説明

有用発酵物の製造方法

【課題】食品廃棄物(生ごみ)を糖化、発酵させて効率的に有用発酵物を製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】食品廃棄物(生ごみ)を糖化、発酵させて有用発酵物を製造する方法であって、食品廃棄物(生ごみ)に糖化酵素を投入して糖化した後に固液分離し、該固液分離後の濾液は発酵槽に投入して発酵させてエタノールや有機酸を製造するとともに、前記固液分離後の残渣を好気発酵させて蒸発、濃縮、および、乾燥させることにより肥料、飼料等を製造することを特徴とする有用発酵物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品廃棄物(生ごみ)を糖化、発酵させて有用発酵物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品廃棄物(生ごみ)中には、ご飯、パン、麺類などの炭水化物、六単糖、五単糖などが存在し、これをエタノール発酵させて液体燃料であるエタノールを製造するリサイクルシステムが構築できることが知られている。
【0003】
その方法はデンプンなどの糖源を含む有機廃棄物を回収し、糖化することにより単糖化して、エタノール発酵酵母を添加し、数時間から数ヵ月後程度で糖がすべて消費されてから、エタノール発酵液を蒸留してエタノールを分離精製する。
【0004】
炭水化物を利用してエタノールを製造する方法は種々の方法が提案されており、例えば、特許第4038577号公報(下記特許文献1)に記載されている。
【0005】
図1は、従来のエタノール製造方法の処理フローを示す図である。
【0006】
すなわち、食品廃棄物に添加水を加えて糖化し、固液分離を行った後、蒸気により加熱して濃縮、発酵、蒸留することによりエタノールを製造していた。
【0007】
この食品廃棄物(生ごみ)の発酵では水分を含んだ残渣分を減量化させるために、残渣分を好気発酵させて有機分を二酸化炭素へ分解するとともに水分を蒸発させる。
【0008】
しかし、固液分離後の残渣は、易分解性の有機分はメタン化されて多くは存在せず、難分解性の有機分が多く残留しており、あまり発酵が進まないという問題があった。
【0009】
また、高水分可燃性廃棄物の焼却装置に関しては、例えば、特開2005−233594号公報(下記特許文献2)に、焼却炉の廃熱を回収してスチームを発生するボイラと,そのスチームによって駆動されるスチームタービンと、を備えたものであって、廃棄物が、前記スチームタービンから排出されたスチームと間接熱交換することによって乾燥されるよう構成された乾燥器を備えており、且つその乾燥器は、燃焼用空気の少なくとも一部が前記焼却炉へ供給されるに先立って廃棄物と直接接触し、通過するよう構成されることにより、例えば鶏糞等の高水分可燃性廃棄物の焼却に当って、悪臭発生防止、廃熱有効利用及び乾燥能力の点で優れた高水分可燃性廃棄物焼却装置が記載されている。
【0010】
しかし、この特許文献2は、鶏糞等の高水分可燃性廃棄物の焼却プロセスに関するものであり、本発明が対象とする有用発酵物の製造方法には適用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4038577号公報
【特許文献2】特開2005−233594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、食品廃棄物(生ごみ)を糖化、発酵させて効率的に有用発酵物を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載したとおりの下記内容である。
(1)食品廃棄物(生ごみ)を糖化、発酵させて有用発酵物を製造する方法であって、食品廃棄物(生ごみ)に糖化酵素を投入して糖化した後に固液分離し、
該固液分離後の濾液は発酵槽に投入して発酵させてエタノールや有機酸を製造するとともに、
前記固液分離後の残渣を好気発酵させて蒸発、濃縮、および、乾燥させることにより肥料、飼料等を製造することを特徴とする有用発酵物の製造方法。 (2)前記固液分離した残渣に付着した糖分の濃度を、Brix計(屈折計)を用いて測定し、該濃度が2〜5%の範囲になるように前記固液分離における絞り率を調整することを特徴とする請求項1に記載の有用発酵物の製造方法。
【0014】
<作用>
(1)の発明によれば、従来、易分解性の有機物が少なく難分解性の有機分が多かったメタン発酵残渣などの汚泥に対し、酵素を添加して糖化して糖分を製造し、あえて残渣分に残留させることにより、残渣の乾燥速度を速め、乾燥設備のコストを下げるとともに、有機分分解速度を速めることができ、これにより乾燥残渣の量を減らすことができ、コスト負担の大きな残渣処理費を低減することができる。
(2)の発明によれば、固液分離後の残渣に付着した発酵前の糖分の濃度を、Brix計(屈折計)を用いて測定し、該濃度が2〜5%の範囲になるように前記固液分離における絞り率を調整することにより、エネルギー効率等に優れた有用発酵物の製造を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、固液分離後の残渣に付着した糖分を残すことにより、食品廃棄物(生ごみ)を糖化、発酵させて効率的に有用発酵物を製造する方法を提供することができ、具体的には下記のような産業上有用な著しい効果を奏する。
1)固液分離後の残渣に付着した糖分を活用することにより、残渣乾燥速度を速め、乾燥設備のコストを下げるとともに、有機分分解速度を速めることができ、これにより乾燥残渣の量を減らすことができ、コスト負担の大きな残渣処理費が低減される。
2)蒸発部の温度を制御しながら液状の廃棄物を添加することで、液状の廃棄物の処理も行える。
3)運転コスト設備コストの大きな通気用ファンの動力を必要な燃焼空気ファンで引くことにより乾燥コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のエタノール製造方法の処理フローを示す図である。
【図2】本発明の有用発酵物の製造方法の実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態および実施例について図1および図2を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は、従来のエタノール製造方法の処理フローを示す図である。
【0019】
すなわち、食品廃棄物(生ごみ)に添加水を加えて糖化し、固液分離を行った後、蒸気により加熱して濃縮、発酵、蒸留することによりエタノールを製造していた。
【0020】
一般に、食品廃棄物(生ごみ)の糖分は10%程度でその工程は糖化→固液分離→濃縮→発酵→蒸留である。エタノール発酵においては発酵液中のエタノール濃度が9%までは酵母の活動が活発であるが9%を超えると逆に発酵阻害要因となるため発酵液中のエタノールが9%以下となるよう糖分の調整を行っている。この目的で濃縮工程では蒸気により水分を蒸発させて糖濃度を15%で管理している。
【0021】
また、糖分は次式の反応によりエタノールとなりその濃度は糖分量の51%である。
【0022】
C6H12O6→2C2H5OH+2CO2
しかし、固液分離後の残渣は、易分解性の有機分はメタン化されて多くは存在せず、難分解性の有機分が多く残留しており、あまり発酵が進まないという問題があった。
【0023】
図2は、本発明の有用発酵物の製造方法の実施形態を例示する図である。
【0024】
図2に示すように、食品廃棄物1(生ごみ)中のデンプン分を糖化2して、エタノールや有機酸など有用発酵物を生産するプロセスにおいて、糖化酵素を添加することにより、デンプン分を最も分解性の高い糖の状態にすることにより、発酵を促進することができる。
【0025】
また、発酵4の前に固液分離3を行って残渣分を取り除くことにより、残渣分に付着糖分6が残るようにし、付着糖分6がついた残渣分を好気発酵させ、発酵熱温水、蒸気、熱風等により、蒸発、濃縮、および、乾燥させることにより肥料、飼料等を製造することができる。
【0026】
このとき通風用のブロワ9(吸引ファン)には焼却炉・燃焼炉10の燃焼空気ファンなどを用いることにより通風動力を低下させることができ、特にごみ焼却場(ガス化溶融炉)の燃焼空気ファンを利用することが好ましく、運転コスト設備コストの大きな通気用ファンの動力を必要な燃焼空気ファンで引くことにより乾燥コストを低減することができる。
【0027】
また、発酵熱及び水分蒸発力が過剰な場合には、汚水などの水分や含水率の高いものを混合して最適な発酵熱乾燥条件に設定する。
【0028】
食品廃棄物(生ごみ)にはごはんやパンなどのデンプン分や果物などに含まれる果糖成分など種々の糖分が付着しており、これを酵素により糖化した後に、発酵原料としてエタノールや酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸などの有機酸を製造することができる。そこで配管の閉塞や発酵の撹拌などを容易にするために、酵素による糖化後かつ発酵前に固液分離を行い、残渣分に付着糖分がついた残渣分を好気発酵させる。これにより、最も分解性が高い糖分を原料として、多くの好気発酵菌が繁殖し、発酵熱により残渣分の熱を上昇させ、水分の除去が早まる。また、初期に菌が増殖することにより、発酵速度が飛躍的に高まり、糖分以外の有機物の分解が速まる。
【0029】
糖化酵素を加えた食品廃棄物(生ごみ)を例えば遠心分離機を用いて固液分離する。ここで得られる液は糖液濃度が高いため直接発酵槽に投入して発酵させることにより、糖化工程および濃縮工程を省略できることで設備のコンパクト化と加熱に要するエネルギー(蒸気エネルギー)を削減することができる。
【0030】
また、上記固液分離で発生する残渣は炭水化物が主体であるが、固液分離後の残渣の付着糖分濃度が2〜5%になるように、連続式Brix計(屈折計)からなる糖度計7で管理しながら固液分離における絞り率を調整することにより、蒸発、濃縮、および、乾燥させることにより肥料、飼料等を製造することができる。本発明においては、絞り率の調整方法は問わないが、遠心分離式の固液分離装置の場合はその回転数を制御する方法が好ましく、濾過式の固液分離装置の場合は濾過圧力を制御する方法が好ましい。
【0031】
なお、蒸発部の温度を制御しながら液状の廃棄物を添加することで、液状の廃棄物の処理も行える。
【0032】
本発明においては、熱源は問わないが、ガス化溶融炉の発電設備に用いる約200℃の中低温の抽気蒸気を用いることによりエネルギー効率を向上させることができる。
【0033】
また、前記固液分離工程等で固形分として分離した残渣を、好気発酵し、回収した可燃ガスを前記廃棄物処理装置の焼却もしくは溶融熱源、またはエタノールプラントの加熱蒸気源として用いることにより、前記残渣を嫌気状態に保った状態で、食品廃棄物に含まれる微生物(新たに種菌を加えても当然良いが)の働きで、メタンを主成分とする可燃性ガスを回収することができる。この技術は、可溶化された原料を固形分濃度が10%程度で、35℃以上の温度に保持し、タンク内で攪拌することにより微生物の活動が活発化するが、本発明の残渣は既に可溶化しており、蒸留廃水等を添加することにより新たな水・燃料を加えることなく容易に発酵を行うことができる。また、回収したメタン等の可燃性ガスは、隣接した焼却もしくは溶融設備の外部燃料代替として用いることができる。更には、可燃ガスを用いた独立のガスエンジン発電機や、蒸気発生器等を用いることにより、所内の電力や蒸気の一部をまかなうことが可能となる。
【0034】
また、前記蒸留工程で濃縮した回収したエタノールと分離された水溶液を、前記糖化工程に用いる加水液として再利用し、残りの前記廃棄物処理装置の焼却もしくは溶融工程で噴霧処理することにより、廃液を少なくすることができ、更には糖化工程に必要な熱(60℃)をまかなうことができる。また、さらに廃液は有機分を含み処理せずそのまま廃水として流すことはできないが、隣接する焼却炉や溶融炉の高温部分に噴霧することにより、有機分は燃焼無害化することが可能となる。
【0035】
また、エタノール発酵においては食品廃棄物からの糖化液から効率的にエタノール発酵を行うために、発酵工程の入り側に図示されていないBrix計(屈折計)を設置して複数種類の糖分、塩分、SS分(懸濁固形物分)を含む前記糖化液の濃度を測定し、該濃度が規定範囲(好ましくは15〜20%)に収まるように高糖分廃棄物および添加水の投入量をオンラインで調整することにより、材料糖度変動が少なく、添加水分を少なくしてエネルギーロスを低減することによりエネルギー効率に優れたエタノール製造を可能とすることができる。
【0036】
なた、エタノール発酵により糖をエタノールに変換させたあと、そのエタノール発酵液から蒸留器によりエタノールを分離した後、膜分離装置により約99.5%以上の無水エタノールを精製することができる。
【0037】
また、製造したエタノールは消毒液、液体燃料、自動車燃料として利用できる。
【実施例】
【0038】
食品廃棄物(生ごみ)を用い、添加水7tを混合して60℃で糖化し、遠心分離機を用いて固液分離した残渣に付着する糖分濃度をBrix計(屈折計)を用いて測定し、この濃度が2〜5%になるように遠心分離装置の回転数を制御して絞り率を調整し、30℃で発酵させた結果、発酵液量8.2t、製品エタノール量630kgと肥料、飼料、燃料を製造することができ、本発明の効果が確認できた。
【符号の説明】
【0039】
1 食品廃棄物(生ごみ)
2 糖化
3 固液分離
4 発酵
5 有用発酵物
6 付着糖分
7 糖度計
8 蒸発濃縮・乾燥部
9 ブロワ
10 焼却炉・燃焼炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品廃棄物(生ごみ)を糖化、発酵させて有用発酵物を製造する方法であって、食品廃棄物(生ごみ)に糖化酵素を投入して糖化した後に固液分離し、
該固液分離後の濾液は発酵槽に投入して発酵させてエタノールや有機酸を製造するとともに、
前記固液分離後の残渣を好気発酵させて蒸発、濃縮、および、乾燥させることにより肥料、飼料等を製造することを特徴とする有用発酵物の製造方法。
【請求項2】
前記固液分離した残渣に付着した糖分の濃度を、Brix計(屈折計)を用いて測定し、該濃度が2〜5%の範囲になるように前記固液分離における絞り率を調整することを特徴とする請求項1に記載の有用発酵物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−240611(P2010−240611A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94452(P2009−94452)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】