説明

木材乾燥方法

【課題】乾燥温度を高温にせず、乾燥後の木材の反りやひび割れ、収縮、曲がりなどの欠陥の発生を少なくし、表面の光沢や香りをそのまま残し、商品としての価値を上げることができ、高品質性に優れると共に、低温での乾燥に加え、断熱性に優れることから必要なエネルギーが小さく、さらに自然エネルギーも利用するので、省エネルギー性、環境保護性に優れ、装置本体の構造や内外部の仕上げ材を木造とすることで、設置しやすく、蒸気発生装置や過大な電気設備が不要で、設備投資が少なくて済み、全体として木材乾燥にかかるコストを抑えることができ、設備導入しやすく、設置自在性、量産性に優れる木材乾燥機の提供。
【解決手段】天井部、壁部、床部が、外壁と内壁で2重に形成され外壁と内壁の間に断熱層を有する乾燥室と、乾燥室に収容される木材の加熱及び冷却を行う温度調整装置と、を備え、温度調整装置による木材の加熱と冷却を交互に繰返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の人工乾燥の分野において、木材が本来有する強度、香り、ツヤを損なうことなく、短時間で、かつ、小さなエネルギーで乾燥させることができる木材乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅に使用する梁や柱などの構造材は、十分に乾燥していることが求められる。構造材が、十分に乾燥していないまま、工事を進めてしまうと、工事途中や完成後、構造材にカビが発生したり、乾燥が進む過程で木材が収縮し、床鳴りや壁の亀裂、木材割れが発生したりする等の問題が起こりやすくなる。
かつては、建築期間が十分に長く、建築期間中に材料を乾燥させることが出来た。しかしながら、昨今では、建築期間が短くなり、構造材を屋根や壁、床等で覆い隠してしまうまでの期間においては、上棟後から1〜2ヶ月程度となっている。この期間では、構造材を建築期間中に乾燥させることが難しい。
また最近では、構造材は、プレカット加工が行われるようになったが、未乾燥材を使用すると、加工待ちの過程で、反る、曲がる等して機械に掛けられなくなったり、加工した後に乾燥が進んだ場合には、加工精度が悪くなったりして、正しく組み上げが出来ない等の問題が発生する。
さらには、平成12年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の「住宅性能表示制度」によって「住宅の瑕疵担保責任」が重要視されるようになり、未乾燥材を使うことで大きなクレームの発生が見込まれ、一層乾燥材が求められるようになっている。
【0003】
かつて行われていた自然乾燥による木材乾燥の方法では、冬季に立木を切り、そのまま、2〜3ヶ月の間、枝や葉を切ることなく山の斜面に寝かせておき(葉枯らしという)、その後、製材所で製材し、使用目的や樹種に応じて、屋内や屋外で乾燥させるという方法がとられていた。その乾燥期間は、使用個所や材種によって異なるが、概ね、1〜3年であった。
これに対し、近年、乾燥材の要求が強まり、乾燥スピードを上げるために、木材の乾燥方法として、人工乾燥システムの研究が大きく前進した。人工乾燥システムとして、まず、高温(100℃程度)の風で乾燥させる技術が確立されたが、高温の熱風では、木材表面の乾燥スピードが速く、内部の乾燥スピードがそれに追いつかず、木材表面に「ひび割れ」が生じるという問題が起こった。そのため、木材表面を、蒸気で温めて「ひび割れ」を防止する方法が開発された。
その後、内部にまで早く熱が伝わるように、遠赤外線や、高周波、マイクロ波を使用した乾燥機や、加圧、減圧方式や真空方式の乾燥機が考案された。
このような従来の乾燥機は、規模が比較的大きく、構造は鉄骨造で外部や内部に鉄板やステンレス板を貼り付けたものが主流である。人口乾燥で、短時間に多量の木材を乾燥させることが求められ、また、高温、高圧の環境下での乾燥工程では、木材から排出される細胞液やタールなどで、床が濡れたり、汚れたりする等、設備に大きな負荷が掛かかることから、強度、耐久性、耐腐食性が求められるため、規模が大きく、鉄骨やステンレス製のものが多く使用されている。
【0004】
これらの問題点を解決するために、(特許文献1)には「水蒸気ボイラーによって供給される水蒸気と空気送風機によって供給される空気を電磁誘導加熱装置によって消音し、熱媒体として乾燥室内で短時間で均質乾燥させる木材装置」が開示されている。
また、(特許文献2)には「建築資材用角柱の乾燥工程において、熱風乾燥工程の前処理として、マイクロ波エネルギーを用いて原木の内部の温度を55℃から100℃程度に上昇させ、且つ木材の内圧を上げた後、温度、湿度へ制御出来る熱風乾燥室に送り込み木材の水分を原木の木口より蒸発させて原木丸太のまま乾燥させる木材の乾燥方法」が開示されている。
(特許文献3)には「マイクロ波のエネルギーによって原木の内部温度を50℃〜100℃に上昇させ、且つ内部の圧力を上昇させる、マイクロ波による原木の内部温度昇温、内部圧力昇圧装置と、予め設定した湿度及び温度にて室内を制御出来る乾燥室より構成される木材の乾燥装置」が開示されている。
(特許文献4)には「乾燥室内の上部に設けられたダクトの吹出口から80〜150℃の熱風を、風速0.1〜1m/secで木材に吹き付け、乾燥させることを特徴とする木材の乾燥方法」が開示されている。
(特許文献5)には「木材乾燥機が加熱装置(ヒーター)、加湿装置(蒸煮パイプ)、送風装置(プロペラファン)、(排気熱回収式)熱交換装置を備え、さらに木材の表層部と中心部との材温と含水率とを計測する各センサーを備え、各センサーの計測値に基づいて木材乾燥機室内の雰囲気の温度と湿度と工程間移行を制御する制御装置を備えることを特徴とする木材乾燥装置」が開示されている。
(特許文献6)には「天井部、側壁部及び床部が外壁と内壁により二重構造に形成された乾燥室と、乾燥室の前面壁部に配設された密閉式の開閉扉と、外壁と内壁の間に配設された断熱層と、乾燥室の後面壁側に配設された除湿機と、除湿機と連設された室外圧縮機と、乾燥室に連設され乾燥室内を脱気する室外真空ポンプと、複数の風孔が穿設され乾燥室の天井部及び側壁部の内壁と所定の間隔で配設されて風路を形成する整流用中子と、乾燥室の天井部及び側壁部の内壁にそれぞれ1以上配設された循環ファンと、乾燥される木材等生物が積載される台車と、除湿機に連設され乾燥室外に木材等生物から取り出した水分を採取する取水口を有する取水管と、乾燥室内の温度を測定する温度センサと、乾燥室内の湿度を測定する湿度センサと、乾燥室内の減圧度を測定する圧力センサと、を備えていることを特徴とする木材等生物乾燥機」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-110883号公報
【特許文献2】特開平6-180183号公報
【特許文献3】特開平6-174368号公報
【特許文献4】特開平11-63823号公報
【特許文献5】特開2002-86407号公報
【特許文献6】特開2004−306579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の自然乾燥、および、人工乾燥方法では、以下のような課題を有していた。
(1)自然乾燥では、乾燥に時間が掛かるため、広大な保管場所の確保や長期に渡る乾燥期間中の管理費が膨大にかかる等の課題があった。
(2)高温蒸気乾燥機では、温度を100℃以上に上げて乾燥させるため、乾燥スピードは上がるが、高温乾燥の結果、内部の細胞液や成分までもが抽出され、木材表面が黒く変色し、香りは蒸散し、表面は硬化し、木材の強度は劣化するという課題があった。また、高温蒸気乾燥機では、蒸気発生装置が必要となるため、設備費が高くなり、重油を使用することから、原油の値上げにより燃料コストも高くなるという課題があった。
(3)バイオマス発電を使った高温乾燥機があるが、設備費が高くかかるため、費用対効果の点で課題があった。マイクロ波を使った乾燥機は、高出力の電源設備が必要で、電磁波をまんべんなく当てるために、材料をフックに一本ずつ吊るす等の作業が必要であった。そのため、作業能率が悪く、コストアップとなっていた。また、高温により、乾燥室が汚れる、仕上がりの色が変色するという課題があった。また、マイクロ波や、高周波を使用した乾燥機では、乾燥中に多くの電力を消費するため、ランニングコストが高くつくという課題があった。
(4)減圧方式や真空方式の乾燥機では、高度な付帯設備や強固な乾燥機本体を必要とするため設備費が大きくなりすぎ、乾燥機が大型でないと費用対効果が上がらないという課題があった。しかし、装置が大型になると、建設費が高くなるだけでなく、建設場所が限られ、搬送性、可搬性も低下する。その結果、未乾燥材を乾燥機がある場所まで運搬しなければならないが、未乾燥材では重量の半分近くを水分が占めているため、運搬費用が高くなるという課題があった。また、構造的な観点からは、従来の乾燥方法では、乾燥機を低コストの木造にすることは、強度、耐久性、耐腐食性などの問題があり、維持管理、コストの点からも実現が難しかった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、乾燥温度を高温にしないことで、乾燥後の木材の反りやひび割れ、収縮、曲がりなどの欠陥の発生を少なくし、表面の光沢や香りもそのまま残すことで、商品としての価値を上げることができ、高品質性に優れると共に、低温での乾燥に加え、乾燥機全体を断熱層で囲っていることから必要なエネルギーが小さく、さらに自然エネルギーも利用するので、省エネルギー性、環境保護性に優れ、装置本体の構造や内外部の仕上げ材を木造とすることで、設置しやすく、蒸気発生装置や過大な電気設備が必要ないことから、設備投資が少なくて済み、全体として木材乾燥にかかるコストを抑えることができ、設備導入しやすく、設置自在性、量産性に優れる木材乾燥機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の木材乾燥機は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の木材乾燥機は、天井部、壁部、床部が、外壁と内壁で2重に形成され前記外壁と前記内壁の間に断熱層を有する乾燥室と、前記乾燥室に収容される木材の加熱及び冷却を行う温度調整装置と、を備え、前記温度調整装置による木材の加熱と冷却を交互に繰返す構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)天井部、壁部、床部が、外壁と内壁で2重に形成され外壁と内壁の間に断熱層を有する乾燥室と、乾燥室に収容される木材の加熱及び冷却を行う温度調整装置を備えることにより、外部の温湿度環境に左右され難く、乾燥室内を所望の温度で安定的に保つことができ、省エネルギー性に優れる。
(2)温度調整装置による木材の加熱と冷却を交互に繰返すことにより、加熱後の木材表面からの蒸散スピードを落とし、木材表面部と木材内部との水分量の差を縮めて、木材全体を徐々に均一に乾燥させ、割れや反りが発生することを防止でき、乾燥後の木材の均質性、高品質性に優れる。
【0009】
ここで、乾燥室の出入口には密閉式の開閉扉が設けられるが、乾燥室の天井部、壁部、床部と同様に、断熱性を有するものを用いることにより、乾燥室全体としての断熱効果に優れ、乾燥室内の温度を安定的に保つことができ、省エネルギー性を向上させることができる。開閉扉は、片開きでも、両開き(観音扉)でもよいし、引き戸式でもよい。
木材乾燥の工程では、木材を暖めることにより木材表面部から水分が空気中に蒸散し、木材内部の水分は木材表面部との水分の均衡を保つために表面部に移動し、木材全体の乾燥が進む。この時、木材を暖める温度が高すぎたり、短時間で急激に表面部のみを暖めたりすると、木材表面部からの蒸散に対して、木材内部からの水分の移動が追いつかず、木材表面部と木材内部との水分量の差が生じることになり、この差が大きくなり過ぎると木材に割れや反りが発生することが分かっている。
本発明の木材乾燥機においては、木材の加熱及び冷却を行う温度調整装置を備えており、所望の期間、木材を暖め(加熱し)た後、暖めることを中止し、冷却する。この冷却する期間を設定することによって、乾燥室内の空気中の飽和水蒸気量が下がり、時間とともに乾燥室内の空気の乾燥が進んで、木材表面部から水分を奪うが、この間、木材の表面温度が低いので、木材表面部からの水分の蒸散は少なく、木材内部と木材表面部の水分量の差が縮まり、均等化される。
よって、所定の時間ずつ加熱(暖め)と冷却を交互に繰返しながら乾燥を進めることにより、木材の表面部と内部での水分量の偏りをなくし、乾燥過程での木材の割れやヒビ割れを防止しながら、効果的に均一な乾燥を促進することができる。
【0010】
温度調整装置は木材の加熱及び冷却を選択的に行うことができるものであればよい。よって、エアコンやファンコイルユニットのように一台で加熱と冷却の両方の機能を備えていてもよいし、加熱器と冷却器を別々に備えていてもよい。加熱器としては、シーズヒータなどの電熱器やラジエーターなどの温熱源と送風機を組合せて温風を送風するもの、温風扇などのように単独で温風を送風するものなどを用いることができる。また、冷却器としては、ラジエーターなどの冷熱源と送風機を組合せて冷風を送風するもの、冷風扇などのように単独で冷風を送風するものなどを用いることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の木材乾燥機であって、前記乾燥室内に外気を導入する外気導入ファンと、前記乾燥室内の空気を前記乾燥室の外に排出する室内空気排出ファンと、を備え、前記温度調整装置による加熱開始時又は加熱途中に前記外気導入ファンによって前記乾燥室内に前記乾燥室内の温度と同等以上の温かい外気を導入すると共に前記室内空気排出ファンによって前記乾燥室内の空気を前記乾燥室の外に排出し、前記温度調整装置による冷却開始時又は冷却途中に前記外気導入ファンによって前記乾燥室内に前記乾燥室内の温度と同等以下の冷たい外気を導入すると共に前記室内空気排出ファンによって前記乾燥室内の空気を前記乾燥室の外に排出する構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)乾燥室内に外気を導入する外気導入ファンと、乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出する室内空気排出ファンを備え、温度調整装置による加熱開始時又は加熱途中に外気導入ファンによって乾燥室内に乾燥室内の温度と同等以上の温かい外気を導入すると共に室内空気排出ファンによって乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出することにより、外気を有効に利用して、乾燥室内を暖めることができるので、加熱に必要な投入エネルギーを低減することができ、省エネルギー性、加熱の効率性に優れる。
(2)乾燥室内に外気を導入する外気導入ファンと、乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出する室内空気排出ファンを備え、温度調整装置による冷却開始時又は冷却途中に外気導入ファンによって乾燥室内に乾燥室内の温度と同等以下の冷たい外気を導入すると共に、室内空気排出ファンによって乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出することにより、外気を有効に利用して、乾燥室内を冷やすことができるので、冷却に必要な投入エネルギーを低減することができ、省エネルギー性、冷却の効率性に優れる。
(3)温度調整装置により所定の加熱(暖め)の期間を維持した後、冷却開始時に外気導入ファンによって乾燥室内に乾燥室内の温度と同等以下の冷たい外気を導入すると共に、室内空気排出ファンによって乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出することで、乾燥室内の湿気を外部に送り出すことができるので、次工程の冷却期間の前準備を短時間で速やかに行うことができ、運転の効率性に優れる。
【0012】
ここで、加熱(暖め)、冷却及び外気導入の工程のそれぞれの期間(時間)は、木材の種類、木材伐採後の経過時間、乾燥室内に搬入した時の含水率などにより、適宜、選択して組合せることができる。
特に、加熱(暖め)、外気導入、冷却、外気吸入の4つの工程を1サイクルとし、このサイクルを繰返すものが好適に用いられる。このとき、加熱(暖め)から冷却へ移行する間の外気導入の時期を、外気温が低い時に行うようにサイクルを組むことで、次の冷却の工程に投入するエネルギーを少なくすることができる。また、冷却から加熱(暖め)へ移行する間の外気導入の時期を、外気温が高い時に行うようにサイクルを組むことで、次の加熱(暖め)の工程に投入するエネルギーを少なくすることができる。
尚、冷却開始時(加熱終了後)や加熱開始時(冷却終了後)だけでなく、加熱途中や冷却途中にも外気導入を行うことにより、自然エネルギーも併用しながら、乾燥を進める方法とすることができ、より一層、乾燥に必要なエネルギーを小さくでき、省エネルギー性、環境保護性に優れる。
【0013】
梁材と板材などのように乾燥する木材の1本当たりの体積に差があると、潜熱量に差が生じ、乾燥室内の温度を上昇下降させるためのエネルギーに大きく影響する。本発明では、温度調整装置の発生エネルギー(加熱や冷却の出力)の最大値が決まっていることから、搬入時の含水率、木材のサイズ、形状などによって、サイクルの時間設定、回数を適宜変更することが好ましい。また、サイクルの時間設定、回数は、乾燥機設置場所の季節毎の気温、降雨の状況によっても、変更し、また、夏季の高い温度、冬季の低い温度、同一季節でも日中の熱気、夜間の冷気、外気の湿度などを考慮して、変更することが望ましい。
尚、1サイクルは、暖める(加熱)期間と冷却期間が、各々10時間〜24時間の範囲であることが望ましい。標準的な1サイクルの時間設定としては、10時間加熱、2時間外気導入、10時間冷却、2時間外気導入であるが、これに限定されるものではない。特に、乾燥初期においては、木材の水分量が大きい材料の場合、1サイクルを24時間以上とすることもできる。また、乾燥の初期では1サイクルの時間を短くし、終期付近では1サイクルの時間を長くするといったように、乾燥の経過(進行状況)により1サイクルの時間を変更(調整)することにより、安定した乾燥を行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の木材乾燥機であって、前記温度調整装置が、温熱源と、冷熱源と、前記温熱源及び前記冷熱源に送風する空気循環ファンと、除湿器と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)温度調整装置が、温熱源と、冷熱源と、温熱源及び冷熱源に送風する空気循環ファンを有するので、温熱源と冷熱源のオン、オフを切替えるだけで、乾燥室内を暖める期間と冷却する期間を簡単に設定することができ、操作性、制御の容易性に優れる。
(2)除湿機を有することにより、乾燥室内の湿気を取り除いて乾燥を促進することができ、乾燥の効率性に優れる。
【0015】
ここで、温熱源及び冷熱源は、木材乾燥機の制御盤に設置されるスイッチによってオン、オフを切替えるものが好適に用いられる。また、温熱源及び冷熱源の数や配置は、適宜、選択することができる。尚、乾燥室の内部に温度センサーを設け、温度センサーからの信号に基づいて温熱源及び冷熱源のオン、オフを切替えることにより、乾燥室内の温度を正確に管理することができ、動作の安定性、信頼性に優れる。温度センサーの数や配置は、適宜、選択することができ、温熱源及び冷熱源に取付けることもできる。
空気循環ファンの数や配置は、温熱源及び冷熱源の数や大きさ、配置に応じて、適宜、選択することができるが、温熱源や冷熱源の後部に配置することにより、温風や冷風を発生させ、乾燥室内に送り込んで、乾燥室内の温度を調整することができる。尚、空気循環ファンは常に作動させて、乾燥室内の空気を循環させることができる。
除湿機は、乾燥室内の湿度に応じて、オン、オフを切替えることもできるが、木材乾燥機の運転中(木材の乾燥期間中)、常に作動するようにすれば、制御が容易で取扱い性、除湿の確実性に優れる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の木材乾燥機であって、前記乾燥室が、前記天井部より下方に前記天井部と間隔を空けて配設された下部天井を有し、前記温度調整装置の前記温熱源と、前記冷熱源と、前記空気循環ファンが、前記天井部と前記下部天井の間に配設された構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)乾燥室が、天井部より下方に天井部と間隔を空けて配設された下部天井を有することにより、天井と下部天井の間を、電気配線等の設置スペースとして使用することができるので、乾燥室の内部を有効に利用して、木材を効率良く収容することができ、使用性、乾燥作業の効率性に優れる。
(2)温度調整装置の温熱源と、冷熱源と、空気循環ファンが、天井部と下部天井の間に配設されることにより、乾燥室内のスペースを有効利用することができ、空気の循環にも有用で、乾燥を促進することができ、乾燥の効率性、省エネルギー性に優れる。
【0017】
ここで、空気循環ファンは、乾燥室及び温熱源や冷熱源の大きさによって、必要数を決定することができる。複数の温熱源や冷熱源に対し、1個の空気循環ファンで空気を送ることもできるが、前述したように温熱源や冷熱源の後部に各1個ずつ空気循環ファンを配置することにより、確実に温風や冷風を発生させ、乾燥室全体に斑なく効率的に流入させることができる。尚、木材の長さ方向に対して、直角に風を当てるようにすることが空気循環ファンの適切な配置方法である。木材の長さ方向と平行に風を当てた場合、木口から急激に水分が失われ、長さ方向中央部を十分に乾燥することができず、乾燥が不均一になるためである。
例えば、6mの長さの木材を乾燥する場合、乾燥室の長さを概ね、6.5〜7.0m程にするとよいが、その場合の空気循環ファンの数は4〜8個にすることが望ましい。空気循環ファンの数が4個より少なくなるにつれ、風量が弱まり、空気の循環量が不足して、乾燥の効率が低下しやすくなる傾向があり、8個より大きくなるにつれ、配置が困難になると共に、消費エネルギーが増大しやすくなる傾向があり、いずれも好ましくない。
また、空気循環ファンを利用する際に、風量の調節が可能なコントロール装置を付属することで、乾燥初期の含水率が多い場合は、大きな風量とし、その後、風量が大きすぎる場合は、適切な風量に調整することができ、運転の効率性、汎用性に優れる。空気循環ファンの種類は、乾燥室のような密閉空間においては、有圧換気扇と呼ばれるものが有効である。乾燥室の大きさなどによっても異なるが、空気循環ファンのサイズは、羽径が25〜30cm、1個当たりの風量は、1,000〜1,500CMHの範囲のものが好ましい。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の木材乾燥機であって、前記乾燥室内の空気を攪拌するための扇風機と、前記乾燥室内の温湿度を測定する温湿度測定器と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1項の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)乾燥室内の空気を攪拌するための扇風機を有することにより、乾燥室内の空気を攪拌して乾燥室内全体の温度・湿度の偏りを少なくし、乾燥室内の空気を斑なく効率的に暖めたり、冷やしたりすることができるので、木材を包む雰囲気を均等な状態にして、個々の木材の水分蒸散量を均等に保つことができ、乾燥後の品質のばらつきが少なく、乾燥の均一性、効率性に優れる。
(2)乾燥室内の温湿度を測定する温湿度測定器を有することにより、常に乾燥室内の状態(温湿度)を監視することができるので、乾燥室内を所望の温度、湿度に確実に維持することができ、動作の安定性、確実性に優れる。
【0019】
ここで、扇風機の数や大きさ、配置は、乾燥室の大きさや形状などに応じて、適宜、選択することができる。例えば、長さ6.5mの乾燥室に対しては、4〜10個程度の扇風機を配置することが好ましい。尚、扇風機は、前述の空気循環ファンと同様に、風量調節可能なコントロール装置を付属することで適切な風量を供給することができ、汎用性に優れる。特に、木材の量や種類によって風量を調整することが好ましい。また、扇風機のサイズは、羽径が30〜60cm、風量1,500〜4,000CMHの範囲のものが好ましい。
尚、扇風機は、首振り機能により風向きを調整できるものが好ましいが、送風方向(風向き)は、木材の側面から風が当るようにし、木口に風を当てることは避けるのが望ましい。前述のように、木口から急激に乾燥が進行するのを防ぐためである。
温湿度計の数や配置は適宜、選択することができるが、乾燥室の複数箇所に取付けることが好ましい。乾燥室内の温湿度の分布に応じて、風量や風向きを調整し、木材を均一に乾燥させるためである。乾燥室の大きさにもよるが4〜8箇所程度が好ましい。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の木材乾燥機であって、前記乾燥室が、木造建築物である構成を有している。
この構成により、請求項1乃至5の内いずれか1項の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)乾燥室が、木造建築物であることにより、建築資材の供給及び設計・加工・組み立てが容易で、建築コストも低く抑えることができ、量産性に優れる。
(2)乾燥室を木造建築物とすることにより、従来の減圧方式や真空方式の乾燥機に比べて規模を小さくすることができ、伐採場所から比較的近い山間部などにも設置することが可能で、設置自在性に優れ、利用度を高めることができ、乾燥木材の生産性を向上させることができる。
ここで、乾燥室を製造する際に使用する木材として、木材乾燥機の設置箇所付近で生産さえる木材を使用することにより、地産地消を実現でき、金属製に比べ、製造時の省エネルギー性に優れる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の木材乾燥機であって、前記温度調整装置により木材を加熱する時の前記乾燥室内の温度が、60℃から35℃であり、前記温度調整装置により木材を冷却する時の前記乾燥室内の温度が、10℃から0℃である構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1項の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)温度調整装置により木材を加熱する時の乾燥室内の温度が、60℃から35℃であり、温度調整装置により木材を冷却する時の乾燥室内の温度が、10℃から0℃であることにより、木材が高温に晒されることがないので、乾燥後の木材の反りやひび割れ、収縮、曲がりなどの欠陥の発生が少なく、表面の光沢や香りもそのまま残り、商品としての価値が高い乾燥木材を得ることができ、実用性、信頼性に優れる。
【0022】
ここで、木材を暖める(加熱する)期間の乾燥室内の温度は、60℃から35℃の範囲が好ましい。また、木材を冷却する期間の乾燥室内の温度は、10℃から0℃の範囲が望ましい。
木材を暖める時の温度が60℃より高くなるにつれ、木材から精油やタール等の成分が滲出し、乾燥後の木材が変色したり、ツヤ香りがなくなったり、強度が弱まるなどして、品質が低下しやすくなる傾向があり、また温度が35℃より低くなるにつれ、木材の表面部からの水分の蒸散が少なくなって乾燥に時間がかかり、乾燥の効率性が低下しやすくなる傾向があり、いずれも好ましくない。
また、木材を冷却する時の温度が10℃より高くなるにつれ、暖める時の温度との差が小さくなり、木材表面部からの水分の蒸散スピードが落ち難く、木材内部の水分が木材表面部に十分に移動せずに乾燥の均一性が低下しやすくなると共に、木材表面部の温度のみが上がり、内部との温度差が大きくなって、木材内部にひずみを発生させ、割れや反りを生じやすくなる傾向があり、また温度が0℃より低くなるにつれ、木材の表面部が氷結しやすく、次工程の暖める期間の開始から所望の温度になるまでの時間がかかり、乾燥時間が長くなって乾燥の効率性、省エネルギー性が低下しやすくなる傾向があり、いずれも好ましくない。
本発明の木材乾燥機は、低温かつ一気圧下での処理を行うので、従来の高温蒸気乾燥機などに比べ設備が過大にならず、量産性、設置自在性に優れ、かつ乾燥工程に必要なエネルギーが小さくて済むので、省エネルギー性、環境保護性に優れる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)乾燥過程における木材表面部と木材内部との水分量の差を縮めて、木材全体を徐々に均一に乾燥させ、割れや反りが発生することを防止でき、乾燥後の木材の均質性、高品質性に優れた木材乾燥機を提供することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)外気を有効に利用して、乾燥室内を暖めたり、冷やしたりすることができ、加熱や冷却に必要な投入エネルギーを低減することができる省エネルギー性、冷却の効率性に優れた木材乾燥機を提供することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)簡単な操作で乾燥室内を暖める期間と冷却する期間を設定することができる操作性、制御の容易性に優れた木材乾燥機を提供することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)乾燥室の内部を有効に利用して、木材を効率良く収容することができる使用性、乾燥作業の効率性に優れた木材乾燥機を提供することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)乾燥室内全体の温度・湿度の偏りが少なく、乾燥室内の空気を斑なく効率的に暖めたり、冷やしたりすることができ、木材を包む雰囲気が均等で、個々の木材の水分蒸散量を均等に保つことができ、乾燥後の木材の品質にばらつきが発生し難く、乾燥の均一性、効率性に優れた木材乾燥機を提供することができる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)建築資材の供給及び設計・加工・組み立てが容易で、建築コストが低く、小規模で量産性、設置自在性に優れ、乾燥木材の生産性に優れた木材乾燥機を提供することができる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)高温に晒されることがなく、乾燥後の木材の反りやひび割れ、収縮、曲がりなどの欠陥の発生が少なく、表面の光沢や香りがそのまま残り、商品としての価値が高い乾燥木材を得ることができる実用性、信頼性に優れた木材乾燥機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1の木材乾燥機の要部断面平面図
【図2】実施の形態1の木材乾燥機の要部断面側面図
【図3】実施の形態1の木材乾燥機の乾燥室内における木材の収容状態及び空気の循環を示す要部断面正面図
【図4】実施の形態1の木材乾燥機の乾燥室内における木材の収容状態を示す要部断面側面図
【図5】実施の形態1の木材乾燥機の運転計画及び各機器の作動サイクルの一例を示す図
【図6】実施の形態2の木材乾燥機の乾燥室内における空気の循環を示す要部断面正面図
【図7】実施の形態3の木材乾燥機の乾燥室内における木材の収容状態を示す要部断面正面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の木材乾燥機について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1の木材乾燥機の要部断面平面図であり、図2は実施の形態1の木材乾燥機の要部断面側面図であり、図3は実施の形態1の木材乾燥機の乾燥室内における木材の収容状態及び空気の循環を示す要部断面正面図であり、図4は実施の形態1の木材乾燥機の乾燥室内における木材の収容状態を示す要部断面側面図である。
図1及び図2中、1は実施の形態1の木材乾燥機、2は天井部2b、壁部2c、床部2dが外壁と内壁で2重に形成された木材乾燥機1の乾燥室、2aは乾燥室2の前方の出入口に配設された観音開き式の開閉扉、3は天井部2b、壁部2c、床部2dの外壁と内壁の間に形成された断熱層、4は乾燥室2の一側部に配設された木材乾燥機1の除湿機、5は天井部2bと後述する下部天井11の間に配設された木材乾燥機1の温度調整装置、5aはシーズヒーターなどの電熱器を用いた温度調整装置5の温熱源、5bは温熱源5aと交互に配置された温度調整装置5の冷熱源、6は温熱源5a,冷熱源5bに後方から送風する温度調整装置5の空気循環ファン、10は乾燥室2の左右の長手方向の要所に間隔を空けて立設された柱、11は柱10で支持され天井部2bより下方に天井部10と間隔を空けて配設された下部天井、12は乾燥室2の前方側の上部両側に配設され乾燥室2内に外気を導入する外気導入ファン、13は乾燥室2の後方側の上部両側に配設され乾燥室2内の空気を外に排出する室内空気排出ファン、15a,15bは天井部2bと下部天井11の間、及び乾燥室2の両側部に形成された風道である。
【0032】
図中、木材乾燥機1の乾燥室2は、概ね、高さ3.0m、間口3.0m、長さ7.0mのサイズで作製した。設計条件として、高さと間口は事業所毎の1回当たりの乾燥量よって決められる要素である。一方、長さについては、木材の長さの定尺(3.0m、4.0m、6.0m)から考慮して、最大寸法の6.0mに加えて、前後に多少の余裕が必要であることから、本実施の形態は7.0mとした。乾燥室2は、間口寸法に対して、高さが著しく低い場合は、材の積み込み状態が横広くなり、乾燥しようとする材の中間部に風が届きにくくなる恐れがある。よって、間口と高さの比率は、1:1〜1:2位が適切である。
断熱層3にはグラスウールやウレタンなどの断熱材が好適に用いられる。断熱材を施工した後、ビニールシートなどの気密保持材で覆い、乾燥室2内の気密性を高めると、より断熱性能が向上する。この方法は、住宅の高断熱高気密住宅の手法を利用することができる。断熱層3は、乾燥室2全体(天井部2b、壁部2c、床部2d)に設けられている。また、開閉扉2aにも断熱層3が設けられており、乾燥室2本体の断熱層3と同様に断熱効果に優れ、省エネで乾燥室2内の温度を安定的に保つ働きをする。尚、開閉扉2aは、両開きに限らず、引き戸式でもよい。
【0033】
一般的に乾燥室2への材搬入方向としては、狭い間口を搬入口とする方法と、広い間口を搬入口とする方法がある。狭い間口から搬入する方法は、小さなサイズの乾燥室2に適している。この方法の場合は、台車などの上に材料を載せ、乾燥室2に押し込む方法が好適に用いられる。一方、広い間口から搬入する方法では、フォークリフトなどを利用して材を横向きにして搬入することが可能である。この方法は、比較的規模の大きな乾燥室2に適している。
本実施の形態の木材乾燥機1で、一度に乾燥可能な材の体積は、材のサイズにもよるが、概ね20〜25立方メートルである。この体積は、床面積100m〜150m程度の木造住宅、約1〜2棟分の構造材の必要量に相当する。なお、木材乾燥機1のサイズは本実施の形態に限定されるものではなく、設置場所や、事業所毎の事情に合わせて設計を行うことができる。
【0034】
本実施の形態では、乾燥室2は木製とした。構造材、壁仕上げ材、床材、外壁などすべての部材を木材で製作しても良いし、構造材のみを鉄骨造などとしても良い。本発明の木材乾燥機1は、高温蒸気乾燥とは異なり、乾燥室2内の発生圧力が小さく、木材のタール成分などの抽出量が少ない。従って、強度が小さくて良く、汚れる恐れも少ないので、コストの低い木製とすることが可能である。また、発生する水分は、大部分が除湿機4によって排出される。天井部2b、壁部2c、床部2dなどの仕上げ材は、むくの木材でも良いし、合板を使用しても良い。
【0035】
天井2bと下部天井11の間に、温熱源5a、冷熱源5b、空気循環ファン6を配設することで、乾燥室2内に機械類の出っ張りなどが無くなり、作業の安全性や能率が高まる。また、木材の搬入に利用する開口部の設置場所も自由に設定できるようになる。
天井部2bと下部天井11の間、及び乾燥室2の両側部に風道15a,15bが形成されていることにより、温熱源5a又は冷熱源5bから送り出される風は、空気循環ファン6によって乾燥室2内へ効率よく送り込まれる。
尚、本実施の形態では、柱10によって下部天井11を支持する構造としたが、下部天井11の取り付け方法はこれに限定されるものではなく、天井部2bから吊り下げてもよい。
【0036】
以上のように構成された実施の形態1の木材乾燥機の使用方法について説明する。
図3及び図4中、20は乾燥する木材25を桟積みした状態で乾燥室2内に搬送、収容する台車、26は木材25を間隔を空けて積むための桟木、27は木材25と木材25の間に形成された風道である。
乾燥過程で、木材25の量が著しく多い場合や、木材25が整然と積み込まれていない場合は、木材25に均等に風が当たりにくくなり、好ましくない。
本実施の形態では、図3及び図4に示すように、木材25を並べる際に、縦横方向ともに、木材25と木材25との間に桟木26を挟んで隙間を確保した。隙間は、30mm〜50mmが好ましい。これにより、木材25と木材25との間に風道27を確保することができ、中央部にまで風が通りやすくなり、全ての木材25を斑なく均一に乾燥できる。
尚、乾燥過程では、木材25の横から風が当たるように材を配置することが望ましく、著しく木口から風が当たるような方法は好ましくない。木口方向に著しく風が当たった場合は、木材25に割れが発生する恐れがあるためである。よって、空気循環ファン6によって発生する風の方向を調整することが望ましい。
本実施の形態では、台車20を利用して木材25を搬入したが、必ずしも台車20は必要ではない。台車20を使用しない場合は、フォークリフトを使用してもよいし、人力で運搬してもよい。
【0037】
図5は実施の形態1の木材乾燥機の運転計画及び各機器の作動サイクルの一例を示す図である。
図5中、30は乾燥室2内の温度を示すグラフ、31は外気温を示すグラフ、32は温熱源の作動状態、33は冷熱源の作動状態を示す図、34は外気導入ファンの作動状態を示す図、35は室内空気排出ファンの作動状態を示す図、36は空気循環ファンの作動状態を示す図、37は除湿機の作動状態を示す図である。
図5において、乾燥時の温度30は、60℃〜0℃の範囲内で変動させている。この設定の温度内で、乾燥室2内を、暖める期間と、冷却する期間を繰り返しながら、所望の含水率になるまで乾燥を続ける。この作動時間は、各機器に接続されたタイマーによって制御する。
目標とする材の含水率は、20%以下、好ましくは18%以下である。
図5の時間軸(横軸)は24時間が1サイクルで、2サイクル分の48時間を示しているが、材が所望の含水率となるまで、必要時間数これを繰り返すことになる。木材乾燥機1の利用日数は、樹種、乾燥機搬入時の材の含水率、材のサイズなどによって異なるが、一般的には厚さ60mm程度の板材であれば、概ね7日間、サイズ120×360mm、初期含水率が30%程度の梁材などでは、概ね10〜20日間で目標の含水率が得られる。ただし、材種や初期含水率、部位によっては、所望の含水率になるまでに20日以上必要となることもある。
したがって、乾燥中、定期的に木材25の含水率を測定し、乾燥の状態を確認しながら乾燥を実施し、所望の含水率に達した時を乾燥終了とする。
【0038】
図5の運転計画は、1サイクルを24時間として、それを繰り返す標準的な乾燥工程を示している。実際の木材乾燥機1の動作においては、樹種や含水率、外気の温度状態によって、1サイクルを36時間又は、48時間又は任意時間とする方法がとられる。さらに、含水率の高い乾燥初期のみ、48時間サイクルを採用し、その後、36時間、24時間又は任意時間と変更し、段階的に短時間のサイクルとする方法もとられる。
図5において、外気温を表す31の線で示すように、夜間や昼間の気温は変動する。この気温との関係を考慮し、外気導入時間をあわせるようにサイクルを組む。設置場所にもよるが、標準設定最高温度の60℃は、夏季の昼間の気温よりもやや高い温度であり、標準設定最低温度の0℃は、冬季の夜間の気温に近い温度である。暖める期間への切り替え時は、暖かい外気を取り入れ、冷却する期間への切り替え時は、冷たい外気を積極的に取り入れることで、より省エネルギー性を高めることができる。なお、山間部では夜間0℃以下となることが期待され、冷却初期の外気導入は、一層効果的である。
【0039】
図5において、外気導入ファンの作動状態を示す34、室内空気排出ファンの作動状態を示す35の図を見ると、作動時間が2時間に設定されているが、木材乾燥機1が設置されている地域の温度分布や環境状況に応じて適宜、縮めたり伸ばしたりして省エネサイクルを設定する。冬季は、外気導入ファンの作動状態34を冷熱源作動期間(冷熱源の作動状態を示す33を参照)と同じ時間、ONの状態としてもよい。外気導入ファン12と室内空気排出ファン13は連動しており、タイマーや温度センサーによって作動時間を設定することができる。夏季においては昼間の熱気、冬季においては夜間の冷気を積極的に利用することが好ましく、設置場所の気象状況を調査の上、作動時間を設定することが望ましい。
【0040】
実施の形態1における木材乾燥機によれば、以下の作用を有する。
(1)天井部、壁部、床部が、外壁と内壁で2重に形成され外壁と内壁の間に断熱層を有する乾燥室と、乾燥室に収容される木材の加熱及び冷却を行う温度調整装置を備えることにより、外部の温湿度環境に左右され難く、乾燥室内を所望の温度で安定的に保つことができ、省エネルギー性に優れる。
(2)温度調整装置による木材の加熱と冷却を交互に繰返すことにより、加熱後の木材表面からの蒸散スピードを落とし、木材表面部と木材内部との水分量の差を縮めて、木材全体を徐々に均一に乾燥させ、割れや反りが発生することを防止でき、乾燥後の木材の均質性、高品質性に優れる。
(3)乾燥室内に外気を導入する外気導入ファンと、乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出する室内空気排出ファンを備え、温度調整装置による加熱開始時又は加熱途中に外気導入ファンによって乾燥室内に乾燥室内の温度と同等以上の温かい外気を導入すると共に室内空気排出ファンによって乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出することにより、外気を有効に利用して、乾燥室内を暖めることができるので、加熱に必要な投入エネルギーを低減することができ、省エネルギー性、加熱の効率性に優れる。
(4)乾燥室内に外気を導入する外気導入ファンと、乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出する室内空気排出ファンを備え、温度調整装置による冷却開始時又は冷却途中に外気導入ファンによって乾燥室内に乾燥室内の温度と同等以下の冷たい外気を導入すると共に、室内空気排出ファンによって乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出することにより、外気を有効に利用して、乾燥室内を冷やすことができるので、冷却に必要な投入エネルギーを低減することができ、省エネルギー性、冷却の効率性に優れる。
(5)温度調整装置により所定の加熱(暖め)の期間を維持した後、冷却開始時に外気導入ファンによって乾燥室内に乾燥室内の温度と同等以下の冷たい外気を導入すると共に、室内空気排出ファンによって乾燥室内の空気を乾燥室の外に排出することで、乾燥室内の湿気を外部に送り出すことができるので、次工程の冷却期間の前準備を短時間で速やかに行うことができ、運転の効率性に優れる。
(6)温度調整装置が、温熱源と、冷熱源と、温熱源及び冷熱源に送風する空気循環ファンを有するので、温熱源と冷熱源のオン、オフを切替えるだけで、乾燥室内を暖める期間と冷却する期間を簡単に設定することができ、操作性、制御の容易性に優れる。
(7)除湿機を有することにより、乾燥室内の湿気を取り除いて乾燥を促進することができ、乾燥の効率性に優れる。
(8)乾燥室が、天井部より下方に天井部と間隔を空けて配設された下部天井を有することにより、天井と下部天井の間を、電気配線等の設置スペースとして使用することができるので、乾燥室の内部を有効に利用して、木材を効率良く収容することができ、使用性、乾燥作業の効率性に優れる。
(9)温度調整装置の温熱源と、冷熱源と、空気循環ファンが、天井部と下部天井の間に配設されることにより、乾燥室内のスペースを有効利用することができ、空気の循環にも有用で、乾燥を促進することができ、乾燥の効率性、省エネルギー性に優れる。
(10)乾燥室が、木造建築物であることにより、建築資材の供給及び設計・加工・組み立てが容易で、建築コストも低く抑えることができ、量産性に優れる。
(11)乾燥室を木造建築物とすることにより、従来の減圧方式や真空方式の乾燥機に比べて規模を小さくすることができ、伐採場所から比較的近い山間部などにも設置することが可能で、設置自在性に優れ、利用度を高めることができ、乾燥木材の生産性を向上させることができる。
(12)温度調整装置により木材を加熱する時の乾燥室内の温度が、60℃から35℃であり、温度調整装置により木材を冷却する時の乾燥室内の温度が、10℃から0℃であることにより、木材が高温に晒されることがないので、乾燥後の木材の反りやひび割れ、収縮、曲がりなどの欠陥の発生が少なく、表面の光沢や香りもそのまま残り、商品としての価値が高い乾燥木材を得ることができ、実用性、信頼性に優れる。
【0041】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における木材乾燥機について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図6は実施の形態2の木材乾燥機の乾燥室内における空気の循環を示す要部断面正面図である。
図6において、実施の形態2における木材乾燥機1Aが実施の形態1と異なるのは、ラジエーターを用いた温熱源5aに接続されたボイラー7と、ラジエーターを用いた冷熱源5bに接続された室外機8を備えている点である。
ボイラー7及び室外機8は乾燥室2の外部に設置し、熱媒又は冷媒を温熱源5a又は冷熱源5bへ送り込む。
【0042】
乾燥室2内を暖めたいときは、ボイラー7で沸かされた熱媒体としての湯を、温熱源5aへ送りその後部に配置した空気循環ファン6を作動させ、温風を送りだす方法がとられる。暖める期間の初期には、外気導入ファン12と空気排出ファン13を作動させ、自然エネルギーも利用する。
尚、温熱源5aはラジエーターに限らず、ファンコイルユニットタイプのものを使用してもよいし、金属管などを配管し、湯を循環させるタイプでもよい。
乾燥室2内を冷却したいときは、室外機8から冷媒を循環させ、冷熱源5bの後部の空気循環ファン6から風を送り、冷風を発生させる。冷却期間の初期にも、外気導入ファン12と空気排出ファン13を作動させることができる。冷熱源5bとしては、ラジエーターに限らず、ファンコイルユニットや、金属管などを配管し、冷媒を循環させるタイプを用いてもよい。
【0043】
実施の形態2における木材乾燥機によれば、実施の形態1と同様の作用を有する。
【0044】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における木材乾燥機について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図7は実施の形態3の木材乾燥機の乾燥室内における木材の収容状態を示す要部断面正面図である。
図7において、実施の形態3における木材乾燥機1Bが実施の形態1と異なるのは、乾燥室2の内部に、空気循環ファン6のほかに、乾燥室2の両側部の風道15bに配設された扇風機28を備えている点と、乾燥室2内の温湿度を測定する温湿度測定器29を備えている点である。
扇風機28を作動させることにより、乾燥室2内の温風または冷風を確実に攪拌し、より効率的に材の間の風道27を風が通り抜けるので、材の乾燥を促進させることができる。
【0045】
図7は、木材25の木口の断面を示している。乾燥の際に発生させる温風または冷風は、材の長手方向から当たるようにすることが好ましいため、乾燥室2の長手方向の壁部2cに扇風機28を設置することが望ましい。扇風機28の発生風量や、設置する数量、位置は、適宜選択することができるが、木材25全体にまんべんなく当たるように配置することが望ましい。
温湿度測定器29を利用して、乾燥室2内の温度、湿度を測定することにより、乾燥室2内の状態を容易に確認することができるので、必要に応じて運転条件を調整することができる。
【0046】
実施の形態2における木材乾燥機によれば、実施の形態1と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)乾燥室内の空気を攪拌するための扇風機を有することにより、乾燥室内の空気を攪拌して乾燥室内全体の温度・湿度の偏りを少なくし、乾燥室内の空気を斑なく効率的に暖めたり、冷やしたりすることができるので、木材を包む雰囲気を均等な状態にして、個々の木材の水分蒸散量を均等に保つことができ、乾燥後の品質のばらつきが少なく、乾燥の均一性、効率性に優れる。
(2)乾燥室内の温湿度を測定する温湿度測定器を有することにより、常に乾燥室内の状態(温湿度)を監視することができるので、乾燥室内を所望の温度、湿度に確実に維持することができ、動作の安定性、確実性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、乾燥温度を高温にしないことで、乾燥後の木材の反りやひび割れ、収縮、曲がりなどの欠陥の発生を少なくし、表面の光沢や香りもそのまま残すことで、商品としての価値を上げることができ、高品質性に優れると共に、低温での乾燥に加え、乾燥機全体を断熱層で囲っていることから必要なエネルギーが小さく、さらに自然エネルギーも利用するので、省エネルギー性、環境保護性に優れ、装置本体の構造や内外部の仕上げ材を木造とすることで、設置しやすく、蒸気発生装置や過大な電気設備が必要ないことから、設備投資が少なくて済み、全体として木材乾燥にかかるコストを抑えることができ、設備導入しやすく、設置自在性、量産性に優れる木材乾燥機の提供を行うことができ、木材が本来有する強度、香り、ツヤを損なうことなく、安価で高品質な乾燥木材の普及に貢献することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B 木材乾燥機
2 乾燥室
2a 開閉扉
2b 天井部
2c 壁部
2d 床部
3 断熱層
4 除湿機
5 温度調整装置
5a 温熱源
5b 冷熱源
6 空気循環ファン
10 柱
11 下部天井
12 外気導入ファン
13 室内空気排出ファン
15a,15b 風道
20 台車
25 木材
26 桟木
27 風道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部、壁部、床部が、外壁と内壁で2重に形成され前記外壁と前記内壁の間に断熱層を有する乾燥室と、前記乾燥室に収容される木材の加熱及び冷却を行う温度調整装置と、を備え、
前記温度調整装置による木材の加熱と冷却を交互に繰返すことを特徴とする木材乾燥機。
【請求項2】
前記乾燥室内に外気を導入する外気導入ファンと、前記乾燥室内の空気を前記乾燥室の外に排出する室内空気排出ファンと、を備え、
前記温度調整装置による加熱開始時又は加熱途中に前記外気導入ファンによって前記乾燥室内に前記乾燥室内の温度と同等以上の温かい外気を導入すると共に前記室内空気排出ファンによって前記乾燥室内の空気を前記乾燥室の外に排出し、前記温度調整装置による冷却開始時又は冷却途中に前記外気導入ファンによって前記乾燥室内に前記乾燥室内の温度と同等以下の冷たい外気を導入すると共に前記室内空気排出ファンによって前記乾燥室内の空気を前記乾燥室の外に排出することを特徴とする請求項1に記載の木材乾燥機。
【請求項3】
前記温度調整装置が、温熱源と、冷熱源と、前記温熱源及び前記冷熱源に送風する空気循環ファンと、除湿器と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の木材乾燥機。
【請求項4】
前記乾燥室が、前記天井部より下方に前記天井部と間隔を空けて配設された下部天井を有し、
前記温度調整装置の前記温熱源と、前記冷熱源と、前記空気循環ファンが、前記天井部と前記下部天井の間に配設されたことを特徴とする請求項3に記載の木材乾燥機。
【請求項5】
前記乾燥室内の空気を攪拌するための扇風機と、前記乾燥室内の温湿度を測定する温湿度測定器と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の木材乾燥機。
【請求項6】
前記乾燥室が、木造建築物であることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の木材乾燥機。
【請求項7】
前記温度調整装置により木材を加熱する時の前記乾燥室内の温度が、60℃から35℃であり、前記温度調整装置により木材を冷却する時の前記乾燥室内の温度が、10℃から0℃であることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の木材乾燥機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−237546(P2012−237546A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−68141(P2012−68141)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(300023257)
【Fターム(参考)】