説明

木ねじ

【課題】木材等の部材に螺着させる際の作業性の向上と部材割れの防止との両立を図り易くなる木ねじを提供することを目的とする。
【解決手段】螺旋状のねじ山9が形成された軸部3と、軸部3の先端側に形成されたドリル部7と、軸部3の基端側に形成された頭部5とを備えた木ねじ1Aにおいて、ドリル部7は、円錐状の芯部15と、芯部15に形成された螺旋状のドリル刃17と、を有し、ドリル刃17は、軸部3の軸線Laに沿った断面形状において、芯部15に連絡する先端側谷部17a、基端側谷部17bおよび頂部17cとを有し、軸線Laに直交し、且つ頂部17cを通る仮想平面Paを基準にして基端側谷部17bは仮想平面Paよりも先端側に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材または木質系部材に螺着される木ねじに関する。
【背景技術】
【0002】
木材等に螺着される木ねじには、一般的に、本体を成す軸部と、軸部の基端側に形成された台錐状の頭部とが形成されている。軸部の先端は尖っており、この先端に、木材等への食い込みを容易にするためのドリル刃(切刃)が形成された態様も知られている。切刃には、種々の形態があり、例えば、軸線回りに形成する螺旋状の切刃や、縦溝を切った切刃(特許文献1参照)などが知られている。特に、特許文献1に記載の木ねじの場合、全長が長くて深く打ち込まれる態様において、部材割れを防止し、且つ高い締結強度を確保できるという点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−295818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の木ねじの場合、木材等に螺着する際には、切刃の先端を木材等に押し当て、所定の押力を付与した状態で軸部が木材等に達するまで回転させる必要がある。押力を付与しながらの作業は負担が大きいため、切刃の先端から軸部までの距離は短い方が好ましい。しかしながら、切刃の先端から軸部までの距離が短くなると先端鋭角の角度が広がってしまい、部材割れが生じ易くなってしまう。また、螺旋状の切刃の場合、切刃の回転による推進力が働くので作業性の向上には有効であるが、部材割れの防止という観点から不十分であり、したがって、従来の木ねじにおいて、作業性の向上と部材割れの防止との両立を図ることは難しかった。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、木材等の部材に螺着させる際の作業性の向上と部材割れの防止との両立を図り易くなる木ねじを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、螺旋状のねじ山が形成された軸部と、軸部の先端側に形成された切削部と、軸部の基端側に形成された頭部とを備えた木ねじにおいて、切削部は、円錐状の芯部と、芯部に形成された螺旋状の切刃部と、を有し、切刃部は、軸部の軸線に沿った断面形状において、芯部に連絡する先端側谷部及び基端側谷部と、芯部から最も離れた頂部とを有し、軸部の軸線に直交し、且つ頂部を通る仮想平面を基準にして、基端側谷部は仮想平面上若しくは仮想平面よりも先端側に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る木ねじを木材等の部材に螺着する際には、切削部の先端を木材等に押し当てて切削部を回転させる。切削部の回転に伴って回転する切刃部は、回転に伴う所定の推進力を得て進行し、さらに、軸部が部材に到達すると下穴を形成するように回転する。ここで、従来の木ねじでは、下穴を形成する切刃等に関して、作業性の向上と部材割れの防止という観点からの具体的な工夫はない。例えば、螺旋状の切刃の場合、軸部のねじ山と同様の断面山形の切刃では、切削した部材の屑を基端側に送り出すための押力は外側に向けて働いてしまい、部材を押し広げる力が大きくなって部材割れが生じ易くなってしまう。一方で、本発明によれば、切刃部の断面形状において、基端側谷部は、軸線に直交して頂部を通る仮想平面上または仮想平面よりも先端側に形成されているので、切削した部材の屑を基端側に送り出すための押力は内側に向けて働き易くなり、部材を押し広げる力を抑えながら切刃部のリード(進行速度)を大きくできる。その結果として、部材に螺着させる際の作業性の向上と部材割れの防止との両立を図り易くなる。
【0008】
さらに、切刃部は、頂部と基端側谷部とを結ぶ直線状の追い側フランク部を更に有し、追い側フランク部に沿った仮想直線と軸線との間で形成される挟角のうち、基端側の挟角は鋭角であると好適である。追い側フランク部の法線方向、つまり、仮想直線に直交する方向に推進力の反力はかかるが、上記構成では、仮想直線と軸線との間で形成される挟角のうち、基端側の挟角は鋭角になるので、反力は主として内側に向けてかかるようになり、作業性の向上と部材割れの防止との両立を一層図り易くなる。
【0009】
さらに、切削部の切刃部のピッチは、軸部のねじ山のピッチよりも大きいと好適である。少なくとも切刃部と軸部とが同条の場合、上記構成では、切刃部のリード(進行速度)が軸部のリード(進行速度)よりも大きくなり、軸部が所定の推進力を得て進行している際に、切刃部は空回りして下穴の確実な形成が可能になる。その結果、軸部のスムーズな進行を促進すると共に、軸部の進行に伴う部材を押し広げる力を低減して部材割れを防止する。
【0010】
さらに、切刃部は複数条に形成されていると好適である。この構成では、一条に形成する場合に比べて、より確実に下穴の形成が可能になる。
【0011】
さらに、切刃部は二条に形成され、軸部のねじ山は二条に形成されていると好適である。切刃部と軸部のねじ山との両方を二条に形成することで、作業性の向上に有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、木材等の部材に螺着させる際の作業性の向上と部材割れの防止との両立を図り易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る木ねじの側面図である。
【図2】本実施形態に係る木ねじを先端側から見た底面図である。
【図3】本実施形態に係る木ねじのドリル部を拡大して示す側面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】従来の木ねじの一例を示し、(a)は先端側の拡大側面図であり、(b)は軸線に沿った断面図である。
【図6】ドリル部のドリル刃の作用を模式的に示す拡大断面図であり、(a)は本実施形態に係るドリル刃の断面図であり、(b)は図5で示す従来型ドリル刃の断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る木ねじのドリル部を拡大して示す側面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
【0015】
本実施形態に係る木ねじ1A(図1参照)は、例えば、断熱材の取り付けなどに用いられる。断熱材は、複数の柱または間柱と通気胴縁との間に配置され、通気胴縁及び断熱材を貫通して柱または間柱に螺着される木ねじ1Aによって締結固定される。
【0016】
図1及び図2に示されるように、木ねじ1Aは、主要部となる軸部3と、軸部3の一方の端部(基端)側に設けられた頭部5と、軸部3の他方の端部(先端)側に設けられたドリル部(切削部)7とを有して構成されている。木ねじ1Aのねじ外径は、例えば、4〜10mm程度である。
【0017】
軸部3は、先端側の一部分にねじ山9が形成された円柱状部材であり、ねじ山9が形成されたねじ部11の寸法などは、螺着される部材や挟持される部材の寸法などによって決まる。本実施形態に係る木ねじ1Aは二条ねじ(多条ねじ)であり、ねじ部11には、所定のピッチで二本のねじ山9が螺旋状に形成されている。軸部3の頭部5につながる首下には、例えば、ねじ山9のピッチよりも大きなピッチの雄ねじが形成された雄ねじ形成部13が設けられている。頭部5は、軸部3側で縮径した略円錐台形状をなし、テーパ面には複数の切削リブ5aが形成されている。
【0018】
図3はドリル部7を中心に示す拡大側面図であり、図4は軸部3の軸線Laに沿ってドリル部7を切断した場合を示す断面図である。図3に示されるように、ドリル部7は、先端が尖った略円錐状の芯部15と、芯部15の外周に螺旋状に形成されたドリル刃(切刃部)17とを有する。ドリル刃17は、ねじ部11と同様に二条(多条)に形成されており、二本のドリル刃17は、ねじ部11のねじ山9にそれぞれ連絡している。ドリル刃17は、部材に下孔を形成して軸部3のねじ山9の螺着をスムーズに行わせる機能を有する。
【0019】
ドリル部7の寸法等に関して、ねじ山9の進行する速度は、ドリル刃17が進行する切削速度を下回るように設計されている。具体的には、ドリル刃17のリードが8mm程度となるようにドリル刃17のピッチPを決め、ねじ山9のリードが5mm程度となるようにねじ山9のピッチPを決めることで、ドリル刃17のピッチPは、ねじ山9のピッチPよりも大きくなるように設計されている。ドリル刃17のリード(進行速度)がねじ部11のねじ山9のリード(進行速度)よりも大きくなると、ねじ部11が所定の推進力を得て進行している際に、ドリル刃17は空回りして下穴の確実な形成が可能になる。その結果、ねじ部11のスムーズな進行を促進すると共に、ねじ部11の進行に伴う部材を押し広げる力を低減して部材割れを防止する。
【0020】
ここで、ドリル刃17のピッチPが大きくなるということは、実質的にドリル部7の軸線La方向の長さが長くなることにつながる。そして、ドリル部7の軸線La方向の長さが長くなるということは、軸部3のねじ山9が部材に到達するまでの時間が長くかかってしまうことになり、従って、ねじ部11の機能が働くのが遅くなり、かえって施工性を損なう虞がある。そこで、例えば、ドリル刃17のピッチPが、ねじ山9のピッチPよりも大きく、且つねじ山9のピッチPの2倍よりも小さくすることで施工上の最適な範囲を簡単に実現できる。
【0021】
図4に示されるように、軸部3の軸線Laに沿って切断した場合のドリル部7の断面形状では、例えば、略二等辺三角形状の芯部15の断面に対して三個のドリル刃17が三角形の棘状にて断面上に現れる。三個のドリル刃17の断面形状のうち、最も面積が大きいドリル刃17、すなわち、ねじ部11に近い側のドリル刃17を代表して説明する。
【0022】
断面形状におけるドリル刃17の外形線において、芯部15に連絡する側の端部は先端側と基端側の二カ所有り、先端側の端部が先端側谷部17aであり、基端側の端部が基端側谷部17bである。また、芯部15から最も離れた位置に頂部17cを有し、頂部17cと先端側谷部17aとを結ぶ直線領域は進み側フランク部17dであり、頂部17cと基端側谷部17bとを結ぶ直線領域は追い側フランク部17eである。
【0023】
基端側谷部17bは頂部17cよりも先端側となるように形成されている。具体的には、軸線Laに直交し、且つ頂部17cを通る仮想平面Paを基準にした場合に、基端側谷部17bは頂部17cよりも先端側となるように形成されており、さらに、追い側フランク部17eに沿った仮想直線Lbと軸線Laとの間で形成される挟角のうち、基端側の挟角αは鋭角になるように形成されている。
【0024】
なお、上記の説明では、ねじ部11に近い側のドリル刃17の断面形状を代表して説明しているが、ドリル部7の先端に近い側の他のドリル刃17の断面形状も基本的には同様である。
【0025】
なお、ねじ山9の断面形状は、先端側の谷部9a、基端側の谷部9bおよび頂部9cを三つの頂点とする略三角形状となり、軸線Laに直交し、且つ頂部9cを通る仮想平面Pbを基準にした場合に、基端側の谷部9bは頂部9cよりも基端側になるように形成され、先端側の谷部9aは頂部9cよりも先端側になるように形成されている。
【0026】
本実施形態に係る木ねじ1Aの作用について、従来の木ねじ100(特許文献1参照)と比較して説明する。なお、図5は、従来の木ねじ100の先端部分を拡大して示し、(a)は側面図、(b)は軸線Lcに沿った断面図である。まず、図5を参照して従来の木ねじ100について簡単に説明する。
【0027】
従来の木ねじ100の軸部101には、先端側の一部分に、例えば、二条のねじ山102が形成されている。ねじ山102の頂部は、先端側の始点103で最も低くなっている。軸部101の先端には、軸線Lcに沿った縦方向の切刃104が形成されている。切刃104は部材に下孔を形成するという作用を奏するが、軸部101の回転に伴う推進力を発揮することはなく、ねじ山102の始点近傍の部分において実質的な推進力の発揮が始まる。以下、ねじ山102の始点近傍の部分を従来型ドリル刃103と称する。なお、特許文献1に記載の木ねじ100の場合、ねじ山102のピッチは、全領域において同一であるが、本実施形態と対比して説明する便宜上、ねじ山102の始点近傍でのピッチは、基端側のピッチよりも大きいという前提で以下の説明を行う。
【0028】
図5(b)に示されるように、軸線Lcに沿って木ねじ100を切断した断面形状の場合、例えば、先端に形成された略二等片三角形状の切刃104と径方向に突き出した複数の棘状のねじ山102とが現れ、特に、始点近傍のねじ山が従来型ドリル刃103である。従来型ドリル刃103の断面形状は、先端側の谷部103a(図6(b)参照)、基端側の谷部103bおよび頂部103cを三つの頂点とする略三角形状となり、軸線Lcに直交し、且つ頂部103cを通る仮想平面Pcを基準にした場合に、基端側の谷部103bは頂部103cよりも基端側になるように形成され、先端側の谷部103aは頂部103cよりも先端側になるように形成されている。
【0029】
次に、図6を参照して本実施形態に係る木ねじ1Aの作用について、従来の木ねじ100と比較して説明する。なお、図6は、ドリル部7のドリル刃17の作用を模式的に示す拡大断面図であり、(a)は本実施形態に係るドリル刃17の断面図であり、(b)は図5で示す従来型ドリル刃の断面図である。
【0030】
木ねじ1Aを木材等の部材に螺着する際には、ドリル部7の先端を木材等の部材Tに押し当て、所定の推進力を付与しながら回転させる。軸部3の回転に伴って回転するドリル刃17は、回転に伴う所定の推進力を得て進行する。この初期段階での木ねじ1Aの進行速度は、ドリル刃17のピッチに依存する。一方で、ねじ部11が部材Tに到達して部材Tに螺合すると、木ねじ1Aの進行速度は、ねじ部11のピッチに依存することになる。本実施形態の場合、ドリル刃17のピッチは、ねじ部11のピッチよりも大きいので、ねじ部11が部材に到達すると、ドリル刃17は空回りして下穴が形成される。
【0031】
ここで、従来型ドリル刃103も同様に作用して下穴を形成するが、従来型ドリル刃103では、切削した部材Tの屑を基端側に送り出すための押力F(図6(b)参照)は外側に向けて働いてしまい、部材Tを押し広げる力が大きくなって部材割れが生じ易くなってしまう。これに対して、本実施形態に係るドリル刃17の場合、切削した部材Tの屑を基端側に送り出すための押力F(図6(a)参照)は内側に向けて働くようになり、その結果として、部材Tを押し広げる力を抑え易くなり、ドリル刃17のリード(進行速度)を大きくできる。
【0032】
次に、本実施形態に係る木ねじ1Aの効果について説明する。上述のように、本実施形態に係る木ねじ1Aによれば、従来の木ねじ100に比べてドリル刃17のリード(進行速度)を大きくできるため、部材Tに螺着させる際の作業性の向上と部材割れの防止との両立を図ることができる。特に部材割れが発生すると、ビスの打ち直しが必要になったり、場合によっては部材交換が必要になったりして、大きなロスが発生してしまうが、木ねじ1Aによれば、このようなロスの発生を効果的に防ぐことができるという点でも有利である。さらに、ねじ外径が比較的大きな木ねじを用いる必要がある場合には一般的に部材割れが生じ易くなるが、本実施形態に係る木ねじ1Aでは部材割れを効果的に防止できるので、ねじ外径が大きな場合に特に有利である。
【0033】
さらに、木ねじ1Aを回転させて進行させると、追い側フランク部17eの法線方向、つまり、仮想直線Lbに直交する方向に推進力の反力Fがかかるが、木ねじ1Aのドリル刃17では、仮想直線Lbと軸線Laとの間に形成される挟角のうち、基端側の挟角αが鋭角になっているので、反力Fは主として内側に向けてかかるようになり、作業性の向上と部材割れの防止との両立を図る上で非常に有利である。
【0034】
また、一般流通品や上述の従来の木ねじ100では、施工に多大な時間(労力)を要して負荷が大きいが、木ねじ1Aによれば、理論上の施工時間を例えば、1/2程度に短縮でき、作業の効率化および労務コストの削減が可能になる。
【0035】
また、一般の流通品では、電動ドライバーなどの施工工具に大きな負荷がかかり、機械の故障を引き起こし易いが、木ねじ1Aによれば、電動ドライバーなどの施工工具にかかる負荷が減り、施工工具の寿命を延ばすことも可能になる。
【0036】
また、一般の流通品や上述の従来の木ねじ100では、施工時に多くの騒音を発生させてしまう可能性があるが、木ねじ1Aの場合には、騒音の音量自体を抑えることが可能になり、さらに騒音が発生したとしても、その発生時間を短縮することができる。
【0037】
また、上述の従来の木ねじ100では、先端の切刃自体には推進力を発揮する機能が無いため、施工初期からねじ山102が部材に到達するまでの間、人力で推進力を付与し続ける必要があり、特に不安定な足場での作業には細心の注意が必要であることもあって施工上の負担が非常に大きい。これに対して本実施形態に係る木ねじ1Aでは、施工初期の段階からドリル刃17の回転によって推進力を得られるので施工上の負担を軽減できる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る木ねじ1Aでは、ドリル刃17は、二条(複数条)に形成されているので、一条に形成する場合に比べてリードが大きくなって作業性の向上に有効である。さらに、本実施形態に係る木ねじ1Aでは、ドリル刃17と軸部3のねじ山9との両方が二条に形成されているので、作業性の向上に特に有利である。
【0039】
なお、ドリル刃17の断面形状は、基端側に比べて先端側ほど頂部17cの高さ(芯部15からの距離)は低くなり、製造上、挟角αを鋭角に加工するのが難しくなる。従って、実施品では先端側の一部分における挟角αが鈍角になる可能性はある。しかしながら、ドリル部7に形成されたドリル刃17の少なくとも一部分、特に、ねじ部11に近い基端側の一部分の挟角αが鋭角に形成されていれば上述の効果を奏すると期待できるため、本実施形態では、そのような形態も想定されている。
(第2実施形態)
【0040】
次に、図7および図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る木ねじについて説明する。なお、図7はドリル部を中心に示す拡大側面図であり、図8は軸部の軸線に沿ってドリル部を切断した場合を示す断面図である。また、本実施形態に係る木ねじについて、第1実施形態に係る木ねじと同様の要素については、同一の符号を記して詳細な説明は省略する。
【0041】
本実施形態に係る木ねじ1Bは、主要部となる軸部20と、軸部20の一方の端部(基端)側に設けられた頭部5(図1参照)と、軸部20の他方の端部(先端)側に設けられたドリル部(切削部)21とを有して構成されている。
【0042】
本実施形態に係る木ねじ1Bは一条ねじであり、軸部20のねじ部23には、所定のピッチで一本のねじ山24が螺旋状に形成されている。
【0043】
図7に示されるように、ドリル部21は、先端が尖った略円錐状の芯部25と、芯部25の外周に螺旋状に形成されたドリル刃(切刃部)27とを有する。ドリル刃27は、二条に形成されており、二本のドリル刃27のうち、一本のドリル刃27はねじ部23の一条のねじ山24に連絡している。ドリル刃27は、部材に下孔を形成して軸部20のねじ山24の螺着をスムーズに行わせる機能を有する。
【0044】
軸部20の軸線Ldに沿って切断した場合のドリル部21の断面形状(図8参照)においてドリル刃21の外形線は、芯部25に連絡する先端側谷部21a、基端側谷部21bおよび頂部21cを有する。さらに、ドリル刃21の外形線において、頂部21cと先端側谷部21aとを結ぶ直線領域は進み側フランク部21dであり、頂部21cと基端側谷部21bとを結ぶ直線領域は追い側フランク部21eである。
【0045】
基端側谷部21bは頂部21cよりも先端側となるように形成されている。具体的には、軸線Ldに直交し、且つ頂部21cを通る仮想平面Pdを基準にした場合に、基端側谷部21bは頂部21cよりも先端側となるように形成されており、さらに、追い側フランク部21eに沿った仮想直線Leと軸線Ldとの間で形成される挟角のうち、基端側の挟角βは鋭角になるように形成されている。
【0046】
本実施形態に係る木ねじ1Bによれば、第1の実施形態に係る木ねじ1Aと同様に、従来の木ねじ100に比べて木材等の部材に螺着させる際の作業性の向上と部材割れの防止との両立を図り易くなる。
【0047】
以上、本発明を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、以上の実施形態のみに限定されず、例えば、軸部の軸線に沿った断面形状において、基端側谷部と頂部とが軸線方向の同一の高さ位置、つまり、軸線に直交し、且つ頂部を通る仮想平面を基準にして基端側谷部が仮想平面上に形成されていてもよい。また、頂部と基端側谷部とを結ぶ追い側フランク部は直線状に限定されず、凹曲線状であってもよい。また、軸部のねじ山を二条にし、切刃部を一条としたり、軸部のねじ山と切刃部とを両方とも一条としたりしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1A,1B…木ねじ、3,20…軸部、5…頭部、7,21…ドリル部(切削部)、9,24…ねじ山、15,25…芯部、17,21…ドリル刃(切刃部)、La,Ld…軸線、17a,21a…先端側谷部、17b,21b…基端側谷部、Pa,Pd…仮想平面、17e,21e…追い側フランク部、Lb,Le…仮想直線、α,β…基端側の挟角、P…ドリル刃のピッチ、P…ねじ山のピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状のねじ山が形成された軸部と、前記軸部の先端側に形成された切削部と、前記軸部の基端側に形成された頭部とを備えた木ねじにおいて、
前記切削部は、
円錐状の芯部と、前記芯部に形成された螺旋状の切刃部と、を有し、
前記切刃部は、
前記軸部の軸線に沿った断面形状において、前記芯部に連絡する先端側谷部及び基端側谷部と、前記芯部から最も離れた頂部とを有し、前記軸線に直交し、且つ前記頂部を通る仮想平面を基準にして、前記基端側谷部は前記仮想平面上若しくは前記仮想平面よりも先端側に形成されていることを特徴とする木ねじ。
【請求項2】
前記切刃部は、前記頂部と前記基端側谷部とを結ぶ直線状の追い側フランク部を更に有し、前記追い側フランク部に沿った仮想直線と前記軸線との間で形成される挟角のうち、前記基端側の挟角は鋭角になることを特徴とする請求項1記載の木ねじ。
【請求項3】
前記切削部の前記切刃部のピッチは、前記軸部の前記ねじ山のピッチよりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の木ねじ。
【請求項4】
前記切刃部は複数条に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の木ねじ。
【請求項5】
前記切刃部は二条に形成され、前記軸部のねじ山は二条に形成されていることを特徴とする請求項4記載の木ねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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