木拾い用接合金具および木拾い装置
【課題】木拾いをより容易かつ正確に行う。
【解決手段】建築施工で使用される縦材を模擬した縦材と、横架材を模擬した横材とを接合して当該建築施工に係る骨組模型を作製可能とする木拾い用接合金具乃至木拾い装置である。接合金具は、鉛直上方に延在して縦材の下端部を挿入可能な第一縦材受部及び鉛直下方に延在して縦材の上端部を挿入可能な第二縦材受部のうちの何れか一方又は双方と、横材の端部を受入れ可能に上面が開放された溝形の断面形状を有しかつ横材を支持可能に略水平に張出する1以上の横材受部とを備える。横材受部は、横材受部の内面から内方に突出して横材受部に嵌め込まれた横材の水平方向への抜脱を阻止する突起部(例えば互いに対向するように鉛直に延在する一対の凸条)を有する。横材には、両端部に横材受部の突起部と係合する凹部(例えば溝)を設ける。
【解決手段】建築施工で使用される縦材を模擬した縦材と、横架材を模擬した横材とを接合して当該建築施工に係る骨組模型を作製可能とする木拾い用接合金具乃至木拾い装置である。接合金具は、鉛直上方に延在して縦材の下端部を挿入可能な第一縦材受部及び鉛直下方に延在して縦材の上端部を挿入可能な第二縦材受部のうちの何れか一方又は双方と、横材の端部を受入れ可能に上面が開放された溝形の断面形状を有しかつ横材を支持可能に略水平に張出する1以上の横材受部とを備える。横材受部は、横材受部の内面から内方に突出して横材受部に嵌め込まれた横材の水平方向への抜脱を阻止する突起部(例えば互いに対向するように鉛直に延在する一対の凸条)を有する。横材には、両端部に横材受部の突起部と係合する凹部(例えば溝)を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木拾い用接合金具および木拾い装置に係り、特に木造建築施工の一作業工程である木拾いをより容易かつ正確に行うことを可能とする補助用具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの木造家屋を在来軸組工法によって建築する場合には、その一作業工程として木拾いが必要となる。この木拾いとは、木造工事で必要となる構造部材や造作部材など使用するすべての木材について、その樹種や寸法、等級、数量などの内訳明細を設計図面から拾い出す作業であり、木造住宅の数量算出の中心となる作業である。
【0003】
かかる木拾いは従来、現場施工を行う建築技術者(大工)や工務店が行っていたが、近年では建築技術者の深刻な人手不足もあって大工・工務店が木拾いを行うことは殆どなく、木材を切断・加工するプレカット工場へ木拾いを一任することが多い。
【0004】
また、出願人は先に木拾いを支援する用具の提案を行った(下記特許文献1)。更に、木拾いを支援するコンピュータソフトウエアも各種販売されており、リフォームに関するものではあるが、木拾い積算を支援するシステムの提案もなされている(下記特許文献2,3)。
【特許文献1】特開2004−117914号公報
【特許文献2】特開平8−77233号公報
【特許文献3】特開平9−170330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木拾いは熟練を要し、また熟練しても時間が掛かり煩雑な作業であってこれを間違えなく行うことは必ずしも容易ではない。
【0006】
なぜなら、建物一棟で使用される使用される木材の種類は、個人住宅のような小規模な建物であっても数十種類にも及び、その総数は数百本にもなるからである。しかも、比較的大規模な建物では個別の構造計算に基づいて建物各部の使用木材(材寸等)が決定されるが、例えば木造個人住宅のような小規模な建物にあっては、現場の施工技術者(棟梁/大工)が経験と勘に基づいて建物各部への適切な木材(材寸/特に断面寸法)を決定するのが通常であり、実際に施工される木材を設計図面から一律に導き出すことは出来ない事情もある。
【0007】
したがって、使用木材すべてを間違えなく正確に揃えることは容易ではなく、施工技術者(現場)と木材を加工するプレカット工場との間の意思疎通の不足や誤解から、現場が望む木材と実際に納品された木材との間に差異が生じることが現実に少なくない。
【0008】
一方、上記コンピュータシステムは、このような木拾い作業の煩雑さを回避し効率化を図る。しかしながら、この種のコンピュータシステムは、一般に高価で購入し難く、データの入力に手間を要する難がある。更に、操作を会得するのに一定の訓練が必要で、コンピュータ装置に比較的馴染みの薄い現場技術者にとっては容易に受け入れ難い面もあり、未だ広く普及するには至っていない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、木拾いをより容易かつ正確に行うことを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る木拾い用接合金具は、建築施工で使用される縦材を模擬した模擬縦材と、建築施工で使用される横架材を模擬した模擬横材とを接合して当該建築施工に係る骨組模型を作製可能とする木拾い用接合金具であって、略鉛直上方に延在して模擬縦材の下端部を挿入可能な第一縦材受部、および、略鉛直下方に延在して模擬縦材の上端部を挿入可能な第二縦材受部のうちのいずれか一方または双方と、模擬横材の端部を受け入れられるように上面が開放された溝形の断面形状を有しかつ当該模擬横材を支持可能に略水平に張出する1つ以上の横材受部とを備える。
【0011】
また、本発明に係る木拾い装置は、建築施工で使用される縦材を模擬した複数の模擬縦材と、建築施工で使用される横架材を模擬した複数の模擬横材と、本発明に係る複数の接合金具とを含む。
【0012】
本発明に係る接合金具および木拾い装置は、施工対象である建物の骨組模型(木拾い装置)を作製し、この模型を使用して木拾い作業を行うことを可能とするものである。
【0013】
建築施工に使用され、また本発明の対象となる施工木材は、大別して、鉛直方向に延在する部材(縦材)と、水平方向に延在する部材(横架材)と、斜め方向に延在する部材(斜材)とがある。縦材は、例えば柱や束などの部材を含み、これらを模擬したものが本発明に云う模擬縦材である。一方、横架材は、例えば梁(床張り、2階床張り、胴差、妻梁等)や桁、棟木などの部材を含み、これらを模擬したものが本発明に云う模擬横材である。尚、本発明の木拾い装置は、上記斜材を模擬した模擬斜材を含んで良く、また当該模擬斜材を接合する金具を、上記縦材受部または横材受部の張出(延在)角度を変更することにより同様に構成することが可能であるが、これについては後に述べる。
【0014】
接合金具は、各模擬部材同士を接合する。具体的には、第一または第二縦材受部に縦材の端部を挿入することにより当該縦材を接合金具に支持させることが出来る。この第一および第二縦材受部の具体的構成としては、例えば横断面が方形の角形のパイプ形状を呈するようにすれば良い。また、上面が開放された溝形の断面形状を有する上記横材受部に、上面側から模擬横材の端部を落とし込むことにより当該接合金具に模擬横材を支持させることが出来る。
【0015】
各模擬部材(模擬縦材,模擬横材)は、例えば木材により構成することが出来るが、樹脂や金属その他の材料を使用することも可能であり、構成材料は特に限定されない。また、これら模擬部材は、実際の施工部材を一定の縮尺で縮小した寸法を有するよう構成することが望ましい。施工に係る建物骨組(各構成部材)を直感的に正確かつ容易に把握可能とし、木拾い作業をより確実に行うことが出来るようにするためである。
【0016】
他方、接合金具を形成する材料は、典型的には金属材料(例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスその他の金属)を使用するが、必ずしもこれに限定されず、例えば樹脂(プラスチック)その他の材料を使用しても構わない。これら金属以外の材料によっても同様の機能を有する金具を構成することが可能である。
【0017】
横材受部は、当該横材受部の内面から内方に突出して当該横材受部に嵌め込まれた模擬横材の水平方向への抜脱(抜け出し)を阻止する突起部を備えるよう構成することが好ましい。模擬横材が接合金具から不用意に抜け、上記骨組模型(木拾い装置)が組み立て途中で、あるいは組み立て後、木拾い作業中に崩壊することを防ぐためである。
【0018】
上記突起部は、例えば、横材受部の対向する一対の側壁の内面に互いに対向するように略鉛直に延在する一対の凸条とすれば良い。ただし、当該突起部はこのような線状のものに限られず、例えば横材受部の内壁面から突出した点状(ピン状)の突起(後述の図8のような)等であっても構わない。
【0019】
接合金具に上記のような突起部を設ける場合には、模擬横材側には、当該突起部と係合する凹部をその(模擬横材の)両端部に設ける。この凹部は、例えば、横材受部に対し上面側から模擬横材の端部を落とし込むときに、横材受部に設けられた前記突起部の嵌入を許容する略鉛直方向に延在する溝とすることが出来る。
【0020】
また上記横材受部として、例えば、隣り合う横材受部と互いに略90度の角度をもって四方に放射状に張出する4つの横材受部を設けても良い。
【0021】
このような四方に張出する4つの横材受部を有する金具構造によれば、例えば、(1)直交する2方向からの模擬横材を接合する必要が生じることがある建物隅角部、(2)反対方向からの(180度の角度をもって)模擬横材を接合する必要が生じることがある建物周縁部、並びに(3)互いに直交する3方向または4方向からの模擬横材を接合する必要が生じることがある建物内側部の総てのケースについて模擬部材の接合を行うことが可能となるから、木拾い装置を構成する部品点数(接合金具の種類)を減らし、装置を単純化することが出来る。
【0022】
更に上記接合金具では、下面が開放された溝形の横断面形状を有して下面側から模擬横材を受け入れて当該模擬横材への嵌合を可能とする横材係合部、および、上面が開放された溝形の横断面形状を有して上面側から模擬横材を受け入れて当該模擬横材への嵌合を可能とする横材係合部のうちのいずれか一方を更に備えることがある。
【0023】
このような接合金具によれば、模擬横材の中間部から立ち上がる模擬縦材(例えば間柱等)を設けることが出来る。具体的には、模擬横材の中間部において、当該模擬縦材の下端部については模擬横材の上面側から、また当該模擬縦材の上端部については模擬横材の下面側から、それぞれ上記横材係合部を模擬横材に嵌合させることにより当該接合金具を設置し、前記第一ないし第二の縦材受部を使用して当該模擬縦材を固定すれば良い。
【0024】
また、本発明の木拾い装置は、斜め方向に(鉛直方向又は水平方向に対して一定の角度をもって)延在する木材部材(例えば、たる木、筋かい等)を模擬した模擬部材(以下、模擬斜材という)と、このような模擬斜材同士、または模擬斜材と模擬縦材若しくは模擬横材とを接合する金具を含んでいても良い。かかる金具は、例えば、上記模擬斜材の端部を挿入し支持可能な斜材受部を少なくとも1つ備え、更に上述した縦材受部および横材受部のうちの一方または双方を有するものとして構成することが可能である。
【0025】
更に、本発明の木拾い装置は、縦材を支持する上記第一および第二縦材受部を備えず、横材受部のみ、あるいは横材受部と前記横材係合部のみを有する接合金具を含んでいても良い。このような金具は、例えば床組において大引と根太とを接合する金具等として使用することが可能である。
【0026】
本発明によれば、施工対象の平面図(伏図:土台伏せ/1階2階伏せ/小屋伏せ等)に基づいて建物各部で使用される木材を縮小した模擬部材を使用し、これらを接合して骨組模型を作ることにより木拾い作業を行うことが出来る。
【0027】
本発明では特に、立体的な骨組模型を組み立てながら或いは見ながら、視覚的・直感的に最適な材寸の部材を選択し決定することが出来る利点がある。また例えば、組み立てた骨組模型から各部の木材の種類を確認し、不適切な箇所はこれをより適切な模擬木材に置き換えることによって修正した後、各部材の数量を数える(又は模型を分解して模擬部材を種類別に分けた後に種別ごとに部材数量を数える)ことによって容易かつ正確に部材を把握することが可能となる。
【0028】
また、本発明では立体的な模型を実際に作製するから建物の骨組全体をイメージしやすく、木拾いに不慣れな者にとっても、或いは設計士との打ち合わせにおいても迅速に間違えなく木材の数量算出を行うことが出来る。また、平面図だけではわかり難い逃げの確認や、1階と2階の柱の位置確認等も容易である。更に、組み立てた骨組模型(木拾い装置)を真上から写真撮影しそれをコピーすれば、手板として利用することも可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、木拾いをより容易かつ正確に行うことが可能となる。
【0030】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。尚、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。また、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る接合金具並びに模擬部材を示すものである。この図に示すように接合金具11(第一金具という)は、角材状の模擬縦材101(以下、単に縦材ということがある)の下端部を挿入することが可能なように鉛直上方に延びかつ中空の角形パイプ形状を呈する第一縦材受部12と、角材状の模擬縦材101の上端部を挿入することが可能なように鉛直下方に延びかつ同じく中空の角形パイプ形状を呈する第二縦材受部13と、模擬横材201(以下、単に横材ということがある)の端部を受け入れて支持できるように水平に張出しかつ底板22および左右両側板23,24を有して角形パイプの一面(上面)を取り除いた形状を呈する4つの横材受部21とを有する。
【0032】
各縦材受部12,13は略正方形の水平断面形状を有し、第一縦材受部12は上面が開放され縦材101を受け入れる開口14となっており、挿入された縦材101の下端面に当接して当該縦材101を支持する底面を有する一方、第二縦材受部13は逆に下面が開放されて縦材101を受け入れる開口となっており、挿入された縦材101の上端面に当接して当該縦材101を支持する(縦材101に当該接合金具11を支持させる)天面を有する。
【0033】
金具11の中央部には、隣り合う面が互いに直交する六面体(立方体または直方体)の形状をなす連結部15を備え、この連結部15に上記縦材受部12,13および横材受部21を固定することにより各受部12,13,21が当該金具11として一体に構成されている。
【0034】
横材受部21は、互いに90度の角度をもって四方に張り出し、左右の各側板23,24の内面には、横材201の抜けを防ぐ突起部として、互いに対向するように突出し鉛直方向に延在する凸条25,26を設ける。また、模擬横材201の両端部には、これらの凸条25,26に嵌合する溝202〜205を設ける。これら溝202〜205は、横材201の両側面に形成してあり、図1において一点差線で示すように横材受部21に対しその上面側から落とし込むようにして横材201の端部を挿入すると横材受部21の凸条25,26が横材側面の溝202,203に嵌入し、これにより横材201が水平方向に抜け出すことが阻止される。
【0035】
尚、かかる突起部および溝は、図示の例に限られるものではなく、例えば図8に示すように溝202〜205に嵌入可能なピン状の突起35,36を設けても同様に横材201の抜けを防止することが出来る。
【0036】
また、上記図1の金具では、縦材受部を2つ、横材受部を4つ備えるものとしたが、各受部の配設個数は、様々に変更することが可能である。例えば、図2に示すように1つの縦材受部(第一縦材受部)12と4つの横材受部21を備えるように、また図3に示すように1つの縦材受部(第一縦材受部)12と互いに直交する方向に張り出す2つの横材受部21を備えるように、更に図4に示すように1つの縦材受部(第一縦材受部)12と互いに逆方向に(180度の角度をもって)張り出す2つの横材受部21を備えるように、それぞれ構成することも可能である。また、横材受部21を3つ備える構造(図示せず)としても良い。これらの金具20,31,41は、例えば、上方にのみ縦材を接合する土台部に用いることが出来る。
【0037】
また、図5に示すように、第二縦材受部13と4つの横材受部21を備えるようにしても良いし、この金具51において更に上記図3ないし図4等のように横材受部21を2つないし3つ備えるよう構成することも可能である。これらの金具は、例えば、下方にのみ縦材を接合する例えば天井部や小屋組の一部等において使用することが出来る。
【0038】
更に、図6および図7に示すように横材201の中間部に装着可能な金具(第二金具と称する)61,71を構成することも可能である。これら第二金具61,71は、同図に示すように前記第一金具11(図1)ないしその変形例20,31,41,51(図2〜図5)と同様に、横材受部21と縦材受部(第一縦材受部12又は第二縦材受部13)とを備えるものであるが、縦材受部の上面部(図6)または下面部(図7)に横材201を受け入れる横材係合部16,17を備えている。
【0039】
より具体的には、図6に示す金具61は、横材201の下面側から設置可能なもので、互いに逆方向に張り出す2つの横材受部21の間に上記横材係合部16を備え、この横材係合部16の下面に、鉛直下方に延びる第二縦材受部13を配している。横材係合部16は、この図6に示す金具61では、底面とその両側縁部から立ち上がる側面とを有し、上面側から横材201を受け入れて当該横材201に嵌合する。
【0040】
一方、図7に示す金具71は、横材201の上面側から設置可能なもので、互いに逆方向に張り出す2つの横材受部21の間に横材係合部17を備え、この横材係合部17の上面に、鉛直上方に延びる第一縦材受部12を配している。横材係合部17は、この図7に示す金具71では、天面とその両側縁部から立ち下がる側面とを有し、当該横材201に被せるように設置することで下面側から横材201を受け入れ、当該横材201に跨るように嵌合する。尚、これら第二金具61,71では、横材係合部16,17によって縦材受部12又は13および横材受部21が連結されるから、前記第一金具11が備える六面体状の連結部15は備えていない。
【0041】
これら第二金具61,71は、例えば間柱を設ける場合に使用することが出来る。尚、上記横材受部21は、図示の例では2つ設けたが、1つであっても良い。更に、これら第二金具61,71の変形例として、縦材受部12,13を設けず、横材受部21および横材係合部16又は17のみからなる接合金具を構成することも可能である。このような金具は、例えば土台組や床組を作る場合のように互いに直交する横材同士を接合するときに使用することが出来る。
【0042】
図9は、本発明に係る木拾い装置(骨組模型)の一例を模式的に示すものである。本実施形態の木拾い装置は、複数本の模擬部材とこれらを接合する複数の接合金具とを使用して施工対象となる建物の骨組模型を作製するもので、模擬縦材として、建築施工で使用される各種の縦材(例えば管柱、間柱、束など)を模擬した模擬縦材を、また模擬横材として、建築施工で使用される各種の横架材(例えば土台、大引、根太、胴差、2階床張り、軒桁、梁など)を模擬した模擬横材をそれぞれ用いる。また、これら模擬部材を接合する金具として、前記図1から図7に基づいて説明した各金具やそれらを変形した金具を使用する。
【0043】
尚、各接合部位で使用する金具として、図9では当該部位で接合すべき部材に丁度対応した数の受部を有する金具を使うよう示しているが、このように接合部材に丁度対応する受部を備えた金具を用いる必要は必ずしもなく、接合部材より多くの受部を有する(接合に必要な受部以外の受部も有する)金具を使用しても構わない。例えば、図2の金具20によれば、図3の金具31や図4の金具41を兼ねることも可能であり、前記2つの縦材受部と4つの横材受部を有する図1の金具11や、その変形例である図2の金具20を使用すれば、建物の大部分の接合部位に対応することが可能である。
【0044】
骨組模型の作製にあたっては、接合金具の縦材受部が備える上記開口に縦材を挿入すると共に、横材受部に横材の端部を落とし込むだけで縦材と横材とを容易に接合することができ、横材受部に設けた前記凸条および横材に設けた前記溝によって骨組作製時並びに完成後に横材が接合金具から不用意に抜け出して骨組模型が壊れるようなアクシデントを防ぐことが出来る。
【0045】
そして、完成した骨組模型を見ながら、建物各部の使用部材の材寸を決定し確認することが出来る。また、模型を分解して模擬部材を種類別に分けた後に種別ごとに部材数量を数えることによって容易かつ正確に各種使用部材を把握することも可能である。更に、使用するすべての模擬部材に対し、部材の種類(例えば材寸や樹種、等級など)ごとに例えば異なる色彩や目印・マーク等を付しておけば、当該色彩等によってひと目で部材の種類を識別することができ、より確実に間違えなく木拾いを行えるようにすることが出来る。
【0046】
上記実施形態の各金具では、隣り合う側面と互いに90度の角度をなす縦材受部12,13の4つの各側面(連結部15の各側面)に対し垂直に(各側面に直交するように)張り出すよう横材受部21を設け、また縦材受部12,13は鉛直上方または鉛直下方に延びるように設けたが、これら横材受部21および縦材受部12,13を斜め方向に延在(張出)するような金具構造を採ることも可能である。
【0047】
例えば、図10は上記接合金具の別の一例(第三金具と称する)を示す平面図であるが、この第三金具は、横材受部21と連結部15との間に、変形可能な柔軟部材18を介在させたものである。この柔軟部材18は、例えば柔軟性を有する(塑性変形又は弾性変形可能な)樹脂により形成することが出来る。また図11に示すように蛇腹部材19を介在させても同様の機能を持たせることが出来る。このような接合金具によれば、柔軟部材18,19を変形させることにより、横材受部21の角度を自由に変更することができ、水平面内で斜めに配置される横材に対応することが可能となる。
【0048】
更に、図12に示すように縦材受部12,13と連結部15との間に上記柔軟部材18を介在させても良く、このような金具(第四金具)によれば、斜めに(鉛直方向に対し角度をもって)配置される縦材を接合することが可能となる。尚、これら受部の角度変更が可能な第三および第四金具においても、前記接合金具11等と同様に、縦材受部12,13および横材受部21の配設数並びに配設位置を様々に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る接合金具の一例(第一金具)を模擬部材の一例と共に示す斜視図である。
【図2】前記第一金具の変形例を示す斜視図である。
【図3】前記第一金具の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図4】前記第一金具の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図5】前記第一金具の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る接合金具の別の一例(第二金具)を示す斜視図である。
【図7】前記第二金具の変形例を示す斜視図である。
【図8】横材受部の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る木拾い装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【図10】(a)は本発明に係る接合金具の更に別の一例(第三金具)を示す平面図、(b)は側面図、(c)は横材受部の角度を変えた状態を示す平面図である。
【図11】(a)は前記第三金具の変形例を示す平面図、(b)は側面図、(c)は横材受部の角度を変えた状態を示す平面図である。
【図12】本発明に係る接合金具の更に別の一例(第四金具)を示す側面図であり、(a)は変形前の状態を、(b)は変形後の状態(縦材受部の角度を変えた状態)をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0050】
11,20,31,41,51 接合金具(第一金具)
12,13 縦材受部
14 開口
15 連結部
16,17 横材係合部
18 柔軟部材(樹脂)
19 柔軟部材(蛇腹部材)
21 横材受部
25,26 凸条(突起部)
35,36 ピン状の突起(突起部)
61,71 接合金具(第二金具)
101 模擬縦材
201 模擬横材
202〜205 溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、木拾い用接合金具および木拾い装置に係り、特に木造建築施工の一作業工程である木拾いをより容易かつ正確に行うことを可能とする補助用具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの木造家屋を在来軸組工法によって建築する場合には、その一作業工程として木拾いが必要となる。この木拾いとは、木造工事で必要となる構造部材や造作部材など使用するすべての木材について、その樹種や寸法、等級、数量などの内訳明細を設計図面から拾い出す作業であり、木造住宅の数量算出の中心となる作業である。
【0003】
かかる木拾いは従来、現場施工を行う建築技術者(大工)や工務店が行っていたが、近年では建築技術者の深刻な人手不足もあって大工・工務店が木拾いを行うことは殆どなく、木材を切断・加工するプレカット工場へ木拾いを一任することが多い。
【0004】
また、出願人は先に木拾いを支援する用具の提案を行った(下記特許文献1)。更に、木拾いを支援するコンピュータソフトウエアも各種販売されており、リフォームに関するものではあるが、木拾い積算を支援するシステムの提案もなされている(下記特許文献2,3)。
【特許文献1】特開2004−117914号公報
【特許文献2】特開平8−77233号公報
【特許文献3】特開平9−170330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木拾いは熟練を要し、また熟練しても時間が掛かり煩雑な作業であってこれを間違えなく行うことは必ずしも容易ではない。
【0006】
なぜなら、建物一棟で使用される使用される木材の種類は、個人住宅のような小規模な建物であっても数十種類にも及び、その総数は数百本にもなるからである。しかも、比較的大規模な建物では個別の構造計算に基づいて建物各部の使用木材(材寸等)が決定されるが、例えば木造個人住宅のような小規模な建物にあっては、現場の施工技術者(棟梁/大工)が経験と勘に基づいて建物各部への適切な木材(材寸/特に断面寸法)を決定するのが通常であり、実際に施工される木材を設計図面から一律に導き出すことは出来ない事情もある。
【0007】
したがって、使用木材すべてを間違えなく正確に揃えることは容易ではなく、施工技術者(現場)と木材を加工するプレカット工場との間の意思疎通の不足や誤解から、現場が望む木材と実際に納品された木材との間に差異が生じることが現実に少なくない。
【0008】
一方、上記コンピュータシステムは、このような木拾い作業の煩雑さを回避し効率化を図る。しかしながら、この種のコンピュータシステムは、一般に高価で購入し難く、データの入力に手間を要する難がある。更に、操作を会得するのに一定の訓練が必要で、コンピュータ装置に比較的馴染みの薄い現場技術者にとっては容易に受け入れ難い面もあり、未だ広く普及するには至っていない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、木拾いをより容易かつ正確に行うことを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る木拾い用接合金具は、建築施工で使用される縦材を模擬した模擬縦材と、建築施工で使用される横架材を模擬した模擬横材とを接合して当該建築施工に係る骨組模型を作製可能とする木拾い用接合金具であって、略鉛直上方に延在して模擬縦材の下端部を挿入可能な第一縦材受部、および、略鉛直下方に延在して模擬縦材の上端部を挿入可能な第二縦材受部のうちのいずれか一方または双方と、模擬横材の端部を受け入れられるように上面が開放された溝形の断面形状を有しかつ当該模擬横材を支持可能に略水平に張出する1つ以上の横材受部とを備える。
【0011】
また、本発明に係る木拾い装置は、建築施工で使用される縦材を模擬した複数の模擬縦材と、建築施工で使用される横架材を模擬した複数の模擬横材と、本発明に係る複数の接合金具とを含む。
【0012】
本発明に係る接合金具および木拾い装置は、施工対象である建物の骨組模型(木拾い装置)を作製し、この模型を使用して木拾い作業を行うことを可能とするものである。
【0013】
建築施工に使用され、また本発明の対象となる施工木材は、大別して、鉛直方向に延在する部材(縦材)と、水平方向に延在する部材(横架材)と、斜め方向に延在する部材(斜材)とがある。縦材は、例えば柱や束などの部材を含み、これらを模擬したものが本発明に云う模擬縦材である。一方、横架材は、例えば梁(床張り、2階床張り、胴差、妻梁等)や桁、棟木などの部材を含み、これらを模擬したものが本発明に云う模擬横材である。尚、本発明の木拾い装置は、上記斜材を模擬した模擬斜材を含んで良く、また当該模擬斜材を接合する金具を、上記縦材受部または横材受部の張出(延在)角度を変更することにより同様に構成することが可能であるが、これについては後に述べる。
【0014】
接合金具は、各模擬部材同士を接合する。具体的には、第一または第二縦材受部に縦材の端部を挿入することにより当該縦材を接合金具に支持させることが出来る。この第一および第二縦材受部の具体的構成としては、例えば横断面が方形の角形のパイプ形状を呈するようにすれば良い。また、上面が開放された溝形の断面形状を有する上記横材受部に、上面側から模擬横材の端部を落とし込むことにより当該接合金具に模擬横材を支持させることが出来る。
【0015】
各模擬部材(模擬縦材,模擬横材)は、例えば木材により構成することが出来るが、樹脂や金属その他の材料を使用することも可能であり、構成材料は特に限定されない。また、これら模擬部材は、実際の施工部材を一定の縮尺で縮小した寸法を有するよう構成することが望ましい。施工に係る建物骨組(各構成部材)を直感的に正確かつ容易に把握可能とし、木拾い作業をより確実に行うことが出来るようにするためである。
【0016】
他方、接合金具を形成する材料は、典型的には金属材料(例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスその他の金属)を使用するが、必ずしもこれに限定されず、例えば樹脂(プラスチック)その他の材料を使用しても構わない。これら金属以外の材料によっても同様の機能を有する金具を構成することが可能である。
【0017】
横材受部は、当該横材受部の内面から内方に突出して当該横材受部に嵌め込まれた模擬横材の水平方向への抜脱(抜け出し)を阻止する突起部を備えるよう構成することが好ましい。模擬横材が接合金具から不用意に抜け、上記骨組模型(木拾い装置)が組み立て途中で、あるいは組み立て後、木拾い作業中に崩壊することを防ぐためである。
【0018】
上記突起部は、例えば、横材受部の対向する一対の側壁の内面に互いに対向するように略鉛直に延在する一対の凸条とすれば良い。ただし、当該突起部はこのような線状のものに限られず、例えば横材受部の内壁面から突出した点状(ピン状)の突起(後述の図8のような)等であっても構わない。
【0019】
接合金具に上記のような突起部を設ける場合には、模擬横材側には、当該突起部と係合する凹部をその(模擬横材の)両端部に設ける。この凹部は、例えば、横材受部に対し上面側から模擬横材の端部を落とし込むときに、横材受部に設けられた前記突起部の嵌入を許容する略鉛直方向に延在する溝とすることが出来る。
【0020】
また上記横材受部として、例えば、隣り合う横材受部と互いに略90度の角度をもって四方に放射状に張出する4つの横材受部を設けても良い。
【0021】
このような四方に張出する4つの横材受部を有する金具構造によれば、例えば、(1)直交する2方向からの模擬横材を接合する必要が生じることがある建物隅角部、(2)反対方向からの(180度の角度をもって)模擬横材を接合する必要が生じることがある建物周縁部、並びに(3)互いに直交する3方向または4方向からの模擬横材を接合する必要が生じることがある建物内側部の総てのケースについて模擬部材の接合を行うことが可能となるから、木拾い装置を構成する部品点数(接合金具の種類)を減らし、装置を単純化することが出来る。
【0022】
更に上記接合金具では、下面が開放された溝形の横断面形状を有して下面側から模擬横材を受け入れて当該模擬横材への嵌合を可能とする横材係合部、および、上面が開放された溝形の横断面形状を有して上面側から模擬横材を受け入れて当該模擬横材への嵌合を可能とする横材係合部のうちのいずれか一方を更に備えることがある。
【0023】
このような接合金具によれば、模擬横材の中間部から立ち上がる模擬縦材(例えば間柱等)を設けることが出来る。具体的には、模擬横材の中間部において、当該模擬縦材の下端部については模擬横材の上面側から、また当該模擬縦材の上端部については模擬横材の下面側から、それぞれ上記横材係合部を模擬横材に嵌合させることにより当該接合金具を設置し、前記第一ないし第二の縦材受部を使用して当該模擬縦材を固定すれば良い。
【0024】
また、本発明の木拾い装置は、斜め方向に(鉛直方向又は水平方向に対して一定の角度をもって)延在する木材部材(例えば、たる木、筋かい等)を模擬した模擬部材(以下、模擬斜材という)と、このような模擬斜材同士、または模擬斜材と模擬縦材若しくは模擬横材とを接合する金具を含んでいても良い。かかる金具は、例えば、上記模擬斜材の端部を挿入し支持可能な斜材受部を少なくとも1つ備え、更に上述した縦材受部および横材受部のうちの一方または双方を有するものとして構成することが可能である。
【0025】
更に、本発明の木拾い装置は、縦材を支持する上記第一および第二縦材受部を備えず、横材受部のみ、あるいは横材受部と前記横材係合部のみを有する接合金具を含んでいても良い。このような金具は、例えば床組において大引と根太とを接合する金具等として使用することが可能である。
【0026】
本発明によれば、施工対象の平面図(伏図:土台伏せ/1階2階伏せ/小屋伏せ等)に基づいて建物各部で使用される木材を縮小した模擬部材を使用し、これらを接合して骨組模型を作ることにより木拾い作業を行うことが出来る。
【0027】
本発明では特に、立体的な骨組模型を組み立てながら或いは見ながら、視覚的・直感的に最適な材寸の部材を選択し決定することが出来る利点がある。また例えば、組み立てた骨組模型から各部の木材の種類を確認し、不適切な箇所はこれをより適切な模擬木材に置き換えることによって修正した後、各部材の数量を数える(又は模型を分解して模擬部材を種類別に分けた後に種別ごとに部材数量を数える)ことによって容易かつ正確に部材を把握することが可能となる。
【0028】
また、本発明では立体的な模型を実際に作製するから建物の骨組全体をイメージしやすく、木拾いに不慣れな者にとっても、或いは設計士との打ち合わせにおいても迅速に間違えなく木材の数量算出を行うことが出来る。また、平面図だけではわかり難い逃げの確認や、1階と2階の柱の位置確認等も容易である。更に、組み立てた骨組模型(木拾い装置)を真上から写真撮影しそれをコピーすれば、手板として利用することも可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、木拾いをより容易かつ正確に行うことが可能となる。
【0030】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。尚、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。また、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る接合金具並びに模擬部材を示すものである。この図に示すように接合金具11(第一金具という)は、角材状の模擬縦材101(以下、単に縦材ということがある)の下端部を挿入することが可能なように鉛直上方に延びかつ中空の角形パイプ形状を呈する第一縦材受部12と、角材状の模擬縦材101の上端部を挿入することが可能なように鉛直下方に延びかつ同じく中空の角形パイプ形状を呈する第二縦材受部13と、模擬横材201(以下、単に横材ということがある)の端部を受け入れて支持できるように水平に張出しかつ底板22および左右両側板23,24を有して角形パイプの一面(上面)を取り除いた形状を呈する4つの横材受部21とを有する。
【0032】
各縦材受部12,13は略正方形の水平断面形状を有し、第一縦材受部12は上面が開放され縦材101を受け入れる開口14となっており、挿入された縦材101の下端面に当接して当該縦材101を支持する底面を有する一方、第二縦材受部13は逆に下面が開放されて縦材101を受け入れる開口となっており、挿入された縦材101の上端面に当接して当該縦材101を支持する(縦材101に当該接合金具11を支持させる)天面を有する。
【0033】
金具11の中央部には、隣り合う面が互いに直交する六面体(立方体または直方体)の形状をなす連結部15を備え、この連結部15に上記縦材受部12,13および横材受部21を固定することにより各受部12,13,21が当該金具11として一体に構成されている。
【0034】
横材受部21は、互いに90度の角度をもって四方に張り出し、左右の各側板23,24の内面には、横材201の抜けを防ぐ突起部として、互いに対向するように突出し鉛直方向に延在する凸条25,26を設ける。また、模擬横材201の両端部には、これらの凸条25,26に嵌合する溝202〜205を設ける。これら溝202〜205は、横材201の両側面に形成してあり、図1において一点差線で示すように横材受部21に対しその上面側から落とし込むようにして横材201の端部を挿入すると横材受部21の凸条25,26が横材側面の溝202,203に嵌入し、これにより横材201が水平方向に抜け出すことが阻止される。
【0035】
尚、かかる突起部および溝は、図示の例に限られるものではなく、例えば図8に示すように溝202〜205に嵌入可能なピン状の突起35,36を設けても同様に横材201の抜けを防止することが出来る。
【0036】
また、上記図1の金具では、縦材受部を2つ、横材受部を4つ備えるものとしたが、各受部の配設個数は、様々に変更することが可能である。例えば、図2に示すように1つの縦材受部(第一縦材受部)12と4つの横材受部21を備えるように、また図3に示すように1つの縦材受部(第一縦材受部)12と互いに直交する方向に張り出す2つの横材受部21を備えるように、更に図4に示すように1つの縦材受部(第一縦材受部)12と互いに逆方向に(180度の角度をもって)張り出す2つの横材受部21を備えるように、それぞれ構成することも可能である。また、横材受部21を3つ備える構造(図示せず)としても良い。これらの金具20,31,41は、例えば、上方にのみ縦材を接合する土台部に用いることが出来る。
【0037】
また、図5に示すように、第二縦材受部13と4つの横材受部21を備えるようにしても良いし、この金具51において更に上記図3ないし図4等のように横材受部21を2つないし3つ備えるよう構成することも可能である。これらの金具は、例えば、下方にのみ縦材を接合する例えば天井部や小屋組の一部等において使用することが出来る。
【0038】
更に、図6および図7に示すように横材201の中間部に装着可能な金具(第二金具と称する)61,71を構成することも可能である。これら第二金具61,71は、同図に示すように前記第一金具11(図1)ないしその変形例20,31,41,51(図2〜図5)と同様に、横材受部21と縦材受部(第一縦材受部12又は第二縦材受部13)とを備えるものであるが、縦材受部の上面部(図6)または下面部(図7)に横材201を受け入れる横材係合部16,17を備えている。
【0039】
より具体的には、図6に示す金具61は、横材201の下面側から設置可能なもので、互いに逆方向に張り出す2つの横材受部21の間に上記横材係合部16を備え、この横材係合部16の下面に、鉛直下方に延びる第二縦材受部13を配している。横材係合部16は、この図6に示す金具61では、底面とその両側縁部から立ち上がる側面とを有し、上面側から横材201を受け入れて当該横材201に嵌合する。
【0040】
一方、図7に示す金具71は、横材201の上面側から設置可能なもので、互いに逆方向に張り出す2つの横材受部21の間に横材係合部17を備え、この横材係合部17の上面に、鉛直上方に延びる第一縦材受部12を配している。横材係合部17は、この図7に示す金具71では、天面とその両側縁部から立ち下がる側面とを有し、当該横材201に被せるように設置することで下面側から横材201を受け入れ、当該横材201に跨るように嵌合する。尚、これら第二金具61,71では、横材係合部16,17によって縦材受部12又は13および横材受部21が連結されるから、前記第一金具11が備える六面体状の連結部15は備えていない。
【0041】
これら第二金具61,71は、例えば間柱を設ける場合に使用することが出来る。尚、上記横材受部21は、図示の例では2つ設けたが、1つであっても良い。更に、これら第二金具61,71の変形例として、縦材受部12,13を設けず、横材受部21および横材係合部16又は17のみからなる接合金具を構成することも可能である。このような金具は、例えば土台組や床組を作る場合のように互いに直交する横材同士を接合するときに使用することが出来る。
【0042】
図9は、本発明に係る木拾い装置(骨組模型)の一例を模式的に示すものである。本実施形態の木拾い装置は、複数本の模擬部材とこれらを接合する複数の接合金具とを使用して施工対象となる建物の骨組模型を作製するもので、模擬縦材として、建築施工で使用される各種の縦材(例えば管柱、間柱、束など)を模擬した模擬縦材を、また模擬横材として、建築施工で使用される各種の横架材(例えば土台、大引、根太、胴差、2階床張り、軒桁、梁など)を模擬した模擬横材をそれぞれ用いる。また、これら模擬部材を接合する金具として、前記図1から図7に基づいて説明した各金具やそれらを変形した金具を使用する。
【0043】
尚、各接合部位で使用する金具として、図9では当該部位で接合すべき部材に丁度対応した数の受部を有する金具を使うよう示しているが、このように接合部材に丁度対応する受部を備えた金具を用いる必要は必ずしもなく、接合部材より多くの受部を有する(接合に必要な受部以外の受部も有する)金具を使用しても構わない。例えば、図2の金具20によれば、図3の金具31や図4の金具41を兼ねることも可能であり、前記2つの縦材受部と4つの横材受部を有する図1の金具11や、その変形例である図2の金具20を使用すれば、建物の大部分の接合部位に対応することが可能である。
【0044】
骨組模型の作製にあたっては、接合金具の縦材受部が備える上記開口に縦材を挿入すると共に、横材受部に横材の端部を落とし込むだけで縦材と横材とを容易に接合することができ、横材受部に設けた前記凸条および横材に設けた前記溝によって骨組作製時並びに完成後に横材が接合金具から不用意に抜け出して骨組模型が壊れるようなアクシデントを防ぐことが出来る。
【0045】
そして、完成した骨組模型を見ながら、建物各部の使用部材の材寸を決定し確認することが出来る。また、模型を分解して模擬部材を種類別に分けた後に種別ごとに部材数量を数えることによって容易かつ正確に各種使用部材を把握することも可能である。更に、使用するすべての模擬部材に対し、部材の種類(例えば材寸や樹種、等級など)ごとに例えば異なる色彩や目印・マーク等を付しておけば、当該色彩等によってひと目で部材の種類を識別することができ、より確実に間違えなく木拾いを行えるようにすることが出来る。
【0046】
上記実施形態の各金具では、隣り合う側面と互いに90度の角度をなす縦材受部12,13の4つの各側面(連結部15の各側面)に対し垂直に(各側面に直交するように)張り出すよう横材受部21を設け、また縦材受部12,13は鉛直上方または鉛直下方に延びるように設けたが、これら横材受部21および縦材受部12,13を斜め方向に延在(張出)するような金具構造を採ることも可能である。
【0047】
例えば、図10は上記接合金具の別の一例(第三金具と称する)を示す平面図であるが、この第三金具は、横材受部21と連結部15との間に、変形可能な柔軟部材18を介在させたものである。この柔軟部材18は、例えば柔軟性を有する(塑性変形又は弾性変形可能な)樹脂により形成することが出来る。また図11に示すように蛇腹部材19を介在させても同様の機能を持たせることが出来る。このような接合金具によれば、柔軟部材18,19を変形させることにより、横材受部21の角度を自由に変更することができ、水平面内で斜めに配置される横材に対応することが可能となる。
【0048】
更に、図12に示すように縦材受部12,13と連結部15との間に上記柔軟部材18を介在させても良く、このような金具(第四金具)によれば、斜めに(鉛直方向に対し角度をもって)配置される縦材を接合することが可能となる。尚、これら受部の角度変更が可能な第三および第四金具においても、前記接合金具11等と同様に、縦材受部12,13および横材受部21の配設数並びに配設位置を様々に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る接合金具の一例(第一金具)を模擬部材の一例と共に示す斜視図である。
【図2】前記第一金具の変形例を示す斜視図である。
【図3】前記第一金具の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図4】前記第一金具の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図5】前記第一金具の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る接合金具の別の一例(第二金具)を示す斜視図である。
【図7】前記第二金具の変形例を示す斜視図である。
【図8】横材受部の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る木拾い装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【図10】(a)は本発明に係る接合金具の更に別の一例(第三金具)を示す平面図、(b)は側面図、(c)は横材受部の角度を変えた状態を示す平面図である。
【図11】(a)は前記第三金具の変形例を示す平面図、(b)は側面図、(c)は横材受部の角度を変えた状態を示す平面図である。
【図12】本発明に係る接合金具の更に別の一例(第四金具)を示す側面図であり、(a)は変形前の状態を、(b)は変形後の状態(縦材受部の角度を変えた状態)をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0050】
11,20,31,41,51 接合金具(第一金具)
12,13 縦材受部
14 開口
15 連結部
16,17 横材係合部
18 柔軟部材(樹脂)
19 柔軟部材(蛇腹部材)
21 横材受部
25,26 凸条(突起部)
35,36 ピン状の突起(突起部)
61,71 接合金具(第二金具)
101 模擬縦材
201 模擬横材
202〜205 溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築施工で使用される縦材を模擬した模擬縦材と、建築施工で使用される横架材を模擬した模擬横材とを接合して当該建築施工に係る骨組模型を作製可能とする木拾い用接合金具であって、
略鉛直上方に延在して模擬縦材の下端部を挿入可能な第一縦材受部、および、略鉛直下方に延在して模擬縦材の上端部を挿入可能な第二縦材受部のうちのいずれか一方または双方と、
模擬横材の端部を受け入れられるように上面が開放された溝形の断面形状を有しかつ当該模擬横材を支持可能に略水平に張出する1つ以上の横材受部と、
を備えたことを特徴とする木拾い用接合金具。
【請求項2】
前記横材受部は、当該横材受部の内面から内方に突出して当該横材受部に嵌め込まれた模擬横材の水平方向への抜脱を阻止する突起部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の木拾い用接合金具。
【請求項3】
前記突起部は、前記横材受部の対向する一対の側壁の内面に、互いに対向するように略鉛直に延在する一対の凸条を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の木拾い用接合金具。
【請求項4】
前記横材受部として、隣り合う横材受部と互いに略90度の角度をもって四方に放射状に張出する4つの横材受部を備えた
請求項1から3のいずれか一項に記載の木拾い用接合金具。
【請求項5】
下面が開放された溝形の横断面形状を有して下面側から模擬横材を受け入れて当該模擬横材への嵌合を可能とする横材係合部、および、上面が開放された溝形の横断面形状を有して上面側から模擬横材を受け入れて当該模擬横材への嵌合を可能とする横材係合部のうちのいずれか一方
を更に備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の木拾い用接合金具。
【請求項6】
建築施工で使用される縦材を模擬した複数の模擬縦材と、
建築施工で使用される横架材を模擬した複数の模擬横材と、
複数の前記請求項1から4のいずれか一項に記載の木拾い用接合金具と、
を含むことを特徴とする木拾い装置。
【請求項7】
建築施工で使用される縦材を模擬した複数の模擬縦材と、
建築施工で使用される横架材を模擬した複数の模擬横材と、
前記請求項2から4のいずれか一項に記載の木拾い用接合金具と、
を含み、
前記模擬横材はその両端部に、前記横材受部の前記突起部と係合する凹部を備える
ことを特徴とする木拾い装置。
【請求項8】
前記凹部は、前記横材受部に対しその上面側から当該模擬横材の端部を落とし込むときに、当該横材受部に設けられた前記突起部の嵌入を許容する略鉛直方向に延在する溝である
ことを特徴とする請求項7に記載の木拾い装置。
【請求項1】
建築施工で使用される縦材を模擬した模擬縦材と、建築施工で使用される横架材を模擬した模擬横材とを接合して当該建築施工に係る骨組模型を作製可能とする木拾い用接合金具であって、
略鉛直上方に延在して模擬縦材の下端部を挿入可能な第一縦材受部、および、略鉛直下方に延在して模擬縦材の上端部を挿入可能な第二縦材受部のうちのいずれか一方または双方と、
模擬横材の端部を受け入れられるように上面が開放された溝形の断面形状を有しかつ当該模擬横材を支持可能に略水平に張出する1つ以上の横材受部と、
を備えたことを特徴とする木拾い用接合金具。
【請求項2】
前記横材受部は、当該横材受部の内面から内方に突出して当該横材受部に嵌め込まれた模擬横材の水平方向への抜脱を阻止する突起部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の木拾い用接合金具。
【請求項3】
前記突起部は、前記横材受部の対向する一対の側壁の内面に、互いに対向するように略鉛直に延在する一対の凸条を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の木拾い用接合金具。
【請求項4】
前記横材受部として、隣り合う横材受部と互いに略90度の角度をもって四方に放射状に張出する4つの横材受部を備えた
請求項1から3のいずれか一項に記載の木拾い用接合金具。
【請求項5】
下面が開放された溝形の横断面形状を有して下面側から模擬横材を受け入れて当該模擬横材への嵌合を可能とする横材係合部、および、上面が開放された溝形の横断面形状を有して上面側から模擬横材を受け入れて当該模擬横材への嵌合を可能とする横材係合部のうちのいずれか一方
を更に備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の木拾い用接合金具。
【請求項6】
建築施工で使用される縦材を模擬した複数の模擬縦材と、
建築施工で使用される横架材を模擬した複数の模擬横材と、
複数の前記請求項1から4のいずれか一項に記載の木拾い用接合金具と、
を含むことを特徴とする木拾い装置。
【請求項7】
建築施工で使用される縦材を模擬した複数の模擬縦材と、
建築施工で使用される横架材を模擬した複数の模擬横材と、
前記請求項2から4のいずれか一項に記載の木拾い用接合金具と、
を含み、
前記模擬横材はその両端部に、前記横材受部の前記突起部と係合する凹部を備える
ことを特徴とする木拾い装置。
【請求項8】
前記凹部は、前記横材受部に対しその上面側から当該模擬横材の端部を落とし込むときに、当該横材受部に設けられた前記突起部の嵌入を許容する略鉛直方向に延在する溝である
ことを特徴とする請求項7に記載の木拾い装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−86609(P2007−86609A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277560(P2005−277560)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(502350272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(502350272)
【Fターム(参考)】
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