説明

木材の乾燥方法

【課題】内部割れを抑制しつつ効率的に木材の乾燥を行うことのできる乾燥木材の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の乾燥木材の製造方法においては、木材10における木口面11の近傍をカットして、該木口面11と略平行な切断面12と該切断面12の位置より前記木口面11側に突出する突出部13とを生じさせた後、人工乾燥する。また、本発明の乾燥木材の製造方法においては、木材10における木口面11に、該木口面11と垂直にスリット状の切れ込みを入れた後、人工乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱材等の住宅構造用材として、国産材のスギ、ヒノキ等の芯持ち角材の背割り材が使用されてきたが、住宅構造用材の仕様の変化により背割りのない芯持ち角材が使用されることが多くなった。しかし、このような芯持ち角材は、乾燥中に材面割れが生じ易く、背割り材と同様に、施工や旛工後の寸法安定性が悪く、不具合を起こす要因ともなる。そのため、寸法安定性に優れた集成材の使用も増加している。
近年、スギ、ヒノキ芯持ち角材の乾燥中に生じる材面割れを低城する高温乾燥法が開発され普及してきた。この高温乾燥法は、乾燥初期に乾球温度120℃の乾燥により、表層にドライングセットを形成することで、材面割れが少なくなるといわれている。高温乾燥法によれば、材面割れが比較的減少するが、十分ではないのが実情である。
【0003】
また、高温乾燥法は、内部割れが発生しやすいという問題がある。高温乾燥法における内部割れは、材表層が引張りの状態でドライングセットされ、このために材内部が自由に収縮できなくなり、引張り応力が大きくなることにより発生すると考えられている。
また、材面割れは高温乾燥初期において、乾球温度120℃の持続時間が十分ではない場合、いわゆるドライングセット形成の層が浅く、まだ引張応力が表層に存在している状態で発生すると考えられている。
そして、材面割れを防ぐため、過剰に乾球温度120℃の持続時間を長くすると、ドライングセット形成の層は深くなるが、乾燥速度が速いため、表層のドライングセット層の内側の部分が120℃の乾球温度のため、急速に内層の一部に収縮が始まり、この内層の部分が表層のドライングセットに強く拘束され、そのため引張応力が増大して内部割れが起こるといわれている。
【0004】
このような材面割れや内部割れを軽減する乾燥スケジュールの制御手法として、木材内の温度及び含水率を計測しながら乾燥を進めていく手法(特許文献1参照)が知られている。また、本出願人は、木材の内部に固定した歪み検知手段から得られるデータに基づき乾燥条件を制御しながら乾燥を進めていく手法(特許文献2参照)、及び角材の相隣接する2側面に一対の変位計固定用治具を固定し、一対の前記変位計固定用治具間に固定した変位計により、乾燥中に生じる変位を計測しながら乾燥を進めていく手法(特許文献3参照)等を提案した。
【0005】
また、物理的に材面割れ及び/又は内部割れを軽減する人工乾燥方法として、木材の外周を水分透過性の収縮拘束手段で拘束しながら乾燥させる手法(特許文献4参照)や、木材の木口部に穴をあける手法(特許文献5,6参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−287206号公報
【特許文献2】特開2004−190957号公報
【特許文献3】特開2007−120902号公報
【特許文献4】特開平02−050072号公報
【特許文献5】特開平02−155605号公報
【特許文献6】特開2007−196507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3の手法によれば、歪み検知手段や、温度及び含水率センサ、変位計等を取り付けた木材については、内部割れや材面割れを効果的に防止することができるが、複数本の木材を乾燥機内に入れて同時に乾燥させる場合には、木材の含水率にばらつきがあることが多く、含水率が異なる複数本の木材のそれぞれについて適切な乾燥制御を行うことは難しく、同時に乾燥する複数本の木材(乾燥材ロット)全体を管理することが困難であった。
【0008】
また、特許文献4〜6の手法は、ある程度の割れ防止効果は認められるものの、被乾燥木材の外周を取り囲むように収縮拘束手段を装着する作業が煩雑であったり、穴をあける等の処理に追加の専用機械を導入する必要がある等、労力的ないし費用的な負担が大きい。
【0009】
従って、本発明の目的は、内部割れを抑制しつつ効率的に木材の乾燥を行うことのできる乾燥木材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、木材における木口面の近傍をカットして、該木口面と略平行な切断面と該切断面の位置より前記木口面側に突出する突出部とを生じさせた後、人工乾燥する乾燥木材の製造方法を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
また、本発明は、木材における木口面に、該木口面と垂直にスリット状の切れ込みを入れた後、人工乾燥する乾燥木材の製造方法を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乾燥木材の製造方法によれば、内部割れを抑制しつつ効率的に木材の乾燥を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施に用い得る木材の乾燥装置の一例を示す模式図である。
【図2】第1実施態様における被乾燥木材の一端部近傍を示す斜視図である。
【図3】木口面又はその近傍に、内部割れを防止するための加工を施す前の木材である。
【図4】第2実施態様における被乾燥木材の一端部近傍を示す斜視図である。
【図5】第3実施態様における被乾燥木材の一端部近傍を示す斜視図である。
【図6】第4実施態様における被乾燥木材の一端部近傍を示す斜視図である。
【図7】第5実施態様における被乾燥木材の一端部近傍を示す斜視図である。
【図8】第1実施態様の変形例における被乾燥木材の一端木口面を軸方向から視た図である。
【図9】第2実施態様の変形例における被乾燥木材の一端木口面を軸方向から視た図である。
【図10】第4実施態様の変形例における被乾燥木材の一端木口面を軸方向から視た図である。
【図11】乾燥スケジュールの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好ましい実施態様に基づいて説明する。
本発明の乾燥木材の製造方法の実施には、温度及び湿度を制御可能な乾燥室を備えた乾燥装置を用いることが好ましい。
図1は、斯かる乾燥装置の一例を示すもので、温度及び湿度を制御可能な乾燥室1を備え、該乾燥室1内に収容した木材10を、該乾燥室1内の温度及び湿度の制御下に乾燥可能である。
【0014】
より具体的に説明すると、図1の木材の乾燥装置は、乾燥すべき木材10を収容する乾燥室1と、乾燥室1内に蒸気を噴射する蒸射機構2と、乾燥室1内の空気を加熱する加熱機構3と、乾燥室1内に外気を導入する給気機構4と、乾燥室内1の空気を外部に排気する排気機構5とを具備している。
【0015】
蒸射機構2は、蒸気発生装置(ボイラー等)21において発生させた蒸気を、乾燥室1に接続された蒸気導入管22を介して乾燥室1内に導入するように構成されており、蒸気導入管22に設けた電磁弁、電動弁等の制御弁23の開閉等により、乾燥室内への蒸射を制御可能である。加熱機構3は、乾燥室1内に配管した加熱管31内に熱媒(蒸気)を流通させることにより乾燥室1内の空気を加熱するように構成されており、該熱媒の流通、流量、温度等の制御により、加熱の制御が可能である。給気機構4及び排気機構5は、それぞれ、乾燥室1の内外を連通するダクト41,51と該ダクト内に空気流を生じさせるファン(図示せず)とを主体として構成されており、それぞれ、ファンの回転やダクトに設けたダンパー42,52の開閉を制御することにより、乾燥室1の吸排気を制御可能である。
【0016】
そして、蒸射機構2による蒸射、加熱機構3による加熱、給気機構4による給気、及び排気機構5による排気を、適宜に制御することにより、乾燥室1内の温度及び湿度を所望の温度及び湿度に制御することができるようになっている。
乾燥装置は、乾燥中における木材内部の温度を測定可能な温度測定手段6及び乾燥中における木材内部の含水率を測定可能な含水率測定手段7を具備していても良い。また、温度測定手段6及び含水率測定手段7は、それぞれ木材内部の温度又は含水率を、木材表面からの深さが異なる二箇所以上の部位において測定可能になされていても良い。温度測定手段及び含水率測定手段としては、例えば、特許文献1に記載のもの等を用いることができる。
また、乾燥装置は、木材(角材)10の相隣接する2側面に一対の変位計固定用治具を固定し、その一対の変位計固定用治具間に固定した変位計により、乾燥中の角材に生じる変位を計測する、変位測定手段を備えていても良い。このような変位測定手段の例は、例えば、特許文献3に記載のもの等を用いることができる。
【0017】
図1に示す乾燥装置は、乾燥室1内に設置された温度及び湿度計(図示せず)に電気的に接続された制御演算部8を備えている。制御演算部8は、パーソナルコンピューターを主体として構成されている。また、演算部8には、温度測定手段6、含水率測定手段7及び図示しない変位測定手段等も電気的に接続されており、該制御演算部8において、所定の演算がなされ、木材内部の温度、含水率及び木材内部に生じた変位量が算出され、それらが、連続的又は所定の間隔で、表示手段9及び/又はプリンター11’上に出力されるようになっている。制御演算部8は、入力手段12’から入力された所定の制御スケジュールに従い、乾燥室1内の温度及び湿度を経時的に変化させるようになされており、また、乾燥中に、そのスケジュールに適宜の変更を加えることも可能である。
【0018】
本発明の乾燥木材の製造方法においては、乾燥すべき木材(被乾燥木材)における木口面又は木口面の近傍に、内部割れを抑制するための所定の加工を施した後、その木材の人工乾燥を行う。
人工乾燥は、図1に示す乾燥装置の乾燥室1内のように、少なくとも温度、好ましくは温度又は湿度の両者を制御可能な空間内で、温度又は温度及び湿度の制御下に行う乾燥であるか、又は減圧乾燥である。人工乾燥は、(乾球)温度100℃超140℃以下の高温乾燥工程を有することが好ましく、(乾球)温度110〜130℃の高温乾燥工程を具備することがより好ましい。人工乾燥は、木材を100℃以下の温度(例えば50〜100℃)に加熱して乾燥する中温乾燥や、加熱を伴う減圧乾燥若しくは加熱を伴わない減圧乾燥等であっても良い。
【0019】
木材の内部割れを抑制するための所定の加工は、木材の長手方向の何れか一端の木口面のみに行っても良いが、長手方向の両端の両木口面に行うことが好ましい。
【0020】
本発明の第1実施態様においては、図3に示すような芯持ち角材である木材10’の長手方向両端の両木口面11(一方のみ図示)それぞれの近傍をスリット状にカットして、図2に示すように、両木口面11それぞれの近傍に、該木口面11と略平行な切断面12と、該切断面12の位置P1より木口面11側(図2中、矢印X1側)に突出する突出部13とを生じさせた被乾燥木材10A(10)を得る。
より具体的には、電動丸鋸を用いて、芯持ち角材である木材10’の相対向する2側面14,14のそれぞれに、所定深さのスリット状の切れ込み15,16を入れて、被乾燥木材10Aを得る。
【0021】
被乾燥木材10Aにおけるスリット状の切れ込み15,16は、側面14,14のそれぞれから木材10’の中心軸Cに向かっており、木口面11と略平行に形成されている。中心軸Cは、木材10’,10Aの木口面11の中心を通り且つ該木材10’,10Aの長手方向(X方向)に平行な直線である。また、図示例におけるスリット状の切れ込み15,16は、それぞれ、側面14の表面からの深さL2が図中Z方向において一定であり、側面14の表面に細幅に開口すると共に、もう一方の相対向する2側面17,17間に亘っている。
【0022】
本実施形態のように、木材10’に、スリット状の切れ込み15,16を入れて、木口面11と略平行な切断面12を形成した場合、切れ込み15のX方向の両側及び切れ込み16のX方向の両側に切断面が生じることになるが、突出部13が、切断面12の位置P1より木口面11側に突出するという場合の切断面12は、木材の長手方向中央部側の切断面を意味する。従って、図2中、P1の位置が、木材の長手方向(X方向)における切断面12の位置である。
【0023】
本実施形態における被乾燥木材10Aの突出部13は、木口面11と垂直な方向から見て、切断面12,12間の領域18と重なる部位である突出部中央部13Aと、一対の切断面12,12それぞれと重なる部位である側方延出部13B,13Bとを有している。突出部中央部13Aは、領域18を介して、木材10Aの長手方向中央部側と連続しており、一対の側方延出部13B,13Bは、突出部中央部13AからY方向の側方に張り出している。木材10Aの長手方向中央部は、図2中、切断面の位置P1よりも矢印X2方向に位置している。また、Y方向及びZ方向は、X方向に直交する断面内における一方向及びその直交方向である。
【0024】
スリット状の切れ込み15,16の形成手段としては、丸鋸、特に電気モーターやエンジンによって作動する動力鋸である丸鋸が好ましく用いられる。また、丸鋸は、手持ち型であっても良いが、据え付け型のもの、特に平らな台に組み込んだ円形の刃を高速回転させ、その台上を移動させた木材を直線状に切断するものを用いることが好ましい。
図2には、被乾燥木材10A(木材10’)の一方の木口面11側のみを示すが、他方の木口面側にも同様の加工を施す。
【0025】
通常、天然乾燥を行う場合は、乾燥条件が人工乾燥より厳しい場合があり、損傷は予想以上に多く発生しがちになる。このため、材には、初めに材面や木口面に干割れが生じ、それが伸びて表面割れや材の裂けに発展することが多い。
一方、人工乾燥の場合、温度や、温度及び湿度を任意の条件に設定できるため、天然乾燥に比べて材面割れ、内部割れの発生が少なくなる。そのため、通常は、無垢材の状態で乾燥を開始する。
しかし、人工乾燥と言えども、高温乾燥を用いた場合、材には材面割れや内部割れが多く発生することが度々ある。乾燥材の割れ状況を観察した結果、割れが発生する場合、内部割れは、その殆どが木口面から割れが開始し、その割れが材の長手方向に伸びて、材の途中で消滅したり、材の長手方向の中央部まで伸びていたりした。
【0026】
また、木材の性質として、木材の長手方向(軸方向)が最も水分通導性が大きいことが知られている。人工乾燥の場合、天然乾燥に比べて乾燥温度が高いため、材の両端木口部から先に乾燥し、次第に中央部に向かって乾燥していく。実際に、人工乾燥材の長手方向(軸方向)の含水率分布を調べると、両端木口部が含水率が低く、材中央に向かって含水率が高くなっている。
【0027】
本発明者は、木口面又はその近傍に発生する割れを防止することができれば、その割れから長手方向中央に進行する割れも効果的に抑制することができると考えた。また、木口面の近傍に所定の切断加工を施すことで、木口面又はその近傍から進行する内部割れの発生を効果的に抑制し得ることを知見した。
【0028】
本発明の第1実施態様においては、木材の内部割れを抑制するための切断加工として、前述した図2に示すような加工を施している。
被乾燥木材10Aを乾燥させる際には、突出部13の先端に位置する木口面11と、前述した切断面12,12とから水分の蒸発が起こり、そのそれぞれから、木材の長手方向(軸方向)に向かって乾燥が進行する。従来のように、乾燥すべき木材の木口面の近傍をカットしない場合には、木材中の水分の蒸発は、主として木口面のみから生じるため、乾燥も木口面から木材の長手方向中央部方向へと進行し、木材の長手方向における同位置においては、その断面の全体が、同様の乾燥状態となる。そのため、含水率の低下により縮もうとする年輪の周方向に引っ張り力が生じ、その引っ張り力に耐えられない部位が裂けて内部割れが生じる。その内部割れは、年輪に直交する方向に延びた形状となり易い。
【0029】
これに対して、第1実施態様においては、木口面11から離間した位置に一対の切断面12,12が生じているため、例えば、切断面12,12の位置P1においては、人工乾燥する際、切断面12の含水率は直ぐに低下し始めるのに対して、切断面12間の領域18は、突出部中央部13Aの存在によって水分の蒸発が起こり難いため、その領域18における含水率の低下は、切断面12,12よりも遅れて進行することになる。また、図2中の位置P2においても、突出部中央部13Aと重なる部分の乾燥は、切断面12,12と重なる部分よりも遅れて進行すると考えられる。
本実施態様の方法によれば、このようにして、同一断面中に含水率の高いところと低いところとを生じさせることにより、長手方向の同一断面が同様の速度で乾燥する場合に生じる年輪方向の引っ張り合いを防止ないし緩和することができ、内部割れの発生を抑制することができる。また、木口面の近傍に発生する割れを防止することにより、その割れが、木材の長手方向中央部側に進行することも同様に抑制される。これにより、内部割れがない乾燥木材や内部割れの少ない乾燥木材が得られる。
【0030】
内部割れ防止の観点から、木材10Aの木口面11から切断面12,12それぞれまでのX方向の距離L1(図2参照,突出部13の突出長さに同じ)は、5〜300mm、特に10〜100mmであることが好ましい。また、前記距離L1は、側面14,14間の距離L3の5〜300%、特に10〜100%であることが好ましい。
【0031】
また、スリット状の切れ込み15,16は、側面14,14の表面からの深さL2〔図2参照〕が、それぞれ、該側面14,14間の距離L3の5〜45%、特に20〜40%であることが好ましい。
また、切断面12,12の合計面積は、切れ込み15,16を有する部分以外の部分における被乾燥木材10Aの断面(X方向に直交する断面)の全面積の10〜90%、特に40〜80%であることが好ましい。
【0032】
また、スリット状の切れ込み15,16の幅W(図2参照)は、それぞれ、1〜10mm、特に2〜6mmであることが好ましい。
【0033】
次に、本発明の他の実施態様について説明する。他の実施態様については、木口面又はその近傍に対して施す加工が異なる以外は、第1実施態様と同様であり、特に説明しない点については、第1実施態様に関して上述した説明が適宜適用可能である。
【0034】
第2実施態様においては、図3に示すような芯持ち角材である木材10’の長手方向両端の両木口面11(一方のみ図示)それぞれの近傍をブロック状にカットして、図4に示す被乾燥木材10B(10)を得る。
より具体的には、電動丸鋸を用いて、芯持ち角材である木材10’の相対向する2側面14,14をそれぞれ所定深さまで切断した後、同様に電動丸鋸を用いて、木口面11の中心軸Cを挟む両側を所定深さまで切断することにより、木材10’の木口面の近傍における該木材10’の中心軸Cを挟む両側に位置する部分を除去する。除去する部分は、立方体状である。また、中心軸Cを挟む両側に位置する部分の前記除去は、木口面11の中心軸Cを挟む両側を木口面11に垂直に所定深さまで切断した後に、2側面14,14のそれぞれを所定深さまで切断して行っても良い。また、電動丸鋸に代えて、他の切断手段を用いる方法により行っても良い。
【0035】
得られた被乾燥木材10Bにおける両木口面11又はその近傍には、該木口面11と略平行な切断面12と、該切断面12の位置P1より木口面11側(図4中、矢印X1側)に突出する突出部13とが生じている。但し、突出部13は、第1実施形態における突出部中央部13Aに相当する部分のみからなり、側方延出部13B,13Bに相当する部分を有していない。
【0036】
第2実施態様においても、突出部13の先端面13a(木口面11)から離間した位置に一対の切断面12,12が生じているため、例えば、切断面12,12の位置P1においては、人工乾燥する際、切断面12の含水率は直ぐに低下し始めるのに対して、切断面12,12間の領域18は、突出部13の存在によって水分の蒸発が起こり難いため、その領域18における含水率の低下は、切断面12,12よりも遅れて進行する。また、図4中の位置P2においても、突出部13と重なる部分の乾燥は、切断面12,12と重なる部分よりも遅れて進行すると考えられる。
第2実施形態によれば、このようにして、同一断面中に含水率の高いところと低いところとを生じさせることにより、長手方向の同一断面が同様の速度で乾燥する場合に生じる年輪方向の引っ張り合いを緩和することができ、内部割れの発生を抑制することができる。また、木口面の近傍に発生する割れを防止することにより、その割れが、木材の長手方向中央部側に進行して生じる割れも同様に抑制される。これにより、内部割れがない乾燥木材や内部割れの少ない乾燥木材が得られる。
【0037】
内部割れ防止の観点から、突出部13の先端面13a(木口面11)から切断面12,12それぞれまでの距離L1(図4参照,突出部13の突出長さに同じ)は、5〜300mm、特に10〜100mmであることが好ましい。また、前記距離L1は、側面14,14間の距離L3の5〜300%、特に10〜100%であることが好ましい。
【0038】
また、切断面12,12のY方向の寸法L2(図4参照)は、それぞれ、側面14,14間の距離L3の5〜45%、特に20〜40%であることが好ましい。また、切断面12,12の合計面積は、突出部13以外の部分における被乾燥木材10Bの断面(長手方向に直交する断面)の全面積の10〜90%、特に40〜80%であることが好ましい。
【0039】
第3実施態様においては、図3に示すような芯持ち角材である木材10’の長手方向両端の両木口面11(一方のみ図示)のそれぞれに、各木口面11と垂直なスリット状の切れ込み19を入れて、図5に示す被乾燥木材10C(10)を得る。より具体的には、電動丸鋸を用いて、木口面11の互いに隣り合う2辺の中央部14a,17a同士を結ぶ4本の直線状の切れ込み19A〜19Dを、木口面11に対して垂直に入れる。切れ込み19A〜19Dは、それぞれ、木口面11からの深さが一定である。また、4本の切れ込み19A〜19Dは、各辺の中央部14a,17aにおいて、隣り合う切れ込みどうしが繋がっており、木口面11と垂直な方向から見たときに、該木口面11の中心軸Cを囲む菱形状の環状の溝を形成している。
切れ込み19A〜19Dの形成手段としては、第1実施形態等と同様に、動力鋸である丸鋸、特に据え付け型の丸鋸を用いることが好ましい。
【0040】
第3実施態様においても、例えば、被乾燥木材10Cの長手方向における、切れ込み19A〜19Dの底部が位置する部位P1や図5中の位置P2における各断面(長手方向に直交する断面)においては、切れ込み19に近い部分は比較的乾燥が速く進行する一方、切れ込み19から遠い部分の乾燥は、前記切れ込み19に近い部分よりも遅れて進行することになる。
第3実施形態によれば、このようにして、同一断面中に含水率の高いところと低いところとを生じさせることにより、長手方向の同一断面が同様の速度で乾燥する場合に生じる年輪方向の引っ張り合いを緩和することができ、内部割れの発生を抑制することができる。また、木口面の近傍に発生する割れを防止することにより、その割れが、木材の長手方向中央部側に進行して生じる割れも同様に抑制される。これにより、内部割れがない乾燥木材や内部割れの少ない乾燥木材が得られる。
【0041】
内部割れ防止の観点から、切れ込み19A〜19Dは、それぞれ、木口面11からの深さL5(図5参照)が、5〜300mm、特に10〜100mmであることが好ましい。また、前記深さL5は、側面14,14間の距離L3及び/又は側面17,17間の距離L4の5〜300%、特に10〜100%であることが好ましい。
また、切れ込み19A〜19Dの幅W〔図5参照〕は、それぞれ、1〜10mm、特に2〜6mmであることが好ましい。
【0042】
第4実施態様においては、図3に示すような芯持ち角材である木材10’の長手方向両端の両木口面11(一方のみ図示)のそれぞれに、該各木口面11と垂直なスリット状の切れ込み19,19を入れて、図6に示す被乾燥木材10D(10)を得る。より具体的には、電動丸鋸を用いて、木材10’における、木口面11の中心軸Cを挟む両側を直線状に所定深さまで切断している。切れ込み19,19は、互いに平行に形成されており、それぞれ、木口面11に細幅に開口していると共に、側面17,17間に亘っている。
切れ込み19,19の形成手段としては、第1実施形態等と同様に、動力鋸である丸鋸、特に据え付け型の丸鋸を用いることが好ましい。
【0043】
第4実施態様においても、例えば、被乾燥木材10Dの長手方向における、切れ込み19の底部が位置する部位P1や図6中の位置P2においては、切れ込み19に近い部分は比較的乾燥が速く進行する一方、切れ込み19から遠い部分は、前記切れ込み19に近い部分よりも遅れて進行する。
第4実施形態によれば、このようにして、同一断面中に含水率の高いところと低いところとを生じさせることにより、長手方向の同一断面が同様の速度で乾燥する場合に生じる年輪方向の引っ張り合いを緩和することができ、内部割れの発生を抑制することができる。また、木口面の近傍に発生する割れを防止することにより、その割れが、長手方向中央部側に進行して生じる割れも同様に抑制される。これにより、内部割れがない乾燥木材や内部割れの少ない乾燥木材が得られる。
【0044】
内部割れ防止の観点から、切れ込み19,19は、それぞれ、木口面11からの深さL6(図6参照)が、5〜300mm、特に10〜100mmであることが好ましい。また、前記深さL6は、側面14,14間の距離L3及び/又は側面17,17間の距離L4の5〜300%、特に10〜100%であることが好ましい。
【0045】
また、スリット状の切れ込み19,19は、それぞれ、側面14,14の表面から切れ込みまでの距離L7〔図6参照〕が、該側面14,14間の距離L3の5〜45%、特に20〜40%であることが好ましい。
また、切れ込み19,19の幅W〔図6参照〕は、それぞれ、1〜10mm、特に2〜6mmであることが好ましい。
【0046】
第5実施態様においては、図3に示すような芯持ち角材である木材10’の長手方向両端の両木口面11(一方のみ図示)それぞれの近傍をブロック状にカットして、図7に示す被乾燥木材10E(10)を得る。
より具体的には、電動丸鋸を用いて、図5に示すように、各木口面11と垂直なスリット状の切れ込み19A〜19Dを入れた後、同様に電動丸鋸を用いて、木材10’の周面における角部を木材10’の中心軸方向に向かって切断することにより、木材10’の木口面の近傍における該木材10’の中心軸Cを囲む四隅部を除去する。除去する部分は、直角三角柱状である。三角柱状のブロックの除去は、木材10’の周面における角部の切断後に、木口面11と垂直な切れ込み19A〜19Dを入れて行っても良い。また、電動丸鋸に代えて、他の切断手段を用いる方法により行っても良い。
【0047】
得られた被乾燥木材10Eにおける両木口面11又はその近傍には、該木口面11と略平行な三角形状の4つの切断面12,12・・と、該切断面12の位置P1より木口面11側に突出する突出部13Eとが生じている。突出部13Eは、木材の長手方向の直交する断面が正方形状ないし菱形状であり、その断面の対角線は、突出部13E以外の部分における被乾燥木材10Eの断面の対角線に対して45度傾斜している。
【0048】
第5実施態様においても、突出部13Eの先端面13a(木口面11)から離間した位置に切断面12,12・・が生じているため、例えば、切断面12,12・・の位置P1においては、人工乾燥する際、切断面12の含水率は直ぐに低下し始めるのに対して、切断面12に囲まれた領域18は、突出部13Eの存在によって水分の蒸発が起こり難いため、その領域18における含水率の低下は、切断面12,12・・よりも遅れて進行する。また、図4中の位置P2においても、突出部13Eと重なる部分の乾燥は、切断面12,12と重なる部分よりも遅れて進行する。
第5実施形態によれば、このようにして、同一断面中に含水率の高いところと低いところとを生じさせることにより、長手方向の同一断面が同様の速度で乾燥する場合に生じる年輪方向の引っ張り合いを緩和することができ、内部割れの発生を抑制することができる。また、木口面の近傍に発生する割れを防止することにより、その割れが、長手方向中央部側に進行して生じる割れも同様に抑制される。これにより、内部割れがない乾燥木材や内部割れの少ない乾燥木材が得られる。
【0049】
内部割れ防止の観点から、突出部13Eの先端面13a(木口面11)から切断面12,12・・それぞれまでの距離L1(図6参照,突出部13Eの突出長さに同じ)は、5〜300mm、特に10〜100mmであることが好ましい。また、前記距離L1は、側面14,14間の距離L3及び/又は側面17,17間の距離L4の5〜300%、特に10〜100%であることが好ましい。
【0050】
また、切断面12,12・・の合計面積は、突出部13E以外の部分における被乾燥木材10Eの断面(X方向に直交する断面)の全面積の10〜80%、特に30〜60%であることが好ましい。
【0051】
本発明の乾燥木材の製造方法においては、乾燥すべき木材(被乾燥木材)における木口面又は木口面の近傍に、内部割れを防止するための所定の加工、例えば、図2,図4〜図7に示すような加工を施した後に人工乾燥を行う。
人工乾燥により得られる乾燥木材は、各種の用途に使用することができ、特に木造住宅等の木造建築物における柱材、梁材や土台材等の構造材として好ましく用いられる。
【0052】
また、乾燥により得られる乾燥木材は、そのままの状態で、各種の用途に用いることもできるが、例えば、木材の長手方向端部近傍の不要部分を切除して用いることも好ましい。
【0053】
例えば、図2に示す被乾燥木材を乾燥して得られる乾燥木材は、スリット状の切れ込み15,16の位置よりやや木材長手方向中央部側の位置や切断面12,12の位置で、乾燥木材を長手方向に垂直に切断して、端部の突出部を有しない木材として用いることができる。また、突出部13の端面や側方延出部13B,13Bを切除して、端部にほぞ等の突出部を有する木材(柱材等)として用いることもできる。
また、図4や図7に示す被乾燥木材を乾燥して得られる乾燥木材も、切断面12の位置よりやや木材長手方向中央部側の位置や切断面12,12の位置で、乾燥木材を長手方向に垂直に切断して、端部に突出部を有しない木材として用いることができる。また、突出部13の端面や、突出部13の周面の全体や一部、及び/又は切断面12等を所定の厚み切除して、端部にほぞ等の突出部を有する木材(柱材等)として用いることもできる。
【0054】
また、図5や図6に示す被乾燥木材を乾燥して得られる乾燥木材は、スリット状の切れ込み19の底部の位置よりやや木材長手方向の中央部側の位置等を、乾燥木材の長手方向に垂直に切断して用いたり、四本のスリット状の切れ込み19A〜19Dに囲まれた部分や2本のスリット状の切れ込み19,19に挟まれた部分を残して、その外側に位置する部分を除して用いることもできる。その場合、四本のスリット状の切れ込み19A〜19Dに囲まれた部分や2本のスリット状の切れ込み19,19に挟まれた部分を、木口面からなる端面や突出部の周面の全体又は一部を切除し、端部にほぞ等の突出部を有する木材(柱材等)として用いることもできる。
【0055】
第1〜第5実施態様における木口面11又はその近傍のカットや切り込み形成、及びその状態での人工乾燥は、製材供給される木材10’の木口面11が平滑面でなく、例えばチェーンソーでカットされた非平滑な面であっても問題なく行うことができる。また、第1〜第5実施態様における木口面11又はその近傍のカットや切り込み形成は、製材ライン上での機械による自動化にも適している。例えば、図2に示す加工は、製材ラインにおける、被加工木材の両端近傍部の通過位置に、上下一対の丸鋸を配し、被加工木材を、台上を滑らせたり、搬送ローラやベルトコンベア等の搬送手段で移動させて、その一対の丸鋸間に導入することで、該被加工木材の相対向する2側面に図2に示すようなスリット状の切れ込みを容易に形成することができる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、各発明は、上記の実施形態に制限されず適宜に変更可能である。
例えば、一本の木材10’の一端部と他端部とに、異なる形態の割れ防止加工を施しても良い。
【0057】
また、第1実施態様では、木材10’の相対する2側面14,14に中心軸Cに向かうスリット状の切れ込み15,16を形成して突出部13と切断面12を形成したが、図8に示す被乾燥木材10F(10)のように、4側面14,14,17,17のそれぞれに、中心軸Cに向かうスリット状の切れ込みを入れてもよい。側面17,17に形成された切れ込みは、第1実施態様で説明した切れ込み15,16と同様の構成を有し、Y方向に沿って一定の深さL9を有する。
図8に示した例では、側面17,17の切れ込みは、木材10’の長手方向において、側面14,14に形成された切れ込み15,16と同じ位置に形成されており、側面17,17に形成される切れ込みによる切断面(木材の長手方向中央部側の切断面)は、側面14,14に形成された切れ込み15,16による切断面12と連続している。この場合、連続する切断面に囲まれた領域18は、中心軸方向から視て矩形状をなしており、突出部13は、該領域18を介して木材10Fの長手方向と連続している。
【0058】
図8に示す例においては、前記領域18は正方形状であるが、該領域18は、Z方向に長い長方形状であっても良い。また、側面17,17間の距離L4に対する側面17,17に形成された切り込みの深さL9の比は、側面14,14間の距離L3に対する切り込み15,16の深さL2の比と同一であっても良いし、異なっていても良い。
更に、側面17,17に入れる切れ込みと、側面14,14に入れる切れ込み15,16とで、木材10’の長手方向の位置を異ならせても良い。また、側面17,17に入れる切れ込みと、側面14,14に入れる切れ込み15,16とで、切れ込みの幅Wが異ならせても良い。
このように、角材の4側面に、該側面それぞれから、該角材の中心軸Cに向かうスリット状の切れ込みを入れて、切断面12及び突出部13を生じさせる場合にも、内部割れ防止効果が得られる。
【0059】
また、第2実施態様では、木材10’の木工面11の近傍における中心軸Cを挟む両側に位置する部分を除去して、切断面12及び突出部13を生じさせていたが、第3実施態様や図9に示す被乾燥木材10G(10)のように、木材10’の木工面11の近傍における中心軸Cを囲む四方に位置する部分を除去して、切断面12及び突出部13を生じさせても良い。
図9に示す被乾燥木材10Gにおいては、中心軸Cを囲む四方に位置する部分を除去して、角材10Gの4側面それぞれと平行な4側面を有する角柱状の突出部13を生じさせてある。突出部13の4側面それぞれより外側の部分は、どの部分から先に除去しても良いが、一例を挙げれば、木材10’における側面14,14の近傍を除去して、図4に示す被乾燥木材10B(10)の状態にした後に、側面17,17の近傍を除去する。
【0060】
図9に示す例においては、木材の長手方向における、側面17,17の切断位置が側面14,14の切断位置と同位置であり、突出部13の周囲に、連続する環状の切断面12が生じている。図9に示す例においては、突出部13の軸方向に垂直な断面形状は正方形状であるが、突出部13の同断面形状は、Z方向に長い長方形状であっても良い。また、中心軸Cを挟む両側で、長さL2又は長さL9が異なっていても良い。
【0061】
また、第4実施態様では、木材10’の木口面11に、中心軸Cを挟み、側面17,17間に亘って平行な2本の切れ込み19,19を形成していたが、図10に示す被乾燥木材10H(10)のように、それらの切れ込み19,19に加えて、更に2本の切れ込み25,25を、切れ込み19,19と直交するように形成してもよい。切れ込み25,25も、中心軸Cを挟むように形成され、互いに平行に形成されている。また、切れ込み19,19と交差して、側面14,14間の全域に亘るように形成されている。切れ込み25,25の深さは、切れ込み19,19の深さと同一でも良いし、異なっていても良い。
切れ込み25,25は、側面17,17の表面から切れ込みまでの距離L10の側面17,17間距離L4に対する割合が、切れ込み19,19の、側面14,14の表面から切れ込みまでの距離L7の側面14,14間距離L3に対する割合と同じであっても良いし、異なっていても良い。また、切れ込み25と切れ込み19とで幅Wが異なっていても良い。
【0062】
また、第3実施態様における切れ込み19A〜19Dを、隣り合う切れ込みどうしが各側面の中央部で交差するように形成するのに代えて、隣り合う切れ込みどうしが、各側面から中心軸C側に所定距離離間した位置で交差するように形成することもできる。
【0063】
また、上述した各実施形態において、従来より知られている割れ止め剤やポリエチレングリコールなどの寸法安定化剤を、塗布、注入するなどの処理を組み合わせても構わない。
【0064】
また、上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
例えば、一本の木材10’の一端を、図2に示す形態とする一方、他端を、図4〜図10に示す形態のうちの何れか一形態としても良いし、一本の木材10’の一端を、図4に示す形態とする一方、他端を、図5〜図10に示す形態のうちの何れか一形態としても良い。また、一本の木材10’の一端を、図5に示す形態とする一方、他端を、図6〜図10に示す形態のうちの何れか一形態としても良いし、一本の木材10’の一端を、図6に示す形態とする一方、他端を、図7〜図10に示す形態のうちの何れか一形態としても良い。
また、一本の木材10’の一端を、図2、図4又は図6に示す形態とする一方、他端を、図2、図4又は図6に示す形態を、木材の中心軸C回りに90度回転させた形態とすることもできる。
【0065】
また、スリット状の切り込みや、図4や図7等に示すような突出部を形成するための加工は、丸鋸に代えて、仕口加工機、NCルータ等を用いることもでき、また、これらの2以上を適宜に組み合わせて用いても良い。
また、木材10’は、断面正方形状のものが好ましいが、平角材等であっても良い。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例により、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、かかる実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
〔乾燥試験〕
図1に示す構成の乾燥装置を用い、被乾燥材として栃木産のスギから製材した製材直後の芯持角材(柱材、背割りなし、断面寸法115mm×115mm、長さ300cmの正角材)59本(乾燥前含水率45〜120%)について、以下に示す乾燥スケジュールにて5回の乾燥を行った。
〔乾燥スケジュール〕
初期蒸煮工程(96℃,12時間)→第1乾燥工程(乾球温度120℃,湿球温度90℃)→第2乾燥工程(乾球温度110℃,湿球温度90℃)→第3乾燥工程(乾球温度100℃,湿球温度80℃)→第4乾燥工程(乾球温度90℃,湿球温度60℃)
各工程の時間は含水率を監視しながら適宜に変更した。図11に各工程の典型例を示した。
乾燥は、平均含水率15%未満を目標として行い、含水率計によりモニタリングしている柱材の含水率が15%未満になった時点で終了した。そのため、各乾燥材ロットで乾燥時間は異なり、120〜180時間の間で調整した。
【0068】
〔実施例1〕
未乾燥の芯持角材11本の両木口面それぞれの近傍を、図2に示す形態に加工した。図2中の各部の寸法は、距離L1=50mm(距離L3の43%)、L2=28mm、幅W=2mmとした。
【0069】
〔実施例2〕
未乾燥の芯持角材11本の両木口面それぞれの近傍を、図4に示す形態に加工した。図4中の各部の寸法は、距離L1=50mm(距離L3の43%)、L2=28mmとした。
【0070】
〔実施例3〕
未乾燥の芯持角材6本の両木口面それぞれに、図5に示す態様のスリット状の切れ込み19A〜19Dを入れた。図5中の各部の寸法は、L5=50mm、幅W=2mmとした。
【0071】
〔実施例4〕
未乾燥の芯持角材5本の両木口面それぞれに、図6に示す態様のスリット状の切れ込み19,19を入れた。図6中の各部の寸法は、L6=50mm、L7=28mm(L3の24%)、幅W=2mmとした。
【0072】
〔実施例5〕
未乾燥の芯持角材11本の両木口面それぞれの近傍を、図7に示す形態に加工した。図7中の各部の寸法は、距離L1=50mm(距離L3の43%)、L8=81.3mmとした。
【0073】
〔比較例1〕
実施例1〜5の試験ロット内に、両木口面及びそれらの近傍の何れにも加工を施さない未乾燥の芯持角材を3本ずつ(合計15本)投入し、上記の乾燥試験に供した。
【0074】
〔評価〕
実施例及び比較例の方法により乾燥を行った芯持角材(合計59本)について、含水率及び内部割れを、それぞれ以下に示す方法により評価し、含水率20%以下のサンプルを抽出して、その結果を表1に示した。
【0075】
〔含水率〕
乾燥後の含水率;乾燥後の角材の長手方向の両端部それぞれの各端面から100〜150mmの範囲を切り出して50mm幅のサンプルを得た。そして、各サンプルの重量W1を測定した後、該各サンプルを、JIS Z2201.木材の試験方法 含水率の測定方法に準じて、乾燥機中で105℃に放置し、該サンプルが恒量に達した後の重量W2を測定した。下記式(2)により乾燥後の含水率を求めた。
乾燥後の含水率(%)=(W1−W2)/W2 ×100 ・・・(2)
【0076】
〔内部割れ〕
乾燥後の角材の両端それぞれから100mmの位置(2箇所)の切断面を観察し、各断面において観察される内部割れの程度を下記評価基準で判定し、内部割れ評価を行った。
具体的には、各乾燥木材から、元口側のサンプル及び末口側のサンプルの2個のサンプルを得、含水率20%以下のサンプルについて、各実施例又は比較例毎に、サンプルの総数(表中「試験体」)に対する内部割れ合格のサンプルの個数(表中「合格」)の割合〔(合格/試験体)×100〕を求め、それを合格率として、表1中の「含水率20%未満」の欄に示した。内部割れ合格のサンプルは、下記の評価基準の評価が「なし」又は「小」のサンプルである。
また、含水率20%以下のサンプルを、含水率が10%未満のサンプルと、含水率が10%以上20%未満のサンプルとに区分し、それぞれの区分毎に、前記と同様にして合格率を求め、表1中の「含水率10%未満」及び「含水率10%以上20%未満」の欄に示した。
なお、本実施例において、「含水率10%未満」は過乾燥材、「含水率10%以上20%未満」は適性乾燥材を意味し、「含水率20%未満」は、乾燥材として合格であることを意味する。
【0077】
〔評価基準〕
なし:割れが認められない。
小:割れ面の最大巾が1mm以内で長さが20mm以内の割れが存在する。
中:小の割れに該当しない割れであって、割れ面の最大巾が2mm以内で長さが50mm以内の割れが存在する。
大:最大巾が2mm超又は長さが50mm超の割れが存在する。
【0078】
【表1】

【0079】
また、「含水率20%未満」の欄の合格率の値が、比較例の値以上であり且つ50%以上のものを◎、合格率の値が、比較例の値以上であるが50%に満たないものを○とし、総合評価として表1に併せて示した。
【0080】
表1に示す結果から、本発明の方法によれば、比較例1(従来の方法)に比べて、乾燥木材の内部割れを顕著に低減することができることが判る。なお、本発明の乾燥木材の乾燥方法は、乾燥後の柱材の含水率が20%以下、特に15%以下となるまで乾燥する場合に特に有効である。
【符号の説明】
【0081】
10,10A〜10H 被乾燥木材(内部割れ防止加工を施した後)
11 木口面
12 切断面
13,13E 突出部
19,19A〜19D,25 切れ込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材における木口面の近傍をカットして、該木口面と略平行な切断面と該切断面の位置より前記木口面側に突出する突出部とを生じさせた後、人工乾燥する乾燥木材の製造方法。
【請求項2】
前記木材が角材であり、該角材の4側面又は相対向する2側面に、該側面それぞれから、該角材の中心軸に向かうスリット状の切れ込みを入れて、前記切断面及び前記突出部を生じさせる、請求項1記載の乾燥木材の製造方法。
【請求項3】
前記木材が角材であり、該角材の木口面の近傍における該角材の中心軸を挟む両側に位置する部分を除去して、前記切断面及び前記突出部を生じさせる、請求項1記載の乾燥木材の製造方法。
【請求項4】
前記木材が角材であり、該角材の木口面の近傍における、該角材の中心軸を囲む四方に位置する部分を除去して、前記切断面及び前記突出部を生じさせる、請求項1記載の乾燥木材の製造方法。
【請求項5】
木材における木口面に、該木口面と垂直にスリット状の切れ込みを入れた後、人工乾燥する乾燥木材の製造方法。
【請求項6】
前記木材が角材であり、前記スリット状の切れ込みとして、前記木口面の互いに隣り合う2辺の中央部同士を結ぶ4本の切れ込みを入れる、請求項5記載の乾燥木材の製造方法。
【請求項7】
前記木材が角材であり、前記スリット状の切れ込みとして、該角材の中心軸を挟む平行な2本の切れ込みを入れる、請求項5記載の乾燥木材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−153055(P2012−153055A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15262(P2011−15262)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】