説明

有用物質を選択的に分離するための方法

本発明の対象は、有用物質を吸収及び/又は吸着された状態で含有する出発材料を使用する、圧縮されたC〜C−炭化水素、例えばエタン、プロパン及び/又はブタンを用いて有用物質を選択的に分離するための方法である。≦120℃の温度及び<50MPaの圧力で有利に連続的な運転方式で実施される前記方法のために、出発材料として、相応して、有用物質で負荷された活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト又は多糖類を使用する。前記方法は、食料品の製造及び/又は−取得、及び有利に芳香の取得、果汁、ワイン及び酒類の製造及び加工、又は肉類、果実及び野菜の加工に由来する出発材料から、殊に高品質の芳香物質及び香気物質を取得するために適当である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、圧縮されたC〜C−炭化水素を用いて有用物質を選択的に分離するための方法である。
【0002】
殊に液体の形の食料品及び嗜好品、例えば果汁、ワイン及び酒類を製造する際に、並びに固体の原料及び食品、例えば肉類、果実及び野菜を加工する際に、大量に液体又は固体のプロセス流が生じ、これは廃棄物としてか又は二次原料として、例えば動物飼育の飼料として供給されるか、又は例えば相応する清澄化措置及び清浄化措置により後処理される。
【0003】
例えば果汁の清澄化から、負荷された吸着剤を得た場合、負荷された吸着剤の清浄化は非経済的であるため、通常は廃棄する。
【0004】
食料品工業における上記の吸着剤、例えば活性炭又は珪藻土の使用は、多くの例のうちの一例に過ぎない。
【0005】
しかしながら、吸着剤を使用する全ての確立された方法の場合、使用される吸着剤によって選択的分離が行われるのではなく、吸着剤の比表面積に相応して、プロセス流中に含まれる有用物質、例えば芳香物質及び香気物質も吸着剤に結合されるため、吸着剤が大抵言及に値する量の前記の有用物質をも含有することは不利である。従来、例えば、吸着剤に結合している芳香物質及び香気物質の形の有用物質を選択的に分離し、かつ他の有用な製品へと供給することを可能にする経済的な方法は公知でない。
【0006】
例えば相応する抽出法の範囲で芳香物質及び香気物質を取得するためには、親油性有機溶剤も使用される。しかしながらこの方法で得られる芳香物質及び香気物質濃縮物は、使用される有機溶剤の残分をある程度の割合で含有しており、これは製品品質の容易に見通すことのできる妨害を招く。
【0007】
従って、有機溶剤を用いて抽出された芳香及び香気物質製品を更に後清浄化するために、同様に、有機溶剤残分を製品から除去する吸着材料が使用されるが、これは使用される吸着剤の物理的特性に基づき不十分に選択的品質で行われるに過ぎないため、芳香物質及び香気物質濃縮物は吸着剤により感覚活性内容物質に関して不利な方法で劣化される。
【0008】
最近では、圧縮ガス、殊に超臨界二酸化炭素を用いて芳香物質の抽出を実施する多数の方法も記載されている。ここで例示的に、欧州特許文献EP0065106号が指摘され、ここでは超臨界圧力及び臨界下温度での二酸化炭素を用いる抽出による濃縮された矯臭及び矯味物質抽出物の製造法が記載されている。このような方法は、現在は、殊にその穏和な方法条件及び溶媒の高い選択性に基づき、その使用により品質的に非常に高価な芳香を製造することができるため、非常に重要である。
【0009】
芳香物質フラクションから脂肪−/油−フラクションを分離するために種々の方法を採用することできる:一方では、種々の内容物を、連続的に、種々の方法パラメータ、例えば圧力、温度又は共留剤供給により天然物質から抽出し、別個に収集する分別抽出が考えられる。他方では、種々の内容物を差し当たり一緒に抽出し、次いで種々の条件下でガスから分離する分別分離が該当する。
【0010】
しかしながら、全ての知覚的に極めて危険的な油−及び脂肪成分を選択的に分離し、その後になってから本来の芳香物質抽出を実施することを目的として、純粋なCO抽出の天然の芳香物質を取得するために、液体プロパン及び/又はブタンを用いた抽出を前置することも試みられた(DE−OS4440644)。しかしながら、第一の工程において≦70℃の温度及び≦50MPaの圧力で実施される前記方法の場合、大工業的実現の際には、固体のみを用いて、かつ更に、天然の芳香物質を高濃度で含有する天然物質の場合にのみ実施することができることが判明した。しかしながら、この二工程の方法を用いて、液体及び半液体(粘性)の出発物質、及び低い芳香物質含分を有する液体及び半液体(粘性)の出発物質からうまく芳香物質抽出することは不可能である。
【0011】
公知の先行技術から、所望の製品が比較的容易に良好な品質で得られる、圧縮されたC〜C−炭化水素を用いて有用物質を選択的に分離するための方法を提供するという普遍的な課題が本発明のために課された。
【0012】
前記の課題は、有用物質を吸収及び/又は吸着された状態で含有する出発材料を使用する相応する方法を用いて解決された。
【0013】
「吸収」とは、本発明の範囲内で、液体又は固体物質による有用物質の結合であると解釈される。「吸着」とは、溶解状態の有用物質が固体の物体に相応して付加されていることを意味し、その際、吸着は使用される固体吸着体の表面積に正比例する。
【0014】
驚異的にも、本発明による方法の実地に即した反応において、通常、液体の食料品の清浄化の際に使用される吸着材料から有用物質のみを選択的に分離することができるばかりでなく、市販可能な最終製品に吸着材料を添加し、それにより有用な芳香物質及び香気物質を結合させ、かつこれらを本発明による方法に相応して選択的に吸着材料と分離することによって、市販可能な最終製品からの芳香物質及び香気物質を更に加工することも可能であることが判明した。全体として、そのようにして得られる有用物質の純度及び品質を数倍にも高めることができる。これは、この規模においては予期せぬことであった。
【0015】
本発明の方法は、殊に、芳香物質及び/又は香気物質である有用物質に適している。しかしながら有用物質は殊に生物工学的処理を用いて得られる有機中間生成物又は最終生成物の形で存在してもよい。これには、全ての発酵法が含まれる。しかしながら有用物質は触媒に結合していてもよく、その際、この場合本来の有用物質のみでなく、清浄化された担体材料も得られる。
【0016】
有利に、本発明による方法は≦120℃の温度及び<50MPaの圧力で実施され、その際、温度は殊に有利に20〜40℃、圧力は0.5〜10MPaであるのが有利である。
【0017】
殊に圧縮されたエタン、プロパン、ブタン又はそれらから成る混合物が適当なC〜C−炭化水素であることが判明し、その際、本発明は、所定の適用ケースにおいて、圧縮された炭化水素(−混合物)に共留剤、例えばジメチルエーテル又はアルコールを有利に0.5〜50質量%、更に有利に5〜20質量%の割合で添加することを予定している。
【0018】
本発明による方法はバッチ式のために殊に適当である。しかしながら、それぞれの使用分野に応じて、特許の保護を請求した方法を連続的又は半連続的に実施することもできる。
【0019】
出発材料に関して、大きな内部及び/又は外部表面積を有する固体の物質が適当であることが判明し、ここで有利に、>0.1m/g、有利に>10m/g、更に有利に>100m/g、更に有利に>500m/gの(BET DIN 66131による)表面積を有する固体の物質及び/又は流体物質が適当であることが判明した。殊に活性炭、アルミナ、シリカ、珪藻土、アルミノケイ酸塩、ゼオライト及び/又は多糖類、例えばシクロデキストリンが適当な固体物質であると見なされる。
【0020】
その由来に関して、本発明の方法では、殊に、食料品の製造及び/又は取得、又は芳香の取得、果汁、ワイン及び酒類の製造及び加工及び/又は肉類、果実及び野菜の加工に由来する出発材料が考慮されている。
【0021】
天然の、天然同様の及び/又は合成の芳香物質及び香気物質を取得する際に、本発明による方法は殊に有利であることが判明し、これは本発明により同様に考慮されている。
【0022】
本発明には同様に、芳香物質及び香気物質を、液体形又はペースト形で、又は粉末として得る方法が含まれる。芳香物質及び香気物質は、本発明による方法の範囲内で最終的に溶解されてよく、これは有利にアルコール中で行われる。
【0023】
特許の保護を請求した方法は、殊に分離塔中で、又は他の適当な圧力容器中で実施される場合にその有利な特性を発揮し、その際、使用される分離塔に関して、この方法が向流原理により実施される場合に特に有利であることが判明した。
【0024】
全体として、本発明は、圧力容器が分離器と連結されていてよく、かつ例えば芳香物質及び香気物質の形の抽出された有用物質を有利に圧力低下及び/又は温度上昇により分離することができることも予定している。本発明による方法は、抽出剤として使用される炭化水素の循環操作をも可能にし、これは更にその経済性にも寄与する。
【0025】
最後に、本発明は更に、本来の方法に吸着工程を前置する特別な処理変法を予定している:この場合、まず第一に、>0.1m/g、有利に>10m/g、更に有利に>100m/g、更に有利に>500m/g(BET DIN 66131)の大きな内部及び/又は外部表面積を有する固体物質に有用物質を負荷させ;引き続きこの付加された複合体を圧縮されたC〜C−炭化水素を用いて上記のように処理する。
【0026】
可能な出発材料の幅及びその由来に基づき、本発明による方法はその有利な変法と共に、吸収又は吸着された芳香物質及び香気物質を、有用物質を単に吸着剤の不十分な選択性にのみ基づいて含有する担体材料から選択的に分離するためにのみ適当であるのではない。むしろ、前記方法は、例えば有機溶剤又は圧縮されたCOを用いて得られた市販の濃縮物を吸着剤と混合することにより、知覚的に質の高い芳香剤又は香気剤濃縮物を製造するために使用することもできる。それにより、知覚的な伝達化合物を濃縮物から選択し、次いでそのように負荷された吸着剤を特許の保護を請求したように処理することができる。このようにして、芳香物質及び香気物質の典型的な伝達化合物が選択的に濃縮され、これにより品質の高い最終製品がもたらされる。
【0027】
しかしながら本発明は、吸着又は吸収材料に結合しているより価値の低い化合物の分離も考慮している。この変法の場合、主に、担体材料の取得又は清浄化、及びそれより少ない程度で、それに吸収又は吸着されている物質が着目されている。
【0028】
この場合有利に、触媒又はシリカゲル、及びガス洗浄のための方法において使用される担体材料の分離又は清浄化を考慮することができる。
【0029】
総括的に言えば、新規の方法を用いて、殊に有用物質を選択的に、有用物質が吸収又は吸着されている出発材料から脱離させ、高品質で得ることができることを確認することができ、これは殊に市販の製品の付加的な品質向上に関して重要である。
【0030】
以下の実施例は、本発明による、圧縮されたC〜C−炭化水素を用いて有用物質を選択的に分離するための方法の利点を証明する。
【0031】
実施例
実施例1:
茶−脱カフェイン処理からの活性炭からの紅茶の芳香の分離
紅茶の茶−脱カフェイン処理(CO高圧プロセス)からの負荷された活性炭1kgを30バールかつ30℃で全体で5kgの液体プロパンで抽出した。抽出物を圧力低下の後に8バールでかつ46℃で分離し、それによりペースト状の明褐色の抽出物320mgを得た。この抽出物を無水エタノール16g中に溶解させた。センサ技術(Sensorik)により、心地よい芳香を有する、紅茶の典型的な香気がもたらされた。
【0032】
紅茶の芳香の知覚的な主要成分はリナロール(リナリルアルコール)である。本発明による活性炭からの茶芳香のガスクロマトグラフィーを用いたリナロール含分の測定(a)は、慣用の、エタノール抽出により取得された紅茶の芳香(b)と比較して、以下の値をもたらした:
a)活性炭からの茶芳香 無水エタノール中で2%:リナロール168mg/l(図1a)
b)エタノール抽出からの茶芳香 エタノール中で50%:リナロール<5mg/l(図2a)
実施例2:
キイチゴ果汁品質向上処理からの珪藻土からのキイチゴ芳香の分離
キイチゴ果汁品質向上処理からのペースト状の粘稠性を有する負荷された珪藻土1.56kgを遠心分離した:遠心分離物として、果汁560gを分離した。残留物1kgを液体プロパン6kgで30バールかつ35℃で抽出した。抽出物を圧力低下の後に6バールでかつ48℃で分離し、それによりペースト状の白色抽出物15mgを得た。この抽出物を無水エタノール7.5g中に溶解させた。
【0033】
芳香評価の結果:強度に新鮮な果実の芳香を有し、2〜3分後にキイチゴの芳香を有し、甘く、果実に典型的な、長く持続的な純粋な香気
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1a】活性炭からの茶芳香を示す図。
【図1b】エタノール抽出からの茶芳香を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮されたC〜C−炭化水素を用いて有用物質を選択的に分離するための方法において、有用物質を吸収及び/又は吸着された状態で含有する出発材料を使用することを特徴とする、有用物質を選択的に分離するための方法。
【請求項2】
有用物質が芳香、芳香物質及び/又は香気物質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
有用物質が、有利に生物工学的処理からの有機中間生成物又は最終生成物である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
有用物質が触媒に結合している、請求項1記載の方法。
【請求項5】
≦120℃の温度及び<50MPaの圧力で実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
温度を20〜40℃に調節し、かつ圧力を0.5〜10MPaに調節する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
圧縮されたエタン、プロパン、ブタン又はそれらから成る混合物を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
圧縮された炭化水素(−混合物)に共留剤、例えばジメチルエーテル又はアルコールを有利に0.5〜50質量%の割合で添加する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
バッチ式で実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
出発材料として、大きな内部及び/又は外部表面積を有する、有利に>0.1m/g(BET DIN 661311)の表面積を有する固体物質及び/又は流体物質を使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
活性炭、アルミナ、シリカ、珪藻土、アルミノケイ酸塩、ゼオライト及び/又は多糖類、例えばシクロデキストリンを使用する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
食料品の製造及び/又は取得、又は芳香の取得、果汁、ワイン及び酒類の製造及び加工及び/又は肉類、果実及び野菜の加工に由来する出発材料を使用する、請求項1及び2並びに5から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
天然の、天然同様の及び/又は合成の芳香物質及び香気物質を得る、請求項1及び2並びに5から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
芳香物質及び香気物質を、液体形又はペースト形で、又は粉末として得る、請求項1及び2並びに5から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
芳香物質及び香気物質を最終的に有利にアルコール中に溶解させる、請求項1及び2並びに5から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
分離塔中で、有利に向流原理により実施する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
圧力容器が分離器と連結されており、抽出した芳香物質及び香気物質を有利に圧力低下及び/又は温度上昇により分離する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
炭化水素を循環操作する、請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
有用物質を濃縮するための方法において、>0.1m/g(BET DIN 66131)の大きな内部及び/又は外部表面積を有する固体物質に有用物質を負荷させ、引き続き請求項1から18までのいずれか1項記載の方法を行う、有用物質を濃縮するための方法。
【請求項20】
有用物質の他に、大きな内部及び/又は外部表面積を有する出発物質をも再利用及び/又は後利用する、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
出発物質が触媒又はシリカゲルである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
出発物質がガス洗浄からの担体材料である、請求項20記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【公表番号】特表2007−533427(P2007−533427A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529885(P2006−529885)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005436
【国際公開番号】WO2004/103093
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】