説明

木材被覆におけるバインダーとしての水性複合粒子分散液の使用

木材被覆におけるバインダーとしての、水性複合粒子分散液の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、木材被覆配合物におけるバインダーとしての、ポリマーと微細粒の無機固体とから構成された粒子の水性分散液(水性複合粒子分散液)の使用において、水性複合粒子分散液の製造の際に、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散分布させ、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて、100nm以下の平均粒子直径を有する少なくとも1の分散分布された微細粒の無機固体及び少なくとも1の分散剤の存在下に、ラジカル水性乳化重合法により重合させ、その際、エチレン性不飽和モノマーとして、エチレン性不飽和モノマーAと、0質量%を上回って10質量%以下のエポキシ基を有する少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーB(エポキシモノマー)とからなるモノマー混合物を使用することを特徴とする使用である。
【0002】
木材被覆配合物におけるバインダーとしての水性複合粒子分散液の使用は、当業者に公知である(例えばJ. Leuningerら, Farbe & Lack (110), 10, 2004, 第30頁〜第38頁を参照のこと)。特に、被覆の早期のブロック強度を保証する被覆の硬度と、温度変動の際の被覆の良好な安定性を保証する被覆の弾性との、バランスの取れた比を目指す場合には、木材被覆配合物において複合粒子分散液が使用される。ここで有利には、そのポリマーが−40℃〜+25℃の範囲内のガラス転移温度を有する水性複合粒子分散液が使用され、その際、微細粒の無機固体として特に10〜30nmの平均粒径を有する二酸化ケイ素粒子が使用され、その際、複合粒子中の二酸化ケイ素粒子の含分は20〜50質量%である。しかしながら、アクリラートをベースとする公知のバインダーと比較して、水性複合粒子分散液をベースとする公知の木材被覆配合物は、透水性に関して完全に満足し得るものではない。
【0003】
従って本発明は、木材被覆のより低い透水性を保証する、木材被覆配合物におけるバインダーとしての水性複合粒子分散液を提供するという課題に基づいていた。
【0004】
驚異的にも、前記課題は、冒頭に定義された特別な水性複合粒子分散液の使用により解決された。
【0005】
ポリマーと微細粒の無機固体とから構成されている複合粒子は、特に、その水性分散液(水性複合粒子分散液)の形で一般に公知である。これは、水性分散媒体中の分散相として、互いに絡みあった複数のポリマー鎖からなるポリマーコイル、いわゆるポリマーマトリックスと微細粒の無機固体とから構成された粒子を分散分布させて含有する流体系である。複合粒子の平均直径は、通常10nm以上でかつ1000nm以下の範囲内、しばしば50nm以上でかつ400nm以下の範囲内、しばしば100nm以上でかつ300nm以下の範囲内である。
【0006】
複合粒子及び該複合粒子を水性複合粒子分散液の形で製造する方法、並びに該水性複合粒子分散液の使用は当業者に公知であり、例えば文献US−A3,544,500、US−A4,421,660、US−A4,608,401、US−A4,981,882、EP−A104498、EP−A505230、EP−A572128、GB−A2227739、WO0118081、WO0129106、WO03000760並びにLongら著, Tianjin Daxue Xuebao 1991 , 4, 第10頁〜第15頁、Bourgeat-Lamiら著, Die Angewandte Makromolekulare Chemie 1996, 242, 第105頁〜第122頁、Paulkeら著, Synthesis Studies of Paramagnetic Polystyrene Latex Particles in Scientific and Clinical Applications of Magnetic Carriers, 第69頁〜第76頁, Plenum Press, New York, 1997、Armesら著, Advanced Materials 1999, 11 , No.5, 第408頁〜第410頁に開示されている。
【0007】
ここで、水性複合粒子分散液の製造は、有利に、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散分布させ、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて、少なくとも1の分散分布された微細粒の無機固体及び少なくとも1の分散剤の存在下に、ラジカル水性乳化重合法により重合させるというように行われる。
【0008】
本発明によれば、その製造の際に、0質量%を上回って10質量%以下、有利に0.1〜5質量%、特に有利に0.5〜3質量%のエポキシモノマーを含有するモノマー混合物を使用した、全ての、例えば上記の従来技術により得られる水性複合粒子分散液も使用することができる。かかる水性複合粒子分散液及びその製造は、特に、事前公開されていない出願番号DE10200500918.2のドイツ国特許出願に開示されており、前記開示を本願の範囲内に明文をもって引用することが望ましい。
【0009】
本発明によれば、有利に、エポキシモノマーを含有するモノマー混合物の使用下に、WO03000760に開示されている方法様式により製造された水性複合粒子分散液を使用することができる。WO03000760に開示されている前記方法は、モノマー混合物を水性媒体中に分散分布させ、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて、少なくとも1の分散分布された微細粒の無機固体及び少なくとも1の分散剤の存在下に、ラジカル水性乳化重合法により重合させ、その際、
a)初期固体濃度がこの少なくとも1の無機固体の水性分散液に対して1質量%以上の場合、その製造1時間後に依然として、最初に分散した固体の90質量%を上回る固体を分散した形で含有し、かつその分散した固体粒子が100nm以下の平均直径を有することを特徴とする、少なくとも1の無機固体の安定な水性分散液を使用し、
b)この少なくとも1の無機固体の分散した固体粒子は、分散剤の添加開始前の水性分散媒体のpH値に相当するpH値の標準塩化カリウム水溶液中で、0ではない電気泳動移動度を示し、
c)モノマー混合物の添加開始前に、この水性固体粒子分散液と、少なくとも1のアニオン性、カチオン性及び非イオン性の分散剤とを混合し、
d)その後、モノマー混合物の全量のうち0.01〜30質量%を、この水性固体粒子分散液に添加し、そして少なくとも90%の変換率まで重合させ、
かつ、
e)次いで、モノマー混合物の残量を、重合条件下で、消費に応じて連続的に添加する
ことにより優れている。
【0010】
前記方法には、安定な水性分散液を形成し、その際、該水性分散液が、初期固体濃度が少なくとも1の無機固体の水性分散液に対して1質量%以上の場合、その製造1時間後に依然として、撹拌及び振盪されずに、最初に分散した固体の90質量%を上回る固体を分散した形で含有し、かつその分散した固体粒子が100nm以下の平均直径を有し、更に分散剤の添加開始前の水性反応媒体のpH値に相当するpH値において0ではない電気泳動移動度を示す、全ての微細粒の無機固体が好適である。
【0011】
出発固体濃度及び一時間後の固体濃度の定量的測定並びに平均粒子直径の測定は、超遠心分離分析法によって実施する(これに関して、S. E. Hardingら著、Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science, Royal Society of Chemistry, ケンブリッジ、英国、1992年、第10章、Analysis of Polymer Dispersions with an Eight-Cell-AUC-Multiplexer: High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques, W. Maechtle, 第147頁〜第175頁を参照のこと)。粒子直径の場合に挙げられた値は、いわゆるd50値に相当する。
【0012】
電気泳動移動度を測定する方法は、当業者に公知である(例えば、R. J. Hunter, Introduction to modern Colloid Science, 第8.4章, 第241頁〜第248頁, Oxford University Press, Oxford, 1993並びにK. Oka及びK. Furusawa著, Electrical Phenomena at Interfaces, Surfactant Science Series, 第76巻, 第8章, 第151頁〜第232頁, Marcel Dekker, New York, 1998を参照のこと)。この水性反応媒体中に分散した固体粒子の電気泳動移動度は、市販の電気泳動装置、例えばFa.Malvern Instruments Ltd.社製のZetasizer3000を用いて、20℃、大気圧(=1atm=1.013バールの絶対圧)で測定される。このために、この水性固体粒子分散液を、pH中性の10ミリモル(mM)の塩化カリウム水溶液(標準塩化カリウム溶液)で希釈して、この固体粒子濃度を約50mg/l〜約100mg/lにする。分散剤の添加の開始前の水性反応媒体が有するpH値への前記測定プローブの調節は、通常の無機酸、例えば希釈された塩酸もしくは硝酸又は塩基、例えば希釈された苛性ソーダ液又は苛性カリ液を用いて行なわれる。分散した固体粒子の電場での移動は、いわゆる電気泳動光散乱法を用いて検出される(例えば、B. R. Ware及びW. H. Flygare著, Chem. Phys. Lett. 1971, 12, 第81頁〜第85頁を参照のこと)。この場合、この電気泳動移動度の符号は、分散した固体粒子の移動方向により定義され、すなわち、分散した固体粒子がカソードに移動した場合には、その電気泳動移動度は正であり、該固体粒子がアノードに移動した場合には、その電気泳動移動度は負である。
【0013】
分散した固体粒子の特定の範囲内の電気泳動移動度に影響を及ぼすか又はこれを調節するのに好適なパラメータは、水性反応媒体のpH値である。分散した固体粒子のプロトン化又は脱プロトン化により、電気泳動移動度は、酸性pH範囲(7未満のpH値)においては正の方向に変化し、アルカリ性範囲(7を上回るpH値)においては負の方向に変化する。WO03000760に開示された方法に適したpH範囲は、ラジカル開始水性乳化重合を実施できるpH範囲内である。このpH範囲は、一般的にpH1〜12、特にpH1.5〜11、有利にはpH2〜10である。
【0014】
水性反応媒体のpH値は、市販の酸、例えば希釈された塩酸、硝酸もしくは硫酸又は塩基、例えば希釈された苛性ソーダ液又は苛性カリ液を用いて調節されてよい。しばしば、pH調節のために使用される酸量又は塩基量の部分量又は全体量を、少なくとも1の微細粒の無機固体の添加前に水性反応媒体に添加することは、有利である。
【0015】
WO03000760に開示された方法に関する利点は、モノマー混合物100質量部に対して、有利に1〜1000質量部の微細粒の無機固体が使用されること、及び、分散した固体粒子が上記のpH条件下で
− 負の符号を有する電気泳動移動度を有する場合、少なくとも1のカチオン性分散剤0.01〜10質量部、有利に0.05〜5質量部、特に有利に0.1〜3質量部、少なくとも1の非イオン性分散剤及び少なくとも1のアニオン性分散剤0.01〜100質量部、有利に0.05〜50質量部、特に有利に0.1〜20質量部が使用され、その際、前記量は、カチオン性分散剤に対するアニオン性分散剤の当量比が1を上回るように計量されること、又は、
− 正の符号を有する電気泳動移動度を有する場合、少なくとも1のアニオン性分散剤0.01〜10質量部、有利に0.05〜5質量部、特に有利に0.1〜3質量部、少なくとも1の非イオン性分散剤及び少なくとも1のカチオン性分散剤0.01〜100質量部、有利に0.05〜50質量部、特に有利に0.1〜20質量部が使用され、その際、前記量は、アニオン性分散剤に対するカチオン性分散剤の当量比が1を上回るように計量されることである。
【0016】
カチオン性分散剤に対するアニオン性分散剤の当量比は、使用されるアニオン性分散剤のモル数にこのアニオン性分散剤1モル当たりに含まれるアニオン性基の数を乗じ、それを、使用されるカチオン性分散剤のモル数にこのカチオン性分散剤1モル当たりに含まれるカチオン性基の数を乗じた数で除した商と理解される。これと同じことがカチオン分散剤とアニオン分散剤との当量比に当てはまる。
【0017】
WO03000760により使用される少なくとも1のアニオン性分散剤、カチオン性分散剤及び非イオン性分散剤の全体量が、水性固体分散液中に装入されてよい。しかしながら、単に上述の分散剤の部分量を水性固体分散液中に装入し、残存する残量をラジカル乳化重合の間に連続的にか又は不連続的に添加することも可能である。しかしながら、方法の本質は、ラジカル開始乳化重合の前及び間に、微細粒の固体の電気泳動の符号に応じて上述のアニオン性分散剤とカチオン性分散剤との当量比を維持することである。従って、上述のpH条件下で電気泳動移動度が負の符号を示す無機固体粒子を使用する場合には、カチオン性分散剤に対するアニオン性分散剤の当量比は、乳化重合全体に亘って1より大きくなければならない。相応して、電気泳動移動度が正符号を有する無機固体粒子の場合には、アニオン性分散剤に対するカチオン性分散剤の当量比は、乳化重合全体に亘って1より大きくなければならない。この当量比が2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上又は10以上である場合には有利であり、その際、当量比は、2〜5の範囲内で特に有利である。
【0018】
WO03000760に開示された方法並びに一般に水性複合粒子分散液の製造に使用可能な微細粒の無機固体には、金属、金属化合物、例えば金属酸化物及び金属塩が適しているが、しかし、半金属化合物及び非金属化合物も適している。微細粒の金属粉末としては、貴金属コロイド、例えばパラジウム、銀、ルテニウム、白金、金及びロジウム並びにこれらを含有する合金が使用されてよい。微細粒の金属酸化物としては、例として、二酸化チタン(例えば、Fa.Sachtleben Chemie GmbH社のHombitec(R)商標として市販されている)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)(例えば、Fa.Akzo-Nobel社のNyacol(R)SN商標として市販されている)、酸化アルミニウム(例えば、Akzo-Nobel社のNyacol(R)AL商標として市販されている)、酸化バリウム、酸化マグネシウム、種々の酸化鉄、例えば酸化鉄(II)(ウスタイト)、酸化鉄(III)(ヘマタイト)及び酸化鉄(II/III)(マグネタイト)、酸化クロム(III)、酸化アンチモン(III)、酸化ビスマス(III)、酸化亜鉛(例えば、Fa.Sachtleben Chemie GmbH社のSachtotec(R)商標として市販されている)、酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(III)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化銅(II)、酸化イットリウム(III)(例えば、Fa.Akzo-Nobel社のNyacol(R)YTTRIA商標として市販されている)、酸化セリウム(IV)(例えば、Fa.Akzo-Nobel社のNyacol(R)CEO2商標として市販されている)の非晶質及び/又はその種々の結晶変態並びにそのオキシ水酸化物、例えばオキシ水酸化チタン(IV)、オキシ水酸化ジルコニウム(IV)、オキシ水酸化アルミニウム(例えば、Fa.Condea-Chemie GmbH社のDisperal(R)商標として市販されている)及びオキシ水酸化鉄(III)の非晶質及び/又はその種々の結晶変態が挙げられる。以下の非晶質及び/又はその種々の結晶構造で存在する金属塩を、本発明による方法において原則的に使用することができる:硫化物、例えば硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、二硫化鉄(II)(黄鉄鉱)、硫化スズ(II)、硫化スズ(IV)、硫化水銀(II)、硫化カドミウム(II)、硫化亜鉛、硫化銅(II)、硫化銀、硫化ニッケル(II)、硫化コバルト(II)、硫化コバルト(III)、硫化マンガン(II)、硫化クロム(III)、硫化チタン(II)、硫化チタン(III)、硫化チタン(IV)、硫化ジルコニウム(IV)、硫化アンチモン(III)、硫化ビスマス(III)、水酸化物、例えば水酸化スズ(II)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸鉛(IV)、炭酸塩、例えば炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ジルコニウム(IV)、炭酸鉄(II)、炭酸鉄(III)、オルトリン酸塩、例えばオルトリン酸リチウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸亜鉛、オルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸アルミニウム、オルトリン酸スズ(III)、オルトリン酸鉄(II)、オルトリン酸鉄(III)、メタリン酸塩、例えばメタリン酸リチウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸アルミニウム、ピロリン酸塩、例えばピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸亜鉛、ピロリン酸鉄(III)、ピロリン酸スズ(II)、リン酸塩アンモニウム、例えばリン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸亜鉛アンモニウム、ヒドロキシアパタイト[Ca5{(PO43OH}]、オルトケイ酸塩、例えばオルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)、オルトケイ酸ジルコニウム(IV)、メタケイ酸塩、例えばメタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛、層状ケイ酸塩、例えばアルミニウムケイ酸ナトリウム及びマグネシウムケイ酸ナトリウム、特に自然に離層した形、例えばOptigel(R)SH(Suedchemie AG社の商標)、Saponit(R)SKS-20及びHektorit(R)SKS21(Hoechst AG社の商標)並びにLaponite(R)RD及びLaponite(R)GS(Laporte Industries Ltd.社の商標)、アルミン酸塩、例えばアルミン酸リチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸亜鉛、ホウ酸塩、例えばメタホウ酸マグネシウム、オルトホウ酸マグネシウム、シュウ酸塩、例えばシュウ酸カルシウム、シュウ酸ジルコニウム(IV)、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸亜鉛、シュウ酸アルミニウム、酒石酸、例えば酒石酸カルシウム、アセチルアセトナート、例えばアルミニウムアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、サリチル酸塩、例えばサリチル酸アルミニウム、クエン酸塩、例えばクエン酸カルシウム、クエン酸鉄(II)、クエン酸亜鉛、パルミチン酸塩、例えばパルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸塩、例えばラウリン酸カルシウム、リノール酸塩、例えばリノール酸カルシウム、オレイン酸塩、例えばオレイン酸カルシウム、オレイン酸鉄(II)又はオレイン酸亜鉛。
【0019】
本発明により本質的に使用可能な半金属化合物としては、非晶質及び/又は種々の結晶構造で存在する二酸化ケイ素が挙げられる。本発明により好適な二酸化ケイ素は市販されており、例えばAerosil(R)(Fa.Degussa AG社の商標)、Levasil(R)(Fa.Bayer AG社の商標)、Ludox(R)(Fa.DuPont社の商標)、Nyacol(R)及びBindzil(R)(Fa.Akzo-Nobel社の商標)及びSnowtex(R)(Fa.Nissan Chemical Industries,Ltd.社の商標)として入手可能である。本発明により好適な非金属化合物は、例えばコロイドで存在するグラファイト又はダイヤモンドである。
【0020】
微細粒の無機固体としては、20℃及び大気圧での水中の溶解度が1g/l以下、好ましくは0.1g/l以下、特に好ましくは0.01g/l以下である無機固体が特に好適である。二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫(IV)、酸化イットリウム(III)、酸化セリウム(IV)、オキシ水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、オルトケイ酸塩、例えばオルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄(II)、オルトケイ酸鉄(III)、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム(III)、オルトケイ酸ジルコニウム(IV)、メタケイ酸塩、例えばメタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛、層状ケイ酸塩、例えば特に自然に離層した形のアルミニウムケイ酸ナトリウム及びマグネシウムケイ酸ナトリウム、例えばOptigel(R)SH、Saponit(R)SKS-20及びHektorit(R)SKS21並びにLaponite(R)RD及びLaponite(R)GS、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛及び硫化亜鉛を含む群から選択された化合物が特に好ましい。
【0021】
有利に、少なくとも1の微細粒の無機固体は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、酸化錫(IV)、酸化セリウム(IV)、酸化イットリウム(III)、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛及び硫化亜鉛を含む群から選択されている。
【0022】
ケイ素含有化合物、例えば熱分解法ケイ酸及び/又はコロイドケイ酸、二酸化ケイ素ゾル及び/又は層状ケイ酸塩が特に好ましい。特に、これらのケイ素含有化合物は負の符号の電気泳動移動度を有する。
【0023】
有利には、市販の化合物のAerosil(R)商標、Levasil(R)商標、Ludox(R)商標、Nyacol(R)商標及びBindzil(R)商標(二酸化ケイ素)、Disperal(R)商標(オキシ水酸化アルミニウム)、Nyacol(R)AL商標(酸化アルミニウム)、Hombitec(R)商標(二酸化チタン)、Nyacol(R)SN商標(酸化錫(IV))、Nyacol(R)YTTRIA商標(酸化イットリウム(III))、Nyacol(R)CEO2商標(酸化セリウム(IV))及びSachtotec(R)商標(酸化亜鉛)を本発明による方法において使用することもできる。
【0024】
複合粒子の製造に使用可能な微細粒の無機固体は、水性反応媒体中に分散した固体粒子が100nm以下の平均粒子直径を有するように工面されている。分散した粒子が粒径0nmを上回るが90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下又は10nm以下及びその間の全ての値を有するような微細粒の無機固体が効果的に使用される。50nm以下の粒子直径を有する微細粒の無機固体を使用するのが有利である。この粒子直径の測定は、超遠心分離分析方法により行なわれる。
【0025】
微細粒の固体の入手法は、当業者には原則的に知られており、例えば沈殿反応又は気相中の化学反応によって実施される(これに関しては、E. Matijevic著, Chem. Mater. 1993, 5, 第412頁〜第426頁; Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, A 23巻, 第583頁〜第660頁, Verlag Chemie, Weinheim, 1992; D. F. Evans, H. Wennerstroem著, The Colloidal Domain, 第363頁〜第405頁, Verlag Chemie, Weinheim, 1994及びR. J. Hunter著, Foundations of Colloid Science, 第I巻, 第10頁〜第17頁, Clarendon Press, Oxford, 1991を参照のこと)。
【0026】
安定な固体分散液の製造は、しばしば、水性媒体中での微細粒の無機固体の合成の際に直接にか、又はそれとは異なり、微細粒の無機固体の水性媒体中への分散導入によって実施される。これは、微細粒の無機固体の製造経路に応じて、例えば沈降二酸化ケイ素又は熱分解法二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の場合には直接達成されるか、又は適した補助装置、例えば分散機又は超音波ソノトロードを利用して達成される。
【0027】
水性複合粒子分散液の製造のためには、有利には、水性固体分散液が、初期固体濃度が微細粒の無機固体の水性分散液に対して1質量%以上の場合、その製造の1時間後に依然として、若しくは沈殿した固体の撹拌又は振盪により、更に撹拌又は振盪せずに、最初に分散した固体の90質量%を上回る固体を分散した形で含有し、かつその分散した固体粒子が100nm以下の直径を有する微細粒の無機固体が好適である。通常、初期固体濃度は、60質量%以下である。しかしながら、有利には、微細粒の無機固体の水性分散液に対してその都度55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であり、かつ2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上又は5質量%以上及びその間の全ての値の初期固体濃度を使用してもよい。水性複合粒子分散液の製造の際に、モノマー混合物100質量部に対して、特に1〜1000質量部、一般的には5〜300質量部、有利には10〜200質量部の少なくとも1の微細粒の無機固体が使用される。有利に、少なくとも1の微細粒の無機固体は、モノマー混合物100質量部に対して10〜50質量部、特に有利に25〜40質量部使用される。
【0028】
水性複合粒子分散液を製造する場合には、一般に、微細粒の無機固体粒子並びにモノマーの液滴及び形成された複合粒子を水相中に分散分布させて維持する分散剤が併用され、こうして生じた水性複合粒子分散液の安定性が保証される。分散剤としては、ラジカル水性乳化重合の実施の際に通常使用される保護コロイドのみならず、乳化剤も挙げられる。
【0029】
適した保護コロイドは、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg- Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961 , 第411頁〜第420頁に詳細に記載されている。
【0030】
適した中性保護コロイドは、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、セルロース誘導体、デンプン誘導体及びゼラチン誘導体である。
【0031】
アニオン性保護コロイド、すなわち分散作用を示す成分が少なくとも1価の負電荷を有する保護コロイドとしては、例えばポリアクリル酸及びポリメタクリル酸及びそのアルカリ金属塩、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、4−スチレンスルホン酸及び/又は無水マレイン酸を含有するコポリマー及びそのアルカリ金属塩並びに高分子化合物、例えばポリスチレンのスルホン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0032】
適したカチオン性保護コロイド、即ち分散作用を有する成分が少なくとも1価の正電荷を有する保護コロイドは、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミン基を含有するアクリラート、メタクリラート、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを含有するホモポリマー及びコポリマーの窒素上でプロトン化及び/又はアルキル化された誘導体である。
【0033】
勿論、乳化剤及び/又は保護コロイドからの混合物を使用することもできる。しばしば分散剤として、相対分子量が保護コロイドとは異なって通常1500未満である乳化剤のみが使用される。当然のことながら、界面活性物質の混合物を使用する場合には個々の成分が互いに相溶性でなければならず、このことが疑わしい場合には少しの予備試験に基づいて試験することができる。好適な乳化剤の概要は、例えばMethoden der organischen Chemie, 第XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart 1961, 第192頁〜第208頁に供覧されている。
【0034】
一般に使用される非イオン性乳化剤は、例えばエトキシ化されたモノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール及びトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)並びにエトキシ化された脂肪アルコール(EO度:3〜80;アルキル基:C8〜C36)である。この例は、BASF社製のLutensol(R)A商標(C1214−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:3〜8)、Lutensol(R)AO商標(C1315−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜30)、Lutensol(R)AT商標(C1618−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:11〜80)、Lutensol(R)ON商標(C10−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜11)及びLutensol(R)TO商標(C13−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜20)である。
【0035】
通常のアニオン性乳化剤は、例えば、アルキルスルファート(アルキル基:C8〜C12)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、エトキシ化されたアルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)の硫酸半エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、及び、エトキシ化されたエトキシ化されたアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。
【0036】
他のアニオン性乳化剤として、更に、一般式I
【化1】

[式中、
1及びR2は、H原子又はC4〜C24−アルキルを表し、同時にはH原子ではなく、A及びBは、アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであってよい]の化合物が有効であることが証明された。一般式Iにおいて、R1及びR2は、好ましくは6〜18個、特に6、12及び16個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基又は−Hを表し、その際、R1及びR2の双方が同時にH原子となることはない。A及びBは、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムであることが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。A及びBがナトリウムであり、R1が12個のC原子を有する分枝鎖アルキル基であり、かつR2がH原子であるか又はR1である化合物Iが特に有利である。50〜90質量%のモノアルキル化生成物の含量を有する工業用混合物、例えばDowfax(R)2A1(Dow Chemical Company社の商標)がしばしば使用される。化合物Iは例えばUS−A4269749から一般に公知であり、かつ市販されている。
【0037】
適したカチオン活性乳化剤は、一般にC6〜C18−アルキル基、C6〜C18−アラルキル基又は複素環式基を有する第1級、第2級、第3級又は第4級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩並びにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩である。例として、ドデシルアンモニウムアセタート又は相応の塩酸塩、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルの塩化物又は酢酸塩、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルファート並びにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド並びにジェミニ界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドが挙げられる。更なる多数の例は、H. Stache著, Tensid-Taschenbuch, Carl-Hanser-Verlag, Muenchen, Wien, 1981及びMcCutcheon's, Emulsifiers & Detergents, MC Publishing Company, Glen Rock, 1989に供覧されている。
【0038】
しばしば、水性複合粒子分散液の製造のために、水性複合粒子分散液の全量に対してその都度0.1〜10質量%、有利には0.5〜7.0質量%、特に1.0〜5.0質量%の分散剤が使用される。有利に、乳化剤、特に非イオン性及び/又はアニオン性乳化剤が使用される。WO03000760に開示された方法において、アニオン性、カチオン性及び非イオン性の乳化剤が分散剤として使用される。
【0039】
本発明の本質は、本発明により使用可能な水性複合粒子分散液の製造のために、エチレン性不飽和モノマーAと、0質量%を上回って10質量%以下のエポキシ基を有する少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーB(エポキシモノマー)とからなるモノマー混合物を使用することである。
【0040】
モノマーAとして、とりわけ、特に容易にラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマー、例えばエチレン、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン又はビニルトルエン、ビニルアルコールと1〜18個のC原子を有するモノカルボン酸とのエステル、例えばビニルアセタート、ビニルプロピオナート、ビニル−n−ブチラート、ビニルラウラート及びビニルステアラート、好ましくは3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノ−及びジカルボン酸、例えば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸と、一般に1〜12個、好ましくは1〜8個、特に好ましくは1〜4個のC原子を有するアルカノールとのエステル、例えば特にアクリル酸メチルヘキシルエステル、アクリル酸エチルヘキシルエステル、アクリル酸n−ブチルヘキシルエステル、アクリル酸イソブチルヘキシルエステル及びアクリル酸2−エチルヘキシルエステル及びメタクリル酸メチルヘキシルエステル、メタクリル酸エチルヘキシルエステル、メタクリル酸n−ブチルヘキシルエステル、メタクリル酸イソブチルヘキシルエステル及びメタクリル酸2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジメチルエステル又はマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル並びにC4-8−共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン及びイソプレンがこれに該当する。上述のモノマーは、一般的に、本発明による方法により重合されるべきモノマーAの全量に対して、通常は50質量%以上、80質量以上%又は90質量%以上の割合を占める主要モノマーを形成する。一般に、前記のモノマーは、水中で標準条件(20℃、大気圧)で、中程度ないし低程度の溶解度を有するにすぎない。
【0041】
通常、ポリマーマトリックスの皮膜の内部強度を高める他のモノマーAは、通常、少なくとも1個のヒドロキシ基、N-メチロール基又はカルボニル基を有するか又は少なくとも2個の非共役エチレン性不飽和二重結合を有する。このための例は、2個のビニル基を有するモノマー、2個のビニリデン基を有するモノマー並びに2個のアルケニル基を有するモノマーである。この場合、2価アルコールとα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルが特に有利であり、前記のカルボン酸のうちアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。かかる2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリラート及び−ジメタクリラート、例えばエチレングリコールジアクリラート、1,2−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−ブチレングリコールジアクリラート、1,4−ブチレングリコールジアクリラート及びエチレングリコールジメタクリラート、1,2−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、1,4−ブチレングリコールジメタクリラート並びにジビニルベンゼン、ビニルメタクリラート、ビニルアクリラート、アリルメタクリラート、アリルアクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリラート、トリアリルシアヌラート又はトリアリルイソシアヌラートである。これと関連して、メタクリル酸−C1−C8−ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸−C1−C8−ヒドロキシアルキルエステル、例えばn−ヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、又はn−ヒドロキシブチルアクリラート及びn−ヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート、又はn−ヒドロキシブチルメタクリラート並びに例えばジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリラートないしアセチルアセトキシエチルメタクリラートといった化合物も特に重要である。本発明によれば、上記モノマーは、重合すべきモノマーAの全量に対して、5質量%まで、特に0.1〜3質量%まで、有利に0.5〜2質量%の量で重合に使用される。
【0042】
モノマーAとして、シロキサン基を含有するエチレン性不飽和モノマー、例えばビニルトリアルコキシシラン、例えばビニルトリメトキシシラン、アルキルビニルジアルコキシシラン、アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、又はメタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、例えばアクリルオキシエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン又はメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを使用することもできる。前記モノマーは、モノマーAの全量に対してそれぞれ5質量%まで、しばしば0.01〜3質量%、しばしば0.05〜1質量%の全量で使用される。本発明によれば有利に、前記のシロキサン基を含有するモノマーは、重合すべきモノマーAの全量に対してそれぞれ0.01〜5質量%、特に0.01〜3質量%、有利に0.05〜1質量%の全量で使用される。前記のシロキサン基を含有するシロキサン基を含有するエチレン性不飽和モノマーを、別のモノマーAの前、同時、又は後に供給することができることが重要である。
【0043】
それと共に、モノマーAとして、付加的に、少なくとも1個の酸基及び/又はそれに相応するアニオンを含有するエチレン性不飽和モノマーASか、又は少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−複素環式基及び/又は窒素上でプロトン化又はアルキル化されたアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーANが使用されてよい。重合すべきモノマーAの全量に対して、モノマーASないしモノマーANの量は、10質量%まで、しばしば0.1〜7質量%まで、しばしば0.2〜5質量%である。
【0044】
モノマーASとしては、少なくとも1個の酸基を有するエチレン性不飽和モノマーが使用される。この場合、酸基は、例えばカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基及び/又はホスホン酸基であってよい。そのようなモノマーASの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸並びにn−ヒドロキシアルキルアクリラート及びn−ヒドロキシアルキルメタクリラートのリン酸モノエステル、例えばヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、n−ヒドロキシブチルアクリラート及びヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルメタクリラートのリン酸モノエステルである。しかし、本発明によれば、少なくとも1個の酸基を有する上述のエチレン性不飽和モノマーのアンモニウム塩及びアルカリ金属塩を使用することもできる。アルカリ金属としては、ナトリウム及びカリウムが特に好ましい。この例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩並びにヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、n−ヒドロキシブチルアクリラート及びヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルメタクリラートのリン酸モノエステルのモノ−及びジ−アンモニウム塩、−ナトリウム塩、及び−カリウム塩である。
【0045】
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸をモノマーASとして使用することが好ましい。
【0046】
モノマーANとしては、少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−複素環式基及び/又は窒素上でプロトン化又はアルキル化されたそのアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーが使用される。
【0047】
少なくとも1個のアミノ基を含有するモノマーANの例は、2−アミノエチルアクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、3−アミノプロピルアクリラート、3−アミノプロピルメタクリラート、4−アミノ−n−ブチルアクリラート、4−アミノ−n−ブチルメタクリラート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート(例えば、ElfAtochem社のNorsocryl(R)TBAEMAとして市販されている)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート(例えば、ElfAtochem社のNorsocryl(R)ADAMEとして市販されている)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート(例えば、ElfAtochem社のNorsocryl(R)MADAMEとして市販されている)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルアクリラート及び3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリラートである。
【0048】
少なくとも1個のアミド基を含有するモノマーANの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミドであるが、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムも挙げられる。
【0049】
少なくとも1個のウレイド基を含有するモノマーANの例は、N,N’−ジビニルエチレン尿素及び2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリラート(例えば、Fa.Elf Atochem社のNorsocryl(R)100として市販されている)である。
【0050】
少なくとも1個のN−複素環式基を含有するモノマーANの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール及びN−ビニルカルバゾールである。
【0051】
有利に、モノマーANとして以下の化合物が使用される:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド及び2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリラート。
【0052】
水性反応媒体のpH値に応じて、上述の窒素含有モノマーANの一部又は全量が、窒素上でプロトン化された4級アンモニウムの形で存在していてよい。
【0053】
窒素上に4級アルキルアンモニウム構造を有するモノマーANとしては、例として、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド(例えば、Fa.Elf Atochem社のNorsocryl(R)ADAMQUAT MC80として市販されている)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド(例えば、Fa.Elf Atochem社のNorsocryl(R)MADQUAT MC75として市販されている)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリラート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド(例えば、Fa.Elf Atochem社のNorsocryl(R)ADAMQUAT BZ80として市販されている)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド(例えば、Fa.Elf Atochem社のNorsocryl(R)MADQUAT BZ75として市販されている)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド及び3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリドが挙げられる。上述の塩化物の代わりに、相応の臭化物及び硫化物を使用してよいことは勿論である。
【0054】
2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド及び2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリドが使用されることは、好ましい。
【0055】
上述のエチレン性不飽和モノマーASないしANの混合物を使用してもよいことは勿論である。
【0056】
WO03000760の場合、負符号を有する電気泳動移動度を有する分散した固体粒子が存在する場合には、少なくとも1のアニオン分散剤の部分量又は全体量は、モノマーASの当量によって代替されてよく、正符号を有する電気泳動移動度を有する分散した固体粒子が存在する場合には、少なくとも1のカチオン分散剤の部分量又は全体量は、少なくとも1のモノマーANの当量によって代替されてよい。
【0057】
特に有利に、モノマーAの組成は、該モノマーAの単独重合の後に、ガラス転移温度が100℃以下、有利に60℃以下、特に40℃以下でかつしばしば−30℃以上、しばしば−20℃以上又は−10℃以上であるポリマーが生じるように選択する。
【0058】
通常、ガラス転移温度の測定は、DIN53765により(示差走査熱量測定、20K/分、中点測定)行う。
【0059】
Fox (T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1956 [Ser. II]1 , 第123頁及びUIImann's Encyclopaedie der technischen Chemie, 第19巻, 第18頁, 第4版, Verlag Chemie, Weinheim, 1980)によれば、最も弱く架橋したコポリマーのガラス転移温度Tgに関して以下の良好な近似式:
1/Tg = x1/Tg1 + x2/Tg2 + .... xn/Tgn
[式中、
1、x2、....xnはモノマー1、2....nの質量分率であり、Tg1、Tg2....Tgnはそれぞれモノマー1、2....nの一つだけから構成されたポリマーのガラス転移温度(ケルビンで示す)を意味する]が成立する。大抵のホモポリマーについてのTg値は公知であり、例えばUllmann’s Ecyclopedia of Industrial Chemistry, 第5版, A21巻, 第169頁, VCH Weinheim, 1992に記載されており;ホモポリマーのガラス転移温度についての他の出典は例えばJ. Brandrup, E.H. Immergut著, Polymer Handbook, 第1版, J. Wiley, New York 1966; 第2版,. J.Wiley, New York 1975及び第3版, J. Wiley, New York 1989である。
【0060】
モノマーB(エポキシモノマー)として、少なくとも1のエポキシ基を有する全てのエチレン性不飽和化合物を使用することができる。しかしながら特に、例えばUS−A5,763,629に開示されているように、1,2−エポキシブテン−3、1,2−エポキシ−3−メチルブテン−3、グリシジルアクリラート(2,3−エポキシプロピルアクリラート)、グリシジルメタクリラート(2,3−エポキシプロピルメタクリラート)、2,3−エポキシブチルアクリラート、2,3−エポキシブチルメタクリラート、3,4−エポキシブチルアクリラート及び3,4−エポキシブチルメタクリラート並びに相応するアルコキシル化、特にエトキシル化及び/又はプロポキシル化されたグリシジルアクリラート及びグリシジルメタクリラートを含む群から選択された少なくとも1のエポキシモノマーである。勿論、本発明により、エポキシモノマーの混合物を採用することもできる。有利に、グリシジルアクリラート及び/又はグリシジルメタクリラートがエポキしモノマーとして使用される。
【0061】
全モノマー量に対して、エポキシモノマーの量は0質量%を上回ってかつ10質量%以下である。しばしば、エポキシモノマーの全量は、全モノマー量に対してそれぞれ0.01質量%以上、0.1質量%以上又は0.5質量%以上、しばしば0.8質量%以上、1質量%又は1.5質量%以上ないし8質量%以下、7質量%以下又は6質量%、しばしば5質量%以下、4質量%又は3質量%である。有利に、エポキシモノマーの量は、全モノマー量に対してそれぞれ0.1質量%以上でかつ0.5質量%以下、特に有利に0.5質量%以下でかつ3質量%以下である。
【0062】
従って、重合すべきモノマー混合物は、95質量%以上でかつ99.9質量%以下、特に有利に97質量%以上でかつ99.5質量%以下のモノマーAと、0.1質量%以上でかつ5質量%以下、特に有利に0.5質量%以上でかつ3質量%以下のエポキシモノマーとからなる。
【0063】
エポキシモノマーが、本発明により、モノマーAを有するモノマー混合物で使用されることが重要である。しかしながら、エポキシモノマーを水性重合媒体に、モノマーAと別個に並行して供給することも可能である。ここで、エポキシモノマーを、重合媒体に、非連続的に1以上に分けて、又は連続的に同じか又は異なる流量で供給することができる。しかしながら通常は、エポキシモノマーは、重合媒体に、モノマーAと一緒にモノマー混合物中に供給される。
【0064】
有利に、重合すべきモノマー混合物は、該モノマー混合物から得られるポリマーが、100℃以下、有利に60℃以下又は40℃以下、特に30℃以下又は20℃以下でかつしばしば−30℃以上又は−15℃以上、しばしば−10℃以上又は−5℃以上のガラス転移温度を有し、従って、水性複合粒子分散液が − 場合により通常の皮膜形成助剤の存在下に − 容易に微細粒の無機固体を含有するポリマー皮膜(複合皮膜)に変換されるように選択される。
【0065】
本発明により使用可能なラジカル重合による水性複合粒子分散液の製造のために、ラジカル水性乳化重合を生じ得る全てのラジカル重合開始剤が挙げられる。この場合、ラジカル重合開始剤は原則的にペルオキシドであってもアゾ化合物であってもよい。勿論、レドックス開始剤系も挙げられる。ペルオキシドとしては、原理的に、無機ペルオキシド、例えば過酸化水素又はペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノアルカリ金属塩又はジアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノナトリウム塩、モノカリウム塩及びジナトリウム塩、ジカリウム塩又はアンモニウム塩又は有機ペルオキシド、例えばアルキルヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンチルヒドロペルオキシド又はクミルヒドロペルオキシド、並びにジアルキルペルオキシド又はジアリールペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド又はジクミルペルオキシドが使用される。アゾ化合物としては、主に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル及び2,2’−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩(AIBA、Wako Chemicals社のV-50に相当)が使用される。レドックス開始剤系のための酸化剤としては、主として上述のペルオキシドが挙げられる。相応する還元剤としては、酸化数が低い硫黄化合物、例えばアルカリ金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸カリウム及び/又は亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素カリウム及び/又は亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム及び/又はメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩、例えばホルムアルデヒドスルホキシル酸カリウム及び/又はホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、脂肪族スルフィン酸のアルカリ金属塩、特にカリウム塩及び/又はナトリウム塩、及びアルカリ金属硫化水素、例えば硫化水素カリウム及び/又は硫化水素ナトリウム、多価金属塩、例えば硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)、リン酸鉄(II)、エンジオール、例えばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾイン及び/又はアスコルビン酸並びに還元糖類、例えばソルボース、グルコース、フルクトース及び/又はジヒドロキシアセトンを使用することができる。一般的に、使用されるラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物の全量に対して0.1〜5質量%である。
【0066】
微細粒の無機固体の存在下でのラジカル水性重合反応のための反応温度としては、0〜170℃の全範囲が該当する。この場合、一般に50〜120℃、しばしば60〜110℃、しばしば70〜100℃の温度が適用される。このラジカル水性乳化重合は、1バール(絶対圧)より小さい圧力、これと同じ圧力又はこれより大きい圧力で実施されてよく、この場合、重合温度は100℃を上回って170℃までであってよい。易揮発性のモノマー、例えばエチレン、ブタジエン又は塩化ビニルを、圧力を高めて重合させることは、好ましい。この場合、圧力は1.2、1.5、2.5、10、15バール(絶対)又は更に高い値をとることができる。乳化重合を低圧で実施する場合には、950ミリバール、特に900ミリバール、有利には850ミリバール(絶対圧)の圧力に調節される。ラジカル水性重合を1atm(絶対圧)で不活性ガス雰囲気下で、例えば窒素又はアルゴン下で実施することは、有利である。
【0067】
水性反応媒体は、原理的に、わずかな程度で、水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、しかしまたアセトン等をも含むことができる。しかし、有利には、重合反応は、このような溶剤の不在下に行なわれる。
【0068】
水性複合粒子分散液を製造する方法においては、前記の成分の他に、場合により、ラジカル連鎖移動化合物を使用し、重合により得られるポリマーの分子量を減らすか又は調節してもよい。この場合、主として、脂肪族及び/又は芳香脂肪族のハロゲン化合物、例えば、塩化n−ブチル、臭化n−ブチル、ヨウ化n−ブチル、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル、臭化ベンジル、有機チオ化合物、例えば第1級、第2級又は第3級脂肪族チオール、例えばエタンチオール、n−プロパンチオール、2−プロパンチオール、n−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、n−ペンタンチオール、2−ペンタンチオール、3−ペンタンチオール、2−メチル−2−ブタンチオール、3−メチル−2−ブタンチオール、n−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、3−ヘキサンチオール、2−メチル−2−ペンタンチオール、3−メチル−2−ペンタンチオール、4−メチル−2−ペンタンチオール、2−メチル−3−ペンタンチオール、3−メチル−3−ペンタンチオール、2−エチルブタンチオール、2−エチル−2−ブタンチオール、n−ヘプタンチオール及びその異性体化合物、n−オクタンチオール及びその異性体化合物、n−ノナンチオール及びその異性体化合物、n−デカンチオール及びその異性体化合物、n−ウンデカンチオール及びその異性体化合物、n−ドデカンチオール及びその異性体化合物、n−トリデカンチオール及びその異性体化合物、置換チオール、例えば2−ヒドロキシエタンチオール、芳香族チオール、例えばベンゼンチオール、オルト−、メタ−、又はパラ−メチルベンゼンチオール、並びにPolymerhandbook 第3版, 1989, J.Brandrup und E.H.Immergut, John Weley & Sons, 第II章, 第133頁〜第141頁)に記載されている他の全種の硫黄化合物を使用するが、脂肪族及び/又は芳香族アルデヒド、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及び/又はベンズアルデヒド、不飽和脂肪酸、例えばオレイン酸、非共役二重結合を有するジエン、例えばジビニルメタン又はビニルシクロヘキサン又は容易に引抜き可能な水素原子を有する炭化水素、例えばトルエンをも使用する。しかし、支障のない前記のラジカル連鎖移動化合物の混合物を使用することも可能である。場合によっては使用されるラジカル連鎖移動化合物の全量は、重合すべきモノマーの全量に対して一般に5質量%以下、有利には3質量%以下、特に1質量%以下である。
【0069】
本発明による方法により入手可能な水性複合粒子分散液は、通常、1〜70質量%、特に5〜65質量%、有利には10〜60質量%の全固体含量を有する。
【0070】
異なる方法により、特にWO03000760に開示された方法により得ることができる複合粒子は、通常、10nm以上でかつ1000nm以下の範囲内、しばしば50nm以上でかつ400nm以下の範囲内、しばしば100nm以上でかつ300nm以下の範囲内の平均粒子直径を有する。複合粒子の平均粒子直径の測定も、超遠心分離分析法によって実施する(これに関して、S. E. Hardingら著、Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science, Royal Society of Chemistry, ケンブリッジ、英国、1992年、第10章、Analysis of Polymer Dispersions with an Eight-Cell-AUC-Multiplexer: High Resolution Particle Size Distribution and Density Gradient Techniques, W. Maechtle, 第147頁〜第175頁を参照のこと)。挙げられた値は、いわゆるd50値に相当する。木材被覆配合物において使用するためには、有利に、複合粒子が、50nm以上でかつ300nm以下、有利に200nm以下、特に150nm以下の平均粒子直径を有する複合粒子分散液が好適である。
【0071】
異なる方法により入手可能な複合粒子は、異なる構造を有し得る。この場合、複合粒子は、1種又は複数種の微細粒の固体粒子を含有し得る。微細粒の固体粒子は、ポリマーマトリックスにより完全に包囲されていることができる。しかしながら、微細粒の固体粒子の一部分がポリマーマトリックスにより包囲されている一方で、その他の部分がポリマーマトリックスの表面上に配置されていることも可能である。勿論、微細粒の固体粒子の大部分がポリマーマトリックスの表面上に結合されていることも可能である。
【0072】
通常、異なる方法により入手可能な複合粒子は、複合粒子(ポリマー量と固体粒子量とからの合計に相当)に対してそれぞれ、10質量%以上、有利に15質量%以上、特に有利に20質量%以上、25質量%以上又は30質量%以上の、微細粒の無機固体の含分を有する。本発明によれば有利に、複合粒子が、10質量%以上でかつ50質量%以下、特に有利に20質量%以上でかつ40質量%以下の範囲内の微細粒の無機固体の含分を有する水性複合粒子分散液が使用される。
【0073】
上記の水性複合粒子分散液は、有利に木材被覆配合物におけるバインダーとして好適である。
【0074】
これに応じて、本発明による木材被覆配合物は水性複合粒子分散液を含有し、その際、前記の水性複合粒子分散液の製造の際に、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散分布させ、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて、100nm以下の平均粒子直径を有する少なくとも1の分散分布された微細粒の無機固体及び少なくとも1の分散剤の存在下に、ラジカル水性乳化重合法により重合させ、その際、エチレン性不飽和モノマーとして、エチレン性不飽和モノマーAと、0質量%を上回って10質量%以下のエポキシ基を有する少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーB(エポキシドモノマー)とからなるモノマー混合物を使用する。
【0075】
本願明細書の範囲内で、木材被覆配合物とは、木材ないし木材表面の被覆に使用される全ての水性配合物、特にクリアコート、木材用艶出し剤、木材用塗料又は艶出しワニスであると解釈される。
【0076】
ここで、クリアコートとは、顔料不含の透明な乾性木材被覆配合物であると解釈され、木材用艶出し剤とは、木材構造体を目視可能にする、低度に顔料着色された透明な乾性被覆配合物であると解釈され、木材用塗料とは、十分な被覆力を伴って乾燥し、かつ木材構造体を目視不可能にする顔料着色された被覆配合物であると解釈され、かつ、艶出しワニスとは、十分な被覆力を伴って乾燥し、かつ高光沢を示す顔料着色された被覆配合物であると解釈される。
【0077】
木材被覆配合物の予定される使用目的に応じて、該木材被覆配合物は、上記の水性複合粒子分散液に加えて、種類及び量が当業者に周知である他の通常の配合成分、例えば顔料及び充填剤、いわゆる皮膜形成助剤、増粘剤、消泡剤、湿潤助剤及び分散助剤、中和剤、青変防止剤及び/又は保存剤を含有することができる。
【0078】
顔料として、原則的に当業者に周知の全ての白色顔料ないし有色顔料を使用することができる。
【0079】
最も重要な白色顔料として、その高い屈折率及び良好な被覆能に基づき、種々の変態の二酸化チタンを挙げることができる。しかし、酸化亜鉛及び硫化亜鉛も白色顔料として使用される。この場合、前記の白色顔料は表面被覆された(即ちコートされた)形か又は未被覆の(即ちコートされていない)形で使用することができる。しかし、それに加えて、有機白色顔料、例えば約300〜400nmの粒径を有する、皮膜化しないスチレン基富有及びカルボキシル基富有の中空のポリマー粒子(いわゆる、不透明な粒子)も使用される。
【0080】
− 例えば本発明により入手可能な水性複合粒子分散液を含有する被覆材料の − 着色のために、白色顔料に加えて、当業者に周知の種々の有色顔料、例えば若干安価な無機の酸化鉄、酸化カドミウム、酸化クロム及び酸化鉛又は硫化鉄、硫化カドミウム、硫化クロム及び硫化鉛、モリブデン酸鉛、コバルトブルー又はカーボンブラック並びに若干高価な有機顔料、例えばフタロシアニン、アゾ顔料、キナクリドン、ペリレン又はカルバゾールを使用することができる。
【0081】
充填剤としては、主に顔料と比較してより低い屈折率を有する無機材料が使用される。この場合、粉末状の充填剤は、しばしば天然に由来する鉱物、例えば方解石、チョーク、ドロマイト、カオリン、タルク、雲母、珪藻土、重晶石、石英又はタルク/緑泥岩連晶であるが、しかし、合成により製造された無機化合物、例えば沈降炭酸カルシウム、焼成カオリン又は硫酸バリウム並びに熱分解法珪酸も含まれる。好ましくは、充填剤として、結晶性方解石又は非晶質チョークの形の炭酸カルシウムが使用される。
【0082】
複合粒子中に含まれる20℃を上回るガラス転移温度を有するポリマーも確実に室温で皮膜化できるようにするために、凝集助剤とも呼ばれる皮膜形成助剤が使用される。皮膜形成助剤は、ポリマーバインダーの皮膜形成を被覆の形成の際に改善し、さらに引続き、環境温度、空中湿度及び沸点並びにこの沸点により生じる蒸気圧に依存して被覆から周囲環境へ放出される。当業者に公知である皮膜形成助剤は、例えば試験用ベンジン、水混和性グリコールエーテル、例えばブチルグリコール、ブチルジグリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル又はジプロピレングリコールブチルエーテル並びにグリコールアセタート、例えばブチルグリコールアセタート、ブチルジグリコールアセタートであるが、カルボン酸及びジカルボン酸のエステル、例えば2−エチルヘキシルベンゾアート、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチラート又はトリプロピレングリコールモノイソブチラートも含む。
【0083】
製造、取扱い、貯蔵及び適用の際に木材被覆配合物のレオロジーを最適に調節するために、しばしばいわゆる増粘剤又はレオロジー添加剤が配合成分として使用される。当業者には、多数の種々の増粘剤、例えば有機増粘剤、例えばキサンタン増粘剤、グアール増粘剤(多糖類)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース(セルロース誘導体)、アルカリ膨潤性分散液(アクリラート増粘剤)又は疎水変性された、ポリエーテルをベースとするポリウレタン(ポリウレタン増粘剤)又は無機増粘剤、例えばベントナイト、ヘクトライト、スメクタイト、アタパルジャイト(Bentone)並びにチタナート又はジルコナート(メタルオルガニル)は、公知である。
【0084】
本発明による木材被覆配合物の製造、取扱い、貯蔵及び適用の際に泡形成を回避するために、いわゆる消泡剤が使用される。消泡剤は、当業者に周知である。この場合、主に鉱油消泡剤及びシリコーン油消泡剤が重要である。消泡剤、とりわけ高活性のシリコーン含有消泡剤は、一般に極めて慎重に選択及び供給されねばならず、それというのも、この消泡剤は被覆の表面欠陥(クレーター、凹み等)を招きうるからである。微細粒の疎水性粒子、例えば疎水性珪酸又はロウ粒子を消泡剤液中に添加することによって、消泡剤の作用をなお向上させることができることは、本質的なことである。
【0085】
粉末状の顔料及び充填剤を本発明により使用することのできる木材被覆配合物中に最適に分布させるために、湿潤助剤及び分散助剤が使用される。この場合、湿潤助剤及び分散助剤は、分散過程を、水性分散媒体中での粉末状顔料及び充填剤の湿潤の簡易化(湿潤剤効果)、粉末凝集塊の破砕(分解効果)並びに剪断処理の際に生じる顔料一次粒子及び充填剤一次粒子の立体的安定化又は静電的安定化(分散剤効果)によって支持する。湿潤助剤及び分散助剤としては、殊に当業者に周知のポリホスファート及びポリカルボン酸の塩、殊にポリアクリル酸のナトリウム塩又はアクリル酸コポリマーが使用される。
【0086】
必要な場合には、中和剤として当業者に周知である無機酸又は有機酸、例えば塩酸、硫酸、酢酸又はプロピオン酸又は塩基、例えば苛性カリ液、苛性ソーダ液、アンモニア、エチレンジアミンを、本発明による木材被覆配合物のpH値調整のために使用することができる。
【0087】
青変菌による木材被覆の被害を回避するために、本発明による木材被覆配合物を、いわゆる青変防止剤として混合することができる。
【0088】
製造、取扱い、貯蔵及び適用の際に、微生物、例えば細菌類、(糸状菌)真菌類又は酵母による本発明による木材被覆配合物の被害を回避するために、しばしば当業者に周知の保存剤又は殺生剤が使用される。この場合には、殊にメチルイソチアゾリノンとクロロイソチアゾリノンとの作用物質組合せ物、ベンズイソチアゾリノン、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド分解剤が使用される。
【0089】
前記配合成分の他に、本発明による木材被覆配合物に、製造、取扱い、貯蔵及び適用の際に、なおさらに当業者に周知の助剤、例えば艶消剤、ロウ又は均展助剤等を添加することができる。
【0090】
少なくとも1の木材表面を有する成形体の被覆は、通常、木材表面を、50〜500g/m2、しばしば100〜400g/m2、しばしば200〜350g/m2(固体として算出)の木材被覆配合物で被覆し、次いで乾燥するというように行われる。
【0091】
この場合、原則的に、本発明による木材被覆配合物がプライマーとして木材表面上に、即ち未処理の木材表面上に直接施与されるか、上塗り塗料として、即ちプライマーで処理された木材表面上に施与されるか、かつ/又はいわゆるトップコートとして、即ち上塗り塗料で処理された木材表面上に施与されるかは重要でない。木材の水透過、ひいては水吸収を出来る限り低く保つために、本発明による木材被覆配合物は有利に、プライマー、上塗り塗料として、及びトップコートとして、特に有利に上塗り塗料として、及びトップコートとして、特に有利に専らトップコートして、木材表面上に施与される。
【0092】
典型的なプライマー配合物は、必須の配合成分として以下のものを含有する:
本発明による複合粒子10〜25質量%
水70〜85質量%
湿潤剤0.05〜1質量%
消泡剤0.1〜1質量%
青変防止剤0.1〜3質量%
会合性増粘剤0.1〜2質量%
透明な酸化鉄顔料0〜4質量%
皮膜形成助剤0〜5質量%
塩基0.05〜5質量%。
【0093】
典型的な上塗り塗料配合物は、必須の配合成分として以下のものを含有する:
本発明による複合粒子20〜40質量%
水55〜75質量%
湿潤剤0.05〜1質量%
消泡剤0.1〜1質量%
青変防止剤0.1〜3質量%
会合性増粘剤0.1〜2質量%
透明な酸化鉄顔料0〜4質量%
皮膜形成助剤0〜5質量%
塩基0.05〜5質量%。
【0094】
典型的なトップコート配合物は、必須の配合成分として以下のものを含有する:
本発明による複合粒子20〜40質量%
水55〜75質量%
湿潤剤0.05〜1質量%
消泡剤0.1〜1質量%
青変防止剤0.1〜3質量%
会合性増粘剤0.1〜2質量%
透明な酸化鉄顔料0〜4質量%
皮膜形成助剤0〜5質量%
塩基0.05〜5質量%。
【0095】
少なくとも1の木材表面を有する成形体の被覆のために、しばしば、本発明による複合粒子分散液を含有する、クリアコート、木材用艶出し剤、木材用塗料又は艶出しワニスが使用される。
【0096】
典型的な木材用クリアコートは、必須の配合成分として以下のものを含有する:
本発明による複合粒子20〜40質量%
水55〜75質量%
湿潤剤0.05〜1質量%
消泡剤0.1〜1質量%
青変防止剤0.1〜3質量%
会合性増粘剤0.1〜2質量%
UV吸収剤0.1〜5質量%
皮膜形成助剤0〜5質量%
塩基0.05〜5質量%。
【0097】
典型的な木材用艶出し剤は、必須の配合成分として以下のものを含有する:
本発明による複合粒子20〜40質量%
水55〜75質量%
湿潤剤0.05〜1質量%
消泡剤0.1〜1質量%
青変防止剤0.1〜3質量%
会合性増粘剤0.1〜2質量%
透明な酸化鉄顔料0〜4質量%
皮膜形成助剤0〜5質量%
塩基0.05〜5質量%。
【0098】
典型的な木材用塗料は、必須の配合成分として以下のものを含有する:
本発明による複合粒子10〜30質量%
水25〜65質量%
湿潤剤0.05〜1質量%
消泡剤0.1〜1質量%
青変防止剤0.1〜3質量%
会合性増粘剤0.1〜2質量%
セルロース増粘剤0.1〜2質量%
白色顔料15〜30質量%
充填剤5〜15質量%
皮膜形成助剤0〜5質量%
塩基0.05〜5質量%。
【0099】
典型的な木材用艶出しワニスは、必須の配合成分として以下のものを含有する:
本発明による複合粒子15〜35質量%
水50〜75質量%
湿潤剤0.05〜1質量%
消泡剤0.1〜1質量%
青変防止剤0.1〜3質量%
会合性増粘剤0.1〜2質量%
セルロース増粘剤0.1〜2質量%
白色顔料5〜15質量%
皮膜形成助剤0〜5質量%
塩基0.05〜5質量%。
【0100】
特に有利に、本発明による水性複合粒子分散液は、水性木材用艶出し剤において使用される。
【0101】
次に、本発明を、制限のない以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0102】
1.水性複合粒子分散液Dnの製造
還流冷却器、温度計、機械的撹拌機並びに計量供給装置を備えた2Lの4ッ口フラスコ中に、20〜25℃(室温)で、かつ大気圧で、窒素雰囲気下に撹拌下に(毎分200回転)、Nyacol(R)2040 416.6gを添加し、次いで、メタクリル酸2.5gと水酸化ナトリウムの10質量%水溶液12gとからの混合物を5分以内で添加した。その後、この撹拌された反応混合物に、15分間で、非イオン性界面活性剤Lutensol(R) AT 18(BASF AG社の商標、18個のエチレンオキシド単位を有するC1618−脂肪アルコールエトキシラート)の20質量%水溶液10.4gと脱塩水108.5gとの混合物を添加した。引続き、この反応混合物に、60分間で、脱塩水200g中に溶解されたN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド(CATB)0.83gを供給した。その後に、この反応混合物を80℃の反応温度に加熱した。
【0103】
同時に、供給物1として、メチルメタクリラート(MMA)Xg、n−ブチルアクリラート(n−BA)Yg、グリシジルメタクリラート(GMA)Zg及びメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)0.5g[それぞれの量は第1表に列記されている]からなるモノマー混合物を調製し、並びに、供給物2として、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2.5g、水酸化ナトリウムの10質量%水溶液7g及び脱塩水200gからなる開始剤溶液を調製した。
【0104】
引続き、80℃で撹拌された反応混合物に、5分間で2本の別個の供給管を介して供給物1 21.1g及び供給物2 57.1gを添加した。その後、この反応混合物を反応温度で1時間に亘って撹拌した。
【0105】
引き続き、該反応混合物にDowfax(R) 2A1の45質量%水溶液0.92gを添加した。2時間以内に、該反応混合物に、供給物1及び供給物2の残量を、同時に開始して連続的に供給した。その後、反応混合物を反応温度で更に1時間撹拌し、次いで室温に冷却した。
【0106】
そのようにして得られた水性複合粒子分散液から、固体含分FGを測定した(同様に第1表を参照のこと)。約3cmの内径を有する開いたアルミニウムるつぼ中のそれぞれの水性複合粒子分散液約1gを、乾燥棚中で150℃で恒量まで乾燥させることにより、固体含分を測定した。固体含分の測定のために、それぞれ別個の測定を2回実施した。第1表に示す値は、前記の2回の測定のそれぞれの平均値に相当する。
【0107】
実施例で得られた複合粒子のポリマーは、5℃未満のガラス転移温度を有していた(DIN 53765)。
【0108】
実施例D1〜D5並びにDVにおいて得られた複合粒子の、超遠心分離分析法を用いて測定された平均粒子直径(d50)を、同様に第1表に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
2.複合粒子分散液DV及びD1〜D5の使用下での木材用艶出し剤の製造並びにその応用技術的特性
以下の成分を記載された順序で室温で混合することにより、水性複合粒子分散液D1〜D5及びDVから、相応する木材用艶出し剤HD1〜HD5及びHDVを調製した:
水20.25g
Mergal(R) S96(Seelze在のTroy Chemie GmbH社の殺真菌剤及び除藻剤)2.50g
Byk(R) 346(Wesel在のByk Chemie GmbH社の湿潤剤)0.25g
Byk(R) 024(Wesel在のByk Chemie GmbH社の消泡剤)0.50g
AMP(R) 90(米国Buffalo Grove在、Angus Chemical Company社の分散助剤)0.25g
Rheoloate(R) 278(米国Highstown在、Elementis Specialties Inc.社の増粘剤)1.25g
Luconyl(R) イエロー(BASF AG社の顔料調製物)7.50g
水性分散液DVないしD1〜D5の形の複合粒子70.20g
水17.50g
製造された木材用艶出し剤の透水性を試験するために、厚さ2cm、幅10cm、長さ30cmのトウヒ板の表面(10×30cm)を、以下のように上記の木材用艶出し剤で被覆した:
a)脱塩水で1:1の質量比で希釈した木材用艶出し剤HD1〜HD5及びHDVのそれぞれで下塗り;塗布量40g/m2(湿潤);23℃、相対空中湿度50%で24時間乾燥;次いで、市販の粒度P220の研摩紙での、下塗りした木材表面の研磨;次いで
b)下塗りした木材表面上へのそれぞれ木材用艶出し剤HD1〜HD5及びHDVの形の上塗り塗料の塗布;塗布量80g/m2(湿潤);23℃、相対空中湿度50%で24時間乾燥;次いで、市販の粒度P220の研摩紙での、上塗り塗料で被覆した木材表面の研磨;次いで
c)上塗り塗料で被覆した木材表面上へのそれぞれ木材用艶出し剤HD1〜HD5及びHDVの形のトップコートの塗布;塗布量80g/m2(湿潤);23℃、相対空中湿度50%で24時間乾燥。
【0111】
この場合、プライマー被覆、上塗り塗料被覆及びトップコート被覆をそれぞれ木材用艶出し剤HD1〜HD5及びHDVをベースとして行った(即ち、プライマー被覆、上塗り塗料被覆及びトップコート被覆のために1つの木材用艶出し剤を使用した)。
【0112】
これに引き続き、被覆した木材成形体を乾燥棚中で50℃で3日間乾燥させ、次いで室温で24時間貯蔵した。被覆したトウヒ板を秤量し、次いで、被覆面を、水受け中に置いて完全に水を含浸させた10×8×8cmのサイズの(生花店からの)フラワーアレンジ用のスポンジ上に載置した。DIN EN927−5に基づき、それぞれ二重測定を実施した。被覆した木材成形体を、24、48及び72時間後に秤量し、質量増加によって水吸収を1平方メートル当たりのgで算出した。第2表に示した値は、二重測定からの平均値である。
【0113】
【表2】

【0114】
上記表から、本発明による木材用艶出し剤HD1〜HD5で被覆した木材成形体が、比較の艶出し剤HDVで被覆した木材成形体よりも明らかに低い水吸収を示すことが明らかである。上記の(木材被覆の低減した透水性により生じた)水吸収の減少は、特に青変菌の明らかにより低い増殖による被覆した木材成形体の改善された耐候性にも反映されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材被覆配合物におけるバインダーとしての、ポリマーと微細粒の無機固体とから構成された粒子の水性分散液(水性複合粒子分散液)の使用において、水性複合粒子分散液の製造の際に、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散分布させ、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて、100nm以下の平均粒子直径を有する少なくとも1の分散分布された微細粒の無機固体及び少なくとも1の分散剤の存在下に、ラジカル水性乳化重合法により重合させ、その際、エチレン性不飽和モノマーとして、エチレン性不飽和モノマーAと、0質量%を上回って10質量%以下のエポキシ基を有する少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーB(エポキシモノマー)とからなるモノマー混合物を使用することを特徴とする使用。
【請求項2】
微細粒の無機固体が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化鉄(II/III)、酸化錫(IV)、酸化セリウム(IV)、酸化イットリウム(III)、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、酸化亜鉛及び硫化亜鉛を含む群から選択されている、請求項1記載の使用。
【請求項3】
微細粒の無機固体が、熱分解法ケイ酸及び/又はコロイドケイ酸、二酸化ケイ素ゾル及び/又は層状ケイ酸塩である、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
エポキシモノマーとして、グリシジルアクリラート及び/又はグリシジルメタクリラートを使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
モノマー混合物が、シロキサン基を有するエチレン性不飽和モノマーを、モノマーAの全量に対して0.01〜5質量%含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
モノマー混合物中の少なくとも1のエポキシモノマーの全量が0.1〜5質量%である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
モノマーAの組成を、前記モノマーAの単独重合の後に、ガラス転移温度が60℃以下であるポリマーが生じるように選択する、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
水性複合粒子分散液を含有する木材被覆配合物において、水性複合粒子分散液の製造の際に、エチレン性不飽和モノマーを水性媒体中に分散分布させ、少なくとも1のラジカル重合開始剤を用いて、100nm以下の平均粒子直径を有する少なくとも1の分散分布された微細粒の無機固体及び少なくとも1の分散剤の存在下に、ラジカル水性乳化重合法により重合させ、その際、エチレン性不飽和モノマーとして、エチレン性不飽和モノマーAと、0質量%を上回って10質量%以下のエポキシ基を有する少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーB(エポキシモノマー)とからなるモノマー混合物を使用することを特徴とする木材被覆配合物。
【請求項9】
少なくとも1の木材表面を有する成形体の被覆法において、木材表面を、請求項8記載の木材被覆配合物(固体として算出)50〜500g/m2で被覆し、引き続き乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法により得ることができる成形体。

【公表番号】特表2009−543916(P2009−543916A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519934(P2009−519934)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057077
【国際公開番号】WO2008/009596
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】