説明

木材保存剤

【課題】 優れた防腐効力や防カビ効力を長期間にわたって維持することのできる木材保存剤を提供すること。
【解決手段】 有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物などの防腐防カビ剤を有効成分とし、好ましくは、溶媒としての脂肪酸エステル類とともに、マイクロカプセル化する。必要に応じて、上記マイクロカプセルに、さらに、防蟻防虫剤を含有させるか、または、防腐防カビ剤を内包するマイクロカプセルと、防蟻防虫剤を内包するマイクロカプセルとを混合して使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防腐効力や防カビ効力が高く、しかもその残効性に優れた木材保存剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般工業用材料や土木工業用材料などに使用される木材には、腐朽や食害などからの保護を目的として、木材保存剤による処理が施されている。このような木材保存剤は、一般に、防腐防カビ剤を有効成分とし、油剤や乳剤などの液剤や、層状ケイ酸塩などの担体に吸着させた粒剤として用いられている。
一方、木材保存剤として、ネオニコチノイド系化合物などを有効成分としてマイクロカプセル化した防蟻剤が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−247821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、上記した防腐防カビ剤を有効成分とする木材保存剤では、木材に対する処理直後から有効成分が暴露されるので、その防腐防カビ効力を発揮しやすいものの、有効成分の揮散が避けられず、長期間にわたって防腐防カビ効果を発揮させることが困難である。
一方、上記した防蟻剤は、優れた防蟻効力を長期にわたって発揮することができるものの、防腐防カビ効果は期待できない。
【0004】
そこで、本発明の目的は、優れた防腐効力や防カビ効力を長期間にわたって維持することのできる木材保存剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために、木材保存用途で優れた防腐防カビ効果を持続させることについて、鋭意検討したところ、防腐防カビ剤を有効成分としてマイクロカプセル化することにより、上記の課題を解決できるとの知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 防腐防カビ剤を内包するマイクロカプセルを含有することを特徴とする、木材保存剤、
(2) 前記マイクロカプセルが、さらに、防蟻防虫剤を内包することを特徴とする、前記(1)に記載の木材保存剤、
(3) さらに、防蟻防虫剤を内包するマイクロカプセルを含有することを特徴とする、前記(1)に記載の木材保存剤、
(4) 前記マイクロカプセルの被膜の厚さが、0.5μm以下であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の木材保存剤、
(5) 前記防腐防カビ剤が、有機ヨード系防腐防カビ剤および/またはトリアゾール系防腐防カビ剤であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の木材保存剤、
(6) 前記マイクロカプセルが溶媒を含有しており、この溶媒が脂肪酸エステル類であることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の木材保存剤、
(7) 前記脂肪酸エステル類が、アジピン酸エステルであることを特徴とする、前記(6)に記載の木材保存剤、
(8) 日本木材保存協会規格の「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法および性能基準(JWPS−FW−S.1)」に規定する防腐効力試験において、オオウズラタケ、カワラタケおよびナミダタケの各供試菌に対する、スギ、ブナおよびアカマツの各処理試験体の平均質量減少率が3%未満であることを特徴とする、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の木材保存剤、
(9) 日本木材保存協会規格の「表面処理用木材防蟻剤の室内防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TW−S.1)」に規定する防蟻効力試験において、供試虫に対する、クロマツ、アカマツおよびスギの各処理試験体についての平均質量減少率が3%未満であることを特徴とする、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の木材保存剤
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の木材保存剤によれば、防腐防カビ剤がマイクロカプセルに内包されることで、木材に処理した後、その防腐防カビ効果を長期にわたって発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の木材保存剤は、マイクロカプセルに、必須の有効成分として防腐防カビ剤を内包させている。
本発明において、防腐防カビ剤は、防腐剤および/または防カビ剤であって、特に限定されるものではなく、例えば、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物、スルファミド系化合物、ビス四級アンモニウム塩系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、フタロニトリル系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、チオカルバメート系化合物、ニトリル系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、イミダゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物などの防腐防カビ剤が挙げられる。
【0008】
有機ヨード系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(慣用名:IPBC)、p−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール(商品名:IF−1000、長瀬産業(株)製)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネート(商品名:サンプラス、(株)三共製)などが挙げられる。
【0009】
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:アザコナゾール)などが挙げられる。
【0010】
スルファミド系化合物としては、例えば、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド(商品名:プリベントールA4/S、バイエル製)、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−4−トリルスルファミド(商品名:プリベントールA5、バイエル製)などが挙げられる。
ビス四級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー38、イヌイ社製)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー38A、イヌイ社製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー136、イヌイ社製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー136A、イヌイ社製)などが挙げられる。
【0011】
四級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、ジ−n−デシル−ジメチルアンモニウムクロライド、1−ヘキサデシルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、コータミンD10EPR(花王製)などが挙げられる。
フタロニトリル系化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(商品名:ノプコサイドN−96、サンノプコ(株)製)などが挙げられる。
【0012】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
チオフェン系化合物としては、例えば、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどが挙げられる。
【0013】
チオカルバメート系化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドなどが挙げられる。
ニトリル系化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどが挙げられる。
フタルイミド系化合物としては、例えば、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などが挙げられる。
【0014】
ハロアルキルチオ系化合物としては、例えば、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−N、N’−ジメチル−N−フェニル−スルファミドなどが挙げられる。
【0015】
ピリジン系化合物としては、例えば、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジンなどが挙げられる。
ピリチオン系化合物としては、例えば、ジンクピリチオン、ナトリウムピリチオンなどが挙げられる。
ベンゾチアゾール系化合物としては、例えば、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0016】
トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、例えば、1,6−ジ−(4’−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩などが挙げられる。
尿素系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
【0017】
イミダゾール系化合物としては、例えば、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート塩酸塩、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0018】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールなどが挙げられる。
上記例示の防腐防カビ剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記例示の防腐防カビ剤の中では、特に、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物を用いることが好ましく、有機ヨード系化合物を用いることがより好ましい。防腐防カビ剤として、有機ヨード系防腐防カビ剤やトリアゾール系防腐防カビ剤を選択することによって、優れた防腐防カビ効果を得ることができる。
【0019】
また、本発明の木材保存剤は、必要に応じて、マイクロカプセルに、任意の有効成分として、さらに防蟻防虫剤を内包させてもよい。
本発明において、防蟻防虫剤は、防蟻剤および/または防虫剤であって、特に限定されるものではなく、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カルバメート系化合物、植物またはその処理物などの防蟻防虫剤が挙げられる。
【0020】
ネオニコチノイド系化合物は、塩素原子置換含窒素複素環と、ニトロ置換イミノ基(C=N−NO2)含有化合物とが、2価の炭化水素基を介して結合している化合物である。このネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロ−チアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(E)−N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N’−シアノ−N−メチルアセタミジン(一般名:アセタミプリド)、(ES)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)などが挙げられる。
【0021】
ピレスロイド系化合物としては、例えば、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、サイフルスリン、パーメスリン、トラロメスリン、フェンバレレート、Hoe−498などが挙げられる。
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。カルバメート系化合物としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
【0022】
植物またはその処理物としては、例えば、ヒバ、サウスレア属、マグノリア属、アトラクティロデス属、レデボウリエア属、パエオニア属、プソラレア属、ミリスチカ属、クルクマ属、フムルス属、ソホラ属などの植物またはその処理物が挙げられる。
ヒバの処理物としては、例えば、ヒバの抽出物や滲出物などが挙げられる。より具体的には、例えば、ヒバチップ(ヒバおがくず)を水蒸気蒸留することにより、油相と水相に分離すれば、その油相をヒバ油として用いることができる。ヒバ油には、主成分としてのツヨプセンやセドロールなどのセスキテルペンやセスキテルペンアルコールなどの中性成分と、ヒノキチオール、β−ドラブリン、シトロネル酸、カルバクロールなどのトロポロン類、カルボン酸やフェノールなどの酸性成分とが含まれている。中性成分と酸性成分との含有比率は、通常、中性成分が90%、酸性成分が10%である。そして、ヒバ油にアルカリ水溶液を加えて抽出すれば、その抽出成分として酸性成分からなるヒバ酸性油を得ることができ、また、その残余成分として中性成分からなるヒバ中性油を得ることができる。
【0023】
また、ヒバチップから水蒸気蒸留でヒバ油を抽出するときに、留出する水に含まれているヒバの酸性成分を吸着樹脂で吸着・脱着することにより、ヒバ樹脂油を得ることができる。また、これら、ヒバ油、ヒバ中性油、ヒバ酸性油、ヒバ樹脂油は、市販されているものを用いることもできる。
サウスレア(Saussurea)属としては、例えば、モッコウが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3370610号公報に記載されるサウスレア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、モッコウを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、モッコウ抽出エキスが用いられる。
【0024】
マグノリア(Magnolia)属としては、例えば、コウボクが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3326148号公報に記載されるマグノリア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、コウボクを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、コウボク抽出エキスが用いられる。
アトラクティロデス(Atractylodes)属としては、例えば、ソウジュツが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3326148号公報に記載されるアトラクティロデス属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ソウジュツを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ソウジュツ抽出エキスが用いられる。
【0025】
レデボウリエア(Ledebouriella)属としては、例えば、ボウフウが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3326148号公報に記載されるレデボウリエア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ボウフウを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ボウフウ抽出エキスが用いられる。
パエオニア(Paeonia)属としては、例えば、ボタンピが挙げられ、その処理物としては、例えば、上記の特許第3326148号公報に準拠したパエオニア属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ボタンピを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ボタンピ抽出エキスが用いられる。
【0026】
プソラレア(Psoralea)属としては、例えば、ハコシが挙げられ、その処理物としては、例えば、上記の特許第3326148号公報に準拠したプソラレア属の抽出物や浸出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ハコシを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ハコシ抽出エキスが用いられる。
ミリスチカ(Myristica)属としては、例えば、ニクズクが挙げられ、その処理物としては、例えば、上記の特許第3326148号公報に準拠したミリスチカ属の抽出物や浸出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ニクズクを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ニクズク抽出エキスが用いられる。
【0027】
クルクマ(Curcuma)属としては、例えば、ウコンが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3370610号公報に記載されるクルクマ属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ウコンを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ウコン抽出エキスが用いられる。
フムルス(Humulus)属としては、例えば、ホップが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第3326148号公報に記載されるフムルス属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、ホップを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、ホップ抽出エキスが用いられる。
【0028】
ソホラ(Sophora)属としては、例えば、クジンが挙げられ、その処理物としては、例えば、特許第2989729号公報に記載されるソホラ属の抽出物や滲出物などが用いられる。より具体的には、例えば、クジンを、アセトンやメタノールなどの抽出溶媒を用いて抽出した、クジン抽出エキスが用いられる。
上記例示の防蟻防虫剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記例示の防蟻防虫剤の中では、特に、ネオニコチノイド系防蟻防虫剤、ピレスロイド系防蟻防虫剤を用いることが好ましく、ネオニコチノイド系防蟻防虫剤を用いることがより好ましい。
【0029】
本発明において、マイクロカプセルの調製方法は、特に限定されるものではなく、化学的方法、物理化学的方法、物理的および機械的方法など、公知の方法を採用することができる。
化学的方法としては、例えば、界面重合法、in situ 重合法、液中硬化被膜法などが挙げられる。
【0030】
界面重合法としては、例えば、多塩基酸ハライドとポリオールとを界面重合させてポリエステルからなる膜を形成する方法、多塩基酸ハライドとポリアミンとを界面重合させてポリアミドからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリオールとを界面重合させてポリウレタンからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリアミンとを界面重合させてポリウレアからなる膜を形成する方法などが用いられる。
【0031】
in situ 重合法では、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させてポリスチレン共重合体からなる膜を形成する方法、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとを共重合させてポリメタクリレート共重合体からなる膜を形成する方法などが用いられる。
液中硬化法では、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、アルギン酸ソーダなどを液中で硬化させる方法が用いられる。
【0032】
物理化学的方法としては、例えば、単純コアセルベーション法、複合コアセルベーション法、pHコントロール法、非溶媒添加法などの水溶液からの相分離法や、有機溶媒からの相分離法などのコアセルベーション法などが用いられる。この物理化学的方法における膜形成成分には、例えば、ゼラチン、セルロース、ゼラチン−アラビアゴムなどが挙げられる。また、ポリスチレンなどを用いる界面沈降法などを採用することもできる。
【0033】
物理的および機械的方法としては、例えば、スプレードライング法、気中懸濁被膜法、真空蒸着被膜法、静電的合体法、融解分散冷却法、無機質壁カプセル化法などが用いられる。この物理的および機械的方法における膜形成成分には、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0034】
本発明において、上記したいずれの方法によってマイクロカプセルを調製するかは、有効成分の種類、使用目的、用途などによって、適宜選択することができる。例えば、上記した有効成分を、マイクロカプセルに高濃度で内包させるには、界面重合法を用いることが好ましい。
次に、界面重合法によるマイクロカプセルの調製方法について、より詳細に説明する。
【0035】
界面重合法によるマイクロカプセルの調製では、まず、有効成分(防腐防カビ剤を必須成分、防蟻防虫剤を任意成分とする有効成分)と、油溶性膜形成成分と、溶媒とを含む油相成分を調製する。
油溶性膜形成成分としては、例えば、ポリイソシアネート、ポリカルボン酸クロライド、ポリスルホン酸クロライドなどが挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、例えば、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらポリイソシアネートの誘導体、例えば、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレットジオン、オキサジアジントリオンなどや、これらポリイソシアネートの変性体、例えば、トリメチロールプロパンなどの低分子量のポリオールやポリエーテルポリオールなどの高分子量のポリオールを予め反応させることにより得られるポリオール変性ポリイソシアネートなども挙げられる。
【0037】
ポリカルボン酸クロライドとしては、例えば、セバシン酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、トリメシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
ポリスルホン酸クロライドとしては、例えば、ベンゼンスルホニルジクロライドなどが挙げられる。
【0038】
上記例示の油溶性膜形成成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記例示の油溶性膜形成成分の中では、特に、ポリイソシアネートを用いることが好ましく、さらには、脂肪族および脂環族のポリイソシアネート、とりわけ、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのトリマーやポリオール変性ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0039】
溶媒としては、上記の有効成分や油溶性膜形成成分を溶解しまたは分散し得るものであればよく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジドデシル、アジピン酸ジテトラデシル、アジピン酸ジヘキサデシル、アジピン酸ジオクタデシル、アジピン酸デシルイソオクチル、スベリン酸ジオクチル、スベリン酸ジイソノニル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジイソノニルなどの脂肪酸エステル類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールエステル類、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、例えば、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物類、例えば、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、アルキルフェノール類、フェニルキシリルエタンなどの石油系溶媒(より具体的には、石油留分より得られる種々の市販の有機溶媒、例えば、サートレックス48(高沸点芳香族系溶剤、蒸留範囲254〜386℃、モービル石油(株)製)、アルケンL(アルキルベンゼン、蒸留範囲285〜309℃、日本石油化学(株)製)、ソルベッソ150(アルキルベンゼン、蒸留範囲188〜209℃、エクソン化学(株)製)、ソルベッソ200(アルキルナフタレン、蒸留範囲226〜286℃、エクソン化学(株)製)、KMC−113(ジイソプロピルナフタレン、沸点300℃、呉羽化学工業(株)製)、SAS296(フェニルキシリルエタン、蒸留範囲290〜305℃、日本石油化学(株)製)など)、なたね油などの油類などが挙げられる。
【0040】
上記例示の溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、有効成分の効力を発揮させつつ、溶媒に起因する臭気を低減させるという観点から、上記例示の有機溶媒の中でも特に、脂肪酸エステル類を用いることが好ましく、とりわけ、炭素数が8〜18であるアジピン酸ジアルキルエステルを用いることが好ましい。
油相成分における各成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、例えば、有効成分の配合割合は、油相成分の総量100重量部に対して、0.02〜99.9重量部、好ましくは、0.05〜99重量部である。
【0041】
また、より具体的には、有効成分において、防腐防カビ剤の配合割合が、油相成分の総量100重量部に対して、0.01〜80重量部、好ましくは、0.05〜50重量部であり、防蟻防虫剤が配合される場合には、その配合割合が、油相成分の総量100重量部に対して、0.01〜80重量部、好ましくは、0.05〜50重量部である。
油溶性膜形成成分の配合割合は、油相成分100重量部に対して、0.1〜99.9重量部の範囲において配合可能である。なお、油溶性膜形成成分の配合割合が多くなると、得られるマイクロカプセルの被膜が厚くなりすぎて、防腐防カビ効果や防蟻防虫効果が低下する場合があり、逆に、油溶性膜形成成分の配合割合が少なくなると、マイクロカプセルの被膜を形成することができなくなる場合がある。
【0042】
また、溶媒の配合割合は、各成分の残余の割合でよい。
油相成分は、有効成分および油溶性膜形成成分を溶媒に配合して、攪拌混合することにより調製することができる。
また、油相成分には、とりわけ、有効成分において防蟻防虫剤が配合される場合には、有効成分の分散性を向上させるべく、分散剤を配合してもよい。分散剤は特に限定されるものではなく、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、エステルゴム、フローレンDOPA・15B(変性アクリル共重合物、共栄社製)、フローレン700(分岐カルボン酸の部分エステル、共栄社製)などが挙げられる。また、本発明においては、分散剤として、例えば、3級アミンを含む分子量1000以上のものが好ましく用いられる。
【0043】
3級アミンを含む分子量1000以上の分散剤としては、3級アミンを含有するカチオン系の高分子重合体、例えば、3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体などが挙げられる。より具体的には、市販の分散剤、例えば、Disperbyk−161(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量100000、ビッグケミー(株)製)、Disperbyk−163(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量50000、ビッグケミー(株)製)、Disperbyk−164(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量10000〜50000、ビッグケミー(株)製)、EFKA46(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量8000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA47(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量13000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA48(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量18000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4050(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量12000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4055(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量12000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4009(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量5000、EFKAケミカル(株)製)、EFKA4010(3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量5000、EFKAケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0044】
このような分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記した市販の分散剤は、通常、上記した溶媒などに、その濃度が50重量%以上となるような割合で希釈されている。
分散剤は、有効成分と、油溶性膜形成成分と、溶媒と、分散剤との、総量100重量部に対して、0.01〜99.99重量部の範囲において配合可能である。特に、20重量部以下、さらには10重量部以下で配合することが好ましい。
【0045】
油相成分の調製において、有効成分に防蟻防虫剤が配合される場合には、例えば、有効成分と、溶媒と、分散剤とを含むスラリーを調製し、さらに、スラリーを湿式粉砕した後、このスラリーに油溶性膜形成成分を配合することが好ましい。
湿式粉砕は、例えば、ビーズミル、ボールミル、またはロッドミルなどの公知の粉砕機を用いて、所定時間実施すればよい。湿式粉砕することにより、有効成分を微細な粒子として分散させることができ、カプセル化率の向上、製剤安定性の向上、および効力増強を図ることができる。
【0046】
また、このような湿式粉砕においては、有効成分の平均粒子径を、例えば、5μm以下、さらには2.5μm以下とすることが好ましい。平均粒子径がこれより大きいと、マイクロカプセルに良好に内包できない場合がある。
そして、湿式粉砕されたスラリーに、油溶性膜形成成分を配合するには、油溶性膜形成成分をスラリーに加えて攪拌混合すればよい。
【0047】
界面重合法によるマイクロカプセルの調製では、次いで、このようにして調製された油相成分を、水相成分に配合して、攪拌により界面重合させる。
水相成分は、例えば、水に、必要により、分散安定剤を配合することによって調製することができる。
分散安定剤としては、例えば、アラビヤガムなどの天然多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの半合成多糖類、ポリビニルアルコールなどの水溶性合成高分子、例えば、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン重縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩などのアニオン界面活性剤、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステルなどのノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これら分散安定剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
なお、分散安定剤の配合割合は、例えば、水相成分100重量部に対して、例えば、20重量部以下、好ましくは、5重量部以下である。
油相成分を水相成分に配合するには、油相成分を水相成分中に加えて、常温下、微小滴になるまでミキサーなどによって攪拌すればよい。
そして、攪拌により界面重合させるには、例えば、油相成分の分散後に、水溶性膜形成成分を水溶液として滴下すればよい。
【0049】
水溶性膜形成成分としては、油溶性膜形成成分と反応して界面重合するものであれば、特に制限されず、例えば、ポリアミンやポリオールなどが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノトルエン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジンなどが挙げられる。
【0050】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0051】
これら水溶性膜形成成分は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリアミンが用いられる。
また、水溶性膜形成成分を水溶液とするには、約50重量%以下の濃度とすることが好ましく、このような水溶液を、例えば、水溶性膜形成成分が、油溶性膜形成成分に対してほぼ等しい当量(例えば、ポリイソシアネートとポリアミンとが用いられる場合では、イソシアネート基/アミノ基の当量比がほぼ1となる割合)となるまで滴下する。
【0052】
このような水溶性膜形成成分の滴下により、水溶性膜形成成分と油溶性膜形成成分とが、油相成分(溶媒)と水相成分(水)との界面で反応することにより、有効成分が内包されるマイクロカプセルを、水分散液として得ることができる。
この反応を促進するために、例えば、約25〜85℃、好ましくは、約40〜80℃で、約30分〜24時間、好ましくは、約1〜3時間攪拌しつつ加熱することが好ましい。
【0053】
そして、このようにして得られるマイクロカプセル(水分散液として調製されるものを含む。)に、必要により、増粘剤、凍結防止剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合することにより、木材保存剤を得ることができる。
本発明の木材保存剤においては、有効成分の放出が過度に抑制されることを防止する観点から、マイクロカプセルの被膜の厚さを0.5μm以下、とりわけ、0.01〜0.5μmとすることが好ましい。
【0054】
マイクロカプセルの被膜の厚さを0.5μm以下となるように、とりわけ、0.01〜0.5μmとなるように調製するには、油溶性膜形成成分の配合割合を、油相成分100重量部に対して、0.01〜30重量部とすることが好ましく、1〜20重量部とすることがより好ましい。
本発明の木材保存剤において、マイクロカプセルは、体積基準の平均粒子径を6〜100μm、好ましくは10〜30μmに調整することが好ましい。
【0055】
マイクロカプセルの平均粒子径および粒子径は、例えば、市販されているレーザ回折/散乱式粒度分布装置を用いて、粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)を測定することにより、求めることができる。
なお、粒子径分布が正規分布となるマイクロカプセルを、目的とする平均粒子径に調整するには、各種の方法によって異なるが、例えば、界面重合法では、油相成分を水相成分に配合した後の攪拌速度を適宜選択することにより、平均粒子径を調整することができる。例えば、平均粒子径が6μm以上、100μm以下のマイクロカプセルを得るには、水相成分の粘度が例えば、0.1〜1Pa・s、好ましくは0.3〜0.6Pa・sである場合において、その攪拌速度を、周速13m/s未満、好ましくは0.1〜12m/sに設定すればよい。
【0056】
本発明の木材保存剤は、例えば、界面重合法によって製造されたマイクロカプセルのままの状態(水懸濁剤)で使用してもよく、また、例えば、粉剤、粒剤など、適宜公知の剤型にさらに製剤化した上で使用してもよい。
また、本発明の木材保存剤において、任意の有効成分である防蟻防虫剤は、上記のように、防腐防カビ剤とともに、マイクロカプセルに内包させることができるが、さらに、別途、防蟻防虫剤を内包するマイクロカプセルを上記の方法により調製して、その防蟻防虫剤を内包するマイクロカプセルを、防腐防カビ剤を内包するマイクロカプセルに混合してもよく、さらには、防腐防カビ剤および防蟻防虫剤を内包するマイクロカプセルに混合してもよい。
【0057】
なお、防腐防カビ剤を内包するマイクロカプセルと、防蟻防虫剤を内包するマイクロカプセルとを混合する場合において、両マイクロカプセルは、予め混合したものを現場で処理してもよく、例えば、木材処理の現場において混合した後に処理してもよい。
木材保存剤の使用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、公知の散布方法によって処理対象の木材に散布すればよい。より具体的には、例えば、有効成分として、防腐防カビ剤を0.05〜10重量%含有し、防蟻防虫剤を0.05〜10重量%含有する水懸濁剤の場合、動力噴霧器または手動噴霧器を用いて、木材の表面に対して50〜300g/m2で散布すればよい。
【0058】
本発明の木材保存剤は、一般工業用材料、土木工業用材料などに使用される各種の木材、およびそれを用いた木製製品に適用することができる。
本発明の木材保存剤は、防腐防カビ剤がマイクロカプセルに内包されるので、木材に処理した後、その防腐および/または防カビ効果、さらに防蟻剤がマイクロカプセルに内包されている場合には、防蟻および/または防虫効果を、長期にわたって発揮することができる。
【0059】
また、本発明の木材保存剤は、
(I) 日本木材保存協会規格の「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法および性能基準(JWPS−FW−S.1)」に規定する防腐効力試験において、オオウズラタケ、カワラタケおよびナミダタケの各供試菌に対する、スギ、ブナおよびアカマツの各処理試験体の平均質量減少率が3%未満であることが好ましく、さらに、防蟻防虫剤を含有する場合には、
(II) 同規格の「表面処理用木材防蟻剤の室内防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TW−S.1)」に規定する防蟻効力試験において、供試虫に対する、クロマツ、アカマツおよびスギの各処理試験体についての平均質量減少率が3%未満であること、が好ましい。
【0060】
上記(I)に示す防腐効力試験および上記(II)に示す防蟻効力試験においては、後述する実施例に示すように、平均質量減少率がそれぞれ5%未満であれば、防腐効力や防蟻効力を有しており、さらに、上記(I)および(II)に示す条件を満たす場合は、その防腐効力や防蟻効力が極めて優れていることから、一般工業用材料、土木工業用材料などに使用される各種の木材、およびそれを用いた製品への適用に、極めて好適である。
【実施例】
【0061】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例に用いる成分の略号と、商品名、製造メーカーなどを下記に示す。
・IPBC:3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(有機ヨード系防腐防カビ剤)、IPBC含有量97.0重量%、商品名「MP−100」、バイエル社製
・プロピコナゾール:1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(トリアゾール系防腐防カビ剤)、商品名「プロピコナゾール原体」、DESOWAG社製
・クロチアニジン:(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(ネオニコチノイド系防蟻防虫剤)、商品名「クロチアニジン原体」、住化武田農薬(株)製
・IPDI系ポリイソシアネート:イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン変性体(油溶性膜形成成分)、「タケネート D−140N」(溶剤置換物)、三井武田ケミカル(株)製
・変性ポリウレタン:3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン(分散剤)、分子量10000〜50000、「Disper BYK−164」、ビックケミー(株)製
・PVOH:ポリビニルアルコール(分散安定剤)、「クラレポバール217」、クラレ(株)製
・ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:アニオン界面活性剤(分散安定剤)、「ニューカルゲンFS−4」、竹本油脂(株)製
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:ノニオン界面活性剤(分散安定剤)、「ナロアクティーN100」、三洋化成(株)製
・凍結防止剤:プロピレングリコール、旭硝子(株)製
・増粘剤:ポリアクリル酸ナトリウム、商品名「レオジック250H」、日本純薬(株)製
・防腐剤:ヨードアセトアミド、商品名「デルトップ」、日本エンバイロケミカルズ(株)製
・アルキルベンゼン:「ソルベッソ 150」(溶媒)、エクソン化学(株)製
・ジフェニルアルカン:「日石ハイゾール SAS−296」(溶媒)、新日本石油化学(株)製
・ジイソプロピルナフタレン:「KMC−113」(溶媒)、呉羽化学工業(株)製
実施例1
IPBC9gとアジピン酸ジイソノニル21gとを配合して、IPBCを30重量%含有するアジピン酸ジイソノニル溶液(以下、「IPBC30%溶液」という。)を調製した後、このIPBC30%溶液にIPDI系ポリイソシアネート5.3gを配合し、均一になるまで攪拌して、油相成分としての油相混合液を得た。
【0062】
次いで、PVOH9gと、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物0.225gとを含有する水相成分としての水溶液132.5gに、上記油相混合液を配合して、常温下、油相混合液が微小滴として分散するまで、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)で攪拌した。ミキサーの回転数は2000min-1であった。
こうして得られた分散液を、75℃の恒温槽中で3時間緩やかに攪拌させつつ、ジエチレントリアミン0.2gを滴下して反応させることによって、IPBCを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)の水分散液を得た。
【0063】
さらに、反応後の水分散液に、凍結防止剤と、増粘剤と、防腐剤と、水とを配合して、全体の重量を225gに調整することによって、IPBCを4重量%含有するマイクロカプセルタイプの木材保存剤を得た。
実施例2
上記IPBC30%溶液に対するIPDI系ポリイソシアネートの配合量を15.6gとし、上記分散液に対するジエチレントリアミンの滴下量を0.59gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、IPBCを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.25μm)を含有する木材保存剤(IPBC4重量%含有)を得た。
【0064】
実施例3
上記IPBC30%溶液に対するIPDI系ポリイソシアネートの配合量を46.8gとし、上記分散液に対するジエチレントリアミンの滴下量を1.77gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、IPBCを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.5μm)を含有する木材保存剤(IPBC4重量%含有)を得た。
【0065】
実施例4
上記IPBC30%溶液に対するIPDI系ポリイソシアネートの配合量を93.9gとし、上記分散液に対するジエチレントリアミンの滴下量を3.55gとしたこと以外は、実施例1と同様にして、IPBCを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.6μm)を含有する木材保存剤(IPBC4重量%含有)を得た。
【0066】
比較例1
IPBC4gと、アジピン酸ジイソノニル35gと、ジエチレングリコールモノメチルエーテル35gと、なたね油10gと、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル16gとを配合し、均一に溶解させて、IPBCを4重量%含有する乳剤からなる木材保存剤を得た。
【0067】
防腐試験
社団法人日本木材保存協会規格の「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法および性能基準(JWPS−FW−S.1)」の規定に準じて、実施例1〜4および比較例1の木材保存剤についての防腐効力試験を実施した。
試験の実施にあたって、上記木材保存剤は、いずれも4倍水希釈液として使用し、耐候操作は、揮散操作のみとした。試験に使用した木材片と供試菌との組み合わせは、スギ(オオウズラタケ)、ブナ(カワラタケ)およびアカマツ(ナミダタケ)の3通りとした。
【0068】
防腐効力の評価は、木材片(処理試験体)の平均質量減少率が3%未満の場合を◎、3%以上5%未満の場合を○、5%以上10%未満の場合を△、10%以上の場合を×とした。
防カビ試験
社団法人日本木材保存協会規格の第2号「木材用防かび剤の防かび効力試験方法」の規定に準じて、実施例1〜4および比較例1の木材保存剤についての防カビ効力試験を実施した。
【0069】
試験の実施にあたって、上記木材保存剤は、いずれも4倍水希釈液として使用した。
防カビ効力の評価は、木材片(処理試験体)にかびの発育が全く認められなかった場合を「0」、木材片の側面のみにかびの発育が認められた場合を「1」、木材片の上面面積の1/3以下にかびの発育が認められた場合を「2」、木材片の上面面積の1/3以上にかびの発育が認められた場合を「3」とした。
【0070】
耐揮散性試験
ベイツガ(柾目、年輪3〜6個/cm、比重0.40〜0.42g/cm3、年輪角度約45度、含水率8〜10%)に対して、実施例1〜4および比較例1の木材保存剤の4倍水希釈液を、約200g/m2塗布した後、40℃の乾燥機中に1ヶ月間保管した。1ヶ月後、乾燥機から取り出したベイツガから有効成分を抽出して、定量分析を実施することにより、有効成分の残存率(%)を算出した。
【0071】
上記各試験の結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例5
上記IPBC30%溶液に代えて、プロピコナゾール9gとアジピン酸ジイソノニル21gとを配合してなる、プロピコナゾールを30重量%含有するアジピン酸ジイソノニル溶液(以下、「プロピコナゾール30%溶液」という。)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、プロピコナゾールを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(プロピコナゾール4重量%含有)を得た。
【0074】
実施例6
上記IPBC30%溶液に代えて、上記プロピコナゾール30%溶液を使用したこと以外は、上記実施例2と同様にして、プロピコナゾールを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.25μm)を含有する木材保存剤(プロピコナゾール4重量%含有)を得た。
【0075】
実施例7
上記IPBC30%溶液に代えて、上記プロピコナゾール30%溶液を使用したこと以外は、上記実施例3と同様にして、プロピコナゾールを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.5μm)を含有する木材保存剤(プロピコナゾール4重量%含有)を得た。
【0076】
実施例8
上記IPBC30%溶液に代えて、上記プロピコナゾール30%溶液を使用したこと以外は、上記実施例4と同様にして、プロピコナゾールを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.6μm)を含有する木材保存剤(プロピコナゾール4重量%含有)を得た。
【0077】
比較例2
IPBC4gに代えて、プロピコナゾール4gを使用したこと以外は、比較例1と同様にして、プロピコナゾールを4重量%含有する乳剤からなる木材保存剤を得た。
上記実施例5〜8および比較例2の木材保存剤について、上述の防腐試験、防カビ試験および耐揮散性試験を実施した。
【0078】
上記各試験の結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例9
IPBC6.75gと、アジピン酸ジイソノニル23.25gとを配合して、IPBCを22.5重量%含有するアジピン酸ジイソノニル溶液(以下、「IPBC22.5%溶液」という。)を調製した後、このIPBC22.5%溶液に、IPDI系ポリイソシアネート5.3gを配合し、均一になるまで攪拌して、油相成分としての油相混合液を得た。
【0081】
次いで、PVOH9gと、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物0.225gとを含有する水相成分としての水溶液132.5gに、上記油相混合液を配合して、常温下、油相混合液が微小滴として分散するまで、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)で攪拌した。ミキサーの回転数は2000min-1であった。
こうして得られた分散液を、75℃の恒温槽中で3時間緩やかに攪拌させつつ、ジエチレントリアミン0.2gを滴下して反応させることによって、IPBCを含有するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)の水分散液を得た。
【0082】
さらに、反応後の水分散液に、凍結防止剤と、増粘剤と、防腐剤と、水とを配合して、全体の重量を225gに調整することによって、IPBCを3重量%含有する木材保存剤を得た。
実施例10
上記IPBC25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、アルキルベンゼン23.25gを使用したこと以外は、実施例9と同様にして、IPBCを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(IPBC3重量%含有)を得た。
【0083】
実施例11
上記IPBC25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、ジフェニルアルカン23.25gを使用したこと以外は、実施例9と同様にして、IPBCを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(IPBC3重量%含有)を得た。
【0084】
実施例12
上記IPBC25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、ジイソプロピルナフタレン23.25gを使用したこと以外は、実施例9と同様にして、IPBCを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(IPBC3重量%含有)を得た。
【0085】
比較例3
IPBC3gと、アジピン酸ジイソノニル36gと、ジエチレングリコールモノメチルエーテル35gと、なたね油10gと、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル16gとを配合し、均一に溶解させて、IPBCを3重量%含有する乳剤からなる木材保存剤を得た。
【0086】
上記実施例9〜12および比較例3の木材保存剤について、これらを3倍水希釈液として使用したこと以外は、上記と同様にして、防腐試験を実施した。また、3倍水希釈液として使用したこと以外は、上記と同様にして、耐揮散性試験を実施した。
さらに、上記実施例9〜12および比較例3の木材保存剤の3倍水希釈液を、木材片(処理試験体)に約200g/m2の割合で塗布した後、これをデシケータに収容して、40℃の環境下にて1日保管した。保管後、デシケータ内の空気をテトラバッグの中に捕集して臭気試験サンプルとし、5人のパネラーによる臭気官能試験を実施して、臭気の有無を判定した。
【0087】
上記各試験の結果を表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
実施例13
上記IPBC22.5%溶液に代えて、プロピコナゾール6.75gと、アジピン酸ジイソノニル23.25gとを配合してなる、プロピコナゾールを22.5%含有するアジピン酸ジイソノニル溶液(以下、「プロピコナゾール22.5%溶液」という。)を使用したこと以外は、実施例9と同様にして、プロピコナゾールを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(プロピコナゾール3重量%含有)を得た。
【0090】
実施例14
上記プロピコナゾール22.5%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、アルキルベンゼン23.25gを使用したこと以外は、実施例13と同様にして、プロピコナゾールを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(プロピコナゾール3重量%含有)を得た。
【0091】
実施例15
上記プロピコナゾール22.5%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、ジフェニルアルカン23.25gを使用したこと以外は、実施例13と同様にして、プロピコナゾールを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(プロピコナゾール3重量%含有)を得た。
【0092】
実施例16
上記IPBC25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、ジイソプロピルナフタレン23.25gを使用したこと以外は、実施例13と同様にして、プロピコナゾールを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(プロピコナゾール3重量%含有)を得た。
【0093】
比較例4
IPBC3gに代えて、プロピコナゾール3gを使用したこと以外は、比較例3と同様にして、プロピコナゾールを3重量%含有する乳剤からなる木材保存剤を得た。
上記実施例13〜16および比較例4の木材保存剤について、これらを3倍水希釈液として使用したこと以外は、実施例1〜4の場合と同様にして、防腐試験を実施した。また、3倍水希釈液として使用したこと以外は、実施例1〜4の場合と同様にして、耐揮散性試験を実施した。さらに、上記と同様にして、臭気試験を実施した。上記各試験の結果を表4に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
実施例17
アジピン酸ジイソノニル660gと変性ポリウレタン40gとを配合し、均一になるまで攪拌した後、クロチアニジン300gを配合して、T.K.オートホモディスパー(特殊機化工業(株)製)で攪拌することによって、クロチアニジンを30重量%含有するスラリー液(以下、「クロチアニジン30%スラリー液」という。)を得た。このクロチアニジン30%スラリー液を、ビーズミル(ガラスビーズ径0.75mm、「ダイノーミル KDL A型」)で、20分間湿式粉砕した。湿式粉砕後のスラリー液中でのクロチアニジンの平均粒径は840nmであった。
【0096】
一方、IPBC25gとアジピン酸ジイソノニル75gとを配合して、IPBCを25重量%含有するアジピン酸ジイソノニル溶液(以下、「IPBC25%溶液」という。)を調製した。
次いで、上記クロチアニジン30%スラリー液2.25gと、上記IPBC25%溶液27.75gと、IPDI系ポリイソシアネート5.3gとを配合し、均一になるまで攪拌して、油相成分としての混合液を得た。
【0097】
次に、PVOH9gと、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物0.225gとを含有する水相成分としての水溶液132.5gに、上記混合液を配合し、常温下、上記混合液が微小滴として分散するまで、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)で攪拌した。ミキサーの回転数は2000min-1であった。
こうして得られた分散液を、75℃の恒温槽中で3時間緩やかに攪拌させつつ、ジエチレントリアミン0.2gを滴下して反応させることによって、上記クロチアニジンとIPBCとを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)の水分散液を得た。
【0098】
さらに、反応後の水分散液に、凍結防止剤と、増粘剤と、防腐剤と、水とを配合して、全体の重量を225gに調整することによって、クロチアニジンを0.3重量%と、IPBCを3重量%含有する木材保存剤を得た。
実施例18
上記クロチアニジン30%スラリー液および上記IPBC25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、アルキルベンゼンを使用したこと以外は、実施例17と同様にして、クロチアニジンとIPBCとを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(クロチアニジン0.3重量%、IPBC3重量%含有)を得た。
【0099】
実施例19
上記クロチアニジン30%スラリー液および上記IPBC25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、ジフェニルアルカンを使用したこと以外は、実施例17と同様にして、クロチアニジンとIPBCとを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(クロチアニジン0.3重量%、IPBC3重量%含有)を得た。
【0100】
実施例20
上記クロチアニジン30%スラリー液および上記IPBC25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、ジイソプロピルナフタレンを使用したこと以外は、実施例17と同様にして、クロチアニジンとIPBCとを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(クロチアニジン0.3重量%、IPBC3重量%含有)を得た。
【0101】
比較例5
クロチアニジン0.3gと、IPBC3gと、アジピン酸ジイソノニル35gと、N−メチル−2−ピロリドン45.7gと、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル16gとを配合し、均一に溶解させて、クロチアニジンを0.3重量%と、IPBCを3重量%含有する乳剤からなる木材保存剤を得た。
【0102】
上記実施例17〜20および比較例5の木材保存剤について、これらを3倍水希釈液として使用したこと以外は、実施例1〜4の場合と同様にして、防腐試験を実施した。また、3倍水希釈液として使用したこと以外は、実施例1〜4の場合と同様にして、耐揮散性試験を実施した。さらに、上記実施例17〜20および比較例5の木材保存剤について、上記と同様にして、臭気試験を実施した。
【0103】
防蟻試験
(社)日本木材保存協会規格の「表面処理用木材防腐剤の室内防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TW−S.1)」の規定に準拠して、実施例17〜20および比較例5の木材保存剤についての防蟻効力試験を実施した。
試験の実施にあたって、上記木材保存剤は、いずれも3倍水希釈液として使用し、耐候操作は、溶脱操作と揮散操作とを交互に10回繰り返した。供試虫にはイエシロアリを使用し、木材片(処理試験体)にはクロマツ、アカマツおよびスギの3種を使用した。
【0104】
防蟻効力の評価は、木材片(処理試験体)の平均質量減少率が3%未満ものを◎、3〜5%のものを○、5〜10%のものを△、10%以上のものを×とした。
上記各試験の結果を表5に示す。
【0105】
【表5】

【0106】
実施例21
上記IPBC25%溶液に代えて、プロピコナゾール25gとアジピン酸ジイソノニル75gとを配合してなる、プロピコナゾールを25重量%含有するアジピン酸ジイソノニル溶液(以下、「プロピコナゾール25%溶液」という。)を使用したこと以外は、実施例17と同様にして、クロチアニジンとプロピコナゾールとを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(クロチアニジン0.3重量%、プロピコナゾール3重量%含有)を得た。
【0107】
実施例22
上記クロチアニジン30%スラリー液および上記プロピコナゾール25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、アルキルベンゼンを使用したこと以外は、実施例21と同様にして、クロチアニジンとプロピコナゾールとを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(クロチアニジン0.3重量%、プロピコナゾール3重量%含有)を得た。
【0108】
実施例23
上記クロチアニジン30%スラリー液および上記プロピコナゾール25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、ジフェニルアルカンを使用したこと以外は、実施例21と同様にして、クロチアニジンとプロピコナゾールとを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(クロチアニジン0.3重量%、プロピコナゾール3重量%含有)を得た。
【0109】
実施例24
上記クロチアニジン30%スラリー液および上記プロピコナゾール25%溶液の調製に際して、アジピン酸ジイソノニルに代えて、ジイソプロピルナフタレンを使用したこと以外は、実施例21と同様にして、クロチアニジンとプロピコナゾールとを内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)を含有する木材保存剤(クロチアニジン0.3重量%、プロピコナゾール3重量%含有)を得た。
【0110】
比較例6
IPBC3gに代えて、プロピコナゾール3gを使用したこと以外は、比較例5と同様にして、クロチアニジンを0.3重量%と、プロピコナゾールを3重量%含有する乳剤からなる木材保存剤を得た。
上記実施例21〜24および比較例6の木材保存剤について、これらを3倍水希釈液として使用したこと以外は、実施例1〜4の場合と同様にして、防腐試験を実施した。また、3倍水希釈液として使用したこと以外は、実施例1〜4の場合と同様にして、耐揮散性試験を実施した。さらに、上記実施例21〜24および比較例6の木材保存剤について、上記と同様にして、防蟻試験と臭気試験とを実施した。
【0111】
上記各試験の結果を表6に示す。
【0112】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
防腐防カビ剤を内包するマイクロカプセルを含有することを特徴とする、木材保存剤。
【請求項2】
前記マイクロカプセルが、さらに、防蟻防虫剤を内包することを特徴とする、請求項1に記載の木材保存剤。
【請求項3】
さらに、防蟻防虫剤を内包するマイクロカプセルを含有することを特徴とする、請求項1に記載の木材保存剤。
【請求項4】
前記マイクロカプセルの被膜の厚さが、0.5μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の木材保存剤。
【請求項5】
前記防腐防カビ剤が、有機ヨード系防腐防カビ剤および/またはトリアゾール系防腐防カビ剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の木材保存剤。
【請求項6】
前記マイクロカプセルが溶媒を含有しており、この溶媒が脂肪酸エステル類であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の木材保存剤。
【請求項7】
前記脂肪酸エステル類がアジピン酸エステルであることを特徴とする、請求項6に記載の木材保存剤。
【請求項8】
日本木材保存協会規格の「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法および性能基準(JWPS−FW−S.1)」に規定する防腐効力試験において、オオウズラタケ、カワラタケおよびナミダタケの各供試菌に対する、スギ、ブナおよびアカマツの各処理試験体の平均質量減少率が3%未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の木材保存剤。
【請求項9】
日本木材保存協会規格の「表面処理用木材防蟻剤の室内防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TW−S.1)」に規定する防蟻効力試験において、供試虫に対する、クロマツ、アカマツおよびスギの各処理試験体についての平均質量減少率が3%未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の木材保存剤。

【公開番号】特開2006−1188(P2006−1188A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181290(P2004−181290)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】