説明

木材の不燃化処理方法

【課題】木材の不燃化を行なう不燃化処理方法であって、木材の白華化を防止すると共に、多種の薬剤を必要とせずに、且つ製造工程が簡単であり、安価な処理方法を提供する。
【解決手段】木材の不燃化処理方法であって、常温、常圧で木材板を珪酸塩溶液内に浸漬し、少なくとも3時間含浸させる工程と、該含浸済の木材板表面にリン酸水溶液を塗布する工程と、からなり、前記珪酸塩溶液は、メタ珪酸塩の50%希釈水溶液に、このメタ珪酸塩溶液に含まれる金属Siの重量の7%のAl粉末を溶解させた珪酸塩液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の不燃化処理方法であって、とくに建築用木材などに最適な不燃化処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一般家屋、マンション・アパートにおける建築材料には、不難燃化、或いは難燃化させるために数々の技術が提案されている。
【0003】
一般に、木材の不燃化、或いは難燃化に使用される薬剤としてはリン酸塩やホウ酸などが挙げられる。しかしながら、リン酸塩を使用すると、木材表面が白華する現象を生じ、商品価値が低下するという問題があった。また、ホウ酸は水に対する溶解度が低く、木材中に含浸させることが困難であるという問題もあった。
【0004】
そこで、木材の不燃処理によって白華現象の原因となるホウ素化合物やリン酸化合物の溶脱防止方法及びその溶脱処理された木材が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−136992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に提案されている技術は、ホウ酸またはリン酸化合物からなる薬剤を木材に含浸・乾燥させた後、木材の表層部に存在する薬剤を不溶化・乾燥させ、その後木材表面を水蒸気から遮断させるものであり、木材の白華化を防止するものであるが、多種の薬剤を必要とし、且つ製造工程が複雑になり、高コストとなるものであった。
【0007】
上記の問題点に鑑み本発明者らは、一般家屋、マンション・アパートにおける建築材料や、家畜・養鶏場などに広く使用されている木材を、簡単な処理で、且つ安価に不燃化処理を可能とする木材の不燃化処理方法を提供するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明の木材の不燃化処理方法は、常温、常圧で木材板を珪酸塩溶液内に浸漬し、少なくとも3時間含浸させる工程と、該含浸済の木材板表面にリン酸水溶液を塗布する工程と、からなることを第一の特徴とする。
【0009】
また、前記珪酸塩溶液は、メタ珪酸塩の少なくとも3倍希釈水溶液であることを第二の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る木材の不燃化処理方法によれば、常温、常圧で木材板を珪酸塩溶液内に浸漬する工程と、含浸済の木材板表面にリン酸塩塗布する工程とからなるため、従来の加熱・加圧処理或いは減圧処理を全く必要とせずに、高い難燃性が得られるという効果を有する。
【0011】
また、木材板に予め珪酸塩溶液を含浸させて、さらにその表面にリン酸水溶液を塗布したため、従来技術の白華化現象による商品価値が下がることがないという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によって不燃化処理ができる木材として、種々のものを対象とすることができる。例えば杉、桧、桐、松など通常の建材として採用されるものが処理が可能である。
【0013】
不燃化処理を行なう木材板は所定の乾燥処理が施され、常温、常圧下で珪酸塩溶液内に浸漬される。この際浸漬時間としては少なくとも3時間を必要とする。尚、この珪酸塩の濃度としては、市販の珪酸塩溶液の3倍希釈のものが有効に使用され、木材板に対して効果的に浸透させることができる。
【0014】
上記浸漬に使用する珪酸塩溶液は、市販のメタ珪酸塩溶液などが使用できるが、金属Siの微粉末にNaOHを加え、さらに水を加えて作成した珪酸塩溶液も使用される。
【0015】
次に、珪酸塩溶液を含浸させた木材板の表面にリン酸水溶液などのリン酸溶液を塗布し、定法の乾燥工程を経て、木材板の不燃化処理を行なうことができる。
【0016】
上記構成の木材の不燃化処理を行なうと、従来の加熱・加圧処理或いは減圧処理を全く必要とせずに、常温・常圧下で珪酸塩溶液を含浸させ、さらにその表面にリン酸水溶液を塗布することによって木材に高い難燃性が得られる。しかも、仕上がった木材板の表面には白華化を生じることがなく、木材板の商品価値が低下する虞もない。
【0017】
次に、本発明の木材の不燃化処理方法を、実施例に従って更に詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
試験体として、杉板材を5枚準備した。
不燃化処理材として、メタ珪酸ナトリウム7%水溶液と、リン酸15%水溶液を準備した。
【0019】
次に、4枚の杉板に対して、下記の条件の不燃化処理を行ない、1枚のみ未処理とした。
【0020】
(不燃化処理)
A、メタ珪酸ナトリウム溶液内に3時間浸漬を行い、更にリン酸水溶液を塗布し乾燥させた。
B、メタ珪酸ナトリウム溶液内に3時間浸漬を行い、乾燥させた。
C、両面にそれぞれ1回、メタ珪酸ナトリウム溶液を塗布し、乾燥させた。
D、片面に1回、メタ珪酸ンナトリウム溶液を塗布し、乾燥させた。
【0021】
上記の処理を行なった4枚の試験体と1枚未処理の試験体に対して、バーナー炎照射(1000℃〜1200℃)を行なった。
(結果)
上記のA、Bの不燃化処理を行なった試験体はいずれも、板材の炎照射面は炭化したものの、木口面は炭化することなく消火した。C、Dの不燃化処理を行なった試験体はいずれも、A、Bの不燃化処理と比較して短時間で孔を生じ、また消火時間が長かった。不燃化処理していない試験体は約5分で孔を生じ、強制的に消火させた。
【0022】
以上の構成からなる本発明の木材の不燃化処理方法は、加熱・加圧処理或いは減圧処理を全く必要とせずに、高い難燃性が得られる。しかも、従来技術の白華化現象による商品価値が下がることがない

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材の不燃化処理方法であって、常温、常圧で木材板を珪酸塩溶液内に浸漬し、少なくとも3時間含浸させる工程と、該含浸済の木材板表面にリン酸水溶液を塗布する工程と、からなる木材の不燃化処理方法。
【請求項2】
前記珪酸塩溶液は、メタ珪酸塩の少なくとも3倍希釈水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の木材の不燃化処理方法。

【公開番号】特開2012−51262(P2012−51262A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196237(P2010−196237)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(598005812)
【Fターム(参考)】