説明

木材の表面硬度の高い加工目材の製造方法

【課題】 杉・桧等の原木を構成している木質の内、硬くて強い木肌面を木表に断面、長方形・長さ適宜の割材を製材し、その木肌面を平面又は曲面に仕上げる方法を課題とする。
【解決手段】 杉・桧等の樹皮付き原木の木肌面を木表に、台板として辺材部分3を特定し、断面・長方形、長さ適宜の割材を製材し、その製材品の樹皮を剥ぎ取り、木肌面を平面、又は曲面の金型を当て板としてプレス仕げをすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項1の発明は、国産杉・桧等の生木の樹皮付き原木から、無節の樹皮付き巾10cmないし20cm、厚さ3cmないし6cm・長さ適宜の割材を採取する製材技術に関するもの。
【0002】
請求項2の発明は、上記採取した製材品の樹皮を剥ぎ取り、凹凸した木肌面を滑らかな平面、又は曲面にプレス仕上げをする技術に関するものである。
【0003】
請求項3の発明は木材の表面硬度調整とその色合い調整に関するものである。
【背景技術】
【0004】
請求項1に関する従来の製材技術は、冬季に伐採した原木を春から夏にかけて搬出し、その原木の木肌部分を除去して残留部分即ち辺材部分を少々含む心材部分を板目、柾目等に製材している。
【0005】
このような製材技術では、無節の製材品を採取することは大変困難であり、又その歩留まりは非常に悪い。例えば植樹後60年の直系40cmの樹木で、無節の板その他割材を採取可能な部分は、長さ3.0mの根玉ないし2番玉に限定され、その歩留まりは5〜10%あれば限界とされてきた。
【0006】
そして、それら製材品の性質においては、表1表示の通り杉材は樹種ぶな・たも等に比較して柔らかく、現代建築の大半を占める洋風建築の建具材及び家具利としては、基本的に材の「表面硬度と強度」が足りなく、それらを増すため圧縮木材に加工するにも木質が心材であるため、水蒸気の透過性が悪く容易に加工出来ない。
【特許文献】 木材組織の透過性に関する特許 (12)公開特許公報(A) (11)特許出願公開番号 特開平6−262604 (43)公開日 平成6年9月20日 (71)出願人 391057395 株式会社ヤスジマ (71)出願人 000213297 中部電力株式会社 (54)発明の名称 木材組織の透過性改善法
【0007】
請求項2に関する類似技術として、表面圧密化技術が平成16年3月30日・丸善株式会社発行の木材工業ハンドブック・改正4版に掲載されている。この方法に基づけば、フェノ−ル樹脂やメラミン樹脂を木材の表面に含浸して圧縮硬化したものは固定される。しかし、熱処理だけで圧縮・圧密したものは、再び水分と熱の作用で回復する。又、木材に水を注入後、圧縮・乾燥してドライニングセットさせたものを、熱処理した場合、180℃では20時間、200℃では5時間以上で変形は完全に固定される。高圧水蒸気下で処理した場合では、180℃では8分、200℃では1分以上で変形は完全に固定される。と説明している。
【非特許文献】 丸善株式会社発行 木材工業ハンドブック、森林総合研究所監修・改正4版865〜866頁・表面圧密化
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本願発明は請求項1を解決するため、原木を構成している木質のうち、表面硬度の硬い木肌面を含む辺材部分を、原木の断面外周に沿って、10〜20cmを巾・厚さ3〜6cmを特定し、長さ適宜の樹皮付き割材を採取する方法を課題とする。
(図3を参照)
【0009】
次に、上記採取した材の樹皮を剥いで、その木肌面の凸凹を図3記載符号4及び図4記載符号5の金型を当て板にしてプレス仕上げする方法を課題とする。
(図5参照)
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の[0008]表示の課題を解決する手段は、例えば断面巾11〜15cm・厚さ3〜6cmの材を採取するには、樹齢60〜100年生の直系40〜50cm、長さ適宜の樹皮付き原木の断面を8等分して、バンドソ−で挽き割りする。次に8等分された材の樹皮面に平行して辺材部分を厚さ3〜6cmで製材する。すると巾11〜15cm程の樹皮付き割材8本を得る事が出来る。(図1・2を参照)
【0011】
上記[0009]表示課題の解決手段として、樹皮を剥皮して水分の存在下で温度120〜150℃で熱処理し、その後含水率15〜40%に自然乾燥する。
プレス仕上げに関しては、上記乾燥した材の木肌面を平面金型板、又は曲面金型面に当て、ホットプレスで温度120〜150℃・時間5〜10分間、木肌面の凹凸が上記金型面に密着する状態に迄圧縮する。すると木肌面は滑らかな平面、又は曲面に仕上がり固定する。
(図3・4を参照)
【類似特許文献】

【公開特許】
特許コ−ド P03A000292
発明の名称 圧縮木材の製造方法
出願番号 特願2001−027261
出願日 平成13年2月2日(2001、2、2)
公開日 平成14年8月14日(2002・8・14)
発明者 木方洋二
出願人 独立行政法人科学技術振興機構
【本願発明の効果】
【0012】
この発明の効果は大別して、製材技術と仕上げ技術にある。製材技術は国産杉・桧の製材品に木肌面を木表とする辺材部分を特定して製材したことにある。木肌面の硬度は無処理の状態で従来からの板目・柾目等の製材品の約倍硬く、圧密した場合は50%圧縮で杉材はブリネリ硬度検定で15N/mm,桧材で37N/mmを記録している。又木肌面プレス仕上げは、その台板が辺材質で構成されている故水蒸気の透過性がよく、単純な工程で圧縮固定出来る等経済的である。又製材技術は杉・桧の樹齢を問わず、その立木から計画的に無節部分の製材品採取可能で、その上木肌面は自然の摂理に基づき殆ど均一化されている。故に本願発明は国産の杉・桧の製材品の表面軟質で使用傷が付きやすい、という最大の欠点を克服し、その上木表面が木肌面で統一され感触よく高級感がある。更に手垢等汚れが付きにくい、等々その機能性は多種に渡り高められた。故に新しい需要の開拓可能という最大の効果が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0013】
原木の木肌面が劣化していない国産の杉・桧の樹皮付き辺材部分を採取するため、径40cmの立木を▲1▼伐採し、長さ100cmに玉切りし、その原木から断面を8等分して立て挽きし、次に▲2▼樹皮面に平行して厚さ5cmに製材し、樹皮を剥皮した。その材を▲3▼温度100℃〜120℃のボイラ−に搬入、20分〜30分熱処理、その後一ヶ月間自然乾燥。▲4▼木肌面に当て板として平面のステンレス板を用い(A)温度120℃の状態で、木肌面の凹凸が当て板に密着する迄圧縮(約20%)し、その状態で20〜30分間プレスした。(B)圧縮率50%で30分間プレスした。すると表面硬度の成績は下記の表の通りであった。
【表1】

上記資料の圧縮率に関して
ヒノキ大・スギ大の圧縮率 50%
ヒノキ小・スギ小の圧縮率 約20%
【産業上の利用可能性】
【0014】
従来からの製材技術では、国産の杉・桧材は他樹種に比較して多々優れた木質を有していたが、▲1▼木材の硬度不足と、更に樹齢80年、直系50cm程に生長したにも係わらず、従来の製材技術で製材した製材品には大きな▲2▼節跡が多く出現し、洋風建築には馴染めず大半が不用木材の如き処遇を受けている。しかし、本願発明の技術は、請求項1及び2において、それらの欠陥を克服し、更に請求項3において、杉・桧の長所を引き出した。故に本願発明技術によって製造された杉・桧の加工木材は洋風建築の造作材・建具材・及び家具材等の高級材としての利用が見込まれる。故に本願発明は我が国の木材産業の基盤技術として利用出来る可能性が大である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
杉・桧の生木の樹皮付長さ適宜、直径40cm以上の原木を、図1表示の通り原木の断面を8等分して立て挽きする。次に8等分された図2記載の樹皮面符号2を木表として、厚さ3〜6cm、の断面サイズの割材符号3を製材することを特徴とする製材方法。
【請求項2】
図3記載の符号3割材の符号2樹皮を剥ぎ取り、同図記載の符号2,木肌面を符号4平面金型、又は図4記載の符号5曲面金型に密着するまで圧縮してプレス仕上げをすることを特徴とした加工木材の製造方法。
【請求項3】
請求項2のプレス仕上げの工程で、プレスの温度と、プレス率と、プレス時間の調整に依り木肌面の硬度を杉材はブリネリ硬さ11〜15N/mm,桧材は23〜37N/mm,色合いは薄いきつね色から濃いきつね色にコントロ−ルすることを特徴とするプレス仕上げの方法。

【公開番号】特開2008−55886(P2008−55886A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263523(P2006−263523)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(506327287)
【Fターム(参考)】