説明

木材を挟んだ二重ガラス構造

【課題】建具やサッシに使用する二重ガラスの間に乾燥した木材を挟むことで、挟んだ木材へのホコリの付着と、ガラス間の結露を防ぐ。
【解決手段】2枚のガラス間に含水率20%以下の木材を挟んで、ガラスの全周を封着材によって密閉することにより、ホコリの侵入を防ぎ、かつ、挟んだ木材に二重ガラス内部の湿気を吸収させることによって結露を防ぐ。
建物の外部に使用する際には、ガラス間に挟む木材に不燃処理を施すことにより耐火性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材を挟んだ二重ガラス構造であり、木材へのほこりの付着、ガラス内面の曇り・結露を防ぐことを目的とした建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具の組子部や、または建具のほぼ全面を2枚のガラスで挟む造作は、従来よりホコリを防ぐものとして使用されている。しかし、ただ挟むだけではガラスをはめ込むためのミゾなどからホコリが侵入してきてしまっていた(特許文献1,2)。
【0003】
また、前記の建具では二重ガラス内部への湿気を防ぐ働きはないためガラス内面で結露することがあった。その他にも内面にホコリが侵入し湿気をもち始めると、デザインとして組み込んだ木材やガラスの内面に汚れとして付着していってしまう。従来の二重ガラス建具は、そのほとんどがガラスを組み込む加工が特殊で、技術を持たない顧客がメンテナンスすることはほぼ不可能である。そのため、現代住宅では特に湿気の多い浴室や汚れが付着しやすい外回りの建具などに木材を使うことは敬遠されていた。
【0004】
現在二重ガラスの結露を防ぐものとして、ペアガラス(複層ガラス)が代表的なものとして挙げられる(例えば特許文献3)。ペアガラスはスペーサー内に吸湿剤を入れて内面の水分を吸収させるが、枠・組子共に金属又はプラスチック製で、無機質な印象があり、家屋の内装に用いられることは少ない。
【特許文献1】特開平11−44161号公報
【特許文献2】特開2000−27547号公報
【特許文献3】特許第2878561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、木材を挟んだ二重ガラスの建具に於いて、ガラス内面へのホコリの侵入・付着、並びに曇りや結露を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
2枚のガラスの間に含水率20%以下の木材を挟んで、前記ガラスの周囲を密閉することでにより、ホコリの侵入を防ぎ、かつ、挟んだ木材自身に二重ガラス内部の湿気を吸収させ、曇り・結露を防ぐ。
【発明の効果】
【0007】
現代建築では外回りや浴室など、湿気が多い場所には金属又はプラスチック製のサッシを使用することが主流になっている。これは木材等の植物性繊維を湿気の多い場所に使用
すると腐食しやすく、メンテナンスを頻繁に行う必要があり、手間やコストがかかってしまうという面が一因となっている。しかし本発明は、二重ガラスで覆った部分に直接水がかかることはなく、ランニングコストを含めれば比較的安価に、木材の造作を湿気の多い場所に設置することに可能で、現代建築の幅を広げることが出来る。
【0008】
本発明の二重ガラスは、人の出入りが多い出入り口などで使用しても、従来の二重ガラスの建具と違い、中に組み込んだ材料にホコリが付着しない。これによりデザイン性を損なわないまま、掃除などのメンテナンスを軽減することが出来る。
また、二重ガラスに挟まれた木材が湿気を吸収するので、乾燥剤を封入しなくてもガラスの内面が曇ったり結露することがない。
【0009】
伝統的な指物技術を現代住宅に導入しやすくなり、組木技術の伝承や間伐材の有効利用を促進できる。
【0010】
単調になりがちなサッシのデザインに、格子や組木などの伝統的な建具のデザインを導入することができ、しかも、風圧などの外力に対して2枚のガラスが、挟まれた木材を介してより均等な力を受けるようになるので、結果的にガラスの強度が増す。
【0011】
2枚のガラス間の空気を吸引して減圧し、より断熱性と遮音性を向上させる、いわゆる真空二重ガラスの問題点であるガラスのたわみを、ガラス間に挟んだ木材で支えることにより解決することが出来る。
従って、比較的容易に真空二重ガラスを実現することができる。
【0012】
2枚のガラス間に挟む木材に不燃処理を施すことにより、周囲の温度が上昇しても発火しにくくすることができる。これにより、建物の外面に使用する場合に要求される耐熱・耐火性を備えることが出来る。

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図3を用いて、本発明の最良の形態について説明する。
二重ガラスの縁3から、内側に適度にスペースをとった位置に木材で枠4をつくり、そのさらに内側に木材で組子1を組み込む。一番外側の3と4の間に出来たスペース5には、密閉するためにシリコーン等の軟質な封着材を流し込む。一般的な建具では本発明をかまち2で囲むことになるが、使用場所によってはその限りではない。
【0014】
次に、二重ガラス間に封入される空気の温度、湿度と最低必要な木材の量について説明する。
標準大気圧、35℃、湿度70%の作業環境で二重ガラスを密封したとする。このとき二重ガラス間に挟む木材の含水率が20%だったとし、含水量が25%に上昇することにより、−10℃まで二重ガラス間の空気が飽和水蒸気圧に達しないための木材量を求める。
ここで木材の含水率は、含水率(%)=100×(水分を含んでいる木材の重さ− 全乾燥時の木材の重さ)/(全乾燥時の木材の重さ)で定義されるとする。
【0015】
Tetensの近似式で求めた飽和水蒸気圧と飽和水蒸気量を表1に示す。
これによれば、空気1mあたりの水蒸気量は、35℃、湿度70%で、39.60×0.7=27.72g/m
−10℃まで水蒸気が飽和しないために木材が吸収しなければならない水分量は、27.72−2.36=25.36g。
よって当初必要な木材量は空気1mあたり、1.2×(25.36)/(1.25−1.2)=609gである。
【0016】
【表1】



【0017】
ここでは、二重ガラスに封入する気体を空気として説明したが、水蒸気圧は温度の関数なので空気のかわりにアルゴンガスを封入しても上記と同様な結果になる。
一般に空気の代わりにアルゴンガスを封入した方が断熱・遮音効果が優れていると言われている
【0018】
上記のように作成した二重ガラス構造を、木製又はアルミ製又はプラスチック製の建具本体にはめ込むことによって、ガラスに挟まれた組子部1はホコリや湿気で汚れることがなくなる。一般的に、近代建築では木製の建具本体は内装建具に適しており、アルミ製やプラスチック製の建具本体は外装や浴室などの建具に適している。
【0019】
近年、断熱効果と遮音性をさらに向上させるために真空複層ガラスが開発されているが、技術的な問題の一つに、大気圧に押されてガラスが変形するという点がある。
本発明では、ガラス間に木材をデザインとして配置しながら、同時にガラス間の支柱として機能させることができるので上記問題点を解決することができる。
尚、真空二重ガラスに挟むための木材は、あらかじめ減圧状態で水蒸気や油脂分を蒸発させてから用いた方がよい。
【0020】
建物の外部に用いる建具には、耐火性能が求められる。
この要求を満足するためには、二重ガラスに挟む木材に予め不燃処理を施すのが望ましい。不燃処理の方法としては、ホウ酸、ホウ砂を主成分とする処理液を加圧含浸する方法がある。この場合も木材の吸湿性は維持されるので、二重ガラス間の結露防止効果がある。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による建具を正面から見た略図である。
【図2】本発明による二重ガラス構造の正面図である。
【図3】図2のA−Aの断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 建具の組子部
2 建具のかまち部
3 二重ガラスの縁
4 ガラス内面の造作に対するかまち
5 封着材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
向かい合わせたガラスの間に木材を挟んで、該ガラスの全周を封着材で密閉することで、木材にガラス間の湿気を吸収させ、木材へのホコリの付着を防ぎ、ガラス内面の曇り・結露を防ぐ事を特徴とする二重ガラス構造。
【請求項2】
含水率20%以下の木材を、ガラス間に密閉された空気1m当たり610g以上含むことを特徴とする請求項1に記載した二重ガラス構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した二重ガラス構造であって、ガラス間に挟んだ木材により、ガラスの変形を内面から支える機能を持つことを特徴とするガラス間を減圧した二重ガラス構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2又は請求項3に記載した二重ガラス構造であって、ガラス間に挟む木材に不燃処理が施されていることを特徴とする二重ガラス構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−161994(P2009−161994A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1085(P2008−1085)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(306026038)
【Fターム(参考)】