説明

木材保存剤

【課題】カビ類に対して高い防カビ効果を示すとともに、木材に対して高い防腐性を有する防腐用木材保存剤を提供する。また、木材の腐敗を招くカビ類を確実かつ効率良く防除して腐朽を抑制する木材保存方法を提供する。
【解決手段】一般式(I):(式中、R及びRは同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン化アルコキシ基を示し、R及びRがともに水素原子の場合を除く。Rはアルキル基、Rは水素原子を示し、或いはRとRとが結合した式:−CHCH−で示される基を示し、−NAは置換基を有してもよい3又は4個の窒素原子を含む芳香族複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含む木材保存剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材保存剤に関し、詳細には木材腐朽菌等による腐朽に対して有効な木材防腐保存剤、該木材防腐保存剤を含む製剤及び木材の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材の腐朽を防止するための種々の木材防腐剤が知られており、その有効成分としては、木材防腐作用、殺菌作用、防カビ作用等を有する種々の化合物が知られているが、木材を腐朽させその強度を大きく劣化させるオオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、カワラタケ(Trametes versicolor)等の担子菌類に対して必ずしも、効力が十分ではない。
【0003】
特許文献1には抗真菌剤としてアゾール系化合物が報告されている。
【特許文献1】特開平6−49033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、カビ類に対して高い防カビ効果を示すとともに、木材に対して高い防腐性を有する防腐用木材保存剤を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、木材の美観を損なうカビ類を確実かつ効率良く防除して腐朽を抑制する木材保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、所定のアゾール系化合物が木材の美観を損ねるカビ類や腐朽を招く担子菌類に対し高い防除活性を有することを見出した。かかる知見を基に更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の木材保存剤及びそれを用いた木材保存方法に関する。
【0008】
項1. 一般式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R及びRは同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン化アルコキシ基を示し、R及びRがともに水素原子の場合を除く。Rはアルキル基、Rは水素原子を示し、或いはRとRとが結合した式:−CHCH−で示される基を示す。
【0011】
【化2】

【0012】
は置換基を有してもよい3又は4個の窒素原子を含む芳香族複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含む木材保存剤。
【0013】
項2. 前記一般式(I)で表される化合物における2位炭素に結合する置換フェニル基が、式(II):
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で示される基である項1に記載の木材保存剤。
【0016】
項3. 前記式(II)において、RとRの組み合わせ(R、R)が(フッ素原子、フッ素原子)、(フッ素原子、水素原子)、(塩素原子、水素原子)、(水素原子、フッ素原子)又は(トリフルオロメチル、水素原子)である項2に記載の木材保存剤。
【0017】
項4. 前記置換基:
【0018】
【化4】

【0019】
が、環Aを構成している3又は4個の窒素原子の少なくとも2個が隣接している芳香族複素5員環基である項1〜3のいずれかに記載の木材保存剤。
【0020】
項5. 前記項1〜4のいずれかに記載の木材保存剤及び担体を含む製剤。
【0021】
項6. 前記項5に記載の製剤で対象木材を処理することを特徴とする木材の保存方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の木材保存剤は、美観を損ねるカビ類や腐朽を招く担子菌類に対して高い効果を示すことにより木材に対して高い防腐性、保存性を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の木材保存剤は、一般式(I):
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、R及びRは同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン化アルコキシ基を示し、R及びRがともに水素原子の場合を除く。Rはアルキル基、Rは水素原子を示し、或いはRとRとが結合した式:−CHCH−で示される基を示す。
【0026】
【化6】

【0027】
は置換基を有してもよい3又は4個の窒素原子を含む芳香族複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含んでいる。
【0028】
及びRで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0029】
及びRで示されるハロゲン化アルコキシ基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1から6の直鎖もしくは分枝状のアルコキシ基(例、メトキシ,エトキシ,プロポキシ,イソプロポキシ,ブトキシ,イソブトキシ,sec−ブトキシ,tert−ブトキシ,ペンチルオキシ,イソペンチルオキシ,ネオペンチルオキシ,ヘキシルオキシ等)が挙げられる。さらに好ましくは炭素数1から4の直鎖もしくは分枝状のアルコキシ基(例、メトキシ,エトキシ,プロポキシ,イソプロポキシ,ブトキシ,イソブトキシ,sec−ブトキシ,tert−ブトキシ等)、特に好ましくは炭素数1から3の直鎖もしくは分枝状のアルコキシ基(例、メトキシ,エトキシ,プロポキシ,イソプロポキシ等)が挙げられる。
【0030】
該ハロゲン化アルコキシ基におけるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。好ましくは、フッ素原子又は塩素原子である。
【0031】
該ハロゲン化アルコキシ基におけるハロゲンの数は、好ましくは1から8、特に好ましくは1から3である。
【0032】
該ハロゲン化アルコキシ基の好ましい具体例としては、例えばトリフルオロメトキシ,ジフルオロメトキシ,トリクロロメトキシ,2,2,2−トリフルオロエトキシ,2,2,2−トリクロロエトキシ,2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ,4,4,5,5−テトラフルオロペンチルオキシ,6,6,6−トリフルオロヘキシルオキシ等が挙げられる。さらに好ましい具体例としては、例えばトリフルオロメトキシ,ジフルオロメトキシ,トリクロロメトキシ,2,2,2−トリフルオロエトキシ,2,2,2−トリクロロエトキシ,2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ等が挙げられる。さらにトリフルオロメトキシ,ジフルオロメトキシが特に好ましい。
【0033】
上記一般式(I)で表される化合物のうち、2位炭素に結合する置換フェニル基上のR及びRの置換様式が、式(II):
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で示されるものが好ましい。中でも、RとRの組み合わせ(R、R)が、(フッ素原子、フッ素原子)、(フッ素原子、水素原子)、(塩素原子、水素原子)、(水素原子、フッ素原子)、(トリフルオロメチル、水素原子)のものが特に好ましい。
【0036】
で示されるアルキル基としては、炭素数1から3の直鎖もしくは分枝状のアルキル基が挙げられ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられる。好ましくはメチルである。
【0037】
式:
【0038】
【化8】

【0039】
で示される3又は4個の窒素原子を含む芳香族複素環基としては、環を構成している3又は4個の窒素原子の少なくとも2個が隣接している芳香族複素5員環基が挙げられ、例えば1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル,4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル,1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル,2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル,1H−テトラゾール−1−イル,2H−テトラゾール−2−イル等が例示される。特に、環を構成しているすべての窒素原子が互いに隣接する3又は4個の窒素原子を含む芳香族複素5員環基が好ましく、例えば1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル,2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル,1H−テトラゾール−1−イル,2H−テトラゾール−2−イル等が好ましい。特に1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル,2H−1,2,3−トリアゾール−2−イルが好ましい。
【0040】
上記芳香族複素環基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよい低級アルキル基;エステル化またはアミド化されていてもよいカルボキシル基等が挙げられる。芳香族複素環基の置換基数は0〜3個、好ましくは0又は1個である。
【0041】
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0042】
該ハロゲン化されていてもよい低級アルキル基における低級アルキル基としては、好ましくは炭素数1から6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基が挙げられる。その具体例としては、例えばメチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,イソブチル,sec−ブチル,tert−ブチル,ペンチル,イソペンチル,ネオペンチル,tert−ペンチル,ヘキシル,イソヘキシル等が好ましく、特に炭素数1から4の直鎖もしくは分枝状のアルキル基が好ましい。置換基のハロゲンとしては、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素が挙げられ、このうち特にフッ素,塩素が好ましい。具体例としては、例えばトリフルオロメチル,ジフルオロメチル,トリクロロメチル,2,2,2−トリフルオロエチル,2,2,2−トリクロロエチル,2,2,3,3−テトラフルオロプロピル,4,4,5,5−テトラフルオロペンチル,6,6,6−トリフルオロヘキシル等が挙げられる。
【0043】
該エステル化またはアミド化されていてもよいカルボキシル基としては、カルボキシル基,低級アルキル(炭素数1から4)オキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル,エトキシカルボニル,プロポキシカルボニル,ブトキシカルボニル),カルバモイル基,低級アルキル(炭素数1から6)アミノカルボニル基(例、メチルアミノカルボニル,ジメチルアミノカルボニル,ブチルアミノカルボニル,ジプロピルアミノカルボニル)等が挙げられる。このうち特にカルボキシル基,メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基,カルバモイル基が好ましい。
【0044】
一般式(I)で表される化合物について、1位及び2位の炭素は不斉炭素となり得る。それぞれ(R)配置又は(S)配置のいずれであってもカビ類に対して有効な防除活性が発揮されるため、光学活性体、ラセミ体、ジアステレオマー混合物のいずれであってもよい。中でも、一般式(I)で表される化合物の1位炭素が(R)配置のものが好ましい。また、2位炭素は、Rがアルキル基でRが水素原子の場合に不斉炭素となり、その場合(R)配置のものが好ましい。特に(2R,3R)体が好ましい。
【0045】
一般式(I)で表される化合物は、特開平6−49033号公報(以下、特許文献1と称することもある)に記載の方法、あるいは、これに準じる方法により、製造することができる。
【0046】
なお、特許文献1(特開平6−49033号公報)には、抗真菌剤として有用な各種アゾール系化合物が記載されているが、ここには、真菌感染症の予防・治療または農業用抗真菌作用しか開示されていない。これに対し、本発明では、建築物や家屋の腐朽を防止する木材保存剤に関するものであり、特許文献1と本発明では、対象とする微生物の点で大きく相違する。そのため本発明は、特許文献1に記載の用途とは全く別異のものであり予測できない。
【0047】
本発明の防腐用木材保存剤は上記一般式(I)で表される化合物(有効成分)を含んでいる限り、その製剤の形態は特に制限されない。
【0048】
例えば、液剤(溶液剤、水和剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、油剤、ローション剤、マイクロカプセル剤、マイクロスフェア、フロアブル剤など)、固形剤(粉剤、粒剤、錠剤、発泡剤など)、半固形剤(ペースト剤、クリーム剤など)、噴霧剤又はエアゾール剤などの形態で用いることができる。また、これらの剤形に応じて、後述の担体及び添加剤を適宜選択して用いる。
【0049】
上記の製剤を製造する際の担体としては、木材保存剤の剤形に応じて、適宜選択でき、水性及び油性のいずれであってもよい各種担体、例えば、液状担体[シリコーンオイル、動物性油脂、植物性油脂(例えば、なたね油など)などの油性担体;水性溶媒、有機溶媒など]、ゲル担体(アルギン酸類、セルロース又はその誘導体、ポリエチレングリコールなど)、固形又は半固形担体[粉粒状担体{農薬、園芸用製剤などに繁用される各種担体、例えば、粘土鉱物(ゼオライト、セピオライト、アタパルジャイト(パリゴルスカイト)など)、合成ゼオライト、炭(木炭、竹炭など)、タルク類(滑石粉、ロウ石粉など)、クレイ類(微粉末クレイなど)、軽石類(流紋岩系天然ガラス、パーライト(ネオライト興産(株)製など)、鉱物性粉粒物(ケイ砂、バーミキュライト、雲母、炭酸カルシウムなど)、金属酸化物(酸化チタンなど)、硫黄粉末、尿素粉末、植物性粉粒物(ピートモス、木粉、澱粉など)の他;デキストリンなどの糖類(多糖類など);カルボキシビニルポリマー、架橋ポリビニルピロリドンなどの合成高分子;セルロースエーテル類;金属石鹸類など)、被膜形成能を有する樹脂、ロウ、固形パラフィン、長鎖脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸など)など}など]が挙げられる。前記担体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0050】
前記液状担体のうち、水性溶媒又は有機溶媒としては、水、アルコール類[商品名:ISOFOL 14(コンデアジャパン(株)製);エタノール、イソプロパノールなどの低級脂肪族アルコール:エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコール;グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類など]、エーテル類(ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフテンなどの環状エーテル;カルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのカルビトール類など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブなどのアルキルセロソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、アジピン酸ジイソノニルなどの脂肪酸エステル(アルキルエステルなど)など)、炭化水素類[ナフテンを主成
分とした炭化水素溶剤(商品名:ナフテゾール240(新日本石油化学(株)製));ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、商品名:日石ハイゾールSAS−310(新日本石油化学(株)製)などの芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類など]、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、水又は水溶性有機溶媒(低級脂肪族アルコール、(ポリ)アルキレングリコール、脂肪族多価アルコール類、アセトンなど)を用いる場合が多い。前記溶媒のうち、揮発性の高い溶媒(例えば、エタノールなどの低級アルコール、アセトン、アセトニトリル、短鎖鎖状エーテルなど)を用いてもよい。
【0051】
本発明の防腐用木材保存剤が液剤又は半固形剤の場合は、例えば、前記有効成分を適当な液状担体を用いて希釈することにより製造できる。なお、水和剤の場合には、さらに固形又は半固形担体を用いてもよい。
【0052】
本発明の防腐用木材保存剤が固形剤の場合は、例えば、前記有効成分を適当な固形担体で希釈したり造粒することにより製造できる。固形担体としては、前記例示の固形担体が挙げられる。これらの固形担体は、増量剤として使用される場合も多い。これらは一種または二種以上混合して使用できる。
【0053】
本発明の防腐用木材保存剤がエアゾール剤の場合は、例えば、前記有効成分を必要に応じて適当な溶剤で希釈し、噴射剤と共に容器に充填することにより製造できる。溶剤としては、例えば、前記例示の水性溶媒又は有機溶媒などが挙げられる。噴射剤としては、フロン、液化天然ガスなどが挙げられる。
【0054】
なお、本発明の防腐用木材保存剤は、製剤の種類に応じて、必要により種々の添加剤、例えば、;酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定化剤;結合剤;皮膜形成能を有する樹脂;乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤;増粘剤;流動助剤;固結防止剤;凝集剤;紫外線散乱剤;水分除去剤;着色剤;乾燥剤;消臭剤;pH調整剤などを含んでいてもよい。
【0055】
上記酸化防止剤としては、例えば、4,4’チオビス−6−t−ブチル−3−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール(2−t−ブチル−4−メトキシフェノールと3−t−ブチル−4−メトキシフェノールの混合物)、p−オクチルフェノール、モノ(またはジまたはトリ)−(α−メチルベンジル)フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤;N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤;2,5−ジ(t−アミル)ヒドロキノリンなどのヒドロキノリン系酸化防止剤;ジラウリルチオジウロピオネートなどの硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが例示できる。
【0056】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;サリチル酸フェニル、p−t−ブチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系化合物;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物などが挙げられる。
【0057】
上記皮膜形成能を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、塩素化ポリオレフィン、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが例示できる。
【0058】
上記乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などの慣用の界面活性剤が使用できる。アニオン系界面活性剤には、例えば、金属石鹸類、硫酸アルキルナトリウムなどの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム[例えば、花王(株)製、商品名ペレックスNB−L]などのアルキルナフタレンスルホン酸、スルホコハク酸ジアルキルナトリウム[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ネオコールSW−C]などのスルホコハク酸ジアルキル塩、ポリカルボン酸型界面活性剤[例えば、三洋化成(株)製、商品名トキサノンGR−30]、皹オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ディクスゾール60A]、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウムなどが例示できる。ノニオン系界面活性剤には、例えば、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル[例えば、三洋化成(株)製、商品名ナロアクティーCL100]、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名イノゲン・EA−142]などのポリオキシエチレンアリールエーテル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコーポリオキシエチレン、ショ糖脂肪酸エステル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合体[例えば、三洋化成(株)製、商品名ニューポールPE−64]などが例示できる。
【0059】
増粘剤としては、フロアブル剤の貯蔵安定性の向上を図るためのものであって、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどのイオン架橋型有機酸類、例えば、アラビアガム、グアーガム及びこれらの誘導体、ビーガム、キサンタンガム、ウェランガム、ランタンガム、ジュランガム類などのガム類、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびこれらの誘導体などのセルロース類などが挙げられる。好ましくは、セルロース類が挙げられる。
【0060】
本発明の木材保存剤は、さらに他の成分としてシロアリ防除成分を含んでいてもよい。該シロアリ防除成分としては、例えば、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カルバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾール系化合物、オキサジアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物、植物の処理物または誘導体などが挙げられる。
【0061】
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N ’−メチル−N''−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N ’−メチル−N''−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロ−チアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)などが挙げられる。これらネオニコチノイド系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
また、上記例示のなかでも、好ましくは、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ジノテフランが挙げられ、より好ましくは、クロチアニジンが挙げられる。
【0063】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
【0064】
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。これら有機リン系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
カルバメート系化合物としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。これらカルバメート系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記例示のなかでも、好ましくは、フェノカルブが挙げられる。
【0066】
ピロール系化合物としては、例えば、クロルフェナピルなどが挙げられる。
【0067】
フェニルビラゾール系化合物としては、例えば、フィプロニルなどが挙げられる。
【0068】
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
【0069】
セミカルバゾン系化合物としては、例えば、α−(α,α,α−トリフルオロ−m−トルオイル)−p−トリニトリル−4−(p−トリフルオロメトキシフェニル)セミカルバゾンなどが挙げられる。
【0070】
シロアリ防除成分としての植物、および、その処理物またはその誘導体としては、例えば、特開2002−307406号公報、特開2003−252708号公報、特開2005−74776号公報に記載されたものが挙げられる。
【0071】
上記例示のシロアリ防除成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
また、上記例示のシロアリ防除成分のなかでは、ネオニコチノイド系化合物、カルバメート系化合物、フェニルピラゾール系化合物が好ましく、ネオニコチノイド系化合物、フェニルビラゾール系化合物がより好ましく、ネオニコチノイド系化合物が特に好ましい。また、ネオニコチノイド系化合物のなかでも、特に、クロチアニジンが好ましい。
【0073】
他の有効成分(防腐防カビ剤、シロアリ防除成分等)を含有させる場合には、一般式(I)で表される化合物と他の有効成分との比率は、例えば、一般式(I)で表される化合物100重量部に対し、他の有効成分は0.01〜100000重量部、好ましくは0.1〜1000重量部が挙げられる。
【0074】
本発明の木材保存剤において、一般式(I)で表される化合物および他の有効成分をマイクロカプセル化してもよい。
【0075】
マイクロカプセル化剤は、例えば、界面重合法、in situ重合法(界面反応法)、コアセルベーション法、液中乾燥法、融解分散冷却法、液中硬化皮膜法、コーティング法(気中懸濁法)、スプレードライ法、静電合体法、真空蒸着法などにより調製できる。シロアリ防除成分のマイクロカプセル化の具体的手法としては、例えば、特開昭61−249904号公報、特公平6−92282号公報、特公平6−92283号公報、特開平10−114608号公報、特開2000−247821号公報に記載の方法が挙げられる。
【0076】
上記方法で得られたマイクロカプセル化剤を含む水分散液に、上記の樹脂エマルションを配合し、さらに、必要により、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤などを適宜配合する。得られた水懸濁液を乾燥させることにより、マイクロカプセル化剤を得ることができる。
【0077】
マイクロカプセル化剤は、その平均粒子径を、6〜100μm、好ましくは10〜30μmに調製することが好ましい。マイクロカプセル化剤の粒子径および平均粒子径は、例えば、市販されているレーザ回折/散乱式粒度分布装置を用いて、粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)を測定することにより求めることができる。
【0078】
本発明の木材保存剤を木材へ適用するには、木材に塗布する、散布する、注入する、噴霧する、木材を浸漬する、木材と混合する等の方法により、行うことができる。
【0079】
本発明の木材保存剤が適用される木材の種類としては、産業上利用可能な木材であれば特に限定はないが、好ましくはヒノキ、ヒバ、スギ、ベイツガ、マツなどである。保護される木材は、例えば構造用木材、木製角材、線路のまくら木、架橋部品、防波堤、木製の車、パレット、容器、木製被覆材、木製の窓およびドア、合板、削片板、建具屋の仕事または建設業もしくはビル建築等、一般的に用いられている木材ベースの材料である。
【0080】
前記有効成分、すなわち、一般式(I)で表される化合物の含有量は、その使用目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、使用時の製剤中の濃度が、0.001〜90重量%、好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。
【実施例】
【0081】
以下に実施例及び試験例をあげて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
実施例1〜16、18及び19
実施例1〜16、18及び19の化合物は、特許文献1(特開平6−49033号公報)の記載またはそれに準じた方法に従って製造されたものである。各化合物の構造式を表1〜表3に示す。
【0083】
実施例17
実施例17の化合物は、Bull. Chem. Soc. Jpn., 67, 1427-1433 (1994)に従い下記化合物1を合成し、該化合物1から下記の工程により製造されたものである。実施例17の化合物は、実施例1の光学活性化合物(2R,3R)に対応するラセミ体(2R*,3R*)である。
【0084】
【化9】

【0085】
化合物1(1g, 3.98mmol)のDMF 20mlの溶液に、1H-1,2,3-トリアゾール(0.55g, 7.97mmol)及びK2CO3 (2.75g, 19.9mmol)を加えて、80℃で21時間撹拌した。DMFを減圧下留去し、これに酢酸エチルを加えてK2CO3 を濾別した。これに水及びブラインで洗浄し、有機相を乾燥し、溶媒を留去して目的化合物を含む粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:アセトン=1:1)で精製し、更にジイソプロピルエーテルで結晶化して標記の目的化合物を得た(434mg, 34%)。化合物の構造式を表3に示す。
実施例17の化合物(ラセミ体):
1H−NMR(CDCl3)δ:1.43 (3H, d, J=7.0Hz), 3.57 (1H, d, J=14.4Hz), 4.91(1H, dd, J=14.4, 1.2Hz), 5.29 (1H, s), 5.54 (1H, q, J=7.0Hz), 6.75-6.92 (2H, m), 7.43-7.63 (1H, m), 7.65 (1H, s), 7.77 (2H, s), 7.85 (1H, s)
IR(KBr)νmax cm-1:3340, 3302, 1618, 1500, 1421
元素分析値C141426
計算値 C:52.50, H:4.41, N:26.24
実測値 C:52.33, H:4.47, N:26.22
実施例20
実施例20の化合物は、下記の工程により製造されたものである。
【0086】
【化10】

【0087】
(1)文献Chem. Pharm. Bull., 26 (8) 2502-2507 (1978)に従って製造される化合物1 (17.04g, 77.68mmol)のAcOH 30mlの溶液に、HBr-AcOH 0.5mlを加え、これに室温下でBr2 (12.46g, 77.68mmol)をゆっくり滴下した。同温で3時間撹拌して、塩化メチレンで抽出し、水で2回洗浄、pH7.0のbufferで2回洗浄した。得られた有機相を乾燥し、溶媒を留去して、化合物2を得た(21.3g, 92%)。
(2)化合物2(5g, 16.8mmol)をアセトン100mlに溶解し、これに1H-テトラゾール(1.76g, 25mmol)及びK2CO3 (4.63g, 33.6mmol)を加えて、終夜還流した。反応液からK2CO3を濾別した後、酢酸エチルで洗浄し、これに水及び酢酸エチルを加えて、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を水洗、乾燥して、溶媒を留去して化合物3を含む粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1〜3:2)で精製して、化合物3を得た(1.69g, 40.1%)。
(3)トリメチルスルホニウムヨーダイド Me3SI(4.13g, 18.57mmol)のジメチルスルホキシド DMSO(45ml)の溶液に、NaH (668mg, 16.71mmol)を加えて、室温で10分撹拌した。これに化合物3(3.1g, 12.38mmol)のDMSO 50mlの溶液を加えて、室温で3時間撹拌した。反応液に水及び酢酸エチルを加えて、酢酸エチルで2回抽出し、水で3回洗浄した。得られた有機相を乾燥し、溶媒を留去し、これにジエチルエーテルを加えて結晶化させて化合物4の結晶をろ取した(2.1g)。更にろ液を濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製して化合物4(430mg)を得た。両者を併せて化合物4を得た(2.53g, 77.3%)。
(4)化合物4(2.4g, 9mmol)のDMF 50mlの溶液に、1H-1,2,4-トリアゾール(1.86g, 27mmol)及びK2CO3 (3.71g, 27mmol)を加えて、80℃で5時間撹拌した。これに酢酸エチルを加えてK2CO3 を濾別し、酢酸エチルとDMFを減圧下留去した。これに酢酸エチル及び水を加えて、酢酸エチルで2回抽出し、水で2回洗浄した。得られた有機相を乾燥し、溶媒を留去して目的化合物を含む粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:アセトン=1:1)で精製し、更にジイソプロピルエーテルで結晶化して標記の目的化合物を得た(1.32g, 44%)。化合物の構造式を表3に示す。
実施例20の化合物:
Mp 183-185℃
元素分析値C14H13F2N7O
計算値 C:50.45, H:3.93, N:2.42
実測値 C:50.55, H:3.96, N29.33
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
試験例1(最小発育阻止濃度試験)
実施例1〜20で得られた化合物及びプロピコナゾール(PZ)について、倍数希釈法で、<使用菌>の欄に示す試験菌を用いて、下記の条件で最小発育阻止濃度試験を行ない、MIC(μg/ml)を求めた。結果を表4〜表6に示す。
<使用菌>
・カビ4種:Aureobasidium pullulans、Cladosporium cladosporioides、Alternaria sp.、Gliocladium virens
・担子菌2種:Fomitopsis palustris、Trametes versicolor
<培養条件>
・培地:ポテトデキストローズ寒天培地
・培養条件:カビ4種=28℃,3日間、担子菌=26℃,7日間
担子菌2種についてはポテトデキストローズ寒天培地で培養した各菌を、滅菌したコルクボーラーで寒天培地ごとくり抜き、その切片を菌そう面が薬剤含有培地に接するように設置し、培養した。
【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

【0094】
【表6】

【0095】
上記の表4〜表6より、カビ及び担子菌に対し高い抗菌活性を有していることが分かった。特に、木材を腐朽させその強度を大きく劣化させるTrametes versicolor、Fomitopsis palustris等の担子菌類に対して有効であることが分かった。中でも、実施例1、9及び17の化合物は、該担子菌類に対して強い抗菌活性で知られているプロピコナゾール(PZ)とほぼ同等の活性を示すことが分かった。
【0096】
試験例2(防腐試験)
実施例1、9及び17で得られた化合物及びプロピコナゾール(PZ)について、社団法人日本木材保存協会規格集 表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法及び性能基準(JWPS-FW-S.1)に準じた方法を用いて防腐試験を行った。耐候操作を行い、抗菌操作を8週間で行った。
<使用菌>
・オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)
・カワラタケ(Trametes versicolor)
<樹種と菌の組み合わせ>
・スギ→オオウズラタケ
・ブナ→カワラタケ
<試験結果>
試験結果は、抗菌操作を行った処理試験体の抗菌操作による平均質量減少率で表した。個々の試験体の質量減少率は、以下の式によって算出し、その平均値を求めた。
【0097】
【数1】

【0098】
<性能基準>
処理試験体の平均質量減少率が3%未満であるとき、その木材防腐剤は防腐性能ありと評価した。
【0099】
結果を表7に示す。
【0100】
【表7】

【0101】
実施例1、9及び17の化合物を用いた処理試験体の平均質量減少率はいずれも3%未満であり、プロピコナゾールよりも優れた防腐性能を有していることが確認された。
【0102】
製剤例1〜12
上記実施例で得られた化合物を含む各種製剤例を以下に示す。
【0103】
各製剤例で用いた成分の詳細を下記に示す。
・IPDI系ポリイソシアネート:イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン変性体(油溶性膜形成成分)、商品名「タケネート D-140N」(溶剤置換物)、三井化学ポリウレタン(株)製
・P VOH:ポリビニルアルコール(分散安定剤)、商品名「クラレポバール217」、クラレ(株)製
・ナフタレンスルホン酸ホルムアミド縮合物:アニオン界面活性剤(分散安定剤)、商品名「ニューカルゲンFS-4」、竹本油脂(株)製
・ナロアクティーCL100:高級アルコール系非イオン界面活性剤、三洋化成(株)製
・凍結防止剤:プロピレングリコール、旭硝子(株)製
・増粘剤:ポリアクリル酸ナトリウム、商品名「レオジック250H」、日本純薬(株)製
・防腐剤:ヨードアセトアミド、商品名「デルトップ」、日本エンバイロケミカルズ(株)製
製剤例1(油性製剤)
【0104】
【表8】

【0105】
実施例8で得られた化合物0.5重量部と、アジピン酸ジイソノニル50重量部と、アルケンL(新日本石油化学(株)製)24.75重量部と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル24.75重量部とを投入して、均一に溶解させることにより、油剤を調製する。
【0106】
製剤例2(乳化用製剤)
【0107】
【表9】

【0108】
実施例8で得られた化合物1.5重量部と、アジピン酸ジイソノニル36重量部と、ナロアクティーCL100(三洋化成(株)製)15重量部と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル37.5重量部と、菜種白紋油((株)ホーネンコーポレーション製)10重量部とを投入して、均一に溶解させることにより、乳化用製剤を調製する。
【0109】
製剤例3(マイクロカプセル剤)
【0110】
【表10】

【0111】
実施例8で得られた化合物1.125重量部とアジピン酸ジイソノニル28.875重量部とを配合して、実施例8で得られた化合物を3.76重量%含有するアジピン酸ジイソノニル溶液を調製した後、この溶液にIPDI系ポリイソシアネート5.3重量部を配合し、均一になるまで攪拌して、油相成分としての油相混合液を得た。
【0112】
次いで、PVOH 9重量部と、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物0.225重量部とを含有する水相成分としての水溶液132.5重量部に、上記油相混合液を配合して、常温下、油相混合液が微小滴として分散するまで、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)で攪拌した。ミキサーの回転数は2000min-1であった。
【0113】
こうして得られた分散液を、75℃の恒温槽中で3時間穏やかに攪拌させつつ、ジエチレントリアミン0.2重量部を滴下して反応させることによって、実施例8で得られた化合物を内包するマイクロカプセル(平均粒子径10μm、被膜の厚さ0.1μm)の水分散液を得た。
【0114】
さらに、反応後の水分散液に、凍結防止剤と、増粘剤と、防腐剤と、水とを配合して、全体の重量を225重量部に調整することによって、実施例8で得られた化合物を0.5重量%含有するマイクロカプセルタイプの木材保存剤を得た。
【0115】
製剤例4
実施例1の化合物0.5重量部を用いて、上記製剤例1と同様にして、油性製剤を得る。
【0116】
製剤例5
実施例1の化合物1.5重量部を用いて、上記製剤例2と同様にして、乳化用製剤を得る。
【0117】
製剤例6
実施例1の化合物1.125重量部を用いて、上記製剤例1と同様にして、マイクロカプセル剤を得る。
【0118】
製剤例7
実施例9の化合物0.5重量部を用いて、上記製剤例1と同様にして、油性製剤を得る。
【0119】
製剤例8
実施例9の化合物1.5重量部を用いて、上記製剤例2と同様にして、乳化用製剤を得る。
【0120】
製剤例9
実施例9の化合物1.125重量部を用いて、上記製剤例1と同様にして、マイクロカプセル剤を得る。
【0121】
製剤例10
実施例17の化合物0.5重量部を用いて、上記製剤例1と同様にして、油性製剤を得る。
【0122】
製剤例11
実施例17の化合物1.5重量部を用いて、上記製剤例2と同様にして、乳化用製剤を得る。
【0123】
製剤例12
実施例17の化合物1.125重量部を用いて、上記製剤例1と同様にして、マイクロカプセル剤を得る。
【0124】
製剤例1、4、7及び10に関しては原液のまま、製剤例2、5、8及び11に関しては3倍水希釈液として、製剤例3、6、9及び12に関しては4倍水希釈液として使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、R及びRは同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン化アルコキシ基を示し、R及びRがともに水素原子の場合を除く。Rはアルキル基、Rは水素原子を示し、或いはRとRとが結合した式:−CHCH−で示される基を示す。
【化2】

は置換基を有してもよい3又は4個の窒素原子を含む芳香族複素環基を示す。)で表される化合物を有効成分として含む木材保存剤。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物における2位炭素に結合する置換フェニル基が、式(II):
【化3】

(式中、R及びRは前記に同じ。)
で示される基である請求項1に記載の木材保存剤。
【請求項3】
前記式(II)において、RとRの組み合わせ(R、R)が(フッ素原子、フッ素原子)、(フッ素原子、水素原子)、(塩素原子、水素原子)、(水素原子、フッ素原子)又は(トリフルオロメチル、水素原子)である請求項2に記載の木材保存剤。
【請求項4】
前記置換基:
【化4】

が、環Aを構成している3又は4個の窒素原子の少なくとも2個が隣接している芳香族複素5員環基である請求項1〜3のいずれかに記載の木材保存剤。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の木材保存剤及び担体を含む製剤。
【請求項6】
前記請求項5に記載の製剤で対象木材を処理することを特徴とする木材の保存方法。

【公開番号】特開2008−156279(P2008−156279A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346806(P2006−346806)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】