説明

木材の表面圧密化方法および装置

【課題】簡易な装置で生産性を向上させる手段が必要であった。
【解決手段】押圧盤8、8a…で木材Mの表層部を圧縮して圧密化すると共に、加熱した押
圧盤8、8a…で木材Mの表層部を加熱し、更に、押圧盤8、8a…の押圧面に突出形成した
シール材22、22aを木材Mの表層部に喰い込ませて、細胞内腔の端部を閉塞して処理空間
を形成し、該処理空間に木材M含有水分が加熱されて生成した高温高圧水蒸気を充満させ
、木材Mの表層部を水蒸気処理すると共に、押圧盤8、8a…を冷却して木材Mの表層部を
冷却処理することによって、加熱圧縮で圧密成形すると共に、シール材22、22aで水蒸気
を封入して変形を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スギ、ヒノキ、マツ等の軟質の針葉樹材等の表層部を圧縮して、強度向上を
図った表面圧密化木材を製造する木材の表面圧密化方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材の表面圧密化方法としては、圧縮、熱処理、水蒸気処理等を行うことが知ら
れているが、効率的な製造方法および装置は今だ開発されていなかった。
【0003】
例えば、木材を高温高圧容器内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後、この
木材を圧縮成形してその変形を高温高圧雰囲気内に置いて固定化した木材の処理方法、お
よび内部に高温、かつ、高圧の水蒸気と高周波が供給される高温高圧容器と、この高温高
圧容器内にプレス金型を適宜に対向配置し、この対向配置する少なくとも一方のプレス金
型を適宜の手段で駆動して木材を圧縮成形するプレス機とからなり、木材を高温高圧容器
内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後、プレス機で圧縮成形して固定化する
ようにした木材の処理装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記の木材の処理方法および装置では、高温高圧容器を必要としたり、
高温高圧容器内にプレス機を配置したり、高温高圧容器に水蒸気と高周波を供給する手段
が必要であり、たいへん大がかりな装置となったり、危険性を有していたり、木材の出し
入れが非常に煩雑になったり、プレス金型によっては木材に高周波を照射出来ず、いずれ
の点からも効率的に木材表面を圧密処理することが甚だ困難であった。
【0005】
又、他の圧密装置・方法としては、昇降温手段を有した上下型の間に、上下端にOリン
グ等を有した囲枠を配置し、囲枠内のキャビティー(装填空間)内に木材を装填するもの
が知られている。
しかしながら、キャビティー内に供給された、又は木材含有水分から生成された水蒸気
でキャビティー内は高温高圧となり、囲枠等で高温高圧容器を形成することとなって、前
記従来例と同様に、設備費が大きくなったり、危険性を有していた。
【0006】
又、前記2例のものでは、木材の周囲空間に高温高圧水蒸気が存在するため、圧密成形
後の冷却段階で周囲の水蒸気が木材に付着し、キャビティーから取り出し後の木材は水分
付着しているため、後工程の乾燥に多大な時間、エネルギーを必要としていた。
更に、周囲の水蒸気は圧縮表面以外で木材に接触しているため、水分で軟化した木材は
所望表層部以外でも圧縮圧密成形が実施されることとなり、この全体圧密では歩留り低下
、材料損失が発生して不経済となっていた。
【0007】
【特許文献1】特開平5−50409号公報(特許請求の範囲、請求項1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、木材の装填、取出が容易で昇温、降温自在なプレスで生産性を向上すると共
に、簡易な構成で昇温時に木材含有水分から生成した水蒸気を封入して、生産性を飛躍的
に向上させる木材の表面圧密化方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記従来技術に基づく、簡易な装置で生産性を向上させる手段が必要とする
課題に鑑み、押圧盤で木材の表層部を圧縮して圧密化すると共に、加熱した押圧盤で木材
の表層部を加熱し、更に、押圧盤の押圧面に突出形成したシール材を木材の表層部に喰い
込ませて、細胞内腔の端部を閉塞して処理空間を形成し、該処理空間に木材含有水分が加
熱されて生成した高温高圧水蒸気を充満させ、木材の表層部を水蒸気処理すると共に、押
圧盤を冷却して木材の表層部を冷却処理することによって、加熱圧縮で圧密成形すると共
に、シール材で水蒸気を封入して変形を固定する様にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
要するに本発明は、押圧盤で木材の表層部を圧縮して圧密化すると共に、加熱した押圧
盤で木材の表層部を加熱する様にしたので、木材を加熱軟化すると共に、圧密成形するこ
とが出来る。
更に、押圧盤の押圧面に突出形成したシール材を木材の表層部に喰い込ませて、細胞内
腔の端部を閉塞して処理空間を形成し、該処理空間に木材含有水分が加熱されて生成した
高温高圧水蒸気を充満させたので、別装置を必要とせずに加熱した押圧盤で水蒸気を簡易
に自動的に生成することが出来ると共に、連通した細胞内腔を閉塞して水蒸気を木材内部
に封入することが出来、又木材の表層部を水蒸気処理すると共に、押圧盤を冷却して木材
の表層部を冷却処理する様にしたので、圧密変形を確実に固定することが出来る。
従って、圧密成形後の変形固定をシール材を設けた昇降温するプレスで実施するだけで
簡易な装置で安全に木材の圧密加工を行うことが出来ると共に、昇降温を押圧盤で行うこ
とにより、多段プレスで複数の木材を同時に圧密成形することが出来、更に、押圧盤の上
下動だけで、木材の装填、取出を容易に行うことが出来る。
【0011】
又、本願の表面圧密化方法では木材の周囲に水蒸気が存在していないため、圧密成形後
の冷却時に木材に水分付着が発生せず、乾燥の必要性が低く、後工程の乾燥を簡素化する
ことが出来る。
更に、周囲の水蒸気不存在により、所望個所(表層部)以外で水蒸気による木材軟化・
圧縮作用が発生せず、所望個所の圧密成形だけで木材強度を向上することが出来て、材料
の有効利用を図ることが出来る。
【0012】
その他の効果としては、複数の木材を耐水性接着剤等で一体化した木材の圧密成形に関
して、従来の装填空間内に木材側面等を非拘束で装填したものでは、圧縮成形時に木材が
分離したが、本願の方法では、シール材による上下方向や後述の側面方向で木材を拘束し
ていることにより、接着一体化木材を一体性を保持・強化して圧密成形することが出来る

最後に、本願の効率性を説明すると、高温高圧容器を利用したものでは、容器内での作
業となって1日当たり数回弱の成形作業となり、囲枠を利用したものでは、囲枠内に対す
る作業なって1日当たり数回強の成形作業となることに対して、本願のものでは1日当た
り十数回の成形作業が可能となると共に、1回当たり数枚(図示のものでは3枚)の作業
が可能となり、格段の効率向上を図ることが出来る。
【0013】
シール材を木材の装填空間方向で位置調整自在と成したので、各種大きさの木材を加工
することが出来る。
【0014】
2辺にシール材を設けたので、木材内部で略同一方向に連通する細胞内腔の水蒸気を封
入することが出来、又他の2辺に封鎖押圧材を装填空間方向に進退自在に設けたので、細
胞内腔の直交方向に作用する水蒸気圧力および細胞壁を封鎖押圧材で受け止めて爆裂を防
止することが出来る。
【0015】
上下型の端縁部に設けた収納空間に封鎖押圧材の進退機構を設けたので、多段プレスの
狭小空間で封鎖押圧材を進退操作することが出来る。
【0016】
押圧盤の一側に封鎖押圧材を装填空間に進行させる押圧駆動系と装填空間から後退させ
る退避駆動系を設けると共に、押圧駆動系と退避駆動系を封鎖押圧材に連結したので、押
圧駆動系と退避駆動系で封鎖押圧材を適切位置に移動配置することが出来、又押圧駆動系
は上下運動を水平運動に変える変向機構と成し、該変向機構は上下型の上下運動で封鎖押
圧材を進退運動させる機構と成したので、押圧盤の上下動で自動的に封鎖押圧材を移動す
ることが出来る。
【0017】
変向機構はリンク機構と成し、下型にへの字状のトッグルリンクを設けたので、簡易な
リンク機構で封鎖押圧材を移動することが出来ると共に、トッグルリンクは倍力機構であ
るため、水蒸気圧力に充分に対応することが出来、又トッグルリンクの頂点を押圧する押
圧材を上型に設けたので、押圧材を取り替えることにより、封鎖押圧材の進退量を調整し
て木材の大きさに対応することが出来る。
【0018】
上下型の押圧盤を基盤と押圧側の熱盤で構成し、基盤は高強度のものと成すと共に、熱
盤は熱良導体のものと成し、基盤内に設けた流体流路に水蒸気を供給する手段を設けると
共に、熱盤内に設けた流体流路に水蒸気または冷却水を選択的に供給する手段を設けたの
で、押圧盤の昇降温時間およびサイクルタイムを短縮して加工効率を向上することが出来
る等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、2に示す様に、多段プレス1は、基礎フレーム2に脚柱3、3a…を立設すると共
に、該脚柱3、3a…の上方に上方フレーム4を架設し、該上方フレーム4に油圧シリンダ
ー5、5aを設けると共に、該油圧シリンダー5、5aの下端に押圧体6を取付ている。
基礎フレーム2の上部に下型7を有する押圧盤8を取付ると共に、上方の押圧体6の下
部に上型9を有する押圧盤8aを取付け、又基礎フレーム2と上方フレーム4の中間に上下
型7、9を夫々有する押圧盤8b、8cを上下動自在に夫々設けている。
上下型7、9は昇温および降温自在と成しており、例えば、上下型7、9内に流体流路
(図示せず)を設け、高温水蒸気または常温、低温の冷却水を供給、排出する流体配管を
流体流路の出入口に接続して、木材Mの装填、圧密処理、取出時に昇温および降温を繰り
返す様にしている。
【0020】
基礎フレーム2にガイド棒10、10a…を立設すると共に、各押圧盤8、8a…に設けたガ
イドリング11、11a…をガイド棒10、10a…に挿通し、又下段以外の押圧盤8a、8b、8cに
連動棒12、12a…を水平突設すると共に、上下方向にスライド溝を有する連動リンク13、
13a…を上下隣接の連動棒12、12a…に掛け渡している。
かかる構成により、多段プレス1の下動押圧時は、油圧シリンダー5、5aの下動で上方
の押圧体6および押圧盤8aが降下開始し、連動リンク13、13a…は上部が上方の押圧盤8a
、8b、8cの連動棒12、12a…に係止した状態であるために、中段の押圧盤8b、8cが徐々に
降下し、下段側の押圧盤8b、8c、8aから木材Mに順次接触して降下停止する。
そして、油圧シリンダー5、5aの下降押圧で、全段の押圧盤8、8a…で木材Mを上下方
向に押圧圧縮し、又油圧シリンダー5、5aの上動時には、連動棒12、12a…と連動リンク
13、13a…の係合関係で上段の押圧盤8aから徐々に引き上げる作用を有している。
【0021】
図1、2、3、7に示す様に、上下型7、9(押圧盤8、8a…)の各2辺には木材Mの
表面圧密を固定化するシール装置14、14a…および爆裂防止装置15、15a…を夫々取付け
ている。
シール装置14、14a…は、木材Mの端部を圧密圧縮に加えてシール圧縮して、木材M含
有水分から生成された水蒸気を閉塞するものである。
又、爆裂防止装置15、15a…は、木材Mの固定処理時に、水蒸気圧力で木材Mの細胞壁
が爆裂することを防止するものであり、シール装置14、14a…とは異なる2辺に設けてお
り、爆裂防止装置15、15a…は固定処理自体に本質的には係わらないが、安全性確保のた
めに必要な部材である。
【0022】
シール装置14、14a…の一例としては、図3、4に示す様に、上下型7、9の押圧面の
2辺に端部より内側で、木材Mの装填空間C側に上下突出させてシール材16、16aを設け
ている。
取付け状態の一例としては、上下型7、9の端部に受座17、17aを凹設すると共に、該
受座17、17aにシール材16、16aの台座部18、18aをビス19、19aで固定している。
【0023】
尚、シール装置14、14a…は2辺に設けた例を示したが、略同一方向で木材Mの端面に
も連通する細胞内腔の端部を閉塞するために、少なくとも2辺に必要であって、その他の
2辺を加えて4辺に設けても良い。
又、シール材16、16aは三角形状で上下型7、9の押圧面から装填空間C側に突出した
ものを示したが、細胞内腔を端部寄りで屈曲させて閉塞出来れば、板状や他の形状でも良
く、又装填空間Cの端縁から若干内側位置に固定したが、図8に示す様に、装填空間Cに
おける木材Mの端部に対する位置を変更自在としても良い。
【0024】
位置変更自在なシール装置14、14a…の一例としては、図8に示す様に、上下型7、9
(押圧盤8、8a…)の横端面に取付フレーム20、20aを取付け、該取付フレーム20、20a
の支持基板21、21aに面接触状態かつ水平方向へスライド自在に、先端部をシール材22、
22aとする板材23、23aを取付けている。
かかる構成により、板材23、23a先端部のシール材22、22aを、上下型7、9の押圧面
から上下方向突出状態で、装填空間Cの所望位置まで進行自在と成している。
尚、スライド自在と成す構成の一例としては、図示した様に、支持基板21、21aに支持
ピン24、24a…を突設すると共に、該支持ピン24、24a…が挿通するスライド溝25、25a
を板材23、23aに設けてスライド自在と成しており、図示していないが、取付フレーム20
、20aに対する板材23、23aを所望位置で固定する構成を設けている。
【0025】
爆裂防止装置15、15a…の一例としては、木材Mの端面に接触させる進退機構として、
上下型7、9の上下移動で連動するものを説明するが、別機構で駆動させても良い。
図3、7に示す様に、上下型7、9の端縁部で対向面を欠切して収納空間26(図5参照
)を設け、該収納空間26内に封鎖押圧材27、27aを木材Mの端面に押圧接触させる押圧駆
動系28、28a…と非接触とさせる退避駆動系29、29a…を交互に配置している。
図5、6に示す様に、収納空間26の端縁部で下型7に固定ベース台30を取付けると共に
、該固定ベース台30対向位置で平行に移動ベース台31を摺動自在に設け、上下型7、9の
間の装填空間C内に進退自在に挿通配置した封鎖押圧材27、27aの基端部を取付け、そし
て、固定ベース台30と移動ベース台31の間に押圧駆動系28、28a…と退避駆動系29、29a
…を交互に設けている。
【0026】
退避駆動系29、29a…にあっては、図6に示す様に、固定ベース台30と移動ベース台31
に対向して設けたスプリング座32、32aに引張スプリング33の両端を係合して、封鎖押圧
材27、27aを装填空間Cから退避させる方向に付勢している。
【0027】
他方、押圧駆動系28、28a…にあっては、図5に示す様に、固定ベース台30と移動ベー
ス台31に対向して設けた取付座34、34aにトッグルリンク35のリンク材36、36aの基端を
夫々枢着すると共に、リンク材36、36aの他端同志を枢着して、への字状のトッグルリン
ク35を構成し、その頂点を押圧作用点37と成している。
又、トッグルリンク35等を取付けていない上型9の下面には、トッグルリンク35の上方
突出した押圧作用点37の対向位置に所定厚さの押圧材38を設けている。
【0028】
かかる構成により、上型9の降下に応じて、上型9下面に設けた押圧材38が下型7のト
ッグルリンク35上方の押圧作用点37を押圧することにより、退避駆動系29、29a…の引張
スプリング33の付勢力に抗して、押圧駆動系28、28a…の押圧作用点37が降下して、への
字状のトッグルリンク35は偏平状に変化し、移動ベース台31側の取付座34aが装填空間C
方向に進行し、封鎖押圧材27、27aが木材Mの端面に当接する様に進行する。
又、上型9の上昇に応じて、トッグルリンク35の進行作用が解除されると共に、退避駆
動系29、29a…の引張スプリング33の引張作用で、装填空間Cから封鎖押圧材27、27aを
後退させ、又トッグルリンク35はへの字状に復元する。
【0029】
尚、上型9に設けた所定厚さの押圧材38を交換自在と成すと共に、移動ベース台31と封
鎖押圧材27、27aを分離自在として封鎖押圧材27、27aを交換自在と成し、ストロークを
変更自在と成したり、木材Mの厚さに対応可能としている。
又、押圧駆動系28、28a…として倍力リンク機構のトッグルリンク35を示したが、押圧
駆動系28、28a…を上下運動を水平運動に変える変向機構とすれば、トッグルリンク35以
外の各種機構で上下型7、9の移動に連動して封鎖押圧材27、27aを進退させる様にして
も良い。
【0030】
上下型7、9を昇温および降温して所定温度に設定する方式としては、上下型7、9に
水蒸気または冷却水を内部流通させているが昇降温を迅速化する方式の一例を以下、説明
する。
図1、2、4に示す様に、昇降温自在の押圧盤8、8a…は、基本的に高温を維持する基
盤40と昇降温する熱盤41から成り、基盤40は剛性の高い高強度の鉄鋼製と成すと共に、熱
盤41は熱伝導性が良い熱良導体のアルミニウム合金製と成し、下段の押圧盤8では基盤40
の上面に下型7の熱盤41を配置すると共に、上段の押圧盤8aは基盤40の下面に上型9の熱
盤41を配置し、中段の押圧盤8b、8cは基盤40の上下両面に上下型7、9となる熱盤41を夫
々配置している。
そして、基盤40及び熱盤41には内部に屈曲した流体流路(図示せず)を設け、基盤40の
流体流路には水蒸気を流通し、熱盤41の流体流路には水蒸気又は冷却水を昇降温工程に沿
って交互選択的に流通させる様にしている。
かかる構成により、基盤40は高温状態が維持されると共に、熱盤41は昇温状態と降温状
態が繰り返され、自然放冷で昇温させ難い熱盤41を、材質面、流体のエネルギー量および
高温の基盤40が関係して熱盤41および木材Mの昇温を比較的早くしている。
尚、基盤40と熱盤41の間に、基盤40と熱盤41の熱膨張率差の対応材を設けることが好ま
しい。
【0031】
次に本発明に係る木材の表面圧密化方法について説明する。
図9に示す様に、詳細は後述するが、前工程として木材Mの表層部に含水させ、木材M
を加熱圧縮して木材Mの表層部を圧密変形し、含有水分加熱の水蒸気で変形を永久固定す
る。
前工程としては、高圧真空蒸煮釜に木材Mを投入し、蒸煮、真空、含水、蒸煮して、木
材Mの表層部に水を注入する。
そして、多段プレス1を作動させて、押圧盤8a、8b、8cを上昇させて、各上下型7、9
の間の装填空間Cに木材Mを装填し、油圧シリンダー5、5aを作動させると共に、押圧盤
8、8a…に水蒸気を流通させて加熱する。
加熱された押圧盤8、8a…と木材Mの接触により、木材Mの表層部が加熱されて、高含
水状態で軟化容易な細胞壁を加熱で軟化させる。
【0032】
油圧シリンダー5、5aの作動で木材M(圧縮変形前を図中、二点鎖線で表示)を押圧す
ることにより、図4、8に示す様に、飽水状態で加熱軟化された木材Mの表層部を圧縮し
て、表層部の細胞壁を切断することなく滑らかに褶曲して圧密化状態に変形する(全体の
圧密層N1として図中に表示)。
又、シール材16、16a、22、22aの配置個所である木材Mの2辺端部では、シール材16
、16a、22、22aの厚さ、突出量の略相当分の圧縮層が増大する(図中、シール圧縮層N
2として表示)。
このシール材16、16a、22、22aによる増大したシール圧縮層N2、全体の圧密層N1
に比して内層部に屈曲移動することと相俟って、中空のセル構造体から成る木材Mの細胞
内腔(仮導管)は閉塞状態となる。
【0033】
飽水状態の木材Mの含有水分は押圧盤8、8a…の加熱で水蒸気となり、木材Mはセル構
造体で導通方向の細胞内腔の端部がシール圧縮層N2で圧縮閉塞されているため、両端が
閉塞された細胞内腔の処理空間に高温高圧水蒸気が充満し、圧密変形された表層部の圧密
層N1に対して、水蒸気処理が実施されることとなり、後述する様に、細胞壁の構成物質
が成分変化する。
よって、圧密状態(変形拘束状態)で水蒸気処理されて構成物質の吸湿性が低下するこ
とにより、多段プレス1から取り出されて製品化されても、木材Mの圧密変形は永久固定
される。
【0034】
又、細胞内腔の水蒸気は2辺のシール装置14、14a…による作用で閉塞される一方、細
胞内腔の直交方向である細胞壁方向にも圧力が作用することに対して、押圧盤8、8a…の
降下で爆裂防止装置15、15a…の封鎖押圧材27、27aが木材Mの他の2辺に当接している
ことにより、2辺が押圧されて膨張を制限している。
【0035】
高温の所定温度、圧力で所定時間の加熱、圧縮、圧密、固定処理が完了した段階で、押
圧盤8、8a…に冷却水を流通させて降温し、木材Mを冷却することにより、吸湿性が低下
した細胞壁の構成物質は硬化等して、冷却によって永久固定作用が増大する。
【0036】
上記の永久固定作用について補足説明すると、
10分間程度、所定温度(180度以上等)で圧縮継続(変形拘束)することにより、
木材M含有水分が水蒸気となり、細胞壁の成分であるヘミセルロースやリグニンが加水分
解して低吸湿性の分子に変化したり、結晶化し、或いは、細胞壁の成分であるセルロース
のミクロフィブリルが切断する等の成分変化が発生する。
又、変形を拘束状態で温度降下することにより、ヘミセルロース等から成るマトリック
スが硬化したり、成分変化、切断状態で変形が拘束されたり、凍結される。
【0037】
そして、押圧盤8a、8b…を上昇させて上下型7、9を分離し、上下型7、9の間の装填
空間Cから木材Mを取り出し、新たな木材Mを装填して加工を続行する。
尚、木材Mの端部(2辺)は目的とする圧密層N1以外にシール圧縮層N2が形成され
ているが、製品段階では切断廃棄される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る多段プレスの正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】押圧盤の平面図である。
【図4】図3の要部を示す図で、固定式のシール材を示す断面図である。
【図5】図3の要部を示す図で、(a)は押圧駆動系を示す断面図、(b)はその平面図である。
【図6】図3の要部を示す図で、退避駆動系を示す断面図である。
【図7】他例の押圧盤の平面図である。
【図8】位置調整自在なシール材を示す図7の要部断面図である。
【図9】表面圧密化のフローを示す図で、(a)は全体フロー、(b)は成形フローを示す図である。
【符号の説明】
【0039】
7 下型
8、8a、8b、8c 押圧盤
9 上型
16、16a シール材
22、22a シール材
26 収納空間
27、27a 封鎖押圧材
28、28a… 押圧駆動系
29、29a… 退避駆動系
35 トッグルリンク
36、36a リンク材
37 押圧作用点
38 押圧材
40 基盤
41 熱盤
M 木材
C 装填空間
N1 圧密層
N2 シール圧縮層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下型の押圧盤で木材を加熱圧縮する木材の表面圧密化方法であって、
押圧盤で木材の表層部を圧縮して圧密化すると共に、加熱した押圧盤で木材の表層部を
加熱し、更に、押圧盤の押圧面に突出形成したシール材を木材の表層部に喰い込ませて、
細胞内腔の端部を閉塞して処理空間を形成し、該処理空間に木材含有水分が加熱されて生
成した高温高圧水蒸気を充満させ、木材の表層部を水蒸気処理すると共に、押圧盤を冷却
して木材の表層部を冷却処理する様にしたことを特徴とする木材の表面圧密化方法。
【請求項2】
上下型の押圧盤で木材を加熱圧縮する木材の表面圧密化装置であって、
押圧盤に昇降温手段を設けると共に、押圧盤の押圧面に木材の表層部に食い込むシール
材を突出形成したことを特徴とする木材の表面圧密化装置。
【請求項3】
シール材を木材の装填空間方向で位置調整自在と成したことを特徴とする請求項2記載
の木材の表面圧密化装置。
【請求項4】
2辺にシール材を設けると共に、他の2辺に封鎖押圧材を装填空間方向に進退自在に設
けたことを特徴とする請求項2又は3記載の木材の表面圧密化装置。
【請求項5】
上下型の端縁部に設けた収納空間に封鎖押圧材の進退機構を設けたことを特徴とする請
求項4記載の木材の表面圧密化装置。
【請求項6】
押圧盤の一側に封鎖押圧材を装填空間に進行させる押圧駆動系と装填空間から後退させ
る退避駆動系を設けると共に、押圧駆動系と退避駆動系を封鎖押圧材に連結し、押圧駆動
系は上下運動を水平運動に変える変向機構と成し、該変向機構は上下型の上下運動で封鎖
押圧材を進退運動させる機構と成したことを特徴とする請求項4又は5記載の木材の表面
圧密化装置。
【請求項7】
変向機構はリンク機構と成し、下型にへの字状のトッグルリンクを設けると共に、該ト
ッグルリンクの頂点を押圧する押圧材を上型に設けたことを特徴とする請求項6記載の木
材の表面圧密化装置。
【請求項8】
上下型の押圧盤を基盤と押圧側の熱盤で構成し、基盤は高強度のものと成すと共に、熱
盤は熱良導体のものと成し、基盤内に設けた流体流路に水蒸気を供給する手段を設けると
共に、熱盤内に設けた流体流路に水蒸気または冷却水を選択的に供給する手段を設けたこ
とを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7記載の木材の表面圧密化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−205359(P2006−205359A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16322(P2005−16322)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(394003449)株式会社東洋油圧工業 (1)
【Fターム(参考)】