説明

木材の保存処理方法及び保存処理木材

【課題】揮発性有機溶媒に保存用薬剤を溶解した溶液を用い含浸タンクの中で木材の保存処理を行う木材処理方法において、より一層木材保存効果が高く、環境に対する負荷が小さく、経済性に優れた木材処理方法を提供する。
【解決手段】(A)木材を密閉型の含浸タンク内に配置する工程、(B)前記含浸タンクを減圧する工程、(C)保存用薬剤を揮発性有機溶媒に溶解して調製される薬剤溶液を前記含浸タンク内に導入する工程、(D)前記含浸タンクを加圧することよって木材に前記薬剤溶液を注入する工程、及び(E)前記木材中の過剰な揮発性有機溶媒を加熱によって除去する工程によって、木材に保存用薬剤を含浸させる木材の保存処理方法であって、(C)工程の木材保存用薬剤としてエポキシコナゾール、またはエポキシコナゾールと酸アニリド系化合物を有効成分として含有する薬剤を使用する木材の保存処理方法、及び前記方法によって製造される保存処理木材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の保存処理方法及び保存処理木材に関する。更に詳しく言えば、密閉型の容器内で防腐効果を有するエポキシコナゾールの揮発性有機溶媒溶液を使用して木材を処理することを特徴する、安定した防腐性能を有し、環境負荷が低減された木材の保存処理方法及び保存処理木材に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は様々な分野で利用されている有用な材料であるが、木材腐朽菌により腐朽劣化し、重大な強度低下を招くという欠点を有している。そこで、種々の木材腐朽菌による劣化を防ぐため、従来から各種の無機及び有機系防腐剤を用いて、様々な木材保存処理方法が実施されているが、より少量の薬剤で優れた保存処理効果が得られる、より経済性に優れた木材保存処理方法が求められている。
【0003】
揮発性有機溶媒に保存用薬剤を溶解した溶液を用いて、含浸タンクの中で木材の保存処理を行う技術が、特公平1−36401号公報(特許文献1)、特許第2930553号公報(特許文献2)、特許第4149422号公報(特許文献3)等に開示されている。この木材保存処理法は、過剰な薬剤成分や揮発性有機溶媒を回収して再使用することで廃液処理の問題を回避でき、保存処理後の木材の含水率が低いため乾燥工程が不要になるという利点がある優れた木材処理方法であるが、このような木材処理方法に適用可能な、より木材保存効果が高く、環境に与える負荷が低く、かつ経済性に優れた薬剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1−36401号公報
【特許文献2】特許第2930553号公報
【特許文献3】特許第4149422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、揮発性有機溶媒に保存用薬剤を溶解した溶液を用い含浸タンクの中で木材の保存処理を行う木材処理方法に適用可能な、より一層木材保存効果が高く、環境に対する負荷が小さく、経済性に優れた木材処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、揮発性有機溶媒を用いる木材処理方法に適用可能な防腐成分に関して広範に鋭意検討を行った。この目的で使用する防腐成分は、揮発性有機溶媒への適度な溶解性を有し、木材内部へ揮発性有機溶媒と共に良好に浸透する性能を有し、揮発性有機溶媒を加熱によって回収する際の熱に対して安定であり、揮発性有機溶媒を除去する際に溶媒と共に木材表面に滲出せず、更に、得られた処理木材が優れた防腐効果を有していること等様々な性能を備えている必要があるため、検討は極めて困難であったが、ついにエポキシコナゾールが優れた防腐成分であることを見出した。また、酸アニリド系化合物をエポキシコナゾールと併用することにより、一層安定した木材保存効果が得られ、殺虫剤を併用することにより優れた防腐防虫効果が得られ、更にこれらの処理方法によって優れた保存効果を有する処理木材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の木材の保存処理方法及び保存処理木材を提供するものである。
1.(A)木材を密閉型の含浸タンク内に配置する工程、
(B)前記含浸タンクを減圧する工程、
(C)保存用薬剤を揮発性有機溶媒に溶解して調製される薬剤溶液を前記含浸タンク内に導入する工程、
(D)前記含浸タンクを加圧することよって木材に前記薬剤溶液を注入する工程、及び
(E)前記木材中の過剰な揮発性有機溶媒を加熱によって除去する工程によって、木材に保存用薬剤を含浸させる木材の保存処理方法であって、(C)工程の木材保存用薬剤としてエポキシコナゾールを有効成分として含有する薬剤を使用することを特徴とする木材の保存処理方法。
2.前記(C)工程で使用する木材保存用薬剤が、更に、次式(I)
【化1】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子が任意の位置に1〜2個置換してもよいフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のハロアルコキシ基を表わし、またはR1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって芳香族複素環を形成してもよく、R5はフェニル、ピラゾリル、ニコチニル、フラニル、チアゾリル、オキサチイニル、イソチアゾリル、ピラニル、オキサゾリル、ナフチル、ピリミジニル、ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ピロリル、ベンゾオキサゾリル、ピラジニル、チエニル、及びイミダゾリル基からなる単環式または二環式の基から選択され、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、ヒドロキシ基またはカルボキシル基で置換されてもよく、R1、R2、R3、R4が表わす炭素原子数3〜6のアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、R5の置換基が表わす炭素原子数3〜6のアルキル基及びハロアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。]で示される1種または2種以上の酸アニリド系化合物を含有する前記1に記載の木材の保存処理方法。
3.前記(C)工程に使用する保存用薬剤が、更に、殺虫剤を含有する前記1または2に記載の木材の保存処理方法。
4.前記(E)工程で使用する木材保存用薬剤が、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、及び1,2−ジクロロエタンから選択される1種または2種以上である前記1に記載の木材の保存処理方法。
5.前記1〜4のいずれかに記載の処理方法によって製造される保存処理木材。
【発明の効果】
【0008】
本発明はエポキシコナゾール、またはエポキシコナゾールと酸アニリド系化合物を溶解した溶液を用いて含浸タンクの中で木材を処理する木材の保存処理方法を提供したものである。本発明の木材の保存処理方法は、従来の方法に比べて、木材保存効果が高く、環境に対する負荷が小さく、経済性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用するエポキシコナゾール(epoxiconazole)は既知の化合物であり、公知の方法によって製造することができる。木材の保存処理の際のエポキシコナゾールの好適な使用濃度は、揮発性有機溶媒に溶解した木材と接触する薬剤溶液における濃度として0.0001%(w/w)〜1%(w/w)、より好適には0.001%(w/w)〜0.1%(w/w)である。
【0010】
エポキシコナゾールは、揮発性有機溶媒に溶解して調製した薬剤溶液を加圧によって木材に注入した後、木材中の過剰な揮発性有機溶媒を加熱によって除去する工程によって実施される木材処理方法において、極めて有用な防腐成分である。エポキシコナゾールは防腐成分として単独で使用することにより、優れた木材保存効果が得られる。しかしながら、土壌に接触した環境で長期間、処理木材を使用するためには、更に優れた防腐性能を付与する必要がある。このような高度な防腐性能は、次式(I)
【化2】

で示される酸アニリド系化合物を、エポキシコナゾールと共に揮発性有機溶媒に溶解して同時に使用することにより達成される。
【0011】
式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子が任意の位置に1〜2個置換してもよいフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のハロアルコキシ基を表わし、またはR1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって芳香族複素環を形成してもよく、R5はフェニル、ピラゾリル、ニコチニル、フラニル、チアゾリル、オキサチイニル、イソチアゾリル、ピラニル、オキサゾリル、ナフチル、ピリミジニル、ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ピロリル、ベンゾオキサゾリル、ピラジニル、チエニル、及びイミダゾリル基からなる単環式または二環式の基から選択され、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、ヒドロキシ基またはカルボキシル基で置換されてもよく、R1、R2、R3、R4が表わす炭素原子数3〜6のアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、R5の置換基が表わす炭素原子数3〜6のアルキル基及びハロアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0012】
5における0〜3個のヘテロ原子を場合によっては含有する単環式もしくは二環式の基としては、フェニル、ピラゾリル、ニコチニル、フラニル、チアゾリル、オキサチイニル、イソチアゾリル、ピラニル、オキサゾリル、ナフチル、ピリミジニル、ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ピロリル、ベンゾオキサゾリル、ピラジニル、チエニル、イミダゾリル基を挙げることができるが、ベンジル、ピラゾリル、ニコチニル、フラニル、チアゾリル、オキサチイニル、イソチアゾリル、フタリル、サリチル、ピラニル基が好ましい。また置換基としては、ハロゲン原子、メチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシ基、アンモニウム基が好ましい。
【0013】
「ヘテロ原子」は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を意味する。「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を意味する。「ハロ」(例えば「ハロアルキル」における「ハロ」)は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を意味する。「芳香族複素環」は、1〜3個の環からなり、環原子として窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1種または2種以上の原子(ヘテロ原子)を1個または複数個含み、環中に(4n+2)個(nは1、2、または3)のπ電子を有する複素環式化合物を意味する。直鎖状または分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基として、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。炭素原子数3〜8のシクロアルキル基として、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。直鎖状または分岐状の炭素原子数1〜6のハロアルキル基として、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジクロロエチル基、ブロモプロピル基などが挙げられる。直鎖状または分岐状の炭素原子数1〜6のアルコキシ基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基が挙げられる。直鎖状または分岐状の炭素原子数1〜6のハロアルコキシ基として、例えばジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロプロキシ基が挙げられる。
【0014】
このような酸アニリド系化合物の好適な例としては、次式(II)
【化3】

で示される3'−イソプロポキシ−2−メチルベンズアニリド(一般名:メプロニル[mepronil])、
【0015】
次式(III)
【化4】

で示される3'−イソプロポキシ−2−トリフルオロメチルベンズアニリド(一般名:フルトラニル[flutolanil])、
【0016】
次式(IV)
【化5】

で示される(RS)−5−クロロ−N−(1,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチルイソベンゾフラン−4−イル)−1,3−ジメチルピラゾール−4−カルボキサミド(一般名:フラメトピル[furametpyr])、
【0017】
次式(V)
【化6】

で示される2−クロロ−N−(4'−クロロビフェニル−2−イル)ニコチンアミド(一般名:ボスカリド[boscalid])、
【0018】
次式(VI)
【化7】

で示される3'−イソプロピル−2,5−ジメチルフラン−3−カルボン酸アミド(一般名:マイコール[mychol])、
【0019】
次式(VII)
【化8】

で示される2',6'−ジブロモ−2−メチル−4'−トリフルオロメトキシ−4−トリフルオロメチル−1,3−チアゾール−5−カルボキサミド(一般名:チフルズアミド[thifluzamide])、
【0020】
次式(VIII)
【化9】

で示される3'−イソプロピル−2−トリフルオロメチルベンズアニリド、
【0021】
次式(IX)
【化10】

で示される3'−イソプロピル−2−トリフルオロメチル−5−メチルフラン−3−カルボン酸アミド、
【0022】
次式(X)
【化11】

で示される2−ヨード−N−フェニルベンズアミド(一般名:ベノダニル[benodanil])、
【0023】
次式(XI)
【化12】

で示される2−メチル−N−フェニル−3−フランカルボキサミド(一般名:フェンフラム[fenfuram])、
【0024】
式(XII)
【化13】

で示される5,6−ジヒドロ−2−メチル−N−フェニル−1,4−オキサチイン−3−カルボキサミド(一般名:カルボキシン[carboxin])、
【0025】
次式(XIII)
【化14】

で示される5,6−ジヒドロ−2−メチル−N−フェニル−1,4−オキサチイン−3−カルボキサミド 4,4−ジオキシド(一般名:オキシカルボキシン[oxycarboxin])、
【0026】
次式(XIV)
【化15】

で示される3,4−ジクロロ−N−(2−シアノフェニル)−5−イソチアゾールカルボキサミド(一般名:イソチアニル[isotianil])、
【0027】
次式(XV)
【化16】

で示される3,4、5,6−テトラクロロ−N−(2,3−ジクロロフェニル)フタルアニリド酸(一般名:テクロフタラム[tecloftalam])、
【0028】
次式(XVI)
【化17】

で示される2−メチルベンズアニリド(一般名:メベニル[mebenil])、
【0029】
次式(XVII)
【化18】

で示される3,5−ジブロモ−3'−トリフルオロメチルサリチルアニリド(一般名:フルオロフェン[fluorophene])、
【0030】
次式(XVIII)
【化19】

で示される3,4−ジヒドロ−6−メチル−N−フェニル−2H−ピラン−5−カルボキサミド(一般名:ピラカルボリド[pyracarbolid])、
【0031】
次式(XIX)
【化20】

で示される2,5−ジメチル−N−フェニル−3−フランカルボキサミド(一般名:フルカルバニル[furcarbanil])、
【0032】
次式(XX)
【化21】

で示される2,4、5−トリメチル−N−フェニル−3−フランカルボキサミド(一般名:メトフロキサム[methfuroxam])、
【0033】
次式(XXI)
【化22】

で示される2'−[(RS)−1,3−ジメチルブチル]−5−フルオロ−1,3−ジメチルピラゾール−4−カルボキサミド(一般名:ペンフルフェン[penflufen])、
【0034】
次式(XXII)
【化23】

で示されるN−(3',4'−ジクロロ−5−フルオロビフェニル−2−イル)−3−(ジフルオロメチル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキサミド(一般名:ビキサフェン[bixafen])、
【0035】
次式(XXIII)
【化24】

で示されるN−[2−[1,1'−ビシクロプロピル]−2−イルフェニル]−3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド(一般名:セダキサン[sedaxane])、
【0036】
次式(XXIV)
【化25】

で示される3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−N−[1,2,3,4−テトラヒドロ−9−(1−メチルエチル)−1,4−メタノナフタレン−5−イル]−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド(一般名:イソピラザム[isopyrazam])、
【0037】
N−{2−(1,3−ジメチルブチル)フェニル}−1,3−ジメチルピラゾール−4−カルボン酸アミド、N−{2−(1,3−ジメチルブチル)フェニル}−2,4−ジメチルチアゾール−5−カルボン酸アミド、N−{2−(1,3−ジメチルブチル)フェニル}−2,5−ジメチルフラン−4−カルボン酸アミド、N−(2−プロピルフェニル)−2−クロロニコチン酸アミド、N−(2−イソプロピルフェニル)−4−トリフルオロメチル−2−メチルチアゾール−5−カルボン酸アミド、N−(2−sec−ブチルフェニル)−1,3−ジメチルピラゾール−4−カルボン酸アミドが挙げられる。
【0038】
これらの酸アニリド系化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
これらの酸アニリド系化合物の好適な使用濃度は、揮発性有機溶媒に溶解した木材と接触する薬剤溶液における濃度として0.0001%(w/w)〜1%(w/w)、より好適には0.001%(w/w)〜0.1%(w/w)である。
【0040】
前記のエポキシコナゾール及び酸アニリド系化合物は、揮発性有機溶媒への適度な溶解性を有し、木材内部へ揮発性有機溶媒と共に良好に浸透する性能を有し、揮発性有機溶媒を加熱によって回収する際の熱に対しても安定であり、しかも、揮発性有機溶媒を除去する際に溶媒と共に木材表面に滲出しないという優れた性能を有しているため、本発明の目的に好適な化合物である。
【0041】
また、本発明においては、殺虫剤を揮発性有機溶媒に溶解してエポキシコナゾールと共に使用することにより、防腐性能のみならず、木材食害虫に対する防虫性能を付与することが可能となる。このような目的で使用される殺虫剤の好適な例として、以下のものが挙げられる。
【0042】
アジノホス−エチル、アジノホス−メチル、アセファート、1−(4−クロロフェニル)−4−(O−エチル,S−プロピル)ホスホリルオキシピラゾル(TIA−230)、エトプロホス、エトリムホス、キナルホス、クロルピリホス、クロルピリホス−メチル、テトラクロルピリホス、クマホス、テルブホス、デトメン−S−メチル、ジアジノン、ジクロルボス、ジメトエート、スルプロホス、チオメトン、トリアゾホス、トリクロルホン、パラチオン、パラチオン−メチル、ピラクロホス、ピリミホス−エチル、ピリミホス−メチル、ピリダフェンチオン、フェナミホス、フェニトロチオン、フェンスルホチオン、フェンチオン、プロペタンホス、プロフェノホス、プロチオホス、ヘプテノホス、ホキシム、ホサロン、ホスチアゼート、ホスファミドン、ホノホス、ホラート、マラチオン、メチダチオン、メチルパラチオン、モノクロトホス、モノクロトホス等の有機リン系化合物;
【0043】
アルジカルブ、ベニオカルブ、2−(1−メチルプロピル)−フェニル−N−メチルカルバメート(BPMC)、2−(1−メチルプロピル)フェニルメチルカルバメート、ブトカルボキシム、ブトキシカルボキシム、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、イソプロカルブ、メソミル、オキサミル、ピリミカルブ、プロメカルブ、プロポクスル、トリアザマート、チオジカルブ、チオフロクス、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ等のカルバメート系化合物;
【0044】
トルフェンピラド、ピリダベン、テブフェンピラド、フェンピロキシマート等のピラゾール系化合物;
ハロフェノジド、テブフェノジド、クロマフェノジド、メトキシフェノジド等のヒドラジン系化合物;
クロルジメホルム、アミトラズ等のアミジン系化合物;
【0045】
N−シアノ−N'−メチル−N'−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)アセトアミジン等のN−シアノアミジン系化合物;
ジアフェンチウロン等のチオ尿素系化合物;
ベンスルタップ等のネライストキシン系化合物;
【0046】
エンドスルファン、ベンゼンヘキサクロリド、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン(DDT)、ディルドリン、γ−ベンゼンヘキサクロライド(BHC)等の有機塩素系化合物;
アバメクチン、エマメクチンベンゾアート、イベルメクチン、ミルベマイシン、スピノサド、アザジラクチン等のマクロリド系化合物;
ブプロフェジン等のチアジアジン系化合物;
【0047】
エトキサゾール等のオキサゾリン化合物;
カプリン酸、ノナン酸、カプリル酸、オレイン酸、デカン酸、2−エチルヘキサン酸等の炭素数6〜18の脂肪酸及びこれらの脂肪酸のエステル化誘導体等の脂肪酸系化合物;
オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ヘキサデカノール等の高級アルコール系化合物;
【0048】
アクリナトリン、アレトリン、アルファメトリン、イミプロトリン、エスビオスリン、エスフェンバレラート、エムペントリン、サイパーメスロン、ベータ−サイパーメスロン、α−シアノ−3−フェニル−2−メチルベンジル−2,2−ジメチル−2−(2−クロロ−2−トリフルオロメチルビニル)シクロプロパン−1−プロパンカルボキシレート、シクロプロトリン、シフルトリン、シフェノトリン、シハロトリン、λ−シハロトリン、γ−シハロトリン、シペルメトリン、ジメフルトリン、デカメトリン、テトラフルメトリン、テトラメトリン、テラレスリン、テフルトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、バイオアレスリン、ビオレスメトリン、ビフェントリン、ピレトリン、フェノトリン、フェンプロパトリン、フェンフルトリン、フェンバレレート、フタルスリン、ブラトリン、フラメトリン、プラレトリン、プロフルスリン、ビオレスメトリン、フルシトリネート、フルムトリン、フルバリネート、プロフルトリン、ペルメトリン、5−ベンジル−3−フリルメチル−(E)−(1R,3S)−2,2−ジメチル−3−(2−オキソチオラン−3−イリデンメチル)シクロプロパンカルボキシラート、メソスリン、メトフルトリン、レスメトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のピレスロイド系化合物及びこれらの化合物の異性体であるピレスロイド類;
【0049】
イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、ニテンピラム、チアクロプリド、フロニカミド、ジオフェノラン等のネオニコチノイド系化合物;
【0050】
2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,6,−ジメチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−n−アミルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、チモール(5−メチル−2−イソプロピルフェノール)、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、2−ベンジルフェノール等の非塩素化フェノール系化合物;
【0051】
4−クロロ−3−メチルフェノール(PCMC、p−クロロ−m−クレゾール)、4−クロロ−3−エチルフェノール、2−n−アミル−4−クロロフェノール、2−n−ヘキシル−4−クロロフェノール、2−シクロヘキシル−4−クロロフェノール、4−クロロ−3,5−キシレノール(PCMX、p−クロロ−n−キシレノール)、2,4−ジクロロ−3,5−キシレノール(DCMX、ジクロロ−p−キシレノール)、4−クロロ−2−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、ベンジル−4−クロロ−m−クレゾール、4−クロロベンジルジクロロ−m−クレゾール等の非塩素化フェノール系化合物;
【0052】
インドキサカルブ、メチル7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2−[[(メトキシカルボニル)[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]カルボニル]インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)カルボキシレート)等のオキサジアジン系化合物;
【0053】
ナフテン酸銅、オレイン酸銅、ステアリン酸銅、オクタン酸銅、安息香酸銅、クエン酸銅、乳酸銅、酒石酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、フマル酸銅、銅アミン錯体、銅アンモニア錯体、銅アミン・銅アンモニア複合錯体等の第一銅化合物または第二銅化合物;
ナフテン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酒石酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の亜鉛化合物;
【0054】
シロマジン等のトリアジン類;
フィプロニル、バニリプロール、エチプロール、アセトプロール等のフェニルピラゾール系化合物;
クロルフェナピル等のピロール系化合物;
ヒドラメチルノン、アミドフルメト等のフッ素含有化合物;
【0055】
昆虫ホルモン及びその誘導体;
ジフルベンズロン、ノバルロン、ノビフルムロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、ビストリフルロン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、クロルフルアズロン、ヘキサフルムロン、スルファルアミド、ピリプロキシフェン、メトプレン、ハイドロプレン、フェノキシカルブ等のIGR(昆虫成長制御物質)または幼若ホルモン様物質;
【0056】
アニスアルデヒド、アザジラクチン、アネトール、アピオール、アミルシンナミックアルデヒド、アンゲリカ酸イソアミル、アンスラニル酸メチル、イソオイゲノール、インドール、エストラゴール、エチルバニリン、エレメン、エレモール、オイゲノール、オイデスモール、オクチルアルデヒド、オシメン、カリオレフィン、カルバクロール、カルボン、カンフェン、クミンアルデヒド、ゲラニオール、ゲラニル酸、サビネン、サフトール、サンタクロール、シオネール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオール、ジペンテン、シメン、ジャスモン、シンナミックアルデヒド、シンナミルアルコール、セドレン、セドロール、チモール、ツエン、ツヤプリシン、ツヨプセン、デシルアルデヒド、テルピニルエステル、テルピネオール、テルピネン、テルピネン−4−オール、トロポロイド、ナフタリン、ニーム、ヌートカトン、ネペタリック酸、ネロリドール、ノニルアルコール、ノニルアルデヒド、ハーブ油、バニリン、パラジクロロベンゼン、ビサボレン、ビサボロール、ビドロール、ピネン、ピノカルベオール、ピノカルボン、ヒノキチオール、ヒノキチン、ヒバ油、ピペリトン、ヒマカレン、ファランドレン、ファルネソール、ファンキルアルコール、フェニルエチルアルコール、α,β−フェランドレン、フルフラール、フルフリルアルコール、プレゴン、ペリラアルデヒド、ベルガプトール、ベルベノン、ベンツアルデヒド、2−ボルナノン(樟脳)、ボルネオール、ミルセン、ミルテノール、メチルアンスラニレート、メチルイソオイゲノール、メチルオイゲノール、メチルヘプテノン、メントール、メントン、ユーカリプトール、ユーカリ油、リナロール、リモネン、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、酢酸ゲラニオール、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、茶抽出液、竹抽出液、インドセンダン抽出液等の植物抽出物及びこれらの化合物の誘導体または異性体である天然系化合物;
【0057】
ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジ−n−プロピルイソシンコメロネート、p−ジクロロベンゼン、ジ−n−ブチルサクシネート、カラン−3,4−ジオール、1−メチルプロピル2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシラート、p−メンタン−3,8−ジオール、3−(N−ブチルアセトアルデヒド)プロピオン酸エチル、ピカリジン等の揮発性化合物。
【0058】
これらの好適に使用される殺虫剤の内、特に好適な例として、カプリン酸、ノナン酸、カプリル酸、オレイン酸、2−エチルヘキサン酸からなる群から選ばれる炭素数6〜18の脂肪酸及びこれらの脂肪酸のエステル化誘導体等の脂肪酸系化合物;オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノールからなる群から選ばれる高級アルコール系化合物;アクリナトリン、アレトリン、イミプロトリン、サイパーメスロン、ベータ−サイパーメスロン、シフルトリン、シフェノトリン、シハロトリン、λ−シハロトリン、γ−シハロトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、ピレトリン、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フタルスリン、ペルメトリン、レスメトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェンからなる群から選ばれるピレスロイド系化合物及びこれらの化合物の異性体であるピレスロイド類;イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、ニテンピラム、チアクロプリド、フロニカミド、ジオフェノランからなる群から選ばれるネオニコチノイド系化合物;ナフテン酸銅、オレイン酸銅、ステアリン酸銅、オクタン酸銅、安息香酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、フマル酸銅、銅アミン錯体、銅アンモニア錯体、銅アミン・銅アンモニア複合錯体、からなる群から選ばれる第二銅化合物;ナフテン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛からなる群から選ばれる亜鉛化合物;フィプロニル、バニリプロール、エチプロールからなる群から選ばれるフェニルピラゾール系化合物;クロルフェナピルであるピロール系化合物;ヒドラメチルノンであるフッ素含有化合物;アザジラクチン、アネトール、エストラゴール、カルボン、、ゲラニオール、シトラール、シトロネロール、テルピネオール、テルピネン−4−オール、ニーム、ネロリドール、ヒノキチオール、ヒバ油、ファルネソール、2−ボルナノン(樟脳)、ボルネオール、メントール、リナロール、リモネン、茶抽出液、竹抽出液、インドセンダン抽出液からなる群から選ばれる、植物抽出物及びこれらの化合物の誘導体または異性体である天然系化合物が挙げられる。
【0059】
また、式
【化26】

[式中、R1、R2、R3、及びR4は炭素窒素結合によって連結されている炭素原子数20までの有機置換基であり、Xn-は無機系または有機系の価数nのアニオンであり、nは1、2、または3である。]で示される第四級アンモニウム化合物も、本発明の目的で好適に使用可能な殺虫剤であり、具体的には、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、塩化ラウリルトチメチルアンモニウム、塩化セチルトチメチルアンモニウム、塩化オクタデシルピコリニウム、塩化オクチルジデシルピリジニウムアンモニウム、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、臭化ラウリルイソキノリニウム、N,N−ジデシル−N−メチル−ポリオキシエチル−アンモニウムプロピオネートが挙げられ、特に好適な具体例としては、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、N,N−ジデシル−N−メチル−ポリオキシエチル−アンモニウムプロピオネートが挙げられる。
【0060】
これらの殺虫剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの殺虫剤の好適な使用濃度は、殺虫剤の有する生理活性の強度に応じて適宜、調整することが望ましいが、揮発性有機溶媒に溶解した木材と接触する薬剤溶液における濃度として0.00001%(w/w)〜5%(w/w)、より好適には0.0001%(w/w)〜0.5%(w/w)である。
【0061】
本発明の木材保存処理方法は、特公平1−36401号公報、特許第2930553号公報、特許第4149422号公報等に記載されている既知の方法によって実施することができる。すなわち、
1.木材を開閉可能な密閉型の含浸タンク内に配置し、
2.含浸タンク内の空気を真空ポンプで排出して、含浸タンク内を減圧し、
3.保存用薬剤を揮発性有機溶媒に溶解して調製した薬剤溶液を、含浸タンク内の陰圧を利用して、含浸タンクの外部の薬剤溶液保持容器から含浸タンクの内部に導入し、
4.更に薬剤溶液を、加圧用ポンプによって含浸タンクの外部から内部に送液することで含浸タンク内の木材を加圧して、木材中に薬剤溶液を注入し、
5.必要量の薬剤溶液が木材内部に注入された時点で加圧を中止し、含浸タンク内の薬剤溶液を含浸タンクの外部の薬剤溶液保持容器に回収し、
6.注入された木材中の過剰な揮発性有機溶媒を除去するために木材を加熱する
方法で実施される。
減圧の大きさ、減圧時間、加圧の大きさ、加圧時間等の条件は、従来実施されている既知の条件で行うことができる。
【0062】
木材に薬剤を注入した後、含浸タンク内の木材を加熱し、木材中の過剰な揮発性有機溶媒を蒸気化して木材から除去することにより、経済性に優れ、かつ環境に対する負荷が小さい方法で保存処理木材が得られる。従って、注入後の含浸タンク内での木材の加熱は、必須の工程である。このような加熱は、高周波を用いる加熱法、水蒸気を熱源とする加熱法、電熱線を熱源とする加熱法、またはこれらの加熱法の組み合わせによって実施可能であるが、溶媒除去時間の短縮、設備のコンパクト化の観点から、高周波を用いる加熱法が望ましい。しかしながら、高周波を用いる加熱法では、木材内部で熱が発生するため、温度のコントロールが難しく、木材内部で部分的に90℃を越える高温部を生じることがある。従って、こうした木材処理方法で使用した防腐成分の熱安定性が不十分な場合、局所的な防腐性能の低下を招き、得られる処理木材の品質が低下することがある。
本発明において使用するエポキシコナゾール、及びより高い防腐性能を得るためにエポキシコナゾールと組み合わせて使用される酸アニリド系化合物は、十分な熱安定性を有し、こうした品質低下を生じないため、高周波を用いる加熱法が適用可能である。なお、殺虫成分については、木材の一部分で殺虫成分が分解あるいは揮散しても、処理木材全体での殺虫成分量がある程度の量で維持されていれば、重大な防虫性能の低下は生じないため、使用可能な殺虫性化合物の制限は、防腐性化合物での制限よりも緩やかである。
【0063】
また、揮発性有機溶媒を用いる処理方法では、揮発性有機溶媒を蒸気化して木材から除去する際に、溶媒が木材内部から木材表層に移動し、この移動に伴って注入されていた防腐成分も木材表層に移動するため、結果的に木材内部での防腐成分量が低下するという問題がある。この問題を回避するためには、揮発性有機溶媒を用いる処理方法に適した防腐成分を十分に検討して選択する必要がある。本発明において使用するエポキシコナゾール、及びより高い防腐性能を得るためにエポキシコナゾールと組み合わせて使用される酸アニリド系化合物は、木材内奥の注入部分でも防腐成分量が維持されるため、揮発性有機溶媒を用いる処理方法に適した防腐成分である。従って、本発明の木材保存処理方法で得られる処理木材は、処理木材の表面に切削、穴あけ、溝加工等の加工を施した場合でも、防腐成分の少ない部分が露出することがないという利点も有する。
【0064】
本発明の木材処理方法で使用される揮発性有機溶媒の好適な例として、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等のハイドロクロロフルオロカーボン;1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタンや、メトキシノナフルオロブタン等のハイドロフルオロエーテル;ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン等のハロゲン化炭化水素類;n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−へブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2−メチルヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキセン、α−ピネン、ジペンテン、デカリン、テトラリン、アミルナフタレン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−へキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−へプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−へキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、α−テルピネオール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、ノニルアルコール、テトラデシルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−へプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシド、ホロン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、2,4−ペンタンジオン、2,5−へキサンジオン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、メチルアニソール、ジオキサン、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メトキシブチル、酢酸sec−へキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等のエステル類が挙げられる。これらの揮発性有機溶媒の中でも、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−へブタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、またはこれらの混合溶媒がより好適であり、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、またはこれらの混合溶媒が最も好適である。
【0065】
また、揮発性有機溶媒中での防腐成分の安定性を高めるために、更に、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン等のアミン類、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、ピスフェノールA、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール類、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類から選ばれる有機溶媒を、揮発性有機溶媒全量に対して0.001〜10%(w/w)の濃度で薬剤溶液に配合して使用することも有用である。
【0066】
なお、加熱によって含浸タンク内に発生した揮発性有機溶媒の蒸気は、含浸タンクの外に真空ポンプの駆動によって排出し、コンデンサー装置による冷却によって蒸気を液化することにより回収し、木材保存処理用の溶媒として再利用することが望ましい。
【0067】
本発明の木材保存処理方法によって、木材腐朽菌に対する防腐効果を処理木材に付与することができる。
本発明の方法により処理された保存処理木材が効果を示す木材腐朽菌の例としては、コニオフォラ・プテアナ(イドタケ)(Coniophora puteana)、トラメテス・ベルシコラー(カワラタケ)(Trametes versicolor)、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)、ポスティア・バポラリア(Poria vaporaria)、ポリア・バイランティー(Poria vaillantii)、グロエオフィリウム・セピアリウム(Gloeophylium sepiarium)、グロエオフィリウム・アドラタム(Gloeophylium adoratum)、グロエオフィリウム・アビエティナム(Gloeophylium abietinum)、グロエオフィリウム・トラベウム(Gloeophylium trabeum)、グロエオフィリウム・プロタクタム(Gloeophylium protactum)、レンティナス・レピドウス(Lentinus lepideus)、レンティナス・エドデス(Lentinus edodes)、レンティナス・シアチフォルメス(Lentinus cyathiformes)、レンティナス・スクアロロサス(Lentinus squarrolosus)、パキシラス・パヌオイデス(Paxillus panuoides)、ホミトプシス・パルストリス(Fomitopsis palustris)、プレウロタス・オストレアタス(Pleurotus ostreatus)、ドンキオポリア・エクスパンサ(Donkioporia expansa)、セルプウラ・ラクリマンス(ナミダタケ)(Serpula lacrymans)、セルプウラ・ヒマントイデス(Serpula himantoides)、グレノスポラ・グラフィー(Glenospora graphii)、ホミトプシス・リラシノギルバ(Fomitopsis lilacino-gilva)、ペレニポリア・テフロポラ(Perenniporia tephropora)、アントロディア・キサンタ(Antrodia xantha)、アントロディア・バイランティー(Antrodia vaillantii)を含む担子菌類、クラドスポリウム・ヘルバラム(Cladosporium herbarum)を含む不完全菌類、ケトミウム・グロブサム(Chaetomiumu globsum)、ケトミウム・アルバアレナラム(Chaetomium alba-arenulum)、ペトリエラ・セティフェラ(Petriella setifera)、トリチュラス・スピラリス(Trichurus spiralis)、フミコウラ・グリセラ(Humicola grisera)を含む子嚢菌類が挙げられる。
【0068】
また、本発明の木材保存処理方法によって、木材変色菌に対する保護効果を処理木材に付与することができる。このような木材変色菌の例としては、オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、スクレロフ・ピティオフィラ(Scleroph pithyophila)、スコプウラ・フィコミセス(Scopular phycomyces)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・バリアビル(Penicillium variabile)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リグノラム(Trichoderma rignorum)、ダクティレウム・フサリオイデス(Dactyleum fusarioides)を含む不完全菌類、カラトシステス・ミナー(Caratocystis minor)を含む子嚢菌類、ムコール・スピノサス(Mucor spinosus)を含む接合菌類が挙げられる。
【0069】
本発明の木材保存処理方法において、殺虫剤を揮発性有機溶媒に溶解してエポキシコナゾールと共に使用することにより、木材食害虫に対する防虫効果を処理木材に付与することができる。このような木材食害虫の例としては、シロアリ、キクイムシ及び材線虫(マツノザザイセンチュウ等)が挙げられる。
【0070】
シロアリとしては、シロアリ科(Termitidae)、オオシロアリ科(Termopsidae)、ゲンシロアリ科(Mastotermitidae)、シュウカクシロアリ科(Hodotermitidae)、レイビシロアリ科(Kalotermitidae)、ノコギリシロアリ科(Serritermitidae)、ミゾガシラシロアリ科(Rhinotermitidae)等を含む等翅目(Isoptera)に属する昆虫であり、具体的には、例えば、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、アメリカカンザイシロアリ(Incisitermes minor)、ダイコクシロアリ(Cryptotermes domesticus)、ニシインドカンザイシロアリ(Cryptotermes brevis)、タイワンシロアリ(Odontotermes formosanus)、コウシュンシロアリ(Neotermes koshunensis)、ナカジマシロアリ(Glyptotermes nakajimai)、カタンシロアリ(Glyptotermes fuscus)、コダマシロアリ(Glyptotermes kodamai)、クシモトシロアリ(Glyptotermes kushimensis)、サツマシロアリ(Glyptotermes satsumensis)、オオシロアリ(Hodotermopsis japonica)、コウシュウイエシロアリ(Coptotermes guangzhoensis)、カロテルメス・フラヴィコリス(Kalotermes flavicollis)、ミヤタケシロアリ(Reticulitermes miyatakei)、アマミシロアリ(Reticulitermes amamianus)、カンモンシロアリ(Reticulitermes kanmonensis)、キアシシロアリ(Reticulitermes flaviceps)、キイロマルガシラシロアリ(Globitermes sulphureus)、カンモンシロアリ(Reticulitermes sp.)、タカサゴシロアリ(Nasutitermes takasagoensis)、ニトベシロアリ(Pericapritermes nitobei)、ムシャシロアリ(Sinocapritermes mushae)、ハワイシロアリ(Incisitermes immigrans)、ネバダオオシロアリ(Zootermopsis nevadensis)、ムカシシロアリ(Mastotermes darwiniensis)、マクロテルメス・ギルブス(Macrotermes gilvus)、ミゾガシラシロアリ(Reticuliterumes flavipes)、レティキュリテルメス・ルシフグス(Reticulitermes lucifugus)、レティキュリテルメス・ヘスペルス(Reticulitermes hesperus)、レティキュリテルメス・ヴィルジニカス(Reticulitermes virginicus)、レティキュリテルメス・ティビアリス(Reticulitermes tibialis)、レティキュリテルメス・ハゲニ(Reticulitermes hageni)、レティキュリテルメス・サントネンシス(Reticulitermes santonensis)、レティキュリテルメス・チネンシス(Reticulitermes chinensis)、ヘテロテルメス・インディコラ(Heterotermes indicola)、レティキュリテルメス・グラセイ(Reticulitermes grassei)、ヘテロテルメス・オーレウス(Heterotermes aureus)等が挙げられる。前記シロアリは、階級(caste)を有し、職蟻、兵蟻、女王・王、ニンフ、及び有翅虫(羽アリ)に分けられるが、これら階級は限定されない。
【0071】
キクイムシとしては、ヒラタキクイムシ科(Lyctidae)、ナガシンクイムシ科(Bostrichidae)、シバンムシ科(Anobiidae)、カミキリムシ科(Cerambycidae)等を含む甲虫目(Coleoptera)に属する昆虫であり、具体的には、例えば、ヒラタキクイムシ(Lyctus brunneus)、アフリカヒラタキクイムシ(Lyctus africanus)、ナラヒラタキクイムシ(Lyctus linearis)、ケヤキヒラタキクイムシ(Lyctus sinensis Lesne)、リクツス・プラニコリス(Lyctus planicollis)、リクツス・プベセンス(Lyctus pubescens)、マツザイシバンムシ(Ernobius mollis)、チビタケナガシンクイ(Dinoderus minutus)、ケブカシバンムシ(Nicobium hirtum)、ホソナガシンクイムシ(Heterobostrychus brunneus)、ケブトヒラタキクイムシ(Minthea rugicollis)、ヒメカツオブシムシ(Attagenus japonicus)、ヒメマルカツオブシムシ(Anthrenus verbasci)、アノビウム・プンクタツム(Anobium punctatum)、アパテ・モナチュス(Apate monachus)、ボストリカス・カプシンス(Bostrychus capucins)、クロロホレス・ピロサス(Chlorophores pilosus)、デンドロビウム・パーチネックス(Dendrobium pertinex)、ヒロトルペス・バジュルス(Hylotrupes bajulus)、プリオビウム・カルピニ(Priobium carpini)、プチニヌル・ペクチコルニス(Ptilinus pecticornis)、シノキシロン種(Sinoxylon spec.)、トロゴキシロン・エクアーレ(Trogoxylon aequale)、トリプト・デンドロン種(Trypto dendron spec.)、キセストビウム・ルフォビロスム(Xestobium rufovillosum)、クセストビウム・ルホビロサム(Xestobium rufovillosum)、キシレボルス種(Xyleborus spec.)等が挙げられる。
【0072】
本発明の保存処理木材は、本発明の木材処理方法によって処理された植物繊維系の物品であり、木材、木片、木粉、合板、単板積層材、ファイバーボード、パーティクルボード、チップボード、集成材、モミ、藁、竹材等の保存処理物である。物品の形状は限定されず、角材、板、棒、丸棒、チップ、粉体等のいずれの形状のものについても本発明が適用できる。
【0073】
処理された上記の物品は、土台、大引、根太、床板、胴縁、間柱、床下地板、筋かい、垂木、屋根下地板、浴室軸組、床組材等の建造物の部材、外構部材、ログハウス、バルコニー、テラス、門塀、東屋、ぬれ縁、デッキ材、歩道用敷設材等の屋外建築物またはその部材、枕木、電柱、基礎杭、道路用防音壁、橋梁等の土木用材等に用いられる。
【実施例】
【0074】
以下に本発明を実施例、比較例、及び試験例により説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下の例において%とは特に記載しない限り質量%を表す。
【0075】
実施例1: エポキシコナゾールを1.5%、殺虫剤としてデルタメトリンを1.0%の濃度でジクロロメタンに溶解して濃縮薬剤溶液を調製した。この濃縮薬剤溶液をジクロロメタンを用いて400倍質量に希釈して薬剤溶液を調製した。
次に、下部に、溶液の送り込みのための配管と溶液排出用の配管とを有し、上部に、空気あるいは蒸気の排出、あるいは空気を導入するための配管を有し、これらの配管の全てに、それぞれ弁の代わりとなるバルブを有した構造の、加圧注入用の耐圧の含浸タンクを準備した。そして、木口面の大きさが縦3.0cm、横3.0cmで、長さが35.0cmのスギ辺材の杭9本(平均含水率18%)を、含浸タンク内に設置し、含浸タンクを密閉した後、下部の2本の配管のバルブを閉じ、上部の配管のバルブを開いてから、真空ポンプを用いて上部の配管から含浸タンク内の空気を排気して、含浸タンク内の圧力を6kPaまで減圧し、この減圧状態を30分間維持して、木材内部の空気を排出させた。
次に、上部の配管のバルブを閉じ、真空ポンプの作動を停止した。次いで、含浸タンク下部の溶液の送り込みのための配管のバルブを開け、含浸タンク内の陰圧を利用して、上記の薬剤溶液を含浸タンク内に導入した。更に、加圧ポンプを用いて、溶液の送り込みのための配管を通じて薬剤溶液を含浸タンク内に送り込み、含浸タンク内の圧力を1MPaで加圧し、この加圧状態を2時間維持して、木材内部に薬剤溶液を注入した。
次に、溶液の送り込みのための配管のバルブを閉じ、ポンプの作動を停止した。そして、溶液排出用の配管のバルブを開け、次に、上部の配管のバルブを開けることによって、含浸容器内の薬剤溶液を回収した。
次に、溶液排出用の配管のバルブを閉じ、真空ポンプを用いて上部の配管から含浸タンク内の空気を排気して、含浸タンク内の圧力を6kPaまで減圧し、この減圧状態を30分間維持して、木材内部に過剰に注入された薬剤溶液を木材外部に排出させた。排出された薬剤溶液は、上部の配管を通じて、再度、空気を含浸タンク内に送り込んで内部を大気圧に戻してから、溶液排出用の配管のバルブを開けることにより回収した。
工業的な規模では、通常、含浸タンク内の処理木材内部のジクロロメタンを、処理木材の加熱によって除去し、発生したジクロロメタンの蒸気は、上部の配管から真空ポンプの駆動によって排出し、これをコンデンサーで冷却して回収し、回収されたジクロロメタンは、薬剤溶液の調製に利用するが、実験室規模での本実験では、含浸タンクの蓋を開けて処理木材を取り出した。取り出した処理木材に対して、ドラフト内に設置した電子レンジを用いて、注入処理前の質量の105%以下の質量になるまで高周波加熱を行い、処理木材内部のジクロロメタンを除去して最終的な処理木材(A)を得た。
【0076】
実施例2:
エポキシコナゾールを1.5%、殺虫剤としてトラロメトリンを2.0%の濃度でジクロロメタンに溶解して濃縮薬剤溶液を調製した。この濃縮薬剤溶液をジクロロメタンを用いて400倍質量に希釈して薬剤溶液を調製し、この薬剤溶液を用いて、実施例1に記載と同様の操作によって処理木材(B)を得た。
【0077】
実施例3:
エポキシコナゾールを1.5%、酸アニリド系化合物として3'−イソプロピル−2−トリフルオロメチルベンズアニリドを1.5%、殺虫剤としてトラロメトリンを2.0%の濃度でジクロロメタンに溶解して濃縮薬剤溶液を調製した。この濃縮薬剤溶液をジクロロメタンを用いて400倍質量に希釈して薬剤溶液を調製し、この薬剤溶液を用いて、実施例1に記載と同様の操作によって処理木材(C)を得た。
【0078】
実施例4:
エポキシコナゾールを1.5%、酸アニリド系化合物として3'−イソプロピル−2−トリフルオロメチルベンズアニリドを1.5%、殺虫剤としてビフェントリンを1.5%の濃度でジクロロメタンに溶解して濃縮薬剤溶液を調製した。この濃縮薬剤溶液をジクロロメタンを用いて400倍質量に希釈して薬剤溶液を調製し、この薬剤溶液を用いて、実施例1に記載と同様の操作によって処理木材(D)を得た。
【0079】
実施例5:
エポキシコナゾールを1.5%、酸アニリド系化合物として3'−イソプロピル−2−トリフルオロメチル−5−メチルフラン−3−カルボン酸アミドを0.5%、殺虫剤としてフィプロニルを1.0%の濃度でジクロロメタンに溶解して濃縮薬剤溶液を調製した。この濃縮薬剤溶液をジクロロメタンを用いて400倍質量に希釈して薬剤溶液を調製し、この薬剤溶液を用いて、実施例1に記載と同様の操作によって処理木材(E)を得た。
【0080】
比較例1:
テブコナゾールを1.5%、殺虫剤としてデルタメトリンを1.0%の濃度でジクロロメタンに溶解して濃縮薬剤溶液を調製した。この濃縮薬剤溶液をジクロロメタンを用いて400倍質量に希釈して薬剤溶液を調製し、この薬剤溶液を用いて、実施例1に記載と同様の操作によって比較処理木材(F)を得た。
【0081】
比較例2:
テブコナゾールを6.0%、殺虫剤としてトラロメトリンを2.0%の濃度でジクロロメタンに溶解して濃縮薬剤溶液を調製した。この濃縮薬剤溶液をジクロロメタンを用いて400倍質量に希釈して薬剤溶液を調製し、この薬剤溶液を用いて、実施例1に記載と同様の操作によって比較処理木材(G)を得た。
【0082】
比較例3:
シプロコナゾールを3.0%、殺虫剤としてトラロメトリンを2.0%の濃度でジクロロメタンに溶解して濃縮薬剤溶液を調製した。この濃縮薬剤溶液をジクロロメタンを用いて400倍質量に希釈して薬剤溶液を調製し、この薬剤溶液を用いて、実施例1に記載と同様の操作によって比較処理木材(H)を得た。
【0083】
試験例1:
茨城県小美玉市内のヤマトシロアリが生息する山林に、実施例1〜5及び比較例1〜3の処理木材、各5本を、地下15cmの深さまで垂直に打ち込み、2年間放置することにより、処理木材に付与された保存処理効果を確認した。なお、保存処理効果は、処理木材を地面から抜き取り、表面の土壌を取り除いて地中部の状態を目視により下記の基準で評価することにより判定した。
0:健全(処理前と変化なし)、
10:表面の一部に、浅い腐朽あるいは浅い食害が認められる、
30:表面の一部に、内部までの腐朽あるいは内部までの食害が認められる、
50:内部の広い範囲に、腐朽あるいは食害が認められる、
100:腐朽あるいは食害によって形が崩れる。
各処理条件の処理木材5本についての判定結果の平均値を表1に示す。
【0084】
表1の通り、本発明の処理木材(A〜E)は良好な防腐効果を示した。また、酸アニリド系化合物の併用によって、更に防腐効果が増強され(C〜E)、殺虫剤と組み合わせて処理することにより良好な防蟻効果が得られた(A〜E)。
【0085】
【表1】

【0086】
試験例2:
実施例1〜5及び比較例1〜3の処理木材、各4本を用いて、各処理木材の長さ方向の中央部分から、幅5.0cmで材を切り出して、木口面の大きさが縦3.0cm、横3.0cmで、長さが5.0cmの試験材を得た。この試験材から、注入時の表層10mmに当たる部分を切り出して、表層部分と、切り出し後の残り部分である内奥部分を得た。
次に、表層部分と内奥部分をそれぞれ別に破砕して木粉を調製し、各木粉をソックスレー抽出器と還流冷却管を用いて、アセトンによる5時間の加熱還流連続抽出を行った。その後、アセトンを回収し、減圧下で留去した残渣をメタノールで再溶解してから、高速液体クロマトグラフィーを用いて防腐成分を定量分析することにより試験材での吸収量、すなわち、木材単位体積当たりに含まれる有効成分質量を算出し、表層部分と内奥部分のそれぞれの吸収量の比率を求め、結果を表2にまとめた。
【0087】
表2の通り、本発明の防腐成分であるエポキシコナゾール及び酸アニリド系化合物は、吸収量の比率が1.0に近い値となっており、表層部分と内奥部分が同様の均一さで処理されており、揮発性有機溶媒を用いる注入処理法に適した防腐成分であることが示された。
【0088】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)木材を密閉型の含浸タンク内に配置する工程、
(B)前記含浸タンクを減圧する工程、
(C)保存用薬剤を揮発性有機溶媒に溶解して調製される薬剤溶液を前記含浸タンク内に導入する工程、
(D)前記含浸タンクを加圧することよって木材に前記薬剤溶液を注入する工程、及び
(E)前記木材中の過剰な揮発性有機溶媒を加熱によって除去する工程によって、木材に保存用薬剤を含浸させる木材の保存処理方法であって、(C)工程の木材保存用薬剤としてエポキシコナゾールを有効成分として含有する薬剤を使用することを特徴とする木材の保存処理方法。
【請求項2】
前記(C)工程で使用する木材保存用薬剤が、更に、次式(I)
【化1】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子が任意の位置に1〜2個置換してもよいフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のハロアルコキシ基を表わし、またはR1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって芳香族複素環を形成してもよく、R5はフェニル、ピラゾリル、ニコチニル、フラニル、チアゾリル、オキサチイニル、イソチアゾリル、ピラニル、オキサゾリル、ナフチル、ピリミジニル、ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ピロリル、ベンゾオキサゾリル、ピラジニル、チエニル、及びイミダゾリル基からなる単環式または二環式の基から選択され、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、ヒドロキシ基またはカルボキシル基で置換されてもよく、R1、R2、R3、R4が表わす炭素原子数3〜6のアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、R5の置換基が表わす炭素原子数3〜6のアルキル基及びハロアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。]で示される1種または2種以上の酸アニリド系化合物を含有する請求項1に記載の木材の保存処理方法。
【請求項3】
前記(C)工程に使用する保存用薬剤が、更に、殺虫剤を含有する請求項1または2に記載の木材の保存処理方法。
【請求項4】
前記(E)工程で使用する木材保存用薬剤が、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、及び1,2−ジクロロエタンから選択される1種または2種以上である請求項1に記載の木材の保存処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の処理方法によって製造される保存処理木材。

【公開番号】特開2011−121928(P2011−121928A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282975(P2009−282975)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000127879)株式会社エス・ディー・エス バイオテック (23)
【Fターム(参考)】