説明

木材保存剤、処理木材の製造方法、処理木材、および、紫外線照射装置

【課題】長期にわたって防腐及び防蟻性能を持続させることができるとともに、木材本来の色調を損なわずに仕上性を良好なものとすることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】スルホン酸亜鉛系ビニルモノマー、アミン系ビニルモノマー、第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーから選択される1種類又はそれ等の混合物10重量%以上95重量%以下と、ポリエチレングリコール系ビニルモノマー5重量%以上90重量%以下と、からなるビニルモノマーと、水と、からなり、前記ビニルモノマーの濃度が5重量%以上95重量%以下とした、木材保存剤としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材保存剤、処理木材の製造方法、処理木材、および、紫外線照射装置、の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防腐及び防蟻のために木材に塗布または注入される木材保存剤の技術は公知となっている(特許文献1参照)。
また、JISK1570:2004には、水溶性木材保存剤として、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド又はN,N―ジデシル−N−メチル−ポリオキシエチル−アンモニウムプロピオネートの第四級アンモニウム化合物系木材保存剤(以下AACと記載)、銅化合物とN−アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド又はジデシルジメチルアンモニウムクロリドの混合物からなる銅・第四級アンモニウム化合物系木材保存剤(以下ACQと記載)、銅化合物とホウ素化合物とテプコナゾール又はシプロコナゾールの混合物からなる銅・アゾール化合物系木材保存剤(以下CUAZと記載)が規定されており、木材保存剤としてこれらが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−173969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、AACは耐水性に劣るため、AACによって処理された木材が、例えば、屋外に配置されていると、雨水等によって当該木材から木材保存剤の成分が容易に溶脱する。このため、AACでは、長期にわたって防腐及び防蟻性能を持続させることが困難である。
また、ACQ及びCUAZによって処理された木材の色調は淡緑色になる。このため、ACQおよびCUAZでは、これによって処理された木材が木材本来の色調を損なったものとなり、仕上性に問題があった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、長期にわたって防腐及び防蟻性能を持続させることができるとともに、木材本来の色調を損なわずに仕上性を良好なものとすることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、スルホン酸亜鉛系ビニルモノマー、アミン系ビニルモノマー、第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーから選択される1種類又はそれ等の混合物10重量%以上95重量%以下と、ポリエチレングリコール系ビニルモノマー5重量%以上90重量%以下と、からなるビニルモノマーと、
水と、からなり、
前記ビニルモノマーの濃度が5重量%以上95重量%以下とした、木材保存剤としたものである。
【0008】
請求項2においては、前記スルホン酸亜鉛系ビニルモノマーが、ビニルスルホン酸亜鉛、スチレンスルホン酸亜鉛、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸亜鉛から選択される1種類又はそれ等の混合物であるとしたものである。
【0009】
請求項3においては、前記第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーが、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロリドであるとしたものである。
【0010】
請求項4においては、前記ポリエチレングリコール系ビニルモノマーが、エチレングリコール鎖20〜30個のジアクリル酸ポリエチレングリコールモノマーであるとしたものである。
【0011】
請求項5においては、前記アミン系ビニルモノマーが、アクリル酸ジメチルアミノエチルであるとしたものである。
【0012】
請求項6においては、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の木材保存剤と、水溶性重合開始剤と、を備える木材保存剤としたものである。
【0013】
請求項7においては、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程と、
前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを木材に塗布する工程と、
前記木材に塗布した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを紫外線硬化させる工程と、を具備する、前記木材保存剤が塗布された処理木材の製造方法としたものである。
【0014】
請求項8においては、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程と、
前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを木材に注入する工程と、
前記木材に注入した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを熱硬化させる工程と、を具備する、前記木材保存剤が注入された処理木材の製造方法としたものである。
【0015】
請求項9においては、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の木材保存剤が塗布または注入された処理木材としたものである。
【0016】
請求項10においては、木材に塗布された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の木材保存剤に紫外線を照射して、当該木材保存剤を紫外線硬化させる、紫外線照射装置であって、棒状部材に取付けられた状態で紫外線照射装置が移動可能とする取付け部、を備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、長期にわたって防腐及び防蟻性能を維持させることができるとともに、木材本来の色調を損なわずに仕上性を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る木材保存剤の製造方法を示したフロー図。
【図2】本発明の一実施形態に係る木材保存剤の製造方法を示したフロー図。
【図3】本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置を示した斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置を示した平面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る紫外線照射装置を示した底面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態に係る木材保存剤について説明する。
本発明の木材保存剤は、木材の防腐処理および防蟻処理に用いられるものである。
本発明の木材保存剤による木材の防腐処理および防蟻処理は、これが木材に塗布または注入されることによっておこなわれる。
本発明の木材保存剤は、ビニルモノマーと水とからなる水溶液であり、前記ビニルモノマーの濃度が5重量%以上95重量%以下としたものである。
本発明の木材保存剤のビニルモノマーは、スルホン酸亜鉛系ビニルモノマー、アミン系ビニルモノマー、第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーから選択される1種類又はそれ等の混合物10重量%以上95重量%以下と、ポリエチレングリコール系ビニルモノマー5重量%以上90重量%以下と、からなる。
本発明の木材保存剤のビニルモノマーが、スルホン酸亜鉛系ビニルモノマー、アミン系ビニルモノマー、第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーから選択される1種類又はそれ等の混合物10重量%以上95重量%以下のものを有することにより、本発明の木材保存剤によって処理された処理木材に防腐及び防蟻性能を発揮させることができる。
【0020】
本発明の木材保存剤は、木材に塗布されて、紫外線により硬化される処理がおこなわれる。また、本発明の木材保存剤は、木材に注入されて、熱により硬化される処理がおこなわれる。このような処理がおこなわれた木材は、処理木材となる。
またこの際、本発明の木材保存剤は、木材に塗布されて紫外線により硬化され、または、木材に注入されて熱により硬化されて、水不溶性となる。
このため、本発明の木材保存剤によれば、これによって処理された処理木材が屋外に配置されても、雨水等によって当該処理木材から当該木材保存剤の成分の溶脱を低減させることができる。
したがって、本発明の木材保存剤によれば、これによって処理木材とすることにより、長期にわたって防腐及び防蟻性能を持続させることができる。
また、本発明の木材保存剤によって処理された処理木材の色調は、これによって処理されていない木材の色調とほとんど変わらない。
したがって、本発明の木材保存剤によれば、木材本来の色調を損なわずに仕上性を良好なものとすることができる。
さらに、本発明の木材保存剤は紫外線によっても硬化するため、屋外の既存の木造構造物の防腐及び防虫現場補修の場合には、工数をかけずに本発明の木材保存剤を硬化させることができる。
【0021】
防腐及び防蟻性能を充分に発揮するためには、ビニルモノマーの配合割合が20重量%以上95重量%以下であることが好ましい。ビニルモノマーの配合割合が20重量%以上95重量%以下とすることにより、JISK1571:2004に規定する防腐.防蟻性能試験後の処理木材試験片の質量減少率(重量減少率)の性能基準3%以下をより確実に満たすことができる。
【0022】
前記スルホン酸亜鉛系ビニルモノマーは、ビニルスルホン酸亜鉛、スチレンスルホン酸亜鉛、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸亜鉛から選択される1種類又はそれ等の混合物であることが好ましい。
【0023】
前記アミン系ビニルモノマーは、アクリル酸ジメチルアミノエチルであることが好ましい。
【0024】
前記第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーは、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロリドであることが好ましい。
【0025】
前記ポリエチレングリコール系ビニルモノマーは、エチレングリコール鎖20〜30個のジアクリル酸ポリエチレングリコールモノマーであることが好ましい。ポリエチレングリコール系ビニルモノマーが、エチレングリコール鎖20〜30個のジアクリル酸ポリエチレングリコールモノマーであるとすることにより、本発明に係る木材保存剤によって処理された処理木材から当該木材保存剤の成分の溶脱を低減させることができる。
また、紫外線硬化速度を速めるためには、ポリエチレングリコール系ビニルモノマーが10重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の木材保存剤には、スルホン酸亜鉛系ビニルモノマー、アミン系ビニルモノマー、第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーから選択される1種類又はそれ等の混合物とポリエチレングリコール系ビニルモノマーの他に、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸等のカルボン酸系モノマー及びそれ等の金属塩系モノマー、アクリルアミドモノマー、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキプロピル等の水溶性モノマー、非イオン系浸透剤(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)、染料、着色顔料、撥水剤等を配合することができ、その配合量等の配合条件は本発明の効果を奏する範囲であれば、使用目的等に応じて適宜選択できる。
なおこのように、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸等のカルボン酸系モノマー及びそれ等の金属塩系モノマー、アクリルアミドモノマー等を、本発明の木材保存剤に配合することにより、本発明の木材保存剤の防腐及び防蟻性能をより向上させることができる。
またこのように、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキプロピル等の水溶性モノマー等を、本発明の木材保存剤に配合することにより、本発明の木材保存剤によって処理された処理木材から雨水等による当該木材保存剤の成分の溶脱をより低減させることができる。
またこのように、非イオン系浸透剤(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)を、本発明の木材保存剤に配合することにより、本発明の木材保存剤の木材への浸透性を向上させることができる。
またこのように、染料、着色顔料、撥水剤等を、本発明の木材保存剤に配合することにより、本発明の木材保存剤の処理木材への着色性や、本発明の木材保存剤によって処理された処理木材の撥水性を向上させることができる。
【0027】
なお、前記水溶性重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。前記水溶性重合開始剤の添加は、例えば、ビニルモノマー100重量部に対し0.1重量部以上20重量部以下のものによっておこなわれる。
【0028】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。
【0029】
(実施例1)
アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸(ATBS、東亜合成社製)に酸化亜鉛を反応させて得たアクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸亜鉛の30重量%水溶液100重量部に、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロリド(アクリエステルDMC、三菱レイヨン社製)30重量部及びジメタクリル酸ポリエチレングリコール(NKエステル23G、新中村化学工業社製)40重量部、水163重量部を配合して濃度30重量%の木材保存剤を調製し、この中に、水溶性重合開始剤としてのアゾ系重合開始剤(VA−046B、和光純薬工業社製)10重量部を添加した。次に、この木材保存剤にアゾ系重合開始剤添加したもの(木材保存剤)の中に、重量既知の杉材(寸法:木口面20×20mm、高さ:10mm、含水率17重量%)を浸漬し、これを実験用加圧注入装置に入れ、0.1MPaで5分間減圧後、0.6MPaで10分間加圧して、木材保存剤注入杉材を調製した。次に、この木材保存剤注入杉材を、乾燥器中で温度70℃で72時間加熱した後、室温下に7日間放置し、更に温度60℃で48時間、乾燥器中で乾燥し、重量を測定し、木材保存剤注入杉材中の保存剤硬化物の注入量を計算した。次に、この乾燥済保存剤注入杉材を、JISK1571:2004(注入処理用)に準じて耐候操作を行った後、再び、温度60℃で48時間乾燥器中で乾燥し、これの重量を測定し、耐候操作による保存剤硬化物の溶脱率を計算した。次に、耐候操作済の処理杉材のJISK1571:2004の防腐性能試験及び防蟻性能試験に準じて防腐及び防蟻性能を試験した。保存剤硬化物の注入量を表1に、耐候操作により溶脱した木材保存剤の成分の溶脱率、防腐性能及び防蟻性能の試験結果を表2に示した。
なお、未処理杉材の防腐および防蟻性能を実施例1と同様に試験し、その結果を表2に示した。
【0030】
一方、L、a、b値測定(分光測色計(コニカミノルタ社製))済杉材(寸法:木口5×50mm、長さ:100mm、含水率18重量%)を、前記と同じ条件で木材保存剤を注入、加熱・加湿し、更に、常温下に7日間乾燥した後、再び、L、a、b値を測定し、ΔE値を計算した。その結果を表1に示した。
【0031】
(実施例2)
実施例1の木材保存剤を、アクリル酸ジメチルアミノエチル(日本触媒社製)60重量部、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール40重量部、水233重量部に変えた以外は実施例1と同じ条件で試験した。保存剤硬化物の注入量及びΔE値の計算結果を表1に、木材保存剤の成分の溶脱率、防腐性能及び防蟻性能の試験結果を表2に示した。
【0032】
(実施例3)
実施例1の木材保存剤を、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロリド(アクリエステルDMC、三菱レイヨン社製)60重量部、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール40重量部、水233重量部に変えた以外は実施例1と同じ条件で試験した。保存剤硬化物の注入量及びΔE値の計算結果を表1に、木材保存剤の成分の溶脱率、防腐性能及び防蟻性能の試験結果を表2に示した。
【0033】
(実施例4)
メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロリド60重量部、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール40重量部、水25重量部を配合して濃度80重量%の木材保存剤を調製し、この中にアゾ系重合開始剤(V50、和光純薬工業社製)2重量部を添加し、これをL、a、b値測定(分光測色計(コニカミノルタ社製))済杉材(寸法:木口5×50mm、長さ100mm、含水率18重量%)にスプレーで塗布量130g/mに塗布した後、紫外線照射装置(波長360nm)によって、照射距離10cmで20分間、紫外線を照射し、常温で7日間乾燥した後、再び、L、a、b値を測定し、ΔE値を計算した。その結果を表1に示した。
なお、前記紫外線照射時間を15分以上とすることにより、本発明の木材保存剤の硬化反応をより確実に完結させることができ、本発明の木材処理剤によって処理された処理木材の防蟻性能を、より確実に維持させることができる。
【0034】
一方、杉材(寸法:木口5×20mm、長さ40mm、含水率17重量%)に、前記木材保存剤を前記と同一条件で塗布し、紫外線を照射し、更に常温下に7日間乾燥した後、JISK1571:2004(表面処理用室内試験)に準じて耐候操作を行った後、防蟻性能を試験した。その試験結果を表2に示した。
なお、未処理杉材の防蟻性能を実施例4と同様に試験し、その結果を表2に示した。
【0035】
更に、木材保存剤の硬化反応率(重合率)を赤外線吸収スペクトル分析法により測定するため、上記で調製したアゾ系重合開始剤添加保存剤水溶液を分析用シート(スリーエム社製)に塗布し、これを前記と同し条件で紫外線を照射し、その吸収スペクトルの波長1645cm−1のピーク部の面積減少率から硬化反応率を計算した。その結果、反応率は98%であった。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表1のとおり、保存剤硬化物の注入量を238〜256kg/mの実施例1〜3及び濃度80重量%の木材保存剤を130g/m塗布した実施例4で得た保存処理杉材は、いずれもΔE値が小さく、無垢材の色調を損なわない仕上性の良い処理杉材が得られた。
【0039】
一方、表2のとおり、実施例1〜3の処理杉材は、木材保存剤の成分の溶脱率が16%以下と低く、カワラタケ、オオウズラタケの両防腐試験の重量減少率が、いずれも2%以下となり、防蟻試験の重量減少率も2%以下の優れた防腐・防蟻性能を示す処理杉材が得られた。
【0040】
次に、本発明の実施形態に係る木材保存剤が塗布された処理木材の製造方法おける一連の動作について、図1を用いて説明する。
【0041】
図1に示すように、前記本発明の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程(ステップS11)をおこなう。
前記本発明の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程(ステップS11)をおこなった後、ステップS12に移行する。
【0042】
次に、前記ステップS11において前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したもの(木材保存剤)を木材に塗布する工程(ステップS12)をおこなう。
この際、例えば、木材保存剤の硬化物換算で15g/m以上200g/m以下(木材保存剤の塗布不良をより確実に回避するためには、30g/m以上150g/m以下)の、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを木材に塗布する。
また、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものの木材への塗布は、例えば、スプレー、刷毛塗り、ローラー塗り、ナチュラルロールコーター、ナチュラルリバ−スロールコーター、リバースロールコーター、カーテンフローコーター、エアースプレー、エアレススプレー等によっておこなわれる。好ましい塗布方法は、カーテンフローコータースプレー、エアレススプレー、刷毛塗りであり、カーテンフローコーターは、効率のよい塗装が可能であるため、工場での塗布用に適しており、スプレー、エアレススプレー、ローラー塗り、刷毛塗りは、既存建造物の防腐や防虫補修の用途に適している。なお、注入と塗布を組み合わせてもよい。
前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを木材に塗布する工程(ステップS12)をおこなった後、ステップS13に移行する。
【0043】
次に、ステップS12において前記木材に塗布した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを紫外線硬化させる工程(ステップS13)をおこなう。
この際、例えば、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものが塗布された木材の塗布面を15分から30分間、好ましくは20分から30分間、所定の紫外線照射装置で紫外線を照射することによっておこなう。
なお、前記紫外線照射時間を15分以上とすることにより、本発明の木材保存剤の硬化反応をより確実に完結させることができ、本発明の木材処理剤によって処理された処理木材の防腐及び防蟻性能を、より確実に維持させることができる。
またこの際、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを既存の木造構造物(木材)に塗布した場合(例えば、既存の木造構造物の防腐及び防虫現場補修の場合)には、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを塗布した後、前記木造構造物を屋外で3日から7日間暴露、または、前記木造構造物に所定の紫外線照射装置によって15分から30分間紫外線を照射することによっておこなってもよい。
このようにして本発明の木材保存剤が塗布された処理木材を製造する。
【0044】
以上のように、本発明の木材保存剤が塗布された木材の製造方法は、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程(ステップS11)と、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したもの(木材保存剤)を木材に塗布する工程(ステップS12)と、前記木材に塗布した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを紫外線硬化させる工程(ステップS13)と、を具備する。
このように、本発明の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加し、これを木材に塗布し、紫外線硬化させることにより、長期にわたって防腐及び防蟻性能を持続させることができるとともに、木材本来の色調を損なわずに仕上性を良好なものとすることができる、処理木材を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の実施形態に係る木材保存剤が注入された処理木材の製造方法における一連の動作について、図2を用いて説明する。
【0046】
図2に示すように、前記本発明の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程(ステップS21)をおこなう。
前記本発明の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程(ステップS21)をおこなった後、ステップS22に移行する。
【0047】
次に、前記ステップS21において前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したもの(木材保存剤)を木材に注入する工程(ステップS22)をおこなう。
この際、例えば、所定の加圧注入装置によっておこなう。この際、木材保存剤の硬化物換算で通常50kg/m以上400kg/m以下のもの、好ましくは100kg/m以上300kg/m以下のもの、を木材に注入する。このように木材保存剤の硬化物換算で50kg/m以上のものとすることにより、本発明の木材処理剤によって処理された処理木材の防腐及び防蟻性能をより確実に発揮させることができる。さらに、このように木材保存剤の硬化物換算で100kg/m以上のものとすることにより、本発明の木材処理剤によって処理された処理木材の防腐及び防蟻性能をさらにより確実に発揮させることができる。
また、このように木材保存剤の硬化物換算で400kg/m以下のものとすることにより、木材保存剤の硬化収縮の影響を小さくして、処理木材の反りが発生することを抑制することができる。さらに、このように木材保存剤の硬化物換算で300kg/m以下のものとすることにより、木材保存剤の硬化収縮の影響をより小さくして、処理木材の反りが発生することをより抑制することができる。
本発明の処理木材を確実に木材に注入するためには、前記木材処理材の木材への注入操作は、最初に0.05MPa以上0.1MPa以下で1分乃至5分間減圧した後、0.1MPa以上0.6MPa以下で5分乃至30分間加圧するのが好ましい。
前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したもの(木材保存剤)を木材に注入する工程(ステップS22)をおこなった後、ステップS23に移行する。
【0048】
次に、ステップS22において前記木材に注入した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを熱硬化させる工程(ステップS23)をおこなう。
この際、温度40℃以上100℃以下、湿度50%RH以上90%RH以下で、1日から7日間、好ましくは、温度50℃以上80℃以下、湿度80%RH以上90%RH以下で2から5日間、前記木材に注入した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを、加熱および加湿する。前記熱硬化させる温度50℃以上とすることにより、前記木材に注入した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したもの硬化反応をより確実に完結させることができ、処理木材の防腐及び防蟻性能をより確実に維持させることができる。また、前記熱硬化させる温度80℃以下とすることにより、処理木材の含水率低下による処理木材の割れの発生をより確実に抑制することができる。
このようにして、本発明の木材保存剤が注入された処理木材を製造する。
【0049】
以上のように、本発明の木材保存剤が注入された処理木材の製造方法は、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程(ステップS21)と、前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したもの(木材保存剤)を木材に注入する工程(ステップS22)と、前記木材に注入した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを熱硬化させる工程(ステップS23)と、を具備する。
このように、本発明の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加し、これを木材に注入し、熱硬化させることにより、長期にわたって防腐及び防蟻性能を持続させることができるとともに、木材本来の色調を損なわずに仕上性を良好なものとすることができる、処理木材を得ることができる。
【0050】
次に、本発明の実施形態に係る紫外線照射装置1について、図3乃至図5を用いて説明する。
紫外線照射装置1は、前記木材に塗布した前記木材保存剤(木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したもの)に紫外線を照射してこれを紫外線硬化させる際に用いられるものである。紫外線照射装置1は、100V、10Aで駆動可能に構成される。
紫外線照射装置1は、図3に示すように複数個の紫外線LED21・21・21・・・を備える(図5参照)。紫外線照射装置1の紫外線LED21は、例えば、波長360nmのものが用いられる。
【0051】
紫外線照射装置1は、図3乃至図5に示すように、フレーム10内に、複数個の基板20・20・20・・・を備えて構成される。本実施形態の紫外線照射装置1では、その基盤基板20・20・20・・・は6つ備えられる。
紫外線照射装置における6つの基板20・20・20・・・のうち1つの基板20は、その一方の面20aに13個の紫外線LED21・21・21・・・が配置され(図5参照)、その他方の面20b(前記紫外線LED21が配置される面と反対側の面)に1台の冷却ファン22が配置され(図4参照)て構成される。
【0052】
紫外線照射装置1における6つの基板20・20・20・・・は、前方と後方とにそれぞれ横並びに3つの基板20・20・20が並ぶようにして、フレーム20内に配置される。
紫外線照射装置1における6つの基板20・20・20・・・がそれぞれの一方の面20aを同一方向(下方)に向けてフレーム10内それぞれ配置されて、紫外線照射装置1における紫外線を照射する照射面1aが構成される。
紫外線照射装置1における一方の面20a側のフレーム10には、その縁部から末広がりに下方に突出するようにして、フード30が設けられる。
【0053】
ここで、従来における紫外線照射装置による紫外線を照射する作業は、これを任意の位置に固定するよう配置しておこなわれていた。このため、当該従来における紫外線照射装置では、木材への紫外線を照射する作業が煩雑であった。
紫外線照射装置1は、可動式となるように構成される。
紫外線照射装置1は、図4に示すように、取付け部40を備える。紫外線照射装置1の取付け部40は、これを介して紫外線照射装置1を棒状部材に取付けるためのものであるとともに、斯かる状態で紫外線照射装置1が所定の範囲において移動可能(可動)とするための部材である。ここで、棒状部材は、所定の箇所に配置された棒状の部材であり、例えば、足場用のパイプ材等がある。
紫外線照射装置1の取付け部40は、フレーム10から側方に突出するように配置される。本実施形態における紫外線照射装置1の取付け部40は、図4におけるフレーム10の左方の縁部とその下方の縁部とにそれぞれ2つずつ配置される。
紫外線照射装置1の取付け部40は、C字状に形成される。紫外線照射装置1の取付け部40は、棒状部材を嵌挿した状態で、棒状部材の周方向に回動可能、または、棒状部材の軸心方向に移動可能に構成される。
【0054】
そして、このように紫外線照射装置1の取付け部40が構成されることにより、棒状部材に取付けられた状態で、紫外線照射装置1が、所定の範囲内において移動可能(棒状部材の周方向に回動可能、または、棒状部材の軸心方向に移動可能となるように)に構成される。
したがって、紫外線照射装置1によれば、木材に塗布した前記木材保存剤に、その小斜面1aから紫外線を照射してこれを紫外線硬化させる際に、棒状部材に取付けられた状態で、当該木材への紫外線の照射位置やその照射角度等を変更することができ、木材への紫外線を照射する作業を容易におこなうことができる。
【0055】
なお、紫外線照射装置1は、200Vで駆動可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 紫外線照射装置
20 基板
21 紫外線LED
40 取付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸亜鉛系ビニルモノマー、アミン系ビニルモノマー、第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーから選択される1種類又はそれ等の混合物10重量%以上95重量%以下と、ポリエチレングリコール系ビニルモノマー5重量%以上90重量%以下と、からなるビニルモノマーと、
水と、からなり、
前記ビニルモノマーの濃度が5重量%以上95重量%以下とした、木材保存剤。
【請求項2】
前記スルホン酸亜鉛系ビニルモノマーが、ビニルスルホン酸亜鉛、スチレンスルホン酸亜鉛、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸亜鉛から選択される1種類又はそれ等の混合物である請求項1に記載の木材保存剤。
【請求項3】
前記第4級アンモニウムクロリド系ビニルモノマーが、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロリドである請求項1又は請求項2に記載の木材保存剤。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコール系ビニルモノマーが、エチレングリコール鎖20〜30個のジアクリル酸ポリエチレングリコールモノマーである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の木材保存剤。
【請求項5】
前記アミン系ビニルモノマーが、アクリル酸ジメチルアミノエチルである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の木材保存剤。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の木材保存剤と、水溶性重合開始剤と、を備える、木材保存剤。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程と、
前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを木材に塗布する工程と、
前記木材に塗布した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを紫外線硬化させる工程と、を具備する、前記木材保存剤が塗布された処理木材の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加する工程と、
前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを木材に注入する工程と、
前記木材に注入した前記木材保存剤に水溶性重合開始剤を添加したものを熱硬化させる工程と、を具備する、前記木材保存剤が注入された処理木材の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の木材保存剤が塗布または注入された処理木材。
【請求項10】
木材に塗布された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の木材保存剤に紫外線を照射して、当該木材保存剤を紫外線硬化させる、紫外線照射装置であって、
棒状部材に取付けられた状態で紫外線照射装置が移動可能とする取付け部、を備える、
紫外線照射装置。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−167037(P2012−167037A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27510(P2011−27510)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(504026502)四国建設株式会社 (1)
【出願人】(511037056)アルボ木材工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】