coelicolor)由来のAGAL(TrEMBL:Q9RK69)と41.1%の相同性を示した。
【0048】
これらの結果は、本発明のAGALが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号13に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するAGALを包含するものである。さらに配列番号13に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すαーガラクトシダーゼであることが望ましい。
【0049】
本発明の配列番号14には活性酸素の除去に有用なチオールペルオキシダーゼ(TPO)[EC 1.11.1.−]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるTPOのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のTPO (SwissProt:Q9K813)との相同性が75.3%と最も高く、次いでバチルス セレウス(B. cereus)ATCC10987由来のTPO(TrEMBL:AAS43676)と72.8%、バチルス ハロデュランス(B. halodurans)ATCC14579由来のTPO(TrEMBL:Q817B8)及びバチルス アンスラシス(B. anthracis)Ames株由来のTPO(TrEMBL:Q81KU8)と72.2%の相同性を示した。
【0050】
これらの結果は、本発明のTPOが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号14に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するTPOを包含するものである。さらに配列番号14に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すチオールペルオキシダーゼであることが望ましい。
【0051】
本発明の配列番号15には過酸化水素による加工食品の漂白後の処理や工業廃液処理に有用なカタラーゼ(CAT)[EC 1.11.1.6]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるCATのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)由来のCAT(SwissProt:P94377)との相同性が75.2%と最も高く、次いでバチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のCAT(PIR:B83813)と75.0%、デイノコッカス ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来のCAT(SwissProt:Q59377)と69.2%の相同性を示した。
【0052】
これらの結果は、本発明のCATが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号15に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、80%以上の相同性を有するCATを包含するものである。さらに配列番号15に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すカタラーゼであることが望ましい。
【0053】
本発明の配列番号16にはペプチド生成やタンパク質分析に有用なアミノぺプチダーゼ(APase)[EC 3.4.11.−]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるAPaseのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のAPase(SwissProt:Q9KAP2)との相同性が73.7%と最も高く、次いでバチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のAPase(SwissProt:P39762)と61.7%、バチルス リケニホルミス(B. licheniformis)由来のAMP(GenBank:AX930252)と61.0%の相同性を示した。
【0054】
これらの結果は、本発明のAPaseが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号16に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するAPaseを包含するものである。さらに配列番号16に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すアミノペプチダーゼであることが望ましい。
【0055】
本発明の配列番号17にはアミノ酸合成に有用なアスパルトキナーゼ(AK)[EC 2.7.2.4]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるAKのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のAK(PIR:H83949)との相同性が73.2%と最も高く、次いでバチルス セレウス(B. cereus)ATCC14579株由来のAK(TrEMBL:Q819Z8)と67.6%、バチルス セレウス(B. cereus)ATCC10987株由来のAK(TrEMBL:AAS42742)と67.1%の相同性を示した。
【0056】
これらの結果は、本発明のAKが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号17に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するAKを包含するものである。さらに配列番号17に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すアスパルトキナーゼであることが望ましい。
【0057】
本発明の配列番号18にはアミノ酸合成に有用なアスパルトキナーゼ/ホモセリン脱水素酵素(AK/HSDH)[EC 2.7.2.4/EC 1.1.1.3]の2つの機能を有するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるAK/HSDHのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のHSDH(SwissProt:Q9KCR9)との相同性が71.5%と最も高く、次いでオーシャノバチルス イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)HTE831由来のAK/HSDH(PRF:2824433CVA)と59.9%、バチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のAK(SwissProt:P94417)と59.4%の相同性を示した。
【0058】
これらの結果は、本発明のAK/HSDHが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号18に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するAK/HSDHを包含するものである。さらに配列番号18に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すアスパルトキナーゼ/ホモセリン脱水素酵素であることが望ましい。
【0059】
本発明の配列番号19には有用なαーマルトースの生産に有用なマルトジェニックアミラーゼ(MAMY)[EC 3.2.1.133]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるMAMYのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のMAMY(SwissProt:Q9K8S6)との相同性が71.3%と最も高く、次いでバチルス ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)由来のMAMY(PRF:2411252A)と58.8%の相同性を示した。
【0060】
これらの結果は、本発明のMAMYが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号19に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するMAMYを包含するものである。さらに配列番号19に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すマルトジェニックアミラーゼであることが望ましい。
【0061】
本発明の配列番号20には木綿繊維の精練に有用なペクチン酸リアーゼ(PEL)[EC 4.2.2.2]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるPELのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のPEL(SwissProt:Q9K6B0)及びバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−P2850株由来のPEL(TrEMBL:Q8L0S6)との相同性が70.0%と最も高く、次いでバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−P103株由来のPEL(PRF:2515285A)と64.2%の相同性を示した。
【0062】
これらの結果は、本発明のPELが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号20に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するPELを包含するものである。さらに配列番号20に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すペクチン酸リアーゼであることが望ましい。
【0063】
本発明の配列番号21には生理活性を有するL−アラビノースを効率的に生産するのに有用なα−L−アラビノフラノシダーゼ(AFase)[EC 3.2.1.55]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるAFaseのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来のAFase(SwissProt:Q9XBQ3)との相同性が69.8%と最も高く、次いでバチルス ハロデュランス(B. halodurans)由来のAFase(SwissProt:Q9KBR4)と67.5%、バチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のAFase(GenBank:X89810)と67.2%の相同性を示した。
【0064】
これらの結果は、本発明のAFaseが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号21に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するAFaseを包含するものである。さらに配列番号21に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すα−L−アラビノフラノシダーゼであることが望ましい。
【0065】
本発明の配列番号22には乳糖分解や家畜飼料に有用なβ−ガラクトシダーゼ(BGAL)[EC 3.2.1.23]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるBGALのアミノ酸配列と比較した場合、プラノコッカス エスピー.(Planococcus sp.)由来のBGAL(SwissProt:Q9KI47)との相同性が69.4%と最も高く、次いでバチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のBGAL(PIR:E84112)と66.7%、バチルス サーキュランス(B. circulans)由来のBGAL(TrEMBL:Q45092)と66.4%の相同性を示した。
【0066】
これらの結果は、本発明のBGALが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号22に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するBGALを包含するものである。さらに配列番号22に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すβ−ガラクトシダーゼであることが望ましい。
【0067】
本発明の配列番号23には過酸化水素による加工食品の漂白後の処理や過酸化水素を含む工業廃液処理に有用なカタラーゼ(CAT)[EC 1.11.1.6]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるCATのアミノ酸配列と比較した場合、リステリア シーリゲリ(Listeria seeligeri)由来のCAT(PIR:A40367, SwissProt:P24168)との相同性が68.8%と最も高く、次いでリステリア イノッキュア(L. innocua)由来のCAT(SwissProt: Q926X0)と68.3%、リステリア モノシトゲネス(L. monocytogenes)由来のCAT(SwissProt:Q8Y3P9)と67.9%の相同性を示した。
【0068】
これらの結果は、本発明のCATが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号23に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するCATを包含するものである。さらに配列番号23に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すカタラーゼであることが望ましい。
【0069】
本発明の配列番号24には乳酸の定量に有用な乳酸脱水素酵素(LDH)[EC 1.1.1.27]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるLDHのアミノ酸配列と比較した場合、オーシャノバチルス イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)HTE831由来のLDH(PRI:28824433FTA)との相同性が68.4%と最も高く、次いでバチルス サイクロサッカロリティクス(Bacillus psychrosaccharolyticus)由来のLDH(SwissProt:P20619)と66.6%、バチルス カルドリティカス(B. caldolyticus)由来のLDH(SwissProt:Q59244)と62.1%の相同性を示した。
【0070】
これらの結果は、本発明のLDHが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号24に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、75%以上の相同性を有するLDHを包含するものである。さらに配列番号24に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示す乳酸脱水素酵素であることが望ましい。
【0071】
本発明の配列番号25にはエステル化合物からアルコールの生成に有用なカルボキシエステラーゼ(CEase)[EC 3.1.1.1]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるCEaseのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のCEase(SwissProt:Q9K719)との相同性が67.6%と最も高く、次いでバチルス ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)由来のCEase(SwissProt:Q06174)と61.0%、バチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のCEase(PIR:H70027)と60.1%の相同性を示した。
【0072】
これらの結果は、本発明のCEaseが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号25に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するCEaseを包含するものである。さらに配列番号25に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すカルボキシエステラーゼであることが望ましい。
【0073】
本発明の配列番号26には食品中の遊離グルタミンを旨味のあるグルタミン酸へ変換するのに有用なグルタミナーゼ(GLase)[EC 3.5.1.2]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるGLaseのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis)由来のGLase(SwissProt:O07637)との相同性が65.4%と最も高く、次いでバチルス ハロデュランス(B. halodurans)C−125由来のGLase(SwissProt:Q9K9L8)と63.4%、バチルス アンスラシス(B. anthracis)Ames由来のGLase(TrEMBL:Q81YY0)と57.9%の相同性を示した。
【0074】
これらの結果は、本発明のGLaseが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号26に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するGLaseを包含するものである。さらに配列番号26に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すグルタミナーゼであることが望ましい。
【0075】
本発明の配列番号27には活性酸素除去、白内障、ガンなどあらゆる病気予防、老化防止に有用なMn含有スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)[EC 1.15.1.1]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるSODのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス カルドテナックス(Bacillus caldotenax)由来のSOD(SwissProt:P28760)との相同性が64.8%と最も高く、次いでバチルス ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)由来のSOD(SwissProt:P00449)及びジオバチルス サーモレオボランス(Geobacillus thermoleovorans)由来のSOD(TrEMBL:Q9LBF6)と63.8%の相同性を示した。
【0076】
これらの結果は、本発明のSODが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号27に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するSODを包含するものである。さらに配列番号27に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すスーパーオキサイドディスムターゼであることが望ましい。
【0077】
本発明の配列番号28には甘味料として有効なキシロースを効率的に生産できるβーキシロシダーゼ(BXL)[EC 3.2.1.37]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるBXLのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KK−1由来のBXL(TrEMBL:O52729)との相同性が64.5%と最も高く、次いでバチルス ズブチリス(B.subtilis)由来のBXL(PIR:G69735)と63.9%、オーシャノバチルス イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)HTE831由来のBXL(PRF:2824433FKA)と63.5%の相同性を示した。
【0078】
これらの結果は、本発明のBXLが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号28に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するBXLを包含するものである。さらに配列番号28に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すβ−キシロシダーゼであることが望ましい。
【0079】
本発明の配列番号29にはキシロース、アラビノースの生成に有用なキシロシダーゼとアラビノフラノシダーゼ(XYL/ARF)[EC 3.2.1.37/EC 3.2.1.55]の2つの機能を有するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるXYLのアミノ酸配列と比較した場合、オーシャノバチルス イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)由来のXYL/ARF(SwissProt:Q8EPL4)との相同性が62.5%と最も高く、次いでブチリビブリオ エスピー(Butyrivibrio sp.)由来のXYL/ARF(SwissProt:P45982)と46.0%、キサントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris)由来のXYL/ARF(TrEMBL:Q8P3G6)と42.2%の相同性を示した。
【0080】
これらの結果は、本発明のXYL/ARFが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号29に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するXYLを包含するものである。さらに配列番号29に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すキシロシダーゼ/アラビノフラノシダーゼであることが望ましい。
【0081】
本発明の配列番号30には耐性薬剤の設計に有用なβ−ラクタマーゼ(BLC)[EC 3.5.2.6]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるBLCのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス リケニホルミス(Bacillus licheniformis)749C由来のBLC(SwissProt:P00808)との相同性が61.5%と最も高く、次いでバチルス セレウス(B. cereus)由来のBLC(PIR:A27755)と59.9%、バチルス リケニホルミス(B. licheniformis )BS3由来のBLC(TrEMBL:P94458)と59.1%の相同性を示した。
【0082】
これらの結果は、本発明のBLCが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号30に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するBLCを包含するものである。さらに配列番号30に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すβ−ラクタマーゼであることが望ましい。
【0083】
本発明の配列番号31には洗剤用酵素に有用なセリンプロテアーゼ(SPRO)[EC 3.4.21.−]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるSPROのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス シュードフィルムス(Bacillus pseudofirmus)由来のVpr(TrEMBL:Q9EXK0)との相同性が61.3%と最も高く、次いでバチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のズブチリシン−タイプ プロテアーゼ(subtilisin-type protease)(PIR:C84120)と57.6%、オーシャノバチルス イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)HTE831由来のマイナー エクストラセルラー セリン プロテアーゼ(minor extracellular serine protease)(PRF:2824433FCN)と38.6%の相同性を示した。
【0084】
これらの結果は、本発明のSPROが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号31に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するSPROを包含するものである。さらに配列番号31に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すセリンプロテアーゼであることが望ましい。
【0085】
本発明の配列番号32には活性酸素除去、白内障、ガンなどあらゆる病気予防、老化防止に有用なCu−Zn含有スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)[EC 1.15.1.1]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるSODのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のSOD(SwissProt:Q9KCK8)との相同性が60.8%と最も高く、次いでバチルス アンスラシス(B. anthracis)Ames由来のSOD(TrEMBL:Q81T03)と55.9%、バチルス ズブチリス(B. subtilis)由来のSOD(SwissProt:O35023)と51.5%の相同性を示した。
【0086】
これらの結果は、本発明のSODが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号32に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するSODを包含するものである。さらに配列番号32に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すスーパーオキサイドディスムターゼであることが望ましい。
【0087】
本発明の配列番号33には広葉樹やとうもろこし種皮由来のキシランの完全分解に有用なα−グルクロニダーゼ(GLC)[EC 3.2.1.139]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるGLCのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のGLC(SwissProt:Q9KE00)との相同性が60.0%と最も高く、次いでバチルス ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)T−6由来のGLC(TrEMBL:Q9ZFM3)及びバチルス ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)T−1由来のGLC(PRF:2514353G)が53.7%の相同性を示した。
【0088】
これらの結果は、本発明のGLCが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号33に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、70%以上の相同性を有するGLCを包含するものである。さらに配列番号33に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すα−グルクロニダーゼであることが望ましい。
【0089】
本発明の配列番号34にはアルコールの定量やアルコール化合物の変換に有用なアルコール脱水素酵素(ALDH)[EC 1.1.1.244]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるALDHのアミノ酸配列と比較した場合、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)由来のALDH(TrEMBL:O68647)との相同性が56.6%と最も高く、次いでメタノサルシナ アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)由来のALDH(TrEMBL:Q8TMM6)、メタノサルシナ マゼイ(M. mazei)由来のALDH(TrEMBL:Q8PTE6)、バチルス メタノリカス(Bacillus methanolicus)由来のALDH(TrEMBL:AAR39405)と39.3%の相同性を示した。
【0090】
これらの結果は、本発明のALDHが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号34に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、60%以上の相同性を有するALDHを包含するものである。さらに配列番号34に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すアルコール脱水素酵素であることが望ましい。
【0091】
本発明の配列番号35には多糖、オリゴ糖などからガラクトースの遊離、糖縮合反応、糖転移反応に有用なαーガラクトシダーゼ(GAL)[EC 3.2.1.22]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるGALのアミノ酸配列と比較した場合、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacteium tumefaciens)由来のGAL(SwissProt:Q8U6Z6)との相同性が56.4%と最も高く、次いでリゾビウム メリトイ(Rhizobium melitoi)由来のGAL(SwissProt:Q9X4Y0)と55.7%、メソリゾビウム ロッティ(Mesorhizobium loti)由来のGAL(PRF:270529JPX)と55.2%の相同性を示した。
【0092】
これらの結果は、本発明のGALが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号35に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、60%以上の相同性を有するGALを包含するものである。さらに配列番号35に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すα−ガラクトシダーゼであることが望ましい。
【0093】
本発明の配列番号36には澱粉分解、糖転移反応、阻害剤設計などに有用なαーグルコシダーゼ(GLU)[EC 3.2.1.20]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるGLUのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のGLU(SwissProt:Q9KEZ5)との相同性が55.4%と最も高く、次いでイェルシニア ペスティス(Yersinia pestis)由来のGLU(PIR:AD0104)と49.2%、ラルストニア ソラナセアルム(Ralstonia solanacearum)由来のGLU(TrEMBL:Q8Y0G3)と47.3%の相同性を示した。
【0094】
これらの結果は、本発明のGLUが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号36に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、60%以上の相同性を有するGLUを包含するものである。さらに配列番号36に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すα−グルコシダーゼであることが望ましい。
【0095】
本発明の配列番号37には耐性薬剤の設計に有用なβ−ラクタマーゼ(LCT)[EC 3.5.2.6]として機能するタンパク質のアミノ酸配列を示している。本発明酵素の推定アミノ酸配列と他の公知であるLCTのアミノ酸配列と比較した場合、バチルス ズブチリス(Bacillus subutilis)由来のLCT(SwissProt:P54427)との相同性が55.0%と最も高く、次いでノストック エスピー.(Nostoc sp.)PCC120 由来のLCT(PIR:AI2115)と33.9%、シェワネラ オネイデンシス(Shewanella oneidensis)由来のLCT(TrEMBL:Q8EIK2)と32.9%の相同性を示した。
【0096】
これらの結果は、本発明のLCTが新規な酵素であることを示唆するものであり、配列番号37に示すアミノ酸配列において相当する配列を適切にアライメントした時、60%以上の相同性を有するLCTを包含するものである。さらに配列番号37に示すアミノ酸配列における相同性は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を示すβ−ラクタマーゼであることが望ましい。
【0097】
本発明において、上記各アミノ酸配列で示されるペプチドの機能は、既に機能公知のペプチドとの間での相同性検索により調べた。なお、ここで述べる相同性の検索は、対応するタンパク質のアミノ酸の数がほぼ同数であれば、FASTA(http://fasta.genome.ad.jp/)、BLAST(http://blast.genome.ad.jp/)、GENETYX−WIN (ソフトウェア開発)のサーチホモロジープログラムやマキシマムマッチング法を用いて算出することができる。
【実施例】
【0098】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【0099】
実 施 例 1
バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)のゲノムの塩基配列決定:
( 菌 株 )
好アルカリ性バチルス属細菌バチルス クラウジイ KSM−K16(FERM BP−3376)株を染色体DNA調製に使用した。染色体DNAのライブラリー構築に使用する宿主菌には、大腸菌(Escherichia coli)DH5α(タカラバイオ)を使用した。
【0100】
(ホールゲノムショットガンライブラリーの作製)
バチルス クラウジイ KSM−K16を、10%炭酸ナトリウムでpH8.5に調整したTSB培地(BD BBL Trypticase Soy Broth TM ;BD Diagnostic Systems)100mL中で30℃において培養した。対数増殖期の培養液から遠心分離により菌体を回収し、斉藤と三浦(Saito & Miura)の方法(フェノール法/非特許文献5)により染色体DNAを得た。
【0101】
20μgの染色体DNA(100ng/μl)を超音波破砕装置(Bioruptor UCD-200TM;東湘電機株式会社製)で、超音波破砕により断片化した。断片化DNAは、30℃、5分間のBAL31ヌクレアーゼ(タカラバイオ)処理により、突出末端を平滑化した後、フェノール・クロロホルム処理とエタノール沈殿により精製した。次にDNA Blunting Kit(タカラバイオ)でT4 DNAポリメラーゼ処理後、フェノール・クロロホルム処理とエタノール沈殿により精製した。続いて、精製DNA断片のアガロース電気泳動を行い、1−2kbの画分をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて回収した。
【0102】
このDNA画分と等量のベクターpUC18/SmaI/BAP(Amersham Pharmacia Biotech)を1:1の比率で混合し、DNA Ligation Kit Ver.1(タカラバイオ)を用いて、16℃で一晩、ライゲーションを行った。その後、このDNAをコンピテントセル E. coli DH5αに形質転換した。形質転換体は、100μg/mlのアンピシリン含むLB寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養した。この方法により、約1x10クローン/μgベクターの形質転換効率のホールゲノムショットガンライブラリーを作製した。
【0103】
(ショットガンシーケンシング用鋳型DNAの増幅)
ショットガンクローンは、100μg/mlのアンピシリン含むLB液体培地を含む丸底96穴培養プレートを用いて、37℃で18時間培養した。この培養液を鋳型として、インサートDNAをTaKaRa EX Taq TM(タカラバイオ)を用いたPCRにより増幅した。このPCRには、ベクターの塩基配列より設計したプライマー LF(5’−CAAGGCGATTAAGTTGGGTAACG−3’)とLR(5’−CTTCCGGCTCGTATGTTGTGTG−3’)を使用した。反応条件として、96℃、15秒間DNAを変性させ、68℃、2分間プライマー伸長を行った。以上のサイクルを30回繰り返した後、再度72℃で、5分間プライマー伸長を行った。
【0104】
(鋳型DNAの精製)
PCR産物に残存する未反応のプライマーを、exonuclease I(Amersham Pharmacia Biotech)により分解し、その分解物をshrimp alkaline phosphatase(Amersham Pharmacia Biotech)により脱リン酸化することでPCR産物の精製を行った。
【0105】
(ショットガンクローンのシーケンシング)
ショットガンクローンのシーケンシングは、インサートDNAの精製PCR産物を鋳型とし、LFまたはLRをプライマーとして、DYEnamic ET terminator(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して行った。反応産物は、エタノール沈殿により精製後、キャピラリー型DNAシーケンサー(MegaBACE 1000 DNA Sequencing System; Amersham Pharmacia Biotech)を用いてシーケンシングを行った。
【0106】
(アセンブル(配列結合編集))
32,214個のショットガンクローンより得た配列データは、大型アセンブルソフト
Phred/Phrap(非特許文献6)を使用してアセンブルした。その結果、コンティグの総塩基長は約4.19Mbpとなり、コンティグ数は472個であった。これら塩基長の総和は推定されるゲノムサイズの99%に達した。
【0107】
(ギャップフィリング)
ギャップ領域を含むDNAを取得するため、各コンティグの末端配列上にて外向きにプライマーを設計し、染色体DNAを鋳型として、TaKaRa LA Taq TM(タカラバイオ)を用いてPCRを行った。取得したPCR産物を上に記載した鋳型DNAの精製の方法により精製した。ここで得られたPCR産物を鋳型として、その部分配列に相補的なプライマーを用いて、ショットガンクローンのシーケンシングと同様の方法によりシーケンシングを行った。
【0108】
(遺伝子領域の確定)
ゲノムの遺伝子領域を確定するため、コドンの出現頻度(codon usage)を利用し、遺伝子領域を自動的に同定する遺伝子同定プログラムGeneHacker(非特許文献7)を利用した。本プログラムは、予めターゲットとなるゲノム上の確定した遺伝子情報からコドン出現頻度の学習パターンを作成しなければならない。そこで、機械的に抽出したオープン・リーディング・フレーム(ORF)から、無作為に200個のORFを選択し、シャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列(SD配列)や既知遺伝子とのホモロジーを指標として遺伝子領域を確定した。ここで確定された遺伝子を学習セットとし、再度GeneHackerを用いて遺伝子領域の確定を行った。さらに、本方法では発見できない遺伝子を抽出するため、非コード領域よりORFを機械的に抽出し、SD配列の有無や既知遺伝子とのホモロジーを指標として確定した遺伝子領域も追加した。
【0109】
(遺伝子の機能予測)
遺伝子の機能を予測するため、タンパク質データベース(nr(http://www.ncbi.nih.gov/)、Swiss−Prot/TrEMBL(http://us.expasy.org/sprot/))に対してホモロジー検索プログラム BLAST(非特許文献8参照)を用いて、ホモロジー検索を行い、以下に示す定義をもとに機能予測を行った。
【0110】
各遺伝子のコードするアミノ酸配列と機能既知遺伝子のコードするアミノ酸配列が、60%以上の領域に渡って比較され、その同一性(identity)が25〜30%、相同性(similarity)が50%以上のものについて、同様な機能を持つと考えられ、遺伝子に対して機能を付した。
【0111】
実 施 例 2
有用タンパク質をコードする遺伝子の抽出:
機能推定された遺伝子から、有用タンパク質をコードする遺伝子を抽出するために、以下の2段階の解析と選抜を行った。まず、1段階目においては、有用タンパク質をコードすると期待される遺伝子を広く選抜することを目的とした。本菌株の全遺伝子から、予測された機能を基準として、有用タンパク質をコードすると期待される遺伝子を選抜して第1次候補遺伝子とした。
【0112】
2段階目においては、第1次候補遺伝子の機能を検証することを目的とした。タンパク質データベース(Swiss−Prot/TrEMBL(http://us.expasy.org/sprot/))に対してホモロジー検索プログラム FASTA(非特許文献9参照)を用いて、第1次候補遺伝子がコードするアミノ酸配列のホモロジー検索を行った。その結果、第1次候補遺伝子がコードするアミノ酸配列が、機能既知遺伝子と全体の80%以上で比較され、その同一性(identity)が55%以上であった場合に、その候補遺伝子が、機能既知なタンパク質と同一の機能を有するタンパク質をコードすると判断した。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に基づき、産業上有効利用可能な新たな酵素を生産することが可能となるので、本発明は、洗剤用酵素を始め、医療、食品、化粧品等の分野において有利に利用することができる。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)又は(b):
(a)配列番号1から37に示す何れかのアミノ酸配列、
(b)(a)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しく
は付加されたアミノ酸配列
で表される有用タンパク質。
【請求項2】
好アルカリ性バチルス属細菌由来のものである請求項1記載の有用タンパク質。
【請求項3】
バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)由来のものである請求項第1項記載の有用タンパク質。
【請求項4】
次の(c)又は(d):
(c)配列番号38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58
、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、
84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、
106、108または110に示す塩基配列の何れかであるDNA、
(d)(c)の塩基配列からなるDNAとストリンジエントな条件下でハイブリダイズ
し、且つ請求項1に示すタンパク質をコードするDNA
からなる有用タンパク質をコードする遺伝子。
【請求項5】
請求項4記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
【請求項6】
請求項5記載の組換えベクターを含む形質転換体。
【請求項7】
宿主が微生物である請求項6記載の形質転換体。
【請求項8】
請求項6または請求項7記載の形質転換体を培養し、当該培養物中から有用タンパク質を分離、取得する有用タンパク質の製造方法。

【公開番号】特開2006−67907(P2006−67907A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255527(P2004−255527)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】