説明

木材乾燥機およびその乾燥制御方法

【課題】乾燥室内に桟積みされた木材の上側と下側で生じていた乾燥品質のバラツキを防止でき、また、省エネや木材資源の有効活用を図れる木材乾燥機と乾燥制御方法を提供する。
【解決手段】ケーシング121に吸気口122および排気口123を備えるとともに、ケーシング121の内部に、桟積みされた木材1を搬入可能な乾燥室127と、吸気口122から送風機128により導入された外気および/又は循環空気を熱交換して温風を生成する熱交換部129とを備え、送風機128の出口側で乾燥室127の温風入口との間に、乾燥室127内に流入させる温風を予め調圧し整流させる整流調圧室132を設け、乾燥室127の温風入口側に多数個の吐出孔133aを備える整流体133を配置する。乾燥運転中に、乾燥室127内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、排気口123の排気ダンパ126および吸気口122の吸気ダンパ125の各開度を比例制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の乾燥に用いる木材乾燥機とその乾燥制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、乾燥に伴い、材の収縮、寸法の狂い、反り、割れ、ヒビ等が発生することから、伐採後に製材された木材を乾燥させる必要がある。伐採後の木材の含水率は100%以上あり、乾燥により含水率を20%以下に低下させるようにしている。木材の乾燥には天然乾燥と人工乾燥があり、人工乾燥は、乾燥機を用いて短時間で人工的に木材を乾燥させる方法で、種々の方法(蒸気式乾燥、蒸気・高周波複合乾燥、除湿式乾燥、燻煙乾燥、高周波加熱式など)がある。最も一般的な方法は、高温型と呼ばれる蒸気式乾燥(特許文献1、特許文献2参照)である。かかる蒸気式乾燥は、乾燥室内に桟積みされた木材を搬入し、120度前後の高温の蒸気を乾燥室内に供給し、桟積みされた木材間を通過させて循環させ、これにより木材の表面から乾燥を促進し、短時間で木材を乾燥させることができる。また、乾燥をより促進するため、送風機により高温蒸気の風量や風速を上げることで、乾燥時間の短縮を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−38459号公報
【特許文献2】特開2001−162604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、送風機により乾燥室内に桟積みされた木材間を高温の蒸気をして循環させると、桟積みされた上側の木材間と下側の木材間とで風量や風速に差が生じ(上側の木材間は遅く、下側の木材間は速い)、桟積みされた上側の木材と下側の木材との間で乾燥にバラツキが生じるという問題があった。その原因は、桟積みされた木材の入口側で循環により下降する高温蒸気が、底面に衝突する等して上昇する結果、上側の木材間入口付近に負圧空間が形成されることと相まって、上側の木材間を通過する熱風の風量や風速が小さく、下側の木材間を通過する熱風の風量が風速が大きくなるためと考えられる。さらに、このような乾燥のバラツキは、乾燥時間を短縮するため送風機による風量や風速を上げると、より一層大きくなるという問題があった。
【0005】
さらに、高温の蒸気式の熱源は通常ボイラーを用いており、省エネあるいは木材資源の有効活用の観点から、従来の重油に代わる代替燃料への転換が要請されている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、乾燥室内に桟積みされた木材の上側と下側で生じていた乾燥品質のバラツキを防止できる木材乾燥機を提供することを目的とする。また、省エネや木材資源の有効活用を図れる木材乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る木材乾燥機は、ケーシングに吸気口および排気口を備えるとともに、ケーシングの内部に、桟積みされた木材を搬入可能な乾燥室と、吸気口から送風機により導入された外気および/又は循環空気を熱交換して温風を生成する熱交換部とを備え、
送風機の出口側で乾燥室の温風入口との間に、乾燥室内に流入させる温風を予め調圧し整流させる整流調圧室を設けたことを主要な特徴とする。
【0008】
本発明に係る木材乾燥機は、整流調圧室が、乾燥室の温風入口側に多数個の吐出孔を備える整流体を配置してなることを第2の特徴とする。
【0009】
本発明に係る木材乾燥機は、整流体の出口側に吐出後の温風の方向を変化させるスイングフラップを設けることを第3の特徴とする。
【0010】
本発明に係る木材乾燥機は、温水生成装置を備え、熱交換部において、送風機により乾燥室側へ送られた空気を温水生成装置により生成された温水との間で熱交換することを第4の特徴とする。
【0011】
本発明に係る木材乾燥機は、乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、排気量を調整する排気ダンパを排気口に設けることを第5の特徴とする。
【0012】
本発明に係る木材乾燥機は、乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、吸気量を調整する吸気ダンパを吸気口に設けることを第6の特徴とする。
【0013】
本発明に係る木材乾燥機の乾燥制御方法は、木材乾燥機が、ケーシングに吸気口および排気口を備えるとともに、ケーシングの内部に、桟積みした木材を搬入可能な乾燥室と、吸気口から送風機により導入した外気および/又は循環空気を熱交換して温風を生成する熱交換部と、制御部を備え、送風機の出口側で乾燥室の温風入口との間に、乾燥室内に流入させる温風を予め調圧し整流させる整流調圧室を設けるものであって、乾燥運転中に、制御部が、乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、排気口の排気ダンパの開度を比例制御することを主要な特徴とする。
【0014】
本発明に係る木材乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥運転中に、制御部が、乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、吸気口の吸気ダンパの開度を比例制御することを第2の特徴とする。
【0015】
本発明に係る木材乾燥機の乾燥制御方法は、木材乾燥機が、温水生成装置を備え、熱交換部において、送風機により乾燥室側へ送られた空気を温水生成装置により生成された温水との間で熱交換するものであって、乾燥運転中に、温水温度が設定下限値を下回る温度になったとき、制御部が、乾燥室内の相対湿度の変化量に基づき、排気口の排気ダンパおよび吸気口の吸気ダンパの各開度を比例制御する相対湿度運転モードに切り換えることを第3の特徴とする。
【0016】
本発明に係る木材乾燥機の乾燥制御方法は、木材乾燥機が、温水生成装置を備え、熱交換部において、送風機により乾燥室側へ送られた空気を温水生成装置により生成された温水との間で熱交換するものであって、乾燥運転中に、温水温度が設定下限値を下回る温度になったとき、制御部が、設定時間の間、排気口の排気ダンパおよび吸気口の吸気ダンパを全開させる間欠タイマ運転モードに切り換えることを第4の特徴とする。
【0017】
本発明に係る木材乾燥機の乾燥制御方法は、乾燥プログラムに従って、乾燥初期から乾燥後期に至る各工程毎に乾燥室内の乾球温度、湿球温度、乾燥時間が設定され、吸気ダンパの開度が設定下限値を下回る開度になったとき、制御部が、当該工程を中断し、次工程に移行させる次工程ジャンプモードに切り換えることを第5の特徴とする。
【0018】
本発明に係る木材乾燥機の乾燥制御方法は、温風温度を40℃〜70℃に設定することを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る乾燥機によると、送風機の出口側で乾燥室の温風入口との間に、乾燥室内に流入させる温風を予め調圧し整流させる整流調圧室を設けたから、調圧された温風を乾燥室内に吐出させて、桟積みされた木材間でバランスの取れた平均化された風速を得ることができ、安定した乾燥の実現と、乾燥品質のバラツキ防止を図ることができるという優れた効果を奏する。
【0020】
また、木質ペレット等を温水生成の燃料に用いることができるから、木材の製材時に生じる端材の有効利用と燃料コストの削減を図ることができるという優れた効果を奏する。
【0021】
さらに、本発明に係る乾燥機の乾燥制御方法によると、乾燥運転中に、乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、吸気ダンパや排気ダンパの開度を比例制御するようにしたから、乾燥室内で各木材の表面からの蒸散量を適切に排出し、これにより各木材の乾燥を効率よく進行させながら、割れやカビの発生を抑えて優れた品質の乾燥木材を得ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る第1の実施形態を示すもので、木材乾燥機の一部を断面視した側面図、
【図2】図1に示す木材乾燥機のA−A線矢視断面図、
【図3】桟積みされた木材を示す側面、
【図4】乾燥中における飽和曲線に基づく減水率変化の理想曲線を示す図、
【図5】(A)は高温セット処理を実施しない木材乾燥スケジュールの例を示す表、(B)は高温セット処理が実施された木材乾燥スケジュールの例を示す表、
【図6】本発明に係る第2の実施形態を示すもので、木材乾燥機の正断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための第1の実施形態を図1ないし図4を参照して説明する。図1において、符号100は本発明に係る木材乾燥機である。
【0024】
まず、木材乾燥機100の構造を説明する。図1に示すように、木材乾燥機(以下、「乾燥機」という)100には、温水生成装置110および乾燥室ユニット120が併設されている。これら温水生成装置110および乾燥室ユニット120は、制御部140により、温水生成運転および乾燥運転が全体制御されている。
【0025】
温水生成装置110は、温水ボイラ111と、循環ポンプ112と、配管113を備えている。温水ボイラ111は木質系チップを燃料として80℃〜100℃の温水を生成する。生成された温水は循環ポンプ112の駆動により配管113を通して、後述する乾燥室ユニット120内の熱交換部129へ送られるようになっている。熱交換後の温水は、配管113を通り、温水ボイラ111に戻され、再び加熱されて熱交換部129へ送られるようになっている。温水ボイラ111および循環ポンプ112は制御部140からの操作により運転されている。温水ボイラ111で生成される温水の温度は、温水温度検出計114により検出され、制御部140にフィードバックされるようになっている。なお、符号115は煙突を示している。
【0026】
乾燥室ユニット120は、図1および図2に示すように、ケーシング121の上面121aに外気を導入する吸気口122およびケーシング121の側面121b下部に湿潤空気を排出する排気口123を備えている。吸気口122には、駆動モータ124により開度調整される吸気ダンパ125が、排気口123には、吸気量の増減に比例する風圧の増減により自動開閉する風圧式排気ダンパ126が、それぞれ設けられている。吸気ダンパ125は、後述する湿球温度計136により測定された湿球温度の設定値に対する比例帯における変化量に基づき、制御リレーにより駆動される駆動モータ124を介して、開度が比例制御(PI制御)されるようになっている。風圧式排気ダンパ126も結果として、湿球温度の設定値に対する比例帯における変化量に基づき、開度が比例制御されるようになっている。
【0027】
ケーシング121の内部には、桟積みされた木材1を搬入可能な乾燥室127と、吸気口122から送風機128により導入された外気および/または循環空気を温水と熱交換して乾燥室127に供給する温風Wを生成する熱交換部129を備えている。ケーシング121の上面と乾燥室127との間には循環ダクト130により乾燥室127通過後の温風を送風機128側に戻す循環通路131が設けられている。循環通路131と乾燥室127の温風入口との間には熱交換後の温風を予め調圧し整流させる整流調圧室132が設けられている。整流調圧室132は、乾燥室127の温風入口側に、多数個の吐出孔133aを備える整流体133を配置している。送風機128は吸気口122の下流で循環通路131内に配置されている。
【0028】
乾燥室127に搬入される木材1は、図3に示すように、木材載置台134の上面に桟部材2により左右に一定間隔をおいて多数本並べられ、上下に一定間隔をおいて多数本桟積みされており、フォークリフト等によって木材載置台134毎、乾燥室127に搬入されるようになっている。そして、図2に示すように、上下の木材1間の隙間Sを前後方向に温風Wが通過し、各木材1を乾燥させるようになっている。
【0029】
乾燥室127の温風入口に設けられた整流体133は、上下方向(桟積み方向)および水平方向に一定間隔で多数個の吐出孔133aが設けられた多孔板から構成されている。循環通路131内を送風機128の下流側に送られた外気および/又は循環空気は、ケーシング121の側面121b内面に突き当たり下降してケーシング121の底面121cに衝突して上昇し、上側付近に負圧空間が形成され、下側付近に加圧空間が形成される。これにより、整流体133の存在しない従来では、桟積みされた木材1のうち、上側の木材1間を通過する温風の風量および風速が、下側の木材1間を通過する温風の風量および風速に比べて小さく、上下の木材間で風量差および風速差が大きく異なり、乾燥品質にバラツキが生じていたが、乾燥室127の温風入口に、多数の吐出孔133aが上下方向および水平方向に穿設された整流体133が配置されたことにより、各吐出孔133aから吐出される温風の吐出風量および吐出風速が上下間で均一化されるようなった。すなわち、送風機128の出口側に整流調圧室(予圧室)132が形成され、整流調圧室132において上下間で風圧が均一化され、その結果、整流体133の各吐出孔133aから一斉に、整流化され、速度も風量も均一化された温風が乾燥室127に吐出されるようになった。
【0030】
熱交換部129は、配管113から続く多数本の熱交換用菅体129Aから構成され、各熱交換用菅体129Aには多数の熱交換用フィン(図示せず)が設けられている。かかる熱交換部129は、整流調圧室132において、整流体133の手前(上流側)に整流体133と平行に配置されている。
【0031】
乾燥室127には、乾燥室127内の乾燥温度(温風温度)を測定する乾球温度計135と湿球温度を測定する湿球温度計136が、温風入口付近に、それぞれ配置されている。また、ケーシング121内面の四隅には、循環空気の流れを円滑になるように案内するガイド部137がそれぞれ設けられている。
【0032】
制御部140は、前述したように、温水温度検出計114からの温水温度に基づき、温水生成装置110の温水ボイラ111および循環ポンプ112をフィードバック制御する。また、乾燥運転中に、乾燥室127内の乾球温度に基づき、温水ボイラ111および循環ポンプ112をフィードバック制御し、熱交換部129で生成され乾燥室127へ送られる温風の温度を制御する。さらに、制御部140は、乾燥室127内の湿球温度に基づき、吸気ダンパ125による吸気量および排気ダンパ126による排気量の最適調整を行う。より具体的には、乾燥室127内の湿球温度の設定値に対する比例帯における変化量に基づき、吸気ダンパ125の開度量および排気ダンパ126の開度量を比例制御する。さらに、乾燥運転中に、乾球温度計135および湿球温度計136の各温度に基づき、相対湿度を検出する。
【0033】
次に、上記のように構成された乾燥機100の使用方法および乾燥制御方法について、以下に説明する。
【0034】
最初に、乾燥室ユニット120の図示しない扉を開けて、木材載置台134に水平方向および上下方向に多数桟積みされた木材1を、フォークリフト等により木材載置台134毎搬入し、扉を閉める。木材1はここでは一例として一般の構造用板材(スギ、芯なし)を用いる。生木状態の各木材1の含水率は100%ないしそれ以上であり、乾燥操作により含水率を20%以下に低下させる。乾燥操作は、図4に示す飽和曲線に基づく減水率変化の理想曲線(以下、「減水率曲線」という)に沿って含水率が低下するように行なう。図5(A)に生木状態からの乾燥基本スケジュール(プログラム)の例を示す。乾燥運転中、乾球温度は当初50℃を維持し、後半で55℃、60℃と段階的に引き上げる。湿球温度は当初の乾湿球温度差を小さくし、含水率の低下と共に段階的に同温度差を拡大する。
【0035】
まず、温風生成装置110において、木質系チップの燃焼により温水ボイラ111で80〜100℃の温水を生成し、生成された温水を、循環ポンプ112により配管113を通して熱交換部129へと送る。同時に、送風機128の運転により乾燥室127内の空気を循環させる。送風機128により下流に送られた空気は、整流調圧室132内で調圧されると共に、熱交換部129において80〜100℃の温水と熱交換され、50℃の温風として、整流体133の各吐出孔132aから一斉に乾燥室127内に吐出される。温風の吐出流速は3m/s以下の緩やかな流速であることが望ましい。
【0036】
乾燥室127内に吐出された温風は、全体として整流化され、かつ風速および風量が均一化されており、桟積みされた木材1間の隙間Sを均一な速度で通過し、各木材1の表面から水分を奪いつつ、乾燥室127を出て行く。このとき制御部140は、湿球温度計136による湿球温度(検出温度)が設定温度の比例帯(±2℃)の上限値(+2℃)に達すると吸気ダンパ126の開度を全開(100%)し、同湿球温度が設定温度にあるときは吸気ダンパ126の開度を50%に維持し、同湿球温度が比例帯の下限値(−2℃)に至ると吸気ダンパ126の開度を全閉(0%)するように、吸気ダンパ126の開度を比例制御する。
【0037】
乾燥初期は水分蒸散量が多いことから湿球温度が設定値(47.5℃)よりも高め(49.5℃付近またはそれ以上)に推移する。したがって、水分蒸散量の多い乾燥初期は、吸気ダンパ126が全開され、新鮮外気がケーシング121内に導入されると共に、排気ダンパ127が全開され、湿潤空気が排気口123から積極的に排出される。
【0038】
乾燥初期から乾燥中期に至ると、含水率の低下に伴い、各木材1の表面からの水分蒸散量が次第に少なくなる。その結果、湿球温度の設定値に対する変化量が次第に小さくなり、変化量の減少に比例して、吸気ダンパ126および排気ダンパ127の各開度の変化量も減少する。この間、各木材1の含水率が順調に低下する。乾燥室127を通過した温風のうち、排気分以外は、循環空気として循環通路131内を送風機128側へ戻される。
【0039】
乾燥後期に至ると、各木材1の表面からの水分蒸散量は最小となり、湿球温度の設定値に対する変化量も最小となる。このように、乾燥初期から乾燥後期にかけて、各木材1の表面からの水分蒸散量に合わせて、湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、吸気ダンパ126および排気ダンパ127の開度を調整し、排湿量を最適制御することができる。本例の場合、乾燥工程は10日間で終了する。
【0040】
乾燥運転中、熱交換部129に送られる温水は温水温度検出計114により検出されるが、温水温度が設定下限温度(40℃)を下回る温度になったときは、制御部140が、湿球温度に基づき吸気ダンパ126および排気ダンパ127を自動開閉する湿球温度運転モードから、相対湿度に基づき吸気ダンパ126および排気ダンパ127を自動開閉する相対湿度運転モードに切り換える。相対湿度は乾球温度計135および湿球温度計136の各温度から算出される。
【0041】
相対湿度運転モードは、乾燥室127内の相対湿度が設定上限値(70〜80%のうちの任意の値)を上回るとき、吸気ダンパ126および排気ダンパ127を全開させる。温水温度が設定下限温度(40℃)を下回るときは、温風温度が低下(40℃未満)して乾燥室127内の相対湿度(乾燥運転中の乾燥室内の相対湿度は通常30〜70%以下である)が上昇し、70〜80%に至ると、乾燥室127内に凝縮水が発生し、乾燥品質が悪化する。そこで、かかる場合は相対湿度運転モードに移行し、乾燥室127内の相対湿度が設定上限値を上回るとき、吸気ダンパ126および排気ダンパ127を強制的に全開し、乾燥室127内の相対湿度を低下させる。これにより、夜間等、温水ボイラの燃焼管理ができなくなる場合など、温水温度が設定下限温度(40℃)を下回るときは、制御部140が自動的に相対湿度運転モードに切り替え、乾燥室127内の湿度上昇による凝縮を抑制し、乾燥品質の悪化を防止する。
【0042】
温水温度が設定下限温度(40℃)を下回る温度になったとき、制御部140が、前述の湿球温度運転モードから、間欠タイマに基づき吸気ダンパ126および排気ダンパ127を自動開閉する間欠タイマ運転モードに切り換えるようにしてもよい。間欠タイマー運転モードは、設定時間(1時間当たり5〜10分間)に吸気ダンパ126および排気ダンパ127を全開し、乾燥室127内の湿気を強制排出する。当該モードによっても乾燥室127内の湿度上昇による凝縮を抑制し、乾燥品質の悪化を防止することができる。
【0043】
乾燥中期から乾燥後期に至る途中、吸気ダンパ126および排気ダンパ127のいずれか一方(例えば吸気ダンパ126)の開度が設定下限値(例えば10〜20%程度)に達した場合、次工程ジャンプ運転モードに切り換えるようにしてよい。次工程ジャンプ運転モードは、設定された規定の工程時間を経過することなく、吸気ダンパ126の開度が設定下限値に達した場合、次工程に移行することにより、乾燥時間の短縮を図ることができる。なお、制御部140は、前述の工程で、相対湿度運転モード、間欠タイマ運転モードを選択した場合は、吸気ダンパ126および排気ダンパ127のいずれか一方の開度が設定下限値(例えば10〜20%程度)に達した場合であっても、次工程ジャンプ運転モードへの切り替えを中止することができる。
【0044】
乾燥温度(温風温度)は50〜70℃の中低温に設定され、特に冬季の場合は、乾燥負荷が大きくなる傾向がある。この場合、制御部140が、外気温度を外気温度計138により検出し、設定下限値(例えば10℃)を下回るとき、循環ポンプ112の駆動量、すなわち、温水の循環量を増加させるようにしてよい。この場合、循環ポンプ112をインバータにより回転数制御して温水の循環量を増加させるか、あるいは配管113の循環ポンプ112の下流側(送り側)にある制御弁を迂回するバイパス弁を設けて、外気温度が設定下限値を下回るときにバイパス弁を開放して温水の循環量を増加させるようにしてよい。これにより、木材乾燥機100のケーシング121における断熱材強化や熱交換部129の伝熱面積の増加を図ることなく、冬季であっても夏季と同等に熱量を確保できる。設備費用の軽減を図ることができる。
【0045】
本実施形態の木材乾燥機100によると、循環通路131と乾燥室127の温風入口との間に乾燥室127に供給される温風を予め調圧させる整流調圧室132を設けたことにより、調圧された温風が整流体133の各吐出孔133aから乾燥室127内に噴き出され、桟積みされた木材1の上下間、左右間でバランスの取れた平均化された風速が得られる。このように風速が平均化された温風が、各木材1の隙間を通過することにより、安定した乾燥が実現される。すなわち、上下の木材間で乾燥品質にバラツキが生じなくなった。
【0046】
また、乾燥室127内の湿球温度の設定値に対する比例帯における変化量に基づき、吸気ダンパ125および排気ダンパ126の開度を比例制御するようにしたから、乾燥室127内で各木材1の表面からの蒸散量を、図4に示す理想曲線に沿って適切に排出することができ、すなわち、乾燥室127内からの排湿量の最適制御を実現することができ、これにより各木材1の乾燥を効率よく進行させながら、割れやカビの発生を抑制した適正品質の乾燥木材を得ることができる。
【0047】
乾燥室127内に搬入する木材1が芯持ち材、例えば一般の構造用柱材(スギ、芯あり)である場合は、予め高温の蒸気で生木状態の木材が柔らかくなるように熱処理(蒸煮)する高温熱処理(高温セット処理)工程を経ることが望ましい。乾燥室127に搬入した生木状態の芯持ち材は、木材表面が乾燥して縮もうとするが、木材内部はまだ乾燥していないため木材表面に引張りが生じて表面に割れが生じるおそれがある。そこで、乾燥室127内に搬入する前に、高温セット処理工程において、蒸気釜で95℃の蒸気により各木材1を蒸煮して表面を柔らかくし、しかる後、温度を120℃に上げて発汗を促進させ、湿度を急激に下げて表面を乾燥させる。かかる高温セット処理により特に芯持ちの木材表面の割れを効果的に防止できる。
【0048】
図5(B)に高温セット処理を実施した木材(芯持ち材)1の促進乾燥基本スケジュール(プログラム)の例を示す。高温セット処理(95℃を12時間、120℃を12〜20時間)後の木材1は、含水率が55%以下に低下しており、乾燥室127において、乾球温度を60℃の一定温度に維持し、湿球温度は当初の50℃から徐々に40℃まで低下させる。高温セット処理を実施することにより、木材表面に割れを生じることなく、約5日間で乾燥工程を、高温セット処理を含めても約6〜7日間で乾燥を終了させることができる。
【0049】
木材の乾燥工程では、風速(温風速度)が大きいほど乾燥速度が大きくなるが、乾燥速度に対する風速の影響が大きいのは乾燥前半であって、乾燥後半は風速の影響が小さくなる。そこで、乾燥後半の含水率30%以降の風速を低下させる(例えば前半の風速の80%程度又はそれ以下、前半が3m/sのとき、1.5m/s以下に低下させる)、すなわち、送風機128の風量を、木材の含水率測定に基づき低下するように制御することにより省エネルギー操作が可能である。この場合、木材の含水率測定は、電気抵抗式含水率計や高周波式含水率計、マイクロ波式含水率計等の測定器によって測定することができる。
【0050】
図6は、本発明の第2の実施形態を示すもので、乾燥機100’の整流体133の出口側にスイングフラップ150を追加したものである。なお、前記実施形態に示す部材と同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
スイングフラップ150は、整流体133の各吐出孔133aから吐出された温風の方向を上下方向に変化させるもので、支柱151に上下に回動可能な多数枚の可動羽根152が軸部153を介して取り付けられている。各可動羽根152には例えば各軸部153に図示しないチェーンが巻回され、モータを正逆回転させることにより、各可動羽根152を一斉に上下方向にスイングさせ、整流体133の各吐出孔133aから吐出された温風の方向を上下方向に変化させることができる。これにより、乾燥室127内に吐出される温風のムラをより一層無くし(温風の均一化をより促進し)、各木材1の乾燥品質をより均一化することができる。
【0052】
かくして、本発明に係る木材乾燥機によると、各木材の表面から蒸散される水分を乾燥室外へ適切に排出して、各木材の乾燥を効率よく進行させると同時に、表面割れや内部割れ、カビの発生を抑制し、乾燥ムラのない高品質の乾燥木材を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る木材乾燥機およびその乾燥制御方法は、木材を乾燥させる装置および方法として、また、農産物や海産物等を乾燥させる装置および方法としても利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 木材
2 桟部材
100 乾燥機
110 温水生成装置
111 温水ボイラ
112 循環ポンプ
113 配管
114 温水温度検出計
115 煙突
120 乾燥室ユニット
121 ケーシング
122 吸気口
123 排気口
124 駆動モータ
125 吸気ダンパ
126 排気ダンパ
127 乾燥用トレイ
128 送風機
129 熱交換部
129A 熱交換用菅体
130 循環ダクト
131 循環通路
132 整流調圧室
133 整流体
133a 吐出孔
134 木材載置台
135 乾球温度計
136 湿球温度計
137 ガイド部
138 外気温度計
140 制御部
150 スイングフラップ
151 支柱
152 可動羽根
153 軸部
S 桟積みされた木材間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明に係る木材乾燥機は、ケーシングに吸気口および排気口を備えるとともに、ケーシングの内部に、桟積みされた木材を搬入可能な乾燥室と、吸気口から送風機により導入された外気および/又は循環空気を熱交換して温風を生成する熱交換部とを備え、
送風機の出口側で乾燥室の温風入口との間に、乾燥室内に吐出させる温風を予め調圧し整流させる整流調圧室が設けられていることを特徴とする木材乾燥機。
【請求項2】
整流調圧室は、乾燥室の温風入口側に多数個の吐出孔を備える整流体が配置されていることを特徴とする、請求項1記載の木材乾燥機。
【請求項3】
整流体の出口側に吐出後の温風の方向を変化させるスイングフラップが設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の木材乾燥機。
【請求項4】
温水生成装置を備え、熱交換部において、送風機により乾燥室側へ送られた空気が温水生成装置により生成された温水との間で熱交換されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の木材乾燥機。
【請求項5】
乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、排気量を調整する排気ダンパが排気口に設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の木材乾燥機。
【請求項6】
乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、吸気量を調整する吸気ダンパが吸気口に設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の木材乾燥機。
【請求項7】
木材乾燥機の乾燥制御方法において、木材乾燥機が、ケーシングに吸気口および排気口を備えるとともに、ケーシングの内部に、桟積みした木材を搬入可能な乾燥室と、吸気口から送風機により導入した外気および/又は循環空気を熱交換して温風を生成する熱交換部と、制御部を備え、送風機の出口側で乾燥室の温風入口との間に、乾燥室内に吐出させる温風を予め調圧し整流させる整流調圧室を設けるものであって、乾燥運転中に、制御部が、乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、排気口の排気ダンパの開度を比例制御することを特徴とする、木材乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項8】
乾燥運転中に、制御部が、乾燥室内の湿球温度の設定値に対する変化量に基づき、吸気口の吸気ダンパの開度を比例制御することを特徴とする、請求項7記載の木材乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項9】
木材乾燥機が、温水生成装置を備え、熱交換部において、送風機により乾燥室側へ送られた空気を温水生成装置により生成された温水との間で熱交換するものであって、乾燥運転中に、温水温度が設定下限値を下回る温度になったとき、制御部が、乾燥室内の相対湿度の変化量に基づき、排気口の排気ダンパおよび吸気口の吸気ダンパの各開度を比例制御する相対湿度運転モードに切り換えることを特徴とする、請求項7または請求項9に記載の木材乾燥機の制御方法。
【請求項10】
木材乾燥機が、温水生成装置を備え、熱交換部において、送風機により乾燥室側へ送られた空気を温水生成装置により生成された温水との間で熱交換するものであって、乾燥運転中に、温水温度が設定下限値を下回る温度になったとき、制御部が、設定時間の間、排気口の排気ダンパおよび吸気口の吸気ダンパを全開させる間欠タイマ運転モードに切り換えることを特徴とする、請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項11】
乾燥プログラムに従って、乾燥初期から乾燥後期に至る各工程毎に乾燥室内の乾球温度、湿球温度、乾燥時間が設定され、吸気ダンパの開度が設定下限値を下回る開度になったとき、制御部が、当該工程を中断し、次工程に移行させる次工程ジャンプモードに切り換えることを特徴とする、請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。
【請求項12】
温風温度を40℃〜70℃に設定することを特徴とする、請求項7ないし請求項11のいずれか一項に記載の乾燥機の乾燥制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108724(P2013−108724A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256258(P2011−256258)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000176051)三州産業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】