説明

有糸分裂キネシン阻害剤

本発明は細胞増殖性疾患の治療、KSPキネシン活性と関連する障害の治療、およびKSPキネシンの阻害などに有用なジヒドロピラゾール化合物に関する。また、本発明はこれらの化合物を含有してなる組成物、および哺乳動物での癌の治療にそれらを使用する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有糸分裂キネシン、とりわけ有糸分裂キネシンKSPの阻害剤であり、細胞増殖性疾患、例えば、癌、過形成、再狭窄、心臓肥大、免疫障害および炎症の治療に有用な4,5−ジヒドロピラゾール誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療に使用されている治療薬には、タキサンおよびビンカアルカロイドがある。タキサンおよびビンカアルカロイドは様々な細胞構造中に存在する微小管に作用する。微小管は有糸分裂紡錐体の一次構造エレメントである。有糸分裂紡錐体は細胞分裂の結果生じる2つの娘細胞のそれぞれに、ゲノムの複製コピーを配分する役割を担う。これらの薬物による有糸分裂紡錐体の破壊により、癌細胞分裂が阻害され、また癌細胞死が誘発されると推定される。しかし、微小管は、神経プロセスにおける細胞内輸送の進路などを含む、他の型の細胞構造を形成する。これらの薬剤は、有糸分裂紡錐体を特異的に標的とするものではないので、その有用性を制限する副作用を示す。
【0003】
もしこれらの薬剤の投与と関連する副作用が軽減されるなら、治療上の有益性が現実のものとなるので、癌の治療に使用する薬剤の特異性改善が、少なからぬ興味の対象となる。伝統的に、癌の治療における劇的な改善は、新しいメカニズムを介して作用する治療薬の同定と関係がある。この例はタキサンに限らず、トポイソメラーゼI阻害剤のカンプトテシン類にもあてはまる。これらそれぞれのもの双方を含め、有糸分裂キネシンは新しい抗癌剤の魅力的な標的である。
【0004】
有糸分裂キネシンは有糸分裂紡錐体の集合と機能に必須の酵素であるが、一般に、神経プロセスなど、他の微小管構造の部分ではない。有糸分裂キネシンは有糸分裂のすべての期において本質的な役割を果たしている。これらの酵素はATPの加水分解により放出されたエネルギーを機械的力に変換する「分子モーター」であり、その機械的力が微小管に沿って細胞のカーゴ(cargo)を決まった方向に動かす駆動力となる。この作業にとって十分な触媒ドメインは、約340個のアミノ酸からなるコンパクトな構造である。有糸分裂に際し、キネシンは微小管を双極性構造に編成するが、その構造が有糸分裂紡錐体である。キネシンは紡錐体微小管に沿う染色体の動き、ならびに特異的有糸分裂期と関連する有糸分裂紡錐体の構造的変化に介在する。
【0005】
有糸分裂キネシン機能の実験的摂動(experimental perturbation)により、有糸分裂紡錐体の形成異常または機能不全の原因となり、それが度々細胞周期の停止および細胞死を惹き起こす。
KSPは同定された有糸分裂キネシンの一つである。KSPは逆平行ホモダイマーからなる双極性ホモテトラマーに組み込まれたプラス端方向性(plus end−directed)微小管モーターの進化の過程で保存されたキネシンのサブファミリーに属する。有糸分裂に際して、KSPは有糸分裂紡錐体の微小管と会合する。ヒト細胞にKSPに対する抗体をマイクロインジェクションすると、分裂前中期の紡錘体の極分離が防止され、単極紡錘体が生じ、かつ有糸分裂停止とプログラムされた細胞死の誘発を招く。他の非ヒト生物におけるKSPと関連するキネシンは、逆平行微小管を束ね、互いに呼応してそれらを動かし、それによって2つの紡錘体極を引き離す。KSPはまた分裂後期B紡錘体の伸張と微小管を紡錘体極に集中させることに関わっている。
【0006】
ヒトKSP(HsEg5とも呼称する)については文献に記載がある[Blangy,et al.,Cell,83:1159−69(1995);Whitehead,et al.,Arthritis Rheum.,39:1635−42(1996);Galgio et al.,J.Cell Biol.,135:339−414(1996);Blangy,et al.,J Biol.Chem.,272:19418−24(1997);Blangy,et al.,Cell Motil Cytoskeleton,40:174−82(1998);Whitehead and Rattner,J.Cell Sci.,111:2551−61(1998);Kaiser,et al.,JBC274:18925−31(1999);ジェンバンク寄託番号:X85137、NM004523およびU37426];また、KSP遺伝子(TRIP5)のフラグメントについては以下に記載がある[Lee,et al.,Mol Endocrinol.,9:243−54(1995);ジェンバンク寄託番号L40372]。アフリカツメガエルのKSP相同体(Eg5)ならびにショウジョウバエK−LP61F/KRP130についても報告がある。
【0007】
最近、ある種のジヒドロピラゾール類およびジヒドロピロール類が、KSPの阻害剤として記載された[PCT公開WO2003/079973(2003.10.2)、WO2003/106417(2003.12.24)、WO2003/105855(2003.12.24)、WO2004/037171(2004.5.6)、およびWO2004/058148(2004.7.15)]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有糸分裂キネシンは新しい有糸分裂化学療法剤の発見と開発にとって魅力的な標的である。従って、本発明の目的は有糸分裂キネシン、KSPの阻害に有用な化合物、方法および組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要約
本発明は細胞増殖性疾患の治療、KSPキネシン活性と関連する障害の治療、およびKSPキネシンを阻害するために有用である4,5−ジヒドロピラゾール誘導体に関する。本発明化合物は式Iで示すことができる:
【0010】
【化1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の詳細な記述
本発明は有糸分裂キネシンの阻害に有用であり、式I:
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、
aは0または1である;
bは0または1である;
mは0、1、または2である;
nは0または1である;
pは0、1、2または3である;
qは0、1、または2である;
uは1、2、3、4または5である;
【0014】
は、
1)(C−Cアルキレン)n(C=X)O−C10アルキル、
2)(C−Cアルキレン)n(C=X)Oアリール、
3)(C−Cアルキレン)n(C=X)O−C10アルケニル、
4)(C−Cアルキレン)n(C=X)O−C10アルキニル、
5)(C−Cアルキレン)n(C=X)O−Cシクロアルキル、
6)(C−Cアルキレン)n(C=X)Oヘテロシクリル、
7)(C−Cアルキレン)n(C=X)NRc’
8)(C−Cアルキレン)nSONRc’
9)(C−Cアルキレン)nSO−C10アルキル、
10)(C−Cアルキレン)nSO−C10アルケニル、
11)(C−Cアルキレン)nSO−C10アルキニル、
12)(C−Cアルキレン)nSO−アリール、
13)(C−Cアルキレン)nSO−ヘテロシクリル、
14)(C−Cアルキレン)nSO−C−Cシクロアルキル、
15)アリール;
16)ヘテロシクリル;および
17)C−C10アルキルから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、へテロアリールおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
【0015】
は、
1)(C=O)−C10アルキル、
2)(C=O)アリール、
3)COH、
4)ハロ、
5)CN、
6)OH、
7)O−Cペルフルオロアルキル、
8)O(C=O)NR10
9)S(O)
10)S(O)NR10、および
11)S(Rから独立して選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよい;
【0016】
およびRは、独立して、
1)H、
2)C−C10アルキル、
3)アリール、
4)C−C10アルケニル、
5)C−C10アルキニル、
6)C−Cペルフルオロアルキル、
7)C−Cアラルキル、
8)C−Cシクロアルキル、
9)ヘテロシクリル、および
10)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アラルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;または
同一の炭素原子に結合したRおよびRは、一緒になって、−(CH)u−を形成し、その場合、炭素原子の1個がO、S(O)m、−N(R)C(O)−、および−N(COR10)−から選択される部分で置換されてもよい;
【0017】
は、
1)H、
2)C−C10アルキル、
3)アリール、
4)C−C10アルケニル、
5)C−C10アルキニル、
6)C−Cペルフルオロアルキル、
7)C−Cアラルキル、
8)C−Cシクロアルキル、
9)ヘテロシクリル、および
10)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アラルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
【0018】
は、
1)水素、
2)(C=O)−C10アルキル、
3)(C=O)アリール、
4)COH、
5)ハロ、
6)CN、
7)OH、
8)O−Cペルフルオロアルキル、
9)O(C=O)NR10
10)S(O)
11)S(O)NR10、および
12)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよい;
【0019】
は、
1)(C=O)−C10アルキル、
2)(C=O)アリール、
3)C−C10アルケニル、
4)C−C10アルキニル、
5)(C=O)ヘテロシクリル、
6)COH、
7)ハロ、
8)CN、
9)OH、
10)O−Cペルフルオロアルキル、
11)O(C=O)NR10
12)S(O)
13)S(O)NR10
14)オキソ、
15)CHO、
16)(N=O)R10
17)(C=O)−Cシクロアルキル、または
18)Si(Rである:
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
【0020】
は、
1)(C=O)(C−C10)アルキル(ここで、rおよびsは独立して0または1である)、
2)O(C−C)ペルフルオロアルキル(ここで、rは0または1である)、
3)(C−C)アルキレン−S(O)(ここで、mは0、1、または2である)、
4)オキソ、
5)OH、
6)ハロ、
7)CN、
8)(C=O)(C−C10)アルケニル、
9)(C=O)(C−C10)アルキニル、
10)(C=O)(C−C)シクロアルキル、
11)(C=O)(C−C)アルキレン−アリール、
12)(C=O)(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、
13)(C=O)(C−C)アルキレン−N(R
14)C(O)R
15)(C−C)アルキレン−CO
16)C(O)H、
17)(C−C)アルキレン−COH、
18)C(O)NR10
19)S(O)
20)S(O)NR10
21)C(NH)NH;および
22)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)C−Cアルキル、オキソ、およびN(Rから選択される3個までの置換基で置換されてもよい;
【0021】
およびR10は、1)H、2)(C=O)O−C10アルキル、3)(C=O)O−Cシクロアルキル、4)(C=O)Oアリール、5)(C=O)Oヘテロシクリル、6)C−C10アルキル、7)アリール、8)C−C10アルケニル、9)C−C10アルキニル、10)ヘテロシクリル、11)C−Cシクロアルキル、12)SO、および13)(C=O)NRから独立して選択される;
当該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;または
およびR10は、それらが結合する窒素と一緒になって、単環式または二環式へテロ環(各環が3〜7員であり、また該窒素に加えて、N、OおよびSから選択される1個または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、当該単環式または二環式へテロ環は、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
【0022】
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクリルである;
はH、(C−C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)OC−Cアルキル、(C=O)C−CアルキルまたはS(O)である;当該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、へテロシクリル、OHまたはORである;当該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
XはO、NRおよびSから選択される;および
Wは結合、C=O、C=SおよびCH(OH)から選択される;
ただし、該化合物には少なくとも1個のケイ素原子が存在し、さらに−W−Rは−(C−C)アルキル−O−Si[(C−C)アルキル]ではないものとする。)によって示される化合物またはその医薬的に許容される塩または立体異性体により示される。
【0023】
本発明の一実施態様において、有糸分裂キネシンの阻害に有用な化合物は、式II:
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、
aは0または1である;
bは0または1である;
mは0、1、または2である;
nは0または1である;
pは0、1、2または3である;
qは0または1である;
1’は、CF、NH、O(C−C10)アルキル、O(C−C10)アルケニル、O(C−C10)アルキニル、O(C−C)シクロアルキル、O(C−C)アルキレン−アリール、O(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、O(C−C)アルキレン−NR10、O(C−C)ペルフルオロアルキル、(C−C)アルキレン−COおよび(C−C)アルキレン−COHから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、へテロアリールおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
【0026】
は、独立して、
1)(C=O)−C10アルキル、
2)(C=O)アリール、
3)COH、
4)ハロ、
5)CN、
6)OH、
7)O−Cペルフルオロアルキル、
8)O(C=O)NR10
9)S(O)
10)S(O)NR10、および
11)S(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよい;
【0027】
は、
1)H、
2)C−C10アルキル、
3)アリール、
4)C−C10アルケニル、
5)C−C10アルキニル、
6)C−Cペルフルオロアルキル、
7)C−Cアラルキル、
8)C−Cシクロアルキル、
9)ヘテロシクリル、および
10)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アラルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
【0028】
は、
1)水素、
2)(C=O)−C10アルキル、
3)(C=O)アリール、
4)COH、
5)ハロ、
6)CN、
7)OH、
8)O−Cペルフルオロアルキル、
9)O(C=O)NR
10)S(O)
11)S(O)NR、および
12)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよい;
【0029】
は、
1)(C=O)−C10アルキル、
2)(C=O)アリール、
3)C−C10アルケニル、
4)C−C10アルキニル、
5)(C=O)ヘテロシクリル、
6)COH、
7)ハロ、
8)CN、
9)OH、
10)O−Cペルフルオロアルキル、
11)O(C=O)NR10
12)S(O)
13)S(O)NR10
14)オキソ、
15)CHO、
16)(N=O)R10
17)(C=O)−Cシクロアルキル、または
18)Si(Rである:
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
【0030】
は、
1)(C=O)(C−C10)アルキル(ここで、rおよびsは独立して0または1である)、
2)O(C−C)ペルフルオロアルキル(ここで、rは0または1である)、
3)(C−C)アルキレン−S(O)(ここで、mは0、1、または2である)、
4)オキソ、
5)OH、
6)ハロ、
7)CN、
8)(C=O)(C−C10)アルケニル、
9)(C=O)(C−C10)アルキニル、
10)(C=O)(C−C)シクロアルキル、
11)(C=O)(C−C)アルキレン−アリール、
12)(C=O)(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、
13)(C=O)(C−C)アルキレン−N(R
14)C(O)R
15)(C−C)アルキレン−CO
16)C(O)H、
17)(C−C)アルキレン−COH、
18)C(O)N(R
19)S(O)
20)S(O)NR10
21)C(NH)NH;および
22)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)C−Cアルキル、オキソ、およびN(Rから選択される3個までの置換基で置換されてもよい;
【0031】
およびR10は、独立して、
1)H、
2)(C=O)O−C10アルキル、
3)(C=O)O−Cシクロアルキル、
4)(C=O)Oアリール、
5)(C=O)Oヘテロシクリル、
6)C−C10アルキル、
7)アリール、
8)C−C10アルケニル、
9)C−C10アルキニル、
10)ヘテロシクリル、
11)C−Cシクロアルキル、
12)SO、および
13)(C=O)NRから選択される;
当該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;または
およびR10は、それらが結合する窒素と一緒になって、単環式または二環式へテロ環(各環が3〜7員であり、また該窒素に加えて、N、OおよびSから選択される1個または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、当該単環式または二環式へテロ環は、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
【0032】
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクリルである;
はH、(C−C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)OC−Cアルキル、(C=O)C−CアルキルまたはS(O)である;当該アルキル、アリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、へテロシクリル、OHまたはORである;当該アルキル、アリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
Wは結合およびCH(OH)から選択される;
ただし、該化合物には少なくとも1個のケイ素原子が存在し、さらに−W−Rは−(C−C)アルキル−O−Si[(C−C)アルキル]ではないものとする。)によって示される化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは立体異性体である。
【0033】
本発明化合物の具体例は以下のとおりである:
{2−[1−アセチル−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]エチル}(ジメチル)シラノール;
{4−[1−アセチル−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]ブチル}(ジメチル)シラノール;または
1−アセチル−4−(3−{(5S)−1−アセチル−3−[2−フルオロ−5−(トリメチルシリル)フェニル]−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル}プロピル)ピペラジン;
またはその医薬的に許容される塩もしくは立体異性体。
【0034】
本発明化合物は不斉中心、キラル軸、およびキラル面(記載文献;E.L.Eliel and S.H.Wilen,Stereochemistry of Carbon Compounds,John Wiley & Sons,New York,1994,pages 1119−1190)を有し、ラセミ体、ラセミ混合物として、また個々のジアステレオマーとして存在してもよい;光学異性体も含むすべての可能な異性体およびその混合物とともに、かかる立体異性体のすべてが本発明に包含される。さらに、本明細書に開示した化合物は互変異性体として存在してもよく、たとえ一方の互変異性体構造のみが開示されている場合でも、その両方の形状の互変異性体が本発明の範囲に包含されるものとする。
【0035】
任意の変数(例えば、R、R、Rなど)が任意の構成要素中に一度以上存在する場合、各存在ごとのその定義は他のいずれの存在からも独立したものである。また、置換基と変数との組み合わせは、かかる組合せが安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。置換基から環系に引いた線は、そこに示した結合が置換可能な環原子のいずれにも結合してもよいことを表す。もし環系が多環系であるなら、その結合は中央部に近い環のみの適切な炭素原子のいずれかに結合しているものとする。
【0036】
本発明化合物の置換基および置換パターンは、化学的に安定であり、また容易に入手可能な出発原料から、当該技術分野における既知の方法により、また以下に記載する方法により、容易に合成することが可能である化合物を提供するために、当業者が選択し得るものであると理解される。もし置換基がそれ自体1個を超える基により置換されているなら、当該複数の基は安定な構造が得られる限り、同じ炭素または異なる炭素上に存在し得ると理解される。「1個以上の置換基で置換されてもよい」という文言は、「少なくとも1個の置換基で置換されてもよい」という文言と等価であると解釈すべきであり、かかる場合では、好適な実施態様がゼロないし3個の置換基を有することになる。
【0037】
本明細書にて使用する場合、「アルキル」とは特定数の炭素原子を有する分枝および直鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基をいうものとする。例えば、「C−C10アルキル」におけるC−C10は直鎖のまたは分枝した配列中に1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素を有する基を含むものと定義する。例えば、「C−C10アルキル」は具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどである。「シクロアルキル」という用語は、特定数の炭素原子を有する単環系飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「シクロアルキル」は、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシルなどである。
【0038】
「C−Cアラルキル」および「C−Cへテロアラルキル」という語句にて使用する場合、「C−C」という用語はその残基のアルキル部分をいい、その残基のアリールおよびヘテロアリール部分の原子数を記載するものではない。
「アルコキシ」とは酸素架橋を介して結合した所定炭素原子数の環式または非環式アルキル基を表す。従って、「アルコキシ」は上記のアルキルおよびシクロアルキルの定義を包含する。
【0039】
炭素原子数が特定されていない場合、「アルケニル」という用語は2ないし10個の炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖、分枝または環状の非芳香族炭化水素基をいう。好ましくは、1つの炭素−炭素二重結合が存在し、4つまでの非芳香族炭素−炭素二重結合が存在してもよい。従って、「C−Cアルケニル」とは2ないし6個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する。アルケニル基はエテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニルおよびシクロヘキセニルである。アルケニル基の直鎖、分枝または環状部分は二重結合を含んでいてもよく、また置換基を有するアルケニル基と指定されている場合には、置換基を有してもよい。
【0040】
用語「アルキニル」とは2ないし10個の炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、直鎖、分枝または環状の炭化水素基をいう。3つまでの炭素−炭素三重結合が存在してもよい。「C−Cアルキニル」とは、2ないし6個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する。アルキニル基はエチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニルなどである。アルキニル基の直鎖、分枝または環状部分は三重結合を含んでいてもよく、また置換基を有するアルキニル基と指定されている場合には、置換基を有してもよい。
【0041】
一部の場合では、置換基を、例えば、(C−C)アルキレン−アリールのように、0を含む炭素数の範囲で定義し得る。もしアリールがフェニルであるとするならば、この定義はフェニルそれ自体、ならびに−CHPh、−CHCHPh、CH(CH)CHCH(CH)Phなどをも包含することとなる。
本明細書にて使用する場合、「アリール」は各環が7個までの原子の、安定な単環式または二環式の炭素環であって、その少なくとも1つの環が芳香環であるものを意味するものとする。かかるアリール基の例は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニルおよびビフェニルである。アリール置換基が二環式であり、1つの環が非芳香性である場合、その結合は芳香環を介するものであると理解される。
【0042】
ヘテロアリールという用語は、本明細書にて使用する場合、各環が7個までの原子の安定な単環式または二環式の環であって、少なくとも1つの環が芳香性であり、O、NおよびSからなる群より選択される1ないし4個のヘテロ原子を含むものを表す。この定義の範囲内のヘテロアリール基は、限定されるものではないが、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンを包含する。下記へテロ環の定義によるように、「ヘテロアリール」は、また含窒素ヘテロアリールのN−オキシド誘導体をも包含すると理解される。該ヘテロアリール置換基が二環式であり、1つの環が非芳香性であるか、またはヘテロ原子を含まないような場合、結合はそれぞれ芳香環を介するか、またはヘテロ原子含有環を介しているものと理解される。
【0043】
「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」という用語は、本明細書にて使用する場合、O、NおよびSからなる群より選択される1ないし4個のヘテロ原子を含む3員ないし10員の芳香族または非芳香族のヘテロ環を意味するものとし、二環式基も包含する。従って、「ヘテロシクリル」は上記のヘテロアリール類、ならびにそのジヒドロおよびテトラヒドロ類似体を包含する。「ヘテロシクリル」のさらなる例は、限定されるものではないが、以下のものを包含する:アゼチジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、およびそのN−オキシド。ヘテロシクリル置換基の結合は炭素原子を介するか、またはヘテロ原子を介して起こる。
【0044】
一実施態様において、用語「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」は、本明細書にて使用する場合、O、NおよびSからなる群より選択される1ないし4個のヘテロ原子を含む5員ないし10員の芳香族または非芳香族のヘテロ環を意味するものとし、二環式基も包含する。従って、「ヘテロシクリル」はこの実施態様において、上記のヘテロアリール、ならびにそのジヒドロおよびテトラヒドロ類似体を包含する。「ヘテロシクリル」のさらなる例は、限定されるものではないが、以下のものを包含する:ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、およびそのN−オキシド。
【0045】
一実施態様において、ヘテロ環は、2−アゼピノン、ベンズイミダゾリル、2−ジアザピノン、イミダゾリル、2−イミダゾリジノン、インドリル、イソキノリニル、モルホリニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリジル、ピロリジニル、2−ピペリジノン、2−ピリミジノン、2−ピロリジノン、キノリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリニル、およびチエニルから選択される。
当業者が認知するように、「ハロ」または「ハロゲン」とは、本明細書にて使用する場合、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを包含するものとする。
【0046】
該アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、へテロアリールおよびヘテロシクリル置換基は特に他の断りのない限り、置換基を有してもよいし、未置換であってもよい。例えば、(C−C)アルキルは、OH、オキソ、ハロゲン、アルコキシ、ジアルキルアミノ、またはヘテロシクリル(モルホリニル、ピペリジニルなど)から選択される1個、2個または3個の置換基が置換してもよい。この場合、もし1つの置換基がオキソであり、他がOHであるなら、以下のものがその定義に包含される:
−(C=O)CHCH(OH)CH、−(C=O)OH、−CH(OH)CHCH(O)等々。
およびRの定義において、それらが同じ炭素原子上で一緒になって、−(CH−を形成する場合に形成される部分は以下によって図解される:
【0047】
【化4】

【0048】
さらに、かかる環状部分は1個または複数のヘテロ原子を含んでもよい。かかるヘテロ原子含有環状部分の例は、限定されるものではないが、以下のとおりである:
【0049】
【化5】

【0050】
一部の場合において、RおよびR10はそれらが結合する窒素と一緒になって、単環式または二環式へテロ環(各環が5〜7員であり、また該窒素に加えて、N、OおよびSから選択される1個または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成し得るようなものとして定義され、当該へテロ環はRから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい。このように形成し得るヘテロ環の例は、以下のものであって、これらに限定されるものではないが、留意すべきことは、該へテロ環はRから選定される1個以上(好ましくは1個、2個または3個)の置換基で置換されてもよいことである。
【0051】
【化6】

【0052】
一実施態様において、Rは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい(C=O)C−C10アルキル、(C=O)アリール、SO−C10アルキル、(C=O)OC−C10アルキル、(C=O)NRc’およびSOアリールから選択される。さらなる実施態様において、Rはアセチル、チオアセチル、スルホンアミド、(C=O)NRc’またはメチルスルホニルである。
一実施態様において、Rは、独立して、ハロゲン、C−Cアルキル、OHおよびSi(Rから選択される。さらなる実施態様において、nは2であり、Rは独立してハロゲンから選択される。
一実施態様において、RはHである。
【0053】
一実施態様において、RはH、およびRから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよいC−C10アルキルから選択される。さらなる実施態様において、RはRから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよいC−C10アルキルである。
式IおよびIIで示される化合物の一実施態様において、Wは結合である。
一実施態様において、qは0である。
一実施態様において、qは1であり、Rはハロゲン、C−Cアルキル、OHおよびSi(Rから選択される。別の実施態様において、qは1であり、Rはハロゲン、C−CアルキルおよびOHから選択される。
【0054】
本発明には式Iで示される化合物の遊離型、ならびにその医薬的に許容される塩および立体異性体が包含される。本明細書に例示した具体的化合物の一部のものは、アミン化合物のプロトン化塩である。「遊離型」という用語は非塩形のアミン化合物をいう。包含される医薬的に許容される塩は、本明細書に記載した具体的化合物の例示した塩のみならず、式Iで示される化合物の遊離型の代表的な医薬的に許容される塩をも包含する。記載した具体的塩化合物の遊離型は、当該技術分野の既知の技術的方法により単離し得る。例えば、該塩を適当な塩基の希釈水溶液、例えば、NaOH、炭酸カリウム、アンモニアおよび重炭酸ナトリウムなどの希釈水溶液で処理することにより遊離型を再生させ得る。遊離型は一部の物理的性質、例えば、極性溶媒に対する溶解性などがそれぞれの塩型のものと幾分異なり得るが、当該酸塩および塩基塩はその他の点で本発明の目的とするそれぞれの遊離型のものと医薬的に等価である。
【0055】
本発明の化合物の医薬的に許容される塩は、塩基性または酸性残基を含む本発明化合物から常套の化学的方法により合成することができる。一般に、塩基性化合物の塩はイオン交換クロマトグラフィーによるか、または遊離の塩基と化学当量もしくは過剰の所望の塩形成性有機もしくは無機酸とを適当な溶媒または種々の溶媒の組合わせ中で反応させることにより調製する。同様に、酸性化合物の塩は適切な無機または有機塩基との反応により形成される。
【0056】
本発明化合物の医薬的に許容される塩は、塩基性化合物と無機または有機の酸との反応により形成される本発明化合物の常套の非毒性塩を包含する。例えば、常套の非毒性塩とは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸から調製される塩である。
【0057】
本発明化合物が酸性である場合、適当な「医薬的に許容される塩」は、無機塩基および有機塩基を含む医薬的に許容される非毒性の塩基から調製される塩をいう。無機塩基から誘導される塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第一鉄、第二鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、亜マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩である。とりわけ好適なのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウム塩である。医薬的に許容される有機非毒性塩基由来の塩は、一級、二級、および三級アミン、天然産置換アミンなどの置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂の塩(例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩)である。
【0058】
上記の医薬的に許容される塩および他の代表的な医薬的に許容される塩の調製については、文献により完全な記載がある;Berg et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1−19。
本発明化合物は潜在的に内部塩または両性イオンであることも留意されよう。なぜなら、生理的条件下、化合物中の脱プロトン化酸性部分(例えば、カルボキシル基など)は、アニオンとなってもよく、この電子電荷がプロトン化された、またはアルキル化された塩基性部分のカチオン電荷(例えば、四級窒素原子)に対し内部的にバランスをとるかもしれないからである。
【0059】
本発明化合物は、文献既知の、または実験手法に例示した他の標準的操作に加えて、以下の反応工程図に示す反応を使用することにより調製し得る。従って、下記の説明用の反応工程図は、掲載した化合物により限定されるものではなく、また説明目的で使用した特定の置換基によって限定されるものではない。反応工程図に示した置換基の番号付けは必ずしも請求項に使用したものに相関するものではなく、しばしば明瞭とするために単一の置換基を化合物に結合させて示しているが、上記の式Iの定義のもとでは複数の置換基が許容される。
【0060】
反応工程図
反応工程図Aに示すように、適宜置換基されたアセトフェノンA−1と適宜置換基されたベンズアルデヒドA−2との縮合により、β−ヒドロキシカルボニル中間体A−3が得られる。A−3を無水トリフルオロ酢酸で脱水すると、α,β−不飽和カルボニル化合物A−4が得られる。中間体A−4は次いでカルボン酸A−5の存在下にヒドラジンとの反応を受け、N−アシルジヒドロピラゾールA−6が得られる。
【0061】
反応工程図Bに示すように、中間体A−4とヒドラジンとの反応はカルボン酸を用いないで行ってもよく、次いでその中間体は様々なアセチル化剤と求電子試薬と反応させ得る。反応工程図BはまたA−4中間体とN−置換ヒドラジンとの反応により化合物B−3を得る、N−置換ジヒドロピラゾール化合物の調製について図解する。
【0062】
反応工程図Cは5,5−ジ置換ジヒドロピラゾール化合物の調製について図解する。図示するように、中間体A−4と、例えば、クプラート(cuprate)試薬との反応は中間体C−1を生じ、これは次いで脱水を受けて置換カルコンC−2となる。続くヒドラジンとの反応は、図示するように、5,5−ジ置換ジヒドロピラゾール化合物を生じる。
【0063】
シリカ原子の本発明化合物への取り込みは、適宜シリカ置換したアセトフェノンまたは適宜シリカ置換したベンズアルデヒドを上記の反応工程図に取り込むことにより実施してもよい。あるいは、反応工程図Dに示すように、トリアルキルシリル残基をフェニル環の1つのハロゲンを置換することにより取り込ませ得る。
反応工程図Eは官能基(ヒドロキシ)を有する5,5−ジ置換化合物の調製について図解し、この官能基はさらに官能基化し得る。
【0064】
反応工程図Fは1,3,4,5−テトラ置換を有するジヒドロピラゾール化合物を調製のための合成法を示す。合成ルートは反応工程図Aに記載した方法に似ているが、置換アセトフェノンF−1を出発原料とする。
反応工程図GおよびHに示すように、中間体G−3のヒドロキシル残基は多様な試薬による連鎖ホモログ化(chain homologation)またはアルキル化を受け得る。続く合成操作が2−位側鎖上にシリカ原子の取込を生じる。
【0065】
【化7】

【0066】
【化8】

【0067】
【化9】

【0068】
【化10】

【0069】
【化11】

【0070】
【化12】

【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
用途
本発明化合物は種々の適用において用途が判明している。当業者も認知するように、有糸分裂は種々の方法で変えることができる;すなわち、有糸分裂過程の一成分の活性を増減させることにより、有糸分裂に影響を与えることができる。換言すると、有糸分裂は一部の成分を阻害したり、活性化したりすることによって平衡を乱すことにより、影響を与える(例えば、中断させる)ことができる。同様の方法を用いて減数分裂を変えることができる。
【0074】
一実施態様において、本発明化合物は有糸分裂紡錘体形成を調節するために使用し、これにより有糸分裂における細胞周期の停止を引き延ばす。本明細書において「調節する(modulate)」とは、紡錘体形成の増減など、有糸分裂紡錘体形成を変えることを意味する。「有糸分裂紡錘体形成」とは本明細書において、有糸分裂キネシンにより微小管を双極構造へ組織化することを意味する。「有糸分裂紡錘体機能不全」とは本明細書において、有糸分裂停止と一極紡錘体形成を意味する。
【0075】
本発明化合物は有糸分裂キネシンに結合させるために、および/またはその活性を調節するために有用である。一実施態様において、有糸分裂キネシンは有糸分裂キネシンのbimCサブファミリーのメンバーである(USP6,284,480、第5欄に記載)。さらなる実施態様において、有糸分裂キネシンはヒトのKSPであるが、他の生物体からの有糸分裂キネシンの活性もまた本発明化合物により調節し得る。この文脈において、調節する(modulate)とは紡錘体極分離を増減し、形成異常を惹き起こすこと、すなわち、有糸分裂紡錘体の極の拡幅、またはさもなくば有糸分裂紡錘体の形態学的撹乱を惹き起こすこと、を意味する。また、これらの目的のためにKSPの定義内にKSPの変異体および/またはフラグメントが含まれる。さらに、他の有糸分裂キネシンは本発明化合物により阻害され得る。
【0076】
本発明化合物は細胞増殖性疾患を治療するために使用する。本明細書に提供した方法および組成物により治療し得る病状は、限定されるものではないが、癌(以下でさらに考察する)、自己免疫疾患、関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、医療治療後に誘発される増殖、例えば、限定されるものではないが、外科手術、血管形成術などである。一部の場合において、細胞は高−または低−増殖状態(異常状態)にあることはなく、さらに治療を必要とすることが認識されている。例えば、外傷治癒に際して、細胞は「正常に」増殖し続けるが、増殖の増強が望まれ得る。同様に、すでに考察したように、農業界では、細胞は「正常な」状態にあり得るが、作物の成長を直接増強することにより、または作物に悪影響を与える植物または生物の成長を阻害することにより、収穫を上げるためには増殖変調が望まれ得る。従って、一実施態様においては、本明細書の発明はこれらの障害または症状のいずれか一つに罹患するか、または事実上罹患する可能性のある細胞または個体に適用することも包含する。
【0077】
本明細書に提示した化合物、組成物および方法は固形腫瘍を含む癌、例えば、皮膚、乳房、脳の癌、子宮頚部癌、睾丸癌などの治療に特に有用であると考えられる。本明細書に提示した化合物、組成物および方法は、癌、例えば、乳房、血液、肺、結腸、前立腺、睾丸および脳の癌の治療に特に有用であると考えられる。特に、本発明の化合物、組成物および方法により治療し得る癌は、限定されるものではないが、以下のとおりである:心臓系:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;:気管支癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺癌、肉腫、リンパ腫、軟骨髄性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管腺癌、膵島細胞腫、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、VIP線腫)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(線種、管状線種、絨毛線種、過誤腫、平滑筋腫);泌尿生殖器管:腎臓(腺癌、ウイルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行細胞癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、睾丸(精上皮腫、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維線種、線種様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝癌(肝細胞癌)、肝内胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺癌、血管腫;:骨肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨大細胞腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨大細胞腫瘍;神経系:頭骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、グリオーマ、上衣細胞腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形性グリア細胞芽腫、希突起グリオーマ、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、グリオーマ、肉腫;婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頚部(子宮頚部癌、前腫瘍子宮頚部異形性)、卵巣(卵巣癌[漿膜性のう胞腺癌、ムチン性のう胞腺癌、未分類癌]顆粒膜−卵胞膜細胞腫瘍、セルトリ−ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、陰門(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、メラノーマ)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児横紋筋肉腫))、卵管(癌腫);血液学的:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性メラノーマ、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、奇胎形成異常母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;および副腎:神経芽細胞腫。従って、本明細書にて提示される用語の「癌性細胞」は、上記の症状のいずれか一つに罹患する細胞である。
【0078】
本発明化合物は上記細胞増殖性疾患、とりわけ、癌の治療に有用な医薬の調製においても有用である。
本発明化合物はまたbimCキネシン・サブグループの真菌メンバーの活性を調節することによる抗真菌剤としても有用である;記載USP6,284,480。
本発明化合物はまた上記疾患、とりわけ、癌の治療に有用な医薬の調製においても有用である。
【0079】
本発明化合物は標準的な製剤プラクティスに従い、単独で、または医薬組成物として医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と組合わせて、哺乳動物、好ましくはヒトに投与し得る。本発明化合物は経口的に、または静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸および局所の投与経路など非経口的に投与することができる。
【0080】
有効成分を含有する医薬組成物は経口使用に適した形状、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、ハードもしくはソフトカプセル、またはシロップもしくはエリキシルとし得る。経口使用のための組成物は医薬組成物の製造上、技術的に既知の方法に従って調製し得る;また、かかる組成物は製剤上洗練された口当りのよい製剤とするために、甘味剤、芳香剤、着色剤および保存剤からなる群より選択される1種以上の剤を含有し得る。錠剤は有効成分と、錠剤の製造に適する非毒性の医薬的に許容される添加剤とを混合して含有する。これらの添加剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム);顆粒化剤および崩壊剤(例えば、微結晶性セルロース、ナトリウム・クロスカルメロース、コーンスターチ、またはアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドンまたはアラビアゴム);および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)などである。錠剤は裸錠であってもよいし、または薬物の不快な味をマスクするために、もしくは胃腸管での分解と吸収を遅延させて、それによって長時間作用を持続させるために、既知技法により被覆してもよい。例えば、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースもしくはヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性味遮蔽物質またはエチルセルロース、酢酸酪酸セルロースなどの時間遅延物質を用いてもよい。
【0081】
経口用の製剤はハードゼラチンカプセルとしても提供し得るか(ここで、有効成分は不活性の固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンなどと混合する);あるいはソフトゼラチンカプセルとする(ここで、有効成分はポリエチレングリコールなどの水溶性担体、または油性媒体、例えば、ラッカセイ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油と混合する)。
【0082】
水性懸濁液は活性物質と、水性懸濁液の製造に適する添加剤とを混合して含有する。かかる添加剤は懸濁化剤、例えば、ナトリウム・カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアゴムなどである;分散剤または湿潤剤は天然産のホスファチド(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合産物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物(例えば、ヘプタデカエチレン−オキシセタノール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合産物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合産物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)であってもよい。水性懸濁液はさらに1種以上の保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルもしくはn−プロピル、1種以上の着色剤、1種以上の芳香剤、および1種以上の甘味剤、例えば、スクロース、サッカリンもしくはアスパルテームなどを含有してもよい。
【0083】
油性懸濁液は有効成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油)、または鉱油(例えば、流動パラフィンなど)に懸濁することにより製剤化することができる。この油性懸濁液は増粘剤(例えば、ミツロウ、硬パラフィンもしくはセチルアルコールなど)を含有し得る。上記のような甘味剤および芳香剤を添加して口当たりのよい経口製剤とすることができる。これらの組成物はブチル化ヒドロキシアニソールまたはアルファ−トコフェロールなどの抗酸化剤の添加によって保存し得る。
【0084】
水を加えることによる水性懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1種以上の保存剤と混合した有効成分を提供する。適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤はすでに上記したものにより例示される。さらなる添加剤、例えば、甘味剤、芳香剤および着色剤も存在してもよい。これらの組成物はアスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存し得る。
【0085】
本発明の医薬組成物は水中油型のエマルジョンの形状でもよい。油相は植物油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)、または鉱油(例えば、流動パラフィン)、またはそれらの混合物でもよい。適当な乳化剤は天然産のホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、および脂肪酸とヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)、および当該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)でよい。該エマルジョンは甘味剤、芳香剤、保存剤および抗酸化剤をも含んでもよい。
【0086】
シロップおよびエリキシルは甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースにより製剤化してもよい。かかる製剤は粘活剤、保存剤、芳香および着色剤および抗酸化剤をも含んでもよい。
医薬組成物は無菌の注射用水性溶液の形状でもよい。使用できる媒体と溶媒は、とりわけ水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。
【0087】
無菌の注射用製剤は、有効成分を油相に溶かした、無菌の注射用水中油型マイクロエマルジョンでもよい。例えば、有効成分を先ずダイズ油とレシチンの混合物に溶かしてもよく、次いで、その油溶液を水とグリセロールの混合物中に導入し、加工処理してマイクロエマルジョンとする。
【0088】
注射用溶液またはマイクロエマルジョンは、局所のボーラス注射により患者の血流中に注入できる。あるいは、本発明化合物の一定の循環濃度を維持するような方法で、該溶液またはマイクロエマルジョンを投与することが有利でもある。かかる一定濃度を維持するためには、連続静脈内送達装置を利用し得る。かかる装置の一例は、デルテックのカッド−プラス(CADD−PLUS;商標)モデル5400静脈内用ポンプである。
【0089】
医薬組成物は筋肉内および皮下投与用の無菌注射用水性または油脂性懸濁液の形状であってもよい。この懸濁液は既知の技術に従い、上記のこれらの適当な分散もしくは湿潤剤および懸濁化剤を用いて製剤化し得る。無菌の注射用製剤は、非毒性の非経口投与可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液)でもよい。さらに、無菌の不揮発性油が溶剤または懸濁媒体として簡便に採用される。この目的のためには、合成のモノ−またはジグリセリドを含むいずれの刺激のない不揮発性油も採用し得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射用製剤に使用し得る。
【0090】
式Iで示される化合物は薬物の直腸投与用の坐剤の形状でも投与し得る。これらの組成物は、適当な非刺激性の添加剤であって、常温では固体であるが、直腸温度では液体であり、その結果、直腸内で融解して薬物を放出するような添加物と薬物を混合することにより調製し得る。かかる物質はカカオ脂、グリセリン化ゼラチン、硬化植物油、種々分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコールの脂肪酸エステルとの混合物を包含する。
局所での使用には、式Iで示される化合物を含有するクリーム、軟膏、ジェリー、溶液または懸濁液が用いられる(この適用の目的には、局所適用剤としてうがい薬および含嗽剤も包含するものとする)。
【0091】
本発明化合物は鼻腔内使用の形状で、適当な鼻腔内媒体と送達装置を局所的に使用するか、または当業者周知の皮膚透過性皮膚パッチの形状で、皮膚透過経路により投与し得る。皮膚透過送達システムの形状で投与するには、勿論、その用法用量は、薬剤投与全般で断続的であるよりもむしろ継続的であるようにする。本発明化合物はカカオ脂、グリセリン化ゼラチン、硬化植物油、種々分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコールの脂肪酸エステルとの混合物などの基剤を用いる坐剤としても送達し得る。
【0092】
本発明による化合物をヒトの対象に投与する場合、通常、一日用量はそれを処方する医師が決定するが、その用量は個々の患者の年齢、体重、性別および反応、ならびに患者症状の重症度によって一般には変わり得る。
一例の適用例を示すと、適量の化合物を癌の治療を受ける哺乳動物に投与する。投与は1日あたり体重1kgにつき約0.1mgないし約60mgの量、好ましくは1日あたり体重1kgにつき0.5mgないし約40mgの量で行う。
【0093】
本発明化合物はまた既知の治療薬および抗癌剤との組合わせにおいても有用である。例えば、本発明化合物は既知の抗癌剤との組合わせにおいて有用である。ここに開示した化合物と他の抗癌剤または化学療法薬との組合わせは本発明の範囲内である。かかる薬剤の例は文献(Cancer Principles and Practice of Oncology(癌の原理と腫瘍学の実際)V.T.Devita and S.Hellman(editors),6th edition(February 15,2001),Lippincott Williams & Wilkins Publishers)に見出し得る。当業者はどの薬剤との組合せが有用であるかについて、関係する薬物と癌の特性に基づいて、明確に認識し得よう。かかる抗癌剤は限定されるものではないが、以下のとおりである:エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤と他の血管形成阻害剤、細胞増殖と生存シグナル伝達の阻害剤、アポトーシス誘発性薬剤および細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤。当該化合物は放射線療法と同時投与の場合に特に有用である。
【0094】
一実施態様において、本発明化合物はまた、以下のものを含む既知抗癌剤との組合わせにおいて有用である:エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、および他の血管形成阻害剤。
【0095】
「エストロゲン受容体モジュレーター」とは、メカニズムの如何を問わず、その受容体に対するエストロゲンの結合を干渉または阻害する化合物をいう。エストロゲン受容体モジュレーターの例は、限定されるものではないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、およびSH646などである。
【0096】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とは、メカニズムの如何を問わず、その受容体に対するアンドロゲンの結合を干渉または阻害する化合物をいう。アンドロゲン受容体モジュレーターの例は、フィナステリドと他の5α−リダクターゼ阻害剤(ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾールおよび酢酸アビラテロンなど)である。
【0097】
「レチノイド受容体モジュレーター」とは、メカニズムの如何を問わず、その受容体に対するレチノイドの結合を干渉または阻害する化合物をいう。かかるレチノイド受容体モジュレーターの例は、ベキサロテン、トレチノイン、13−cis−レチノイン酸、9−cis−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、trans−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド、およびN−4−カルボキシフェニルレチナミドなどである。
【0098】
「細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤」とは、細胞死を惹き起こすか、または細胞の機能化に直接干渉して細胞増殖を主として阻害するか、または細胞の減数分裂を阻害または干渉する化合物をいい、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレート剤、低酸素症活性化化合物、微小管阻害剤/微小管安定化剤、有糸分裂キネシン阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、有糸分裂進行に関与するキナーゼの阻害剤、代謝拮抗剤、生物応答修飾因子、ホルモン/抗ホルモン治療剤、造血成長因子、モノクローナル抗体標的化治療剤、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテオソーム阻害剤、およびユビキチンリガーゼ阻害剤を包含する。
【0099】
細胞傷害剤の例は、限定されるものではないが、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモズルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、イムプロスルファン・トシレート、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシフォスファミド、cis−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファミド、GPX100、(trans、trans、trans)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン、三酸化砒素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(参照WO00/50032)などである。
【0100】
低酸素症活性化化合物の例は、チラパザミンである。
プロテオソーム阻害剤の例は、限定されるものではないが、ラクタシスチンおよびボルテゾミブである。
微小管阻害剤/微小管安定化剤の例はパクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、ミボブリンイセチオネート、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン類(参照例:USP6,284,781および6,288,237)およびBMS188797などである。
【0101】
トポイソメラーゼ阻害剤の一部の例は、トポテカン、ハイカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャートロイシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパナミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ラートテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナンスリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、およびジメスナなどである。
【0102】
有糸分裂キネシン、とりわけヒトの有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例は、PCT公開WO01/30768、WO01/98278、WO03/050,064、WO03/050,122、WO03/049,527、WO03/049,679、WO03/049,678およびWO03/39460および係属中のPCT出願番号US03/06403(2003年3月4日出願)、US03/15861(2003年5月19日出願)、US03/15810(2003年5月19日出願)、US03/18482(2003年6月12日出願)およびUS03/18694(2003年6月12日出願)に記載されている。一実施態様において、有糸分裂キネシンの阻害剤は、限定されるものではないが、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤、Kif14の阻害剤、Mphosph1の阻害剤およびRab6−KIFLの阻害剤である。
【0103】
「ヒストン・デアセチラーゼ阻害剤」の例は、限定されるものではないが、SAHA、TSA、オキサムフラチン、PXD101、MG98およびスクリプタイドである。その他のヒストン・デアセチラーゼ阻害剤に関しては、さらに、以下の文献:Miller,T.A.et al.J.Med.Chem.46(24):5097−5116(2003)に見出し得る。
「有糸分裂の進行に関わるキナーゼの阻害剤」は、限定されるものではないが、オーロラ・キナーゼの阻害剤、ポロ様キナーゼ(PLK;とりわけPLK−1)の阻害剤、バブ−1の阻害剤およびバブ−R1の阻害剤を包含する。「オーロラ・キナーゼ阻害剤」の例は、VX−680である。
【0104】
「抗増殖剤」の例は、アンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド(例えば、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、およびINX3001)、および代謝拮抗剤(例えば、エノシタビン、カルモフル、テガフル、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビン・オクホスフェート、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフル、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デキスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、および3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒド・チオセミカルバゾン)である。
【0105】
モノクローナル抗体標的化治療剤の例は、癌細胞特異的または標的細胞特異的モノクローナル抗体に付着させた細胞傷害性剤または放射性同位体を有する治療薬である。その例はベクサールである。
【0106】
「HMG−CoAリダクターゼ阻害剤」は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAリダクターゼの阻害剤をいう。使用し得るHMG−CoAリダクターゼ阻害剤の例は、限定されるものではないが、ロバスタチン(メバコール(MEVACOR;登録商標);参照USP4,231,938、4,294,926および4,319,039)、シンバスタチン(ゾコール(ZOCOR;登録商標);参照USP4,444,784、4,820,850および4,916,239)、プラバスタチン(プラバコール(PRAVACHOL;登録商標);参照USP4,346,227、4,537,859、4,410,629、5,030,447および5,180,589)、フルバスタチン(レスコール(LESCOL;登録商標);参照USP5,354,772、4,911,165、4,929,437、5,189,164、5,118,853、5,290,946および5,356,896)、およびアトルバスタチン(リピトール(LIPITOR;登録商標);参照USP5,273,995、4,681,893、5,489,691および5,342,952)を包含する。本方法に使用し得るこれらのHMG−CoAリダクターゼ阻害剤およびさらなる阻害剤の構造式については、文献(M.Yalpani,”Cholesterol Lowering Drugs(コレステロール低下剤)”,Chemistry & Industry,pp.85−89(1996年2月5日))の87ページおよびUSP4,782,084および4,885,314に記載がある。本明細書にて使用する場合の用語HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とは、HMG−CoAリダクターゼ阻害活性を有する化合物の全ての医薬的に許容されるラクトンおよび開環酸型(すなわち、ラクトン環が開いて遊離酸を形成する場合)のものならびに塩およびエステル型のものを包含し、従って、かかる塩、エステル、開環酸およびラクトン型のものの使用が本発明の範囲に包含される。
【0107】
「プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤」は1種類のまたは組合わせたプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ酵素を阻害する化合物をいい、該酵素はファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ(FPTアーゼ)、ゲラニル−ゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼI型(GGPTアーゼ−I)、およびゲラニル−ゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼII型(GGPTアーゼ−II、ラブGGPTアーゼともいう)などである。
【0108】
プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の例は、以下の公開出願および特許に見出し得る:WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987、USP5,420,245、USP5,523,430、USP5,532,359、USP5,510,510、USP5,589,485、USP 5,602,098、欧州特許公開0 618 221、欧州特許公開0 675 112、欧州特許公開0 604 181、欧州特許公開0 696 593、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514、USP5,661,152、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736、USP5,571,792、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436、およびUSP5,532,359。血管形成に対するプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の役割の例については、文献(European J.of Cancer,Vol.35,No.9,pp.1394−1401(1999))を参照されたい。
【0109】
「血管形成阻害剤」とは、メカニズムに関係なく、新しい血管の形成を阻害する化合物をいう。血管形成阻害剤の例は、限定されるものではないが、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)およびFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤、表皮由来、線維芽細胞由来もしくは血小板由来増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックス・メタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン・ブロッカー、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリ硫酸、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、アスピリンおよびイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)ならびにセレコキシブおよびロフェコキシブなどの選択的シクロオキシゲナーゼ2阻害剤(PNAS,Vol.89,p.7384(1992);JNCI,Vol.69,p.475(1982);Arch.Opthalmol.,Vol.108,p.573(1990);Anat.Rec.,Vol.238,p.68(1994);FEBS Letters,Vol.372,p.83(1995);Clin,Orthop.Vol.313,p.76(1995);J.Mol.Endocrinol.,Vol.16,p.107(1996);Jpn.J.Pharmacol.,Vol.75,p.105(1997);Cancer Res.,Vol.57,p.1625(1997);Cell,Vol.93,p.705(1998);Intl.J.Mol.Med.,Vol.2,p.715(1998);J.Biol.Chem.,Vol.274,p.9116(1999))、ステロイド系抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、ミネラロコルチコイド、デキサメタゾン、プレドニソン、プレドニソロン、メチルプレッド、ベタメサゾン)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−(クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンIIアンタゴニスト(参照:Fernandez et al.,J.Lab.Clin.Med.105:141−145(1985))、およびVEGFに対する抗体(参照:Nature Biotechnology,Vol.17,pp.963−968(October 1999);Kim et al.,Nature,362,841−844(1993);WO00/44777;およびWO00/61186)である。
【0110】
血管形成を調節または阻害し、本発明化合物と組合わせて使用し得る他の治療薬は、凝固系および繊維素溶解系を調節または阻害する薬剤を含む(参照概説:Clin.Chem.La.Med.38:679−692(2000))。凝固および繊維素溶解経路を調節または阻害するかかる薬剤の例は、限定されるものではないが、ヘパリン(参照:Thromb.Haemost.80:10−23(1998))、低分子量ヘパリンおよびカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビンを活性化し得る繊維素溶解阻害剤(TAFIa)の阻害剤としても知られる)(参照:Thrombosis Res.101:329−354(2001))などを包含する。TAFIa阻害剤はPCT公開WO03/013526およびUS出願番号60/349,925(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0111】
「細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを伝達するタンパク質キナーゼを阻害し、それによってDNA傷害剤に対し癌細胞を増感する化合物をいう。かかる薬剤は、ATR、ATM、Chk1およびChk2キナーゼの阻害剤、およびcdkとcdcキナーゼ阻害剤であり、具体的には7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(シクラセル(Cyclacel))およびBMS−387032などである。
【0112】
「細胞増殖と生存シグナル伝達経路の阻害剤」とは、細胞表面受容体及びこれらの表面受容体の下流にあるシグナル伝達カスケードを阻害する薬剤をいう。かかる薬剤はEGFRの阻害剤(例えば、ゲフィチニブおよびエルロチニブ)、ERB−2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ)、IGFRの阻害剤、サイトカイン受容体の阻害剤、METの阻害剤、PI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤(限定されるものではないが、下記に記載されているAkt阻害剤を含む:WO03/086404、WO03/086403、WO03/086394、WO03/086279、WO02/083675、WO02/083139、WO02/083140およびWO02/083138)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040およびPD−098059)およびmTORの阻害剤(例えば、ワイスCCI−779およびアリアッドAP23573)などである。かかる薬剤は低分子阻害剤化合物および抗体アンタゴニストを含む。
「アポトーシス誘発剤」はTNF受容体ファミリーメンバー(トレイル(TRAIL)受容体を含む)の活性化因子を含む。
【0113】
また本発明は選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの組合わせをも包含する。本明細書の目的上、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDは、細胞またはミクロソームアッセイにより評価されるCOX−2のIC50とCOX−1のIC50との比で測定して、COX−1に対するCOX−2の阻害特異性が少なくとも100倍以上と定義される。かかる化合物は、限定されるものではないが、USP5,474,995、USP5,861,419、USP6,001,843、USP6,020,343、USP5,409,944、USP5,436,265、USP5,536,752、USP5,550,142、USP5,604,260、USP5,698,584、USP5,710,140、WO94/15932、USP5,344,991、USP5,134,142、USP5,380,738、USP5,393,790、USP5,466,823、USP5,633,272およびUSP5,932,598(これらはすべて参照により本明細書の一部とする)に開示された化合物である。
【0114】
当該治療方法において特に有用であるCOX−2の阻害剤は、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン;および5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン;またはその医薬的に許容される塩である。
COX−2の特異的な阻害剤として記載され、またそれ故に本発明において有用である化合物は、限定されるものではないが、パレコキシブ、セレブレックス(CELEBREX;登録商標)およびベクストラ(BEXTRA;登録商標)または医薬的に許容されるその塩を含む。
【0115】
血管形成阻害剤のその他の例は、限定されるものではないが、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースリン酸、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、および3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)である。
【0116】
上記で使用した「インテグリン・ブロッカー」とは、生理的リガンドがαvβ3インテグリンに結合するのを選択的に拮抗、阻害または反作用する化合物、生理的リガンドがαvβ5インテグリンに結合するのを選択的に拮抗、阻害または反作用する化合物、生理的リガンドがαvβ3インテグリンとαvβ5インテグリンの両方に結合するのを選択的に拮抗、阻害または反作用する化合物、および毛細血管内皮細胞で発現される特定インテグリンの活性を拮抗、阻害または反作用する化合物をいう。この用語はまたαvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1およびα6β4インテグリンのアンタゴニストをもいう。この用語はまたαvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1およびα6β4インテグリンのいずれかの組合わせのアンタゴニストをもいう。
【0117】
チロシン・キナーゼ阻害剤の一部の具体例は、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリナミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジナミン、およびEMD121974である。
【0118】
抗癌性化合物以外の化合物との組合わせもまた本方法に包含される。例えば、本出願の請求項に記載した化合物とPPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニストおよびPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの組合わせは、ある種悪性腫瘍の治療に有用である。PPAR−γおよびPPAR−δは核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γおよびδである。内皮細胞でのPPAR−γの発現および、その血管形成における関与は、文献(参照:J.Cardiovasc.Pharmacol.1998;31:909−913;J.Biol.Chem.1999;274:9116−9121;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000;41:2309−2317)に報告されている。つい最近、PPAR−γアゴニストがインビトロでVEGFに対する血管形成応答を阻害することが示されている;トログリタゾンおよびマレイン酸ロシグリタゾン両方がマウスにおいて網膜新生血管形成の進展を阻害する(Arch.Ophthamol.2001;119:709−717)。PPAR−γアゴニストおよびPPAR−γ/αアゴニストの例は、限定されるものではないが、チアゾリジンジオン類(例えば、DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン、およびピオグリタゾン)、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンズイソキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN09/782,856に開示)、および2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(USSN60/235,708および60/244,697に開示)などを包含する。
【0119】
本発明のもう一つの実施態様は、癌治療のための遺伝子療法と組合わせて、本明細書に開示した化合物を使用することである。癌治療の遺伝子戦略の概観については:Hall et al(Am.J.Hum.Genet.61:785−789,1997)およびKufe et al(Cancer Medicine,5th Ed,pp876−889,BC Decker,Hamilton 2000)を参照。遺伝子療法は腫瘍抑制遺伝子を送達するために使用することができる。かかる遺伝子の例は、限定されるものではないが、p53(この遺伝子は組換えウイルス媒介遺伝子伝達を介して送達される)(例えば、USP6,069,134参照)、uPA/uPARアンタゴニスト(“uPA/uPARアンタゴニストのアデノウイルス仲介送達は、マウスにおいて血管形成依存性腫瘍増殖および拡散を抑制する”Gene Therapy,August 1998;5(8):1105−13)、およびインターフェロン−ガンマ(J.Immunol.2000;164:217−222)などを包含する。
【0120】
本発明化合物はまた本来多剤耐性(MDR)である阻害剤、とりわけ輸送体タンパク質の高レベル発現と関係するMDRの阻害剤と組合わせて投与し得る。かかるMDR阻害剤はp−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤、例えば、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853およびPSC833(バルスポダール(valspodar))を包含する。
【0121】
本発明化合物は、本発明化合物の単独使用または放射線療法との併用から生じ得る急性、遅延型、後期、および予測性の嘔吐などの悪心または嘔吐を治療するために、抗嘔吐剤とともに使用し得る。嘔吐の予防または治療のために、本発明化合物は他の抗嘔吐剤、とりわけ、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、およびザチセトロンなど)、GABAB受容体アゴニスト(例えば、バクロフェンなど)、コルチコステロイド(例えば、デカドロン(デキサメタゾン)など)、ケナログ、アリストコルト、ナサリド、プレフェリド、ベネコルテン、またはUSP2,789,118、2,990,401、3,048,581、3,126,375、3,929,768、3,996,359、3,928,326および3,749,712に開示されたその他のもの、抗ドーパミン作動性薬(例えば、フェノチアジン類(例:プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジンおよびメソリダジン)、メトクロプラミドまたはドロナビノールなど)と共に使用し得る。一実施態様においては、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト、およびコルチコステロイドから選択される抗嘔吐剤が、本発明化合物の投与により生じ得る嘔吐の治療または予防のためにアジュバンドとして投与される。
【0122】
本発明化合物と連結して使用するニューロキニン−1受容体アンタゴニストについては、例えば、以下に詳しく記載されている:米国特許USP5,162,339、5,232,929、5,242,930、5,373,003、5,387,595、5,459,270、5,494,926、5,496,833、5,637,699、5,719,147;欧州特許公開番号EP0 360 390、0 394 989、0 428 434、0 429 366、0 430 771、0 436 334、0 443 132、0 482 539、0 498 069、0 499 313、0 512 901、0 512 902、0 514 273、0 514 274、0 514 275、0 514 276、0 515 681、0 517 589、0 520 555、0 522 808、0 528 495、0 532 456、0 533 280、0 536 817、0 545 478、0 558 156、0 577 394、0 585 913、0 590 152、0 599 538、0 610 793、0 634 402、0 686 629、0 693 489、0 694 535、0 699 655、0 699 674、0 707 006、0 708 101、0 709 375、0 709 376、0 714 891、0 723 959、0 733 632および0 776 893;PCT国際特許公開番号WO90/05525、90/05729、91/09844、91/18899、92/01688、92/06079、92/12151、92/15585、92/17449、92/20661、92/20676、92/21677、92/22569、93/00330、93/00331、93/01159、93/01165、93/01169、93/01170、93/06099、93/09116、93/10073、93/14084、93/14113、93/18023、93/19064、93/21155、93/21181、93/23380、93/24465、94/00440、94/01402、94/02461、94/02595、94/03429、94/03445、94/04494、94/04496、94/05625、94/07843、94/08997、94/10165、94/10167、94/10168、94/10170、94/11368、94/13639、94/13663、94/14767、94/15903、94/19320、94/19323、94/20500、94/26735、94/26740、94/29309、95/02595、95/04040、95/04042、95/06645、95/07886、95/07908、95/08549、95/11880、95/14017、95/15311、95/16679、95/17382、95/18124、95/18129、95/19344、95/20575、95/21819、95/22525、95/23798、95/26338、95/28418、95/30674、95/30687、95/33744、96/05181、96/05193、96/05203、96/06094、96/07649、96/10562、96/16939、96/18643、96/20197、96/21661、96/29304、96/29317、96/29326、96/29328、96/31214、96/32385、96/37489、97/01553、97/01554、97/03066、97/08144、97/14671、97/17362、97/18206、97/19084、97/19942および97/21702;および英国特許公開番号2 266 529、2 268 931、2 269 170、2 269 590、2 271 774、2 292 144、2 293 168、2 293 169、および2 302 689。かかる化合物の調製については、上記の特許および出願公開に詳しく記載されている;これらを参照により本明細書の一部とする。
【0123】
一実施態様において、本発明化合物と一緒に使用されるニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、USP5,719,147に開示されている2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、またはその医薬的に許容される塩から選択される。
本発明化合物はまた貧血の治療に有用な薬剤と共に投与し得る。かかる貧血治療の薬剤は、例えば、連続的赤血球形成受容体活性化因子(エポエチンアルファなど)である。
【0124】
本発明化合物は好中球減少症の治療に有用な薬剤と共にも投与し得る。かかる好中球減少症治療の薬剤は、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの好中球の産生と機能を調節する造血成長因子である。G−CSFの例はフィルグラスチムである。
本発明化合物はまた免疫増強剤、例えば、レバミゾール、イソプリノシンおよびザダキシンなどと共にも投与し得る。
【0125】
本発明化合物はまたビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホネート、ビスホスホン酸およびジホスホン酸などを含むと理解される)と組合わせて、骨癌などの癌の治療または予防に有用であり得る。ビスホスホネートの例は、限定されるものではないが、エチドロネート(ジドロネル(Didronel))、パミドロネート(アレジア(Aredia))、アレンドロネート(フォサマックス(Fosamax))、リセドロネート(アクトネル(Actonel))、ゾレドロネート(ゾメタ(Zometa))、イバンドロネート(ボニバ(Boniva))、インカドロネートもしくはシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネートおよびチルドロネートならびにその医薬的に許容される塩、誘導体、水和物およびその混合物である。
【0126】
また、本発明化合物はアロマターゼ阻害剤と組合わせて、乳癌の治療または予防にも有用であり得る。アロマターゼ阻害剤の例は、限定されるものではないが、アナストロゾール、レトロゾールおよびエクゼメスタンである。
また、本発明化合物はsiRNA治療薬と組合わせて癌を治療又は予防するためにも有用であり得る。
【0127】
従って、本発明の範囲は請求項に記載の化合物を、第二の化合物、すなわち、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、本来多剤耐性であるものの阻害剤、抗嘔吐剤、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強剤、細胞増殖および生存シグナル伝達の阻害剤、アポトーシス誘発剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤および細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤から選択される化合物と組合わせて使用することを包含する。
【0128】
本発明化合物に関連する用語「投与」およびその変形(例えば、化合物を「投与する」)は、本発明化合物またはそのプロドラッグを、治療を必要とする動物の系に投与することを意味する。本発明化合物またはそのプロドラッグが1種以上の他の活性薬剤(例えば、細胞障害剤など)と組合わせて提供される場合、「投与」およびその変形はそれぞれ本発明化合物またはそのプロドラッグおよび他の薬剤を同時に、および連続して投与することを包含すると理解される。
【0129】
本明細書にて使用する場合、用語「組成物」とは、特定量の特定成分を含む製品、ならびに直接または間接に、特定量の特定成分の組合わせから生じる製品を包含するものとする。
本明細書にて使用する場合、用語「治療有効量」とは、研究者、獣医師、医師またはその他の臨床家が求める組織、系、動物またはヒトにおいて、生物学的または医薬的応答を生じる活性化合物または薬剤の量を意味する。
用語「癌を治療する」または「癌の治療」とは、癌の症状に侵された哺乳動物に投与することをいい、また癌細胞を殺すことにより癌の症状を軽減する作用のみならず、さらに癌の増殖および/または転移を阻害する作用をもいう。
【0130】
一実施態様において、第二の化合物として使用するべき血管形成阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来増殖因子の阻害剤、線維芽細胞由来増殖因子の阻害剤、血小板由来増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックス・メタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン・ブロッカー、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサン・ポリ硫酸、シクロオキシゲナーゼ・阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−(クロロアセチルカルボニル)フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、またはVEGFに対する抗体から選択される。一実施態様において、エストロゲン受容体モジュレーターは、タモキシフェンまたはラロキシフェンである。
【0131】
請求項の範囲には、式Iで示される化合物の治療有効量を、放射線療法との組合わせおよび/またはエストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害性/細胞増殖抑制性薬剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、本来多剤耐性であるものの阻害剤、抗嘔吐剤、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強剤、細胞増殖および生存シグナル伝達の阻害剤、アポトーシス誘発剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤および細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤から選択される化合物と組み合わせて投与することからなる癌の治療方法が包含される。
【0132】
また本発明のなお別の実施態様は、式Iで示される化合物の治療有効量を、パクリタキセルまたはトラスツズマブと組合わせて投与することからなる癌の治療方法である。
本発明はさらに式Iで示される化合物の治療有効量をCOX−2阻害剤と組合わせて投与することからなる癌の治療または予防方法を包含する。
【0133】
本発明はまた式Iで示される化合物の治療有効量と、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害性/静細胞性薬剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、細胞増殖および生存シグナル伝達の阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、アポトーシス誘発剤およびビスホスホネートから選択される化合物とを含有してなる癌の治療または予防に有用な医薬組成物を包含する。
【0134】
本発明のこれらの側面およびその他の側面は、本明細書に含まれる教示から明らかである。
以下の化学上の記載および実施例に使用する略号は以下のとおりである:9−BBN(9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン);AcOH(酢酸);DCE(ジクロロメタン)、デス−マーチン・ペルヨーディナン(1,1,1−トリス(アセチルオキシ)−1,1−ベンズヨードキソール−3−(1H)−オン);DIBAL−H(水素化ジイソブチルアルミニウム);DIEA(ジイソプロピルエチルアミン);DME(エチレングリコールジメチルエーテル);DMF(ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DTT(ジチオスレイトール);EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩);EtOAc(酢酸エチル);FACS(蛍光活性化細胞選別);FITC(イソチオシアン酸フルオレセイン);HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール);IPTG(イソプロピル−ベータ−D−チオガラクトピラノシド);LDA(リチウムジイソプロピルアミド);LHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド);mCPBA(m−クロロ過安息香酸);MS(質量分析);NaHMDS(ナトリウム・ビストリメチルシリルアミド);NMR(核磁気共鳴);PMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル);PyBop(ヘキサフルオロリン酸1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)(トリピロリジン−1−イル)ホスホニウム);ロシェル塩(酒石酸カリウムナトリウム);SiO(シリカゲル);TBAI(ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウム);TEA(トリエチルアミン);THF(テトラヒドロフラン);TFA(トリフルオロ酢酸);TMSCN(トリメチルシリルシアニド);TsCl(塩化p−トルエンスルホニル)およびワインレブアミド(N−メチル−N−メトキシアミド)。
本発明のこれらの側面およびその他の側面は、本明細書に含まれる教示から明らかである。
【0135】
アッセイ法
実施例に記載した本発明化合物は以下に記載のアッセイ法により試験し、それらがキネシン阻害活性を有することを見出した。他のアッセイ法は文献上既知であり、当業者は容易に実施することができる(参照例:PCT公開WO01/30768、2001年5月3日、18〜22ページ)。
【0136】
I.キネシンATPアーゼのインビトロアッセイ
ヒトのポリヒスチジン−タグ標識KSPモータードメイン(KSP(367H))のクローニング及び発現
ヒトKSPモータードメイン構築物の発現用プラスミドは、鋳型としてpブルースクリプト全長ヒトKSP構築物(Blangy et al.,Cell,vol.83,pp1159−1169,1995)を使用してPCRによりクローン化した。N−末端プライマー5’−GCAACGATTAATATGGCGTCGCAGCCAAATTCGTCTGCGAAG(配列番号:1)およびC−末端5’−GCAACGCTCGAGTCAGTGATGATGGTGGTGATGCTGATTCACTTCAGGCTTATTCAATAT(配列番号:2)を用いてモータードメインとネックリンカー領域を増幅した。PCR産物をAseIとXhoIで消化し、pRSETa(インビトロゲン)のNdeI/XhoI消化産物に結合し、大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。
【0137】
細胞はOD600が0.5となるまで37℃で増殖させた。培養物を室温まで冷やし、100μMのIPTGによりKSPの発現を誘導し、一夜インキュベーションを続けた。遠心分離により細胞をペレットとし、氷冷PBSで一度洗った。ペレットを瞬時に凍結し、−80℃で保存した。
【0138】
タンパク質精製
細胞ペレットを氷上で融解し、溶菌バッファー(50mM K−HEPES、pH8.0、250mM−KCl、0.1%トゥイーン、10mMイミダゾール、0.5mM Mg−ATP、1mM−PMSF、2mMベンズイミジン、1x完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ))に再懸濁した。細胞懸濁液を1mg/mlのリゾチームおよび5mMβ−メルカプトエタノールとともに氷上で10分間インキュベートし、次いで超音波処理(3×30秒)した。引き続くすべての手続きを4℃で実施した。溶菌液を40,000xgで40分間遠心分離した。上清を希釈し、バッファーA(50mM K−HEPES、pH6.8、1mM MgCl、1mM−EGTA、10μM Mg−ATP、1mM−DTT)中、SPセファロースカラム(ファルマシア、5mlカートリッジ)に負荷し、バッファーA中、0〜750mM−KCl勾配で溶出した。KSP含有フラクションをプールし、Ni−NTA樹脂(キアゲン)と1時間インキュベートした。この樹脂を3回バッファーB(溶菌バッファーマイナスPMSFおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル)で洗い、次いで15分のインキュベーションとバッファーBによる洗浄を3回行った。最後に、樹脂をインキュベートし、バッファーC(pH6.0であること以外バッファーBと同じ)で15分間3回洗浄し、カラムに注入した。KSPは溶出バッファー(150mM−KClおよび250mMイミダゾール以外バッファーBと同じ)で溶出した。KSP含有フラクションをプールし、スクロース中10%とし、−80℃で保存した。
【0139】
微小管はウシの脳から単離したチューブリンから調製する。精製したチューブリン(>97%MAP不含有)1mg/mlを37℃で、10μMパクリタキセル、1mM−DTT、1mM−GTP/BRB80バッファー(80mM K−PIPES、1mM−EGTA、1mM−MgCl、pH6.8)の存在下にポリマー化する。得られた微小管は超遠心分離と上清の除去により、非ポリマー化チューブリンから分離する。微小管を含むペレットをBRB80中、10μMパクリタキセル、1mM−DTT、50μg/mlアンピシリン、および5μg/mlクロラムフェニコールにゆるやかに再懸濁する。
【0140】
キネシンモータードメインはバッファー(80mM K−HEPES(pH7.0)、1mM−EGTA、1mM−DTT、1mM−MgCl、および50mM−KCl含有)中、23℃で、微小管、1mM−ATP(1:1MgCl:Na−ATP)および化合物とインキュベートする。反応は、80mM−HEPESおよび50mM−EDTAの最終バッファー組成物による2〜10倍希釈により停止させる。ATP加水分解反応からの遊離リン酸は、キナルジン・レッド/モリブデン酸アンモニウムアッセイを介して、2:1の比率でクエンチAとクエンチBを含むクエンチCバッファー150μlを加えることにより測定する。クエンチAは0.1mg/mlキナルジン・レッドおよび0.14%ポリビニルアルコールを含有する;クエンチBは1.15M硫酸中12.3mMモリブデン酸アンモニウム・四水和物を含有する。反応液を23℃で10分間インキュベートし、ホスホ−モリブデン酸複合体の吸光度を540nmで測定する。
実施例中の化合物1−5、2−2および3−8について上記のアッセイ法で試験し、IC50≦50μMであることが判明した。
【0141】
II.細胞増殖アッセイ
96穴組織培養皿に、24、48、および72時間にわたり対数増殖が可能な密度で細胞を塗布し、一夜接着させる。翌日、すべてのプレートに10ポイントの1/2対数滴定により化合物を加える。各滴定系列は三重測定として実施し、0.1%DMSOの一定濃度をアッセイ全般で維持する。また、0.1%DMSOのみの対照も含める。各化合物の希釈系列は血清を含まない培地で行う。アッセイにおける血清の最終濃度は、200μL容量の培地中5%である。薬物添加後、24、48、または72時間目に滴定プレート上の各サンプルと対照ウエルにアラマーブルー染色試薬20マイクロリットルを添加し、37℃のインキュベーションに戻る。サイトフルオル(CytoFluor)IIプレートリーダー上、530〜560ナノメーター波長の励起、590ナノメーターの発光により、アラマーブルー蛍光を6〜12時間後に分析する。
【0142】
細胞傷害性(cytotoxic)EC50は化合物濃度を横軸に、各滴定ポイントでの細胞増殖の平均阻害率を縦軸にプロットすることにより求める。媒体のみで処理した対照ウエルの細胞増殖をアッセイの100%増殖と定義し、化合物で処理した細胞の増殖をこの値と比較する。自家所有のソフトウエアを用い、パーセント細胞傷害性値およびロジスティック4−パラメーターカーブフィッティングによる変曲点を計算する。パーセント細胞傷害性は次のように定義する:
%細胞傷害性(cytotoxicity):(蛍光対照)−(蛍光サンプル)×100×(蛍光対照−1
変曲点は細胞傷害性EC50として報告される。
【0143】
III.有糸分裂停止およびアポトーシスのFACSによる評価
FACS分析を使用し、処理した細胞集団中のDNA含量を測定することにより、有糸分裂細胞を停止させる化合物の能力とアポトーシスを誘発する能力を評価する。6cm組織培養皿1枚あたり1.4×10細胞密度で細胞を播種し、一夜付着させる。次いで、細胞を媒体(0.1%DMSO)または滴定系列の化合物で8〜16時間処理する。処理に続いて、指定した時点で細胞をトリプシン処理により採取し、遠心分離によりペレット化する。細胞ペレットをPBSですすぎ、70%エタノールで固定し、一夜以上4℃で保存する。
【0144】
FACS分析用に、少なくとも500,000個の固定細胞をペレット化し、70%エタノールを吸引除去する。次いで、RNアーゼA(50クニッツ単位/ml)およびヨウ化プロピジウム(50μg/ml)と4℃で30分間細胞をインキュベートし、ベクトン・ディッキンソンFACSカリバーにより分析する。データ(10,000細胞から)はモドフィット細胞周期分析モデリングソフトウエア(ベリティ・インク)を用いて分析する。
【0145】
有糸分裂停止のためのEC50は、横軸に化合物濃度をプロットし、縦軸に各滴定点(ヨウ化プロピジウム蛍光により測定)での細胞周期のG2/M期の細胞のパーセントをプロットすることにより求める。データ分析はシグマプロットプログラムを用いて実施し、ロジスティック4−パラメーター・カーブフィッティングにより変曲点を計算する。変曲点は有糸分裂停止に対するEC50として報告される。同様の方法を用いて、アポトーシスに対する化合物のEC50を決定する。ここで、各滴定点(ヨウ化プロピジウム蛍光により測定)でのアポトーシス細胞のパーセントを縦軸にプロットし、同様の分析を上記のように実施する。
【0146】
IV.単極子紡錘体を検出する免疫蛍光顕微鏡法
DNA、チューブリン、およびペリセントリンの免疫蛍光染色方法については、本質的に文献(Kapoor et al.(2000)J.Cell Biol.150:975−988)に記載されている。細胞培養を検討するために、細胞を組織培養処理したガラスチャンバースライドに塗布し、一夜付着させる。次いで、細胞を対象化合物と4〜16時間インキュベートする。インキュベーション終了後、培地と薬物を吸引し、チャンバーとガスケットをガラススライドから除く。次いで、文献記載のプロトコールに従って細胞の透過性を上げ、固定し、洗浄し、非特異的抗体結合をブロックする。パラフィン包埋腫瘍切片をキシレンで除パラフィン処理し、エタノール系列を介してブロッキングの前に再水和する。スライドは一次抗体(マウスモノクローナル抗α−チューブリン抗体、1:500に希釈したシグマからのクローンDM1A;ウサギポリクローナル抗ペリセントリン抗体、コバンス(Covance)からの抗体を1:2000に希釈)中で一夜4℃でインキュベートする。洗浄後、スライドを15μg/mlに希釈した接合二次抗体(チューブリン用FITC−接合ロバ抗マウスIgG;ペリセントリン用テキサスレッド−接合ロバ抗ウサギIgG)と室温で1時間インキュベートする。スライドを洗浄し、ヘキスト33342で対比染色し、DNAを可視化する。免疫染色サンプルをニコン・エピ蛍光顕微鏡上、メタモルフ・デコンヴォリューションと画像化ソフトウエアを用いて、100×油液浸型対物レンズにより画像化する。
【実施例】
【0147】
提供した実施例は本発明のさらなる理解の一助とするものである。採用した特定物質、種類および条件は本発明を説明するためのものであり、その妥当な範囲を限定するものではない。
【0148】
【化15】

【0149】
工程1:1−(2,5−ジフルオロフェニル)−3−フェニル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ブタン−2−エン−1−オン(1−2)
THF(300mL)中のテトラヒドロ−2−(2−プロピニルオキシ)−2H−ピラン(6.0g、42.8mmol)の溶液に、2.5M−n−BuLi/ヘキサン(17.1mL、42.8mmol)を−78℃で滴下した。45分間攪拌した後、THF(25mL)中の1−1(8.6g、42.8mmol)(CHCl中、塩化2,5−ジフルオロベンゾイル、ワインレブアミンおよびTEAから調製)の溶液を加え、3時間攪拌を続け、その間、溶液をゆっくりと室温に加温した。飽和NHCl水で反応停止させ、混合物をEtOAcを容れた分液漏斗に移し、層分離し、水層をEtOAcで抽出し、併合した有機層を食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製してプロパルギルケトン中間体26.6gを黄色油として得た。THF(100mL)中のCuBr・DMS(8.42g、41.0mmol)の懸濁液を−78℃に冷却し、2M−PhLi/nBuO(41.0mL、82.0mmol)を滴下した。1.5時間攪拌した後、THF(15mL)中の上記ケトン(9.57g、34.1mmol)を加え、得られる混合物を3時間攪拌した。飽和NHCl水で反応停止させた後、混合物をEtOAcを容れた分液漏斗に移し、層分離し、水層をEtOAcで抽出し、併合した有機層を食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して黄色油の1−2を(E)と(Z)−異性体の1:1混合物として得た。1−2のデータ:LC−MS:rt=2.78分および2.9分、m/z=359(M+1)。
【0150】
工程2:[1−アセチル−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]メタノール(1−3)
ピリジン(100mL)中の1−2(5.8g、16.2mmol)の溶液に、ヒドラジン水和物(1.18mL、24.3mmol)を加えた。反応液を90℃で45分間加熱し、室温に冷却し、次いで、0℃に冷却した。塩化アセチル(5.75mL、80.9mmol)を添加した後、冷却浴を除き、反応液を7時間攪拌した。次いで、反応液をEtOAcと食塩水を容れた分液漏斗に移した。層分離し、有機相を1M−HClで2回、次いで食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をトルエンにて2回、溶解、再濃縮して残りのピリジンを除去した。残渣をメタノール(100mL)に溶かし、p−トルエンスルホン酸(1.5g、7.9mmol)を加えて、その混合物を室温で2時間攪拌した。次いで、反応液を濃縮し、残渣をEtOAcに溶かし、NaHCOの飽和溶液で2回、次いで、食塩水で洗って、NaCOで乾燥し、濃縮した。残渣をEtO中で破砕し、濾過して1−3を白色固体として得た。1−3のデータ:LC−MS:rt=2.20分、m/z=331(M+1)。
【0151】
工程3:1−アセチル−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−フェニル−5−ビニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(1−4):
CHCl(200mL)中の1−3(3.96g、12.0mmol)の溶液に、デス−マーチン・ペルヨーディナン(5.6g、13.2mmol)を加え、その混合物を3時間攪拌した。次いで、この混合物にNaHCOの飽和溶液と固形のNaSOを加え、その二相混合物を1時間激しく攪拌した。層分離し、有機層を飽和NaHCO、水で洗い、NaSOで乾燥し、濃縮して粗アルデヒドを得た。別のフラスコで、メチル臭化トリフェニルホスホニウム(6.4g、18.0mmol)をTHF(100mL)に懸濁し、−78℃に冷却し、2.5M−nBuLi/ヘキサン(7.2mL、18.0mmol)を加えた。30分間攪拌した後、THF(30mL)に溶かした上記アルデヒドを反応フラスコに挿管移送し、−78℃で30分間攪拌を続けた。冷却浴を除き、反応液を1時間攪拌し、その間に室温に戻した。飽和NHCl水で反応停止させ、混合物をEtOAcで分液漏斗に移し、層分離し、水層をEtOAcで抽出し、併合した有機層を食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製して、1−4を淡黄色固体として得た。1−4についてのデータ:HNMR(500MHz,CDCl)δ7.7(m,1H),7.35〜7.25(m,5H),7.05(m,2H),6.8(m,1H),5.45(m,1H),5.35(m,1H),3.9(m,1H),3.4(m,1H),2.4(s,3H)ppm。HRMS(ES)計算値(M+H)C1916Oとして:327.1304。測定値:327.1294。
【0152】
工程4:{2−[1−アセチル−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]エチル}(ジメチル)シラノール(1−5)
トルエン(1mL)中の1−4(100mg、0.31mmol)の溶液に、クロロジメチルシラン(51μL、0.46mmol)およびヘキサクロロ白金酸(IV)水素水和物(13mg、0.03mmol)を加えた。反応混合物を封管中85℃で18時間加熱し、次いで500μLの水を加えた。15分間加熱を続け、次いで反応液を室温に冷やし、EtOAcを容れた分液漏斗に移し、水と食塩水で連続して洗い、MgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製して、1−5を白色固体として得た。1−5についてのデータ:HNMR(500MHz,CDCl)δ7.65(m,1H),7.25(m,5H),7.0(m,2H),3.6−3.3(m,2H),2.9(m,1H),2.4(m,3H),2.15(m,1H),0.6−0.3(m,2H),0.15(m,6H)ppm。HRMS(MALDI)計算値(M+H)C2124Siとして:403.1648;測定値:403.1637。
【0153】
【化16】

【0154】
工程1:{4−[1−アセチル−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]ブチル}(ジメチル)シラノール(2−2)
トルエン(1mL)中の2−1(50mg、0.15mmol)[1−5と同様の方法で調製したが、工程1ではテトラヒドロ−2−(3−ブチニルオキシ)−2H−ピランを出発原料とした]の溶液に、クロロジメチルシラン(33μL、0.3mmol)およびヘキサクロロ白金酸(IV)水素水和物(12mg、0.03mmol)を加えた。反応混合物を封管中、85℃に18時間加熱し、次いで水(250μL)を加えた。15分間加熱を続け、次いで反応液を室温に冷やし、EtOAcを容れた分液漏斗に移し、水と食塩水で連続して洗い、MgSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製して、2−2を白色固体として得た。2−2についてのデータ:HNMR(500MHz,CDCl)δ7.7(m,1H),7.4(m,2H),7.3(m,3H),7.1(m,2H),3.65〜3.4(m,2H),2.85(m,1H),2.45(s,3H),2.15(m,1H),1.4〜1.2(m,2H),0.6(m,2H),0.0(s,6H)ppm。HRMS(MALDI)計算値(M+H)C2124Siとして:417.1805;測定値:417.1801。
【0155】
【化17】

【0156】
【化18】

【0157】
工程1:5−ブロモ−2−フルオロ−N−メトキシ−N−メチルベンズアミド(3−1)
CHCl(1L)中の5−ブロモ−2−フルオロ安息香酸(20.0g、91.3mmol)の懸濁液に、塩化オキサリル(12.0mL、137mmol)および3滴のDMFを加えた。6時間攪拌した後、反応液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、残渣をCHCl(1L)に溶かし、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(11.6g、119mmol)およびトリエチルアミン(63.6mL、456mmol)を加え、反応液を一夜攪拌した。反応液を1M−HClを入れた分液漏斗に移し、層分離し、有機層を1M−NaOH、次いで水で洗い、NaSOで乾燥し、濃縮し、3−1を無色油として得た。3−1のデータ:LC/MS:rt=1.76分;m/z=262(M+1)。
【0158】
工程2:1−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ヘキサン−2−イン−1−オン(3−3)
THF(150mL)中のTHP−アルキン3−2(8.1g、48.3mmol)(Tetrahedron,2001,57,2597−2608に記載のように調製)の溶液に、−78℃で2.5M−nBuLi/ヘキサン(19.2mL、48.3mmol)を加えた。その温度で1時間攪拌した後、3−1(12.0g、46mmol)とTHF(30mL)との溶液をシリンジで添加した。この溶液を一夜攪拌し、その間、次第に室温に戻した。飽和NHCl水で反応を停止させ、EtOAcで抽出した。有機抽出液を食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製して、3−3を淡褐色油として得た。3−3のデータ:LC/MS:rt=2.77分;m/z=285(M−THP+H)。
【0159】
工程3:1−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−3−フェニル−6−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)ヘキサン−2−エン−1−オン(3−4)
THF(250mL)中の臭化銅(I)ジメチルスルフィド複合体(9.3g、45.4mmol)の懸濁液に、−78℃で、2M−PhLi/ジブチルエーテル溶液(45.5mL、91mmol)を加えた。1時間攪拌した後、THF(50mL)中のアルキン3−3(14.0g、38mmol)を挿管から加え、その反応液を−78℃で2時間攪拌した。飽和NHCl水で反応を停止させ、EtOAcで2回抽出した。有機抽出液を併合し、食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製して、黄色油の3−4を(E)および(Z)異性体の混合物として得た。3−4についてのデータ:LC/MS:rt=3.03および3.28分;m/z=363(M−THP+H)。
【0160】
工程4:3−[1−アセチル−3−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]プロパン−1−オール(3−5)の合成
ピリジン(50mL)中の3−4(7.5g、16.8mmol)の溶液に、ヒドラジン水和物(1.22mL、25.2mmol)を加え、得られる混合物を30分間90℃で加熱した。室温に冷却後、反応液を氷浴に入れ、塩化アセチル(5.96mL、83.8mmol)を滴下した。氷浴を除き、反応液を一夜室温で攪拌し、EtOAcと食塩水を容れた分液漏斗に移した。層分離し、有機層を1M−HClで2回、食塩水で1回洗い、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。残渣は2回トルエンに再懸濁、濃縮を繰り返して、残りのピリジンを共沸除去した。残渣を200mLのMeOHに溶かし、〜2gのp−トルエンスルホン酸一水和物を加えた。室温で2時間攪拌した後、溶媒の大部分をロータリーエバポレーターで除き、残渣を飽和NaHCO水およびEtOAcに分配した。層分離した後、有機層を再度NaHCOと、次いで食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製して、3−5を白色固体として得た。ラセミ体3−5のデータ:HNMR(500MHz,CDCl)δ8.15(m,1H),7.4−7.2(m,6H),7.0(m,1H),3.8−3.7(m,2H),3.6(m,1H),3.45(m,1H),2.9(m,1H),2.45(s,3H),2.3(m,1H),1.7−1.5(m,2H)ppm。HRMS(ES)計算値(M+H)C2020BrFNとして:419.0765。測定値:419.0769。
【0161】
工程4a:3−[(5S)−1−アセチル−3−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]プロパノール(3−6)
3−5のエナンチオマーの分割は、キラルセルOJ5cm×50cmカラムで実施し、100%MeOH、50mL/分で溶出した。分析条件:キラルセルOJ4.6×250mmカラム、100%MeOH、1.0mL/分−保持時間4.73分(不所望)および6.0分(所望品)。
【0162】
工程5:3−[(5S)−1−アセチル−3−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]プロパナール(3−6)
DCM(2.0mL)中の3−5(180mg、0.429mmol)の溶液に、室温、N下に、デス−マーチン・ペルヨーディナン(218mg、0.515mmol)を加えた。30分間攪拌した後、飽和NaSO水溶液をゆっくり加えて反応停止させ、次いで飽和NaHCO水溶液を加えた。この混合物を15分間攪拌し、EtOAcに注入し、分離した。有機相を飽和NaSO水溶液−飽和NaHCO水溶液の1:1で洗浄し、水、食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、濃縮して3−6を白色泡状物として得た。
3−6についてのデータ:HNMR(500MHz,CDCl)δ9.82(m,1H),8.08(m,1H),7.48(m,1H),7.36(m,2H),7.27(m,3H),6.99(m,1H),3.49(m,2H),3.16(m,1H),2.60(m,1H),2.50(m,1H),2.45(s,3H)ppm。LC−MS:rt=3.06分、m/z=417(M+1)。
【0163】
工程6:1−アセチル−4−{3−[(5S)−1−アセチル−3−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]プロピル}ピペラジン(3−7)
無水DCE(1.0mL)中の3−6(57mg、0.137mmol)の溶液に、Ar下、1−アセチルピペラジン(26.3mg、0.206mmol)、次いで水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(58.1mg、0.274mmol)を加えた。混合物を一夜攪拌し、飽和NaHCO水溶液で反応を停止させ、少量のDCMを加えた。水相をDCMで再抽出し、その有機相をヘキサン、EtOAc、およびEtOH−NHOH−HO(20:1:1)からなる混合物を使用しフラッシュクロマトグラフィー用のシリカゲルに直接負荷し、3−7を白色固体として得た。
3−7についてのデータ:HNMR(500MHz,CDCl)δ8.09(m,1H),7.47(m,1H),7.33(m,2H),7.24(m,3H),6.99(m,1H),3.59(m,3H),3.44(m,3H),2.87(m,1H),2.46−2.36(m,9H),2.18(m,1H),2.08(s,3H),1.49(m,2H)ppm。LC−MS:rt=2.10分;m/z=529(M+1)。HRMS(ES)計算値(M+H)C2630BrFNとして:529.1609。測定値:529.1632。
【0164】
工程7:1−アセチル−4−(3−{(5S)−1−アセチル−3−[2−フルオロ−5−(トリメチルシリル)フェニル]−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル}プロピル)ピペラジン(3−8)
無水THF(0.75mL)中の3−7(53mg、0.100mmol)の溶液に、−78℃、N下で、2.5M−n−BuLi/ヘキサン(60μL、0.150mmol)を滴下した。滴下後直ちに、クロロメチルシラン(51μL、0.400mmol)を加え、冷却浴を除き、反応液を室温に戻した。30分後に、飽和NHCl水溶液で反応を停止させ、EtOAcと飽和NaHCO水溶液に分配した。有機相を水、食塩水で洗い、NaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をCHCN/HO(0.1%TFA含有)による逆相分取HPLCにより精製した。所望の産物を含むフラクションを飽和NaHCO水溶液に注ぎ、EtOAcで抽出し、濃縮して遊離塩基3−8を澄明な無色油として得た。
3−8についてのデータ:HNMR(500MHz,CDCl)δ8.05(m,1H),7.52(m,1H),7.35−7.22(m,5H),7.08(m,1H),3.61(m,3H),3.47(m,3H),2.88(m,1H),2.48−2.38(m,9H),2.19(m,1H),2.07(s,3H),1.52(m,2H),0.30(s,9H)ppm。LC−MS:rt=2.11分;m/z=523.2(M+1)。HRMS(ES)計算値(M+H)C2939FNSiとして:523.2899。測定値:523.2865。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
aは0または1である;
bは0または1である;
mは0、1、または2である;
nは0または1である;
pは0、1、2または3である;
qは0、1、または2である;
uは1、2、3、4または5である;
は、
1)(C−Cアルキレン)n(C=X)O−C10アルキル、
2)(C−Cアルキレン)n(C=X)Oアリール、
3)(C−Cアルキレン)n(C=X)O−C10アルケニル、
4)(C−Cアルキレン)n(C=X)O−C10アルキニル、
5)(C−Cアルキレン)n(C=X)O−Cシクロアルキル、
6)(C−Cアルキレン)n(C=X)Oヘテロシクリル、
7)(C−Cアルキレン)n(C=X)NRc’
8)(C−Cアルキレン)nSONRc’
9)(C−Cアルキレン)nSO−C10アルキル、
10)(C−Cアルキレン)nSO−C10アルケニル、
11)(C−Cアルキレン)nSO−C10アルキニル、
12)(C−Cアルキレン)nSO−アリール、
13)(C−Cアルキレン)nSO−ヘテロシクリル、
14)(C−Cアルキレン)nSO−C−Cシクロアルキル、
15)アリール;
16)ヘテロシクリル;および
17)C−C10アルキルから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、へテロアリールおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
は、独立して、
1)(C=O)−C10アルキル、
2)(C=O)アリール、
3)COH、
4)ハロ、
5)CN、
6)OH、
7)O−Cペルフルオロアルキル、
8)O(C=O)NR10
9)S(O)
10)S(O)NR10、および
11)S(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよい;
およびRは、独立して、
1)H、
2)C−C10アルキル、
3)アリール、
4)C−C10アルケニル、
5)C−C10アルキニル、
6)C−Cペルフルオロアルキル、
7)C−Cアラルキル、
8)C−Cシクロアルキル、
9)ヘテロシクリル、および
10)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アラルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;または
同一の炭素原子に結合したRおよびRは一緒になって−(CH)u−を形成し、ここで、炭素原子の1個がO、S(O)m、−N(R)C(O)−、および−N(COR10)−から選択される部分で置換されてもよい;
は、
1)H、
2)C−C10アルキル、
3)アリール、
4)C−C10アルケニル、
5)C−C10アルキニル、
6)C−Cペルフルオロアルキル、
7)C−Cアラルキル、
8)C−Cシクロアルキル、
9)ヘテロシクリル、および
10)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アラルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
は、
1)水素、
2)(C=O)−C10アルキル、
3)(C=O)アリール、
4)COH、
5)ハロ、
6)CN、
7)OH、
8)O−Cペルフルオロアルキル、
9)O(C=O)NR10
10)S(O)
11)S(O)NR10、および
12)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよい;
は、
1)(C=O)−C10アルキル、
2)(C=O)アリール、
3)C−C10アルケニル、
4)C−C10アルキニル、
5)(C=O)ヘテロシクリル、
6)COH、
7)ハロ、
8)CN、
9)OH、
10)O−Cペルフルオロアルキル、
11)O(C=O)NR10
12)S(O)
13)S(O)NR10
14)オキソ、
15)CHO、
16)(N=O)R10
17)(C=O)−Cシクロアルキル、または
18)Si(Rである:
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
は、
1)(C=O)(C−C10)アルキル(ここで、rおよびsは独立して0または1である)、
2)O(C−C)ペルフルオロアルキル(ここで、rは0または1である)、
3)(C−C)アルキレン−S(O)(ここで、mは0、1、または2である)、
4)オキソ、
5)OH、
6)ハロ、
7)CN、
8)(C=O)(C−C10)アルケニル、
9)(C=O)(C−C10)アルキニル、
10)(C=O)(C−C)シクロアルキル、
11)(C=O)(C−C)アルキレン−アリール、
12)(C=O)(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、
13)(C=O)(C−C)アルキレン−N(R
14)C(O)R
15)(C−C)アルキレン−CO
16)C(O)H、
17)(C−C)アルキレン−COH、
18)C(O)NR10
19)S(O)
20)S(O)NR10
21)C(NH)NH;および
22)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)C−Cアルキル、オキソ、およびN(Rから選択される3個までの置換基で置換されてもよい;
およびR10は、独立して、
1)H、
2)(C=O)O−C10アルキル、
3)(C=O)O−Cシクロアルキル、
4)(C=O)Oアリール、
5)(C=O)Oヘテロシクリル、
6)C−C10アルキル、
7)アリール、
8)C−C10アルケニル、
9)C−C10アルキニル、
10)ヘテロシクリル、
11)C−Cシクロアルキル、
12)SO、および
13)(C=O)NRから選択される;
当該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;または
およびR10は、それらが結合する窒素と一緒になって、単環式または二環式へテロ環(各環が3〜7員であり、また該窒素に加えて、N、OおよびSから選択される1個または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、当該単環式または二環式へテロ環は、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクリルである;
はH、(C−C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)OC−Cアルキル、(C=O)C−CアルキルまたはS(O)である;当該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、へテロシクリル、OHまたはORである;当該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、Rから選択される1個以上の置換基で置換されてもよい;
XはO、NRおよびSから選択される;および
Wは結合、C=O、C=SおよびCH(OH)から選択される;
ただし、該化合物には少なくとも1個のケイ素原子が存在し、さらに−W−Rは−(C−C)アルキル−O−Si[(C−C)アルキル]ではないものとする。)で示される化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
式II:
【化2】

(式中、
aは0または1である;
bは0または1である;
mは0、1、または2である;
nは0または1である;
pは0、1、2または3である;
qは0または1である;
1’は、CF、NH、O(C−C10)アルキル、O(C−C10)アルケニル、O(C−C10)アルキニル、O(C−C)シクロアルキル、O(C−C)アルキレン−アリール、O(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、O(C−C)アルキレン−NR10、O(C−C)ペルフルオロアルキル、(C−C)アルキレン−COおよび(C−C)アルキレン−COHから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、へテロアリールおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
は、独立して、
1)(C=O)−C10アルキル、
2)(C=O)アリール、
3)COH、
4)ハロ、
5)CN、
6)OH、
7)O−Cペルフルオロアルキル、
8)O(C=O)NR10
9)S(O)
10)S(O)NR10、および
11)S(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよい;
は、
1)H、
2)C−C10アルキル、
3)アリール、
4)C−C10アルケニル、
5)C−C10アルキニル、
6)C−Cペルフルオロアルキル、
7)C−Cアラルキル、
8)C−Cシクロアルキル、
9)ヘテロシクリル、および
10)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アラルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
は、
1)水素、
2)(C=O)−C10アルキル、
3)(C=O)アリール、
4)COH、
5)ハロ、
6)CN、
7)OH、
8)O−Cペルフルオロアルキル、
9)O(C=O)NR
10)S(O)
11)S(O)NR、および
12)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよい;
は、
1)(C=O)−C10アルキル、
2)(C=O)アリール、
3)C−C10アルケニル、
4)C−C10アルキニル、
5)(C=O)ヘテロシクリル、
6)COH、
7)ハロ、
8)CN、
9)OH、
10)O−Cペルフルオロアルキル、
11)O(C=O)NR10
12)S(O)
13)S(O)NR10
14)オキソ、
15)CHO、
16)(N=O)R10
17)(C=O)−Cシクロアルキル、または
18)Si(Rである:
当該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
は、
1)(C=O)(C−C10)アルキル(ここで、rおよびsは、独立して、0または1である)、
2)O(C−C)ペルフルオロアルキル(ここで、rは0または1である)、
3)(C−C)アルキレン−S(O)(ここで、mは0、1、または2である)、
4)オキソ、
5)OH、
6)ハロ、
7)CN、
8)(C=O)(C−C10)アルケニル、
9)(C=O)(C−C10)アルキニル、
10)(C=O)(C−C)シクロアルキル、
11)(C=O)(C−C)アルキレン−アリール、
12)(C=O)(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、
13)(C=O)(C−C)アルキレン−N(R
14)C(O)R
15)(C−C)アルキレン−CO
16)C(O)H、
17)(C−C)アルキレン−COH、
18)C(O)N(R
19)S(O)
20)S(O)NR10
21)C(NH)NH;および
22)Si(Rから選択される;
当該アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)C−Cアルキル、オキソ、およびN(Rから選択される3個までの置換基で置換されてもよい;
およびR10は、独立して、
1)H、
2)(C=O)O−C10アルキル、
3)(C=O)O−Cシクロアルキル、
4)(C=O)Oアリール、
5)(C=O)Oヘテロシクリル、
6)C−C10アルキル、
7)アリール、
8)C−C10アルケニル、
9)C−C10アルキニル、
10)ヘテロシクリル、
11)C−Cシクロアルキル、
12)SO、および
13)(C=O)NRから選択される;
当該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;または
およびR10は、それらが結合する窒素と一緒になって、単環式または二環式へテロ環(各環が3〜7員であり、また該窒素に加えて、N、OおよびSから選択される1個または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、当該単環式または二環式へテロ環は、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルである;
はH、(C−C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)OC−Cアルキル、(C=O)C−CアルキルまたはS(O)である;当該アルキル、アリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール、へテロシクリル、OHまたはORである;当該アルキル、アリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルは、Rから選択される1ないし3個の置換基で置換されてもよい;
Wは結合およびCH(OH)から選択される;
ただし、該化合物には少なくとも1個のケイ素原子が存在し、さらに−W−Rは−(C−C)アルキル−O−Si[(C−C)アルキル]ではないものとする。)で示される請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項3】
{2−[1−アセチル−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]エチル}(ジメチル)シラノール;
{4−[1−アセチル−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル]ブチル}(ジメチル)シラノール;および
1−アセチル−4−(3−{(5S)−1−アセチル−3−[2−フルオロ−5−(トリメチルシリル)フェニル]−5−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−イル}プロピル)ピペラジン;
から選択される化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項4】
請求項1記載の化合物および医薬的に許容される担体を含有してなる医薬組成物。
【請求項5】
癌の治療を必要とする哺乳動物における癌の治療または予防方法であって、治療有効量の請求項1の化合物を当該哺乳動物に投与することを特徴とする方法。
【請求項6】
該癌が脳、尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および肺の各癌から選択されるものである請求項5記載の癌の治療または予防方法。
【請求項7】
該癌が組織球リンパ腫、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、および乳癌から選択されるものである請求項5記載の癌の治療または予防方法。
【請求項8】
癌の治療を必要とする哺乳動物における癌の治療または予防に有用な医薬の調製のための請求項1記載の化合物の使用方法。
【請求項9】
有糸分裂キネシンKSPの阻害治療を必要とする哺乳動物において、かかる阻害治療に有用な医薬の調製のための請求項1記載の化合物の使用方法。

【公表番号】特表2008−535803(P2008−535803A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501920(P2008−501920)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/008482
【国際公開番号】WO2006/101761
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】