説明

木粉含有材料及びその製造方法、並びに、成形体

【課題】成形機による成形が実現できる木粉含有材料を提供すること。
【解決手段】体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と、脂肪族ポリエステルと、縮合リン酸エステル類と、を含む木粉含有材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木粉含有材料及びその製造方法、並びに、成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境負荷低減の観点から、木質系材料と熱可塑性樹脂とを混合してペレット状混合物を成形し、このペレット状混合物を押出し成形して木質系複合樹脂成形体を製造することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「木質系材料を水蒸気存在下で加熱および加圧後急激に減圧して爆砕し乾燥した粉末状の爆砕材料に水を添加し、少なくとも、流動状態の樹脂と、粉末状の木質系材料と、前記水を添加した爆砕材料と、を混合して成形することにより木質系成形体を製造する」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4371373号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、成形機による成形が実現できる木粉含有材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と、
脂肪族ポリエステルと、
縮合リン酸エステル類と、
を含む木粉含有材料。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記木粉の含有量が、木粉含有材料の全量に対して30質量%以上90質量%以下であり、
前記脂肪族ポリエステルの含有量が、木粉含有材料の全量に対して5質量%以上65質量%以下であり、
前記縮合リン酸エステル類の含有量が、木粉含有材料の全量に対して5質量%以上40質量%以下である請求項1に記載の木粉含有材料。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、及びこれら2種以上の共重合体から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の木粉含有材料。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記縮合リン酸エステル類が、下記構造式(1)で示される化合物、及び下記構造式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の木粉含有材料。
【0010】
【化1】

【0011】
請求項5に係る発明は、
体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と、
脂肪族ポリエステルと、
縮合リン酸エステル類と、
を含む成形体。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記木粉の含有量が、木粉含有材料の全量に対して30質量%以上90質量%以下であり、
前記脂肪族ポリエステルの含有量が、木粉含有材料の全量に対して5質量%以上65質量%以下であり、
前記縮合リン酸エステル類の含有量が、木粉含有材料の全量に対して5質量%以上40質量%以下である請求項5に記載の成形体。
【0013】
請求項7に係る発明は、
前記脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、及びこれら2種以上の共重合体から選択される少なくとも1種である請求項5又は6に記載の成形体。
【0014】
請求項8に係る発明は、
前記縮合リン酸エステル類が、下記構造式(1)で示される化合物、及び下記構造式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種である請求項5〜7のいずれか1項に記載の成形体。
【化2】

【0015】
請求項9に係る発明は、
体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と縮合リン酸エステルとを混合する工程と、
前記木粉及び前記縮合リン酸エステルの混合物と脂肪族ポリエステルとを混合する工程と、
有する木粉含有材料の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜4に係る発明によれば、成形機による成形が実現できる木粉含有材料を提供できる。
【0017】
請求項5〜8に係る発明によれば、自在な形状が実現された成形体を提供できる。
【0018】
請求項9に係る発明によれば、成形機による成形が実現できる木粉含有材料の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る成形体を備える電子・電気機器の部品の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の木粉含有材料及びその製造方法、並びに、成形体の一例である実施形態について説明する。
【0021】
[木粉含有材料]
本実施形態に係る木粉含有材料は、体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と、脂肪族ポリエステルと、縮合リン酸エステル類と、を含んで構成されている。
本実施形態に係る木粉含有材料では、上記組成により、成形機による成形が実現される。
この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる
【0022】
従来、木粉と樹脂とを混合した材料では、木粉に起因して、樹脂単独の組成に比べ、流動性が低下したり、成形時の温度により木粉が焼けや劣化するため耐熱性に劣り、成形機による成形が実現され難い現状がある。この傾向は、木粉の比率が高ければ顕著に生じる。
【0023】
しかしながら、本実施形態に係る木粉含有材料において、体積平均粒径が上記範囲である木粉は、縮合リン酸エステル類が選択的に配位し易い露出面積であるため、木粉の表面に縮合リン酸エステル類が選択的に存在(以下「配位」と表現する場合がある。)し、縮合リン酸エステル類の滑り易さが、木粉にも付与されるものと考えられる。さらに、脂肪族ポリエステルが木粉と馴染み易い性質を持つことから、木粉が脂肪族ポリエステルに分散され易くなると考えられる。
これに加えて、体積平均粒径が上記範囲である木粉は、焼けや劣化が生じ難くなる露出面積でもあるものと考えられる。
【0024】
このため、本実施形態に係る木粉含有材料では、従来不可能であった範囲まで木粉の含有量を多くしても、木粉に起因する流動性の低下が抑制されると共に、成形時の温度による木粉の焼けや劣化が生じ難くなるといった耐熱性が付与されることから、成形機での成形が実現されると考えられる。
その結果、本実施形態に係る木粉含有材料は、成形機による成形により、自在な形状が実現され、低コストで成形体が得られる。
また、本実施形態に係る木粉含有材料は、理由は定かではないが、柔軟性、寸法安定性に優れた成形体が得られることも見出された。
【0025】
以下、本実施形態に係る木粉含有材料の各成分について説明する。
【0026】
(木粉)
木粉としては、木材(木片)の粉砕物であれば、特定に制限はなく、成形体の見た目や質感に応じて、例えば、ヒノキ、スギ、マツ、ブナ、ナラ、クリ、サクラ、モミ等の木材の粉砕物から選択される。
【0027】
特に、木粉としては、例えば、木材(木片)を加圧後、減圧することで得られる爆砕木粉であることがよい。爆砕木粉は、通常の粉砕で得られる木粉と比較して、比表面積が大きくなるため、脂肪族ポリエステルとの馴染みが良好となり、木粉含有材料の流動性が向上し易くなる。
木粉は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0028】
木粉の体積平均粒径は、1μm以上5mm以下であるが、望ましくは2μm以上3mm以下であり、より望ましくは3μm以上2mm以下である。
木粉の体積平均粒径を1μm以上とすることにより、木粉表面への縮合リン酸エステルの配位が実現され、流動性の低下が抑制される。
一方、木粉の体積平均粒径を5mm以下とすることにより、木粉の暴露面積の増加によって、成形温度で木粉の焼けや劣化の発生が抑制され、その結果、得られる成形体の機械特性が劣化したり、外観が悪くなることが抑制される。
【0029】
ここで、木粉の体積平均粒径は、得られた成形体から大きさ20×20mmの試料を採取し、これを測定試料として用いて、以下に従って測定した値である。
溶媒(例えばクロロホルム)を用いて脂肪族ポリエステルを溶解した後(脂肪族ポリエステル以外の樹脂を含む場合は、溶媒を用いて脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリエステル以外の樹脂を溶解した後)、濾過にて木粉を採取し、粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−2200)にて体積平均粒径を測定した。
【0030】
木粉の含有量は、例えば、木粉含有材料の全量に対して30質量%以上であることがよいが、望ましくは50質量%以上、より望ましくは70質量%以上であることがよい。
木粉の含有量が上記範囲であっても、成形機による木粉含有材料の成形が実現される。
なお、木粉の含有量の上限は、成形時の流動性と成形体の柔軟性の観点から、98質量%以下であることがよく、望ましくは90質量%以下である。
木粉の含有量としては、例えば、特に、木粉含有材料の全量に対して30質量%以上90質量%以下であることがよい。
【0031】
(脂肪族ポリエステル)
脂肪族ポリエステルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ヒドロキシカルボン酸重合体、脂肪族ジオールと脂肪族カルボン酸との重縮合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとして具体的には、例えば、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシヘキサネート、ポリヒドロキシバリレートおよびそれらの共重合体など、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリエレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、及びこれら2種以上の共重合体等が挙げられる。
これら脂肪族ポリエステルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0032】
脂肪族ポリエステルは、例えば、単一の連続体(例えば、ポリヒドロキシブチレート)でもよいし、ポリ乳酸のL体とD体のような光学異性体が混在していてもよく、また、それらが共重合していてもよい。
【0033】
これらの中でも、脂肪族ポリエステルとしては、木粉及び縮合リン酸エステルとの組み合わせにおいて、流動性と耐熱性(木粉の焼け・劣化)を両立し、より成形機による成形性に適する観点から、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、及びこれら2種以上の共重合体がよい。
【0034】
脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、8000以上150000以下がよく、望ましくは20000以上100000以下である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー装置(島津製作所製Prominence GPC型)を用い、測定カラムにはShim−pack GPC−80Mを使用して測定された値である。以下同様である。
【0035】
脂肪族ポリエステルの含有量は、木粉含有材料の全量に対して、5質量%以上65質量%以下であることがよく、望ましくは10質量%以上60質量%以下、より望ましくは40質量%以上60質量%以下である。
脂肪族ポリエステルの含有量を5質量%以上とすることにより、木粉含有材料の流動性の低下が抑制され易くなる。
一方、脂肪族ポリエステルの含有量を65質量%以下とすることにより、木粉含有材料の耐熱性の低下が抑制され易くなる。
【0036】
ここで、脂肪族ポリエステル以外の他の樹脂を木粉含有材料に含ませてもよい。但し、他の樹脂は成形機による成形性が低減しない範囲で配合する。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリーレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、液晶樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリパラバン酸樹脂、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂、ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂、シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
これら樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0037】
(縮合リン酸エステル類)
縮合リン酸エステル類としては、例えば、ビスフェノールA型、ビフェニレン型、イソフタル型などの芳香族縮合リン酸エステル類が挙げられ、具体的には、例えば、下記一般式(I)又は(II)で表される縮合リン酸エステル類が挙げられる。
【0038】
【化3】



【0039】
式(I)中、Q、Q、QおよびQはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、Q、Q、QおよびQはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、m1、m2、m3およびm4はそれぞれ独立に、0以上3以下の整数を示し、m5およびm6はそれぞれ独立に、0以上2以下の整数を表し、n1は、0以上10以下の整数を表す。
【0040】
【化4】



【0041】
式(II)中、Q、Q10、Q11およびQ12はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、Q13は、水素原子またはメチル基を表し、m7、m8、m9およびm10はそれぞれ独立に、0以上3以下の整数を表し、m11は0以上4以下の整数を表し、n2は、0以上10以下の整数を表す。
【0042】
縮合リン酸エステル類は合成品でも市販品でもよい。縮合リン酸エステル類の市販品として、具体的には、例えば、大八化学社製の市販品(「PX200」、「PX201」、「PX202」、「CR741」等)、アデカ社製の市販品(「アデカスタブFP2100」、「FP2200」等)等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、縮合リン酸エステル類としては、木粉との馴染みが良く、より成形機による成形性に適する観点から、下記構造式(1)で示される化合物(大八化学社製「PX200」)、及び下記構造式(2)で示される化合物(大八化学社製「CR741」)から選択される少なくとも1種であることがよい。
【0044】
【化5】

【0045】
縮合リン酸エステル類の含有量は、例えば、木粉含有材料の全量に対して、5質量%以上40質量%以下であることがよく、望ましくは5質量%以上30質量%以下、より望ましくは10質量%以上20質量%以下である。
縮合リン酸エステル類の含有量を5質量%以上とすることにより、木粉含有材料の流動性の低下が抑制され易くなる。
一方、縮合リン酸エステル類の含有量を40質量%以下とすることにより、得られる成形体の機械的強度の低下が抑制され易くなる。
【0046】
(その他成分)
本実施形態に係る木粉含有材料は、必要に応じて、その他成分を含んで構成されてもよい。
その他成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)等が挙げられる。
【0047】
その他成分の含有量は、例えば、木粉含有材料に対して、0質量%以上10質量%以下であることがよく、望ましくは0質量%以上5質量%以下である。ここで、「0質量%」とはその他成分を含まないことを意味する。
【0048】
(木粉含有材料の製造方法)
本実施形態に係る木粉含有材料は、上記各成分の混合物を溶融混練することにより製造される。
具体的には、体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と縮合リン酸エステルとを混合する工程と、木粉及び縮合リン酸エステルの混合物と脂肪族ポリエステルとを混合する工程と、を経て、本実施形態に係る木粉含有材料を得ることがよい。
つまり、木粉と縮合リン酸エステルとを混合した後、この混合物と脂肪族ポリエステルとを溶融混練する順に行うことがよい。
【0049】
先に、木粉と縮合リン酸エステルとを混合することにより、木粉の表面に縮合リン酸エステル類が選択的に存在し易くなり、縮合リン酸エステル類固有の滑り易さが木粉にも付与された状態となり易いと考えられる。
そして、その後、木粉及び縮合リン酸エステルの混合物と脂肪族ポリエステルとを混練することにより、木粉が脂肪族ポリエステルに分散され易くなると考えられる。
このため、上記工程を経て本実施形態に係る木粉含有材料を得ることにより、流動性及び耐熱性が付与され易く、成形機による成形が実現され易くなる。
【0050】
ここで、混合や溶融混練の手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、二軸押出し、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0051】
[成形体]
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係る木粉含有材料を含んで構成されている。
具体的には、本実施形態に係る成形体は、例えば、本実施形態に係る木粉含有材料を成形機により成形することにより得られる。
なお、成形機による成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などが挙げられる。
【0052】
ここで、上記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
この際、シリンダ温度としては、170℃以上280℃以下とすることが望ましく、180℃以上270℃以下とすることがより望ましい。また、金型温度としては、40℃以上110℃以下とすることが望ましく、50℃以上110℃以下とすることがより望ましい。
【0053】
本実施形態に係る成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。
【0054】
図1は、本実施形態に係る成形体を備える電子・電気機器の部品の一例である画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0055】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、及び、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置、及び制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱自在なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
【0056】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーが補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0057】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙供給部136が備えられており、ここからも用紙が供給される。
【0058】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙供給部136が設けられている側と反対側に用紙排出部138が複数備えられており、これらの用紙排出部に画像形成後の用紙が排出される。
【0059】
画像形成装置100において、例えば、フロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、及び筐体152に、本実施形態に係る成形体が用いられている。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0061】
[木粉の製造]
(木粉A)
木片チップ(富士鋼業製SPF7007にて粉砕)を圧力容器(ユニコントロールズ社製、TM10L)に入れ水蒸気存在下で飽和水蒸気圧下、150℃で加熱、3500Paまで加圧する。圧力容器を解放することで系を減圧し、木片チップを爆砕、爆砕木粉を得た。これを木粉Aとした。
なお、木粉Aの体積平均粒径は、後述する試験片を用い、既述した方法に従って測定したところ、4.85mmであった。以下、同様である。
【0062】
(木粉B)
220℃で加熱、15000Paまで加圧した以外は、木粉Aと同様にして爆砕木粉を得た。これを木粉Bとした。
木粉Aと同様にして測定したところ、木粉Bの体積平均粒径は1.25μmだった。
【0063】
(木粉C)
木片チップ(富士鋼業製SPF7007にて粉砕)を粉砕機(ウエノテックス社製、UCmini75)に入れ、室温、2時間の条件で機械的に粉砕し、木粉Cを得た。
木粉Aと同様にして測定したところ、木粉Cの体積平均粒径は2.25mmだった。
【0064】
(木粉D)
室温(22℃)、30分の条件に変更した以外は、木粉Cと同様にして木粉Dを得た。
木粉Aと同様にして測定したところ、木粉Dの体積平均粒径は5.58mmだった。
【0065】
(木粉E)
250℃、30000Paまで加圧した以外は、木粉Aと同様にして木粉Eを得た。
木粉Aと同様にして測定したところ、木粉Eの体積平均粒径は0.88μmだった。
【0066】
[実施例1〜16、比較例1〜11]
(木粉含有材料の製造)
表1に示す組成(表1中の数値は質量部を示す)を混合し、2軸押し出し装置(東芝機械製。TEM3000)にて、表1に示すシリンダ温度で混練し、冷却、ペレタイズしてペレット状の木粉含有材料1〜23を得た。
但し、木粉含有材料1〜20については、簡易ニーダー(東洋精機社製、ラボプラストミル)により、先に、木粉と縮合リン酸エステルとを混合した後、この混合物と脂肪族ポリエステルとを2軸押し出し装置(東芝機械製。TEM3000)にて混合・混練した。
また、木粉含有材料21〜23については、表1に示す組成を、同時に2軸押し出し装置(東芝機械製。TEM3000)にて混合・混練した。
【0067】
(成形体の製造)
上記各得られた木粉含有材料を、射出成形機(日精樹脂工業製、NEX80)を用い、表2に示すシリンダ温度、金型温度で、成形体を作製した。
具体的には、成形体として、1)ISO多目的ダンベル試験片(試験部長さ100mm、幅10mm、厚み4mm)、2)D2試験片(長さ、幅60mm、厚み2mm)を作製した。
【0068】
[評価]
各例において、得られた木粉含有材料、成形体(試験片)について、以下の評価を行った。
【0069】
(成形性)
木粉含有材料の流動性が確保され、木粉含有材料焼けや劣化が起こらず成形できたものについては成形性良好として「○良好」、木粉含有材料が流動しない、又は焼けや劣化が起こってしまうものについては成形性不良としてそれぞれ「×流不良」、「×焼け」と評価した。
【0070】
(耐熱性)
ISO多目的ダンベル試験片を用い、ISO75の方法に準拠し、HDT測定装置(東洋精機社製、HDT6)にて、1.8MPaの荷重たわみ温度(℃)を測定し、耐熱性を評価した。
【0071】
(柔軟性)
ISO多目的ダンベル試験片を用い、ISO178の方法に準拠し、インストロン(東洋精機社製、インストロンVR6)にて、曲げ試験を実施し、曲げ弾性率(MPa)と曲げ破断歪(%)を測定し、柔軟性を評価した。
【0072】
(寸法安定性)
D2試験片を28℃、90%RHの条件下で1000hr放置し、試験片の60mm4辺の寸法について、放置前後での試験片の4辺それぞれの寸法変化率を測定し、4辺の平均値を寸法変化率(%)として評価した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、成形性が良好であることがわかる。また、柔軟性(曲げ破断歪)、寸法安定性についても、共に良好であることがわかる。
【0076】
ここで、各表中の材料種の詳細につき示す。
−脂肪族ポリエステル−
・ポリ乳酸:「テラマックTE2000」ユニチカ社製
・ポリ乳酸:「3051D」ネイチャーワークス社製
・ポリヒドロキシブチレート:「バイオポール30」日本モンサント社製
・ポリブチレンサクシネート:「ビオノーレ#2000」昭和高分子社製
−縮合リン酸エステル類−
・「PX200」大八化学社製:構造式(1)で表される化合物
・「CR741」大八化学社製:構造式(2)で表される化合物
・「アデカスタブFP2200」アデカ社製(但し、含窒素系難燃剤)
−その他−
・ポリプロピレン:「ノバテックBC3L」日本ポリプロピレン
・マレイン酸変性ポリプロピレン「ユーメックスCA60」三洋化成社製
【符号の説明】
【0077】
100 画像形成装置
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と、
脂肪族ポリエステルと、
縮合リン酸エステル類と、
を含む木粉含有材料。
【請求項2】
前記木粉の含有量が、木粉含有材料の全量に対して30質量%以上90質量%以下であり、
前記脂肪族ポリエステルの含有量が、木粉含有材料の全量に対して5質量%以上65質量%以下であり、
前記縮合リン酸エステル類の含有量が、木粉含有材料の全量に対して5質量%以上40質量%以下である請求項1に記載の木粉含有材料。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、及びこれら2種以上の共重合体から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の木粉含有材料。
【請求項4】
前記縮合リン酸エステル類が、下記構造式(1)で示される化合物、及び下記構造式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の木粉含有材料。
【化1】

【請求項5】
体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と、
脂肪族ポリエステルと、
縮合リン酸エステル類と、
を含む成形体。
【請求項6】
前記木粉の含有量が、木粉含有材料の全量に対して30質量%以上90質量%以下であり、
前記脂肪族ポリエステルの含有量が、木粉含有材料の全量に対して5質量%以上65質量%以下であり、
前記縮合リン酸エステル類の含有量が、木粉含有材料の全量に対して5質量%以上40質量%以下である請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、及びこれら2種以上の共重合体から選択される少なくとも1種である請求項5又は6に記載の成形体。
【請求項8】
前記縮合リン酸エステル類が、下記構造式(1)で示される化合物、及び下記構造式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種である請求項5〜7のいずれか1項に記載の成形体。
【化2】

【請求項9】
体積平均粒径が1μm以上5mm以下の木粉と縮合リン酸エステルとを混合する工程と、
前記木粉及び前記縮合リン酸エステルの混合物と脂肪族ポリエステルとを混合する工程と、
有する木粉含有材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−67681(P2013−67681A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205353(P2011−205353)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】