説明

木材の処理方法及び該処理方法で処理された木材

【解決手段】皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の硬化物と(F)ホウ素系化合物と(G)2価又は3価の金属塩とを表面に含むことを特徴とする木材。
【効果】本発明によれば、皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物とホウ素系化合物と2価又は3価の金属塩により木材を処理することにより、木材の外観や性能を変えることなく、更に良好な撥水性、吸水防止性、寸法安定性、防蟻性、抗菌性の木材への付加が可能となる。その上、ホウ素系化合物の水による溶脱性をも大幅に改良可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋してゴム質の皮膜を形成するシリコーンエマルジョンに、ホウ素系化合物及び2価又は3価の金属塩を木材処理に使用することを特徴とする処理方法及び該処理方法で得られた木材に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素系化合物は、木材の抗菌、抗蟻剤として安全で長期的安定剤として広く世界中に使われている。しかし、水溶性が高いため、屋外で風雨に曝されると容易に木材からの溶脱が起こり、屋外用途での長期の使用は困難であった。
【0003】
上記問題を解決するため、特開2007−51236号公報(特許文献1)では、シリコーンエマルジョンにホウ素系化合物を添加混合して、木材に表面処理、浸漬処理又は減圧もしくは加圧注入処理をする方法が提案されている。
【0004】
また、特開平10−323807号公報(特許文献2)では、ホウ酸とコロイダルシリカ、キトサンに加えて酢酸マグネシウムと水酸化マグネシウムを木材に処理してホウ素を固定化する方法が提案されている。
【0005】
しかし、いずれの方法でもある程度の効果は得られるものの、満足できるレベルではなく、ホウ素系化合物の溶脱に加え、木材の外観や性能を変えることなく、屋外で使用可能な処理剤はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−51236号公報
【特許文献2】特開平10−323807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ホウ素系化合物の水による溶脱性を大幅に改良でき、木材の外観や性能を変えることなく、屋外で使用可能な木材の処理方法及び該処理方法で処理された木材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達するために鋭意検討を行った結果、皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕と、(F)ホウ素系化合物及び(G)2価又は3価の金属塩を木材へ処理することによって、木材の外観や性能を変えることなく、更に、良好な撥水性、吸水防止性、寸法安定性、防蟻性、抗菌性の付与が可能で、ホウ素系化合物の水による溶脱性をも改良可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記の木材の処理方法及び該処理方法で処理された木材を提供する。
請求項1:
皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の硬化物と(F)ホウ素系化合物と(G)2価又は3価の金属塩とを表面に含むことを特徴とする木材。
請求項2:
皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の硬化物100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物を10〜1,500質量部、(G)2価又は3価の金属塩を10〜300質量部の固形分割合で含むことを特徴とする請求項1記載の木材。
請求項3:
シリコーンエマルジョン組成物〔I〕が、
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の木材。
請求項4:
(G)2価又は3価の金属塩が、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸カルシウム、塩化カルシウムのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の木材。
請求項5:
(F)ホウ素系化合物が、八ホウ酸二ナトリウム四水和物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の木材。
請求項6:
ホウ酸換算におけるホウ酸塩の残存量が、JIS K1571の溶脱試験後で5kg/m3以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の木材。
請求項7:
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の水を除いた有効成分100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物を10〜1,500質量部、(G)2価又は3価の金属塩10〜300質量部の固形分割合で使用し、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕と(F)ホウ素系化合物を含む分散液を木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、次いで(G)2価又は3価の金属塩塗布又は浸漬させることを特徴とする木材の処理方法。
請求項8:
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の水を除いた有効成分100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物を10〜1,500質量部、(G)2価又は3価の金属塩を10〜300質量部の固形分割合で使用し、(F)ホウ素系化合物を木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、次いでシリコーンエマルジョン組成物〔I〕と(G)2価又は3価の金属塩を含む分散液を塗布又は浸漬させることを特徴とする木材の処理方法。
請求項9:
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の水を除いた有効成分100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物を10〜1,500質量部、(G)2価又は3価の金属塩を10〜300質量部の固形分割合で使用し、(F)ホウ素系化合物を木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、次いで(G)2価又は3価の金属塩を塗布又は浸漬し、更にシリコーンエマルジョン組成物〔I〕を塗布又は浸漬させることを特徴とする木材の処理方法。
請求項10:
(G)2価又は3価の金属塩が、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸カルシウム、塩化カルシウムのいずれかであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項記載の処理方法。
請求項11:
(F)ホウ素系化合物が、八ホウ酸二ナトリウム四水和物であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項記載の処理方法。
請求項12:
請求項7〜11のいずれか1項記載の処理方法で処理された木材。
請求項13:
ホウ酸換算におけるホウ酸塩の残存量が、JIS K1571の溶脱試験後で5kg/m3以上である請求項12記載の木材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物とホウ素系化合物と2価又は3価の金属塩により木材を処理することにより、木材の外観や性能を変えることなく、更に良好な撥水性、吸水防止性、寸法安定性、防蟻性、抗菌性の木材への付加が可能となる。その上、ホウ素系化合物の水による溶脱性をも大幅に改良可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、シロアリは勿論、カンザイシロアリによる被害を防止できる効果を与える。即ち、日本古来のシロアリは床下等の湿った環境でしか生息できないが、アメリカカンザイシロアリに代表される外来種は、木材の水分のみで生息できるため、最近では床下以外からの木材被害も急増している。これに対し、本発明により、ホウ素系化合物の水による溶脱性が改良され、特に木材中のホウ酸当量(BAE)として知られるホウ酸換算のホウ酸塩の残存量がJIS K1571の溶脱試験後で5kg/m3以上であれば、床下のみならず、雨水に晒される屋外に使用した場合、カンザイシロアリなどの外来種による木材被害を防止できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の処理方法は、皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕とホウ素系化合物と2価又は3価の金属塩により処理することを特徴とする木材の処理方法である。皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕として特に、
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたシリコーンエマルジョン組成物であることが好ましい。
【0013】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するものであり、下記一般式で示されるものが好ましい。
【化1】


[ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基、Xは同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基又はヒドロキシル基、YはX又は−[O−Si(X)2c−Xで示される同一又は異種の基で、X及びY中の少なくとも2個はヒドロキシル基である。aは0〜1,000の正数、bは100〜10,000の正数、cは1〜1,000の正数である。]
【0014】
ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、トリル、ナフチル基などが挙げられるが、好ましくはメチル基である。Xは同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基又はヒドロキシル基であり、具体的にはヒドロキシル基以外に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、トリル、ナフチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、テトラデシルオキシ基などが挙げられる。YはX又は−[O−Si(X)2c−Xで示される同一又は異種の基であり、aは1,000より大きくなると得られる皮膜の強度が不十分となるので、0〜1,000の正数、好ましくは0〜200の正数とされ、bは100未満では皮膜の柔軟性が乏しいものとなり、10,000より大きいとその引き裂き強度が低下するので、100〜10,000の正数、好ましくは1,000〜5,000の正数とされ、cは1〜1,000の正数とされる。また、架橋性の面から1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜4個のヒドロキシル基を有する必要がある。
【0015】
このようなオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記のものなどが挙げられる。
【化2】


(上記式中、a、b、cは上記と同じである。)
【0016】
このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法によって合成することができる。例えば、金属水酸化物のような触媒存在下にオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンとα,ω−ジヒドロキシシロキサンオリゴマー等を平衡化反応させることにより得られる。また、この(A)成分はエマルジョンの形態で使用されることが好ましいので、このものは公知の乳化重合法でエマルジョンとすればよく、従ってこれは予め環状シロキサンあるいはα,ω−ジヒドロキシシロキサンオリゴマー、α,ω−ジアルコキシシロキサンオリゴマー、アルコキシシラン等をアニオン系界面活性剤あるいはカチオン系界面活性剤を用いて水中に乳化分散させた後、必要に応じて酸、アルカリ性物質等の触媒を添加して重合反応を行うことにより容易に合成することができる。
【0017】
ここで、上記アニオン系界面活性剤あるいはカチオン系界面活性剤としては、特に制限はないが、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルアミン塩酸塩、アルキルアミン酢酸塩などが例示される。この使用量としては、シロキサン量の0.1〜20質量%程度である。
【0018】
また、酸、アルカリ性物質等の触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、ギ酸、乳酸、トリフロロ酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアなどが例示され、これらは触媒量とすることができる。なお、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルリン酸などの酸性物質を使用する場合には、触媒を用いる必要はない。
【0019】
(B)成分であるアミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物は、シリコーン皮膜と基材である木材との密着性を向上させるための成分であり、アミノ基含有アルコキシシランとジカルボン酸無水物とを反応させたものであることが好ましい。
【0020】
ここで、原料であるアミノ基含有アルコキシシランは、下記一般式
A(R)gSi(OR)3-g
[式中、Rは前記と同じ、Aは式−R1(NHR1hNHR2(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン基等のアルキレン基などの2価炭化水素基、R2はR又は水素原子、hは0〜6の整数である。)で表されるアミノ含有基、gは0、1又は2である。]
で表されるものを用いることができ、具体的には下記のものが挙げられる。
(C25O)3SiC36NH2
(C25O)2(CH3)SiC36NH2
(CH3O)3SiC36NH2
(CH3O)2(CH3)SiC36NH2
(CH3O)3SiC36NHC24NH2
(CH3O)2(CH3)SiC36NHC24NH2
【0021】
上記アミノ基含有オルガノキシシランと反応させるためのジカルボン酸無水物としては、例えば、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物等を挙げることができる。これらの中でもマレイン酸無水物が好ましい。
【0022】
アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応は、アミノ基/酸無水物(モル比)が0.5〜2、特に0.8〜1.5となるような上記両者の配合比により、必要に応じて親水性有機溶剤中で室温あるいは加温下に混合することで容易に実施することができる。このときの親水性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどが例示される。また、親水性有機溶剤の使用量としては、反応生成物量の0〜100質量%程度である。
【0023】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、0.5質量部より少ない場合には木材との密着性効果が弱くなり、20質量部より多い場合には皮膜が硬くて脆いものとなる。より好ましくは1〜10質量部である。
【0024】
なお、上述したように、親水性有機溶剤を用いてアミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応を行った場合、(B)成分は上記反応液をそのまま用いてもよいし、溶剤を除いてから用いてもよい。
【0025】
(C)成分であるエポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物は、シリコーン皮膜と基材との密着性を向上させるための成分であり、エポキシ基含有オルガノキシシランとして、具体的にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシランなどが挙げられる。
【0026】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜20質量部であり、20質量部より多い場合には皮膜が硬くて脆いものとなる。好ましくは0〜10質量部である。配合する場合は1質量部以上であることが好ましい。
【0027】
(D)成分であるコロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサンは、皮膜補強剤として添加するものであり、具体的にはコロイダルシリカ、トリメトキシメチルシランの加水分解縮合物であるポリメチルシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0028】
コロイダルシリカとしては、市販のものを使用することも可能で、その種類に制限はないが、ナトリウム、アンモニウム、アルミニウムなどで安定化したものでよく、具体的にはスノーテックス(日産化学工業社製)、ルドックス(デュポン社製)、シリカドール(日本化学工業社製)、アデライトAT(旭電化工業社製)、カタロイドS(触媒化成工業社製)などの市販品が挙げられる。
【0029】
ポリメチルシルセスキオキサンとしては、界面活性剤水溶液に縮合触媒として硫酸などの酸、又は水酸化カリウム等のアルカリ化合物を添加し、更にトリメトキシメチルシランを滴下、撹拌することにより得られたポリメチルシルセスキオキサンを含有した乳化物を用いることができる。この際、ポリシルセスキオキサンの架橋度を調整するためにアルコキシトリアルキルシラン、ジアルコキシジアルキルシラン、テトラアルコキシシランなどを添加することは差し支えない。また、ポリシルセスキオキサンの反応性を高めるためにビニルシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、メタクリルシランなどを添加することも差し支えない。
【0030】
また、上記(D)成分の平均粒子径は2〜200nm、特に5〜100nmが好適である。本発明において、平均粒子径は、BET法により測定した値である。
【0031】
なお、(D)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0〜50質量部であり、50質量部より多い場合にはシリコーン皮膜が硬くて脆いものとなる。好ましくは0〜30質量部であり、配合する場合は10質量部以上50質量部以下、特に10質量部以上30質量部以下とすることが好ましい。
【0032】
(E)成分である硬化触媒は、本発明の組成物の成分を縮合反応により、素早く架橋硬化させるために配合するものであり、具体的にはジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズビスオレイルマレート、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄等の有機酸金属塩、n−ヘキシルアミン、グアニジン等のアミン化合物などを挙げることができる。
【0033】
なお、これらの硬化触媒は、水溶性である場合を除き、予め界面活性剤を用いて水中に乳化分散したエマルジョンの形態にしておくことが望ましい。
【0034】
この(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜10質量部であり、10質量部を超えると不揮発分として皮膜中に残存する触媒成分が皮膜特性を阻害する。好ましい範囲は0〜5質量部であり、配合する場合は0.5質量部以上とすることが好ましい。
【0035】
本発明のシリコーンエマルジョン組成物〔I〕のコーティング皮膜の特性を更に向上させるために、本発明を逸脱しない範囲でシランカップリング剤やシリコーン樹脂、シリコーンオイル、シリコーン樹脂パウダー等を添加配合することは任意である。シランカップリング剤としては、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、シアノ基等を含有する各種のものが挙げられる。シリコーン樹脂としては、トリアルキルシロキシポリシリケートなどが挙げられ、シリコーンオイルとしては、α,ω−ジヒドロキシアルキルポリシロキサン、アルキルポリシロキサンなど、シリコーン樹脂パウダーとしては、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダーなどが挙げられる。
【0036】
なお、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕に、各種の増粘剤、顔料、染料、浸透剤、帯電防止剤、消泡剤、難燃剤、抗菌剤、撥水剤などを適宜配合することは任意である。
【0037】
シリコーンエマルジョン組成物〔I〕の調製(乳化分散)方法は、特に限定されないが、(A)成分撹拌下で、(B)、(C)、(D)、(E)成分を添加し、30分〜1時間撹拌を継続する。
得られたシリコーンエマルジョン組成物〔I〕中の有効成分量乃至固形分量は、35〜60質量%、特に40〜55質量%であることが好ましい。
【0038】
(F)ホウ素系化合物としては、ホウ酸、硼砂、八ホウ酸二ナトリウム四水和物(Na2813・4H2O)、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル等のホウ酸トリアルキルなどが挙げられるが、硼砂、八ホウ酸二ナトリウム四水和物などのホウ酸アルカリ金属塩が好ましく、八ホウ酸二ナトリウム四水和物が特に好ましい。
【0039】
(F)成分の処理量は固形分比で、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕の水を除いた有効成分100質量部に対して10〜1,500質量部が好ましく、更に好ましくは40〜1,300質量部である。好ましい範囲の場合、吸水性、耐候性、防腐性、防蟻性、乾燥性に特に優れる。
なお、(F)ホウ素系化合物は木材内部まで浸透するのに対して、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕は木材表面近くで膜を形成する。従って、木材の大きさによって適正比率は異なり、後述するJIS K1571に使用する木材サイズ(2cm×2cm×1cm)の場合は、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物は10〜300質量部程度となるが、例えば10cm×10cm×100cmのようなサイズの場合は、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物は1,200〜1,300質量部程度となり、大サイズになれば、(F)ホウ素系化合物の量に対するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の量が少量であっても前記性能が発揮できる。
【0040】
(G)2価又は3価の金属塩としては、水溶性であれば特に限定されないが、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム等が挙げられ、アルカリ土類金属塩や亜鉛化合物が好ましく、酢酸亜鉛が特に好ましい。2価又は3価の金属塩は単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0041】
(G)成分の処理量は固形分比で、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕の水を除いた有効成分100質量部に対して5〜300質量部が好ましく、更に好ましくは10〜100質量部である。好ましい範囲の場合、吸水性、耐候性、防腐性、防蟻性、乾燥性に特に優れる。
【0042】
本発明の木材の処理方法において、処理可能な木材については特に制限がなく、各種の木材類、例えば無垢材、合板、単板積層板、LVL、パーチクルボード材などを用いることができる。
【0043】
本発明の木材の処理方法は、以下のいずれかの方法が好ましい。即ち、使用直前に混合した(F)成分とシリコーンエマルジョン組成物〔I〕を該木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、更にその後(G)成分を木材に塗布又は浸漬させる方法、(F)成分を木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、その後、使用直前に混合したシリコーンエマルジョン組成物〔I〕及び(G)成分を木材に塗布又は浸漬させる方法、(F)成分を木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、その後(G)成分を該木材に塗布又は浸漬させ、更にその後シリコーンエマルジョン組成物〔I〕を木材に塗布又は浸漬させる方法である。
【0044】
ここで、浸漬する場合、浸漬時間は浸漬総時間5分〜3時間とすることが好ましく、処理量は乾燥質量で5〜60kg/m3、特に10〜30kg/m3とすることが好ましい。この場合、上記処理量は、減圧、常圧などの処理方法、処理液の濃度などにより調節することができる。また、塗布する場合の処理量も、乾燥質量で5〜60kg/m3、特に10〜30kg/m3とすることが好ましい。
【0045】
また、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕と、(F)ホウ素系化合物と(G)2価又は3価の金属塩を塗布、浸漬あるいは減圧・加圧注入処理する方法についても特に制限はなく、刷毛塗り、ロールコート、スプレー塗布などの表面処理や浸漬処理、減圧・加圧注入処理等の公知の方法により行うことができる。その後、常温で乾燥させることにより硬化皮膜が形成される。常温から150℃程度に加熱することにより硬化が促進され、処理時間が短縮される。形成された硬化皮膜はゴム質を有するものである。
【0046】
本発明において、上記の方法により処理した木材中のホウ酸当量(BAE)として知られるホウ酸換算におけるホウ酸塩の残存量は、後述するJIS K1571の溶脱試験後で5kg/m3以上が好ましく、5〜20kg/m3であることがより好ましい。5kg/m3以上であると、JIS K1571の防蟻性能室内試験後における質量減少率が、その理想とされる3%以下に抑えられる。(F)成分であるホウ素系化合物単独、あるいは(F)成分とシリコーンエマルジョン組成物〔I〕を併用することでも、ある程度のホウ酸当量(BAE)の残存は可能であったが、溶脱試験後で5kg/m3以上のホウ酸当量(BAE)の残存を達成することはできなかった。しかし、(G)成分である2価又は3価の金属塩を併用することで、5kg/m3以上を達成することが可能となったものである。(F)ホウ素系化合物は、(G)2価又は3価の金属塩と反応して水に難溶なホウ酸化合物を木材表面に形成する。これにより、ホウ素系化合物の溶脱を防止することができる。
【0047】
更に、本発明で形成された硬化皮膜は、吸水防止性、ゴム質であるため基材への追随性が良好であるので、クラックなども起こりづらく、雨水などの水によるホウ素系化合物の溶脱防止効果を更に向上させることが可能となる。また更に、本発明で形成された硬化皮膜は、高い撥水性、吸水防止性を保持しながら空気透過性を発揮するため、木材本来が持つ通気性等の性質を損なわせることがない。
【実施例】
【0048】
以下、製造例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0049】
[製造例1]
オクタメチルシクロテトラシロキサン498g、トリエトキシフェニルシラン2g、10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液50g及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液50gを2リットルポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水400gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cm2で高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを撹拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2リットルのガラスフラスコに移し、50℃で24時間重合反応を行った後、10℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpH6.2に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分が45.4%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンは非流動性の軟ゲル状のものであり、平均組成が[(CH32SiO2/2]/[(C65)SiO3/2]=100/0.1(モル比)で表される末端が水酸基封鎖されたものであった。このようにして(A)成分を44.4%含有するエマルジョン組成物[A−1]を得た。
【0050】
[製造例2]
オクタメチルシクロテトラシロキサン500g、10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液50g及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液50gを2リットルポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水400gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cm2で高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。このエマルジョンを撹拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2リットルのガラスフラスコに移し、50℃で24時間重合反応を行った後、10℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpH6.2に中和した。このエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分が45.5%で、エマルジョン中のオルガノポリシロキサンはHO−[(CH32SiO]n−Hで表され、粘度1,000Pa・s以上の生ゴム状のものであった。このようにして(A)成分を44.5%含有するエマルジョン組成物[A−2]を得た。
【0051】
[製造例3]
マレイン酸無水物154gをエタノール500gに溶解した後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン346gを室温下、1時間で滴下し、更に80℃でエタノール還流下、24時間反応を行い、淡黄色透明な(B)成分を50%含有する溶液[B−1]を得た。この溶液は、105℃で3時間乾燥後の不揮発分が45.1%であり、溶液中の反応生成物はIR、GC、NMR、GCMS等の機器分析を行ったところ、約60%が下記式で示されるものの混合物であり、残りの約40%がそれらから誘導されたオリゴマーであった。
(C25O)3SiC36−NHCO−CH=CHCOOH
(C25O)3SiC36−NH3+ -OCOCH=CHCOOC25
【0052】
[製造例4]
ジオクチルスズジラウレート300gとポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO10モル付加物)50gを2リットルポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に混合した後、水650gを徐々に加えて水中に乳化分散させ、次いで、圧力300kgf/cm2で高圧ホモジナイザーに2回通し、(E)成分を30%含有するエマルジョン[E−1]を得た。
【0053】
[製造比較例1]
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び滴下ロートを備えた反応容器に反応型乳化剤(アデカリアソープSE−10N、旭電化工業(株)製)2.0gと水342.1gを加え、温度を75℃に昇温した。一方、水244.5gに、反応型乳化剤(アデカリアソープSE−10N)2.0gを加えて溶解し、これにアクリル酸2−エチルヘキシル230g、スチレン230g、グリシジルメタクリレート19g及びメタクリル酸12.5gの不飽和モノマー混合物を添加撹拌し、よく乳化してからこれを滴下ロートに入れた。次に、このモノマー混合物の5%を反応容器に移し、重合開始剤として0.5gの過硫酸カリウムを加えて80℃に昇温してから10分保持した後、残りのモノマー混合物の乳化物と3%の過硫酸カリウム水溶液50.0gとを3時間かけて反応容器に均一滴下した。滴下終了後、80℃で1時間熟成反応を行った。次いで、室温に冷却し、アンモニア水3.5gを加えて中和し、固形分濃度が45%のエマルジョン組成物[A−3]を得た。
【0054】
表1で示す純分配合組成で、(C)成分としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[C−1]、(D)成分としてコロイダルシリカ(日産化学工業(株)製スノーテックスC:有効成分20%、平均粒子径10〜20nm)[D−1]を用いて各シリコーンエマルジョン組成物を得た。
【0055】
【表1】

【0056】
<試験片作製>
[実施例1〜5]シリコーンエマルジョン+ホウ酸塩→酢酸亜鉛
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で6%水溶液とした。また、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物を有効成分が11.2%となるようにイオン交換水で希釈した。ホウ酸塩化合物6%水溶液100部とシリコーンエマルジョン組成物(有効成分11.2%)100部の混合液に、1.4cm×3cm×3cm(木口面が1.4cm×3cm)の杉辺材3個と2cm×2cm×1cm(木口面が2cm×2cm)の杉辺材9個を−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、10%酢酸亜鉛水溶液に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生し、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。1.4cm×3cm×3cmの杉辺材3個は吸水性確認試験に使用し、2cm×2cm×1cmの杉辺材9個はホウ酸残存率の測定に使用した。得られた改質木材を用いて吸水率、ホウ酸の残存量を下記に示す方法で評価した。木材への処理量比及び各試験結果を表2に示す。なお、木材への処理量は、一工程毎に乾燥質量を測定したものであり、表2の処理量は固形分質量比で記載した。
【0057】
<吸水性確認試験>
得られた試験片を水中に全面浸漬し、24時間後に取り出して下記計算式(1)で吸水率を測定し、3つの試験片の平均値をもって吸水率とした。
吸水率=(W−W0)/W0×100(%)・・・(1)
W0:水浸漬前の試験片の質量(g)
W :水浸漬完了直後の試験片の質量(g)
【0058】
<試験片中のホウ酸塩残存量(B量)測定方法>
得られた試験片を使用して、JIS K1571に準じて下記に示すように溶脱試験を行い、ホウ酸換算におけるホウ酸塩残存量を測定した。
各試験片9個を1組として、500mlビーカーに入れ、試験体容積の10倍量の脱イオン水を加え、試験体を水面下に沈めた。マグネチックスターラーを用い、温度25℃で回転子を毎分400〜450回転させ、8時間撹拌し、溶脱した後、直ちに軽く試験体表面の水切りを行った。続いて温度60℃の循環式乾燥器中に16時間静置し、揮発分を揮発させた。以上の操作を交互に10回繰り返した。
木材試験片をテフロン(登録商標)ビーカーに入れ、3%硝酸水を50ml加えてホットプレート(200℃)で2時間加熱した。冷却後、水を加えて50mlに定容した。この操作を5回繰り返し、それぞれのB量をICP分析装置により測定し、その合計量を木材中のホウ酸塩残存量とした。サンプル9個の平均値をもって残存量とした。
【0059】
[実施例6,7]シリコーンエマルジョン+ホウ酸塩→酢酸亜鉛
Timborの水溶液濃度を実施例6は1.5%に、実施例7は15%にし、実施例6ではシリコーンエマルジョン組成物EM−1 100部と上記のTimbor水溶液100部の混合液に、実施例7ではシリコーンエマルジョン組成物EM−1 100部と上記のTimbor水溶液200部の混合液に変更して、木材への処理量を変えた以外は、実施例1〜5と同様に試験片を作製し、試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表2に示す。
【0060】
[実施例8,9]シリコーンエマルジョン+ホウ酸塩→酢酸亜鉛
酢酸亜鉛の水溶液濃度を実施例8は0.5%に、実施例9は15%に変更して、木材への処理量を変えた以外は、実施例1〜5と同様に試験片を作製し、試験を実施した。なお、シリコーンエマルジョン組成物はEM−1を使用した。木材への処理量比及び各試験結果を表2に示す。
【0061】
[実施例10]シリコーンエマルジョン+ホウ酸塩→塩化亜鉛
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で6%水溶液とした。また、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1を有効成分が11.2%となるようにイオン交換水で希釈した。ホウ酸塩化合物6%水溶液100部とシリコーンエマルジョン組成物(有効成分11.2%)100部の混合液に、実施例1〜5と同様の木材片を−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、10%塩化亜鉛水溶液に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、60℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様の試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表2に示す。
【0062】
[実施例11]ホウ酸塩→酢酸亜鉛→シリコーンエマルジョン
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、10%酢酸亜鉛水溶液に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で30分養生した後、105℃で1時間乾燥させた。更にその後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生し、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様の試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表2に示す。
【0063】
[実施例12]ホウ酸塩→シリコーンエマルジョン+酢酸亜鉛
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)100部と10%酢酸亜鉛水溶液6部を常温常圧下で撹拌機を用いて10分間撹拌し、その混合液中に常圧で30秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様の試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表2に示す。
【0064】
[実施例13]ホウ酸塩→塩化亜鉛→シリコーンエマルジョン
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、10%塩化亜鉛水溶液に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で30分養生した後、60℃で1時間乾燥させた。更にその後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、60℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様の試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表2に示す。
【0065】
[実施例14]ホウ酸塩→シリコーンエマルジョン+塩化亜鉛
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)100部と10%塩化亜鉛水溶液6部を常温常圧下で撹拌機を用いて10分間撹拌し、その混合液中に常圧で30秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、60℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様の試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表2に示す。
【0066】
[実施例15]シリコーンエマルジョン+ホウ酸塩→酢酸カルシウム
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で6%水溶液とした。また、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1を有効成分が11.2%となるようにイオン交換水で希釈した。ホウ酸塩化合物6%水溶液100部とシリコーンエマルジョン組成物(有効成分11.2%)100部の混合液に、実施例1〜5と同様の木材片を−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、10%酢酸カルシウム水溶液に−93kPaの減圧下で10分間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様の試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表3に示す。
【0067】
[実施例16]ホウ酸塩→酢酸カルシウム→シリコーンエマルジョン
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、10%酢酸カルシウム水溶液に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で30分養生した後、105℃で1時間乾燥させた。更にその後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様に試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表3に示す。
【0068】
[実施例17]ホウ酸塩→シリコーンエマルジョン+酢酸カルシウム
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)100部と10%酢酸カルシウム水溶液6部を常温常圧下で撹拌機を用いて10分間撹拌し、その混合液中に常圧で30秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様に試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表3に示す。
【0069】
[実施例18]シリコーンエマルジョン+ホウ酸塩→塩化カルシウム
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で6%水溶液とした。また、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1を有効成分が11.2%となるようにイオン交換水で希釈した。ホウ酸塩化合物6%水溶液100部とシリコーンエマルジョン組成物(有効成分11.2%)100部の混合液に、実施例1〜5と同様の木材片を−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、10%塩化カルシウム水溶液に−93kPaの減圧下で10分間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様の試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表3に示す。
【0070】
[実施例19]ホウ酸塩→塩化カルシウム→シリコーンエマルジョン
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、10%塩化カルシウム水溶液に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で30分養生した後、105℃で1時間乾燥させた。更にその後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様に試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表3に示す。
【0071】
[実施例20]ホウ酸塩→シリコーンエマルジョン+塩化カルシウム
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生した後、105℃で1時間乾燥させた。その後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)100部と10%塩化カルシウム水溶液6部を常温常圧下で撹拌機を用いて10分間撹拌し、その混合液中に常圧で30秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間養生した後、105℃で24時間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様に試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表3に示す。
【0072】
[実施例21]ホウ酸塩→酢酸亜鉛→シリコーンエマルジョン(全て常温乾燥)
実施例1〜5と同様の木材片をU.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で3%に希釈した水溶液に−93kPaの減圧下で2時間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間養生乾燥した。その後、10%酢酸亜鉛水溶液に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で1日間乾燥した。更にその後、表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物EM−1(有効成分10%)に常圧で20秒間浸漬処理し、25℃/36%RHの雰囲気下で3日間乾燥させ、改質木材を得た。これらを用いて実施例1〜5と同様に試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表3に示す。
【0073】
[比較例1]
実施例1〜5と同様の木材片(未処理品)を使用して実施例1〜5と同様に各試験を行った。各試験結果を表4に示す。
【0074】
[比較例2]
10%酢酸亜鉛水溶液を使用しなかった以外は、実施例1〜5と同様に試験片を作製し、試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表4に示す。なお、シリコーンエマルジョン組成物はEM−1を使用した。
【0075】
[比較例3]
表1で得られたシリコーンエマルジョン組成物を使用しなかった以外は、実施例1〜5と同様に試験片を作製し、試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表4に示す。
【0076】
[比較例4]
U.S.Borax社のTimborと呼ばれるホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)をイオン交換水で10%水分散液とし、これのみを使用して実施例1〜5と同じ方法で試験片を作製し、試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表4に示す。
【0077】
[比較例5]
表1のエマルジョン組成物EM−6を使用した以外は、実施例1〜5と同様に試験片を作製し、試験を実施した。木材への処理量比及び各試験結果を表4に示す。
【0078】
なお、表2〜4中の(F)成分及び(G)成分を下記に示す。
(F)成分
F:ホウ酸塩化合物(Na2813・4H2O)
(G)成分
G−1:酢酸亜鉛
G−2:塩化亜鉛
G−3:酢酸カルシウム
G−4:塩化カルシウム
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の硬化物と(F)ホウ素系化合物と(G)2価又は3価の金属塩とを表面に含むことを特徴とする木材。
【請求項2】
皮膜形成能を有するシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の硬化物100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物を10〜1,500質量部、(G)2価又は3価の金属塩を10〜300質量部の固形分割合で含むことを特徴とする請求項1記載の木材。
【請求項3】
シリコーンエマルジョン組成物〔I〕が、
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の木材。
【請求項4】
(G)2価又は3価の金属塩が、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸カルシウム、塩化カルシウムのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の木材。
【請求項5】
(F)ホウ素系化合物が、八ホウ酸二ナトリウム四水和物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の木材。
【請求項6】
ホウ酸換算におけるホウ酸塩の残存量が、JIS K1571の溶脱試験後で5kg/m3以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の木材。
【請求項7】
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の水を除いた有効成分100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物を10〜1,500質量部、(G)2価又は3価の金属塩10〜300質量部の固形分割合で使用し、シリコーンエマルジョン組成物〔I〕と(F)ホウ素系化合物を含む分散液を木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、次いで(G)2価又は3価の金属塩塗布又は浸漬させることを特徴とする木材の処理方法。
【請求項8】
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の水を除いた有効成分100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物を10〜1,500質量部、(G)2価又は3価の金属塩を10〜300質量部の固形分割合で使用し、(F)ホウ素系化合物を木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、次いでシリコーンエマルジョン組成物〔I〕と(G)2価又は3価の金属塩を含む分散液を塗布又は浸漬させることを特徴とする木材の処理方法。
【請求項9】
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノシロキサン:100質量部、
(B)アミノ基含有オルガノキシシランと酸無水物との反応生成物:0.5〜20質量部、
(C)エポキシ基含有オルガノキシシラン及び/又はその部分加水分解物:0〜20質量部、
(D)コロイダルシリカ及び/又はポリシルセスキオキサン:0〜50質量部、
(E)硬化触媒:0〜10質量部
が水中に乳化分散されたシリコーンエマルジョン組成物〔I〕の水を除いた有効成分100質量部に対して、(F)ホウ素系化合物を10〜1,500質量部、(G)2価又は3価の金属塩を10〜300質量部の固形分割合で使用し、(F)ホウ素系化合物を木材に塗布、浸漬又は減圧・加圧注入処理し、次いで(G)2価又は3価の金属塩を塗布又は浸漬し、更にシリコーンエマルジョン組成物〔I〕を塗布又は浸漬させることを特徴とする木材の処理方法。
【請求項10】
(G)2価又は3価の金属塩が、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸カルシウム、塩化カルシウムのいずれかであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項記載の処理方法。
【請求項11】
(F)ホウ素系化合物が、八ホウ酸二ナトリウム四水和物であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項記載の処理方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項記載の処理方法で処理された木材。
【請求項13】
ホウ酸換算におけるホウ酸塩の残存量が、JIS K1571の溶脱試験後で5kg/m3以上である請求項12記載の木材。

【公開番号】特開2011−152785(P2011−152785A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280014(P2010−280014)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000226666)日信化学工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】