説明

木材乾燥機

【課題】木材乾燥機に使用するエネルギー量を大幅に低減できる木材乾燥機を提供する。
【解決手段】木材2を乾燥する内部送風型の蒸気式木材乾燥機1であって、乾燥を必要とする木材2を桟積みする台車3と、この台車3に桟積みされた木材2を搬送して乾燥する乾燥室4と、該乾燥室4に熱供給を行なう送風手段とからなり、前記台車3の搬送方向両側面には、前記積みされた木材2への第1の送風規制手段がそれぞれ設けられ、また前記台車3が搬送される乾燥室内中天井部5の搬送方向両端部には、前記桟積みされた木材2への第2の送風規制手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の乾燥を行なう木材乾燥機であって、とくに木材の表面割れ等が少なく、使用するエネルギー量を大幅に低減できる木材乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材の乾燥には、内部送風型(IF型)の蒸気式乾燥機、除湿式−ヒートポンプ式乾燥機、高周波加熱による真空乾燥機等が使用されている。とくに内部送風型(IF型)の蒸気式乾燥機は、蒸気式乾燥室で桟積みした木材を蒸気管によって加熱した空気で乾燥する方式であり、現在一般に使用される木材の人工乾燥装置のうち、最も多く使われている。
【0003】
しかしながら、上記の蒸気式乾燥機の場合、木材から除かれた水分量を蒸発させて乾燥させるために必要とされるエネルギー量の約4倍のエネルギーが使用されており、非常に非効率なものであった。
【0004】
一方、乾燥機内で乾燥される木材は、台車の上で一定の間隔を持って桟積みされており、この桟積みされた木材間を流れる気流速度は最低1m/s必要とされており、この気流速度を確保するために送風機の数を増加させるなど、さらにエネルギー消費を増やす必要があった。
【0005】
そこで、乾燥室内に被乾燥材の木材をスペーサを介在させて積み重ね、送風機の回転を一定時間ごとに正逆に切り換えて積み重ねた木材の一側より或いは他側より設定温度の熱風を相互に供給して行なう木材乾燥方法において、送風機を一定時間停止させて送風機の動力を軽減させる技術が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−324933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の特許文献1の技術は、木材の乾燥機に使用する送風機を一定時間停止させて送風機の動力を軽減させる点に特徴がある技術であり、被乾燥材の木材をスペーサを通過する気流速度を確保する点に関しては何らの技術の開示がないものであり、桟積みされた木材間に有効な気流を確保する技術は明確ではなかった。
【0008】
上記の問題点に鑑み本発明者らは、鋭意研究の結果、木材乾燥機のエネルギー消費の原因が、乾燥機内の送風機から出た気流の約3割が乾燥室に入らずに、乾燥室の中天井端から気流流出口へショートカットし、また乾燥室内に流入した気流の約3割が桟積みした木材の上下と左右から逃げ、残りの約3割しか桟積みした木材の間を通過しないことを実験及びシュミレーションによって見出し、木材乾燥機に使用するエネルギー量を大幅に低減できると共に、木材の表面割れ等が少ない木材乾燥機を提供するにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため本発明の木材乾燥機は、乾燥を必要とする木材を桟積みする台車と、この台車に桟積みされた木材を搬送して乾燥する乾燥室と、該乾燥室に熱供給を行なう送風手段とからなり、前記台車の搬送方向両側面には、前記桟積みされた木材への第1の送風規制手段がそれぞれ設けられ、また前記台車が搬送される乾燥室内部中天井部には、前記前記桟積みされた木材への第2の送風規制手段が設けられたことを第1の特徴とする。
【0010】
また、台車の両側面に設けられた第1の送風規制手段は、台車の搬送方向の両側面下部に設置される横バッフル板と、該横バッフル板の搬送方向前後に直交して配置される縦バッフル板とから構成されることを第2の特徴とする。
【0011】
そして、前記縦バッフル板は、前記台車に桟積みされた木材の最外面に当接すると共に、搬送される乾燥室内の中天井下部と近接する高さまで延設配置されたことを第3の特徴とする。
【0012】
さらに、前記乾燥室内部中天井部に設けられた第2の送風規制手段は、前記中天井の入口側と奥壁側に設けられた水平延長板と、前記中天井上部に設けられた送風手段から該中天井の入口側と奥壁側に設けられた垂直延長板と、からなることを第4の特徴とする。
【0013】
さらに、前記乾燥室内中天井部に、該中天井下部と前記桟積みされた木材の上部間の送風を規制するバッフル板をさらに設けたことを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る木材乾燥機によれば、台車の搬送方向両側面に、桟積みされた木材への第1の送風規制手段がそれぞれ設けられ、また前記台車が搬送される乾燥室内部中天井部には、前記桟積みされた木材への第2の送風規制手段が設けられたため、送風手段によって乾燥室内に効率よく気流が送られるという優れた効果を有する。
【0015】
桟積みされた木材の乾燥に必要とされる、桟積み間の気流の速度(1m/s)を発生させる送風手段の回転数を大幅に低減することができ、消費エネルギー量を低減することができるという優れた効果を有する。
【0016】
さらに、本名発明の木材乾燥機によって乾燥した桟積み木材は、従来と比較して表面割れが少ないという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の木材乾燥機の一実施例を示す正面断面説明図である。
【図2】本発明の台車に桟積みされた木材を示す説明図である。
【図3】本発明の木材乾燥機の内部構造を示す説明図である。
【図4】本発明の木材乾燥機内の乾燥スケジュールの一実施例を示すグラフである。
【図5】本発明の木材乾燥機内の気流を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の木材乾燥機を図面に基づいて説明する。図1は本発明の木材乾燥機の一実施例を示す正面断面説明図、図2は本発明の台車に桟積みされた木材を示す説明図、図3は本発明の木材乾燥機の内部構造を示す説明図、図4は本発明の木材乾燥機内の乾燥スケジュールの一実施例を示すグラフ、図5は本発明の木材乾燥機内の気流を示すグラフである。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図3に示すように、本発明の木材乾燥機1は、乾燥を必要とする木材2を桟積みした台車3と、この台車3を搬送して収納する乾燥室4と、乾燥室4の上方に設けられた中天井5と、中天井5の上部に配置された循環送風機6とから構成されており、外部熱源(図示せず)からの熱供給を循環送風機6によって乾燥室4内の木材2を乾燥させる。
【0020】
乾燥室4は、前記の台車3及び桟積みされた木材2を収容する空間を有しており、台車3の上部は中天井5が設けられている。また、この中天井5の上部には循環送風機6が2台配置されており、この循環送風機6による送風によって乾燥用の気流が乾燥室4内を循環する。
【0021】
図2は木材2が桟積みされた台車3を示しており、図2(a)は斜視図、図2(b)は側面図を示している。図に示すように、台車3は金属製フレーム7と搬送用車輪8から構成されており、桟積みする木材2の重量に耐える強度を有しており、また木材2の乾燥の際に発生する酸性ガスに耐える材質が使用されている。そして、台車2の搬送方向左右の金属製フレーム7には車輪方向に延出する横バッフル板9がそれぞれ設置され、この横バッフル板9の両端には縦バッフル板10がそれぞれ直交して着脱可能に設けられている。横バッフル板9の幅は台車2下を通過する乾燥用気流量を低減可能な幅とされ、縦バッフル板10は台車2と乾燥室4の奥壁と入り口側扉との間の空間(所謂木口空間)を閉塞可能な幅に設定され、且つその長手方向の長さは前記中天井5の下部に近接する長さに設定されており、台車2の搬送方向側面からの乾燥用気流の流れを制御する。尚、横バッフル板9及び縦バッフル板10はいずれも耐熱、耐酸性を有する材料が望ましいが、木材などであってもかまわない。
【0022】
図3は乾燥室4の内部構造を示しており、図3(a)は従来の内部構造を示し、図3(b)は本発明の内部構造を示している。図に示すように本発明の中天井5の前記台車3搬送方向両端部には、乾燥室4の奥壁及び入り口扉と当接する延長板11がそれぞれ配置され、また中天井5の上部に配置されている循環送風機6の送風仕切り板12には乾燥室4の奥壁及び入り口扉と当接する延長仕切り板13が夫々配置されている。この構成によって、従来の乾燥機に見られた中天井5と乾燥室4との台車搬送方向両端からの気流のショートカットが解消される。
【0023】
さらに、図1に示すように、中天井5の下部には、台車3の搬送方向と平行に2枚の上バッフル板14が設けられ、台車3に桟積みされた木材2の上部と、中天井5の下部の間を通過する乾燥用の気流を制御する。
【0024】
上記の構成からなる本発明の木材乾燥機に、乾燥を必要とする木材を台車に桟積みして投入し、図4に示す乾燥スケジュールに従い乾燥を行なった。図において、縦線は温度と周波数を表し、横線は乾燥時間を示し、図中のDBTは乾球温度、WBTは湿球温度を示している。そして、周波数は循環送風機の回転数を制御する周波数を示している。また、比較として、従来の構造の乾燥機を使用して同じ乾燥条件で木材の乾燥を行なった。結果を図5に示す。
【0025】
図5は、桟積みされた木材間を通過する気流速度分布を示しており、図5(a)は上流側に流入する速度を示し、図5(b)は下流側から流出する速度を示している。尚、図において縦線は乾燥気流の流速測定位置を示し、横線は測定した流速を示している。図に示すように、従来の乾燥機の場合桟積みされた木材間の下流側流速は1m/s未満であったが、本発明の乾燥機では約2m/sとなり、木材の桟積み間に必要とされる1m/sに対して大幅に増速することが判明した。すなわち、木材を乾燥させるために必要な、送風機の回転数を低減させることにより、送風機駆動に必要なエネルギーを低減させることが可能となった。さらに、本発明の乾燥機によれば、従来の乾燥機と比較し、木材表面の割れが非常に少ないことが判明した。
【0026】
以上、本発明による木材乾燥機によれば、台車の搬送方向両側面に、桟積みされた木材への第1の送風規制手段がそれぞれ設けられ、また前記台車が搬送される乾燥室内部中天井部には、前記桟積みされた木材への第2の送風規制手段が設けられたため、送風手段によって乾燥室内に効率よく気流が送られる構成であり、木材を乾燥させる送風手段の回転数を大幅に低減することができ、消費エネルギー量を低減することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 木材乾燥機
2 木材
3 台車
4 乾燥室
5 中天井
6 循環送風機
7 フレーム
8 車輪
9 横バッフル板
10 縦バッフル板
11 延長板
12 送風仕切り板
13 延長仕切り板
14 上バッフル板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を乾燥する内部送風型の蒸気式木材乾燥機であって、乾燥を必要とする木材を桟積みする台車と、この台車に桟積 みされた木材を搬送して乾燥する乾燥室と、該乾燥室に熱供給を行なう送風手段とからなり、前記台車の搬送方向両側面には、前記桟積みされた木材への第1の送風規制手段がそれぞれ設けられ、また前記台車が搬送される乾燥室内中天井部には、前記桟積みされた木材への第2の送風規制手段が設けられたことを特徴とする木材乾燥機。
【請求項2】
前記台車の両側面に設けられた第1の送風規制手段は、台車の搬送方向の両側面下部に設置される横バッフル板と、該横バッフル板の搬送方向前後に直交して配置される縦バッフル板とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の木材乾燥機。
【請求項3】
前記縦バッフル板は、前記台車に桟積みされた木材の最外面に当接すると共に、搬送される乾燥室内の中天井下部と近接する高さまで延設配置されたことを特徴とする請求項2に記載の木材乾燥機。
【請求項4】
前記乾燥室内中天井部に設けられた第2の送風規制手段は、前記中天井の入口側と奥壁側に設けられた水平延長板と、前記中天井上部に設けられた送風手段から該中天井の入口側と奥壁側に設けられた垂直延長板と、からなることを特徴とする請求項1に記載の木材乾燥機。
【請求項5】
前記乾燥室内中天井部に、該中天井下部と前記桟積みされた木材の上部間の送風を規制するバッフル板をさらに設けたことを特徴とする請求項1または4に記載の木材乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169508(P2011−169508A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33221(P2010−33221)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】