説明

有益な作用物質を含有するコーティングを有する微小突起アレイ

【課題】経皮的に送達されている作用物質の量を高める装置の提供。
【解決手段】角質層を貫通する複数の微小突起10と前記微小突起の少なくとも一部分の上に配置された、最低1種の有益な作用物質と該作用物質以外であって、非還元糖から選択される最低1種の水に可溶性の生物適合性の担体を包含するコーティング50を含んで成り、かつ、微小突起10が角質層中を貫通した後に前記コーティング50が体液との接触状態に置かれる、ことを特徴とする角質層を通して有益な作用物質を送達するための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚を横断する作用物質を投与することおよびその経皮送達を高めることに関する。より具体的には、本発明は、その上に配置された実質的に乾燥したコーティングを有する皮膚を貫通する微小突起を使用して角質層を通して生物学的有効成分を投与するための薬物送達系に関し、ここで有益な作用物質はコーティング内に含有される。微小突起は非常に浅い深さのみ、好ましくは血液を運搬する毛細血管に達するには浅すぎるまで皮膚を貫通する。作用物質の送達は、微小突起が患者の皮膚の最外層(1種もしくは複数)を貫通しかつコーティング中に含有される有効成分を患者の皮膚組織に放出する場合に達成される。
【背景技術】
【0002】
薬物は最も便宜的には経口でもしくは注入によるかのいずれかで投与される。不幸なことに、多くの医薬は経口で投与される場合に完全に無効であるか、もしくは徹底的に低下された有効性のものである。それらは吸収されないかもしくは血流に進入する前に有害に影響を及ぼされるかのいずれかであり、そして従って所望の活性を所有しないからである。経口送達と比較した場合の経皮送達は、消化管の過酷な環境を回避し、胃腸の薬物代謝を迂回し、初回通過効果を低下させ、そして消化器および肝の酵素による可能な不活性化を回避する。逆に、消化管は経皮投与の間に薬物にさらされない。他方、血流中への医薬の直接注入は、投与における医薬の改変のないことを確実にしつつ、困難、不便、苦痛を伴いかつ不快な処置であり、ときに乏しい患者コンプライアンスをもたらす。これはとりわけ、ワクチン接種が一連の注入で筋肉内に送達されなければならない小児のワクチン接種について真実である。
【0003】
これゆえに、原則として、経皮送達は、そうでなければ皮下注入もしくは静脈内注入を介して送達されることを必要とすることができる薬物の投与方法を提供する。
【0004】
「経皮」という語は、局所もしくは全身治療のために皮膚中にもしくは皮膚を通る作用物質(例えば薬物のような治療薬)の送達を意味するために本明細書で使用する。経皮作用物質送達は、受動拡散を介する、ならびに電気(例えばイオントフォレーシス)および超音波(例えばフォノフォレーシス)を包含する他の外的エネルギー源による送達を包含する。薬物は角質層および表皮双方を横断して拡散する一方、無傷の角質層を通る拡散速度はしばしば制限する段階である。多くの化合物が、単純な受動的経皮拡散により達成することができるよりも大きな送達速度を必要とする。注入に比較した場合、経皮的な作用物質送達は関連する疼痛を排除しかつ感染の可能性を低下させる。理論的には、作用物質投与の経皮経路は、多くの治療的タンパク質の送達において有利である可能性がある。タンパク質は胃腸の分解を受けやすく、また、乏しい胃腸の取込みを表すからである。加えて、経皮装置は注入より患者とってより許容できる。しかしながら、医学上有用なペプチドおよびタンパク質の経皮的流動は、しばしば、これらの分子の大きな大きさ/分子量により治療的に有効であるには不十分である。しばしば、送達速度もしくは流動は、所望の効果を生じさせるのに不十分であるか、もしくは、作用物質は標的部位、例えば患者の血流に達する前に分解される。
【0005】
受動的経皮薬物送達系は、一般に、薬物を投与するために受動拡散に頼る一方、能動的経皮薬物送達系は薬物を送達するのに外的エネルギー源(例えば電気)に頼る。受動的経皮薬物送達系はより一般的である。受動的な経皮の系は、薬物が皮膚を通りかつ患者の身体組織もしくは血流中に拡散する、皮膚と接触するよう適合された高濃度の薬物を含有する薬物リザーバを有する。経皮的な薬物の流動は、皮膚の状態、薬物分子の大きさおよび
物理的/化学的特性、ならびに皮膚を横切る濃度勾配に依存する。多くの薬物に対する低い皮膚浸透性のため、経皮送達は制限された応用を有していた。この低浸透性は、主に、脂質二重層により取り巻かれたケラチン線維(ケラチノサイト)で満たされた平坦な死細胞よりなる皮膚の最外層、角質層に帰される。脂質二重層の高度に秩序正しい構造は、角質層に比較的浸透不可能な特徴を賦与する。
【0006】
受動的経皮拡散薬物流動の一般的な一増大方法は、皮膚浸透増強剤で皮膚を前処理すること、もしくは薬物とともに共送達することを必要とする。浸透増強剤は、薬物が送達される身体表面に適用される場合に、それを通る薬物の流量を高める。しかしながら、経皮的タンパク質輸送の増強におけるこれらの方法の効率は、少なくともより大きなタンパク質について、それらの大きさにより制限されている。能動的輸送系は、角質層を通る薬物の流動を補助する外的エネルギー源を使用する。経皮薬物送達のための1つのこうした増強は「電気輸送(electrotransport)」と称される。この機構は、皮膚のような身体表面を通る作用物質の輸送において補助する電流の適用をもたらす電位を使用する。他の能動的輸送系は、外的エネルギー源として超音波(フォノフォレーシス)もしくは熱を使用する。
【0007】
経皮的に送達されている作用物質の量を高めるために、皮膚の最外層を機械的に浸透もしくは混乱させてそれにより皮膚中に経路を創製するための多くの試みもまた存在する。スカリファイヤー(scarifier)として知られる初期のワクチン接種装置は、一般に複数の歯または針を有し、これらを皮膚に適用して、適用の領域を引っ掻くかもしくは小さな切り傷を作成する。ワクチンは、特許文献1に記述されるように、あるいは、特許文献2;もしくは特許文献3もしくは特許文献4に示されかつ記述されるところのスカリファイヤーの歯に塗布されるかもしれない湿らされた液体として、皮膚上に局所的に適用されたかのいずれかであった。スカリファイヤーは、部分的に、非常に少量のワクチンのみが患者を免疫化することにおいて有効であるように皮膚中に送達される必要があるため、皮内ワクチン送達に示唆された。さらに、送達されるワクチンの量はとりわけ決定的に重要であるわけではない。最小量が満足すべき免疫感作ならびに過剰の量を達成するためである。しかしながら、薬物を送達するためのスカリファイヤーの使用における重大な一欠点は、経皮的な薬物の流動および送達される生じる投薬量の決定における困難である。最小量が送達されたかどうかを測定することができないからである。例えば、多くの例において、皮内ワクチン接種装置の皮膚を貫通する歯上に配置される作用物質は、皮膚を貫通する間に歯を離れる。さらに、多くの有益な作用物質は、歯もしくは他の皮膚を貫通する微小突起上に被覆された後に良好な接着特性を有さず、その結果、有益な作用物質は微小突起の表面から容易に取り除かれる。例えば、有益な作用物質の一部分が使用の間に微小突起から取り除かれそして患者に送達されないかもしれず、患者が必要とされる(needed)もしくは必要とされる(required)十分な投薬量を受領しないかもしれない状況をもたらす。また、それを穿刺から逸らさせかつそれに抵抗させる皮膚の弾性(elastic)、弾性(resilient)かつ変形する性質により、小さな貫通要素はしばしば皮膚に均一に穿通せず、かつ/もしくは皮膚穿通に際して作用物質の液体コーティングをぬぐわれる。加えて、皮膚の自己治癒過程により、皮膚中に作成された穿刺もしくはスリットは、角質層からの貫通要素の除去後に閉鎖する傾向があった。従って、皮膚は、穿通に際して小さな貫通要素を被覆する有効成分を除去するよう作用する。さらに、貫通要素により形成される小さなスリットは装置の除去後に迅速に治癒し、従って、貫通要素により創製された通路を通る作用物質の通過を制限し、そして順にこうした装置の経皮的流動を制限する。
【0008】
経皮的薬物送達を高めるために小さな皮膚貫通要素を使用する他の装置は、特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;特許文献10;特許文献11;ならびに特許文献12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、
23、24および25(全部はそっくりそのまま引用することにより組み込まれる)に開示される。これらの装置は皮膚の最外層(すなわち角質層)を貫通するための多様な形状および大きさの貫通要素を使用する。これらの参考文献中に開示される貫通要素は、一般に、パッドもしくはシートのような薄い平坦な部材から垂直に伸長する。貫通要素は、これらの装置のいくつかにおいては極めて小さく、いくつかはわずか約25〜400マイクロメートルの寸法(すなわち微小刃の長さおよび幅)、ならびにわずか約5〜30マイクロメートルの微小刃の厚さを有する。これらの小さな貫通/切断要素は、それを通り高められた経皮的作用物質送達のために、角質層中に相応して小さな微小スリットを作成する。
【0009】
一般に、これらの系は、薬物を保持するためのリザーバ、および装置それ自身の中空の歯によるような角質層を通るリザーバからの薬物を移動するための送達系もまた包含する。こうした装置の一例は特許文献26に開示され、それは液体薬物リザーバを有する。該リザーバは、小さな管状要素を通りかつ皮膚中に液体薬物を押し出すよう加圧しなければならない。これらのような装置の欠点は、加圧式液体リザーバを追加することの追加される複雑さおよび費用、ならびに圧に駆動される送達系の存在による複雑さを包含する。これらの系の別の欠点は、それらが、液体リザーバ内の有益な作用物質の分解による制限された貯蔵寿命を有することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】Rabenauに交付された米国特許第5,847,726号明細書
【特許文献2】Galyに交付された米国特許第4,453,926号明細書
【特許文献3】Charcornacに交付された米国特許第4,109,655号明細書
【特許文献4】Kravitzに交付された米国特許第3,136,314号明細書
【特許文献5】欧州特許出願第0407063A1号明細書
【特許文献6】Godshallらに交付された米国特許第5,879,326号明細書
【特許文献7】Gandertonらに交付された米国特許第3,814,097号明細書
【特許文献8】Grossらに交付された米国特許第5,279,544号明細書
【特許文献9】Leeらに交付された米国特許第5,250,023号明細書
【特許文献10】Gerstelらに交付された米国特許第3,964,482号明細書
【特許文献11】Kravitzらに交付された米国特許再交付第25,637号明細書
【特許文献12】PCT公開第WO 96/37155号明細書
【特許文献13】PCT公開第WO 96/37256号明細書
【特許文献14】PCT公開第WO 96/17648号明細書
【特許文献15】PCT公開第WO 97/03718号明細書
【特許文献16】PCT公開第WO 98/11937号明細書
【特許文献17】PCT公開第WO 98/00193号明細書
【特許文献18】PCT公開第WO 97/48440号明細書
【特許文献19】PCT公開第WO 97/48441号明細書
【特許文献20】PCT公開第WO 97/48442号明細書
【特許文献21】PCT公開第WO 98/00193号明細書
【特許文献22】PCT公開第WO 99/64580号明細書
【特許文献23】PCT公開第WO 98/28037号明細書
【特許文献24】PCT公開第WO 98/29298号明細書
【特許文献25】PCT公開第WO 98/29365号明細書
【特許文献26】第WO 93/17754号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明の装置および方法は、その中に有益な作用物質を含有する固体の実質的に乾燥したコーティングで被覆される複数の微小突起を包含する微小突起アレイを使用して生物学的有効成分を経皮的に送達することにより、これらの制限を克服する。本発明は、角質層中への配備前に有益な作用物質を保護するアモルファスガラス状コーティングで複数の角質層を貫通する微小突起を被覆することによる、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはヒトの角質層を通る、薬理学的有効成分であるかもしれない有益な作用物質を送達するための装置および方法に向けられる。有益な作用物質は、複数の皮膚を貫通する微小突起上の固体のコーティングから送達される場合に有効であるために十分に強力であるように選択される。該コーティングは、好ましくは、微小突起が患者の組織内に配置される場合にコーティングが容易にかつ迅速に溶解して、それにより有益な作用物質を放出するような、十分な水溶解性を有する。さらに、該コーティングは、該アレイの患者組織中への挿入の間に該コーティングが微小突起から取り除かれないように微小突起の表面に十分に接着される。
【0012】
本発明の好ましい一態様は、角質層を通って有益な作用物質を送達するための装置よりなり、該装置は、複数の角質層を貫通する微小突起;および微小突起上に配置される固体コーティング(ここで該固体コーティングは最低1種の有益な作用物質および生物適合性の担体を包含する)を包含する。
【0013】
本発明の別の好ましい態様において、それを通って有益な作用物質を送達するための角質層を通る複数の微小スリットを形成するための装置が提供され、該装置は、支持体から伸長する複数の微小突起(該微小突起は約500マイクロメートル未満の深さまでヒトの皮膚を貫通するよう大きさを決められかつ配置される)、ならびに微小突起上に配置された固体コーティング(ここで該固体コーティングは有益な作用物質および生物適合性の担体を包含する)を包含する。
【0014】
本発明の別の好ましい態様において、それを通って有益な作用物質を送達するための角質層を通る複数の微小スリットを形成するための装置が提供され、該装置は、支持体から伸長する複数の微小突起(該微小突起は約500マイクロメートル未満の深さまでヒトの皮膚を貫通するように大きさを決められかつ配置される)、ならびに微小突起上に配置された固体コーティング(ここで該固体コーティングは有益な作用物質およびアルブミン担体を包含する)を包含する。
【0015】
本発明の別の好ましい態様において、皮膚の角質層を通した有益な作用物質の送達方法が提供され、該方法は、複数の角質層を貫通する微小突起を有する微小突起アレイを提供すること(該微小突起は有益な作用物質および生物適合性の担体を含有する生物適合性のコーティングで被覆される)、ならびに微小突起に予め決められた皮膚部位の角質層を貫通させて、それにより有益な作用物質が皮膚組織中に放出されること、を包含する。
【0016】
本発明の別の好ましい態様において、患者に複数の有益な作用物質を送達するための装置が提供され、該装置は、アレイ中の微小突起上に配置される複数の固体コーティングを含んで成る微小突起アレイを包含する。好ましくは、多様なコーティングがアレイの別個の領域上に配置される。コーティングのそれぞれは生物適合性の担体および異なる有益な作用物質を含有する。該微小突起アレイは、該アレイが皮膚に適用される場合に角質層を通る複数の微小スリットを形成するよう大きさを決められ、形づくられ(shaped)かつ構成された(configured)複数の微小突起を有し、ここで有益な作用物質
が皮膚組織中に送達される。
【0017】
本発明の別の好ましい態様において、患者に複数の有益な作用物質を送達するための装置が提供され、該装置は、アレイ中の微小突起上に配置される複数の固体コーティングを含んで成る微小突起アレイを包含する。好ましくは、多様なコーティングがアレイの別個の領域上に配置される。コーティングのそれぞれはアルブミン担体および異なる有益な作用物質を含有する。該微小突起アレイは、該アレイが皮膚に適用される場合に角質層を通る複数の微小スリットを形成するよう大きさを決められ、形づくられかつ構成された複数の微小突起を有し、ここで有益な作用物質が皮膚組織中に送達される。
【0018】
本発明の別の好ましい態様において、患者に複数の有益な作用物質を送達するための装置が提供され、該装置は、アレイ中の微小突起上に配置される複数の固体コーティングを含んで成る微小突起アレイを包含する。好ましくは、多様なコーティングがアレイの別個の領域上に配置される。コーティングのそれぞれは生物適合性の担体および異なる有益な作用物質を含有する。微小突起アレイは、該アレイが皮膚に適用される場合に角質層を通る複数の微小スリットを形成するよう大きさを決められ、形づくられかつ構成された複数の微小突起を有し、ここで有益な作用物質が皮膚組織中に送達される。
【0019】
本発明の別の好ましい態様において、微小突起アレイ中の微小突起上に固体コーティングを形成するために有用な組成物が提供され、該組成物は有益な作用物質および生物適合性の担体を包含し、ここで該組成物は液体の形態で微小突起に塗布されそして微小突起アレイ上の固体コーティングを形成し、また、ここで該固体コーティングはコーティングの水和に際してコーティングからの有益な作用物質の放出を可能にする。
【0020】
本発明の別の好ましい態様において、微小突起アレイ中の微小突起上に固体コーティングを形成するために有用な組成物が提供され、前記組成物は有益な作用物質およびアルブミン担体を含んで成り、ここで前記組成物は液体の形態で微小突起に塗布されそして前記微小突起アレイ上の固体コーティングを形成し、また、ここで該固体コーティングはコーティングの水和に際してコーティングからの有益な作用物質の放出を可能にする。
【0021】
コーティングの厚さは好ましくは微小突起の厚さ未満であり、より好ましくは、該厚さは50マイクロメートル未満、および最も好ましくは25マイクロメートル未満である。一般に、コーティングの厚さは微小突起の表面にわたって測定される平均の厚さである。コーティングの厚さは、一般に、コーティング液体の複数の被膜を適用することに増大させることができ、被膜を連続する被覆の間に実質的に乾燥させる。
【0022】
微小突起を被覆するための生物適合性の担体は、十分な接着特性を有しかつ有益な作用物質との有害な相互作用を回避するよう選択する。生物適合性の担体は、好ましくはまた良好な溶解性の特性も所有する。最も好ましい生物適合性の担体は、アルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリ硫酸およびポリアミノ酸よりなる群から選択される。有益な作用物質は1000マイクログラムまでの量で有効であるのに十分な生物学的活性を有しなければならない。好ましい有益な作用物質は、強力な薬物、ワクチンおよび脱感作剤よりなる群から選ばれる。
【0023】
コーティングは既知の被覆方法を使用して微小突起に塗布することができる。例えば、微小突起は、生物適合性の担体および有益な作用物質を含有する水性コーティング溶液に浸積することができる。あるいは、コーティングは、噴霧被覆および/もしくは微小流体分散技術により塗布してもよい。より好ましくは、コーティングは、2001年3月16日出願の米国特許出願第60/276,762号明細書(その開示はこれによりそっくりそのまま引用することにより組み込まれる)に開示される装置および方法を使用して塗布
してもよい。
【0024】
本発明の別の局面において、角質層を貫通する微小突起は、シート、好ましくは金属シートから成形され、ここで、微小突起は、シートをエッチングもしくは押抜きすることにより成形され、そしてその後、微小突起はシートの面から折り畳まれもしくは曲げられる。コーティングは微小突起の成形前にシートに塗布することができる一方、好ましくは、コーティングは、微小突起が切断もしくはエッチングされた後、しかしシートの面から折り畳まれる前に塗布する。微小突起がシートの面から折り畳まれもしくは曲げられた後に被覆することがより好ましい。
【0025】
[発明を実施するための形態]
定義:
別の方法で述べられない限り、本明細書で使用される以下の用語は以下の意味するところを有する。
【0026】
「経皮」という用語は、局所もしくは全身治療のために皮膚中へのおよび/もしくは皮膚を通した作用物質の送達を意味する。
【0027】
「経皮的流動」という用語は経皮送達の速度を意味する。
【0028】
本明細書で使用されるところの「共送達すること」という用語は、補充作用物質(1種もしくは複数)を、作用物質が投与される前、作用物質の経皮的流動の前および間、作用物質の経皮的流動の間、作用物質の経皮的流動の間および後、ならびに/もしくは作用物質の経皮的流動の後のいずれかに経皮的に投与することを意味する。加えて、2種もしくはそれ以上の作用物質を微小突起上に被覆して、作用物質の共送達をもたらしてもよい。
【0029】
本明細書で使用されるところの「生物学的有効成分」および「有益な作用物質」という用語は、約1ミリグラム未満、および好ましくは約0.25ミリグラム未満の量で投与される場合に治療上有効である、薬物、ワクチン、脱感作剤、アレルゲンのような作用物質、または薬物、ワクチン、脱感作剤もしくはアレルゲンを含有する物質の組成物もしくは混合物を指す。従って、「生物学的有効成分」および「有益な作用物質」という用語は、非常に低用量で有効である作用物質のみを包含する。これらの用語はとりわけ、強力な薬物、ポリペプチド、タンパク質、脱感作剤、ワクチンおよびアレルゲンを包含する。こうした作用物質の例は、制限なしに、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH類似物(ゴセレリン、リュープロリド、ブセレリン、トリプトレリン、ゴナドレリンおよびナプファレリン、メノトロピン(ウロフォリトロピン(FSH)およびLH)のような)、バソプレシン、デスモプレシン、コルチコトロピン(ACTH)、ACTH(1−24)のようなACTH類似物、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、バソプレシン、デアミノ[Val4、D−Arg8]アルギニンバソプレシン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−10(IL−10)およびグルカゴンのようなポリペプチドおよびタンパク質薬物;フェンタニル、スフェンタニルおよびレミフェンタニルのような鎮痛薬;インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチンおよびジフテリアアクチンのようなワクチンで使用される抗原;ならびにネコ、チリダニ、イヌおよび花粉アレルゲンのような脱感作剤を包含する。
【0030】
「有効量」もしくは「有効率」という用語は、所望の、しばしば有益な結果を遂げるのに必要とされる薬理学的有効成分の量もしくは率を指す。コーティング中で使用される有益な作用物質の量は、所望の結果を達成するための有益な作用物質の有効量を送達するの
に必要な量であることができる。実務において、これは、送達されている特定の有益な作用物質、送達の部位、治療されている病状の重症度、所望の効果(例えば免疫応答の刺激に対する薬理学的効果)、ならびにコーティングから皮膚組織中への作用物質の送達についての溶解および放出の動力学に依存して広範に変動することができる。微小突起上のコーティング中に組込まれかつ本明細書に記述される方法により経皮的に送達される有益な作用物質の有効量の正確な範囲を定義することは実際的でない。しかしながら、一般に、微小突起はコーティングを運搬するための制限された表面積を伴う大きさにされるため、本発明の装置で利用されるこうした作用物質は強力な作用物質と定義する。一般に、所望の治療を達成するために必要とされる作用物質の量は約1ミリグラム未満、より好ましくは約0.25ミリグラム未満である。
【0031】
「微小突起」もしくは「微小刃」という用語は、生存する動物、とりわけヒトの皮膚の角質層を通って下にある表皮層もしくは表皮および真皮層中に貫通もしくは切断するように適合される貫通要素を指す。該貫通要素は、重大な出血を引き起こすことができる深さまで皮膚を貫通すべきでなく、そして、好ましくは、出血を引き起こさない深さまで皮膚を貫通する。典型的には、該貫通要素は500マイクロメートル未満、好ましくは250マイクロメートル未満の刃の長さを有する。微小突起は、典型的には、約5マイクロメートルないし約50マイクロメートルの幅および厚さを有する。微小突起は、針、中空針、刃、ピン、パンチおよびそれらの組合せのような多様な形状に成形してよい。さらに、微小突起は、より多量のコーティングを受領するための手段を含有してよい。例えば、微小突起は、凹み、リザーバ、溝、もしくはコーティングを保持するための類似の幾何学的特徴を含有してよい。
【0032】
本明細書で使用されるところの「微小突起アレイ」という用語は、角質層を貫通するための一列に配置された複数の微小突起を指す。微小突起アレイは、薄いシートから複数の微小突起をエッチングもしくは押抜きすること、ならびに微小突起をシートの面から折り畳むかもしくは曲げて図1およびTrautmanら、米国特許第6,083,196号明細書に示されるもののような形状を形成することにより成形されるかもしれない。微小突起アレイはまた、Zuck、米国特許第6,050,988号明細書に開示されるところの細片(1個もしくは複数)のそれぞれの縁に沿って微小突起を有する1個もしくはそれ以上の細片を成形することによるような、他の既知の様式で成形されるかもしれない。他の微小突起アレイ、およびそれの作成方法は、Godshallら、米国特許第5,879,326号明細書およびKamen、米国特許第5,983,136号明細書に開示される。微小突起アレイはまた、乾燥した薬理学的有効成分を保持する中空針の形態であってもよい。
【0033】
「パターンコーティング」という用語は、微小突起の選択された領域上に作用物質を被覆することを指す。1種以上の作用物質を単一の微小突起アレイ上に被覆してよい。パターンコーティングは、微小ピペット操作(micropipetting)およびインクジェット印刷のような既知の微小流体分散技術を使用して、微小突起に塗布することができる。
【0034】
「コーティング」という用語は生物適合性の担体および有益な作用物質を包含する組成物を指し、ここで、該作用物質は担体内に懸濁もしくは溶解されるかもしれない。コーティングは、その接着特性、その安定化特性、表皮層内で迅速に溶解されるその能力、ならびに微小突起上で実質的に乾燥される場合に可溶性作用物質および不溶性作用物質を保持する無定形のガラス質構造を形成するその能力について選択される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかる、微小突起アレイの一例の一部分の透視図であり;
【図2】本発明にかかる、微小突起上に堆積されたコーティングを伴う図1の微小突起アレイの透視図であり;
【図2A】本発明にかかる、図2中の線2A−2Aに沿ってとられた単一の微小突起10の断面図であり;
【図3】本発明にかかる、微小突起アレイの多様な部分への分割を具体的に説明する微小突起アレイの皮膚近位側の図であり;
【図4】本発明にかかる、異なるコーティングが異なる微小突起に塗布されてよい代替の一態様を具体的に説明する微小突起アレイの側断面図であり;および
【図5】本発明にかかる、接着性の裏打ちを有する微小突起アレイの側断面図である
【0036】
[詳細な記述]
本発明は、それの必要な患者に有益な作用物質を経皮的に送達するための装置を提供する。該装置はそれから伸長する複数の角質層を貫通する微小突起を有する。該微小突起は角質層を通って下にある表皮層もしくは表皮および真皮層に貫通するよう適合されるが、しかし、重大な出血を引き起こすほど深く浸透しない。該微小突起は、有効成分を含有するその上の実質的に乾燥したコーティングを有する。皮膚の角質層を貫通することに際して、該コーティングは体液(細胞内液および間質液のような細胞外液)により溶解され、そして有益な作用物質が放出される。
【0037】
コーティングの溶解および放出の動力学は、薬物の性質、コーティング方法、コーティングの厚さおよびコーティングの組成(例えば、コーティング製剤添加物の存在)を包含する多くの因子に依存することができる。放出の動力学のプロフィルに依存して、被覆された微小突起を、延長された時間の期間(例えば約1時間まで)の間、皮膚と貫通する関係に維持することが必要であるかもしれない。これは、接着剤を使用して皮膚に微小突起アレイを固定することにより、もしくは、第WO 97/48440号明細書(その開示はそっくりそのまま引用することにより組み込まれる)に記述されるもののような固定された微小突起を利用することにより、達成することができる。あるいは、コーティングは迅速に溶解されるかもしれず、その場合、微小突起アレイは、比較的少量の時間(例えば1分未満)の間、皮膚と接触することのみを必要とする。なおさらに、本発明の微小突起アレイは、人的に、もしくは、より好ましくは、2000年10月13日出願の米国特許出願第60/240,307号および2000年10月13日出願の同第60/240,436号明細書(それらの開示はそっくりそのまま引用することにより組み込まれる)に示されかつ記述されるもののようなアプリケーターを使用して、患者の皮膚上に配備してよい。
【0038】
図1は、本発明での使用のための角質層を貫通する微小突起アレイの一態様を具体的に説明する。図1に示されるとおり、微小突起アレイ5の一部分は複数の微小突起10を包含する。該微小突起10は、開口部14を有するシート12から実質的に90度の角度で伸長する。図5に示されるとおり、シート12は、シート12のための裏打ち15を包含する送達貼付剤に組み込まれてよい。裏打ち15は、裏打ち15および微小突起アレイ5を患者の皮膚に接着させるための接着剤16をさらに包含してよい。本態様において、微小突起10は、シート12の面から複数の微小突起10をエッチングもしくは押抜きのいずれかをすることにより成形する。微小突起アレイ5は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金のような金属、もしくはプラスチックのような類似の生物適合性素材から製造してよい。微小突起アレイ5は、好ましくはチタンから構成される。金属の微小突起部材は、Trautmanら、米国特許第6,038,196号明細書;Zuck 米国特許第6,050,988号明細書;およびDaddonaら、米国特許第6,091,975号明細書(それらの開示は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示される。本発明で使用することができる他の微小突起部材は、シリコンをエッチングすることにより、チップエッチング技術を利用することにより、もしくはエッチングされた微小金
型を使用してプラスチックを成形する(molding)ことにより、成形する(formed)。シリコンおよびプラスチックの微小突起部材は、Godshallら、米国特許第5,879,326号明細書(その開示は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示される。
【0039】
図2は、微小突起10が生物適合性のコーティング50で被覆された微小突起アレイ5を具体的に説明する。生物適合性のコーティング50は、微小突起10を部分的にもしくは完全に覆うかもしれない。生物適合性のコーティング50は、微小突起が成形される前もしくは後に微小突起に塗布することができる。
【0040】
微小突起上のコーティング50は、多様な既知の方法により形成させることができる。こうした一方法は浸積被覆である。浸積被覆は、有益な作用物質を含有するコーティング溶液中に微小突起を部分的にもしくは完全に浸積することにより微小突起を被覆するための手段として記述することができる。あるいは、装置全体をコーティング溶液中に浸積することができる。多くの例で、コーティング内の有益な作用物質は非常に高価であるかもしれず、従って、微小突起の先端のみを被覆することが好ましいかもしれない。微小突起の先端を被覆する装置および方法は、2001年3月16日出願のTrautmanら 米国特許出願第60/276,762号明細書(その開示は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示される。上の引用される出願で示されるとおり、該被覆装置は、微小突起それら自身にのみコーティングを塗布し、そしてそれから微小突起が突き出る支持体/シート上に塗布しない。これは、有益な作用物質の費用が比較的高く、そして従って有益な作用物質を含有するコーティングを、患者の角質層の下に貫通することができる微小突起アレイの部分上にのみ配置するべきである場合に、望ましいかもしれない。この被覆技術は、皮膚貫通の間に微小突起から容易に取り除かれない滑らかなコーティングを自然に形成するという付加される利点を有する。微小突起先端のコーティングの滑らかな断面を、図2Aにより明瞭に示す。微小流体噴霧もしくは印刷技術のような他のコーティング技術を使用して、図2に示されるところの微小突起10の先端上にコーティング18を正確に堆積する(deposit)ことができる。微小突起10は、開口(示されない)、溝(示されない)、表面の不規則性(示されない)もしくは類似の改変のような、コーティング18を受領かつ/もしくはこの容積を増大させるよう適合された手段をさらに包含してよく、ここで、該手段は、より多量のコーティングが堆積されるかもしれない増大された表面積を提供する。
【0041】
他の被覆方法は微小突起上にコーティング溶液を噴霧することを包含する。噴霧することは、コーティング組成物のエアゾル懸濁液の形成を包含することができる。好ましい一態様において、約10ないし約200ピコリットルの液滴の大きさを形成するエアゾル懸濁液を微小突起上に噴霧し、そしてその後乾燥する。
【0042】
今や図3および4を参照すれば、本発明の代替の一態様が示される。図3に示されるとおり、微小突起アレイは60−63に具体的に説明される部分に分割してよく、ここで、異なるコーティングを各部分に塗布し、それにより、単一の微小突起アレイが使用の間に1種以上の有益な作用物質を送達するよう利用されることを可能にする。今や図4を参照すれば、複数の微小突起10を包含する微小突起アレイ5の断面図が示され、ここで、「パターンコーティング」が微小突起アレイ5に塗布されている。示されるとおり、微小突起10のそれぞれは、参照数字61−64により示されるところの異なる生物適合性のコーティングで被覆されてよい。すなわち、別個のコーティングが個々の微小突起10に塗布される。該パターンコーティングは、微小突起アレイの表面上に堆積される液体の位置決め(positioning)のための分注系を使用して塗布することができる。堆積される液体の量は、好ましくは微小突起あたり0.1ないし20ナノリットルの範囲にある。適する正確に計量される液体分注器の例は、Tisone、米国特許第5,916,
524号;同第5,743,960号;同第5,741,554号および同第5,738,728号明細書(それらの開示は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示される。微小突起コーティング溶液はまた、既知のソレノイド弁分注器を使用するインクジェット技術、任意の流体動因手段(fluid motive means)、および電場の使用により全般に制御される位置決め手段を使用しても塗布することができる。印刷工業、もしくは当該技術分野で既知の類似の液体分注技術からの他の液体分注技術を、本発明のパターンコーティングを適用するために使用することができる。示されるとおり、微小突起10のそれぞれは、参照数字61−64により示されるとおり、異なる生物適合性のコーティングで被覆されてよい。
【0043】
本発明で使用される固体コーティングを形成するために微小突起に塗布される液体組成物は、生物適合性の担体および有益な作用物質を包含する液体組成物である。該作用物質は生物適合性の担体内に溶解してよいか、あるいは、該作用物質は担体内に懸濁してよい。固体コーティング中の有益な作用物質に対する生物適合性の担体の比は、約0.2:1重量/重量から約5:1重量/重量まで、好ましくは約0.5:1ないし約2:1重量/重量の範囲にわたってよい。生物適合性の担体は、ヒトアルブミン、生物工学的に作られた(bioengineered)ヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリ硫酸およびポリアミノ酸よりなる群から選んでよい。上の一覧は単に例示的であり、そしていかなる様式でも制限するとみなされるべきでなく、列挙されない他の生物適合性の担体を利用してよいことを企図している。既知の補助物質を、コーティングの質を高めるために生物適合性の担体に添加してよい。コーティングが実質的に乾燥される場合にそれがアモルファスガラス状物質を形成するような生物適合性の担体を選ぶ。なおさらに、生物適合性の担体はその接着特性について選ぶ。すなわち、実質的に乾燥している場合に、コーティングは微小突起から容易に取り除かれない。本発明のコーティングは、乏しい水安定性を有する有益な作用物質が、安定な様式で微小突起上に固体コーティングとして保持されることを可能にする。従って、乏しい水安定性を有する有益な作用物質を微小突起アレイ上に塗布してよく、ここで、微小突起アレイは後の時間の使用のために貯蔵所に置くことができる。なおさらに、生物適合性の担体は、好ましくは、微小突起アレイを角質層内に配置しかつ水性の体液(例えば表皮中で)と接触させる場合に有益な作用物質が迅速に送達されるような良好な水溶解性の特性を表す。微小突起コーティングからの有益な作用物質の送達の速度は、固体の生物適合性の担体が良好な水溶解性を有する場合に高められる。こうした場合には、コーティングは皮膚貫通に際して迅速に溶解され、それにより有益な作用物質を放出する。この能力は、患者が有益な作用物質、とりわけワクチンおよび/もしくは抗原の形態のものに対するアレルギー反応の兆候を表している場合に医師が迅速に決定することを可能にする。
【0044】
コーティングの厚さは、単位面積あたりの微小突起の密度ならびにコーティング組成物の粘度および濃度、ならびに選ばれたコーティング方法に依存する。一般に、コーティングの厚さは50マイクロメートル未満でなければならない。より厚いコーティングは、角質層を貫通することに際して微小突起の脱落の傾向を有するからである。好ましい平均のコーティングの厚さは、微小突起表面から垂直に測定される際に30マイクロメートル未満である。一般に、平均のコーティングの厚さは微小突起アレイの被覆された部分全体にわたって測定する。より好ましくは、コーティングの厚さは約1マイクロメートルないし約10マイクロメートルである。
【0045】
コーティングとともに利用される有益な作用物質は、約1ミリグラムもしくはそれ未満、好ましくは約0.25ミリグラムもしくはそれ未満の用量を必要とする高効力の作用物質である。この範囲内の有益な作用物質の量を、図1に示される型の微小突起アレイ上に被覆することができる。こうした微小突起アレイは、10平方センチメートルまでの面積、および、シート1平方センチメートルあたり500個の微小突起までの微小突起密度を
有するかもしれない。
【0046】
微小突起を被覆するのに使用される液体組成物は、生物適合性の担体、送達されるべき有益な作用物質、および場合によってはいずれかのコーティング補助物質を揮発性液体と混合することにより調製する。揮発性液体は、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エタノール、イソプロピルアルコールおよびそれらの混合物であることができる。これらの中で水が最も好ましい。液体のコーティング溶液もしくは懸濁液は、典型的には、約1ないし30重量%の有益な作用物質濃度を有することができる。コーティングは、微小突起アレイ上に堆積された後に、風乾、真空乾燥、凍結乾燥および/もしくはそれらの組合せのような既知の乾燥方法を利用して乾燥する。「乾燥された」という用語は揮発性液体を実質的に含まないことを意味することが理解されるべきである。水性のコーティング溶液もしくは懸濁液の場合には、コーティングは典型的に若干の水分を保持し、より典型的には、コーティングは、微小突起アレイを取り巻く雰囲気と平衡にある水分含量を保持する。従って、当業者は、「乾燥した」コーティングが無水である必要がないことを認識するであろう。あるいは、コーティングは無水でありそして従って水を含有しなくてもよい。
【0047】
他の既知の製剤補助物質は、それらがコーティングの必要な溶解性および粘度の特徴ならびに乾燥されたコーティングの物理的完全性に有害に影響を及ぼさない限りは、コーティングに添加してもよい。
【0048】
記述されたところの被覆された微小突起アレイを、上述されたところのワクチンを送達するのに利用してよい。被覆された微小突起は、脱感作処置もしくはアレルギー試験のためにアレルゲンを送達させるのに利用してよいこともまた企図している。例えば、多くの人々が複数のアレルゲン(すなわちチリダニ、ネコ、イヌ、花粉など)に対するアレルギーを発生する。
【0049】
代替の一態様において、生物適合性の担体は、ショ糖、トレハロース、メレジトース、ラフィノース、スタキオースよりなる群から選んでもよい。加えて、上のいずれも、ヒトアルブミンの生物適合性の担体に添加してよい。
【0050】
以下の実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解しかつ実施することを可能にするために示す。それらは本発明の範囲を制限するとみなされるべきでなく、しかし、単にその代表であるとしてみなされるべきである。
【実施例1】
【0051】
ヒトアルブミン乾燥薄膜
チタン微小突起上に固体コーティングを形成する水性アルブミン溶液の能力を試験するために、被覆された微小突起アレイを以下の様式で製造した。ヒトアルブミンをモデル生物適合性担体として利用した(シグマ(Sigma)、画分(Fraction)V)。40、20および10重量パーセントのヒトアルブミンを含有する溶液を滅菌水中で調製した。これらの溶液のアリコートに、フルオレセイン(乾燥されたコーティングの後の可視化のため添加されるマーカー)を、1ミリモル濃度の最終濃度で添加した。この溶液の1マイクロリットルの一滴を、約1平方センチメートルの面積を有するチタン箔上に広げた。該溶液を室温で約1時間乾燥させた。蛍光顕微鏡検査は、コーティングが、乾燥している場合にアモルファスガラス状の表面を形成したことを示した。乾燥薄膜の水中での再溶解は迅速かつ完全であった。
【0052】
粒子懸濁液
微細な粒子の形態の薬物代理物(drug surrogate)を含有するコーティ
ングを有する微小突起アレイを以下の様式で製造した。40重量パーセントのヒトアルブミン溶液を水中で調製した。この溶液50マイクロリットルに、50マイクロリットルの0.5マイクロメートル蛍光ビーズ(すなわち薬物代理物)の20重量パーセントの懸濁液を添加した。この懸濁液の1マイクロリットルの一滴を、およそ1平方センチメートルの面積を有するチタン箔上に広げ、そして室温で約1時間風乾させた。この懸濁液50マイクロリットルを、微小突起アレイ上にもまた広げかつ送風乾燥した。蛍光顕微鏡検査は、蛍光ビーズがアルブミンマトリックス中に均一に分散されたこと、および微小突起アレイのコーティングが有効であったことを立証した。ヒトアルブミンを用いて調製されたコーティングは、この高粒子濃度でガラス様の特性を有した。加えて、該粒子は再水和後に容易に解放された(freed)。類似の実験を、多様な大きさ(0.02から0.5マイクロメートルまでの範囲にわたる)の蛍光ビーズを用いて実施した。最終ビーズ濃度は20重量パーセントであり、また、ヒトアルブミンは1重量パーセントであった。同様に、顕微鏡検査は、蛍光ビーズがアルブミンの乾燥したコーティング中に均一に分散されることを示した。場合のそれぞれで、粒子は再水和後に乾燥したコーティングから容易に解放された。対照的に、0.5マイクロメートルの蛍光ビーズの10重量パーセント懸濁液を水中で調製し、そしてチタン箔上に該懸濁液を塗布するための試みを行った場合、広がりは非常に乏しく、かつ、乾燥した後にコーティングは非常に不均質であることが見出された。
【実施例2】
【0053】
シクロスポリンA(CSA)懸濁液
被覆された微小突起アレイを以下の様式で製造した。CSAは治療薬で使用される水不溶性ペプチド薬物(1200ダルトンの分子量)である。10ミリグラムのCSAを乾燥粉砕した。この粉末に、90マイクロリットルの20重量パーセントヒトアルブミン溶液を添加しかつ均質化して、水中でCSA粉末を調製した。この懸濁液に、フルオレセイン(後の可視化のため添加されるマーカー)を1ミリモル濃度の最終濃度で添加した。この懸濁液の1マイクロリットルの一滴を、1平方センチメートルの面積を有するチタン箔上に広げ、そして室温で約1時間乾燥させた。蛍光顕微鏡検査は、CSA粒子がアルブミンマトリックス中に均一に分散されたことを立証した。1マイクロメートルから25マイクロメートルまでの範囲にわたるCSA粒子は、再水和後に容易に解放された。
【実施例3】
【0054】
可溶性薬物
ヒトアルブミンの40重量パーセント溶液を水中で調製した。この溶液50マイクロリットルに、50マイクロリットルのリドカイン塩酸塩の40重量パーセント水性溶液を添加した。アルブミンを含有しない対照溶液もまた調製した。これらの溶液の1マイクロリットルの一滴を、およそ1平方センチメートルの面積を有するチタン箔上に広げた。溶液を室温で約1時間風乾させた。検査は、アルブミン/リドカイン混合物の乾燥薄膜がガラス質のアモルファス表面を形成したことを示した。水中でのコーティングの再溶解は迅速かつ完全であった。対照的に、リドカイン溶液は、後の貯蔵に不適の非常に吸湿性の薄膜を形成した。
【0055】
20重量%ヒト成長ホルモン(20重量%hGH)および20重量%ショ糖を含有する水性溶液を調製した。微小突起アレイ(微小突起長さ250μm、アレイあたり595個の微小突起)は皮膚接触面積2cmを有した。該微小突起の先端は、該アレイを2001年3月16日出願の米国特許出願第60/276,762号明細書に開示される方法および装置を使用してhGH/ショ糖溶液を運搬する回転するドラム上を通過させることにより、本溶液で被覆した。4回の連続する被覆を各微小突起アレイ上で4℃で実施した。アレイ上に被覆されるタンパク質の量を総タンパク質アッセイにより評価した。平均で9.5±0.9μgのhGHがアレイあたりに被覆された。走査型電子顕微鏡検査は、コー
ティングの微小突起間の良好な均一性を示し、コーティングは微小突起先端の最初の100μmに制限された。微小突起それ自身上で、コーティングは不均一に分布されて見出された。固体コーティングの大部分は、微小突起の被覆された領域の面の幾何学的中心上に中心を決められた頂点に配置されたようであった。真空チャンバー中での2日の貯蔵後に、固体コーティングは、割れの非存在を伴う非常に滑らかな表面を提示し、そして微小突起に非常にきつく接着することが立証された。コーティングの最大の測定された厚さは約4μmであった一方、被覆された領域全体にわたる平均の計算された厚さはわずか約1.7μmであった。全体として、該コーティングは、皮膚中への微小突起の穿通に対する最小限の影響および穿通の間の微小突起からの薬物の最小限の除去と矛盾しない、良好な空気力学および良好な接着を提示した。
【0056】
hGHで先端被覆されたアレイのいくつかを、その後、無毛モルモットでの薬物送達研究に使用した。被覆された微小突起アレイの適用は、ばねで駆動される衝撃アプリケーター、もしくは2000年10月13日出願の米国特許出願第60/240,307号明細書に開示される型を使用する衝撃アプリケーター(総エネルギー=0.4ジュール、10ミリ秒未満で送達される)を使用して行った。アレイは、3匹の動物の群で、適用後5秒、5分もしくは1時間、皮膚上に残した。血液を、ELISAによる血漿hGH測定のための時間間隔で収集した。該結果は、hGH送達が全部の装着時間(wearing time)で同一であったことを示した。平均して、5μgのhGHが各動物で送達され、これは被覆された用量のおよそ50%に相当する。微小突起送達からの生物学的利用率が皮下投与のもの(65%)に類似であったと仮定すれば、被覆された用量の約80%が皮膚中に送達された。加えて、皮下注入と比較して、より迅速な発生が微小突起投与後に観察された(それぞれ60分および30分のtmax;それぞれ5ng/mLおよび13ng/mLのCmax)。最後に、5分の装着時間群は最小のCV(30%)を有し、これは皮下注入後に観察されたもの(50%)よりなおより小さい。
【0057】
[発明の主たる態様]
以下、本発明の主たる態様または特徴を挙げる。
態様1:角質層を貫通する複数の微小突起と前記微小突起の少なくとも一部分の上に配置された、最低1種の有益な作用物質および最低1種の水に可溶性の生物適合性の担体を包含するコーティングを含んで成り、かつ、微小突起が角質層中を貫通した後に前記コーティングが体液との接触に置かれる、角質層を通して有益な作用物質を送達するための装置。
態様2:最低1種の生物適合性の担体がヒトアルブミンである、態様1記載の装置。
態様3:最低1種の生物適合性の担体が生物工学的に作られたヒトアルブミンである、態様1記載の装置。
態様4:コーティングが水性溶液もしくは懸濁液として微小突起に塗布される、態様1記載の装置。
態様5:コーティングがアモルファスガラス形態にある、態様1記載の装置。
態様6:最低1種の有益な作用物質が最低1種の生物適合性の担体中に懸濁される、態様1記載の装置。
態様7:最低1種の生物適合性の担体が、ポリアミノ酸、多糖およびオリゴ糖よりなる群から選ばれる最低1種の担体を包含する、態様1記載の装置。
態様8:最低1種の有益な作用物質が、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、多糖、オリゴ糖、オリゴヌクレオチドおよびDNAよりなる群から選択される、態様1記載の装置。
態様9:最低1種の有益な作用物質が、ワクチンおよび脱感作剤よりなる群から選択される、態様1記載の装置。
態様10:最低1種の生物適合性の担体が、ヒトアルブミン、デキストラン硫酸、ペントサンポリ硫酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジンおよび非還元糖
よりなる群から選択される、態様1記載の装置。
態様11:全部の有益な作用物質に対する全部の生物適合性の担体の比が、約0.2:1から約5:1重量/重量までの範囲にわたる、態様1記載の装置。
態様12:全部の有益な作用物質に対する全部の生物適合性の担体の比が、約0.5:1から約2:1重量/重量までの範囲にわたる、態様1記載の装置。
態様13:最低1種の有益な作用物質が最低1種の生物適合性の担体中に懸濁され、かつ、最低1種の生物適合性の担体が、最低1種の有益な作用物質を微小突起上に保持するための接着剤として機能する態様1記載の装置。
態様14:最低1種の生物適合性の担体が、最低1種の有益な作用物質を微小突起上に保持するための接着剤として機能する、態様1記載の装置。
態様15:微小突起の最低1部分がコーティングを保持するよう適合された手段をさらに包含する、態様1記載の装置。
態様16:コーティングを保持するよう適合された手段が、微小突起中に形成された開口を包含する、態様15記載の装置。
態様17:コーティングを保持するよう適合された手段が、微小突起上に配置される最低1個の溝を包含する、態様15記載の装置。
態様18:コーティングが約50マイクロメートル未満の厚さを有する、態様1記載の装置。
態様19:コーティングが約25マイクロメートル未満の厚さを有する、態様1記載の装置。
態様20:コーティングが約1.0マイクロメートルと約10マイクロメートルとの間の厚さを有する、態様1記載の装置。
態様21:最低1種の生物適合性の担体が最低1種の有益な作用物質を安定化する、態様1記載の装置。
態様22:最低1種の生物適合性の担体がポリアミノ酸である、態様1記載の装置。
態様23:微小突起が角質層を通って表皮中に達する、態様1記載の装置。
態様24:コーティング中の最低1種の生物適合性の担体が水に可溶性である、態様1記載の装置。
態様25:コーティングが体液中に可溶性である、態様1記載の装置。
態様26:コーティングが複数の有益な作用物質を含んで成る、態様1記載の装置。
態様27:複数の有益な作用物質のそれぞれが、複数の微小突起の別個の部分上にあるコーティング上に包含される、態様26記載の装置。
態様28:微小突起アレイ中の微小突起上の固体コーティングを形成するのに有用な組成物であって、前記組成物は有益な作用物質および生物適合性の担体を含んで成り、前記組成物は液体の形態で微小突起に塗布されそして前記微小突起アレイ上で固体コーティングを形成し、かつ、前記固体コーティングはコーティングの水和に際して該コーティングからの有益な作用物質の放出を可能にする組成物。
態様29:最低1種の生物適合性の担体がヒトアルブミンである、態様28記載の組成物。
態様30:最低1種の生物適合性の担体が生物工学的に作られたヒトアルブミンである、態様28記載の組成物。
態様31:組成物が水性溶液もしくは懸濁液として微小突起に塗布される、態様28記載の組成物。
態様32:組成物がアモルファスガラス形態を有するコーティングを形成する、態様28記載の組成物。
態様33:最低1種の有益な作用物質が最低1種の生物適合性の担体中に懸濁される、態様28記載の組成物。
態様34:最低1種の生物適合性の担体が、ポリアミノ酸、多糖およびオリゴ糖よりなる群から選ばれる最低1種の担体を包含する、態様28記載の組成物。
態様35:最低1種の有益な作用物質が、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、多糖、
オリゴ糖、オリゴヌクレオチドおよびDNAよりなる群から選択される、態様28記載の組成物。
態様36:最低1種の有益な作用物質が、ワクチンおよび脱感作剤よりなる群から選択される、態様28記載の組成物。
態様37:最低1種の生物適合性の担体が、ヒトアルブミン、デキストラン硫酸、ペントサンポリ硫酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジンおよび非還元糖よりなる群から選択される、態様28記載の組成物。
態様38:全部の有益な作用物質に対する全部の生物適合性の担体の比が、約0.2:1から約5:1重量/重量までの範囲にわたる、態様28記載の組成物。
態様39:全部の有益な作用物質に対する全部の生物適合性の担体の比が、約0.5:1から約2:1重量/重量までの範囲にわたる、態様28記載の組成物。
態様40:最低1種の有益な作用物質が最低1種の生物適合性の担体中に懸濁され、かつ、最低1種の生物適合性の担体が、微小突起上の最低1種の有益な作用物質に対する接着剤として機能する、態様28記載の組成物。
態様41:最低1種の生物適合性の担体が、最低1種の有益な作用物質を微小突起上に保持するための接着剤として機能する、態様28記載の装置。
態様42:組成物が、約50マイクロメートル未満の厚さを有するコーティングに形成されることが可能である、態様28記載の組成物。
態様43:組成物が、約25マイクロメートル未満の厚さを有するコーティングに形成されることが可能である、態様28記載の組成物。
態様44:組成物が、約1.0マイクロメートルと約10マイクロメートルとの間の厚さを有するコーティングに形成されることが可能である、態様28記載の組成物。
態様45:最低1種の生物適合性の担体が最低1種の有益な作用物質を安定化する、態様28記載の組成物。
態様46:最低1種の生物適合性の担体がポリアミノ酸である、態様28記載の組成物。態様47:コーティング中の最低1種の生物適合性の担体が水に可溶性である、態様28記載の組成物。
態様48:組成物が体液中に可溶性であるコーティングを形成することが可能である、態様28記載の組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角質層を貫通する複数の微小突起と
前記微小突起の少なくとも一部分の上に配置された、最低1種の有益な作用物質と該作用物質以外であって、非還元糖から選択される最低1種の水に可溶性の生物適合性の担体を包含するコーティングを含んで成り、かつ、
微小突起が角質層中を貫通した後に前記コーティングが体液との接触状態に置かれる、
ことを特徴とする角質層を通して有益な作用物質を送達するための装置。
【請求項2】
非還元糖がショ糖、トレハロース、メレジトース、ラフィノースおよびスタキオースよりなる群から選択される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
最低1種の有益な作用物質がタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、多糖、オリゴ糖、オリゴヌクレオチドおよびDNAよりなる群から選択される、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
最低1種の有益な作用物質がヒト成長ホルモンである、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
コーティングが1.0マイクロメートルと10マイクロメートルとの間の厚さを有する、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
最低1種の有益な作用物質が福甲状腺ホルモンである、請求項1〜3および5のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−172968(P2011−172968A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103757(P2011−103757)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【分割の表示】特願2002−583020(P2002−583020)の分割
【原出願日】平成14年4月20日(2002.4.20)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】