説明

服薬コンプライアンス対応パッケージ

【課題】PTPを保持するケースであって、PTPをケースにセットする際に、PTP自体の折れや、封止シート材の破れが発生することのないものを提供する。
【解決手段】平坦な基板2に形成したドーム3内の空間に薬剤を保持し、封止シートでドーム3を閉じてなるPTPを保持するケース。本発明の保持ケースは、ドーム3を挿通させる開口11を備えた上壁部材10と、当該上壁部材に連設されるとともに上記開口に対応する位置に取出開口を形成する破断線21を有する下壁部材20とを備える。PTPは、上壁部材の開口11にドーム3を通した状態で、上壁部材10と下壁部材20との間に保持される。上壁部材10と下壁部材20が、それぞれに形成したスリット25a、25bと差込片15a、15bの係合によって係止される。PTPをケースにセットする際に、PTP自体を湾曲させる必要がないので、PTPの折れや破損を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服薬コンプライアンス対応パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
服用医薬において所望の効果を得るには、服薬コンプライアンスを遵守すること、すなわち、用法、用量を正しく守ることが必要である。特に、服用回数や服用量が変則的な医薬品では、コンプライアンスを遵守することが難しくなる。
そのため、服用者(患者)に対してこれをサポートするため、PTP(Press Through Pack)を保持する包装体であって、各錠剤の近辺に服用日時、服用量等を表示したものが種々提案されている。
【0003】
その中でも、特許文献1では、保持したPTPから錠剤を取り出し易く工夫した包装ケースが開示されている。
なお、一般的にPTP(Press Through Pack)とは、透明なプラスチック材に形成したドーム状の凹部に錠剤を収容し、これをアルミ箔等の薄いシート材で封止してなるパッケージ形態であって、従来から良く知られたものである(図1参照)。錠剤を取り出す際には、透明プラスチック材のドーム状の頭を指で押圧し、シート材を押し破って、錠剤を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された包装ケースにおいては、PTPは、その基板の周縁部をケースに形成したスリットに差し込むことで、ケースにセットされる。すなわち、全体が矩形のPTP基板部の対向する2つの側辺、または4つのコーナ部を、ケース壁面に設けたスリットに差し込む必要があるので、その際に、PTP自体を一時的に湾曲させることが必要となる。
このように、PTPを湾曲させることは、PTPのドームを閉じる封止シートが破れたり、PTP上に形成した各錠剤を区画するミシン目部分でPTPが折れることに繋がる。
本発明は、そのようなPTP自体の折れや、封止シートの破れが発生することのないPTP保持パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を有効に解決するために創案されたもので、以下の特徴を供えたPTP保持ケースを提供する。
【0007】
本発明の保持ケースは、「平坦な基板に形成したドーム内の空間に薬剤を保持し、封止シートでドームを閉じてなるPTP」を保持する。
この保持ケースは、「上記ドームを挿通させる開口を備えた上壁部材」と「当該上壁部材に連設されるとともに上記開口に対応する位置に取出開口を形成する破断線を有する下壁部材」とを備える。
PTPは、上壁部材の開口にドームを通した状態で、上壁部材と下壁部材との間に保持される。上壁部材と下壁部材は、それぞれに形成したスリットと差込片の係合によって係止される。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を備えた本発明のPTP保持ケースによれば、PTPは、上壁部材と下壁部材の間に単に挟み込まれた状態で保持される(PTPの位置決めは、ドームが上壁部材の開口にドームを通すことで達成される)。
すなわち、PTPをケースにセットする際に、PTP自体を湾曲させる必要がない。したがって、PTP自体の折れや、PTPのドームを閉じる封止シートの破れ等が生じることはない。
【0009】
また、本発明のPTP保持ケースは、下壁部材を外側から覆う下壁保護部材をさらに備えていてもよく、その場合には、次のようなメリットが得られる。すなわち、ケースに保持されたPTPのドームが誤って押圧され、ドーム内の錠剤が下壁部材の破断線を押し破った場合でも、錠剤が外に排出されるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のケースに保持されるPTPを説明する図。
【図2】本発明の一実施形態に係るPTP保持ケースを説明する図。
【図3】図2に対する変形例を説明する図。
【図4】図2のPTP保持ケースを、上壁部材と下壁部材の間にPTPを挟み込んだ状態で示す図。
【図5】図4の状態から、PTP保持ケースをさらに折り畳んでいく行程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。まず、本発明の保持ケースが対象とするPTP(Press Through Pack)について、図1を参照して説明する。
【0012】
≪PTP≫
プラスチック等でできた透明の基板2にドーム3が形成されていて、各ドーム3内の空間に錠剤あるいは薬剤等が収容される。そして、図中下方側から、アルミ箔等の封止シートでドーム3を閉じてパッケージとしている。
このような包装形態としてのPTP1は、従来から良く知られたものであって、錠剤を取り出す際には、ドーム3を指で押圧して封止シートを押し破り、錠剤を取り出す。
【0013】
≪PTPを挟み込んで保持する構成≫
図2は、本発明の一実施形態に係るPTP保持ケースを開いた状態で示している。このケースにおいては、上壁部材10と下壁部材20とで、PTPを挟み込むようにして保持する。
上壁部材10は、PTPのドーム3を挿通させる開口11を備えている。
下壁部材20は、折罫aを介して上壁部材10に連設されるとともに、開口11に対応する位置に円形の破断線21を有する。すなわち、上壁部材10と下壁部材20を折り畳んで重ねた時に、ドーム3と破断線21が重なる。
錠剤を取り出す時、ドーム3を上から指で押圧すると、錠剤が破断線21を押し破って外部に出る。
【0014】
上壁部材10の縁部には、円弧状に膨出する差込片15a、15bが形成されている。一方、下壁部材20の折罫aとは反対側の端部には、スリット25a、25bが形成されている。
PTPを下壁部材20の上に置いて、PTPを上から覆うように上壁部材10を重ねる(このとき、ドーム3が開口11に挿通される)。そして、差込片15a、15bを、それぞれスリット25a、25bに通すことで、PTPは確実に保持される。この保持動作に際して、PTPには実質上外力が作用しないと言える(すなわち、PTP自体をスリットに差し込む必要がないので、一時的にせよ、PTP自体を湾曲させる必要がない)。したがって、PTPの折れや、封止シートの破れ等を招くことがない。
【0015】
なお、上壁部材10および下壁部材20に形成する差込片およびスリットの具体的な形状は図示したものに限られず、任意の形態を採用できる。
例えば、図3に示したように、上壁部材10の2つのコーナ部16a、16bを差込片として利用し、これに対応するスリット26a、26bを下壁部材20に形成してもよい。この場合、上壁部材10に対して、特定の差込片をわざわざ形成する必要がないというメリットが得られる。
【0016】
≪チェック欄≫
図4は、上壁部材10と下壁部材20でPTPを挟み込んだ状態を示している。上壁部材10において、ドーム3が突出する開口11の近傍領域(例えば、3aで示した領域)に、薬剤の服用に関するチェック欄(図示せず)を設けてもよい。そのようなチェック欄は、すべてのドーム3に対して、それぞれ設けることが好ましい。
チェック欄は、例えば、「薬剤を服用すべき日時を印刷しておく」、「服用者が服用の有無をマークする領域を設ける」等、服用に関する情報を表示あるいは記入するための領域である。特に用法、用量が複雑な薬剤については、このようなチェック欄を設けることで、服用コンプライアンスの遵守をサポートすることができる。
【0017】
上に説明した通り、PTP自体の折れや、封止シートの破れを防止するという観点からは、互いに設けたスリットおよび差込片によって係合する上壁部材10と下壁部材20を含む構成であれば足りる。図示した実施形態においては、さらに幾つかの工夫を施している。
【0018】
≪上壁保護部材50および下壁保護部材60≫
下壁部材20に、所定幅Wの襠30を介して、上壁保護部材50を連設している。さらに、上壁保護部材50に、同じく所定幅Wの襠40を介して、下壁保護部材60を連設している。
【0019】
PTPを保持するよう折り重ねられた上壁部材10および下壁部材20は、図5中に矢印A、Bで示した手順で、上壁保護部材50および下壁保護部材60に包まれるように折り畳まれ、差込片61をスリット28に差し込んで固定される。
このとき、下壁保護部材60が、破断線21を有する下壁部材20を外側から覆って包み込むので、次のようなメリットをもたらす。すなわち、ドーム3を誤って押圧してしまった場合に、下壁保護部材60が存在しなければ、ドーム内の錠剤が下壁部材20の破断線21を破って排出されてしまう。下壁保護部材60を設けることで、ドーム3が誤って押圧された場合でも、不用意な錠剤の排出を防止できる。
【0020】
なお、下壁保護部材60の具体的な形態は、図示したものに限られない。下壁部材20を外側から覆うことで、錠剤が破断線21を押し破った場合でも、当該錠剤が外部に排出されないようにできれば、適宜の形態を採用することができる。
【0021】
上壁保護部材50は、下壁部材20と下壁保護部材60との間に位置するもので、上壁部材10を外側から覆って包み込むことで、ドーム3を保護し、誤ってドーム3が押圧されることを防ぐ。
また、上壁保護部材50の上端には、半円形の吊下フラップ51が連設されていて、そこには吊下孔52が設けられている。
【0022】
上壁保護部材50および下壁保護部材60を設けることで、上に説明したメリットの他にも、両部材50、60の面積を利用して、服薬コンプライアンスに関する情報を表示したり、服用者による何らかの書込み領域として使用できるというメリットも付加される。
【0023】
≪襠30、40の作用≫
上に説明したように、下壁部材20と上壁保護部材50の間、および上壁保護部材50と下壁保護部材60の間には、それぞれ、実質上同じ幅Wを有する襠30、40を配置している。幅Wは、ドーム3の高さにほぼ等しく設定している。
襠30、40が存在しない場合には、PTPが上壁保護部材50と下壁保護部材60との間に圧接され、特にドーム3の頭部に接触する上壁保護部材50に湾曲や折れが生じ、その結果、表示が読みにくくなる等の不都合が生じうる。襠30、40を設けることで、これを有効に回避できる。
【0024】
≪その他≫
本発明のPTP保持ケースの具体的な構成は、図示の例に限定されるものではない。例えば、図2において、上壁部材10と下壁部材20の配置を左右逆にしてもよく、その場合は、下壁部材20に差込片を設け、上壁部材10にスリットを設けることとなる。
【符号の説明】
【0025】
1 PTP
2 基板
3 ドーム
10 上壁部材
11 開口
15a、15b 差込片
16a、16b コーナ部(差込片として利用される)
20 下壁部材
21 破断線
25a、25b スリット
26a、26b スリット
28 スリット
30、40 襠
50 上壁保護部材
51 吊下フラップ
52 吊下孔
60 下壁保護部材
61 差込片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な基板(2)に形成したドーム(3)内の空間に薬剤を保持し、封止シートでドーム(3)を閉じてなるPTP(1)を保持するケースであって、
当該ケースは、上記ドーム(3)を挿通させる開口(11)を備えた上壁部材(10)と、当該上壁部材に連設されるとともに上記開口に対応する位置に取出開口を形成する破断線(21)を有する下壁部材(20)と、を備え、
PTP(1)は、上壁部材の開口(11)にドーム(3)を通した状態で、上壁部材(10)と下壁部材(20)との間に保持され、
上壁部材(10)と下壁部材(20)が、それぞれに形成したスリット(25a、25b)と差込片(15a、15b)の係合によって係止されている、PTP保持ケース。
【請求項2】
上記上壁部材(10)は、開口(11)の近傍領域(3a)に、薬剤の服用に関するチェック欄を備える、請求項1記載のPTP保持ケース。
【請求項3】
上記下壁部材(20)を外側から覆う下壁保護部材(60)をさらに備える、請求項1または2記載のPTP保持ケース。
【請求項4】
上記下壁部材(20)に、上壁部材(10)とは反対側に、上壁部材を外側から覆う上壁保護部材(50)が連設されていて、
当該上壁保護部材(50)に、下壁部材(20)とは反対側に、上記下壁保護部材(60)が連設されている、請求項3記載のPTP保持ケース。
【請求項5】
上記下壁部材(20)と上壁保護部材(50)の間、および上壁保護部材(50)と下壁保護部材(60)の間に、それぞれ、PTP(1)のドーム(3)の高さとほぼ等しい幅寸法(W)を有する襠(30、40)を備える、請求項1〜4のいずれか1つに記載のPTP保持ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66836(P2012−66836A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212487(P2010−212487)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】